(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電極を囲む溶接ノズルと、前記溶接ノズルを冷却する冷媒を流す冷媒流路と、前記冷媒流路内にて冷媒を循環させる冷媒循環装置と、を用いるアーク溶接方法のための溶接用装置であって、
前記冷媒流路内の冷媒の温度に基づいて、ノズル温度上昇注意信号を生成する注意信号生成回路と、
前記溶接ノズルに対する前記冷媒の冷却能力に関する冷却能力情報を算出する冷却能力情報算出回路と、
前記電極および母材の間の溶接アークから前記溶接ノズルへの入熱率に関する入熱率情報を算出する入熱率情報算出回路と、を更に備え、
前記冷却能力情報算出回路は、前記冷媒流路内の冷媒の温度に基づいて、前記冷却能力情報を算出し、
前記入熱率情報算出回路は、前記電極および母材との間の溶接電圧の電圧値と、前記電極および前記母材との間に流れる溶接電流の電流値と、に基づいて、前記入熱率情報を算出し、
前記注意信号生成回路は、前記冷却能力情報として算出された単位時間当たりに前記溶接ノズルから前記冷媒に放出可能な熱量が、前記入熱率情報として算出された単位時間あたりに前記溶接ノズルへ溶接アークから入熱する熱量よりも小となったと判断した場合に、前記ノズル温度上昇注意信号を生成する、溶接用装置。
前記注意信号生成回路は、前記温度予測回路によって予測された溶接ノズルの温度が基準温度を超えると、ノズル温度上昇注意信号を生成する、請求項2ないし請求項8のいずれかに記載の溶接用装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷媒たる水を循環させるためには冷媒循環装置を用いる。冷媒循環装置の周囲の気温が高い場合や冷媒循環装置の能力が低い場合、プラズマノズルを十分に冷却できない可能性がある。プラズマノズルを十分に冷却できないと、プラズマノズルが溶融してしまい、プラズマノズルが損傷するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、溶接ノズルの溶融を防止するための対処を、容易に行うことができる溶接用装置を提供することをその主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によると、電極および前記電極を囲む溶接ノズルを含むトーチと、前記溶接ノズルを冷却する冷媒を流す冷媒流路と、前記冷媒流路内にて冷媒を循環させる冷媒循環装置と、を用いるアーク溶接方法のための溶接用装置であって、前記冷媒流路内の冷媒の温度に基づいて、ノズル温度上昇注意信号を生成する注意信号生成回路を備える、溶接用装置が提供される。
【0008】
好ましくは、前記冷媒流路内の冷媒の温度と、前記冷媒流路内の冷媒の流動要素と、に基づき、前記溶接ノズルの温度を予測する温度予測回路を更に備え、前記注意信号生成回路は、前記温度予測回路によって予測された溶接ノズルの温度に基づき、前記ノズル温度上昇注意信号を生成する。
【0009】
好ましくは、前記冷媒流路内の冷媒の温度を検出する第1温度検出機構と、前記冷媒流路内の冷媒の流動要素を検出する流動要素検出機構と、を更に備え、前記温度予測回路は、前記第1温度検出機構によって検出された温度と、前記流動要素検出機構によって検出された流動要素と、に基づき、前記溶接ノズルの温度を予測する。
【0010】
好ましくは、前記冷媒流路は、前記冷媒循環装置から前記溶接ノズルに向かって冷媒が流れる送路と、前記溶接ノズルから前記冷媒循環装置に向かって冷媒が流れる復路と、を含み、前記第1温度検出機構は、前記復路内の冷媒の温度を検出する。
【0011】
好ましくは、前記冷媒流路内の冷媒の温度を検出する第2温度検出機構を更に備え、前記第2温度検出機構は、前記送路内の冷媒の温度を検出し、前記温度予測回路は、前記第2温度検出機構によって検出された温度に基づき、前記溶接ノズルの温度を予測する。
【0012】
好ましくは、前記電極および母材に溶接電流を流す電源回路を更に備える。
【0013】
好ましくは、前記電源回路は、前記注意信号生成回路から前記ノズル温度上昇注意信号を受けると、前記溶接電流の電流値を減少させる。
【0014】
好ましくは、前記電極の周囲に流れる溶接ガスのガス流量を制御する溶接ガス流量制御回路を更に備え、前記溶接ガス流量制御回路は、前記注意信号生成回路から前記ノズル温度上昇注意信号を受けると、前記ガス流量を増加させるための信号を生成する。
【0015】
好ましくは、前記注意信号生成回路は、前記温度予測回路によって予測された溶接ノズルの温度が基準温度を超えると、ノズル温度上昇注意信号を生成する。
【0016】
好ましくは、前記冷媒の流動要素とは、前記冷媒の圧力、あるいは、前記冷媒の流速である。
【0017】
好ましくは、前記電源回路を収容する筺体を更に備え、前記温度予測回路は、前記筺体に支持されている。
【0018】
好ましくは、前記溶接ノズルに対する前記冷媒の冷却能力に関する冷却能力情報を算出する冷却能力情報算出回路を更に備え、前記冷却能力情報算出回路は、前記冷媒流路内の冷媒の温度に基づいて、前記冷却能力情報を算出し、前記注意信号生成回路は、前記冷却能力情報に基づいて、前記ノズル温度上昇注意信号を生成する。
【0019】
好ましくは、前記冷媒流路は、前記冷媒循環装置から前記溶接ノズルに向かって冷媒が流れる送路と、前記溶接ノズルから前記冷媒循環装置に向かって冷媒が流れる復路と、を含み、前記冷却能力情報算出回路は、前記送路内の冷媒の温度に基づいて、前記冷却能力情報を算出する。
【0020】
好ましくは、前記送路内の冷媒の温度を検出する送路内冷媒温度検出機構を更に備え、前記冷却能力情報算出回路は、前記送路内冷媒温度検出機構によって検出された温度に基づいて、前記冷却能力情報を算出する。
【0021】
好ましくは、前記復路内の冷媒の温度を検出する復路内冷媒温度検出機構を更に備え、前記冷却能力情報算出回路は、前記復路内冷媒温度検出機構によって検出された温度に基づいて、前記冷却能力情報を算出する。
【0022】
好ましくは、冷媒循環装置の配置される環境の気温を検出する気温検出機構を更に備え、前記冷却能力情報算出回路は、前記気温に基づいて、前記冷却能力情報を算出する。
【0023】
好ましくは、前記電極および母材の間の溶接アークから前記溶接ノズルへの入熱率に関する入熱率情報を算出する入熱率情報算出回路を更に備え、前記注意信号生成回路は、前記入熱率情報に基づいて、前記ノズル温度上昇注意信号を生成する。
【0024】
好ましくは、前記入熱率情報算出回路は、前記電極および母材との間の溶接電圧の電圧値と、前記電極および前記母材との間に流れる溶接電流の電流値と、に基づいて、前記入熱率情報を算出する。
【0025】
好ましくは、前記電極および母材に溶接電流を流す電源回路を更に備える。
【0026】
好ましくは、前記電源回路は、前記注意信号生成回路から前記ノズル温度上昇注意信号を受けると、前記溶接電流の電流値を減少させる。
【0027】
好ましくは、前記入熱率情報算出回路は、前記電流値を減少させる前においては、減少させる前の前記溶接電流の電流値に基づいて、前記入熱率情報を算出し、前記電流値を減少させた後においては、減少させた後の前記溶接電流の電流値に基づいて、前記入熱率情報を算出する。
【0028】
好ましくは、前記電極の周囲に流れる溶接ガスのガス流量を制御する溶接ガス流量制御回路を更に備え、前記溶接ガス流量制御回路は、前記注意信号生成回路から前記ノズル温度上昇注意信号を受けると、前記ガス流量を増加させるための信号を生成する。
【0029】
好ましくは、前記溶接ノズルの温度が上昇することをユーザに注意するノズル温度上昇注意情報を報知する報知部を更に備え、前記報知部は、前記ノズル温度上昇注意信号が生成されると、前記ノズル温度上昇注意情報を報知する。
【0030】
好ましくは、前記電源回路を収容する筺体を更に備え、前記冷却能力情報算出回路は、前記筺体に支持されている。
【0031】
本発明の第2の側面によると、本発明の第1の側面によって提供される溶接用装置と、前記溶接ノズルと、前記冷媒流路と、前記冷媒循環装置と、を備える、アーク溶接システムが提供される。
