(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理部(12)は、さらに、前記環境温度センサ(15)から温度信号を受信し、前記センサ信号又は前記基準値に対し、前記温度信号を考慮して温度補正を適用するように適合されていることを特徴とする請求項2に記載の検出装置(10)。
前記配列を構成する各赤外放射感知素子(11)は、前記監視エリア(8)における対応する副領域(17)の内部から受信する赤外放射の量に関連するセンサ信号を生成するように適合され、
前記出力手段は、前記複数のコントラスト値のうちの前記条件を満たすコントラスト値の個数と、前記個数から導き出される属性と、の一方又は両方を出力するように適合されていることを特徴とする請求項4に記載の検出装置(10)。
さらに、前記少なくとも1つの赤外放射感知素子(11)と前記処理部(12)と前記出力手段(13)とのうちの全部又は一部の間で情報を伝送するための無線通信モジュールを1つ以上備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の検出装置(10)。
【背景技術】
【0002】
存在検出又は占有検出は、対象の物体(例えば人)が対象の領域(例えば監視エリア)に存在すると自動的に動作を起こすシステムにおいて用いられる。人が前に立っていればドア(例えばスライドドア)が自動的に開く、人が部屋に入るか人が照明の近くにいるときに照明が点灯し、誰も部屋にいないときに照明が消灯する、侵入が検出されたときにアラームが起動する等の例が挙げられる。
【0003】
存在検出には従来いくつかの方法が知られている。例えば、人や車の存在を検出するために、感圧センサ又は誘導ループが床内に実装される。熱を生成する物体(例えば人及び/又はペットのような動物)に対する検出には、これらの物体から放出される赤外放射を検出するためのセンサが含まれ得る。赤外検出は、コンパクトで手頃な技術を用いて実行され、他の技術に比べて利点を有する。ここで当該他の技術とは例えば、視覚的イメージ認識、音響センサ、又は超音波検出が挙げられる。また、上記の利点とは、人のような温血生物は特徴的なスペクトル分布(例えば人であれば9.5μm付近にピークを有する分布)及び相当なパワー(例えば人であれば100W)を有する熱放射を発するというものである。赤外放射は、これらの温血生物から放出されるので、検出には、外部照明が不要である。さらに、不透明又は可視スペクトルにおいて限られた光のみを透過するような多くの物質は、赤外放射に対しては透明である。
【0004】
例として、従来技術での存在又は占有検出においては、監視エリアにおいて熱を出し動く物体を検出するために、受動的赤外(passive infrared(PIR))センサが通常用いられる。そのようなPIRセンサは、赤外エネルギー(例えば熱放射)を電気的信号(例えば電圧)に変換する。この例における用語「受動的」は、PIRセンサが赤外ビームを放出せず、入射する赤外放射を単に受動的に受光することを意味している。人を検出するPIRセンサは、10μm付近(例えば、人により放出される赤外放射のピーク波長である9.5μmの近く)に調整された波長感度ピークを有する。占有検出のためのこのようなセンサ装置が、US4,318,089に開示されている。この文献では、従来技術に係る存在検出のためのPIRセンサ装置は、半導体装置のための3−ピンメタルヘッダーパッケージ(three-pin metal header package)(例えばTO−5パッケージ)のような筐体内に、互いに離間した一対の赤外放射感知素子を備えている。筐体は、透明な窓を備える構成とし、当該窓を通して筐体内に透過する放射を適切な波長帯域(例えば、5μmから15μmまで、又は、7μmから14μmまで)に制限してもよい。このような透明な窓は、例えば、ゲルマニウム、シリコン、又は、ポリエチレンのような適切な素材から作られ得る。
【0005】
典型的なPIRセンサ装置において、一対の赤外放射感知素子は、例えば、逆位相直列接続(in anti-phase series)(例えば、双方の素子の同等の極を電気的に接続する)のように、電圧をバッキングする配置(voltage bucking configuration)で接続された焦電素子である。焦電素子は、反応差を有する。温度の変化は素子上の一時的な電圧の変化を含むが、この変化は一定温度においてリーク電流のせいで消散する。しかしながら、2つの素子からの差分読み出し方式(differential readout arrangement)を用いれば、振動、環境の温度変化、又は広視野の照明(例えば日光)によって引き起こされた信号をさらにキャンセルすることができる。焦電素子を有する筐体は、当該一対の感応素子からの電圧を読み出すために、感度のよい電界効果トランジスター(FET)をさらに備えてもよい。逆位相直列接続された当該2つの感応素子は、例えば、一端が接地され、他端がFETのゲートに接続され、プルダウン抵抗に接続されていてもよい。
【0006】
従来技術に係るセンサ装置は、熱を生成する物体(例えば人)から放出された赤外放射を感応素子に投影するために、典型的には、フレネルレンズ又は多面的放物面鏡のようなフォーカス素子をさらに備えていてもよい。このフォーカス素子は、監視エリアを横切って(例えば検出装置の視野を横切って)移動する熱生成物体によって発せられた放射が交互に感応素子に投影されるように(例えば、この放射が集中する素子が繰り返し切り替えられるように)設計される。これにより、FETの出力として、交流電流が生成される。また、この交流電流はさらに増幅されてもよい。
【0007】
