特許第6077698号(P6077698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6077698棒状体分布解析方法、繊維補強コンクリートの繊維材分布解析方法、棒状体分布解析装置、繊維補強コンクリートの繊維材分布解析装置、棒状体分布解析プログラム、及び繊維補強コンクリートの繊維材分布解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6077698
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】棒状体分布解析方法、繊維補強コンクリートの繊維材分布解析方法、棒状体分布解析装置、繊維補強コンクリートの繊維材分布解析装置、棒状体分布解析プログラム、及び繊維補強コンクリートの繊維材分布解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/00 20060101AFI20170130BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   G01N11/00 E
   G01N33/38
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-81270(P2016-81270)
(22)【出願日】2016年4月14日
【審査請求日】2016年10月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514196330
【氏名又は名称】株式会社新紀元総合コンサルタンツ
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】尹 元彪
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−256026(JP,A)
【文献】 森博嗣、他,二層モデルを用いたフレッシュコンクリートの流動解析手法,日本建築学会構造系論文報告集,1991年 9月,第427号,P.11−21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00
G01N 33/38
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性のある粘性流動体に混入された複数の棒状体の分布状況を解析する棒状体分布解析方法であって、
棒状に沿って配置された複数の要素体で構成するとともに、隣り合う前記要素体同士の相対距離が一定である棒状体モデルでひとつの前記棒状体をモデル化する棒状体モデル生成工程、
前記粘性流動体を複数の粘性セルの集合体としてモデル化する粘性流動体モデルを生成する粘性流動体モデル生成工程、
前記粘性流動体モデルの解析領域における前記粘性セルの運動を算出する流動体運動算出工程、及び
該流動体運動算出工程で算出された前記運動を前記棒状体モデルに外力として作用させて前記棒状体モデルの運動を算出する棒状体モデル運動算出工程を行う
棒状体分布解析方法。
【請求項2】
複数の前記要素体の合計質量が前記棒状体の質量である
請求項1に記載の棒状体分布解析方法。
【請求項3】
前記棒状体モデルは、
複数の前記要素体と、隣り合う前記要素体同士を連結する無質量の線状連結体とで構成する剛状モデルである
請求項1又は2に記載の棒状体分布解析方法。
【請求項4】
前記流動体運動算出工程において、
有限体積法によって前記運動を前記粘性セルの運動ベクトルとして算出する
請求項1乃至3のうちいずれかに記載の棒状体分布解析方法。
【請求項5】
前記棒状体モデルの条件及び前記粘性流動体モデルの条件のうち少なくとも一方の条件設定する条件設定手段を備えた
請求項1乃至4のうちいずれかに記載の棒状体分布解析方法。
【請求項6】
前記粘性流動体に対する前記棒状体の混入量が2%体積比以下である
請求項1乃至5のうちいずれかに記載の棒状体分布解析方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれかに記載の棒状体分布解析方法における前記粘性流動体が硬化前のフレッシュコンクリートであるとともに、
前記棒状体が前記フレッシュコンクリートに混入する繊維材である
繊維補強コンクリートの繊維材分布解析方法。
【請求項8】
前記流動体運動算出工程において算出する前記粘性流動体の運動を、
前記フレッシュコンクリートの打ち込み速度を初期速度として算出する
請求項7に記載の繊維補強コンクリートの繊維材分布解析方法。
【請求項9】
粘性のある粘性流動体に混入された複数の棒状体の分布状況を解析する棒状体分布解析装置であって、
棒状に沿って配置された複数の要素体で構成するとともに、隣り合う前記要素体同士の相対距離が一定である棒状体モデルでひとつの前記棒状体をモデル化する棒状体モデル生成手段、
前記粘性流動体を複数の粘性セルの集合体としてモデル化する粘性流動体モデルを生成する粘性流動体モデル生成手段、
前記粘性流動体モデルの解析領域における前記粘性セルの運動を算出する流動体運動算出手段、及び
該流動体運動算出手段で算出された前記運動を前記棒状体モデルに外力として作用させて前記棒状体モデルの運動を算出する棒状体モデル運動算出手段を備えた
