(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に示されるような組立ラインでは、スラットコンベアにワークを支持するパレットが取り付けられることとなるが、車両の組立台数を増加させるためには、スラットコンベア上のパレットのピッチを詰める必要がある。
【0005】
そこで、本発明では、組立台数を増加させることができる、パレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両を組み立てる組立ライン装置に用いられるパレットであって、前記パレットは、搬送コンベアに載置されるパレット本体と、前記パレット本体の上部に位置し、ワークを支持する支持部材と、を備え、前記支持部材は、前記パレット本体に対して、略垂直な回動軸心回りに回動可能に設けられていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によれば、支持部材を回動させることによってワークを回動させることができるので、ワークの前部及び後部における部品の組付作業を容易に行うことができ、その結果、搬送コンベア上に載置するパレットのピッチを詰め、車両の組立台数を増加させることができる。
【0008】
本発明は、更に、次のような構成を備えるのが好ましい。
(1)前記支持部材は、前記パレット本体に対して、上下方向に昇降可能に設けられている。
(2)前記支持部材は、前方支持部と、中央支持部と、後方支持部と、を備え、前記前方支持部と前記中央支持部とは、連結状態及び非連結状態に変更可能となっており、前記中央支持部と前記後方支持部とは、連結状態及び非連結状態に変更可能となっており、前記中央支持部は、前記パレット本体に対して、略垂直な回動軸心回りに回動可能に設けられ、上下方向に昇降可能に設けられている。
(3)前記構成(2)において、前記中央支持部を、前記パレット本体に対して、上下方向に昇降させる昇降装置を備えている。
(4)前記構成(3)において、前記昇降装置は、前記搬送コンベアのトロリ線から給電されるようになっている。
(5)前記構成(2)〜(4)のいずれか1つにおいて、前記後方支持部は、左右一対のクランプ板によって前記ワークの車輪をクランプする、クランプ装置を備えている。
(6)前記構成(5)において、前記クランプ装置は、クランプ板駆動機構を備えており、前記クランプ装置による車輪のクランプにおいて、前記クランプ板は、前記クランプ板駆動機構によって、前記パレット本体に収納される収納状態から、前記車輪をクランプするための起立状態となった後、クランプ方向にスライドするようになっている。
(7)前記構成(6)において、前記クランプ板駆動機構は、駆動ネジ軸によって構成されている。
(8)前記パレット本体の前端部の左右側端部には、第1切り欠き部が形成されている。
(9)前記パレット本体の左右側端部には、前記パレット本体の前後方向全長に亘って第2切り欠き部が形成されている。
【0009】
前記構成(1)によれば、ワークの高さを変更でき、その結果、作業性を向上させることができる。
【0010】
前記構成(2)によれば、中央支持部によってフレームを支持し、前方支持部によって前輪を支持し、後方支持部によって後輪を支持できる。前方支持部と中央支持部とを連結状態とし、中央支持部と後方支持部とを連結状態とすることによって、中央支持部をパレット本体に対して上下方向に昇降させると、前方支持部及び後方支持部もパレット本体に対して同時に上下方向に昇降させることができる。
【0011】
前記構成(3)によれば、昇降装置によって、中央支持部を容易に昇降させることができる。
【0012】
前記構成(4)によれば、昇降装置の給電を搬送コンベアのトロリ線を用いて行うので、昇降装置の給電を合理的に行うことができる。
【0013】
前記構成(5)によれば、クランプ装置によって、車輪を容易に保持することができる。
【0014】
前記構成(6)によれば、クランプ装置が車輪をクランプしない場合、クランプ板は後方支持部に収納されているので、クランプ板が邪魔になることはない。また、クランプ板がクランプ方向にスライドするようになっているので、車輪の厚さに関係なく、車輪を容易にクランプすることができる。
【0015】
前記構成(7)によれば、クランプ板駆動機構の具体的構成であり、本構成によれば、クランプ板駆動機構を駆動ネジ軸によって容易に駆動させることができる。
【0016】
前記構成(8)によれば、作業員が、パレットの前端部により近づきやすくなり、パレット前端部での作業性を向上させることができる。
【0017】
前記構成(9)によれば、作業員が、パレットの左右からより近づきやすくなり、作業性を向上させることができる。移載装置のツメを第2切り欠き部に挿入することによって、移載装置でパレットを持ち上げることができる。
【発明の効果】
【0018】
要するに、本発明によると、組立台数を増加させることができる、パレットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るパレットを備える組立ライン装置10の上面概略図である。組立ライン100は、始端部から終端部に向かって略直線となっており、本実施形態で用いられる方向の概念は、組立ライン100の始端部から終端部を見る方向を前方とする方向の概念に一致するものとして説明する。