【0032】
本発明の第3の側面によると、電極および前記電極を囲む溶接ノズルを含むトーチと、前記溶接ノズルを冷却する冷媒を流す冷媒流路と、前記冷媒流路内にて冷媒を循環させる冷媒循環装置と、を用いるアーク溶接方法であって、前記冷媒流路内の冷媒の温度に基いて、ノズル温度上昇注意信号を生成する工程を備える、アーク溶接方法が提供される。
【0033】
好ましくは、前記冷媒流路内の冷媒の温度と、前記冷媒流路内の冷媒の流動要素と、に基づき、前記溶接ノズルの温度を予測する工程を更に備え、前記ノズル温度上昇注意信号を生成する工程においては、前記溶接ノズルの温度を予測する工程において予測された溶接ノズルの温度に基づき、前記ノズル温度上昇注意信号を生成する。
【0034】
好ましくは、前記冷媒流路は、前記冷媒循環装置から前記溶接ノズルに向かって冷媒が流れる送路と、前記溶接ノズルから前記冷媒循環装置に向かって冷媒が流れる復路と、を含み、前記溶接ノズルの温度を予測する工程では、前記冷媒流路内の冷媒の温度として前記復路内の冷媒の温度を用いて、前記溶接ノズルの温度を予測する。
【0035】
好ましくは、前記溶接ノズルの温度を予測する工程では、前記送路内の冷媒の温度に基づき、前記溶接ノズルの温度を予測する。
【0036】
好ましくは、前記ノズル温度上昇注意信号が生成されると、前記電極と母材との間に流れる溶接電流の電流値を減少させる工程を更に備える。
【0037】
好ましくは、前記ノズル温度上昇注意信号が生成されると、前記電極の周囲に流れる溶接ガスのガス流量を増加させる工程を更に備える。
【0038】
好ましくは、前記冷媒の流動要素とは、前記冷媒の圧力、あるいは、前記冷媒の流速である。
【0039】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0042】
<第1実施形態>
図1〜
図5を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。
【0043】
図1は、本発明の第1実施形態にかかるアーク溶接システムの構成を示すブロック図である。
【0044】
同図に示すアーク溶接システムA1は、溶接ロボット1と、動作制御回路2と、パイロットアーク用電源3と、溶接アーク用電源4と、冷媒循環装置6と、冷媒流路7と、溶接ガス供給装置81と、シールドガス供給装置82と、を備える。
【0045】
溶接ロボット1は、母材Wに対してアーク溶接を自動で行うものである。本実施形態においては、溶接ロボット1は、母材Wに対してプラズマアーク溶接を自動で行うものである。溶接ロボット1は、マニピュレータ11と、トーチ12と、を含む。
【0046】
マニピュレータ11は、たとえば多関節ロボットである。トーチ12は、マニピュレータ11の駆動により、上下前後左右に自在に移動できる。
図2によく表れているように、トーチ12は、電極121と、溶接ノズル122と、シールドガスノズル123とを有する。
【0047】
電極121は、非消耗電極であり、たとえばタングステンからなる金属棒である。溶接ノズル122は筒状の部材である。溶接ノズル122は電極121を囲んでいる。溶接ノズル122はノズル開口122aを有する。ノズル開口122aは、電極121の先端の位置する側とは反対側に開放している。
【0048】
溶接ノズル122内を溶接ガスPG(プラズマガス)が流れる。溶接ガスPGを媒体として、溶接ノズル122と電極121との間にパイロットアークPa1が発生する。パイロットアークPa1が発生している際、溶接ノズル122と電極121との間には、パイロット電流Ip1が流れる。なお、パイロット電流Ip1の電流値とは、特に断りのない限り、パイロット電流Ip1の電流値の絶対値の時間平均値のことを意味する。
【0049】
電極121と母材Wとの間には、溶接アークPa2が発生する。溶接アークPa2は、ノズル開口122aに拘束される。溶接アークPa2が発生している際、電極121と母材Wとの間には、溶接電流Ip2が流れる。溶接電流Ip2は、母材Wの材質に応じて、直流もしくは交流いずれかが選択される。溶接電流Ip2は、直流のパルス電流である場合もあるし、交流のパルス電流である場合もある。なお、溶接電流Ip2の電流値とは、特に断りのない限り、溶接電流Ip2の電流値の絶対値の時間平均値のことを意味する。溶接アークPa2が発生している際、電極121と母材Wとの間には、溶接電圧Vpが印加される。
【0050】
シールドガスノズル123は筒状の部材である。シールドガスノズル123は溶接ノズル122を囲んでいる。シールドガスノズル123と溶接ノズル122との間を、シールドガスSGが流れる。本実施形態とは異なり、トーチ12は、シールドガスノズル123を含んでいなくてもよい。
【0051】
動作制御回路2は、マイクロコンピュータおよびメモリ(ともに図示略)を有している。このメモリには、溶接ロボット1の各種の動作が設定された作業プログラムが記憶されている。動作制御回路2はロボット移動速度Vrを制御する。ロボット移動速度Vrは、母材Wに沿った溶接進行方向Drにおける、母材Wに対する電極121の速度である。動作制御回路2は、上記作業プログラム、溶接ロボット1におけるエンコーダからの座標情報、およびロボット移動速度Vr等に基づき、溶接ロボット1に対して動作制御信号Msを送る。溶接ロボット1は動作制御信号Msを受け、マニピュレータ11を駆動させ、トーチ12が、母材Wにおける所定の溶接開始位置に移動したり、母材Wの面内方向に沿って移動したりする。一方、動作制御回路2は定常溶接開始信号Ssを受ける。
【0052】
パイロットアーク用電源3は、電極121と溶接ノズル122との間にパイロット電流Ip1を流す。パイロットアーク用電源3は、パイロット電流Ip1の電流値を、設定された値となるように制御する。
【0053】
冷媒循環装置6は、冷媒流路7内にて冷媒Rfを循環させるためのものである。冷媒循環装置6は、たとえば、冷媒Rfを流すためのポンプ(図示略)を含む。冷媒Rfは、液体であり、たとえば水である。
【0054】
冷媒流路7は、溶接ノズル122を冷却する冷媒Rfを流すためのものである。溶接アークPa2から溶接ノズル122に伝わった熱は、冷媒Rfに伝わる。冷媒Rfに伝わった熱は、主に、冷媒循環装置6にて冷媒Rfの外部に放出される。冷媒流路7の一部は、パイプによって構成される。
図2に示すように、本実施形態において、冷媒流路7の一部は、溶接ノズル122によって構成されている。
【0055】
図1、
図2、
図5に示すように、冷媒流路7は、送路71および復路72を含む。送路71は、冷媒流路7のうち、冷媒循環装置6から溶接ノズル122に向かって冷媒Rfが流れる部分である。復路72は、冷媒流路7のうち、溶接ノズル122から冷媒循環装置6に向かって冷媒Rfが流れる部分である。
【0056】
溶接アーク用電源4は、本発明の溶接用装置の一例に相当する。溶接アーク用電源4は、電源回路41と、電流検出回路421と、定常溶接開始判断回路422と、温度予測ユニット43と、基準温度記憶部439と、注意信号生成回路44と、溶接ガス流量制御回路491と、シールドガス流量制御回路492と、を含む。
【0057】
電源回路41は、たとえば3相200V等の商用電源を入力として、インバータ制御、サイリスタ位相制御等の出力制御を行う。これにより、電源回路41は、電極121および母材Wの間に溶接電流Ip2を流す。電源回路41は、溶接電流Ip2の電流値を、設定された値となるように制御する。すなわち、電源回路41は定電流制御を行う。電源回路41は、ノズル温度上昇注意信号Sar(後述)を受ける。
【0058】
電流検出回路421は、電極121と母材Wとの間に流れる溶接電流Ip2の電流値を検出するためのものである。電流検出回路421は、溶接電流Ip2の電流値に対応する電流検出信号Idを送る。
【0059】