逆位相直列接続のように電圧をバッキングする配置(voltage bucking configuration)で素子を結合することの利点は、センサ装置が、環境温度に無感応となることである。しかしながら、感応素子は、互いに同じ特性を有することはないので、オフセットが生じ得る。このオフセットは、平均化ローパスフィルタに基づいた浮動参照レベル(floating reference level)を生成することによってシステムから取り除かなければならない。
【0008】
この従来技術に係る装置のデジタル的態様においては、アナログデジタル変換器(ADC)によってサンプリングされる前に、さらなるフィルタリング(例えば、エリアシングを低減させるフィルタリング)によって信号が調整される。なお、サンプリングは、通常、例えば10Hz以下(例えば5Hz)の低サンプリングレートによって行われる。サンプリングレートは、低い信号対ノイズ比(SNR)のために典型的にはかなり低い。例示的なSNRは大凡2である。デジタル領域において、フィルタされたシグナルのピークが検出され、当該ピークがあるレベルに達していれば、現時点でのイベントのトリガとなる。例えば、ピークは、照明を点灯させること、ドアを開くこと、照明を消灯させるためのタイマをリスタートさせること、又は、予め設定された遅延時間(通常はユーザが設定可能)の後ドアを閉じること等のトリガとなり得る。
【0009】
同じ又は同様の機能を実装する同様のアナログ回路も従来知られている。アナログ装置及びデジタル装置の双方において、タイマ遅延及び装置の感度は、設定を変更することによって操作可能である。
【0010】
しかしながら、このようなPIRに基づく検出方法は、設計に内在する差動的振る舞いによって引き起こされる欠点を有する。このような装置は、監視エリア内に移動する物体が検出されたときにのみトリガされる。例えば、人々が照明のスイッチのためのPIRセンサ装置内のタイマが許容するよりも長い時間動かずに滞在した場合、それらの人々は、照明が消灯されて驚くことになる。
【0011】
米国特許US4,849,737において、他のPIRに基づく検出器が開示されている。この従来技術に係るセンサは、例えば、PIRに基づく検出器を回転するディスク上に配置する等によって、機械的に空間をスキャンするように適合されている。したがって、周囲に対して実質的に動かずに滞在している人も、この従来技術にかかるPIR検出器によって観測可能である。なぜなら、センサの動きが人と検出器との間の相対的な動きを確立させるからである。しかしながら、このようなPIR検出器の検出効率は、依然として検出器と検出される人との相対的な速さに依存している。
【0012】
さらに、従来知られているPIR装置は、例えば、検出される物体の動きの方向(例えば人の歩く方向)を示すために注意して設計されたフレネルレンズのようにしばしば複雑な設計を必要とする。それゆえ、人を検出するためにPIRセンサを用いる自動スライドドアは、典型的には廊下の側壁には配置されない。これは、通り過ぎる人々によって多数の誤報がトリガされるためである。
【0013】
さらに、管理エリア内において検出された物体の数(例えば、ある場所において何人の人が存在するのか)を示すことのできるPIR装置を設計することは、さらなる複雑化をもたらす。存在する人の数を原始的に示すこと(例えば、一人なのか複数人なのかを区別すること)は、例えば、人に特有のライフスタイルを効果的にモニターする装置(例えば、より多くの老人が同じ生活空間をシェアするような状況における老人介護の場面への適用)においては有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の実施形態の目的は、複数の熱放射体の存在を良好に検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的は、本発明に係る方法及び装置によって達成される。
【0016】
第1の態様において、本発明は、監視エリアにおける物体の存在を検出する検出装置を提供する。当該装置は、前記監視エリアの内部から受信する赤外放射の量に関連するセンサ信号を生成するように適合された少なくとも1つの赤外放射感知素子と、前記センサ信号を取得し、取得した前記センサ信号を基準値と比較することでコントラスト値を生成し、前記コントラスト値に関する条件を評価することで前記物体の前記存在を決定するように適合された処理部と、決定された前記物体の前記存在と前記存在から導き出される属性との一方又は両方を出力する出力手段と、を備えている。本発明の実施形態では、前記処理部が、さらに、前記コントラスト値に負のフィードバックが適用されるように前記基準値を調整するように適合されている。
【0017】
本発明の実施形態の利点は、本発明が提供する装置が、放射熱を放射する複数の物体を、当該複数の物体が静止している時にも動いている時にも検出できることにある。
【0018】
本発明の実施形態の利点は、本発明が提供する装置が、熱を発する静止物体(例えば、ヒータ)を検知しない一方で、熱を発する複数の移動物体を、当該移動物体が一時的に静止した状態の時にも検知し続けるようになっていることにある。
【0019】
本発明の実施形態の利点は、検出システムにおいて、広範囲にわたる再設計を必要とすることなく、従来のPIRベースの検出装置を本発明が提供する装置に置き換えることができることにある。
【0020】
本発明の実施形態の利点は、本発明が提供する装置がフレネルレンズを必要としないことにある。
【0021】
本発明の実施形態の利点は、本発明が提供する装置がタイマを必要としないことにある。
【0022】