【0021】
(全体構成)
図2は、
図1の組立ライン装置10の側面概略図である。
図1及び
図2に示されるように、組立ライン装置10は、車両の一種である自動二輪車の組立ライン装置であり、ワーク(自動二輪車)Wを支持するパレット1と、パレット1が載置され、パレット1を前方に向かって搬送する、搬送コンベア2と、を備えている。パレット1は、搬送コンベア2上に載置されているだけであり、搬送コンベア2とは非連結状態となっている。さらに、組立ライン装置10においてパレット1を循環させるために、組立ライン装置10は、返送コンベア3と、戻しコンベア4と、移載装置5と、を備えている。返送コンベア3は、搬送コンベア2の下方に設けられ、ワークWが載置されていないパレット1を後方に向かって返送するようになっている。戻しコンベア4は、搬送コンベア2の終端部前方に設けられ、搬送コンベア2からワークWが載置されているパレット1を受け取り、ワークWがパレット1から移動後、空のパレット1を返送コンベア3に引き渡すようになっている。このため、戻しコンベア4は、搬送コンベア2からパレット1を受け取る上方位置41と、パレット1を返送コンベア3に引き渡す下方位置42と、の間で昇降可能となっている。移載装置5は、搬送コンベア2の始端部後方に設けられ、返送コンベア3から空のパレット1を受け取り、パレット1にワークWが載置されるタイミングに応じて空のパレット1を搬送コンベア2に引き渡すようになっている。このため、移載装置5は、パレット1を、返送コンベア3から受け取る下方位置52から、搬送コンベア2に引き渡す上方位置51に持ち上げ可能となっている。組立ライン装置10の両側には、組立ライン装置10に部品を供給する台車9の台車搬送ライン90が設けられている。台車搬送ライン90はチェーンで構成されており、台車9は、台車搬送ライン90によって、搬送コンベア2上のパレット1と同期して搬送されるようになっている。
【0022】
搬送コンベア2の下方には、搬送コンベア2に沿って給電線が設けられており、パレット1は前記給電線から給電されるようになっている。前記給電線は、パレット1の作動のための電力を供給するようになっている。搬送コンベア2は、前記給電線とは別の電線からの給電によって作動され、搬送コンベア2はパレット1を搬送コンベア2の始端部から終端部に移送するようになっており、また、前記給電線によるパレット1への給電によって、以下に説明する、パレット1の支持部材の昇降機能を作動させるようになっている。
【0023】
(パレットの構成)
図3は、パレット1の上面概略図であり、
図4は、パレット1の側面概略図である。また、
図5は、パレット1の前面概略図であり、
図6は、パレット1の後面概略図である。
図3〜
図6に示されるように、パレット1は、搬送コンベア2に載置されるパレット本体11と、パレット本体11の上部に位置し、ワークWを支持する支持部材12と、を備えている。支持部材12は、前方支持部121と、中央支持部122と、後方支持部123と、を備えている。
【0024】
図4に示されるように、中央支持部122の下方には、下方から順に、第1底板16及び第2底板17が設けられている。中央支持部122と第2底板17とは連結されており、第2底板17と第1底板16とは連結されている。パレット本体11には、中央支持部122を、パレット本体11に対して、上下方向に昇降させる昇降装置を備えている。昇降装置は、一対のスプロケット14と、一対の帯状体(噛合いチェーン)13と、帯状体駆動機構(図示せず)と、を備えている。パレット本体11には、回転自在に支持された一対のスプロケット14が設けられており、一対のスプロケット14には、スプロケット14の回転によって進退自在に繰り出される一対の帯状体(噛合いチェーン)13が巻き掛けられている。そして、噛合いチェーン13の一端部は、第1底板16に連結されている。そして、一対のスプロケット14は、帯状体駆動機構(図示せず)によって回転させられるようになっている。パレット本体11の下部には、給電線から電力を取り込む集電装置15が設けられており、帯状体駆動機構は集電装置15から給電されるようになっている。したがって、集電装置15から給電された帯状体駆動機構によってスプロケット14が回転させられ、その結果、噛合いチェーン13が上下方向に進退するよう繰り出されることによって、第1底板16、第2底板17及び中央支持部122が上下方向に昇降するようになっている。
【0025】
図7は、第2底板17の上面図である。
図7に示されるように、第2底板17は、円板形状となっており、周方向に延びる長孔171が形成されている板170が取り付けられている。長孔171の一端部171aと第2底板17の中心C1とを結んだ直線と、長孔171の他端部171bと第2底板17の中心C1とを結んだ直線と、のなす角度θ1は、90度となっている。
図8は、
