特許第6077821号(P6077821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6077821プレスブレーキおよびワークの曲げ加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077821
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】プレスブレーキおよびワークの曲げ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/02 20060101AFI20170130BHJP
   B30B 15/14 20060101ALI20170130BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   B21D5/02 S
   B30B15/14 B
   B30B15/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-230687(P2012-230687)
(22)【出願日】2012年10月18日
(65)【公開番号】特開2014-79797(P2014-79797A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小俣 均
(72)【発明者】
【氏名】山谷 泰司
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−358518(JP,A)
【文献】 特開2006−026656(JP,A)
【文献】 特開2001−030012(JP,A)
【文献】 特開平09−314399(JP,A)
【文献】 特開平06−071342(JP,A)
【文献】 特開2001−129612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
B30B 15/00
B30B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部テーブルに設置されたダイと、前記下部テーブルに対して相対的に移動位置決め自在である上部テーブルに設置されたパンチとを用いて、板状のワークに曲げ加工をするプレスブレーキにおいて、
前記上部テーブルを前記下部テーブルに対して相対的に移動位置決めをするためのサーボモータと、
前記ワークの曲げ加工における反りを抑制するために、前記ワークの曲げ加工ストロークの開始位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置までの、前記上部テーブルの相対的な移動速度である第1の移動速度よりも、前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置までの、前記上部テーブルの相対的な移動速度である第2の移動速度が遅くなるように、前記サーボモータを制御する制御部と、
を有することを特徴とするプレスブレーキ。
【請求項2】
請求項1に記載のプレスプレーキにおいて、
前記上部テーブルの相対的な移動速度を切り換える切り替えスイッチを有し、
前記制御部が、前記切り替えスイッチがオンしているときに、前記ワークの曲げ加工ストロークの開始位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置まで、上部テーブルを前記第1の移動速度で相対的に移動し、前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置まで、上部テーブルを前記第2の移動速度で相対的に移動するように、前記サーボモータ制御し、
前記切り替えスイッチがオフのときには、前記ワークの曲げ加工ストロークの開始位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置まで、上部テーブルを前記第1の移動速度で相対的に移動するように、前記サーボモータを制御することを特徴とするプレスブレーキ。
【請求項3】
ダイと、サーボモータによって駆動し前記ダイに対し相対的に移動位置決め自在であるパンチとを用いて、板状のワークに曲げ加工をするワークの曲げ加工方法において、
前記ワークの曲げ加工における反りを抑制するために、前記ワークの曲げ加工ストロークの開始位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置までの、前記パンチの相対的な移動速度である第1の移動速度よりも、前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置までの、前記パンチの相対的な移動速度第2の移動速度を遅くして、前記ワークに曲げ加工をする曲げ加工工程を有することを特徴とするワークの曲げ加工方法。
【請求項4】
請求項3に記載のワークの曲げ加工方法において、
