特許第6077512号(P6077512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6077512渦電流検査法を用いた伝熱管腐食量予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077512
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】渦電流検査法を用いた伝熱管腐食量予測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/90 20060101AFI20170130BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20170130BHJP
   G21C 17/003 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   G01N27/90
   G01N17/00
   G21C17/00 G
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-205406(P2014-205406)
(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-57275(P2016-57275A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2014年10月6日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0119092
(32)【優先日】2014年9月5日
(33)【優先権主張国】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 学会名:2014年 水炉材料環境助長割れ国際協力グループの学会 開催年月日:2014年4月6日−11日
(73)【特許権者】
【識別番号】597060645
【氏名又は名称】コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シム ヒ サン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ミョン−シク
(72)【発明者】
【氏名】ハー ド−ヘン
(72)【発明者】
【氏名】イ ドク−ヒョン
【審査官】 塚本 丈二
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72−27/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動回転パンケーキコイル(MRPC)プローブを用いて伝熱管材料の渦電流検査を行なう工程(工程1)、
前記渦電流検査によって生成されたMRPC検査信号を評価する工程(工程2)、および
前記の評価によって得られた伝熱管材料のMRPC検査信号のノイズ値から伝熱管材料の腐食量を予測する工程(工程3)
を含む、渦電流検査法を用いた伝熱管腐食量予測方法。
【請求項2】
前記工程1の渦電流検査が、MRPC+ポイントコイルを用いて行なわれることを特徴とする請求項1に記載の渦電流検査法を用いた伝熱管腐食量予測方法。
【請求項3】
前記工程1の渦電流検査が、パンケーキコイルを用いて行なわれることを特徴とする請求項1に記載の渦電流検査法を用いた伝熱管腐食量予測方法。
【請求項4】
前記工程1において、渦電流検査が、100〜1000kHzの周波数条件で行なわれることを特徴とする請求項1に記載の渦電流検査法を用いた伝熱管腐食量予測方法。
【請求項5】
前記工程2のMRPC検査信号の評価は、信号補正用標準試験管の渦電流MRPC欠陥信号の振幅に対する相対的なノイズ信号の大きさを測定する方法を用いて行なわれることを特徴とする請求項1に記載の渦電流検査法を用いた伝熱管腐食量予測方法。
【請求項6】
前記MRPC検査信号の評価は、信号補正用標準試験管の厚み方向に100%深さの軸方向ノッチ欠陥の信号振幅に対する相対的なノイズ信号の大きさを測定する方法を用いて行なわれることを特徴とする請求項5に記載の渦電流検査法を用いた伝熱管腐食量予測方法。
【請求項7】
