(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077818
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】着脱が容易な刈払機用回転刃
(51)【国際特許分類】
A01D 34/73 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
A01D34/73 102
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-229150(P2012-229150)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-79196(P2014-79196A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】505302513
【氏名又は名称】株式会社ハートフル・ジャパン
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健二
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−051624(JP,A)
【文献】
実開昭55−014488(JP,U)
【文献】
実開平02−012823(JP,U)
【文献】
特開2000−217411(JP,A)
【文献】
特開2005−124407(JP,A)
【文献】
特開平08−103136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/412−34/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂で形成された円板状台座の中心部に脱着ホルダーの凸状円筒部を挿入する挿入孔が設けられ、
前記円板状台座の円周上には、前記脱着ホルダーに立設された複数の係止ピンと対応する位置に、円と該円から延設された円弧状溝より形成された係止孔が複数設けられ、前記脱着ホルダーに装着された複数の固定ビスと対応する位置に、前記円板状台座を固定する固定孔が設けられ、
前記円板状台座の外周縁には、全周にわたり多数の刃部が設けられている着脱が容易な刈払機用回転刃において、
前記刃部は、各刃部の円周方向の中央部に凹部が設けられ、各刃部の厚さ方向の中央部に円周方向に沿って溝が形成されており、
前記全ての凹部には、貫通穴が設けられた超硬チップ体が嵌合され、
前記全ての溝には、前記超硬チップ体の貫通穴を貫通して円形状に形成された円形索が嵌合されていることを特徴とする着脱が容易な刈払機用回転刃。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状台座の外周縁に、全周にわたり多数の刃部が設けられてなる着脱が容易な刈払機用回転刃に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、刈払機用回転刃は金属板を用いて円板状台座を形成し、この円板状台座の外周縁の刃部に刈刃や超硬チップを所定間隔で設けてなるものである。また、超硬チップを固着したものは金属性刈刃を形成したものより切削性が優れているので広く使用されている。一方、刈払機に取り付けられて回転させられる保持部材と、この保持部材に基端が保持されたナイロンコード切断刃を備えた刈払機用回転刃も、手軽に使用できるため広く使用されている。
【0003】
ところが、金属板製の円板状台座を用いた従来の回転刃は、高速回転させたときに切断時の振動が円板状台座を構成する金属板に伝播して同調・共鳴することにより異常に高い金属性の激しい騒音を生じ、作業環境を著しく悪化させるという問題点があった。一方、ナイロンコード切断刃は損耗が激しいため、草刈作業中において頻繁にナイロンコードの繰り出しあるいは交換を行う必要が生じていた。これらの問題を解決するために、金属板に代えて合成樹脂製の円板状台座を用いた回転刃が考案されている。
【0004】
