(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077535
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ペーパーウェブ材料の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B31F 1/32 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
B31F1/32
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-518075(P2014-518075)
(86)(22)【出願日】2012年6月18日
(65)【公表番号】特表2014-522752(P2014-522752A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】IT2012000186
(87)【国際公開番号】WO2013005240
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2015年4月9日
(31)【優先権主張番号】FI2011A000135
(32)【優先日】2011年7月7日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】506180062
【氏名又は名称】フューチュラ エス ピー エー
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】ジウルラーニ、ジオバッチーノ
(72)【発明者】
【氏名】ペトリ,ステファノ
【審査官】
家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公開第02376436(GB,A)
【文献】
特表2009−528928(JP,A)
【文献】
特表2002−505207(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0092700(US,A1)
【文献】
特表2010−535111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31F1/00−7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーパーウェブの製造装置であって:
第1プライ4をエンボス加工するための第1エンボスシリンダー2及び対応するカウンタシリンダー3を有する第1エンボスユニット1と;
第2ペーパープライ8をエンボス加工するための第2エンボスシリンダー6及び対応するカウンタシリンダー7を有する第2エンボスユニット5と;
それぞれのレリーフR8が現れてくる前記第1エンボスシリンダー2に対向する第2プライ8の側面に所定量の糊を供給するための前記第1エンボスシリンダー2と協働する糊付けユニットCと;
前記装置から排出されるプライ4,8を互いに接合するための手段と;
を有し、
一旦エンボス加工されると、前記プライ4,8は一連の反対方向に向いているレリーフR4,R8を有しておりかつ前記エンボスユニット1,5は前記レリーフが互いに入れ子構造となるように同期しており、
前記装置が、前記第2エンボスユニット5によって前もって形成されレリーフR8について反対向きの一連のさらなるレリーフRCを前記第2プライ8面に形成する加圧ロール12をさらに有し、各さらなるレリーフRCと前記第2エンボスユニットによって形成された対応するレリーフR8との間の段差Sを当該同一の第2プライ8面に作成し、前記加圧ロール12は、前記第1エンボスシリンダー2に平行であることを特徴とするペーパーウェブの製造装置。
【請求項2】
前記加圧ロール12がゴムロールであり、前記糊付けユニットの上流の前記第1エンボスシリンダー2に近接して位置することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記装置から排出される前記プライを接合するための前記手段が接合ロール11を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
第1及び第2プライ4,8はそれぞれ独立してエンボス加工されて一連の相対向しているレリーフR4,R8がそれらの各々の面に形成され、ついで当該レリーフを互いに入れ子構造としかつ糊付けすることによってそれらは接合されるようにしたペーパーウェブの製造方法であって、
前記第1及び第2プライ4,8は第1エンボスユニット1及び第2エンボスユニット5を用いて独立してエンボス加工され、