前記工程3の腐食量予測は、既に測定されたMRPC検査信号のノイズ値と腐食量との間の相関関係を用いて実行されることを特徴とする請求項1に記載の渦電流検査法を用いた伝熱管腐食量予測方法。
【請求項8】
前記MRPC検査信号のノイズ値と腐食量との間の相関関係は、
伝熱管材料のMRPC検査信号のノイズ値を測定する工程(工程a)、
原子力発電所模擬装置において、前記工程aの伝熱管材料の腐食量を定量化する工程(工程b)、および
前記工程aで測定されたMRPC検査信号のノイズ値と前記工程bで測定された腐食量の相関関係を導出する工程(工程c)
を含む工程によって導出されることを特徴とする請求項7に記載の渦電流検査法を用いた伝熱管腐食量予測方法。
【請求項9】
伝熱管の材料選定の段階で実行されることを特徴とする請求項1に記載の渦電流検査法を用いた伝熱管腐食量予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦電流検査法を用いた伝熱管腐食量予測方法に関するもので、詳細には、渦電流電動回転パンケーキコイル(Motorized Rotating Pancake Coil:MRPC)検査を実行して、MRPCノイズ値から伝熱管の腐食量を予測する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の健全性は、稼働中の系統の腐食損傷、機械的摩耗等により影響を受ける。特に、1次系統表面積の約70%を占めており、1次系統および2次系統冷却水の両方に露出している蒸気発生器伝熱管は、原発の健全性確保のために非常に重要な構成要素である。
【0003】
既存の伝熱管材料であるAlloy600を使用した蒸気発生器では、応力腐食割れ、粒界腐食、ピッチングなどのさまざまな腐食損傷が頻繁に発生したが、Alloy690材料に代替されるにしたがって、腐食損傷が報告された事例がなく、摩耗など機械的損傷やデンティングのような2次的損傷のみが発生している状況である。
【0004】
腐食損傷に対する優れた抵抗性にもかかわらず、1次系統冷却水と接触するAlloy690の材料表面での腐食およびそれに伴う金属イオンや腐食生成物の溶出特性は、いまだ、不可避的に発生する問題である。
【0005】
材料表面から溶出する58Niと59Coイオンおよび酸化物は、原子炉内部に流入して、中性子反応によってそれぞれ58Coと60Coに放射化されて系統内の放射線量を増加させるので、作業者の放射線被曝量増加の主な原因となる。また、核燃料被覆管表面に酸化物の形で付着して熱伝達を妨害して、被覆管温度を上昇させ、被覆管の腐食速度を増加させるだけでなく、原子炉の軸方向出力偏差(axial offset anomaly,AOA)現象を誘発する。
【0006】
これらのコバルト核種発生源の約60〜70%が、蒸気発生器伝熱管の表面腐食から放出される腐食生成物の放射化に起因するという点に注目する必要がある。伝熱管の材料であるAlloy600と690は、ベース金属成分であるニッケルが約58〜72%含有されているだけでなく、コバルトが不純物として約0.01〜0.02%含まれている。1次系統で冷却水と接触する全構造材料の表面積の約70%を蒸気発生器伝熱管が占めていることから、伝熱管の材料での腐食生成物、特にニッケルの腐食溶出による腐食生成物を減少させることこそ、1次系統放射線量を根本的に低減することができる重要な方法であることが分かる。また、核燃料被覆管表面に腐食生成物が付着して発生するAOA現象を抑制することができる効果も同時に得ることができると期待される。
【0007】
伝熱管材料の腐食および溶出特性は、伝熱管の材料の化学的組成、表面特性などの材料固有の特性と材料の製造工程など、多様な因子に影響を受けることが報告されている。実際、原発運転中の腐食や溶出量は、58Co、60Coなど主要な放射線源の放射線量の変化をリアルタイムでモニタリングすることにより、間接的に予測することができる。しかし、原発の設計や建設工程から腐食や溶出性に優れた伝熱管材料を選定して、蒸気発生器を製造することが何よりも重要である。したがって、材料選定や原発の設計、建設工程で伝熱管の腐食特性を事前に予測することができる革新的な技術の確保が求められている。
【0008】