本発明の実施形態の利点は、本発明が提供する装置が、ユーザによる制御が可能なパラメータ(例えば、感度やタイマの設定値)の調整を必要とせずに様々な設定の下で使用可能なことにある。
【0023】
本発明の実施形態の利点は、本発明が提供する装置が、部品を少ししか必要とせずコンパクト化が可能なことにある。
【0024】
本発明の実施形態では、前記処理部が、前記センサ信号から基準値を減算することによってコントラスト値を生成し、前記コントラスト値が予め決められた第1レベルを超える場合に前記物体が存在すると判定し、前記コントラスト値が予め決められた第2レベル未満である場合に、前記コントラスト値の所定割合を前記基準値に加算することによって、前記コントラスト値に負のフィードバックが適用されるような前記基準値の調整を行うように適合されていてもよい。
【0025】
本発明の実施形態の利点は、本発明が提供する装置が、障害物(例えば、ヒータや窓)に強い一方で、ターゲットとなる熱放射体(例えば、人)を検知し続けることにある。
【0026】
本発明の実施形態の利点は、本発明が提供する装置が、そのような障害物の存在に対し、動的かつ効率的に(例えば、人のようなターゲットとなる熱放射体が存在しない状態でのキャリブレーションを必要とすることなく)適応することにある。
【0027】
本発明の実施形態に係る検出装置では、少なくとも1つの赤外放射感知素子が少なくとも1つの熱電対列センサを備えていてもよい。
【0028】
本発明の実施形態の利点は、本発明が提供する装置が、放射熱を発する静止物体と放射熱を発する移動物体との両方を検知できることにある。
【0029】
本発明の実施形態に係る検出装置は、さらに環境温度センサを備えていてもよい。本発明の実施形態に係る検出装置では、前記処理部が、さらに、前記環境温度センサから温度信号を受信し、前記センサ信号又は前記基準値に対し、前記温度信号を考慮した温度補正を適用するように適合されていてもよい。
【0030】
本発明の実施形態の利点は、本発明が提供する装置が、環境条件にほとんど左右されない少ないパラメータ(例えば、特定の監視エリアで利用するためのチューニングを必要としないパラメータ)によって制御できることにある。
【0031】
本発明の実施形態に係る検出装置では、前記少なくとも1つの赤外放射感知素子が複数の赤外放射感知素子の配列であり、前記処理部は、複数のセンサ信号の各々を、前記配列における当該センサ信号に対応する赤外放射感知素子から受信し、前記複数のセンサ信号と複数の基準値とを素子毎に比較することで複数のコントラスト値を規定し、前記複数のコントラスト値に関する前記条件を評価することで前記物体の前記存在を決定し、前記複数のコントラスト値に負のフィードバックが適用されるように前記複数の基準値を素子毎に調整するように適合されていてもよい。本発明のそのような実施形態の利点は、本発明が提供する装置が、監視エリア内に検出される物体の位置を特定できることにある。
【0032】
本発明の実施形態の利点は、本発明が提供する装置が、(例えば、スライド式のドアを開く制御システムでの使用時における効率性を改善するために)監視エリア内の1つ又は複数の物体が動く方向を特定できることにある。
【0033】
本発明の実施形態に係る検出装置では、前記配列を構成する各赤外放射感知素子は、前記監視エリアにおける対応する副領域の内部から受信する赤外放射の量に関連するセンサ信号を生成するように適合され、前記出力手段は、前記複数のコントラスト値のうちの前記条件を満たすコントラスト値の個数と、前記個数から導き出される属性と、の一方又は両方を出力するように適合されていてもよい。本発明のそのような実施形態の利点は、本発明が提供する装置が、例えば、部屋の中に居る人の数をカウントできることにある。
【0034】
本発明の実施形態に係る検出装置は、さらに、前記少なくとも1つの赤外放射感知素子と前記処理部と前記出力手段とのうちの全部又は一部の間で情報を伝送するための無線通信モジュールを1つ以上備えていてもよい。本発明の実施形態の利点は、本発明が提供する装置が、簡単に(即ち、ほとんど有線接続を必要とすることなく)設置できる点にある。
【0035】
第2の態様において、本発明は、監視エリアにおける物体の存在を検出する検出方法を提供する。前記検出方法は、前記監視エリアの内部から受信する赤外放射の量に関連する少なくとも1つのセンサ信号値を取得する取得ステップと、前記少なくとも1つのセンサ信号値を少なくとも1つの基準値と比較することで少なくとも1つのコントラスト値を生成する生成ステップと、前記少なくとも1つのコントラスト値に関する条件を評価することで前記物体の前記存在を決定する決定ステップと、を含んでいる。本発明の実施形態に係る前記検出方法は、さらに、前記少なくとも1つのコントラスト値に負のフィードバックが適用されるように前記少なくとも1つの基準値を調整する調整ステップを含んでいる。
【0036】
本発明の実施形態に係る検出方法では、コントラスト値を規定する前記規定ステップが、前記センサ信号値から前記基準値を減算するステップを含んでいてもよく、前記物体の前記存在を決定する決定ステップは、前記コントラスト値が予め決められた第1レベルを超えているかを評価するステップを含んでいてもよい。前記基準値を調整する前記調整ステップは、前記コントラスト値の所定割合を前記基準値に加算するステップを含んでいてもよい。前記基準値を調整する前記調整ステップは、前記コントラスト値に関するさらなる条件が満たされた場合に実行されてもよい。
【0037】
本発明の実施形態に係る検出方法では、前記コントラスト値に関するさらなる条件が満たされたかを評価することが、前記コントラスト値が予め決められた第2レベル未満であるかを評価することを含んでいてもよい。