該方法は、前記第2エンボスプライ8面における一連のさらなるレリーフRCの形成を含み、該さらなるレリーフは該同一の第2プライ8面に前もって形成されたレリーフR8の反対方向に配置されており、該同一の第2プライ8面に段差Sを設け、該段差SはさらなるレリーフRC及び第2エンボスユニットによって形成された対応するレリーフR8の間に形成され、前記さらなるレリーフRCは加圧ロール12により、前記プライのさらなるエンボス加工が実現され、該さらなるレリーフRCに糊が供給されかつ該さらなるレリーフRCに供給される糊が該第1及び第2プライ4,8を糊付けするために使用される糊と同一の糊であることを特徴とする方法。
【請求項5】
前記糊が着色していることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
請求項1記載の装置を用いることによって実施されることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記さらなるレリーフRCの高さkが0.25mmと0.34mmの間であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーパーウェブ材料の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーパーウェブ材料の製造技術としては2枚以上のプライをエンボス加工し該複数枚のプライを接着によって接合することが知られている。
【0003】
当該複数のプライの厚さを明らかに増大させる、エンボス加工は、所定のパターンに配列されたレリーフ及び/又は凹部を設けたエンボスシリンダーと対応する平滑なカウンタシリンダーとを有するエンボス加工ユニットを各プライが通過することによって行われる。該エンボスシリンダーと平滑カウンタシリンダーとの間を通過するペーパープライは該エンボスシリンダーのレリーフ、つまり凹部に対応する構造をとることによって変形せしめられる。言い換えれば、一旦エンボス加工されたプライは規則的な周期でエンボスシリンダーの特徴に依存する高さ、幅及び形状の一連のレリーフを示す。
【0004】
前記エンボス加工されたプライは互いに種々な態様で配設されることができる。特に、他のプライのレリーフに内部的に配置されたプライのレリーフを有する入れ子構造が実現可能となる。この目的のために、これらのプライは互いに同期する二つのエンボスユニットによってエンボス加工される。
【0005】
該エンボス加工されたプライの接着を実現するために、第1のエンボス加工されたプライに糊付けするサイジングユニットが使用される。この目的のために使用される糊に美感を付与するために着色することもできる。
【0006】
前記プライの最終的な接合は、前記第1のエンボスシリンダー及び一般的に「接合ロール」として知られる加圧ロールによって部分的に形成されるニップを介して、最後の第3プライとともに、それらを通過させることによって行われる。その接着結合は糊が塗布された領域、即ちサイジングユニットによって塗布された糊の層と接触する領域で行われる。これらの領域は入れ子構造のプライ間の接触点に対応している。
【0007】
添付図面の
図1に模式的に示されるように、この既知の技術に起因する不都合は、糊Gが入れ子構造のプライV1,V2の接触点の両側に伸びて一種のデバリングを形成する。このデバリングは、特に着色された糊が美感上の観点から使用される場合に、最終製品の外観を実質的に変化させる可能性がある。後者は、
図1の方式においては第3プライV3としても示されているが、全体として記号「P」によって表示されている。
【0008】
エンボスされかつ共に糊付けされる多数のプライによって構成されるペーパーウェブ材料の製造装置及び製造方法の例は特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】GB2376436
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主たる目的は上記した問題点を解消又は大きく減少させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの効果は、独立クレームに示された特徴を有する装置及び操作方法を実現する発想を採用することによって本発明によって達成された。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、ペーパーウェブを一緒に接合するために使用される糊の塗布は非常に精密になり、それによって市場の要求に一層答える最終製品を得ることが可能となる。さらに、本発明の装置及び方法は、製造サイクルの劇的な変化を含んでいないものであり、これは経済的及び技術的観点の両方からさらなる利点を構成するものである。
【0013】
本発明のこれらの特徴及び利点並びにさらなる特徴及び利点は、本発明の実際的な例示として与えられるが限定する意味で考慮されるべきではない以下の説明を、添付の図面と併せて読めば、当業者によってよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】公知の多数―プライペーパーウェブの断面概略図である。