例えば、手持式電動切断機や丸鋸盤等の回転刃として木工用、外壁材の切断用及び金属材の切断用に用いられるチップソーであり、高硬度材料からなる複数個の刃体チップの外周面に、台座外周部のチップとの接合部位に係止させる係合溝を形成し、前記台座の成形時において溶融乃至半溶融状態とした台座の各チップとの接合部位をチップの係合溝に密着させることにより、チップを台座に離脱不能な状態で一体的に固着したエンジニアリングプラスチック製回転台座を備えたチップソーが開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、中央に嵌挿孔を有し、嵌挿孔の中心を通る同一長さの交叉状直線上の頂部より所定の長さだけ中心に寄った底部を求めると共に、頂部と底部とを円弧状に結び、嵌挿孔の中心を通る交叉状直線の頂部及び底部の直線部分とによって複数個に仕切り、各円弧の外側面を切欠部とし、嵌挿孔の中心より最も長い頂部より最も短い頂部までの約2分の1または3分の2程度の円弧部分にだけ刃部を形成し、前記刃付けが施されなかった部分は切欠部とし、前記刃部を含む刈刃全体の厚みを均一とする合成樹脂製刈刃を形成した合成樹脂製刈刃が開示されている(特許文献2参照)。
【0006】
更に、超硬チップの側面に円板形母板の周方向に沿った側溝を設け、各超硬チップの側溝に環状の連結索を収め、超硬チップと連結索とを前記円板形母板をなす硬質合成樹脂によって結合してなる超硬チップ取り付け構造が開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−401号公報
【特許文献2】特公平6−12号公報
【特許文献3】実開平2−15823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のチップソーは、複数個の刃体チップをそれぞれ回転台座の成形時において、該台座の射出成形金型内における台座と刃体チップの接合部位に対応する位置に配設されて、該金型内に溶融乃至半溶融状態のエンジニアリングプラスチックを注入したとき、この流動状態の樹脂が刃体チップの係合溝に流入し、該溝とその両側のチップ外周面部分と密着状態で接合し田茂のである。しかしながら、このチップソーは、木工用、外壁材及び金属材の切断用として開発されたものであり、草刈作業の用途には適さないものであった。
【0009】
特許文献2に記載の合成樹脂製刈刃を用いて草刈作業をする際は、刈払機を中速回転とし、回転方向は刃が設けられていない切欠部より小さい形状の刃部群へ、所謂、なで切り状態となるように回転することを条件としている。また、前記刈刃が切欠部により3分割された構造であり、しかも円弧部分の半分程度しか刈刃が形成されていないので、草木を切断するというよりもなぎ倒す状態となり、合成樹脂製刈刃であるにもかかわらず、前記刈刃が草木に当接したときに作業者に伝わる衝撃が大きいという問題があった。
【0010】
特許文献3に記載の超硬チップ取り付け構造は、連結索及び超硬チップを円板形母板の一方の側面に接合しているため、草刈作業中に他方の側面から応力を受けると、前記連結索又は超硬チップが剥離する虞があった。
【0011】
さらに、特許文献1から3のチップソーや回転刃を取り替える際には、該チップソーや回転刃を駆動軸から取り外して、新しいチップソーや回転刃を取り付けなければならず、手間がかかり作業効率の悪いものであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであり、軽量で長時間使用することができ、着脱が容易な刈払機用回転刃を提供することを目的としている。
【0013】
本発明の刈払機用回転刃は、円板状台座の中心部に脱着ホルダーの凸状円筒部を挿入する挿入孔が設けられ、前記円板状台座部の円周上には前記脱着ホルダーに立設された複数の係止ピンと対応する位置に、円と該円から延設された円弧状溝で形成された係止孔が複数設けられており、前記円板状台座の外周縁には全周にわたり多数の刃部が設けられている。
【0014】
前記刈払機用回転刃は熱可塑性合成樹脂製とすることができる。熱可塑性合成樹脂では、特に、ポリカーボネートは耐衝撃性、可撓性及び耐衝撃性を有しており長期間使用することができる。また、脱着ホルダーに立設された係止ピンに係止された円板状台座の係止孔を、円弧状溝から円方向に回動させると、従来のように駆動軸から取り外す必要がなく、刈払機用回転刃は前記脱着ホルダーから簡単に取り外すことができる。
【0015】