曲げ加工工程は、前記ワークの曲げ加工ストロークの開始位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置まで、前記パンチを前記第1の移動速度で相対的に移動し、前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置まで、前記パンチを前記第2の移動速度で相対的に移動するか、もしくは、前記ワークの曲げ加工ストロークの開始位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置まで、前記パンチを前記第1の移動速度で相対的に移動するかの選択ができる工程であることを特徴とするワークの曲げ加工方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスブレーキおよびワークの曲げ加工方法に係り、特に、パンチとダイとを用いてワークを曲げ加工するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレスブレーキ(ワーク曲げ加工装置)によるパンチとダイとを用いたワークWの曲げ加工において、曲げ加工されたワークWが、図5(b)、(c)で示すように反ってしまうこととがある。この反りには、図5(b)に示す鞍形の反りと図5(c)に示す船形の反りとがある。
【0003】
上記反りを無くしたり反りの量を低減したりする対処方法として、曲げ速度(ダイの対してパンチが接近する速度)を極端に遅くする方法が従来より知られている。
【0004】
なお、従来の技術に関する特許文献として、たとえば特許文献1、特許文献2を掲げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−71342号公報
【特許文献2】特開2001−129612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、曲げ速度を極端に遅くする従来の方法では、ワークの加工時間(曲げ加工の時間)が長くなり、生産性が落ちてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ワークの曲げ加工における生産性を落とすことなく、曲げ加工されたワークの反りを無くすか低減することができるプレスブレーキおよびワークの曲げ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、下部テーブルに設置されたダイと、前記下部テーブルに対して相対的に移動位置決め自在である上部テーブルに設置されたパンチとを用いて、板状のワークに曲げ加工をするプレスブレーキにおいて、前記上部テーブルを前記下部テーブルに対して相対的に移動位置決めをするためのサーボモータと、前記ワークの曲げ加工における反りを抑制するために、前記ワークの曲げ加工ストロークの開始位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置までの、前記上部テーブルの相対的な移動速度である第1の移動速度よりも、前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置までの、前記上部テーブルの相対的な移動速度である第2の移動速度が遅くなるように、前記サーボモータを制御する制御部とを有するプレスブレーキである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプレスプレーキにおいて、前記上部テーブルの相対的な移動速度を切り換える切り替えスイッチを有し、前記制御部が、前記切り替えスイッチがオンしているときに、前記ワークの曲げ加工ストロークの開始位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置まで、上部テーブルを前記第1の移動速度で相対的に移動し、前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置まで、上部テーブルを前記第2の移動速度で相対的に移動するように、前記サーボモータ制御し、前記切り替えスイッチがオフのときには、前記ワークの曲げ加工ストロークの開始位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置まで、上部テーブルを前記第1の移動速度で相対的に移動するように、前記サーボモータを制御するプレスブレーキである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、ダイと、サーボモータによって駆動し前記ダイに対し相対的に移動位置決め自在であるパンチとを用いて、板状のワークに曲げ加工をするワークの曲げ加工方法において、前記ワークの曲げ加工における反りを抑制するために、前記ワークの曲げ加工ストロークの開始位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置までの、前記パンチの相対的な移動速度である第1の移動速度よりも、前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置までの、前記パンチの相対的な移動速度第2の移動速度を遅くして、前記ワークに曲げ加工をする曲げ加工工程を有するワークの曲げ加工方法である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のワークの曲げ加工方法において、曲げ加工工程は、前記ワークの曲げ加工ストロークの開始位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置まで、前記パンチを前記第1の移動速度で相対的に移動し、前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置まで、前記パンチを前記第2の移動速度で相対的に移動するか、もしくは、前記ワークの曲げ加工ストロークの開始位置から前記ワークの曲げ加工ストロークの終了位置まで、前記パンチを前記第1の移動速度で相対的に移動するかの選択ができる工程であるワークの曲げ加工方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワークの曲げ加工における生産性を落とすことなく、曲げ加工されたワークの反りを無くすか低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るプレスブレーキの概略構成を示す図であり、(a)が側面図であり、(b)は(a)におけるIB矢視図である。
