特許第6077828号(P6077828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIエアロスペースの特許一覧 ▶ 株式会社IHIエアロスペース・エンジニアリングの特許一覧

<>
  • 特許6077828-自己点検機能付き点火装置 図000002
  • 特許6077828-自己点検機能付き点火装置 図000003
  • 特許6077828-自己点検機能付き点火装置 図000004
  • 特許6077828-自己点検機能付き点火装置 図000005
  • 特許6077828-自己点検機能付き点火装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077828
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】自己点検機能付き点火装置
(51)【国際特許分類】
   F42B 3/10 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   F42B3/10
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-241970(P2012-241970)
(22)【出願日】2012年11月1日
(65)【公開番号】特開2014-92299(P2014-92299A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(73)【特許権者】
【識別番号】393019115
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース・エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(72)【発明者】
【氏名】植草 康之
(72)【発明者】
【氏名】田中 直浩
(72)【発明者】
【氏名】神澤 匠
(72)【発明者】
【氏名】名出 智彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 暉雄
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−136197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 3/10 − 3/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続され火工品の点火に必要な電圧の電力を蓄電する点火電源回路と、
前記点火電源回路と火工品とを接続又は切断する点火スイッチ回路と、
前記点火電源回路の抵抗又は電圧及び前記点火スイッチ回路の抵抗又は電圧を検出する自己点検回路と、
前記点火スイッチ回路に接続又は切断について指示する制御信号を出力し、前記自己点検回路で検出した抵抗又は電圧を外部に出力する制御回路と、
前記点火電源回路、前記点火スイッチ回路及び前記自己点検回路における電圧を制限する定電圧回路と、
前記点火スイッチ回路と前記火工品との間に位置し、前記火工品を点火するためのイニシエータとを備え、
前記イニシエータは、所定の電流が通電することによって点火するようになっており、
前記点火電源回路、前記点火スイッチ回路、前記自己点検回路及び前記イニシエータとからなる回路は、所定の抵抗を有しており、
前記定電圧回路は、前記所定の抵抗と前記所定の電流の積を下回る値に設定をされている、ことを特徴とする自己点検機能付きの点火装置。
【請求項2】
点検時において、前記点火電源回路、前記点火スイッチ回路及び前記自己点検回路に流れる電流を制限する定電流回路を備え、
前記定電流回路は、前記所定の電流を下回る値に設定をされている、ことを特徴とする請求項1に記載の自己点検機能付きの点火装置。
【請求項3】
前記電源に接続され、点検時において、前記点検に必要な電圧の電力を蓄電する内部電源回路を有する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自己点検機能付きの点火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロケットに搭載した火工品を点火する自己点検機能付き点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロケットの飛翔においてロケットの一部切り離しや点火・再点火等が必要である場合、火工品を点火することによって目的を達成するケースが多い。