定常溶接開始判断回路422は、定常溶接を開始すべきか否かを判断する。本実施形態においては、定常溶接開始判断回路422は、電流検出信号Idを受ける。そして、定常溶接開始判断回路422は、電流検出信号Idに基づき(すなわち溶接電流Ip2の電流値に基づき)、定常溶接を開始すべきか否かを判断する。本実施形態とは異なり、定常溶接開始判断回路422は、溶接電圧Vpの印加がされたことに基づき、定常溶接を開始すべきか否かを判断してもよい。定常溶接開始判断回路422は、定常溶接を開始すべきと判断すると、定常溶接開始信号Ssを生成する。定常溶接開始判断回路422は、生成した定常溶接開始信号Ssを、動作制御回路2に送る。
【0060】
温度予測ユニット43は、溶接ノズル122の温度を予測するためのものである。温度予測ユニット43は、温度予測回路431と、第1温度検出機構432と、第2温度検出機構433と、流動要素検出機構434と、を含む。
【0061】
第1温度検出機構432は、温度センサであり、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度を検出するためのものである。
図1、
図5に示すように、本実施形態では、第1温度検出機構432は、復路72内の冷媒Rfの温度を検出する。第1温度検出機構432は、検出した温度に対応する第1温度信号Td1を温度予測回路431に送る。
【0062】
第2温度検出機構433は、温度センサであり、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度を検出するためのものである。
図1、
図5に示すように、本実施形態では、第2温度検出機構433は、送路71内の冷媒Rfの温度を検出する。第2温度検出機構433は、検出した温度に対応する第2温度信号Td2を温度予測回路431に送る。
【0063】
流動要素検出機構434は、冷媒流路7内の冷媒Rfの流動要素を検出するためのものである。本実施形態では、流動要素検出機構434は圧力センサであり、流動要素は冷媒Rfの圧力である。本実施形態とは異なり、流動要素検出機構434が流速センサであり、流動要素が冷媒Rfの流速であってもよい。本実施形態では、流動要素検出機構434は復路72内の流動要素を検出する。本実施形態とは異なり、流動要素検出機構434は送路71内の流動要素を検出してもよい。流動要素検出機構434は、検出した流動要素に対応する流動要素信号Pdを温度予測回路431に送る。
【0064】
温度予測回路431は、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度と、冷媒流路7内の冷媒Rfの流動要素と、に基づき、溶接ノズル122の温度を予測する。溶接ノズル122の温度とは、溶接ノズル122におけるノズル開口122a近傍の温度である。本実施形態では、温度予測回路431は、第1温度検出機構432から第1温度信号Td1を受け、流動要素検出機構434から流動要素信号Pdを受ける。そして、温度予測回路431は、第1温度信号Td1および流動要素信号Pdに基づき、溶接ノズル122の温度を予測する。すなわち、温度予測回路431は、第1温度検出機構432によって検出された冷媒Rfの温度と、流動要素検出機構434によって検出された冷媒Rfの流動要素と、に基づき、溶接ノズル122の温度を予測する。
【0065】
本実施形態では更に、温度予測回路431は、第2温度検出機構433から第2温度信号Td2を受ける。そして、温度予測回路431は、第1温度信号Td1および流動要素信号Pdに加え、第2温度信号Td2に基づき、溶接ノズル122の温度を予測する。すなわち、温度予測回路431は、第1温度検出機構432によって検出された冷媒Rfの温度と、流動要素検出機構434によって検出された冷媒Rfの流動要素と、に加え、第2温度検出機構433によって検出された冷媒Rfの温度に基づき、溶接ノズル122の温度を予測する。温度予測回路431は、予測した溶接ノズル122の温度に対応する予測温度信号Tanを注意信号生成回路44に送る。
【0066】
温度予測回路431による溶接ノズル122の温度の予測は、たとえば、テーブルを用いたり、あるいは、連立方程式を用いたりすることにより、行う。温度予測回路431による溶接ノズル122の温度の予測に、テーブルを用いる場合、たとえば、次の考え方を用いるとよい。
【0067】
図4(a)は、冷媒流路7内の冷媒Rfの流動要素と送路71内の冷媒Rfの温度とが一定である場合の、復路72内の冷媒Rfの温度と、溶接ノズル122の温度との相関関係を模式的に示している。復路72内の冷媒Rfの温度が高いほど、溶接ノズル122の温度が高くなる傾向にあると考えられる。復路72内の冷媒Rfの温度が高いことは、溶接ノズル122の温度が比較的高いことを意味するからである。
【0068】
図4(b)は、送路71内の冷媒Rfの温度と復路72内の冷媒Rfの温度とが一定である場合の、冷媒流路7内の冷媒Rfの流動要素(冷媒Rfの圧力あるいは冷媒Rfの流速)と、溶接ノズル122の温度との相関関係を模式的に示している。冷媒流路7内の冷媒Rfの流動要素(冷媒Rfの圧力あるいは冷媒Rfの流速)が大きければ、溶接ノズル122の温度は高くなる傾向にあると考えられる。たとえば、復路72内の冷媒Rfの温度が90℃であり、送路71内の冷媒Rfの温度が60℃である条件下において、冷媒Rfの流動要素が大きければ、溶接ノズル122の温度は高いと考えられる。冷媒Rfの流動要素が大きければ、溶接ノズル122から冷媒Rfに伝わる単位時間当たりの熱量は多く、溶接ノズル122から冷媒Rfに伝わる単位時間当たりの熱量が多いことは、溶接ノズル122の温度が比較的高いことを意味するからである。
【0069】
図4(c)は、冷媒流路7内の冷媒Rfの流動要素が一定である場合の、復路72内の冷媒Rfの温度と送路71内の冷媒Rfの温度との差、および、溶接ノズル122の温度の相関関係を模式的に示している。復路72内の冷媒Rfの温度と送路71内の冷媒Rfの温度との差が大きいほど、溶接ノズル122の温度が高いと考えられる。復路72内の冷媒Rfの温度と送路71内の冷媒Rfの温度との差が大きいことは、溶接ノズル122から冷媒Rfに多くの熱が伝わったことを意味し、これは、溶接ノズル122の温度が比較的高いことを意味するからである。
【0070】
図4(a)〜
図4(c)に示した考え方を基に、復路72内の冷媒Rfの温度、送路71内の冷媒Rfの温度、および冷媒流路7内の流動要素と、溶接ノズル122の温度との関係を示すテーブルを、作成するとよい。テーブルは、実際に実験を行い、サーモグラフィで溶接ノズル122の温度を計測することにより、作成するとよい。
【0071】
一方、温度予測回路431による溶接ノズル122の温度の予測を、テーブルを用いずに連立方程式を用いて行う場合には、ナビエ・ストークスの方程式および熱伝導方程式を用いて、溶接ノズル122の温度を計算してもよい。
【0072】
基準温度記憶部439は、基準温度Tthを記憶している。基準温度Tthは、予め基準温度記憶部439に記憶されていてもよいし、溶接を行うたびに、アーク溶接システムA1のユーザが指示してもよい。
【0073】
注意信号生成回路44は、予測温度信号Tanを受ける。注意信号生成回路44は、温度予測回路431によって予測された温度(予測温度信号Tan)が基準温度Tthを超えると、ノズル温度上昇注意信号Sarを生成する。注意信号生成回路44は、生成したノズル温度上昇注意信号Sarを、電源回路41および溶接ガス流量制御回路491に送る。
【0074】
図5に示すように、溶接アーク用電源4は、筺体499を含んでいる。筺体499は、電源回路41を収容している。本実施形態では、筺体499は温度予測回路431を支持しており、より具体的には、筺体499は温度予測回路431を収容している。そして、本実施形態においては、筺体499内に、冷媒流路7の一部(送路71の一部および復路72の一部)が配置されている。また、筺体499は、第1温度検出機構432と、第2温度検出機構433と、流動要素検出機構434と基準温度記憶部439と注意信号生成回路44とを収容している。図示しないが、筺体499にはたとえば操作用のパネル(図示略)が取り付けられている。