【0038】
本発明の実施形態に係る検出方法は、前記センサ信号値又は前記基準値に対し、周囲の温度の測定値を考慮した温度補正を適用する補正ステップをさらに含んでいてもよい。
【0039】
本発明の実施形態に係る検出方法では、センサ信号値を取得する取得ステップが、各センサ信号値が前記監視エリアにおける対応する副領域の内部から受信する赤外放射の量に関連する値であるような複数のセンサ信号値を取得するステップであってもよく、コントラスト値を生成する生成ステップは、前記複数のセンサ信号と複数の基準値とを素子毎に比較することで複数のコントラスト値を規定するステップを含んでいてもよく、前記物体の前記存在を決定する決定ステップは、前記複数のコントラスト値に関する前記条件を評価するステップを含んでいてもよく、前記基準値を調整する調整ステップは、前記複数のコントラスト値の各々に負のフィードバックが適用されるように前記複数の基準値を素子毎に調整するステップを含んでいてもよい。
【0040】
本発明の特有の態様及び好ましい態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、必要に応じて、独立請求項の特徴、及び、他の従属請求項の特徴と組み合わせてもよく、その組み合わせは、請求項に明示的に記載されたものに限定されない。
【0041】
本発明に係る上述の態様及びその他の態様は、以降に記載された実施形態を参照することで明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、特別な実施態様に関して、特定の図面を参照しながら説明されるが、発明は図面には限定されず、請求項によってのみ限定される。説明される図面は、概略図に過ぎず、限定的なものではない。図面において、いくつかの要素の大きさは、説明の目的により、誇張され、実際の大きさ通りには描かれていないことがある。寸法及び相対的な寸法は、発明の実施例の実際の縮小率に対応するものではない。
【0047】
さらに、説明及び請求項における、第1、第2といった用語は、類似の構成要素を区別するために使われており、時間的、空間的、順位的、又は、他の様態のいずれかに関する順序を必ずしも説明するためではない。そのように使用される用語は、適切な環境において交換可能であり、ここで説明される発明の実施態様は、ここで説明又は図示された以外の順序で動作可能であると理解されるべきである。
【0048】
さらに、説明及び請求項における、「上に」、「下に」等のような用語は、説明の目的のために使用されるのであり、必ずしも相対的な位置を説明するためではない。そのように使用される用語は、適切な環境において交換可能であり、ここで説明される発明の実施態様は、ここで説明又は図示された以外の向き付けで動作可能であると理解されるべきである。
【0049】
「備える」という用語が請求項において使われているが、その後に記載された手段に限定されると解釈されるべきではない、すなわち、他の構成要素又は方法を排除するものではないと注意されるべきである。従って、
参照される特徴、整数値、処理、構成部品の存在を述べていると解釈されるべきであるが、1以上の他の特徴、整数値、処理、構成部品、又はグループの存在又は追加を除外するものではない。従って、「手段A及びBを備えた装置」という表現の範囲は、構成部品A及びBだけからなる装置に限定されるべきではない。それは、本発明に関する装置において関連性を有する部品がA及びBであることを意味する。
【0050】
本明細書における「1実施態様」又は「1つの実施態様」という言及は、その実施態様に関連して説明された特徴、構成又は特性が本発明の少なくとも1つの実施態様に含まれていることを意味する。従って、本明細書における様々な個所で、「1実施態様において」又は「1つの実施態様において」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施態様を参照しているわけではないが、そうであってもよい。さらに、特別な特徴、構成又は特性は、1以上の実施態様において、当業者にとって明らかであるように、どのような適切な様態でも組み合わされ得る。
【0051】
同様に、発明の模範的な説明の中で、発明の様々な特徴は、時として、単一の実施態様、単一の図面又は単一の説明にグループ化されることは正しく認識されるべきである。それは、1以上の様々な発明の視点を理解する際に、開示及び支援を能率化することを目的とする。しかしながら、この開示の方法は、請求項の発明が各請求項で明白に列挙されている以上の特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、後述の請求項が反映するように、発明の観点は、前述された1つの実施態様のすべての特徴よりも少ないところに横たわっている。従って、詳細な説明に続く請求項は、明白に詳細な説明に具体化される。各請求項は、この発明の個々の実施態様としての意味をも有する。
【0052】
さらに、ここで説明されているいくつかの実施態様は、いくつかの特徴を含み、他の実施態様に含まれる他の特徴は含まないが、異なる実施態様の特徴の組合せは、発明の範囲内であり、その分野の当業者によって理解されるであろう、異なる実施態様を形成するものであると意図される。例えば、後述する請求項において、クレームされている実施態様は、どのような組合せによって用いられてもよい。
【0053】
ここで提供される説明において、多くの明細書の詳細が記載される。しかしながら、発明の実施態様は、これらの明細書の詳細がなくても実行されることが理解されてもよい。他の事例では、よく知られている方法、構造及び技術は、説明の理解が不明確にならないように、詳細には示されない。