そのため、任意のタイミングで火工品を点火することを可能にするために、予め飛翔体内に点火装置を搭載しておくことが一般的である。
【0003】
この点火装置については、例えば、図1に記載の点火装置のように、電源51と火工品53の間を点火装置52によって連結させることで、点火タイミング等の制御を行うものがある。
【0004】
また、この図における点検装置55は、点火装置52について後述する各種点検を行う際に用いる装置であり、制御装置56は、主にロケットの飛翔を制御するためのものであり、火工品53を点火するための各スイッチ等の制御をも行うものである。
さらに、この例においては、意図しないタイミングで電流が流れた場合等において、火工品53が点火することを防止するためにSAD54(Safety and Arming Device)が設けられている場合がある。また、火工品53において、火工品53を点火するために着火薬であるイニシエータ(図示しない)を有しているものとする。
【0005】
上記のような火工品について記載された特許文献については、以下のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−144056号公報
【特許文献2】特開2010−133685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような火工品をロケットに搭載させた場合において、故障等を避けるために、点検装置55を用いることによって事前に各種試験を行う必要がある。
以下、従来の点火装置における点検方法について説明を行う。
【0008】
図2は、図1における点火装置の基本回路構成の図である。
この図において、61aは火工品の点火準備を行うためのアーミングスイッチ、61bはアーミングスイッチ61aを制御するアーミングスイッチ制御信号、62aは後述する「点火モード」と「点検モード」を切り替える切替スイッチ、62bは切替スイッチ62aを制御する切替スイッチ制御信号、63aは火工品の点火を行う点火スイッチ、63bは点火スイッチ63aの制御を行う点火スイッチ制御信号である。
また、この例における点火装置52は、3つの火工品53に連結している場合を想定しているため、切替スイッチ62a、切替スイッチ制御信号62b、点火スイッチ63a、点火スイッチ制御信号63bは、それぞれ3組ずつ備えつけられている。
なお、この例において、火工品の点火を行うのにアーミングスイッチ61aと点火スイッチ63aの2つを用いているのは、チャタリング等によって意図しないタイミングで電流が流れた場合に火工品が点火してしまうのを極力防止する、という安全面を考慮したものである。
また、この例においては、電源51と火工品53を連結する回路を2系統有する場合について説明を行う。
【0009】
点火装置52は、上記各種スイッチ及び制御回路を操作することによって「点火モード」と「点検モード」の2つの動作モードのいずれかに切り替えることが可能である。ロケットの飛翔において火工品53の点火を行う際には「点火モード」にし、各回路の導通試験等の点検を行う際には「点検モード」にすることで切り替えを行う。
【0010】
具体的には、「点火モード」の場合は、アーミングスイッチ61aを「ON」にし、切替スイッチ62aを「点火モード」にし、さらに、点火スイッチ63aを「ON」にすることで、電源51から火工品53に電力を供給する。
【0011】
また、「点検モード」の場合は、アーミングスイッチ61aを「OFF」にし、切替スイッチ62aを「点検モード」にし、さらに、必要に応じて点火スイッチ63aを「ON」にすることによって点検を行う。
なお、この「点検モード」の場合は火工品53を安全面の観点から取外して点検を行う必要がある。
【0012】
上記「点検モード」において、アーミングスイッチ61aを切った状態で点検を行うため、例えば切替スイッチ62aの誤作動等による被害を防ぐことができる構成になっている。この「点検モード」における試験は、一般的には「チェックアウト装置」と呼ばれる点検装置55が行うものであり、点火装置52に設けられた各測定ポイント(図示しない)の導通抵抗値を取得し、この情報を元に導通絶縁確認等が行われる。また、状況に応じて、その他点火ラインに規定の点火電流が流せることの確認、迷走電流の有無等の試験についても行われる。