一方、一般的に、渦電流検査は、伝熱管の稼働中の健全性を評価するために用いられるが、ここで、渦電流検査信号は、伝熱管の製造品質と稼働中の伝熱管表面に付着する酸化物および異物、そして隣接構造物等の信号に影響を受ける。したがって、渦電流信号の品質に影響を与える要因を減少させることが伝熱管に発生する欠陥を効果的に検出するのに非常に重要であり、これは伝熱管の製造品質がより重要な要素となっていることを意味する。しかし、伝熱管材料の製造工程では、稼働中検査時の検出能確保次元で、渦電流ボビンプローブの信号対雑音比(bobbin signal−to−noise ratio)によってのみ要件化が成されているのが実情である。
【0009】
伝熱管材料の腐食や溶出による58Coおよび60Coの放射線量の変化においては、ボビン信号対雑音比の設計要件を満足している伝熱管の場合であっても、製造時期、製造工程などの製造上の要因によって異なる傾向と差異を示すことが報告されている。現在、腐食や溶出特性に関する基準は要件になっておらず、それを事前に予測することができる方法もないという問題点を抱えている。
【0010】
一方、伝熱管の渦電流探傷法に関連する従来技術として、特許文献1では、蒸気発生器伝熱管の内径の円周亀裂に対するMRPCプローブを用いた渦電流探傷検査方法について開示している。具体的には、蒸気発生器伝熱管の内径の円周亀裂のMRPC渦電流探傷検査方法において、(a)蒸気発生器の伝熱管にMRPCプローブを用いて、複数の周波数を印加して渦電流検査信号を取得する工程;(b)取得された渦電流検査信号から上記複数の周波数別の信号特性を分析して、内径円周亀裂を確認する工程;(c)内径円周亀裂に対して補正曲線を作成し、上記複数の周波数別渦電流検査信号のうち、いずれかひとつの周波数に相当する渦電流検査信号に対するデータを選択する工程;(d)確認された内径の円周亀裂の開始時点から一定間隔で亀裂が終わる点までの深さを測定する工程;および(e)亀裂の長さに相応する深さ形状を用いて、損傷面積の割合(Percent Degraded Area;PDA)を算出する工程を含む、蒸気発生器伝熱管の内径の円周亀裂に対するMRPC渦電流探傷検査方法を開示している。
【0011】
しかし、従来の伝熱管材料であるAlloy600を用いる蒸気発生器とは異なり、Alloy690は、応力腐食割れなどの腐食損傷が報告されていないため、亀裂の測定ではなく、伝熱管の腐食や溶出特性の予測がより重要になっている。
【0012】
そこで、本発明者らは伝熱管の腐食や溶出特性を予測する方法について研究中、渦電流MRPCプローブで測定した伝熱管のノイズ信号と腐食量の特性が相関関係を有するという事実を発見し、伝熱管の材料選定の段階でMRPC検査を通じて伝熱管の腐食や溶出特性を予測できることが分かり、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国登録特許第10−1083215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、渦電流検査法を用いた伝熱管材料の腐食量予測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、
電動回転パンケーキコイル(MRPC)プローブを用いて伝熱管材料の渦電流検査を行なう工程(工程1)、
前記渦電流検査によって生成されたMRPC検査信号を評価する工程(工程2)、および
前記の評価によって得られた伝熱管材料のMRPC検査信号のノイズ値から伝熱管材料の腐食量を予測する工程(工程3)を含む、渦電流検査法を用いた伝熱管の腐食量予測方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の伝熱管腐食量予測方法を用いると、伝熱管材料の渦電流MRPCノイズ検査を通じて、1次系統条件での腐食量を予測することができ、伝熱管の腐食量に関する基準を要件とすることができるので、材料選定の段階で腐食量の少ない伝熱管材料を選定することができる効果がある。
【0017】
また、腐食量が少ない伝熱管材料を選定して、蒸気発生器を製作することにより、原発1次系統の放射線量を低減し、被覆管に付着する腐食生成物を低減して、原子炉の安全性を画期的に向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の渦電流検査法を用いた伝熱管腐食量予測方法の一例の模式図。