【0075】
溶接ガス流量制御回路491は、溶接ガスPGの流量を制御するためのものである。溶接ガス流量制御回路491は、溶接ガスPGの流量を指示するための溶接ガス流量制御信号Spgを送る。溶接ガス流量制御回路491は、ノズル温度上昇注意信号Sarを受ける。
【0076】
シールドガス流量制御回路492は、シールドガスSGの流量を制御するためのものである。シールドガス流量制御回路492は、シールドガスSGの流量を指示するためのシールドガス流量制御信号Ssgを送る。
【0077】
溶接ガス供給装置81は、溶接ガスPGを溶接ノズル122の内部に供給するためのものである。溶接ガス供給装置81は、溶接ガス流量制御回路491から受けた溶接ガス流量制御信号Spgに基づき、溶接ガスPGを供給する。
【0078】
シールドガス供給装置82は、シールドガスSGを溶接ノズル122とシールドガスノズル123との間に供給するためのものである。シールドガス供給装置82は、シールドガス流量制御回路492から受けたシールドガス流量制御信号Ssgに基づき、シールドガスSGを供給する。
【0079】
次に、
図3を更に用いて、アーク溶接システムA1を用いたアーク溶接方法について説明する。
【0080】
図3は、アーク溶接システムA1を用いたアーク溶接方法における各信号等のタイミングチャートである。同図では、(a)はパイロット電流Ip1の電流値、(b)は溶接電流Ip2の電流値、(c)は定常溶接開始信号Ss、(d)はロボット移動速度Vr、(e)はノズル温度上昇注意信号Sar、(f)は予測温度信号Tan、(g)は溶接ガスPGの流量のそれぞれの変化状態を示す。
【0081】
時刻t11において、パイロットアーク用電源3にパイロットアーク電流通電開始信号(図示略)が送られることにより、電極121と溶接ノズル122との間に、パイロットアークPa1が発生する。これにより、同図(a)に示すように、パイロット電流Ip1の通電が開始する。時刻t11から流れるパイロット電流Ip1の電流値は、たとえば1〜20Aであり、好ましくは5〜20Aである。なお、パイロットアークPa1の発生(すなわちパイロット電流Ip1の通電の開始)は、電極121と溶接ノズル122との間に、高周波であり且つ非常に高い電圧を印加することにより行う。パイロットアークPa1を発生させるための当該電圧の周波数は、数MHzである。パイロットアークPa1を発生させるための当該電圧の電圧値は、数kVである。また、同図(g)に示すように、時刻t11において、溶接ガスPGが流れ始める。本実施形態とは異なり、時刻t11以前に、溶接ガスPGが流れ始めてもよい。
【0082】
時刻t12において、電源回路41は、電極121と母材Wとの間に溶接電圧Vpを印加する。溶接電圧Vpの電圧値の絶対値の時間平均値(以下、溶接電圧Vpの絶対値の時間平均値を、適宜、溶接電圧Vpの電圧値と呼ぶ)は、たとえば、20〜40Vである。電極121の先端近傍の空間には、パイロットアークPa1によってプラズマ雰囲気が形成されている。そのため、パイロットアークPa1に誘発されて、溶接アークPa2が電極121と母材Wとの間に発生する。これにより、同図(b)に示すように、時刻t12において、溶接電流Ip2の通電が開始する。
【0083】
同図(c)に示すように、時刻t13において、定常溶接開始判断回路422は、溶接電流Ip2の通電が開始した後に、定常溶接を開始すべきと判断し、定常溶接開始信号Ssを生成する。このように定常溶接開始判断回路422は、溶接電流Ip2が流れている間(溶接アークPa2が発生している間)に定常溶接開始信号Ssを生成する。定常溶接開始判断回路422は、生成した定常溶接開始信号Ssを動作制御回路2に送る。
【0084】
同図(d)に示すように、時刻t13において、動作制御回路2は、定常溶接開始信号Ssを受けると、ロボット移動速度Vrを予め定められた速度とするための動作制御信号Msを溶接ロボット1に送る。これにより、時刻t13において、溶接進行方向Drにおける、電極121の母材Wに対する移動が開始する。すなわち、動作制御回路2は、定常溶接開始信号Ssを受けると、溶接進行方向Drにおける、電極121の母材Wに対する移動を開始させる。このようにして、時刻t13から定常溶接が開始する。
【0085】
時刻t13以降の定常溶接の際、溶接アークPa2の熱が母材Wに伝わることにより、母材Wの溶接が行われる。一方、溶接アークPa2の熱の一部は、溶接ノズル122に伝わる。溶接ノズル122に伝わった熱は、冷媒流路7を流れる冷媒Rfに伝わる。これにより、溶接ノズル122の温度の上昇が抑制されている。アーク溶接システムA1の周囲の気温が高い場合や、冷媒循環装置6の能力が低い場合には、溶接ノズル122を十分に冷却できず、溶接ノズル122の温度が上昇することがある。
【0086】
上述のように、温度予測回路431は、逐次、溶接ノズル122の温度を予測している。同図(f)に示すように、時刻t14において、温度予測回路431によって予測された溶接ノズル122の温度(予測温度信号Tan)が基準温度Tthを超える。このとき、同図(e)に示すように、注意信号生成回路44は、ノズル温度上昇注意信号Sarを生成し、電源回路41および溶接ガス流量制御回路491に送る。なお、基準温度Tthは、溶接ノズル122の融点によって決定される。基準温度Tthは、たとえば、溶接ノズル122の融点よりも50℃低い値にするとよい。
【0087】
同図(b)に示すように、時刻t14において、電源回路41は、ノズル温度上昇注意信号Sarを受けると、溶接電流Ip2の電流値を減少させる。溶接電流Ip2の電流値の減少は、時刻t15にて終了する。そして、時刻t15以降、溶接電流Ip2の電流値は一定となる。
【0088】
時刻t14以前の溶接電流Ip2の電流値は、たとえば、150〜200Aであり、時刻t15以降の溶接電流Ip2の電流値の時間平均値は、たとえば、100〜150Aである。時刻t14〜時刻t15の間の溶接電流Ip2の電流値の時間平均値の減少値は、たとえば、10〜50Aである。溶接電流Ip2の電流値の時間平均値を減少させる期間(本実施形態では、時刻t14〜時刻t15)は、たとえば、5〜20secである。
【0089】
時刻t14において、溶接ガス流量制御回路491は、ノズル温度上昇注意信号Sarを受けると、溶接ガスPGのガス流量を増加させるための溶接ガス流量制御信号Spgを生成する。そして、溶接ガス流量制御回路491は、生成した溶接ガス流量制御信号Spgを溶接ガス供給装置81に送る。これにより、同図(g)に示すように、溶接ガスPGのガス流量が増加する。溶接ガスPGのガス流量の増加は、時刻t15にて終了する。そして、時刻t15以降、溶接ガスPGのガス流量は一定となる。本実施形態では、溶接ガスPGのガス流量の増加の終了時刻と、溶接電流Ip2の電流値の減少の終了時刻とが一致する例を示したが、溶接ガスPGのガス流量の増加の終了時刻と、溶接電流Ip2の電流値の減少の終了時刻とは、異なっていてもよい。
【0090】
時刻t14以前の溶接ガスPGのガス流量は、たとえば、0.4〜0.7L/minであり、時刻t15以降の溶接ガスPGのガス流量は、たとえば、0.7〜1.0L/minである。時刻t14〜時刻t15の間の溶接ガスPGのガス流量の増加量は、たとえば、0.1〜0.3L/minである。溶接ガスPGのガス流量を増加させる期間(本実施形態では、時刻t14〜時刻t15)は、たとえば、5〜20secである。
【0091】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0092】
本実施形態においては、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度に基づいて、ノズル温度上昇注意信号Sarを生成する注意信号生成回路44を備える。冷媒流路7内の冷媒Rfの温度は、溶接ノズル122の温度を反映した値となっている。よって、本実施形態によると、溶接ノズル122の温度を直接計測することなく、溶接ノズル122の温度を反映した値を用いてノズル温度上昇注意信号Sarを生成できる。したがって、ノズル温度上昇注意信号Sarを用いることにより、容易に、溶接ノズル122の溶融を防止するための対処を行うことができる。