なお、この例において、アーミングスイッチ61aの制御はアーミングスイッチ制御信号61bを経由して制御装置56に設けられたアーミングスイッチ制御装置56bが制御を行い、点火スイッチ63aの制御は点火スイッチ制御信号63bを経由して制御装置56に設けられた点火スイッチ制御装置56aが制御を行う。
【0013】
また、テレメータ計測装置57は、この例においては、上記点検によって取得したステータスを収集し、必要に応じて送信等行うものである。
【0014】
上記点検は、飛翔体の安全性及び信頼度を高めるために必要不可欠なものである。
しかし、この点検は、安全面からロケットの打ち上げ射場において他の作業を停止して行うことが一般的であるため多大な時間を要するものである。また、点検装置55の取り付け等の準備作業、点検の実施及び点検装置55の取外し作業等を人手によって行い、さらに、この点検を行うために点検装置55を準備する必要があるため、多大なコストを要するという問題点を有していた。
また、上記点検は、火工品53を取り外して行うものであるが、点検装置55を取り付けるために、火工品を点火するためのイニシエータ(図示しない)についても取り外して点検を行う必要があった。そのため、イニシエータの正常性についての点検は別途の方法で行う必要があった。
【0015】
そこで、本発明の目的は、イニシエータを取り付けた状態で点検をすることが可能であり、かつ、安全確実にイニシエータと点火用回路の点検をすることができ、また、点検に要する時間の短縮を図ることが可能であり、さらに、人が立ち入ることなく点検が可能な自己点検機能付き点火装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明によると、電源に接続され火工品の点火に必要な電圧の電力を蓄電する点火電源回路と、
前記点火電源回路と火工品とを接続又は切断する点火スイッチ回路と、
前記点火電源回路の抵抗又は電圧及び前記点火スイッチ回路の抵抗又は電圧を検出する自己点検回路と、
前記点火スイッチ回路に接続又は切断について指示する制御信号を出力し、前記自己点検回路で検出した抵抗又は電圧を外部に出力する制御回路と、
前記点火電源回路、前記点火スイッチ回路及び前記自己点検回路における電圧を制限する定電圧回路と、
前記点火スイッチ回路と前記火工品との間に位置し、前記火工品を点火するためのイニシエータとを備え、
前記イニシエータは、所定の電流が通電することによって点火するようになっており、
前記点火電源回路、前記点火スイッチ回路、前記自己点検回路及び前記イニシエータとからなる回路は、所定の抵抗を有しており、
前記定電圧回路は、前記所定の抵抗と前記所定の電流の積を下回る値に設定をされている、ことを特徴とする自己点検機能付きの点火装置が提供される。
【0017】
また、本発明の実施形態によると、点検時において、前記点火電源回路、前記点火スイッチ回路及び前記自己点検回路に流れる電流を制限する定電流回路を備え、
前記定電流回路は、前記所定の電流を下回る値に設定をされている。
【0018】
さらに、本発明の実施形態によると、前記電源に接続され、点検時において、前記点検に必要な電圧の電力を蓄電する内部電源回路を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、点火装置の回路内に自己点検回路を設けたことによって、点検装置を別途取り付ける必要がなくなるため、点検時にイニシエータを取り付けた状態で点検をすることが可能になる。また、これによって、点検時に点検装置の取り付け及び取外しを行う必要がなくなるため、点検に要する時間を短縮することができる。
【0020】
また、点火装置の回路内に定電圧回路を設けたことによって、点検時に回路を流れる電流について、イニシエータの点火に要する電流を下回る値に設定することができるため、安全確実にイニシエータを含めた点検を行うことが可能になる。
【0021】
さらに、点火装置の回路内に自己点検回路等を制御する制御回路を設けたことによって、他の場所において制御回路から送信された点検結果のモニタが可能になり、人が立ち入ることなく点検を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来技術における点火装置の模式図である。
図2】従来技術における点火装置の基本回路構成の図である。
図3】本発明における自己点検機能付き点火装置の基本回路構成の概略図である。
図4】本発明における自己点検機能付き点火装置の基本回路構成の詳細図である。