棒状体分布解析装置。
【請求項10】
前記棒状体モデルの条件及び前記粘性流動体モデルの条件のうち少なくとも一方の条件設定する条件設定手段を備えた
請求項9に記載の棒状体分布解析装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の棒状体分布解析装置における前記粘性流動体が硬化前のフレッシュコンクリートであるとともに、前記棒状体が前記フレッシュコンクリートに混入する繊維材である
繊維補強コンクリートの繊維材分布解析装置。
【請求項12】
前記流動体運動算出手段において算出する前記粘性流動体の運動は、
前記フレッシュコンクリートの打ち込み速度を初期速度として算出される
請求項11に記載の繊維補強コンクリートの繊維材分布解析装置。
【請求項13】
粘性のある粘性流動体に混入された複数の棒状体の分布状況を解析する棒状体分布解析装置として構成するコンピュータに、
棒状に沿って配置された複数の要素体で構成するとともに、隣り合う前記要素体同士の相対距離が一定である棒状体モデルでひとつの前記棒状体をモデル化する棒状体モデル生成工程、
前記粘性流動体を複数の粘性セルの集合体としてモデル化する粘性流動体モデルを生成する粘性流動体モデル生成工程、
前記粘性流動体モデルの解析領域における前記粘性セルの運動を算出する流動体運動算出工程、及び
該流動体運動算出工程で算出された前記運動を前記棒状体モデルに外力として作用させて前記棒状体モデルの運動を算出する棒状体モデル運動算出工程を実行させる
棒状体分布解析プログラム。
【請求項14】
請求項13に記載の棒状体分布解析プログラムにおける前記粘性流動体が硬化前のフレッシュコンクリートであるとともに、前記棒状体が前記フレッシュコンクリートに混入する繊維材である
繊維補強コンクリートの繊維材分布解析プログラム。
【請求項15】
前記流動体運動算出工程において算出する前記粘性流動体の運動を、
前記フレッシュコンクリートの打ち込み速度を初期速度として算出する
請求項14に記載の繊維補強コンクリートの繊維材分布解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば、繊維補強コンクリートや繊維強化プラスチック(FRP)などフレッシュコンクリートやプラスチックなどの粘性のある粘性流動体に混入された鋼繊維などの複数の棒状体の分布状況を解析する棒状体分布解析方法、繊維補強コンクリートの繊維材分布解析方法、棒状体分布解析装置、繊維補強コンクリートの繊維材分布解析装置、棒状体分布解析プログラム、及び繊維補強コンクリートの繊維材分布解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維補強コンクリートや繊維強化プラスチック(FRP)などフレッシュコンクリートやプラスチックなどに鋼繊維やガラス繊維などを混入して強度を向上させた複合材料が用いられている。例えば、特許文献1には、有機合成繊維が混入された繊維補強樹脂成形物について開示され、特許文献2には、炭素繊維を混入したコンクリートについて開示されている。
【0003】
これらのように、硬化前の粘性のある粘性流動体に、繊維などの複数の棒状体を混入して強度を向上させた複合材料は、棒状体の分布状況によっては成形品の強度に斑が生じるおそれがあるものの、分布状況を把握することは困難であり、実証実験によって分布状況を推測するしかなく、大きな手間やコストを要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−220853号公報
【特許文献2】特開平8−143350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、粘性のある粘性流動体に混入された複数の棒状体の分布状況を精度よく解析できる棒状体分布解析方法、繊維補強コンクリートの繊維材分布解析方法、棒状体分布解析装置、繊維補強コンクリートの繊維材分布解析装置、棒状体分布解析プログラム、及び繊維補強コンクリートの繊維材分布解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、粘性のある粘性流動体に混入された複数の棒状体の分布状況を解析する棒状体分布解析方法、棒状体分布解析装置及び棒状体分布解析プログラムであって、棒状に沿って配置された複数の要素体で構成するとともに、隣り合う前記要素体同士の相対距離が一定である棒状体モデルでひとつの前記棒状体をモデル化する棒状体モデル生成工程(手段)、前記粘性流動体を複数の粘性セルの集合体としてモデル化する粘性流動体モデルを生成する粘性流動体モデル生成工程(手段)、前記粘性流動体モデルの解析領域における前記粘性セルの運動を算出する流動体運動算出工程(手段)、及び該流動体運動算出工程(手段)で算出された前記運動を前記棒状体モデルに外力として作用させて前記棒状体モデルの運動を算出する棒状体モデル運動算出工程(手段)を行うことを特徴とする。
【0007】
上述の複数の要素体は、2つ以上の要素体であればよい。
上述粘性流動体は、硬化前のコンクリートであるフレッシュコンクリート、フレッシュモルタル、フレッシュセメントミルク、硬化前のプラスチックやエポキシ樹脂などの樹脂を含むものとする。