【0093】
本実施形態においては、温度予測回路431は、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度と、冷媒流路7内の冷媒Rfの流動要素と、に基づき、溶接ノズル122の温度を予測する。このような構成では、溶接ノズル122の温度を直接計測することなく、溶接ノズル122の温度を予測することができる。よって、容易に、溶接ノズル122の温度を予測することができる。また、本実施形態では、予測された溶接ノズル122の温度に基づき、ノズル温度上昇注意信号Sarを生成する。このような構成によれば、ノズル温度上昇注意信号Sarに基づき、溶接ノズル122の溶融を防止するための対処が可能である。よって、本実施形態によると、溶接ノズル122の溶融を防止するための対処を、容易に行うことができる。
【0094】
本実施形態においては、温度予測回路431は、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度と、冷媒流路7内の冷媒Rfの流動要素と、に基づき、溶接ノズル122の温度を予測する。このような構成では、溶接ノズル122の温度を直接計測することなく、溶接ノズル122の温度を予測することができる。よって、容易に、溶接ノズル122の温度を予測することができる。また、本実施形態では、注意信号生成回路44が、温度予測回路431によって予測された冷媒Rfの温度が基準温度Tthを超えると、ノズル温度上昇注意信号Sarを生成する。このような構成によれば、ノズル温度上昇注意信号Sarに基づき、溶接ノズル122の溶融を防止するための対処が可能である。よって、本実施形態によると、溶接ノズル122の溶融を防止するための対処を、容易に行うことができる。
【0095】
本実施形態においては、電源回路41は、注意信号生成回路44からノズル温度上昇注意信号Sarを受けると、溶接電流Ip2の電流値を減少させる。このような構成によると、溶接アークPa2にて発生する単位時間当たりの熱量を減少させることが可能である。よって、溶接アークPa2から溶接ノズル122に伝わる単位時間当たりの熱量を減少させることができる。したがって、本実施形態によると、溶接ノズル122の温度上昇を抑制できる。これにより、溶接ノズル122の溶融を防止できる。
【0096】
本実施形態においては、溶接ガス流量制御回路491は、注意信号生成回路44からノズル温度上昇注意信号Sarを受けると、溶接ガスPGのガス流量を増加させるための信号を生成する。これにより、溶接ガスPGのガス流量が増加する。このような構成によると、溶接アークPa2から溶接ガスPGに伝わる単位時間当たりの熱量を、増大させることができる。これにより、溶接アークPa2から溶接ノズル122に伝わる単位時間当たりの熱量を減少させることができる。したがって、本実施形態によると、溶接ノズル122の温度上昇を抑制できる。これにより、溶接ノズル122の溶融を防止できる。
【0097】
溶接電流Ip2の電流値を減少させるのみであると、溶接アークPa2が細くなり、母材Wに形成されるビードの幅が狭くなったり、母材Wへの溶け込みが浅くなるおそれがある。本実施形態では、溶接電流Ip2の電流値を減少させ、しかも、溶接ガスPGのガス流量を増加させている。溶接ガスPGのガス流量を増加させると、母材Wにおけるより広い領域に熱を与えることができ、アーク圧力も増加するので、溶込み深さも増加する。よって、このような構成によると、母材Wに形成されるビードの幅が狭くなったり、母材Wへの溶け込みが浅くなることを極力回避できる。
【0098】
なお、ノズル温度上昇注意信号Sarが生成された後に、溶接電流Ip2の電流値の減少、および、溶接ガスPGのガス流量の増加のいずれもを行う必要は必ずしもない。たとえば、ノズル温度上昇注意信号Sarが生成された後に、溶接電流Ip2の電流値を一定に維持したまま、溶接ガスPGのガス流量を増加させることのみを行なってもよい。あるいは、ノズル温度上昇注意信号Sarが生成された後に、溶接ガスPGのガス流量を一定に維持したまま、溶接電流Ip2の電流値を減少させることのみを行なってもよい。更には、ノズル温度上昇注意信号Sarが生成された後に、溶接電流Ip2の電流値の減少、および、溶接ガスPGのガス流量の増加のいずれをも行わなくてもよい。たとえば、ノズル温度上昇注意信号Sarが生成された後、電源回路41からの出力を一旦停止して、溶接アークPa2を消弧し、溶接ノズル122を冷却してもよい。
【0099】
本実施形態においては、第1温度検出機構432が、復路72内の冷媒Rfの温度を検出する。温度予測回路431は、第1温度検出機構432によって検出された冷媒Rfの温度に基づき、溶接ノズル122の温度を予測する。復路72内の冷媒Rfの温度は、溶接ノズル122の温度を比較的反映した値となる。したがって、このような構成によると、温度予測回路431が溶接ノズル122の温度をより正確に予測することができる。
【0100】
更に、本実施形態においては、第2温度検出機構433が送路71内の冷媒Rfの温度を検出する。温度予測回路431は、第2温度検出機構433によって検出された冷媒Rfの温度に基づき、溶接ノズル122の温度を予測する。このような構成によれば、
図4(c)に示した考え方を用いて、溶接ノズル122の温度を予測することが可能となる。したがって、本実施形態によると、温度予測回路431が溶接ノズル122の温度を更に正確に予測することができる。
【0101】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0102】
上述の説明では、温度予測回路431が、送路71内の冷媒Rfの温度と、復路72内の冷媒Rfの温度と、冷媒流路7内の冷媒Rfの流動要素と、に基づいて、溶接ノズル122の温度を予測する例を示した。しかしながら、本発明の温度予測回路による溶接ノズルの温度の予測方法は、これに限定されない。本発明の温度予測回路は、送路71内の冷媒Rfの温度を用いずに、復路72内の冷媒Rfの温度と、冷媒流路7内の冷媒Rfの流動要素とに基づいて、溶接ノズル122の温度を予測してもよい。この場合、
図4(a)と
図4(b)に示した考え方を用いるとよい。この場合、復路72内の冷媒Rfの温度は、本発明の第1温度検出機構によって検出でき、冷媒流路7内の冷媒Rfの流動要素は、本発明の流動要素検出機構によって検出できる。
【0103】
上述の説明では、溶接用装置(溶接アーク用電源4)が、第1温度検出機構432と、第2温度検出機構433と、流動要素検出機構434と、を含んでいる例を示した。しかしながら、溶接用装置が、第1温度検出機構432、第2温度検出機構433、流動要素検出機構434を含んでいなくてもよい。そして、溶接用装置の外部(たとえば、冷媒循環装置6や、溶接アーク用電源4と冷媒循環装置6との間や、溶接ノズル122と溶接アーク用電源4との間)において、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度や、冷媒流路7内の冷媒Rfの流動要素を検出してもよい。そして、溶接用装置の外部において検出された、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度と、冷媒流路7内の冷媒Rfの流動要素と、に基いて、溶接用装置が溶接ノズル122の温度を予測してもよい。
【0104】
上述の説明では、本発明の溶接用装置が、溶接アーク用電源4である例を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち本発明の溶接用装置が電源回路41を含んでいなくてもよい。たとえば、本発明の溶接用装置が、温度予測回路431と、基準温度記憶部439と、注意信号生成回路44とのみによって構成されていてもよい。
【0105】