図5】本発明の自己点検機能付き点火装置における制御回路の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0024】
図3(A)は、本発明における自己点検機能付き点火装置の基本回路構成の概略図であり、図3(B)は、本発明における点火装置内部の概略図である。また、図4は、本発明における自己点検機能付き点火装置の基本回路構成図の詳細図である。
図3において、1は電源、2は火工品、3は制御装置、4はテレメータ計測装置、5はSAD、10は点火装置、10aは点火電源回路、10bは点火スイッチ回路、10cは自己点検回路、10dは制御回路である。
また、図4において、2aはイニシエータ、11は充電回路、12は蓄電用コンデンサ、13aはアーミングスイッチ、13bはアーミングスイッチモニタ、14aは点火スイッチ、14bは点火スイッチモニタ、15aは点火スイッチ、15bは点火スイッチモニタ、16a、16bは接地抵抗、16c、16dは計測用抵抗、17a、17bは入力端子、17c、17dは出力端子、21は内部電源回路、22は定電圧回路、23は定電流回路、24は電圧制限回路、25は計測用スイッチ、26は校正用スイッチ、27は測定アンプである。
さらに、図5は、本発明の点火装置における制御回路の詳細図である。
この図において、31aは制御回路A、31bは制御回路Bである。
【0025】
図3(B)における点火電源回路10aは、電源1に接続され火工品2の点火に必要な電圧の電力を蓄電する機能を有するものであり、図4においては、11は充電回路、12は蓄電用コンデンサがこれに該当する。
なお、入力端子17a、17b及び出力端子17c、17dは、点火装置10と電源1等の外部機器を接続するために用いる端子である。
【0026】
点火スイッチ回路10bは、点火電源回路10aと火工品2とを接続又は切断する機能を有するものであり、図4においては、アーミングスイッチ13a、点火スイッチ14a、15a及びこれに伴うアーミングスイッチモニタ13b、点火スイッチモニタ14b、15bが該当する。
【0027】
自己点検回路10cは、点火電源回路10a、前記点火スイッチ回路10bの抵抗又は電圧を検出する機能を有するものであり、図4においては、内部電源回路21、定電圧回路22、定電流回路23、電圧制限回路24及び計測用抵抗16c、16d等がこれに該当する。
【0028】
制御回路10dは、点火スイッチ回路10bに接続又は切断について指示する制御信号を出力し、自己点検回路10cで検出した抵抗又は電圧を外部に出力する機能を有するものである。
【0029】
図4において、点火装置10における充電回路11は、入力側と出力側とを電気的に絶縁して電源を供給するためのものであり、制御回路10dからの充電制御によって出力側を「ON」または「OFF」に切り替えることが可能である。
また、蓄電用コンデンサ12は、充電回路11によって電圧が発生した際に、火工品2の点火をするためにその電荷を蓄積するものである。
なお、この例において、充電回路11と電源1との間に、外部からのノイズの侵入を防止し、または外部へのノイズの発散を低減するためにフィルタ(図示しない)を設ける構成であってもよい。
【0030】
アーミングスイッチ13a、点火スイッチ14a、15aは、上述した従来技術における構成と同様である。また、この例においては、これらのステータスをモニタリングするためにアーミングスイッチモニタ13b、点火スイッチモニタ14b、15bが備えつけられている。
【0031】
接地抵抗16a、16bは、静電気等により電圧が発生した場合において、アースラインにその電荷を逃がすためのものである。また、耐雷用の抵抗をして機能させることも可能である。
計測用抵抗16c、16dは、それぞれV1、V2における電圧を測定アンプ(図示しない)によって測定するためのものである。なお、この例において、それぞれ複数の抵抗器から構成されているのは、それぞれの抵抗器にかかる電圧を測定可能な電圧範囲(例えば、−10[V]〜10[V]程度)に収まるようにするためである。
【0032】
内部電源回路21は、点火装置10内の測定アンプ27等の各機器に電源を供給するものである。また、点検用の回路である定電圧回路22、定電流回路23、電圧制限回路24等に電源を供給するためのものである。
【0033】
定電圧回路22、定電流回路23、電圧制限回路24は、内部電源回路21で発生した電流、電圧を所定の値以下に制限するためのものである。