【0008】
上記棒状体は、鋼繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの合成繊維などを含み、いわゆる短繊維とすることができる。
上記運動は、粘性セルや棒状体モデルの移動、速度、加速度、回転並びに向きの少なくともいずれかとすることができる。
【0009】
この発明により、粘性のある粘性流動体に混入された複数の棒状体の分布状況を精度よく解析することができる。
詳述すると、ひとつの棒状体を、棒状に沿って配置された複数の要素体で構成し、隣り合う前記要素体同士の相対距離が一定である棒状体モデルでモデル化するとともに、前記粘性流動体を複数の粘性セルの集合体として粘性流動体モデルでモデル化するため、複雑な挙動を示す粘性流体と棒状体を簡略化したモデルとして生成することができる。
【0010】
また、前記粘性流動体モデルの解析領域における前記粘性セルの運動を算出するとともに、前記粘性セルの算出された前記運動を前記棒状体モデルに外力として作用させて前記棒状体モデルの運動を算出するため、粘性セルの複雑な挙動を運動として容易に算出し、さらに、粘性セルの算出した運動を棒状体モデルに外力として作用させるため、複雑な挙動を示す粘性セルの運動の影響を考慮した棒状体の運動を算出することで、棒状体の分布状態を精度よく解析することができる。
このように、本願発明により、複雑な挙動を示す粘性セルの運動を複雑化させずに棒状体モデルに作用させることで、粘性セルの影響を考慮した棒状体モデルの運動を容易に算出することができる。
【0011】
この発明の態様として、複数の前記要素体の合計質量を前記棒状体の質量とすることができる。
この発明により、棒状体の質量の影響を考慮し、現実に即したより忠実な解析結果を得ることができる。殊に、複数の前記要素体が同質量である場合はさらに忠実な解析結果を得ることができる。
【0012】
またこの発明の態様として、前記棒状体モデルを、複数の前記要素体と、隣り合う前記要素体同士を連結する無質量の線状連結体とで構成する剛状モデルとすることができる。
この発明により、長さのある棒状体を、変形等の複雑化する要素を軽減し、解析上簡略化して適切にモデル化することができる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記流動体運動算出工程(手段)において、有限体積法によって前記運動を前記粘性セルの運動ベクトルとして算出することができる。
この発明により、簡易な解析プロセスで、棒状体モデルの運動を適切に評価することができる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記棒状体モデルの条件及び前記粘性流動体モデルの条件のうち少なくとも一方の条件設定する条件設定手段を備えることができる。
上述の棒状体モデルの条件は、棒状体モデルの長さ、質量、径、形状、硬度、可撓性あるいは摩擦係数など棒状体の性状に関する条件や、棒状体モデルの粘性流動体モデルに対する混入量や混入タイミング、混入する位置など棒状体の粘性流動体への混入に関する条件とすることができる。
【0015】
上述の前記粘性流動体モデルの条件は、粘性流動体モデルの量、粘性、密度(比重)、スランプ、ワーカビリティ、フローあるいは自己充填性などの粘性流動体の性状に関する条件や粘性流動体で構成する形状や大きさ、さらには粘性流動体を打ち込む打ち込み箇所の位置、大きさ、形状あるいは高さなどの粘性流動体を打ち込む際の条件などとすることができる。
【0016】
この発明により、粘性流動体に対して棒状体が適切に分布する条件を設定することができる。
詳しくは、前記棒状体モデルの条件及び前記粘性流動体モデルの条件のうち少なくとも一方を条件設定手段で設定することで、設定された条件での棒状体の分布状況を精度よく解析することができるため、適切な分布状況となる条件をシミュレーションして、より良い分布状況となる条件を設定することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記粘性流動体に対する前記棒状体の混入量を2%体積比以下とすることができる。
この発明により、混入する棒状体モデルが粘性体モデルの運動に影響しないため、上述の説明における解析においてより精度のよい解析結果を得ることができる。
【0018】
またこの発明は、上述の棒状体分布解析方法、棒状体分布解析装置及び棒状体分布解析プログラムにおける前記粘性流動体が硬化前のフレッシュコンクリートであるとともに、前記棒状体が前記フレッシュコンクリートに混入する繊維材である繊維補強コンクリートの繊維材分布解析方法、繊維補強コンクリートの繊維材分布解析装置、及び繊維補強コンクリートの繊維材分布解析プログラムとすることを特徴とする。
この発明により、繊維補強コンクリートにおける繊維材の分布を精度よく解析することができる。
【0019】
この発明の態様として、前記流動体運動算出工程(手段)において算出する前記粘性流動体の運動を、前記フレッシュコンクリートの打ち込み速度を初期速度として算出することができる。