【0054】
本発明の実施態様において、「熱電対列」とは、例えば、局所の温度差を示す電圧差(例えば、そのような温度差に実質的に比例する電圧差)を生成するといった、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するための電子素子のことを指す。そのような熱電対列は、複数の相互接続された熱電対を備えている。それらの熱電対は、通常、直列接続され、例えば、合金のような、少なくとも2つの異なる多数の導体材料の層を積み重ねることによって得られてもよい。熱電対において、2つの異なる導体の2つの接合点に温度差が発生すると、ゼーベック効果により温度差に比例し得る電圧が生成される。複数の熱電対を直列接続で結合することによって、熱電対列が得られる。熱電対列は、1つの熱電対上に生成される、かなり小さい電圧降下を増幅する。赤外放射検出のための熱電対列は、例えば、シリコンチップのような半導体の上に形成され得る。例えば、このチップにおけるある領域はエッチングされてもよく、薄膜だけが残され、その上に、2つの異なる導体材料の交互の層が配置されてもよい。両方の型の導体が、薄膜の中心において、及び、半導体基板のバルク(bulk)の上に、交互になった接合点を有してもよい。薄膜の中心にある、中央の接合点又は熱接点は、適切な赤外線吸収層に覆われてもよい。導体の他の先端部における接合点は、冷接点を形成する。熱電対列は、適切な(すなわち、対象の赤外線の波長のウィンドウに対して透明な)フィルタ・キャップとともにTO又はSMDヘッダ上に実装されてもよい。
【0055】
本発明の実施態様において、「システムの出力に負のフィードバックを作動させる」とは、システムの出力が実質的に一定のままであるように、この出力に影響する変数を調整することを指す。
【0056】
≪実施形態1≫
第1の観点において、本発明は、監視エリア8における物体9の存在又は不在を検出するための検出装置10に関する。
図1は、この第1の観点における検出装置10の実施態様の例を示す。この検出装置10は、熱電対列センサという形態の、少なくとも1つの赤外放射感知素子11を備えている。この赤外放射感知素子11は、監視エリア8の内部から受ける赤外放射を示すセンサ信号(すなわち、例えば、出力電圧のような電気出力信号)を生成するように適合されている。検出装置10は、感知素子11上に焦点を合わせるための焦点素子7(例えば、レンズ、例えば、シリコンレンズ)を備えていてもよい。ここで、監視エリア8の内部からの赤外放射とは、例えば、焦点素子7を通じて赤外放射感知素子11上に投影するコーン(円錐)からの赤外放射のことを指す。
【0057】
検出装置10は、処理部12をさらに備えている。処理部12は、感知素子11からセンサ信号を受けるように適合される。センサ信号は、信号線を通じて、アナログ電気信号として、赤外放射感知素子11から処理装置12に伝送され得る。そのような場合に、処理部12は、アナログデジタル変換器(ADC)と、ここでさらに説明される論理演算及び算術演算を実行するマイクロプロセッサ又はデジタルコンピューティング装置とを備えていてもよい。しかしながら、処理部12がアナログ信号処理に適合され得ること、実際にアナログデジタル変換なしで、上述又は後述の演算を行い得ることは、その分野の当業者によって理解されるであろう。又は、センサ信号は、デジタル形式で感知素子11から処理部12に伝送されてもよい。例えば、信号は、感知装置によってデジタル信号に変換されてから、例えば、I
2Cバスのようなバスで伝送され得る。そのようなデジタル化された信号は、無線通信モジュールを通して伝送されることもある。
【0058】
処理部12は、受けたセンサ信号を基準値と比較することにより、コントラスト値を提供するようさらに適合される。このコントラスト値は、センサ信号から基準値を引くことにより計算される差分であり得るし、又は、この差分に適用される関数(例えば、3乗関数)を含み得る。例えば、センサ信号は、デジタルサンプルによって表されてもよい。例えば、センサ信号は、ADC部品によって、例えば、20Hz未満、例えば、10Hz未満、例えば、5Hz又は5Hz未満のサンプリングレート、又は、1Hz又は1Hz未満のサンプリングレートでサンプリングされる。スリープモードになっており、生物がお目覚めモードに入ったか否かを決めるために、1分おき程度で生物がいるか否かを監視するセンサに対しては、例えば、サンプリングレートを0.01Hzに下げることもある。センサ信号の各サンプル値I
iに関して(iは、サンプリングで得られた時系列の値のインデックス数である)、コントラスト値C
iは、例えば、C
i=I
i−B
i−1によって計算される。ここで、B
i−1は、1つ前の時間ステップi−1で提供される基準値のことを指し、i=1の場合には、時系列における最初のコントラスト値(i=1)を計算するために予め設定されているデフォルト値B
0のことを指す。予め設定されているデフォルト値B
0は、監視エリア8の十分に高い(例えば、40℃といった室温より実質的に高い)温度で得られるセンサ信号値に対応し得る。
【0059】
処理部12は、コントラスト値の状態を評価することにより、物体9の存在又は不在を決めるためにさらに適合される。この物体9は、例えば、コントラスト値が予め決められた第1のレベルを超えるときに、存在すると決められてもよい。熱放射する物体9は、その環境より高い表面温度を有すると仮定され得る。例えば、人は、15℃から30℃の間の環境温度を有する部屋にいたとしても、およそ27℃から33℃の間の皮膚温度を有する。基準値B