この例においては、図4に示すように火工品2を点火させるための着火薬であるイニシエータ2aを備えているものを想定している。このイニシエータ2aは、例えば、5[A]の電流を4[ms]流すことによって確実に点火し、これによってその先に連結された火工品2を点火させるものである。なお、点検時においては、安全性の観点から火工品2を接続していない状態で点検を行う。
ここで、イニシエータ2aの点検を行う場合、イニシエータ2aの点火を防止するため、点火に必要な電流よりも十分に小さい値で点検を行う必要がある。例えば、このイニシエータ2aが、1[A]の電流を通電しても点火しないことを保証するものである場合においては、この定電流回路23によって、各回路の点検を行うために通電させる電流を1[A]以下に抑える役割を担っている。
【0034】
上記のように定電流回路23によって点検を行う際の電流を抑えても、この例においては、蓄電用コンデンサ12とイニシエータ2a間の回路については電流制限がされていない。そのため、蓄電用コンデンサ12が意図しないタイミングで放電してしまった場合、点検中にイニシエータ2aを点火させてしまう場合が考えられる。
そこで、定電圧回路22又は電圧制限回路24は、仮に蓄電用コンデンサ12が意図しないタイミングで放電をした場合においても、イニシエータ2aが点火しない電圧に抑えるためのものである。
具体的には、例えば、イニシエータ2aの抵抗を1[Ω]とし、イニシエータ2aが点火しない電流の上限を1[A]とした場合、定電圧回路22又は電圧制限回路24における設定値を、オームの法則より電圧を1[V]以下に設定することによって、意図しないタイミングで放電した場合においてもイニシエータ2aの点火を防ぐことができるというものである。
なお、図4においては、定電圧回路22と電圧制限回路24の両方を用いているが、上記のように電圧を制限することができれば、どちらかの機器のみを用いる構成であってもよい。
【0035】
さらに、定電流回路23が点検時に流れる電流を一定にすることにより、蓄電用コンデンサ12に蓄電される電荷[C]は、時間に比例して増加することになる。この場合、蓄電用コンデンサ12の静電容量[F]が一定であるとすると、ファラデーの法則より、電圧[V]も時間に比例して増加していくことになる。そのため、蓄電用コンデンサ12の電圧増加の比率が変化(電圧が一定の割合で増加しているか否か)を監視することによって蓄電用コンデンサ12の正常性を点検することも可能になるというメリットを有している。
【0036】
校正用スイッチ26は、イニシエータ2aを含めた点検実施時の比較データを取得するためのものである。具体的には、イニシエータ2aの抵抗値に対応させた基準抵抗26aを設けておき、校正用スイッチ26を「ON」にして通電させ、基準抵抗26aにおける電圧を計測するものである。イニシエータ2aに導通確認を行った場合において、その電圧が基準抵抗26aにおける電圧を大きく異なることを検知することによって、回路が欠陥を有していることを発見することが可能になるからである。
【0037】
測定アンプ27は、V1、V2における電圧を測定する測定アンプと同様に、状況に応じた電圧を測定するものである。特に測定アンプ27は、定電圧回路22、電圧制限回路24の正常性確認に用いられる。
【0038】
制御回路10dは、この例においては、制御回路A31aと制御回路B31bから構成されており、マイコン等からなるものでよい。
制御回路A31aは、制御装置3(点検スイッチ制御装置3a)からの指示を受けて点火スイッチ14a及び点火スイッチ15aの「ON」または「OFF」の制御を行い、また、測定アンプ(図示しない)からのV1、V2における電圧計測結果や測定アンプ27による電圧計測結果をテレメータ計測装置4に出力する。
また、制御回路B31bは、制御装置3(アーミングスイッチ制御装置3b)からの指示を受けてアーミングスイッチ13aの「ON」または「OFF」の制御を行い、また、アーミングスイッチモニタ13bからの計測結果をテレメータ計測装置4に出力する。
【0039】
なお、本発明において、電源1、火工品2、制御装置3、テレメータ計測装置4及びSAD5の機能は上述した従来技術による構成を同じである。
【0040】
次に、図4に基づいて点検時における点火装置10の動作について説明する。
(1)点火装置10の外部から電源1が供給されることによって、内部電源回路21から回路電源Vccが発生し、制御回路10d、アーミングスイッチモニタ13b、点火スイッチモニタ14b、点火スイッチモニタ15b、測定アンプ27等を起動する。なお、充電回路11は、制御回路10dからの指示があるまで充電を開始しない設定にしておく。