【
図2】本発明による多数―プライペーパーウェブの断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の本質的な構造に絞って、添付の図面の
図2及び3を参照すると、本発明装置は、第1のエンボスシリンダー2及び対応する第1のカウンタシリンダー3を備えた第1のエンボスユニットを有し、これによって、第1プライ4のエンボス加工が実現する。さらに、当該装置は、第2のエンボスシリンダー6及び第2のカウンタシリンダー7を備えた第2のエンボスユニットを有し、これによって、第2プライ8のエンボス加工が実現する。
【0016】
前記プライ4及び8にこのように形成されたエンボス加工は、それらの各々の面における一連の凹部及び対応するレリーフR4,R8の形成を含むものである。言い換えれば、当該プライ4及び8面にそのように形成されたエンボス加工は、凹部と交互に位置する連続する対応するレリーフR4,R8の形成を決定する。各レリーフR4,R8は3つの実質的に直線状の側部を有する概略台形状の断面を示し、当該側部は、添付図面に示される例においては、側部B4,C4,D4及びB8,C8,D8であり、即ち、左側部B4,B8、上側部C4,C8及び右側部D4,D8である。
【0017】
当該エンボスユニット1,5は互いに同期しており、その結果、第2プライ8のレリーフR8は第1プライ4のレリーフR4内に入れ子状態となる。さらに、言い換えれば、エンボスユニット1,5は「入れ子」型のエンボス加工を行う。
【0018】
第1エンボスシリンダー2は糊付けユニットと協働している。添付図面に示した例では、該糊付けユニットは液状糊を収容する容器3C,転写ロール2C及び塗布ロール1Cを有するタイプのものである。該容器3Cと塗布ロール1Cの間に位置しかつそれ自身の長手方向軸の周りを回転する該転写ロール2Cは該容器3Cから糊を取り出しそして該塗布ロール1Cの表面に接触によって田当該糊を転写する。該糊付けユニットは第1エンボスシリンダー2から所定距離離れて配設されており、その結果、その表面に位置する糊は、以下に説明するように、第2プライ8の紙を湿潤せしめる。
【0019】
図3に示した例において、該装置は第3エンボスユニット9を有し、その装置では第3プライ10のマイクローエンボス加工が行われる。該第3プライはスムースなプライでもあり、つまり、マイクローエンボス加工されていないか、又は他の二つのプライと同期する第3エンボス加工が存在する場合もある。
【0020】
該装置は「接合ロール」11をさらに有し、その接合ロールは、プライ4,8,10によって走行する方向からみて糊付けユニットCの下流において第1エンボスシリンダー2に近接して位置している。
【0021】
前記エンボスシリンダー及び関連するカウンタシリンダー、前記糊付けユニットのロール及び接合ロールはそれらの長手方向軸が互いに平行状態で配置されている。
【0022】
前記エンボスユニット1,5、前記「接合ロール」11及び前記糊付けユニット、並びに入れ子構造エンボス加工の実施様式は当業者にとってはよく知られており、さらなる詳細な説明は省略する。特に、前記エンボスシリンダー2及び6は、その表面に所定のエンボスパターンに従って形成された一連のレリーフ及び凹部形状を有している。
【0023】
本発明においては、前記シリンダーの軸に平行な長手方向軸、カウンタシリンダー及び上記したロールを有する、加圧ゴムロール12は、プライ4,8の供給方向A4,A8に関して糊付けユニットCの上流において第1エンボスシリンダー2に近接して位置している。
【0024】
前記第2エンボス加工されたプライ8は、第1エンボスシリンダーによってそれぞれのレリーフR4,R8が互いに入れ子構造となるような態様で前記第1エンボス加工されたプライ4と対となっている。
【0025】
実施に際しては、前もって互いに独立にエンボス加工された前記プライ4,8は入れ子構造を形成するように組み合わされる。この入れ子構造は、前記第2プライ8の各レリーフR8が第1プライ4のレリーフR4の3つの側部B4、C4、D4の一つに内部的かつ平行に位置する対応する3つの側部B8、C8、D8のそれぞれを有するようになっている。換言すると、添付図面を参照すると、前記レリーフR4、R8の側部B4、B8、C4、C8及びD4、D8は、該レリーフR8が該レリーフR4の内側になるように、実質的に互いに平行に2対2で対応している。
【0026】
特に、前記ロール12は、前記エンボス加工されたプライ8の一連のさらなるレリーフRCの形成を行う第1エンボスシリンダー2の表面に2つの第1エンボスされたプライ4及び第2エンボスされたプライ8を有している。これらのさらなるレリーフRCは前記第1プライ4に前もって形成されたレリーフR4と同じ方向に向けられており、換言すれば、前記第2プライ8の事前のエンボス加工によって形成されたレリーフR8とは反対方向に向かられている。