本発明の刈払機用回転刃は、前記刃部の円周方向の中央部に超硬チップを装着する凹部と、各刃部の厚さ方向の中央部に円周方向に沿って円形索を装着する溝が形成されている。円形索は、前記円板状台座の外周縁の刃部に形成された溝に嵌入できる直径を有し、この円形索には、前記円板状台座の外周縁に設けられた凹部に嵌入される位置に超硬チップが嵌入されている。この円形索と該円形索に挿入された超硬チップを前記円板状台座の外周縁に設けられた凹部及び溝に嵌入すれば、前記円板状台座の外周縁に強固に固着することができる。また、草木は超硬チップで切断されるので、従来の合成樹脂性回転刃と比較して格段に切れ味が良くなる。
【0016】
本発明の刈払機用回転刃は、前記円板状台座部の円周上に、前記脱着ホルダーに装着された複数の固定ピンと対応する位置に、前記円板状台座部を固定する固定穴が設けられていることを特徴としている。これにより、前記円板状台座部は前記脱着ホルダーに固定して高速回転させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の刈払機用回転刃は、耐衝撃性に優れ、可撓性があり、耐衝撃性が強い熱可塑性合成樹脂を使用しているので、従来の合成樹脂製回転刃に比べて、長期間使用することができる。また、脱着ホルダーに立設された係止ピンに係止された円板状台座の係止孔を、円弧状溝から円方向又は円方向から円弧状溝方向に回動させると、刈払機用回転刃は前記脱着ホルダーから簡単に脱着することができる。また、脱着ホルダーに装着された固定ビスにより、刈払機用回転刃は前記脱着ホルダーに確実に固定することができる。
【0018】
本発明の刈払機用回転刃は、円形索と該円形索に挿入された超硬チップを、前記円板状台座の外周縁に設けられた凹部及び溝に嵌入すれば、前記円板状台座の外周縁に前記超硬チップを強固に固着することができる。これにより、草木は超硬チップで切断されるので、従来の合成樹脂性回転刃と比較して格段に切れ味が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
本発明実施形態を示す刈払機用回転刃の平面図である。
【
図3】
本発明の実施形態の円形索を示す平面図である。
【
図4】
本発明の実施形態の超硬チップ体であり、(a)は正面断面図、(b)は右側面図である。
【
図5】本発明に使用する脱着ホルダーの正面断面図である。
【
図7】
刈払機用回転刃を脱着ホルダーに装着する挿入状態を示すものである。
【
図8】
刈払機用回転刃を脱着ホルダーに装着するの固定状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において同一部材については同一符号を付与している。刈払機用回転刃に使用されている円板状台座1は熱可塑性樹脂の一種であるポリカーボネートを使用している。ポリカーボネートはエンジニアリングプラスチックの中でも高い物性を示す樹脂であり、耐衝撃性や耐熱性に優れており、軽量で変形し難く、加工し易いという特徴を有している。なお、ポリアセタール,ポリイミド,PPE,ポリブチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチックやポリアリレート,ポリスルホン,ポリフェニレンスルフィド,ポリエーテルエーテルケトン,ポリイミド樹脂,フッ素樹脂等のスーパーエンジニアリングプラスチックを使用することも可能である。また、熱可塑性樹脂に代えて、金属製とすることも当然可能である。
【0021】
図1において、前記円板状台座1は、脱着ホルダーの凸状円筒部を挿入する挿入孔3が設けられており、前記円板状台座部1の円周上には前記脱着ホルダーに立設された複数の係止ピンと対応する位置に、円12と該円12から延設された円弧状溝13より形成された係止孔11が複数設けられている。前記係止孔11と同心円周上には、前記脱着ホルダーに立設された一対の固定ビス27と対応する位置に固定孔14が設けられている。また、該円板状台座1の外周縁には全周にわたり多数の刃部2が設けられている。この刃部2と前記円板状台座1は同一の板厚としており、樹脂射出成形又は機械加工で一体形成されている。また、板厚にもよるがプレス打抜加工することも可能である。
【0022】
合成樹脂製(例えば、ポリカーボネート)の円板状台座1には、刃部2の円周方向の中央部に超硬チップ体7を装着する凹部5と、各刃部2の厚さ方向の中央部に円周方向に沿って円形索8を装着する溝10が形成されている。この円形索8は、前記円板状台座1の外周縁の刃部2に形成された溝10に嵌入できる直径を有し、図