図2】本発明の実施形態に係るプレスブレーキに設置されたダイとパンチとを用いて、ワークに曲げ加工を施すときの動作を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るプレスブレーキによるワークの曲げ加工において、曲げストロークと曲げ速度との関係を示す図である。
図4】曲げ加工の速度を変えてワークに曲げ加工を施した場合の試験結果を示す図である。
図5】曲げ加工されたワークの反りを示す図であり、(a)は反りの無いワークを示しており、(b)は、鞍反りが発生しているワークを示しており、(c)は船反りが発生しているワークを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係るプレスブレーキ1の概略構成について説明する。
【0015】
プレスブレーキ1は、たとえば「C」字状に形成されたフレーム3と下部テーブル5と上部テーブル7と制御装置9とを備えて構成されている。
【0016】
下部テーブル5は、フレーム3の下方前側でフレーム3に一体的に設けられている。上部テーブル7は、フレーム3の上方前側でフレーム3に支持されており、上下方向でフレーム3(下部テーブル5)に対して移動自在になっている。
【0017】
下部テーブル5には、たとえば、ダイホルダ11を介してダイDが一体的に設置されるようになっている。上部テーブル7には、たとえば、パンチホルダ13を介してパンチPが一体的に設置されるようになっている。
【0018】
上部テーブル7は、サーボモータ(他の制御モータでもよい)19とボールねじ(図示せず)を用いた機構(他の回転運動を直線運動に変換する機構でもよい。)によって、上下方向で移動位置決めされるようになっている。
【0019】
なお、上記説明では、上部テーブル7のみを上下方向で移動位置決めしているが、上部テーブル7に代えてもしくは加えて、下部テーブル5が上下方向で移動位置決め自在になっていてもよい。すなわち、サーボモータによって上部テーブル7が下部テーブル5に対して相対的に移動位置決め自在になっていればよい。
【0020】
プレスブレーキ1は、下部テーブル5に一体的に設置されたダイ(設置済みダイ)Dと、下部テーブル5に対して相対的に移動位置決め自在である上部テーブル7に一体的に設置されたパンチ(設置済みパンチ)Pとを用いて(ダイDに対してパンチPを相対的に近づけてパンチPとダイDとでワークWを挟み込んで)、板状のワークWに曲げ加工をする(たとえば常温の環境下でワークWを塑性変形させて曲げ加工する)ものである。
【0021】
そして、プレスブレーキ1は、ワークWに曲げ加工をするに際し、制御装置9の制御部(CPU)15の制御の下、メモリ17に予め記憶されている動作プログラムに基づいて、サーボモータ19を駆動し、次のようにしてワークWに曲げ加工をするようになっている。
【0022】
ワークの曲げ加工ストローク(図2の距離SA)の開始位置(図2(a)のパンチPの位置を参照)からワークWの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置(終了近傍位置;図2(b)のパンチPの位置を参照)までの間(図2の距離SN)は、上部テーブル7(設置済みパンチP)を第1の移動速度V1(図3参照)で移動し、この後、終了近傍位置からワークWの曲げ加工ストロークの終了位置(図2(c)のパンチPの位置を参照)までの間(図2の距離SE)は、第1の移動速度V1よりも遅い第2の移動速度V2(図3参照)で移動している。なお、第1の移動速度V1から第2の移動速度V2への切り変わりは極めて短い時間で間髪をいれずになされるので、第1の移動速度V1から第2の移動速度V2への切り変わりをするときに上部テーブル7が停止することは無く、見かけ上瞬時に移動速度の切り替えがなされる。
【0023】
第1の移動速度V1は、ワークWの曲げ加工をするときにおけるパンチPの通常の下降速度(たとえば従来と同じ下降速度)であり、第2の移動速度V2は、第1の移動速度V1に比べて、極端に遅い速度になっている。
【0024】
さらに説明すると、図2(a)に示すワークWの曲げ加工ストロークの開始位置では、設置済みパンチPが設置済みダイDから所定の距離だけ離れている。この状態で、ダイDの上に平板状のワークWが載置されるようになっている。設置済みパンチPは、設置済みダイDに載置されたワーク(設置済みワーク)Wの上方で、設置済みワークWから所定の距離だけ離れている。
【0025】
設置済みダイDの上にワークWを載置した後、図示しないスタートボタンが押されると、ワークWの曲げ加工ストロークの開始位置にある設置済みパンチP(上部テーブル7)が第1の移動速度V1で下降し設置済みダイD(設置済みワークW)に接近すると、設置済みパンチPが設置済みワークWに当接し、設置済みワークWの曲げ加工が開始されるようになっている。