図2】実施例において伝熱管材料のMRPC+ポイント信号のグラフを示した図。
図3】実施例において伝熱管試験片を表面粗さ分析器で分析した写真およびグラフ。
図4】実施例において伝熱管試験片をビッカース硬度測定器で測定した硬度のグラフ。
図5】実施例において評価されたMRPCノイズと伝熱管材料の腐食量との相関関係を示したグラフ。
図6】伝熱管のMRPCノイズと腐食量の相関関係を示すグラフに検量線を追加したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、
電動回転パンケーキコイル(MRPC)プローブを用いて伝熱管材料の渦電流検査を行なう工程(工程1)、
前記渦電流検査によって生成されたMRPC検査信号を評価する工程(工程2)、および
前記の評価によって得られた伝熱管材料のMRPC検査信号のノイズ値から伝熱管材料の腐食量を予測する工程(工程3)を含む、渦電流検査法を用いた伝熱管の腐食量予測方法を提供する。
【0020】
ここで、本発明の一例を図1に示しており、以下、本発明の渦電流検査法を用いた伝熱管腐食量予測方法を詳細に説明する。
一般的に、伝熱管材料の選定工程では、稼働中の渦電流検査の検出能に影響を与えるボビンプローブの信号対雑音比特性のみを要件として採用する。しかし、渦電流MRPCプローブ検査は、材料選定の段階では使用されず、稼働中にボビン信号によって欠陥が検出された場合に、欠陥の詳細な長さおよび深さの検査のために使用される。
【0021】
本発明では、従来とは異なり、材料選定の段階で渦電流MRPCプローブ検査を行なうことにより、前記の結果の値と、後続工程の原発1次系統模擬装置を用いた腐食量定量化を通じて、渦電流MRPCノイズと腐食量との相関関係を導出することができる。これにより、実際の原子力発電所の稼働中に発生する伝熱管材料の腐食量を予測することができ、これにより、腐食および腐食溶出特性に関する伝熱管の基準を要件とすることができる。
【0022】
ここで、前記腐食量の予測は、伝熱管の材料選定の段階で行なうことができる。従来、伝熱管の材料選定の段階で稼働中の渦電流検査の検出能に影響を与えるボビン信号対雑音比特性のみを要件として採用していたのとは異なり、本発明では、渦電流MRPC検査を伝熱管の材料選定の段階で実行し、それによって腐食量を予測することができる。
【0023】
本発明の伝熱管の腐食量予測方法において、工程1はMRPCプローブを用いて伝熱管材料の渦電流検査を行なう工程である。ここで、前記工程1の渦電流MRPC検査はMRPC+ポイントコイルまたはパンケーキコイルを用いることができ、特に+ポイント磁気バイアスデタッチャブル(Magnetic−Bias Detachable)プローブを用いることができるが、必ずしもこれに限定されるのではなく、同等機能のプローブを用いることができる。ここで、検査周波数は、100〜1000kHzの範囲の周波数条件を用いることができる。
【0024】
本発明の伝熱管の腐食量予測方法において、工程2は、前記渦電流検査によって生成されたMRPC検査信号を評価する工程である。前記工程1で得られたMRPC検査信号から、ノイズ信号の大きさを導出して、腐食量予測に用いることができる。
【0025】
MRPC検査信号からノイズ信号の大きさを導出する方法の一例として、欠陥の長さが9.52mm(0.375インチ)のEDMノッチ標準試験管の信号を用いて、渦電流MRPC検査信号を補正することができ、信号補正用標準試験管の厚み方向に100%深さの軸方向ノッチ欠陥に対して信号の位相を30度および信号振幅を20Vに調整した後、検査対象伝熱管の信号に対してロングストリップチャート、XYディスプレイおよびCスキャン信号を検査しながら、標準試験管の100%深さの軸方向ノッチ欠陥信号の振幅に対する相対的なノイズ信号の大きさを評価することができる。ここで、Cスキャン信号は、垂直成分と水平成分を区別してノイズ信号の大きさを評価することができる。
【0026】
本発明の伝熱管の腐食量予測方法において、工程3は、前記の評価によって得られた伝熱管材料のMRPC検査信号のノイズ値から伝熱管材料の腐食量を予測する工程である。工程3では、MRPC検査信号のノイズ値から、あらかじめ導出された相関関係を通じて、原子力発電所の稼働中に発生する伝熱管材料の腐食量を予測することができる。