i−1は、変化する背景温度の補正として解釈されてもよく、例えば、感知素子11の視界における環境及び障害物の温度変化による、観測されたセンサ信号I
iの変化に追随するために、さらに以下で説明されるように調整されるであろう。ここで、障害物とは、例えば、放熱器のような、対象の物体9として検出されるべきではないものを指す。生物の存在を検出するために、例えば、人間の存在を検出するために、部屋の温度になっているエリアにおいて、コントラスト値C
iが予め決められた第1のレベルL
i(随意的に部屋の温度の関数であってもよい)を超えたかを確認することによって、存在が決められてもよい。第1のレベルL
iは、例えば、0.5℃及び10℃の間(例えば、2℃)の観測された温度差に対して得られるセンサ信号値の差分に応じた値である。コントラスト値のこのような条件は、例えば、
図6に見られるように、人の存在は、一般的に、部屋の温度よりも温度が高いという、検出されるべき物体9に関する根本的な前提を反映したものである。なお、
図6は、“Skin Temperature in Relation to the Warmth of the Environment”, T. Bedford, The Journal of Hygiene, Vol. 35, No. 3, pp. 307−317, Aug. 1935.から引用したものである。
【0060】
これは検出されるべき物体及びその環境の特徴であることは注目されるべきである。それ故、例えば、PIRセンサにおけるタイマ及び/又は状態の感度設定よりも頑健であり得る。
【0061】
本発明の実施態様に係る検出装置10は、物体9の存在が決定したこと及び/又はその存在から導き出される属性を出力するための出力手段13を備える。出力手段13は、信号線出力、デジタルバスインタフェース、有線又は無線のネットワークインタフェース又は他の電子通信手段を備えてもよい。出力手段13は、接続される装置(例えば、ドアを開閉するアクチュエータ、又は、警報装置若しくは照明を動作させるアクチュエータのようなアクチュエータ)を駆動する電源出力をも備えてもよい。検出装置10は、出力手段13を通じて、導き出された属性、すなわち、物体の存在に関する現在の状態とは異なるが、それに関連する信号を通信し得る。そのような導き出された属性は、例えば、タイムウィンドウの中で検出された物体の個数、又は前回の検出からの経過時間のような統計値であってもよい。
【0062】
処理部12は、負のフィードバックがコントラスト値に適用されるように基準値を調整するために、さらに適合される。例えば、負のフィードバックは、コントラスト値の予め決められた割合を基準値に加えることによって提供されてもよい。さらに、有利な実施態様において、この負のフィードバックには、コントラスト値が予め決められた第2のレベルを下回ったときにだけ適用されるという条件が付されてもよい。この負のフィードバック方式は、例えば、視界の中にあって、ゆっくりと熱くなる放熱器のような変化を補償するために、長時間に亘ってコントラスト値を調整し得る。
【0063】
例えば、新しい基準値Biは、B
i=B
i−1+βC
iによって提供されてもよい。比例割合βは、例えば、凸フィルタアプローチにおける学習率を反映し得る。その学習率は、例えば、1Hzのサンプリングレートで、0.01から0.10の間の値(例えば、0.05)であってもよい。この調整は、下記のような条件付きで実行され得る。
【0065】
上記において、予め決められた第2のレベルθは、予め決められた第1のレベルより小さい値を有してもよい。ここで、予め決められた第1のレベルより小さい値とは、例えば、0.1℃/sから2℃/sの間の温度差(例えば、1℃/s以下、0.2℃/s)に対して得られるセンサ信号値に応じた値である。
【0066】
随意的に、検出装置10は、環境温度センサ15を備えていてもよい。処理部12は、環境温度センサ15から温度信号を受け取り、その温度信号を考慮して、センサ信号Ii又は予め決められた基準値Biに対する温度補正を適用するよう適合され得る。例えば、センサ信号Ii、コントラスト値Ci及び基準値Biは、Tiを読み取る環境温度センサを用いて、例えば、℃のような温度に正規化されてもよい。要約すれば、処理装置12は、次のような動作を繰り返して行うことができる。
【0067】
1.サンプル値I
i及びI
iを取得する。
【0068】
2.C
i=I
i−B
i−1を計算する。
【0071】
4.C
i>(予め決められたマージンL)が満たされるときに、物体9の存在を決定する。
【0072】
この例のコントラスト値が符号付きの関数によって計算されることは注目されるべきである。それは、背景レベルより予め決められたマージンLだけ温度が高い物体の存在信号を生成するためである。典型的にマージンLより小さい第2の閾値θは、背景より温度が低い信号が観測されたとき、又は、背景より温度が高いが、第2の閾値θを超えない信号が観測されたとき、背景基準レベルを調整する。環境温度の測定値は、変化する環境において長時間に亘って背景信号をさらに校正するために使用されてもよく、このようにして、正規化されたコントラスト値を提供する。これは、頑健性を増加させ得る。すなわち、存在を決定する条件及び条件付きの負のフィードバック補正を行う条件は、環境条件に対してより敏感でない部分で規定され得る。
【0073】