【0027】
当該工程のこの段階において、前記プライ8に形成された当該さらなるレリーフRCは、第1エンボスシリンダー2の外側方向に向けられており、一方同一のプライ8に前もって形成されたレリーフR8は第1エンボスシリンダー2に向かって設けられている。さらに、該第2プライ8は第1プライ4の外側になっている。従って、該さらなるレリーフRCのすべてが、該プライ4、8が該糊付けユニットCを通過する際に塗布ロール1Cに面している。
【0028】
本発明において、既に入れ子構造とされたプライ4,8に、該ロール12の助けによって実現されたさらなるエンボス加工によって、さらなるレリーフRCが第2プライ8に形成される。実施に際しては、該さらなるエンボス加工によって、当該同一のプライ8において、段差Sが各さらなるレリーフRC及び対応するレリーフR8の間に形成される。
【0029】
図2の態様において、該レリーフR8は上方に向いており、一方該ロール12によって加えられた圧力によって形成されたレリーフRC及びレリーフR4は下方に向いている。
【0030】
本発明においては、一対のプライ4,8の外側プライ8に対して糊が供給される点は従来のエンボス加工システムと同様であるが、外側のエンボス加工されたプライ8の追加的なレリーフRCに対応する位置にのみ糊は供給される点で異なる。換言すれば、ロール12によって上記したように処理された一対のプライ4,8が前記糊付けユニットの塗布ロール1Cに近接して通過する際、当該糊は、上述したように、その段階で面が塗布ロール1Cに面している状態の前記第2のエンボス加工されたプライ8のさらなるレリーフRCに前記塗布ロール1Cから転写される。
【0031】
その結果、より精密な糊付けが行われる。何故ならば、糊は当該さらなるレリーフRCの外側にのみ塗布され、従って当該レリーフの横方向への糊が塗布されることが排除されるからである。このために、特に糊が着色されている場合に、第1プライ4及び/又は第2プライ8面に事前に刻印又は印刷されている図柄又は装飾部はそのまま残され、即ち、いかなる場合でも所望の装飾的図柄に一致する。さらに、糊付けをより少ない領域で行うために、最終製品はより可撓性を有し、つまりより少ない剛性を有する。
【0032】
図3に示すように、前記プライ4,8の最終的な接着結合は、当該プライに対してはマイクローエンボス加工ユニット13からの第3プライ10が最終的に追加されるかも知れないが、前記装置からのプライがその間を通過するように配置されている、第1エンボスシリンダー2及び「接合ロール」11によって画定されたニップの位置において行われる。
図2及び
図3において、上記のように接合されかつ処理されたプライ4,8,10からなる最終製品は符号14で示されている。
図2において、符号CLはプライ8に塗布された糊を示す。
図3において、矢印A10,A14はプライ4,8,10及び最終製品14の進行方向を示す。
【0033】
図2に示された寸法h及びkは、レリーフR8の高さ及び第2プライ8のさらなるレリーフRCの高さ、即ち、段差Sの高さをそれぞれ示すものであり、例えば、次の式のようになる:h=0.9+1.2mm、k=0.25+0.34mm。
【0034】
添付図面から明らかなように、二つの段差Sは同一のさらなるレリーフRCを横方向に画定する。実際上は、そのような一対の段差Sは、二つの連続するレリーフR8間に位置する凹部のより低い底部をプライ10の方向、つまり、ロール1Cの方向に張り出させ、そして同時にその底部の表面を減少させる。それによって、さらに精密な糊付けが完成される。
【0035】
添付図面は、本発明の一つの実施例としてのみ示され、かつ実施例の形状及び配置に関して、本発明の着想の範囲から逸脱することなく変更可能なものである。本願特許請求の範囲における符号は明細書の記載及び図面に関連して特許請求の範囲の読み方を容易とするためのものであり、特許請求の範囲に記載された保護範囲を制限するものではない。
【符号の説明】
【0036】
1:第1エンボスユニット、1C:塗布ロール、2:第1のエンボスシリンダー、2C:転写ロール,3:第1のカウンタシリンダー、3C:容器、4:第1プライ、5:第2エンボスユニット、6:第2のエンボスシリンダー、7:第2のカウンタシリンダー、8:第2プライ、9:第3エンボスユニット、10:第3プライ、11:接合ロール、12:加圧ゴムロール、13:マイクローエンボス加工ユニット、14:最終製品、A4,A8:供給方向、A10,A14:進行方向、B4,B8:左側部、C:糊付けユニット、C4,C8:上側部、D4,D8:右側部、G:糊、R4,R8,RC:レリーフ、S:段差、V1,V2:プライ、V3:第3プライ。