注意信号生成回路44は、予測温度信号Tanと基準温度Tthとを比較してノズル温度上昇注意信号Sarを生成することに限定されない。たとえば、注意信号生成回路44は、予測温度信号Tanの傾きが所定の値を超えたときに、ノズル温度上昇注意信号Sarを生成してもよい。
【0106】
<第2実施形態>
図6〜
図9を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。
【0107】
図6に示すアーク溶接システムA2は、溶接ロボット1と、動作制御回路2と、パイロットアーク用電源3と、溶接アーク用電源4と、冷媒循環装置6と、冷媒流路7と、溶接ガス供給装置81と、シールドガス供給装置82と、を備える。
【0108】
溶接アーク用電源4を除き、アーク溶接システムA2における、溶接ロボット1と、動作制御回路2と、パイロットアーク用電源3と、冷媒循環装置6と、冷媒流路7と、溶接ガス供給装置81と、シールドガス供給装置82とは、アーク溶接システムA1における構成と同様であるから、説明を省略する。
【0109】
溶接アーク用電源4は、本発明の溶接用装置の一例に相当する。溶接アーク用電源4は、電源回路41と、電流検出回路421と、定常溶接開始判断回路422と、冷却能力情報算出回路461と、復路内冷媒温度検出機構462と、送路内冷媒温度検出機構463と、気温検出機構464と、注意信号生成回路47と、入熱率情報算出回路48と、溶接ガス流量制御回路491と、シールドガス流量制御回路492と、を含む。
【0110】
電源回路41と、電流検出回路421と、定常溶接開始判断回路422と、溶接ガス流量制御回路491と、シールドガス流量制御回路492とは、アーク溶接システムA1における構成と同様であるから、説明を省略する。
【0111】
復路内冷媒温度検出機構462は、温度センサであり、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度を検出するためのものである。
図6、
図9に示すように、本実施形態では、復路内冷媒温度検出機構462は、復路72内の冷媒Rfの温度を検出する。復路内冷媒温度検出機構462は、検出した温度に対応する復路内冷媒温度信号Td6を冷却能力情報算出回路461に送る。
【0112】
送路内冷媒温度検出機構463は、温度センサであり、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度を検出するためのものである。
図6、
図9に示すように、本実施形態では、送路内冷媒温度検出機構463は、送路71内の冷媒Rfの温度を検出する。送路内冷媒温度検出機構463は、検出した温度に対応する送路内冷媒温度信号Td7を冷却能力情報算出回路461に送る。
【0113】
気温検出機構464は、気温センサであり、冷媒循環装置6の配置される環境の気温を検出するためのものである。本実施形態では、気温検出機構464は、プラズマアーク溶接システムA2の配置される環境、具体的には、溶接アーク用電源4の配置される環境(本実施形態では、溶接アーク用電源4と冷媒循環装置6とは同一環境に配置されている)の気温を検出する。気温検出機構464は、検出した気温に対応する気温信号Td8を冷却能力情報算出回路461に送る。
【0114】
冷却能力情報算出回路461は冷却能力情報Soutを算出する。冷却能力情報Soutは冷却能力Qoutに関する情報である。
図10には、アーク溶接システムA2における熱の流れを、白塗りの矢印を用いて、模式的に示している。冷却能力Qoutは、単位時間当たりの、溶接ノズル122から冷媒Rfに放出可能な熱量である(
図10参照)。本実施形態では、冷却能力情報Soutは冷却能力Qout自体である。冷却能力情報算出回路461は、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度に基づいて、冷却能力情報Soutを算出する。本実施形態においては、冷却能力情報算出回路461は、送路71内の冷媒Rfの温度に基づいて、冷却能力情報Soutを算出する。本実施形態においては更に、冷却能力情報算出回路461は、復路72の冷媒Rfの温度と、気温検出機構464に検出された気温と、に基づいて、冷却能力情報Soutを算出する。冷却能力情報算出回路461は、算出した冷却能力情報Soutを注意信号生成回路47に送る。
【0115】
冷却能力情報算出回路461による冷却能力情報Soutの算出には、たとえば、次の考え方を用いる。
【0116】
図8(a)は、送路71内の冷媒Rfの温度以外のパラメータが一定である場合の、送路71の冷媒Rfの温度と、冷却能力Qoutとの相関関係を模式的に示している。送路71内の冷媒Rfの温度が高くなると、冷却能力Qoutは小さくなる傾向にあると考えられる。送路71内の冷媒Rfの温度が高いと、溶接ノズル122の温度と送路71内の冷媒Rfの温度差が小さくなり、溶接ノズル122から冷媒Rfに熱が伝わりにくくなるからである。
【0117】
図8(b)は、復路72内の冷媒Rfの温度および気温検出機構464に検出された気温の差以外のパラメータが一定である場合の、復路72内の冷媒Rfの温度および気温検出機構464に検出された気温の差と、冷却能力Qoutとの相関関係を模式的に示している。復路72内の冷媒Rfの温度および気温検出機構464に検出された気温の差が大きいと、冷却能力Qoutは大きくなる傾向にあると考えられる。復路72内の冷媒Rfの温度および気温検出機構464に検出された気温の差が大きいと、冷媒Rfから冷媒Rfの外部に放出される単位時間当たりの熱量が大きくなり、その結果、冷却能力Qoutも大きくなりうるからである。
【0118】
図8(a)、
図8(b)に示した考え方を基に、送路71内の冷媒Rfの温度、復路72内の冷媒Rfの温度、気温検出機構464に検出された気温と、冷却能力Qoutに関する冷却能力情報Sout(本実施形態では冷却能力Qout)と、の関係を示すテーブルを作成するとよい。このテーブルを作成する際には、冷媒循環装置6の冷却能力特性曲線を考慮するとよい。当該冷却能力特性曲線を用いると、復路72内の冷媒Rfの温度と気温検出機構464に検出された気温とに基づき、冷媒循環装置6の冷却能力を知ることができる。
【0119】
入熱率情報算出回路48は入熱率情報Sinを算出する。入熱率情報Sinは溶接アークPa2から溶接ノズル122への入熱率Qin(
図10参照)に関する。入熱率Qinは、単位時間当たりの、溶接ノズル122に溶接アークPa2から入熱する熱量である。本実施形態では、入熱率情報算出回路48は、電極121および母材Wの間の溶接電圧Vpの電圧値と、電極121および母材Wの間に流れる溶接電流Ip2の電流値と、に基づいて、入熱率情報Sinを算出する。一例として、溶接アークPa2にて発生した熱の95%が母材Wに伝わり、溶接アークPa2にて発生した熱の5%が溶接ノズル122に伝わる場合を想定する。このとき、入熱率情報算出回路48は、0.05×(溶接電圧Vpの電圧値)×(溶接電流Ip2の電流値)を計算して求められる値を、入熱率情報Sinとして採用するとよい。溶接アークPa2から溶接ノズル122に伝わる熱の比率は、5%であることに限定されず、適宜変更できる。
【0120】
注意信号生成回路47は、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度に基づいて、ノズル温度上昇注意信号Sarを生成する。本実施形態では、注意信号生成回路47は冷却能力情報Soutを受ける。そして、注意信号生成回路47は冷却能力情報Soutに基づいて、ノズル温度上昇注意信号Sarを生成する。本実施形態では更に、注意信号生成回路47は、入熱率情報Sinを受ける。そして、注意信号生成回路47は、入熱率情報Sinに基づいて、ノズル温度上昇注意信号Sarを生成する。たとえば、注意信号生成回路47は、冷却能力情報Soutおよび入熱率情報Sinに基づき、冷却能力Qout<入熱率Qinとなったと判断した場合に、溶接ノズル122の温度が上昇を開始すると判断する。このとき、注意信号生成回路47は、ノズル温度上昇注意信号Sarを生成する。注意信号生成回路47は、生成したノズル温度上昇注意信号Sarを、電源回路41と、溶接ガス流量制御回路491とに送る。