図2は、本発明の実施態様に係る熱電対列センサシステム10を模式的に示す。熱電対列センサシステム10は、少なくとも1つのIR放射感知素子11(例えば、熱電対列の配列)を備えている。放射感知素子11の信号は、増幅器28で増幅され、センサ信号として、部屋の温度からの温度情報Tとともに、背景除去部(background subtraction unit、BGS)29に送信される。背景除去部29は、センサシステム10が生物の存在を検出したときに、背景信号BGを更新し、イベントEを報告する。本発明の実施態様に係る背景除去部29は、検出された物体9及び環境の両方に関して得られた以下の知識を考慮して、背景/傾向除去機能を実行する。
【0074】
−生物、特に人は、環境温度より温度が高い。(検出されるべき物体が環境温度より温度が低ければ、機能は逆転される)
−うその物体、例えば、放熱器及び窓のような物は、小さい変化率で上方向に、時間をかけてゆっくりと温度を上昇させる。
【0075】
≪実施形態2≫
第2の実施態様では、
図3に示されるように、少なくとも1つの赤外放射感知素子11が少なくとも2個の赤外放射感知素子11を備えていてもよい。例えば、少なくとも1つの赤外放射感知素子11が赤外放射感知素子の配列18を備えていてもよい。ここで配列18とは、例えば、規則的に間に空間を置いた配列をなす赤外放射感知素子、例えば、1次元の配列(例として、8×1の素子配列)又は2次元の配列(例として、8×8の素子配列)である。配列18の各赤外放射感知素子11は、監視エリア8における、対応する副領域17の内部から受けられる赤外放射の量に関連するセンサ信号を生成するよう適合され得る。このように、監視エリア8は、複数の副領域17によって覆われていてもよい。副領域17は、例えば、円錐形状になっており、そこから赤外線光がそれぞれの感知素子11の方に投影される。
【0076】
例えば、配列18は、集積回路上の熱電対列センサの配列のような、熱電対列センサの配列である。そのような熱電対列センサの配列は、結合された視角を網羅する、遠隔温度検出素子のセットを備える。温度検出素子の隣には、例えば、サーミスタのような、センサ自身の温度を測定するための、精密なオンボードの装置もある。
【0077】
熱電対配列は、生物、例えば、人を検出するが、動作しているときだけでなく、静止しているときも検出し得る。また、その配列は、どの方向に生物が移動しているかを決定するのにも使用され得る。
【0078】
複数の赤外放射感知素子11の他に、本発明の第2の実施態様に係るセンサシステム10も処理部12を備えている。処理部12は、複数のセンサ信号を受け取るよう適合され得る。各センサ信号は、配列18の対応する赤外放射感知素子11から受け取られる。各センサ信号に対して、コントラスト値及び基準値が関連付けられてもよい。すなわち、処理部12は、以下のように、素子ごとに、複数のセンサ信号を複数の基準値と比較することにより、複数のコントラスト値を提供するよう適合されてもよい。
【0080】
処理部12は、複数のコントラスト値の状態を評価することにより、物体9の存在を判断するためにさらに適合され得る。
【0082】
上記の式において、jは、複数の感知素子に関連付られているベクトル成分のインデックスである。Liは、部屋の温度の測定値の関数である。
【0083】
I、BG及びEの信号は、
図2を参照して導入されるように、本実施態様では、熱電対列の配列センサ11の素子に関連付けられた要素を有するベクトルとして実現される。このように、
図4に示されるように、生物の存在が、センサの角度に関連して演繹される。I及びTのサンプル値は、例えば、1秒に1回のように、繰り返してサンプリングされる。
【0086】
を接続された装置又はユーザに伝達してもよい。出力手段は、関連する属性も提供し得る。例えば、
【0088】
におけるピークをカウントすることによって、部屋に存在する人の数を属性として提供する。出力手段13は、例えば、記憶値E
j−1又はC
j−1を現在値E
j又はC
jと比較することにより、物体が移動している方向を指し示すことを提供し得る。
【0089】
処理部12は、負のフィードバックが複数のコントラスト値が適用されるように、素子ごとに複数の基準値を調整するようさらに適合され得る。例えば、下記の式のようになる。
【0091】
複数の感知素子11から得られる信号を受けて判断された、動きの検出に基づいて、アクチュエータは駆動され得る。例えば、ドアを開閉するアクチュエータ、警報装置又は光を作動させるアクチュエータがある。これは、例えば、病院又は老人介護施設で使用されてもよい。そこでは、1以上の専用感知素子(例えば、
図3の、真中のセンサ素子)が存在信号を供給している場合、これは、患者が特別な位置(例えば、ベッド又はソファ)にいることを意味する。一方、他の感知素子(例えば、
図3の、真中のセンサ素子から左又は右にあるセンサ素子)が存在信号を供給している場合、これは、患者が倒れてしまったか、又は、歩き回っている可能性があることを意味する。そういった、他の感知素子(
図3の、真中のセンサ素子から左又は右にある)による検出は、警報のトリガとなる。
【0092】
第2の観点では、本発明は、監視エリア8における物体9の存在を検出するための方法20を提供する。そのような方法20の典型例が
図5に示されている。特に、本発明の第2の観点に係る方法20は、上記で説明された本発明の第1の観点に係る装置によって実行され得る。方法20は、例えば、マイクロプロセッサ(例えば、処理部12の一部を形成するマイクロプロセッサ)上で実行するための、ソフトウェアによって実行されてもよい。もう一つの方法として、方法20は、ハードウェア設計を通じて実行されてもよいし、ハードウェア及びソフトウェアの組合せとして実行されてもよい。
【0093】