この発明により、流動するフレッシュコンクリートの運動を適切に算出して、繊維材の分布をさらに精度よく解析することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、粘性のある粘性流動体に混入された複数の棒状体の分布状況を精度よく解析できる棒状体分布解析方法、繊維補強コンクリートの繊維材分布解析方法、棒状体分布解析装置、繊維補強コンクリートの繊維材分布解析装置、棒状体分布解析プログラム、及び繊維補強コンクリートの繊維材分布解析プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】繊維材分布解析システムの概要説明図。
図2】繊維材分布解析方法のフロー図。
図3】繊維運動解析方法のフロー図。
図4】繊維導入解析方法のフロー図。
図5】解析条件入力画面の概略図。
図6】条件設定部の説明図。
図7】鋼繊維のモデル化の説明図。
図8】領域モデルにおける流れ場ベクトルの概略図。
図9】領域モデルにおける流れ場ベクトルの概略図。
図10】領域モデルにおける流れ場ベクトルの概略図。
図11】繊維要素に流れ場ベクトルを作用させることについての説明図。
図12】領域モデルにおける繊維分布状況の概略出力図。
図13】領域モデルにおける繊維分布状況の概略出力図。
図14】領域モデルにおける繊維分布状況の概略出力図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の一実施形態を以下図面とともに説明する。
図1は繊維材分布解析システム1の概要説明図を示している。詳しくは、図1(a)は繊維材分布解析システム1の概略図を示し、図1(b)は繊維材分布解析システム1を構成する解析用コンピュータ2(以下において解析PC2という)の概略ブロック図を示している。
【0023】
また、図2は繊維材分布解析方法のフロー図を示し、図3は、繊維材分布解析方法におけるステップs5に対応する繊維運動解析方法のフロー図を示し、図4は、繊維運動解析方法におけるステップt4に対応する繊維導入解析方法のフロー図を示している。
【0024】
また、図5は表示画面300の概略図を示し、図6は条件設定部310の説明図を示している。具体的には、図6(a)は打ち込み条件を入力する際の条件設定部310を示し、図6(b)はフレッシュコンクリートの性状を入力する際の条件設定部310を示し、図6(c)は鋼繊維の性状を入力する際の条件設定部310を示している。なお、図5における表示画面300の条件設定部310は解析領域Sのサイズを設定する画面を示している。
【0025】
図7は鋼繊維100のモデル化の説明図を示し、詳しくは、図7(a)は、鋼繊維100の拡大斜視図を示し、図7(b)は鋼繊維100をモデル化した鋼繊維モデル10の拡大斜視図を示している。
【0026】
図8乃至図10は解析領域SにおけるコンクリートモデルFcの概略図を示し、図11は鋼繊維モデル10の繊維要素11に流れ場ベクトルVrを作用させることについての説明図を示し、図12乃至図14は解析領域Sにおける鋼繊維モデル10の分布状況の概略出力図を示している。
【0027】
なお、図11(a)はコンクリートモデルFcに鋼繊維モデル10が導入された状態の初期状態の概略斜視図を示し、図11(b)はコンクリートモデルFcにおいて、流れ場ベクトルVrが作用して移動した鋼繊維モデル10の概略斜視図を示している。
【0028】
また、図11(c)は初期状態の鋼繊維モデル10及びコンクリートモデルFcの平面図を示し、図11(d)は同状態の正面図を示し、図11(e)は同状態の右側面図を示している。図11(f)は流れ場ベクトルVrが作用して移動した鋼繊維モデル10の平面図を示し、図11(g)は同状態の正面図を示し、図11(h)は同状態の右側面図を示している。
図12乃至図14は解析領域Sにおける鋼繊維モデル10の分布状況のモデル表示部320への概略出力図を示している。
【0029】
フレッシュコンクリートに鋼繊維100を混入した繊維補強コンクリートにおける鋼繊維100に分布状況を解析する鋼繊維分布解析装置である繊維材分布解析システム1は、鋼繊維分布解析プログラムを実行するコンピュータであり、解析PC2、液晶モニタ又はCRTディスプレイ等で構成して各種情報を表示する表示部3、マウス4bやキーボード4a等の操作入力部4で構成している。
【0030】
解析PC2は、CPU、ROM、及びRAMで構成する制御部21とともに、内部に備えた記憶部22で構成し、記憶部22に格納した、プログラムに従って各種処理を実行する装置である。
【0031】
なお、制御部21は、流れ場ベクトルVrを算出する流れ場ベクトル算出部211と、鋼繊維100の運動を算出する繊維運動算出部212などの算出手段を有する演算処理手段である。
記憶部22には、繊維材分布解析プログラムなどの各種プログラムや、各種装置を制御する制御プログラムに加え、各種データ等のステップs1で入力された条件入力データを記憶する設定条件記憶部221、ステップs3で算出された流れ場ベクトルデータを記憶する流れ場ベクトル記憶部222、及びステップs5で算出された鋼繊維モデル10の運動を記憶する繊維運動記憶部223などを記憶している。
【0032】
表示部3に表示される表示画面300は、図5に示すように、解析条件を入力する条件設定部310と、コンクリートモデルFcを表示するモデル表示部320とで構成している。