【0121】
図9に示すように、溶接アーク用電源4は、筺体499を含んでいる。筺体499は、電源回路41を収容している。本実施形態では、筺体499は冷却能力情報算出回路461を支持しており、より具体的には、筺体499は冷却能力情報算出回路461を収容している。そして、本実施形態においては、筺体499内に、冷媒流路7の一部(送路71の一部および復路72の一部)が配置されている。また、筺体499は、復路内冷媒温度検出機構462と、送路内冷媒温度検出機構463と、注意信号生成回路47と、入熱率情報算出回路48とを収容している。
【0122】
次に、
図7を更に用いて、アーク溶接システムA2を用いたアーク溶接方法について説明する。
【0123】
図7は、アーク溶接システムA2を用いたアーク溶接方法における各信号等のタイミングチャートである。同図では、(a)はパイロット電流Ip1の電流値、(b)は溶接電流Ip2の電流値、(c)は定常溶接開始信号Ss、(d)はロボット移動速度Vr、(e)はノズル温度上昇注意信号Sar、(g)は溶接ガスPGの流量、(h)は(入熱率Qin−冷却能力Qout)のそれぞれの変化状態を示す。
【0124】
時刻t21〜時刻t24は、第1実施形態における時刻t11〜時刻t14と同様であるから、説明を省略する。本実施形態においては、同図(h)に示すように、時刻t21〜時刻t24の間、(入熱率Qin−冷却能力Qout)は負の値となっている。すなわち、時刻t21〜時刻t24の間、溶接アークPa2から溶接ノズル122へ伝わった熱は、ほとんど溶接ノズル122から冷媒Rfへと伝わっていると考えられる。そのため、溶接ノズル122の温度は過度には上昇しない。
【0125】
同図(h)に示すように、時刻t24において、(入熱率Qin−冷却能力Qout)が0を超える。すなわち、時刻t24において、入熱率Qinが冷却能力Qoutを超える。入熱率Qinが冷却能力Qoutを超えると、溶接アークPa2から溶接ノズル122に伝わった熱の一部は冷媒Rfに伝わらず、溶接ノズル122は十分に冷却されないこととなる。そして、同図(e)に示すように、注意信号生成回路47は、入熱率Qinが冷却能力Qoutを超えたことを溶接ノズル122の温度が上昇する兆候と判断する。このとき、注意信号生成回路47は、ノズル温度上昇注意信号Sarを生成し、電源回路41と溶接ガス流量制御回路491とに送る。
【0126】
同図(b)に示すように、時刻t24において、電源回路41は、ノズル温度上昇注意信号Sarを受けると、溶接電流Ip2の電流値を減少させる。溶接電流Ip2の電流値の減少は、時刻t25にて終了する。そして、時刻t25以降、溶接電流Ip2の電流値は一定となる。
【0127】
時刻t24以前の溶接電流Ip2の電流値は、たとえば、150〜200Aであり、時刻t25以降の溶接電流Ip2の電流値の時間平均値は、たとえば、100〜150Aである。時刻t24〜時刻t25の間の溶接電流Ip2の電流値の時間平均値の減少値は、たとえば、10〜50Aである。溶接電流Ip2の電流値の時間平均値を減少させる期間(本実施形態では、時刻t24〜時刻t25)は、たとえば、5〜20secである。
【0128】
時刻t24において、溶接ガス流量制御回路491は、ノズル温度上昇注意信号Sarを受けると、溶接ガスPGのガス流量を増加させるための溶接ガス流量制御信号Spgを生成する。そして、溶接ガス流量制御回路491は、生成した溶接ガス流量制御信号Spgを溶接ガス供給装置81に送る。これにより、同図(g)に示すように、溶接ガスPGのガス流量が増加する。溶接ガスPGのガス流量の増加は、時刻t25にて終了する。そして、時刻t25以降、溶接ガスPGのガス流量は一定となる。本実施形態では、溶接ガスPGのガス流量の増加の終了時刻と、溶接電流Ip2の電流値の減少の終了時刻とが一致する例を示したが、溶接ガスPGのガス流量の増加の終了時刻と、溶接電流Ip2の電流値の減少の終了時刻とは、異なっていてもよい。
【0129】
時刻t24以前の溶接ガスPGのガス流量は、たとえば、0.4〜0.7L/minであり、時刻t25以降の溶接ガスPGのガス流量は、たとえば、0.7〜1.0L/minである。時刻t24〜時刻t25の間の溶接ガスPGのガス流量の増加量は、たとえば、0.1〜0.3L/minである。溶接ガスPGのガス流量を増加させる期間(本実施形態では、時刻t24〜時刻t25)は、たとえば、5〜20secである。
【0130】
なお、本実施形態においては、入熱率情報算出回路48は、溶接電流Ip2の電流値を減少させる前(時刻t24より前)においては、減少させる前(具体的には、t22〜時刻t24の間)の溶接電流Ip2の電流値に基づいて、入熱率情報Sinを算出する。また、入熱率情報算出回路48は、溶接電流Ip2の電流値を減少させた後(時刻t25より後)においては、減少させた後(具体的には時刻t25以降)の溶接電流Ip2の電流値に基づいて、入熱率情報Sinを算出する。本実施形態とは異なり、入熱率情報算出回路48は、溶接電流Ip2の電流値を減少させる前後において、減少させる前の溶接電流Ip2の電流値に基いて、入熱率情報Sinを算出してもよい。
【0131】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0132】
本実施形態においては、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度に基づいて、ノズル温度上昇注意信号Sarを生成する注意信号生成回路47を備える。冷媒流路7内の冷媒Rfの温度は、溶接ノズル122の温度を反映した値となっている。よって、本実施形態によると、溶接ノズル122の温度を直接計測することなく、溶接ノズル122の温度を反映した値を用いてノズル温度上昇注意信号Sarを生成できる。したがって、ノズル温度上昇注意信号Sarを用いることにより、容易に、溶接ノズル122の溶融を防止するための対処を行うことができる。
【0133】
本実施形態においては、溶接ノズル122に対する冷媒Rfの冷却能力Qoutに関する冷却能力情報Soutを算出する冷却能力情報算出回路461を更に備える。冷却能力情報算出回路461は、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度に基づいて、冷却能力情報Soutを算出する。注意信号生成回路47は、冷却能力情報Soutに基づいて、ノズル温度上昇注意信号Sarを生成する。このような構成によると、溶接ノズル122の温度が上昇する兆候を適切に検出することができる。これにより、溶接ノズル122の溶融を防止するための対処をより適切に行うことができる。
【0134】
本実施形態においては、電源回路41は、注意信号生成回路47からノズル温度上昇注意信号Sarを受けると、溶接電流Ip2の電流値を減少させる。このような構成によると、溶接アークPa2にて発生する単位時間当たりの熱量を減少させることが可能である。よって、溶接アークPa2から溶接ノズル122に伝わる単位時間当たりの熱量を減少させることができる。したがって、本実施形態によると、溶接ノズル122の温度上昇を抑制できる。これにより、溶接ノズル122の溶融を防止できる。
【0135】
本実施形態においては、溶接ガス流量制御回路491は、注意信号生成回路47からノズル温度上昇注意信号Sarを受けると、溶接ガスPGのガス流量を増加させるための信号を生成する。これにより、溶接ガスPGのガス流量が増加する。このような構成によると、溶接アークPa2から溶接ガスPGに伝わる単位時間当たりの熱量を、増大させることができる。これにより、溶接アークPa2から溶接ノズル122に伝わる単位時間当たりの熱量を減少させることができる。したがって、本実施形態によると、溶接ノズル122の温度上昇を抑制できる。これにより、溶接ノズル122の溶融を防止できる。
【0136】