この方法20は、取得ステップ21、すなわち、監視エリア8の内部から受け取られた赤外放射の量に関連するセンサ信号値を取得するステップを含んでいる。それは、例えば、少なくとも1つの赤外放射感知素子11によって生成された少なくとも1つのセンサ信号によって表されるセンサ信号値である。方法20は、生成ステップ22、すなわち、得られた少なくとも1つのセンサ信号値を、少なくとも1つの基準値と比較することによって、すくなくとも1個のコントラスト値を生成するステップをさらに含んでいる。これは、少なくとも1つのセンサ信号値から少なくとも1つの基準値を差し引くことを含んでもよい。
【0094】
方法20は、上記の生成された少なくとも1つのコントラスト値の状態を評価することによって、物体9の存在を判断する判断ステップ23をさらに含んでいる。この判断ステップ23は、生成された少なくとも1つのコントラスト値が予め決められた第1のレベルを超えたかを判断することを含んでもよい。
【0095】
方法20は、負のフィードバックが上記のコントラスト値に適用されるように、基準値を調整する調整ステップ24をさらに含んでいる。この調整ステップ24は、生成された少なくとも1つのコントラスト値の予め決められた割合を基準値に加えるステップを含んでもよい。さらに、この調整ステップ24は、コントラスト値のさらなる条件が満たされたとき、例えば、コントラスト値が予め決められた第2のレベルを下回ったときに、実行されてもよい。
【0096】
さらに、方法20は、環境温度の測定値を考慮して、少なくとも1つのセンサ信号値又は基準値に対して温度補正を適用する補正ステップ25を含んでもよい。
【0097】
特別な実施態様において、少なくとも1つのセンサ信号値を取得するステップ21は、複数のセンサ信号値を得るステップを含んでもよい。各センサ信号値は、監視エリア8の対応する副領域17の内部から受け取られる赤外放射の量に関連付けられる。コントラスト値を生成するステップ22は、素子ごとに、複数のセンサ信号値を複数の基準値と比較することにより、複数のコントラスト値を提供するステップを含んでもよい。物体9の存在を判断するステップ23は、複数のコントラスト値の状態を評価するステップを含んでもよい。基準値を調整するステップ24は、負のフィードバックが複数のコントラスト値のそれぞれに適用されるように、素子ごとに複数の基準値を調整するステップを含んでもよい。
【0098】
本発明の実施態様は、生物、例えば、標準的な室温環境にいる人を検出するための、精密かつ効率的な手段及び方法を提供し得る。本発明は、どのような方法にも限定されず、熱を生成する物体、例えば、人間主体を検出する原理であり、本発明の実施態様に従って、後述する事項によって説明され得る。背景除去、すなわち、傾向除去は、本発明の実施態様に従って、検出されるべき物体及び環境の特有の知識を考慮することによって、センサデータ上で行われ得る。
【0099】
第1に、例えば、人のような生物が環境温度よりも温度が高いことが仮定され得る。常に環境より温度が低い物体は、本発明の実施態様では、検出及び/又は条件付き負のフィードバックにふさわしい条件を採用することによって検出され得ることは、当業者にとって明らかである。第2に、例えば、放熱器や窓のような障害物は、小さい変化率で上方向に、時間をかけてゆっくりと温度を上昇させることが仮定され得る。第3に、その時の背景参照レベルより温度が低い物体が選ばれる(preferred)。すなわち、すぐに採用され得る。温度差が閾値より大きい場合、背景を更新することは、秒毎の温度上昇の限定範囲に制限される。温度が閾値より低い場合、背景は凸状のフィルタによって無条件に更新され、より低い温度が制限なくすぐに採用される。
【0100】
これらの概念は、画像処理と異なる。画像処理では、色彩度、色相又は輝度に関して、人の外観が通常環境の外観より高い物、又は、低い物として示されることができない
以下に、本発明の実施態様に係る検出の原理を実証するために、実施の例が示される。本発明は、どのようなやり方にも制限されない。
【0101】
図7には、当該技術分野では知られているフレネルレンズを有するPIRセンサから得られた応答曲線が示されている。応答曲線は、PIRの応答電圧を時間の関数として示している。この例では、従来のPIRセンサは、椅子のある空間に向けられていた。第1の時刻71において、人が空間に入り、時間間隔73の間に椅子に座り、第2の時刻72に再び出て行った。
図7から見られるように、PIRセンサは、異なる様態で反応する。例えば、第1の時刻71及び第2の時刻72の付近のように、移動している人を検出したときに、出力に大きな変動を示す。しかし、時間間隔73のように、人が静かに座っているときには、出力に大きな変動を示さない。基準となる閾値レベル74が、
図7に表示されており、移動する人の存在を表示するには適しているであろう。しかしながら、PIRセンサの異なる性質による、類似の閾値レベルを用いても、静止した人を検出することはできない。
【0102】
一方で、本発明の実施態様に係る検出装置は、8個の熱電対列のセンサ素子を備えており、センサ素子あたりの出力値が図及び数字で示された
図8から明らかなように、静止した人を検出することができる。
図8は、本発明の実施態様に係る検出装置によって、
図7に示された時間間隔73の間に得られた応答を示す。1個のピクセル81の高輝度応答は、座っている人に対応する。比較のために、
図9は、第1の時刻71より前、従って、人が部屋に入る前に、同じ装置によって得られた応答を示す。ここで、人の不在が、上がったピクセル値のないことに対応する。明らかに、適切なサンプリングレートが選ばれたときに、本発明の実施態様に係るこの検出装置は、空間において移動している人をも検出することができる。