【0027】
前記腐食量の予測は、既に測定されたMRPC検査信号のノイズ値と腐食量との間の相関関係を通じて行なうことができる。
具体的には、特定の伝熱管材料で測定したMRPC検査信号のノイズ値を、予め導出されたMRPC検査信号のノイズ値と腐食量との間の相関関係に代入して、前記特定の伝熱管材料の腐食量を予測することができる。
【0028】
前記MRPC検査信号のノイズ値と腐食量との間の相関関係は、
伝熱管材料に渦電流MRPC検査信号のノイズ値を測定する工程(工程a)、
原子力発電所模擬装置において、前記工程aの伝熱管材料の腐食量を測定する工程(工程b)、および
前記工程aで測定されたMRPC検査信号のノイズ値と前記工程bで測定された腐食量の相関関係を導出する工程(工程c)により導出され得る。
【0029】
本発明のMRPC検査信号のノイズ値と腐食量との間の相関関係を導出する方法において、工程aは伝熱管材料の渦電流MRPC検査信号のノイズ値を測定する工程である。
前記渦電流MRPC検査信号は、MRPC+ポイントコイルまたはパンケーキコイルを用いて測定され得、特に+ポイント磁気バイアスデタッチャブルプローブを用いて測定され得るが、必ずしもこれに限定されるのではなく、同等機能のプローブを用いることができる。ここで、検査周波数は、100〜1000kHzの範囲の周波数の条件を用いることができる。
【0030】
前記渦電流MRPC検査信号のノイズ値は、渦電流MRPC検査信号において比較した、信号補正用標準試験管の厚み方向に100%深さの軸方向ノッチ欠陥信号の振幅に対する相対的ノイズ信号の大きさであり得る。具体的には、MRPC検査信号からノイズ値を導出する方法の一例として、欠陥の長さが9.52mm(0.375インチ)のEDMノッチ標準試験管の信号を用いて、渦電流MRPC検査信号を補正することができ、信号補正用標準試験管の100%深さの軸方向ノッチ欠陥に対して信号の位相を30度および信号振幅を20Vに調整した後、検査対象伝熱管の信号に対してロングストリップチャート、XYディスプレイおよびCスキャン信号を検査しながら、標準試験管の100%深さの軸方向ノッチ欠陥信号の振幅に対する相対的ノイズ信号の大きさを評価することができる。ここで、Cスキャン信号は、垂直成分および水平成分を区別してノイズ信号の大きさを評価することができる。
【0031】
本発明のMRPC検査信号のノイズ値と腐食量との間の相関関係を導出する方法において、工程bは、原子力発電所模擬装置において、前記工程aの伝熱管材料の腐食量を定量化する工程である。
【0032】
実際の原子力発電所での伝熱管の腐食量を予測するために、工程bにおいて模擬装置で伝熱管材料の腐食量を定量化した後、後続の工程でMRPC検査信号のノイズ値とその相関関係を導出することができる。
【0033】
ここで、前記原子力発電所模擬装置は、1次系統または2次系統模擬装置であり得る。原子力発電所の健全性は、稼働中の系統の腐食損傷、機械的摩耗等により影響を受ける。特に、1次系統の表面積の約70%を占めており、1次系統と2次系統の両方に露出している蒸気発生器伝熱管は、原発の健全性確保のために非常に重要な構成要素である。
【0034】
本発明では、原子力発電所の伝熱管の腐食量を予測するために、1次系統の模擬装置を通じて伝熱管の腐食量を特定した後、MRPC測定値とこれを比較することができる。
本発明のMRPC検査信号のノイズ値と腐食量との間の相関関係を導出する方法において、工程cは、前記工程aで測定されたMRPC検査信号のノイズ値と前記工程bで測定された腐食量の相関関係を導出する工程である。
【0035】
前記工程cは、MRPC検査信号のノイズ値と腐食量を比較して、MRPC検査信号のノイズ値から腐食量が予測できるように、検量線を用いて相関関係を導出することができる。
【0036】
ここで、前記工程cで導出されたMRPC検査信号のノイズ値と1次系統の条件での伝熱管腐食量が、互いに比例する相関関係を有し得、一例として、MRPCノイズ値が増加するほど、腐食量もそれに近似的に比例して増加する。
【0037】
また、本発明は、
伝熱管材料の渦電流MRPC検査を行なう工程(工程1)、