【0026】
また、設置済みパンチPを、ワークWの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置(図2(b)参照)まで、第1の移動速度(第1の曲げ速度)V1でさらに下降し、設置済みパンチP(上部テーブル7)がワークWの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置に到達したとき、設置済みパンチP(上部テーブル7)を減速し設置済みパンチP(上部テーブル7)の移動速度を第2の移動速度(第2の曲げ速度)V2にするようになっている。
【0027】
そして、設置済みパンチP(上部テーブル7)がワークWの曲げ加工ストロークの終了位置(図2(c)参照)に到達したときに設置済みパンチPの下降を停止するよいになっている。
【0028】
この後、設置済みパンチP(上部テーブル7)を曲げ加工ストロークの開始位置まで上昇して、設置済みパンチPや設置済みダイDから曲げ加工がなされたワークWを取り出すことで、ワークWの曲げ加工が終了し、目標角度の曲げ加工がなされたワークWを得ることができるようになっている。
【0029】
また、プレスブレーキ1には、切り替えスイッチ23と表示部・入力部(たとえばタッチパネル付き液晶表示装置)25を備えた操作盤21が設けられている。操作盤21は、制御装置9との間で信号(情報)のやり取りができるようになっている。
【0030】
切り替えスイッチ23は、上部テーブル7の移動速度を切り換えるスイッチである。なお、切り替えスイッチ23を独立して設けることなく、たとえば、表示部・入力部25に設けた構成であってもよい。
【0031】
制御部15は、切り替えスイッチ23がオンしているときには、ワークWの曲げ加工ストロークの開始位置(図2(a)参照)からワークWの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置(図2(b)参照)まで、上部テーブル7を第1の移動速度V1で移動し、ワークWの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置(図2(b)参照)からワークWの曲げ加工ストロークの終了位置(図2(c)参照)まで、上部テーブル7を第2の移動速度V2で移動するように、サーボモータ19の制御をするようになっている。
【0032】
また、制御部15は、切り替えスイッチ23がオフのときには、ワークWの曲げ加工ストロークの開始位置(図2(a)参照)からワークWの曲げ加工ストロークの終了位置(図2(c)参照)まで、第2の移動速度V2に減速すること無く、上部テーブル7を第1の移動速度V1で移動するように、サーボモータ19の制御をするようになっている。
【0033】
ここで、移動速度V1,V2等の具体的な値を例示する。ワークWの曲げの態様(ワークWの材質、ワークWの板厚、ワークWの目標曲げ角度等)にもよるが、第1の移動速度V1は、10mm/s(ミリメートル/秒)程度であり、第2の移動速度V2は、1mm/s以下(ただし0mm/sは除く)である。より好ましくは、第2の移動速度V2を0.5mm/s以下(ただし0mm/sは除く)にすべきである。
【0034】
ワークWの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置からワークWの曲げ加工ストロークの終了位置までの距離(Z軸方向での距離;図2の寸法SE参照)は、ダイDのV幅(ダイDに形成されているV溝の開口部における幅)の5%程度(4%〜6%の範囲内でもよいし、3%〜8%の範囲内でもよいし、3%〜12%の範囲内でもよいし、さらに、2%〜20%の範囲内でもよい。)である。なお、ワークWの厚さは、通常、ダイのV幅と20%程度にしてある。
【0035】
ワークWとしては、厚さが0.1mm〜6mm程度の範囲内の、SUS304等のステンレススチールの板、SPCCやSPHC等の鋼板を掲げることができる。
【0036】
次に、ダイDとサーボモータ19によって駆動しダイDに対し移動位置決め自在であるパンチPとを用いて、板状のワークWに曲げ加工をするワークWの曲げ加工方法について説明する。ワークWの曲げ加工方法はたとえばプレスブレーキ1を用いて実行される。
【0037】
まず、図2(a)に示すようにパンチPが上昇している状態でダイDのワークWを載置する。
【0038】
続いて、ワークWに曲げ加工を施す曲げ加工工程では、ワークWの曲げ加工ストロークの開始位置(図2(a)参照)からワークWの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置(図2(b)参照)まで、パンチPを第1の移動速度V1で移動する。続いて、ワークWの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置(図2(b)参照)からワークWの曲げ加工ストロークの終了位置(図2(c)参照)まで、パンチPを第1の移動速度V1よりも遅い第2の移動速度V2で移動する。
【0039】
なお、曲げ加工工程で、次の動作を選択するようにしてもよい。すなわち、ワークWの曲げ加工ストロークの開始位置からワークWの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置まで、パンチPを第1の移動速度V1で移動し、ワークWの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置からワークWの曲げ加工ストロークの終了位置まで、パンチPを第2の移動速度V2で移動するか、もしくは、ワークWの曲げ加工ストロークの開始位置からワークWの曲げ加工ストロークの終了位置まで、パンチPを第1の移動速度V1で移動するかの選択をすることができるようにしてもよい。