(2)制御回路A31a及び制御回路B31bの機能について正常性を確認する。
(3)計測用抵抗16cの電圧V1及び計測用抵抗16dの電圧V2を測定アンプ(図示しない)によって測定し、それぞれ電圧が0[V]であることを確認する。また、測定アンプ27の電圧を測定する。
(4)アーミングスイッチ13a、点火スイッチ14a及び点火スイッチ15aのステータスをアーミングスイッチモニタ13b、点火スイッチモニタ14b及び点火スイッチモニタ15bによって確認し、それぞれのスイッチが「OFF」になっていることを確認する。これによって、火工品2の誤発火等を防止することができる。
(5)イニシエータ2aを含めた点検実施時の比較データを取得するために、校正用スイッチ26を「ON」にして通電させ、基準抵抗26aにおける電圧を計測する。計測終了後、校正用スイッチ26を「OFF」にする
(6)内部電源回路21により蓄電用コンデンサ12に充電及び放電を行い、蓄電用コンデンサ12の正常性を確認する。
(7)計測用スイッチ25を「ON」にし、所定時間経過後、測定アンプ(図示しない)によってV1、V2における電圧を計測する。その後、V1における電圧が電圧制限回路24によって制限された電圧と同値であるかを確認して電圧制限回路24の正常性を確認する。
また、V2における電圧が0[V]であることを確認し、アーミングスイッチ13aが「OFF」になっていることを確認する。
(8)(7)の後、アーミングスイッチ13aを「ON」にして、V2における電圧が0[V]から上昇していることを確認する。また、アーミングスイッチモニタ13bのステータスが「ON」になっていることを確認する。
(9)(8)の後、計測用スイッチ25を「OFF」にし、V1における電圧が所定の逓減状況であることを確認する。
(10)アーミングスイッチ13a、点火スイッチ14a及び点火スイッチ15aを「ON」にして、イニシエータ2aを含めた導通を確認する。また、上記(5)で求めた基準抵抗26aにおける電圧を比較して、抵抗値の変化の有無について確認する。
(11)アーミングスイッチ13a、点火スイッチ14a及び点火スイッチ15aを「OFF」にした後、充電回路11を起動させ、点火時における電圧によって蓄電用コンデンサ12を充電し、その充電時間及び電圧から充電機能を確認する。
(12)充電回路11による充電完了後、蓄電用コンデンサ12の電圧を継続計測し、規定時間内に電圧が低下することの確認を行う。
【0041】
上記点火装置10においては、アーミングスイッチ13aが1つ、点火スイッチ14a、15aが2つ有している例について説明を行ったが、この例に限定されず、それぞれ1つ又は2以上有するものであってもよい。
【0042】
また、この例においては、点火装置10外部の制御装置3からの指示によって、点検を開始する構成について説明を行ったが、点火装置10内に自動点検プログラムとして組み込む構成であってもよい。
【0043】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 電源、2 火工品、3 制御装置、
3a 点火スイッチ制御装置、3b アーミングスイッチ制御装置、
4 テレメータ計測装置、5 SAD、
10 点火装置、10a 点火電源回路、
10b 点火スイッチ回路、10c 自己点検回路、10d 制御回路、
11 充電回路、12 蓄電用コンデンサ、
13a アーミングスイッチ、13b アーミングスイッチモニタ、
14a 点火スイッチ、14b 点火スイッチモニタ、
15a 点火スイッチ、15b 点火スイッチモニタ、
16a、16b 接地抵抗、16c、16d 計測用抵抗、
17a、17b 入力端子、17c、17d 出力端子、
21 内部電源回路、22 定電圧回路、23 定電流回路、
24 電圧制限回路、25 計測用スイッチ、
26 校正用スイッチ26、26a 基準抵抗、27 測定アンプ、
31a 制御回路A、31b 制御回路B、
51 電源、52 点火装置、53 火工品、
54 SAD、55 点検装置、56 制御装置、
56a 点火スイッチ制御装置、56b アーミングスイッチ制御装置、
57 テレメータ計測装置、
61a アーミングスイッチ、
61b アーミングスイッチ制御信号、
62a 切替スイッチ、62b 切替スイッチ制御信号、
63a 点火スイッチ、63b 点火スイッチ制御信号
図1
図2
図3
図4
図5