前記工程1で得られたMRPC検査信号を評価する工程(工程2)、および
前記工程2で評価されたMRPC検査信号のノイズのサイズを用いて伝熱管材料を評価する工程(工程3)を含む伝熱管材料の選定方法を提供する。
【0038】
以下、本発明の伝熱管材料の選定方法を工程ごとに詳細に説明する。
本発明の伝熱管材料の選定方法において、工程1は、伝熱管材料に渦電流MRPC検査を行なう工程である。本発明では、材料選定の段階で、渦電流MRPC検査を行なうことにより、前記の結果値を用いて、実際の原子力発電所の稼働中に発生する伝熱管材料の腐食量を予測することができる。
【0039】
ここで、前記工程1の渦電流MRPC検査は、MRPC+ポイントコイルまたはパンケーキコイルを用いることができ、特に+ポイント磁気バイアスデタッチャブルプローブを用いることができるが、必ずしもこれに限定されるのではなく、同等機能のプローブを用いることができる。ここで、検査周波数は、100〜1000kHzの範囲の周波数条件を用いることができる。
【0040】
前記工程1の伝熱管材料は、Alloy690であり得る。
本発明の伝熱管材料の選定方法において、工程2は、前記工程1で得られたMRPC検査信号を評価する工程である。前記工程1で得られたMRPC検査信号から、ノイズ信号の大きさを導出して、後続の工程で、評価基準に適合した伝熱管材料を選定することができる。
【0041】
MRPC検査信号からノイズ信号の大きさを導出する方法の一例として、欠陥の長さが9.52mm(0.375インチ)のEDMノッチ標準試験管の信号を用いて、渦電流MRPC検査信号を補正することができ、信号補正用標準試験管の厚み方向に100%深さの軸方向ノッチ欠陥に対して信号位相を30度および信号振幅を20Vに調整した後、検査対象伝熱管の信号に対してロングストリップチャート、XYディスプレイおよびCスキャン信号を検査しながら、標準試験管の100%深さの軸方向ノッチ欠陥信号振幅に対する相対的なノイズ信号の大きさを評価することができる。ここで、Cスキャン信号は、垂直成分と水平成分を区別してノイズ信号の大きさを評価することができる。
【0042】
本発明の伝熱管材料の選定方法において、工程3は、前記工程2で評価されたMRPC検査信号のノイズサイズを用いて伝熱管材料を評価する工程である。工程3では、MRPC検査信号のノイズ値から、あらかじめ導出された相関関係を用いて、原子力発電所の稼働中に発生する伝熱管材料の腐食量を予測することができ、これにより、伝熱管の材料選定段階での評価基準に適合する伝熱管を選定することができる。
【0043】
以下、実験例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし、下記の実験例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の内容が下記の実験例により限定されるものではない。
<実験例>MRPCノイズ値と腐食量の相関関係からの、特定の伝熱管の腐食量予測
MRPCノイズ値と腐食量の相関関係から、特定の伝熱管の腐食量を予測するために、下記のような実験を行った。
【0044】
工程1:少なくとも50cmの長さを有するAlloy690の常用伝熱管材料に対して、P115Aアンシールド一次テストコイル、PP11A+ポイントコイル、およびSP080Bシールド高周波数パンケーキコイルで構成されたZETEC MRPC+ポイント磁気バイアスデタッチャブルプローブを用いてMRPC検査を行った。ここで、検査周波数は、+ポイントコイルの欠陥検出周波数の300kHzで比較して収集した。信号の収集は、ZETEC Eddynet AN分析装置とMIZ−70データ獲得ソフトウェアを用いて行った。
【0045】
工程2:前記工程1で検査された3つの伝熱管試験片に対するMRPC信号は、欠陥の長さが9.52mm(0.375インチ)である信号補正用標準試験管(EDM Notch Standard Tube)を通じて補正した。ここで、信号補正用標準試験管の厚み方向に100%深さの軸方向ノッチ欠陥に対して信号位相を30度および信号振幅を20Vに調整して、検査対象の伝熱管のMRPC信号に対してロングストリップチャート、XYディスプレイおよびCスキャン信号を検査しながら、標準試験管の100%欠陥信号の振幅に対する相対的なノイズの大きさを測定した。