条件設定部310は、設定対象選択部311と、条件項目入力部312とで構成され、設定対象選択部311で選択され設定対象に応じた条件項目が条件項目入力部312に表示され、表示された条件項目を入力するように構成されている。
【0033】
具体的には、設定対象選択部311は、解析領域Sのサイズを設定するための解析モデル設定ボタン311a、フレッシュコンクリートを打ち込む条件を設定する打ち込み条件ボタン311b、フレッシュコンクリートの性状を設定するコンクリートボタン311c、及び鋼繊維100の性状を設定する鋼繊維ボタン311dで構成されている。
【0034】
解析モデル設定ボタン311aが押下された場合、条件項目入力部312には、図5に示すように、解析領域Sのサイズを示す“長さ”、“幅”及び“高さ”がそれぞれ入力されるように構成され、打ち込み条件ボタン311bが押下された場合、図6(a)に示すように、解析領域Sへのフレッシュコンクリートの打ち込み条件として、打ち込み口の中心位置を設定する“打ち込み口中心位置X座標”、“打ち込み口中心位置Y座標”及び“打ち込み口中心位置Z座標”並びに、打ち込み口のサイズを設定する“打ち込み口長さ”及び“打ち込み口幅”、さらには打ち込み条件となる“打ち込み速度”、“打ち込み時間”及び解析の際の時間ステップを設定する“時間ステップ”がそれぞれ入力されるように構成されている。
【0035】
コンクリートボタン311cが押下された場合、図6(b)に示すように、フレッシュコンクリートの性状として、密度及び動粘性性係数がそれぞれ入力されるように構成され、鋼繊維ボタン311dが押下された場合、図6(c)に示すように、鋼繊維100の性状として、密度、質量、長さ、直径及び長さ/直径比がそれぞれ入力されるように構成されている。
コンクリートモデルFcを表示するモデル表示部320は、条件設定部310で設定された条件に応じたコンクリートモデルFcを表示するように構成されている。
【0036】
このように構成した繊維材分布解析システム1を用い、記憶部22に記憶した繊維材分布解析プログラムを実行して行う繊維材分布解析処理について、次に説明する。
まず、繊維材分布解析処理を行うにあたって、実行する繊維材分布解析プログラムの入力画面で解析条件を入力する(ステップs1)。
【0037】
具体的には、表示部3に表示される表示画面300の条件設定部310に解析条件を入力して設定する。
なお、上述の入力条件により、鋼繊維補強コンクリートを構成するフレッシュコンクリーに対して鋼繊維100の混入量は2%体積比以下となるように設定されている。
【0038】
続いて、条件入力された繊維材分布解析プログラムは、入力条件に基づいて解析領域S、コンクリートモデルFc及び鋼繊維モデル10を生成する(ステップs2)。
解析領域Sは、粘性流動体であるフレッシュコンクリートを打設して製造するコンクリート加工体のサイズであり、本実施形態では、図8に示すように、正面視略正方形断面で奥行き方向Dに長い直方体形状としている。なお、奥行き方向Dに長い解析領域Sにおける奥側に打ち込み口xを設けている。
【0039】
そして、コンクリートモデルFcは、解析領域Sに対して、入力条件に応じて、打設したフレッシュコンクリートを、打設開始から打設完了までを所定時間ステップごとに各時間ごとにモデル化している。また、コンクリートモデルFcは、粘性流動体であるフレッシュコンクリートを複数の粘性セルCvの集合体としてモデル化している。
【0040】
鋼繊維100をモデル化した鋼繊維モデル10は、図7に示すように、2つの粒子要素11と、粒子要素11同士を連結する連結体12とで構成している。
粒子要素11は、鋼繊維100の質量の半分の質量を有する要素であり、図7(b)では、球状に図示しているが、大きさ及び形状の概念を有さないモデルである。
【0041】
連結体12は、ふたつの粒子要素11同士の相対間距離L(以下において要素間距離Lという)を、鋼繊維100の長さ(繊維長L)に合わせて拘束するものであり、図7(b)では棒状に図示しているが、太さや形状の概念を有さず、無質量のモデルである。なお、連結体12は、ふたつの粒子要素11同士の相対間距離が規制できれば、連結体12自体をモデル化せず、相対間距離が拘束されたふたつの粒子要素11のみで鋼繊維モデル10をモデル化してもよい。
【0042】
このように構成された鋼繊維モデル10は、ふたつの粒子要素11の相対方向は変化できるものの、連結体12によってその相対間距離を一定に保つように構成されている。つまり、鋼繊維モデル10は、同じ質量を有するふたつの粒子要素11と、ふたつの粒子要素11の相対距離を拘束する連結体12とで剛状モデルに構成されている。
【0043】
鋼繊維モデル10及びコンクリートモデルFcのモデル化が完了すると、図7乃至図9に示すように、打ち込み口xから解析領域Sに対して解析条件で設定したフレッシュコンクリートの打ち込み条件での打設状況を解析にて再現してモデル表示部320に表示し、時間ステップごとにコンクリートモデルFcの流れ場ベクトルVrを算出するとともに(ステップs3)、算出された流れ場ベクトルVrを記憶部22に記憶する(ステップs4)。なお、図7乃至図9では、時間ステップごとに刻々と変化する打設状況における一部のみを図示している。
【0044】