【0040】
ここで、ワークWの曲げ加工の試験結果を示す。ワークWの直線状の曲げ線の長さは、1000mmであるものとする。図4の横軸は、反り量の測定位置である。たとえば500mmは、曲げ線の中央部を示している。図5の縦軸は、反り量を示している。
【0041】
図G1は、従来のように設置済みパンチPの移動速度を10mm/sで一定にした条件でワークWに曲げ加工を施した場合を示している。最大の反り量は、0.53mm程度になっている。
【0042】
図G2は、設置済みパンチPの移動速度を3mm/sと遅くして一定にした条件でワークWに曲げ加工を施した場合を示している。最大の反り量は、0.40mm程度になっている。
【0043】
図G3は、本発明の実施形態の一例であり、図2に示す距離SNの行程では、設置済みパンチPの移動速度を10mm/sとし、図2に示す距離SEの値を0.1mmとし、距離SEの行程では、設置済みパンチPの移動速度を0.5mm/sとした条件で、ワークWに曲げ加工を施した場合を示している。最大の反り量は、0.34mm程度になっている。
【0044】
図G4は、設置済みパンチPの移動速度を0.5mm/sと極めて遅くして一定にした条件でワークWに曲げ加工を施した場合を示している。最大の反り量は、0.19mm程度になっている。
【0045】
図G5は、本発明の実施形態の一例であり、図2に示す距離SNの行程では、設置済みパンチPの移動速度を10mm/sとし、図2に示す距離SEの値を0.4mmとし、距離SEの行程では、設置済みパンチPの移動速度を0.5mm/sとした条件でワークWに曲げ加工を施した場合を示している。最大の反り量は、0.19mm程度になっている。
【0046】
プレスブレーキ1によれば、ワークWの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置からワークWの曲げ加工ストロークの終了位置までの僅かな距離における上部テーブル7の移動速度のみを極端に遅くしているので、設置済みパンチPのオーバーシュートを防止しやすくなっているとともに、ワークWの曲げ加工における生産性を落とすことなく、曲げ加工されたワークの反りを無くすか低減することができる。
【0047】
詳しく説明すると、加工ストロークの全工程において、第1の移動速度(設置済みパンチPの移動速度)V1でワークWに曲げ加工をすると、ワークWの加工硬化(曲げ線の部位とこの近傍部位での加工硬化)が速く進む。これによって、曲げ線の部位とこの近傍部位に発生した内部応力により、ワークWが鞍形もしくは船形に変形してしまう。
【0048】
しかし、プレスブレーキ1によれば、ワークWの曲げ加工ストロークの終了位置の近傍位置からワークWの曲げ加工ストロークの終了位置までの、上部テーブル7の移動速度(第2の移動速度)V2を遅くしているので、ワークWの加工硬化の進行が遅くなり、曲げ線の部位とこの近傍部位に発生した内部応力がたとえば小さくなるとともに内部応力のバランスがとれる。そして、ワークWの鞍形もしくは船形への変形量(図5(b)、(c)に示すΔZの値)を実用上無くすか小さくすることができる。
【0049】
また、ワークWの曲げ加工におけるパンチP(ダイD)の全ストロークのうちのほとんどの行程を、パンチPが第1の移動速度V1で移動するので、ワークWの曲げ加工のタクトタイムの延びを僅かにな値にすることができ、生産性が落ちることはほぼ無くなっている。
【0050】
また、プレスブレーキ1によれば、上部テーブル7の移動速度を切り換える切り替えスイッチ23が設けられているので、1台のプレスブレーキ1において、曲げ加工されたワークWの反り量の許容値に応じて、生産性を重視するか曲げ加工精度を重視するかを適宜選択することができ、プレスブレーキ1を有効活用することができる。
【0051】
なお、上記説明では、第1の移動速度V1を一定にし、第2の移動速度V2も一定にしているが、各移動速度V1,V2を若干変えつつ1枚のワークWの曲げ加工をするようにしてもよい。
【0052】
たとえば、第1の移動速度V1の値を一定にしておいて、第2の移動速度V2を変更してもよい。第2の移動速度V2の変更は、たとえば、次のようにしてなされる。設置済みパンチPが加工ストロークの終了位置に近づくにしたがってしだいにそしてたとえば段階的に第2の移動速度V2を遅くするか、または、設置済みパンチPが加工ストロークの終了位置に近づくにしたがってしだいに第2の移動速度V2を遅くするが、遅くする割合はしだいに大きくするか、もしくは、遅くする割合はしだいに小さくする。
【0053】
また、第1に移動速度V1から第2の移動速度V2への速度の切り替えをするときに設置済みパンチPの速度を一時的に「0」にしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 プレスブレーキ
5 下部テーブル
7 上部テーブル
15 制御部
19 サーボモータ
23 切り替えスイッチ
D ダイ
P パンチ
V1 第1の移動速度
V2 第2の移動速度
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5