【0046】
その後、検査した伝熱管試験片を50mmの長さに切断して、アセトン、メタノール、エタノール、超純水で各15分ずつ超音波洗浄した後、窒素ガスで乾燥し、70℃のオーブンで15分間、水分を除去した。
【0047】
工程3:原発1次系統模擬ループを通じて前記工程2のそれぞれの伝熱管試験片について重量を測定した後、Li 2ppm、B 1200ppmを含む模擬1次系統水内で330℃、15MPa(150bar)の条件下で溶存水素は35cc/kg HO、溶存酸素は10ppb以下で腐食および腐食溶出試験を行った。また、腐食および腐食溶出試験後の表面腐食生成物に対して化学的デスケーリング(descaling)の方法を用いて腐食量を定量化した。また、これらの試験の結果を通じて工程2で評価されたMRPCノイズ値と伝熱管の高温/高圧1次系統条件での腐食量との定量化された相関関係を導出した。
【0048】
工程4:前記工程3で導出された検量線を通じて、特定のMRPCノイズを有する場合の伝熱管の腐食量を予測した。
以下、上記の実験例で実施された実験の結果を詳細に説明する。
【0049】
上記実験例の工程1の伝熱管試験片3個に対するMRPCプローブで測定したノイズ信号のグラフを図2に示した。また、伝熱管試験片3個に対する表面特性を観察するために、前記工程2で製造された試験片を横1cm、縦1cmのサイズに切断して、アセトン、メタノール、エタノール、超純水で各15分ずつ超音波洗浄した後、窒素ガスで乾燥し、70℃のオーブンで15分間、水分を除去して、表面粗さ分析器(surface profiler)で表面粗さと波形を分析してその結果を図3に示し、ビッカース硬度計を用いて硬度を測定した後、その結果を図4に示した。さらに、前記実験の工程3での腐食や溶出試験後、表面の腐食生成物に対して化学的デスケーリング方法を用いて腐食量を定量化した結果を図5に示した。
【0050】
図2に示すように、前記工程2のMRPC特性を分析した結果、MRPCノイズ値が0.04、0.06、0.18Vと大きくなるほど、軸方向に多数の隆起(ridge)と谷(valley)が現れることが分かる。
【0051】
図3は、図2のマクロの表面状態の特性とは異なり、軸方向に不規則なスクラッチが形成され、MRPCノイズ値が0.04、0.06、0.18Vである材料において、表面粗さの場合、200nmから240nmの値を示し、表面の波形は6.2μmから6.7μm程度の範囲で測定されたことが分かる。つまり、表面粗さと表面の波形は、3つの試験片すべてが類似の値を示した。
【0052】
図4に示すように、表面微細硬度は約170Hvであり、MRPCノイズ値の影響をあまり受けることなく、すべて類似の値を有することが分かる。
結果的に、MRPCノイズ値が0.04、0.06、0.18Vと大きくなるほど、多数の隆起と谷が現れることが分かる。
【0053】
図5は、腐食量を、単位面積、単位時間当たりの腐食率で評価して示したものであり、MRPCノイズ値が0.04Vの時、腐食率は0.03mg/mh、0.06Vの時は0.065mg/mh、0.18Vの時は、0.16mg/mhの値を示すことが分かる。つまり、MRPCノイズ値に近似的に比例して腐食率が増加する相関関係を有することが分かる。
【0054】
図6は、多様な実験例を通じて得られた伝熱管のMRPCノイズと伝熱管の腐食量との相関関係を示した検量線のグラフである。図6に示すように、MRPCノイズ値に近似比例して腐食率が増加する相関関係を有することが分かる。したがって、渦電流検査法MRPCプローブを用いて、特定の伝熱管のノイズ値を測定すると、図6のような検量線を通じて、特定の伝熱管の腐食量を材料選定の段階から予測することができるようになる。
【0055】
これに対する実施例として、図6で導出された相関関係を用いて、特定の伝熱管材料の腐食量を予測するために、Alloy690の特定の伝熱管材料についてMRPC検査を行った。
【0056】
ここで、この特定の伝熱管材料のMRPC検査信号のノイズ値は0.10Vと測定され、前記実験例で得られた図6の相関曲線を通じて、この特定の伝熱管材料の腐食率が0.0881mg/mhになると予測することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6