ここでいう流れ場ベクトルVrは、粘性流動体であるフレッシュコンクリートを複数の粘性セルCvの集合体として捉え、各粘性セルCvの運動ベクトル、つまり、粘性セルCvの移動速度及び移動方向を表している。
【0045】
なお、このとき、鋼繊維100は混入されていないフレッシュコンクリート単体での打設状況を再現することとなるが、鋼繊維100の混入量をフレッシュコンクリートに対する2%体積比以下となるように設定しているため、流れ場ベクトルVrは、鋼繊維100が混入された場合と変わりなく算出することができる。
【0046】
具体的には、打ち込み速度及び打ち込み高さなどの入力条件に応じたコンクリートモデルFcに対して、解析領域S内の質量や運動量が保存されるように離散化を行う、有限体積法(finite volume method、以下においてFVM法という)によって、各粘性セルCvの流れ場ベクトルVrを時間ステップごとに算出する。
【0047】
なお、フレッシュコンクリートをモデル化したコンクリートモデルFcの流動は、非ニュートン粘性流体(Non-Newtonian viscous fluid)でBingham流体モデルより、以下の式のように表現することができ、これらの式より、上述のFVM法によって、各粘性セルCvの流れ場ベクトルVrを時間ステップごとに算出する。
【0048】
【数1】
この数式において、t:時間,ρ:流体(コンクリート粒子)の密度,U:流体の速度ベクトル,p:流体の圧力,SM:外部の運動源による運動量(external momentum sources),μ:流体の動的粘性係数を示している。
【0049】
次に、FVM法によって算出された、時間ステップごとの各粘性セルCvの流れ場ベクトルVrを、鋼繊維モデル10に対して外力として作用させて、鋼繊維モデル10の運動を算出する(ステップs5)。
【0050】
具体的には、図11(a),(c)乃至(e)に示すように、複数の粘性セルCvで構成される一部のコンクリートモデルFcにおける鋼繊維モデル10の粒子要素11に対して、それぞれの粒子要素11が位置する粘性セルCvの流れ場ベクトルVrが各粒子要素11に外力として作用することとなる。
【0051】
その結果、流れ場ベクトルVrが作用した粒子要素11は、図11(b),(f)乃至(h)に示すように、各粒子要素11は、連結体12に要素間距離Lが拘束された状態で、移動することとなる。
【0052】
なお、本解析では、図3に示すように、まずは、時刻Tnにおける鋼繊維モデル10を、ランダム関数を用いてランダムに生成する(ステップt1)。ランダム関数については一般的なランダム関数を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0053】
鋼繊維モデル10のランダム生成方法は、図4に示すように、解析領域S内における点Aの生成(ステップu1)、及び単位ベクトルRの生成(ステップu2)を行い、生成された点Aと単位ベクトルR及び連結体12に対応する繊維長Lに基づいて点Bを生成する(ステップu3)。
【0054】
生成された点Bが解析領域S内でない場合(ステップu4:No)はステップu2に戻り、解析領域S内である場合(ステップu4:Yes)は鋼繊維モデル10の生成を完了し、生成された鋼繊維モデル10を用いる。これを、時刻Tnにおける鋼繊維モデル10の本数分実行し、所定数の鋼繊維モデル10をランダムに生成する。
【0055】
次に、記憶部22に記憶された時刻Tnにおける流れ場ベクトルVrを読込み、ステップt1で生成した鋼繊維モデル10に対して、読み込んだ流れ場ベクトルVrを外力として作用させて、鋼繊維モデル10の運動を算出する(ステップt3)。
【0056】
詳しくは、鋼繊維モデル10の両端の粒子要素11の受けた力と運動量との関係式は下記のとおりとなる。
【0057】
【数2】
【0058】
粒子の受けた流体抗力FDは次式によってあらわすことができる。
【0059】
【数3】
u:流体(コンクリート)の速度,ν:粒子の速度,
τp:粒子の速度応答の時刻暦(velocity response time)で次式による。
【0060】
【数4】
ここで、ρp:粒子の密度 dp:粒子の直径 CD:流体抗力係数 RCr:粒子の相対レイノルズ数である。
【0061】
【数5】
【0062】
また、A(Sp)、B(Sp)、C(Sp)、D(Sp)は下記の経験式により求められる。
【0063】
【数6】
【0064】
このようにして算出された粒子要素11の運動に基づき、連結体12による拘束条件で粒子要素11の運動を修正する(ステップt4)。
詳しくは、上述の運動方程式に基づき、T=Tn時刻における両粒子要素11に作用した受けた力と加速度を算出するとともに、Tn+1=Tn+ΔTの位置と速度を算出するとともに、両粒子要素11の両粒子間の中心位置を算出する。
【0065】
そして、両粒子要素11の中心位置及び両粒子からなる方向を固定とし、要素間距離Lが鋼繊維100の繊維長Lと等しくなるように調整する。すなわち、
要素間距離L>繊維長Lの場合は、両粒子要素11を中心位置に向かって(要素間距離L−繊維長L)/2に応じた距離を移動させる。
逆に、要素間距離L<繊維長Lの場合は、両粒子要素11を中心位置に離れて(繊維長L―要素間距離L)/2に応じた距離を移動させる。
【0066】