2に示すように、前記円板状台座1の外周縁に設けられた凹部5に嵌入される位置に超硬チップ体7の先端が、円周縁に設けられた刃部2より突出した状態で嵌入されている。
【0023】
円形索8と該円形索8に挿入された超硬チップ体7を前記円板状台座1の外周縁に設けられた凹部5及び溝10に嵌入すれば、前記円板状台座1の外周縁に強固に固着することができる。また、前記円形索8及び超硬チップ体7の嵌入には接着剤を用いることが可能であるが、前記円板状台座1の成形時にインサート成形してもよい。このようにして刈払機用回転刃を形成すれば、草木は超硬チップ体7で切断されるので、従来の合成樹脂性回転刃と比較して格段に切れ味が良くなる。
【0024】
図
3において、円形索8は、前記円板状台座1と同様に熱可塑性樹脂の一種であるポリカーボネートを使用しているが、金属製とすることも可能である。この円形索8は、前記円板状台座1の外周縁の刃部2に形成された溝10に嵌入できる直径を有し、折り曲げ可能な柔軟性を有したリング状に形成されている。前記リング部には、図
4に示すように、切刃の機能を有する超硬チップ体7が、該超硬チップ体7に設けられた貫通穴9に挿入されて所定間隔で固定されている。
【0025】
図
5において、脱着ホルダー20はアルミニウム等の非金属、金属又は合成樹脂製でプレス成形等により一体形成されている。この脱着ホルダー20は円板状であり、基板21の中心部に設けられている挿入孔22に、刈払機の駆動軸(図示しない)を挿入してナット等で螺設される。前記脱着ホルダー20の刈払機用回転刃を装着する面は、前記挿入孔22と同心であるドーナツ状の凸部23が突設されており、該凸部23の外周には鍔部25が設けられている。該鍔部25には、円周上に等間隔で複数の係止ピン26が立設されており、該係止ピン26間の中央には円周上の対向位置に一対(2個)の螺子穴が設けら、この螺子穴に固定ビス27が装着されている。
【0026】
前記係止ピン26は、頭部26aと該頭部26aを支持する丸棒体26bより構成されており、前記頭部26aは前記刈払機用回転刃の円板状台座1に設けられた係止孔11の円12は通過できるが、円弧状溝13は通過できない直径を有する半球又は曲面状に形成されている。前記丸棒体26bは前記係止孔11の円弧状溝13を通過できる直径を有しており、前記円板状台座1の板厚に応じて、脱着ホルダー20から突出す高さを調整することができる。
【0027】
図
6(a)に示すように、螺子穴に設けられた固定ビス27は、螺子部と該螺子部から延設された円柱部から形成されており、通常は、脱着ホルダー20の板厚部に装着されている。刈払用回転刃が脱着ホルダー20に装着されたときは、前記螺子穴と前記円板状台座1に設けられた固定穴14を合致させた状態で、図
6(b)に示すように前記固定ビス27を前記固定穴14に螺込むことで前記脱着ホルダー20に前記刈払用回転刃を固定することができる。
【0028】
刈払用回転刃を脱着ホルダー20に装着又は脱着する手順は以下のとおりである。刈払用回転刃を脱着ホルダー20に装着するときは、図
7に示すように、脱着ホルダー20に設けられた複数の係止ピン26位置に、刈払用回転刃の円板状台座部1に設けられた複数の係止孔11の円12を対応させて挿入する。次に、図
8に示すように、刈払用回転刃を係止孔11の円弧溝13の先端に当接するまで回動させると、前記刈払用回転刃は脱着ホルダー20に固定される。次に、固定ビス27を円板状台座部1に設けられた固定穴14に螺込むことで前記脱着ホルダー20に前記刈払用回転刃を固定することができる。また、この刈払用回転刃を脱着ホルダー20から脱着するときは、前記手順とは逆手順で取り外すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、従来のコード式刈払刃、金属製又は合成樹脂製回転刃に変わる刈払機用回転刃として、広く利用することが可能なものである。
【符号の説明】
【0030】
1 円形状台座
2 刃部
3 挿入孔
5 凹部
7 超硬チップ体
8 円形索
9 貫通穴
10 溝
11、11a 係止孔
12 円
13 円弧状溝
14 固定孔
20 脱着ホルダー
21 基板
22 挿入孔
23 凸部
24 外周部
25 鍔部
26 係止ピン
26a 頭部
26b 丸棒体
27 固定ビス