溶接電流Ip2の電流値を減少させるのみであると、溶接アークPa2が細くなり、母材Wに形成されるビードの幅が狭くなったり、母材Wへの溶け込みが浅くなるおそれがある。本実施形態では、溶接電流Ip2の電流値を減少させ、しかも、溶接ガスPGのガス流量を増加させている。溶接ガスPGのガス流量を増加させると、母材Wにおけるより広い領域に熱を与えることができ、アーク圧力も増加するので、溶込み深さも増加する。よって、このような構成によると、母材Wに形成されるビードの幅が狭くなったり、母材Wへの溶け込みが浅くなることを極力回避できる。
【0137】
本実施形態では、ノズル温度上昇注意信号Sarが生成された後(時刻t24以降)も、溶接を終了することなく、溶接を継続できる。これにより、母材Wに形成されるビードの途中に、溶接を再開したことに起因する醜い外観が生じることを、防止できる。
【0138】
なお、ノズル温度上昇注意信号Sarが生成された後に、溶接電流Ip2の電流値の減少、および、溶接ガスPGのガス流量の増加のいずれもを行う必要は必ずしもない。たとえば、ノズル温度上昇注意信号Sarが生成された後に、溶接電流Ip2の電流値を一定に維持したまま、溶接ガスPGのガス流量を増加させることのみを行なってもよい。あるいは、ノズル温度上昇注意信号Sarが生成された後に、溶接ガスPGのガス流量を一定に維持したまま、溶接電流Ip2の電流値を減少させることのみを行なってもよい。更には、ノズル温度上昇注意信号Sarが生成された後に、溶接電流Ip2の電流値の減少、および、溶接ガスPGのガス流量の増加のいずれをも行わなくてもよい。たとえば、ノズル温度上昇注意信号Sarが生成された後、電源回路41からの出力を一旦停止して、溶接アークPa2を消弧し、溶接ノズル122を冷却してもよい。
【0139】
本実施形態においては、冷却能力情報算出回路461は、送路71内の冷媒Rfの温度に基づいて、冷却能力情報Soutを算出する。このような構成によれば、
図8(a)に示した考え方を用いて、冷却能力情報Soutを算出することができる。よって、溶接ノズル122の温度が上昇する兆候を適切に検出することができる。これにより、溶接ノズル122の溶融を防止するための対処をより適切に行うことができる。
【0140】
更に、本実施形態においては、冷却能力情報算出回路461は、復路72内の冷媒Rfの温度と、気温検出機構464によって検出された気温とに基いて、冷却能力情報Soutを算出する。このような構成によれば、
図8(b)に示した考え方を用いて、冷却能力情報Soutを算出することができる。よって、溶接ノズル122の温度が上昇する兆候を適切に検出することができる。これにより、溶接ノズル122の溶融を防止するための対処をより適切に行うことができる。
【0141】
なお、本実施形態においては、入熱率情報算出回路48は、溶接電流Ip2の電流値を減少させる前(時刻t24より前)においては、減少させる前(具体的には、t22〜時刻t24の間の電流値)の溶接電流Ip2の電流値に基づいて、入熱率情報Sinを算出する。また、入熱率情報算出回路48は、溶接電流Ip2の電流値を減少させた後(時刻t25より後)においては、減少させた後(具体的には時刻t25以降)の溶接電流Ip2の電流値に基づいて、入熱率情報Sinを算出する。溶接電流Ip2が減少すると、入熱率Qinも減少する。そのため、入熱率情報算出回路48は、溶接電流Ip2の電流値を減少させた後(時刻t25より後)において、実際の入熱率Qinを反映した入熱率情報Sinを求めることができる。これにより、溶接電流Ip2の電流値を減少させた後(時刻t25より後)においても、適切に、ノズル温度上昇注意信号Sarを生成することができる。
【0142】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0143】
上述の説明では、冷却能力情報算出回路461が、送路71内の冷媒Rfの温度と、復路72内の冷媒Rfの温度と、気温検出機構464によって検出された気温と、に基づいて、溶接ノズル122の温度を予測する例を示した。しかしながら、本発明の冷却能力情報算出回路による冷却能力情報の算出方法は、これに限定されない。本発明の冷却能力情報算出回路は、復路72内の冷媒Rfの温度と、気温検出機構464によって検出された温度を用いずに、送路71内の冷媒Rfの温度に基づいて、冷却能力情報を算出してもよい。この場合、
図8(a)に示した考え方を用いるとよい。
【0144】
上述の説明では、溶接用装置(溶接アーク用電源4)が、復路内冷媒温度検出機構462と、送路内冷媒温度検出機構463と、気温検出機構464と、を含んでいる例を示した。しかしながら、溶接用装置が、復路内冷媒温度検出機構462、送路内冷媒温度検出機構463、気温検出機構464を含んでいなくてもよい。そして、溶接用装置の外部(たとえば、冷媒循環装置6や、溶接アーク用電源4と冷媒循環装置6との間や、溶接ノズル122と溶接アーク用電源4との間)において、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度を検出してもよい。そして、溶接用装置の外部において検出された、冷媒流路7内の冷媒Rfの温度に基いて、溶接用装置が冷却能力情報Soutを算出してもよい。
【0145】
上述の説明では、冷却能力情報Soutは冷却能力Qout自体である例を示したが、これに限定されない。たとえば、冷却能力情報Soutが、冷却能力Qoutの80%の値であってもよい。また、復路72内の冷媒Rfの温度に基づいて冷却能力Qoutを求める際、復路72内の冷媒Rfの実際の温度よりも低い値(たとえば実際の温度より5度低い値)の場合の、冷却能力Qoutを、冷却能力情報Soutとして算出してもよい。
【0146】
上述の説明では、本発明の溶接用装置が、溶接アーク用電源4である例を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち本発明の溶接用装置が電源回路41を含んでいなくてもよい。たとえば、本発明の溶接用装置が、冷却能力情報算出回路461と、注意信号生成回路47とのみによって構成されていてもよい。
【0147】
<第3実施形態>
図11を用いて、本発明の第3実施形態について説明する。
【0148】
同図に示すアーク溶接システムA3は、溶接アーク用電源4が報知部498を更に備えている点において、アーク溶接システムA2と異なる。本実施形態では、ノズル温度上昇注意信号Sarは、電源回路41と溶接ガス流量制御回路491とには送られず、報知部498に送られる。
【0149】
報知部498は、ノズル温度上昇注意信号Sarを受けると、ノズル温度上昇注意情報Infを報知する。ノズル温度上昇注意情報Infは、溶接ノズル122の温度上昇についてユーザに注意を喚起するものである。ノズル温度上昇注意情報Infは、たとえば、警報音や、警告ランプの点灯や、画面への警告メッセージの表示である。
【0150】
そして、本実施形態では、ノズル温度上昇注意情報Infが報知されると、アーク溶接システムA3のユーザが実際にティーチペンダントを操作して、溶接電流Ip2の電流値を減少させたり、溶接ガスPGの流量を調整したりするとよい。
【0151】
このような構成によっても、上述したのと同様に、容易に、溶接ノズル122の溶融を防止するための対処を行うことができる。また、ノズル温度上昇注意信号Sarが生成された後も、溶接を終了することなく、溶接を継続できる。その結果、母材Wに形成されるビードの途中に、溶接を再開したことに起因する醜い外観が生じることを、防止できる。
【0152】
上述の説明では、パイロットアークを発生させて溶接を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。また、母材にキーホールを形成しつつ溶接を行うプラズマキーホール溶接方法にも本発明は有用である。
【0153】
上述の説明では、非消耗電極を用いるプラズマ溶接について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、消耗電極を用いる溶接に、本発明を適用してもよい。