このようにして、両粒子要素11の新しい位置をTn+1時刻の空間位置として、図12乃至図14に示すように、コンクリートモデルFcに対して各鋼繊維モデル10が表示されたモデルを表示画面300のモデル表示部320に表示するとともに記憶部22に記憶する(ステップt5)。
【0067】
なお、図12乃至図14は、時間ステップごとに刻々と変化する打設状況における一部のみを図示した図7乃至図9に対応して、鋼繊維モデル10が表示されたコンクリートモデルFcを図示している。
【0068】
これを、最終ステップまで繰り返すが(ステップt6:No)、算出された空間位置を、次のTn+2=Tn+1+ΔTにおける粒子要素11の初期条件として、上述の算定を最終ステップまで繰り返す(ステップt6:Yes)。繊維両端粒子の位置と速度を算出し、最終の時間ステップまで続く。
【0069】
このようにして、最終ステップまで繰り返した粒子要素11の位置情報、つまり算出結果を記憶部22に記憶するとともに、上述のコンクリートモデルFcにおける制御部210に表示して、本鋼繊維分布解析を終了する。
【0070】
このように、粘性のあるフレッシュコンクリートに混入された複数の鋼繊維100の分布状況を解析する鋼繊維分布解析処理、鋼繊維分布解析装置及び鋼繊維分布解析プログラムは、棒状に沿って配置されたふたつの粒子要素11で構成するとともに、隣り合う粒子要素11同士の相対距離が一定である鋼繊維モデル10でひとつの鋼繊維100をモデル化する鋼繊維モデル生成工程(ステップs2)、フレッシュコンクリートを複数の粘性セルCvの集合体としてモデル化するコンクリートモデルFcを生成するコンクリートモデル生成工程(ステップs2)、コンクリートモデルFcの解析領域における粘性セルCvの運動を算出する流動体運動算出工程(ステップs3)、及び流動体運動算出工程(ステップs3)で算出された運動を鋼繊維モデル10に外力として作用させて鋼繊維モデル10の運動を算出する鋼繊維運動算出工程(ステップs5)を行うため、粘性のあるフレッシュコンクリートに混入された複数の鋼繊維100の分布状況を精度よく解析することができる。
【0071】
詳述すると、ひとつの鋼繊維100を、ふたつの粒子要素11で構成するとともに、隣り合う粒子要素11同士の相対距離が一定である鋼繊維モデル10でモデル化するとともに、フレッシュコンクリートを複数の粘性セルCvの集合体としてコンクリートモデルFcでモデル化するため、複雑な挙動を示す粘性流体と鋼繊維100を簡略化したモデルとして生成することができる。
【0072】
また、コンクリートモデルFcの解析領域における粘性セルCvの運動(流れ場ベクトルVr)を算出するとともに、粘性セルCvの算出された運動(流れ場ベクトルVr)を外力として作用させて鋼繊維モデル10の運動を算出するため、粘性セルCvの複雑な挙動を運動(流れ場ベクトルVr)として容易に算出し、さらに、粘性セルCvの算出した運動(流れ場ベクトルVr)を鋼繊維モデル10に外力として作用させるため、複雑な挙動を示す粘性セルCvの運動(流れ場ベクトルVr)の影響を考慮した鋼繊維モデル10の運動を算出することで、鋼繊維100の分布状態を精度よく解析することができる。
【0073】
このように、本願発明により、複雑な挙動を示す粘性セルCvの運動(流れ場ベクトルVr)を複雑化させずに鋼繊維モデル10に作用させることで、粘性セルCvの影響を考慮した鋼繊維モデル10の運動を容易に算出することができる。
【0074】
また、ふたつの粒子要素11の合計質量を鋼繊維100の質量とすることにより、鋼繊維100の質量の影響を考慮し、現実に即したより忠実な解析結果を得ることができる。殊に、ふたつの粒子要素11が同質量である場合はさらに忠実な解析結果を得ることができる。
【0075】
また、鋼繊維モデル10を、ふたつの粒子要素11と、隣り合う粒子要素11同士を連結する無質量の連結体12とで構成する剛状モデルとすることにより、長さのある鋼繊維100を、変形等の複雑化する要素を軽減し、解析上簡略化して適切にモデル化することができる。
【0076】
また、流動体運動算出工程(ステップs3)において、有限体積法(FVM法)によって運動を粘性セルCvの流れ場ベクトルVrとして算出することにより、簡易な解析プロセスで、鋼繊維モデル10の運動を適切に評価することができる。
【0077】
また、鋼繊維モデル10の条件及びコンクリートモデルFcの条件を設定する条件設定部310を備えているため、粘性流動体に対して鋼繊維100が適切に分布する条件を設定することができる。
詳しくは、鋼繊維モデル10の条件及びコンクリートモデルFcの条件を条件設定部310で設定することで、設定された条件での鋼繊維100の分布状況を精度よく解析することができるため、適切な分布状況となる条件をシミュレーションして、より良い分布状況となる条件を設定することができる。
【0078】
また、フレッシュコンクリートに対する鋼繊維100の混入量を2%体積比以下としているため、混入する鋼繊維モデル10が粘性体モデルの運動に影響せず、上述の説明における解析においてより精度のよい解析結果を得ることができる。
【0079】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、この発明の粘性流動体はフレッシュコンクリートに対応し、
以下同様に、
棒状体は鋼繊維100に対応し、
要素体は粒子要素11に対応し、
棒状体モデルは鋼繊維モデル10に対応し、
棒状体モデル生成工程はステップs2に対応し、
粘性流動体モデルはコンクリートモデルFcに対応し、
粘性流動体モデル生成工程はステップs2に対応し、
流動体運動算出工程はステップs3に対応し、
棒状体モデル運動算出工程はステップs5に対応し、
棒状体分布解析方法は繊維材分布解析処理に対応し、
線状連結体は連結体12に対応し、
条件設定手段は、条件設定部310に対応し、
運動ベクトルは流れ場ベクトルVrに対応し、
繊維材は鋼繊維100に対応し、
繊維補強コンクリートの繊維材分布解析方法は繊維材分布解析処理に対応し、
棒状体分布解析装置は繊維材分布解析システム1に対応し、
棒状体モデル生成手段、及び粘性流動体モデル生成手段はステップs2を実行する制御部21に対応し、
流動体運動算出手段は流れ場ベクトル算出部211に対応し、
棒状体モデル運動算出手段は繊維運動算出部212に対応し、
コンピュータは繊維材分布解析システム1に対応し、
棒状体分布解析プログラムは、繊維材分布解析プログラムに対応する、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0080】
例えば、上述の説明では、鋼繊維100のモデルとして、ふたつの粒子要素11を連結体12で連結して剛状モデルとして鋼繊維モデル10を構成したが、3つ以上の粒子要素11を連結体12で連結して鋼繊維モデル10を構成してもよい。繊維補強コンクリートに混入する繊維として鋼繊維100をモデル化して鋼繊維モデル10を用いたが、鋼繊維100の他、炭素繊維、アラミド繊維などの合成繊維などをモデル化して用いてもよく、さらには、屈曲可能な繊維をモデル化するために連結体12に接点を設けて、屈曲可能な鋼繊維モデル10としてモデル化してもよい。
【0081】
また、繊維補強コンクリートの鋼繊維の配向を解析するためにフレッシュコンクリートをモデル化したコンクリートモデルFcを用いて解析したが、フレッシュコンクリートのみならず、フレッシュモルタル、フレッシュセメントミルク、硬化前のプラスチックやエポキシ樹脂などの樹脂をモデル化して解析してもよい。
【0082】
また、鋼繊維モデル10の条件として、鋼繊維モデル10の長さ、質量のみならず、径、形状、硬度、可撓性あるいは摩擦係数など鋼繊維100の性状に関する条件や、鋼繊維モデル10のコンクリートモデルFcに対する混入タイミングや混入する位置などを条件設定部
310で設定できるように構成してもよく、コンクリートモデルFcの条件として、コンクリートモデルFcのサイズのみならず、粘性、密度(比重)、スランプ、ワーカビリティ、フローあるいは自己充填性などのフレッシュコンクリートの性状に関する条件や、フレッシュコンクリートを打ち込む打ち込み箇所の位置のみならず、大きさ、形状あるいは高さなどのフレッシュコンクリートを打ち込む際の条件などを条件設定部310で設定できるように構成することで、鋼繊維モデル10の分布状況を高精度で解析することができる。
【0083】
さらに、上述の説明では、フレッシュコンクリートに鋼繊維100を混入し、直体状の構造物を構築するために直方体状の解析領域Sを用いたが、床版状の構造物を構築数ために、版状の解析領域Sを用いて解析を行ってもよい。
【0084】
また、上述の説明では、有限体積法(FVM法)によって粘性セルCvの流れ場ベクトルVrを算出したが、有限要素法(FEM法)などの別の解析方法で粘性セルCvの流れ場ベクトルVrを算出してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…繊維材分布解析システム
10…鋼繊維モデル
11…粒子要素
12…連結体
21…制御部
100…鋼繊維
310…条件設定部
Cv…粘性セル
Fc…コンクリートモデル
S…解析領域
Vr…流れ場ベクトル
【要約】
【課題】この発明は、粘性のある粘性流動体に混入された複数の棒状体の分布状況を精度よく解析できる棒状体分布解析方法を提供することを目的とする。
【解決手段】フレッシュコンクリートに混入された複数の鋼繊維100の分布状況を解析する鋼繊維分布解析処理であって、ふたつの粒子要素11同士の相対距離が一定である鋼繊維モデル10で鋼繊維100をモデル化する鋼繊維モデル生成工程(ステップs2)、フレッシュコンクリートを複数の粘性セルCvの集合体としてモデル化するコンクリートモデルFcを生成するコンクリートモデル生成工程(ステップs2)、コンクリートモデルFcの解析領域Sにおける粘性セルCvの運動を算出する流動体運動算出工程(ステップs3)、及び算出された運動を鋼繊維モデル10に外力として作用させて鋼繊維モデル10の運動を算出する鋼繊維運動算出工程(ステップs5)を行った
【選択図】図2
図1
図2
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図5
図6
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図8
図9
図10
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図14