図7のVIII−VIII断面図であり、
図9は、
図7のIX−IX断面図である。
図7〜
図9に示されるように、長孔171において、一端部171a及び他端部171b以外は、上面と下面の孔径は同じ寸法となっているが、一端部171a及び他端部171bでは、下面171a1、171b1の孔径は、上面171a2、171b2の孔径に比べて大きくなっている。
【0026】
図8及び
図9に示されるように、中央支持部122には、第2底板17の長孔171に挿入されるピン18が設けられている。ピン18は、上端部に、圧縮コイルバネ181を有しており、圧縮コイルバネ181の下端部が中央支持部122に取り付けられることによって、上方に付勢されるようになっている。また、ピン18は、下端部に、上部よりも径が拡径されている拡径部182を有している。
【0027】
図9に示されるように、長孔171の一端部171a及び他端部171bにおいては、ピン18の拡径部182が下面171a1又は下面171b1に嵌合し、また、ピン18は圧縮コイルバネ181によって上方に付勢されているので、ピン18は長孔171の一端部171a又は他端部171bに固定されるようになっている。一方、
図8に示されるように、長孔171の一端部171a及び他端部171b以外においては、ピン18の拡径部182は下面171a1又は下面171b1に嵌合しておらず、ピン18は長孔171内を長孔171に沿って移動可能となっている。そして、ピン18が長孔171内を移動すると、ピン18が設けられた中央支持部122が、第2底板17に対して、略垂直な回動軸心Z(
図4参照)回りに回動するようになっている。ここで、第2底板17は、第1底板16を介して、パレット本体11に連結されているので、中央支持部122が、第2底板17に対して回動すると、パレット本体11に対しても回動することになる。
【0028】
中央支持部122が、パレット本体11に対して、回動軸心Z(
図4)回りに回動する、すなわち水平方向に回動する作動を、以下に説明する。
【0029】
ピン18が長孔171の一端部171aに挿入されている状態において、ピン18を圧縮コイルバネ181に抗して下方に押すと、ピン18の拡径部182と一端部171aの下面171a1との嵌合状態が解除される。その結果、ピン18は長孔171内を長孔171に沿って移動可能となる。そして、ピン18を、長孔171の一端部171aから他端部171bに向かって移動させると、ピン18が設けられた中央支持部122は、第2底板17に対して、すなわち、パレット本体11に対して回動する。ピン18が他端部171bに達すると、ピン18は圧縮コイルバネ181によって上方に付勢されているので、ピン18の拡径部182が他端部171bの下面171b1と嵌合する。その結果、ピン18は他端部171bに固定される。なお、長孔171の一端部171aと第2底板17の中心C1とを結んだ直線と、長孔171の他端部171bと第2底板17の中心C1とを結んだ直線と、のなす角度θ1は、90度となっているので、中央支持部122は、第2底板17、すなわちパレット本体11に対して、R1方向に90度回動して、固定される。そして、中央支持部122をパレット本体11に対して元の位置に戻す際には、上記操作と逆の操作を行うことによって、ピン18を長孔171の他端部171bから一端部171aに移動させ、中央支持部122をパレット本体11に対して上記とは反対方向、すなわちR2方向に90度回転させる。
【0030】
図4に示されるように、中央支持部122には、ワークWを直接支持するフレーム支持部124が取り付けられている。フレーム支持部124は、ワークWの中央を下方から支持する下方支持部125と、ワークWの側方を支持する左右一対の側方支持部126と、を備えている。側方支持部126は、中央支持部122に対して、軸126aを中心として前後方向に回動可能となっており、その結果、ワークWを複数種類の姿勢に変更可能に支持するようになっている。また、側方支持部126には、複数の支持孔が形成されており、ワークWを支持する支持孔の位置を変更することによっても、ワークWの姿勢を変更することができるようになっている。なお、下方支持部125及び側方支持部126は、前方支持部121に設けられた凹部121aに格納可能となっている。ここで、下方支持部125は、中央支持部122から取り外されて前方支持部121に格納され、側方支持部126は、軸126aを中心として前方に回動し、前方支持部121に格納される。前方支持部121内には、側方支持部126の格納状態を検知する格納センサ(図示せず)が設けられており、作業員は、前記格納センサによって、側方支持部126が前方支持部121内に確実に格納されたかどうかを認識できるようになっている。
【0031】
図3に示されるように、中央支持部122は、前後に駆動ネジ軸61、62が設けられている。駆動ネジ軸61の左右側部には軸支持部63が設けられ、駆動ネジ軸62の左右側部には軸支持部64が設けられている。軸支持部63は、前方支持部121と連結されており、軸支持部64は後方支持部123と連結されている。駆動ネジ軸61には、左右一対のナット65が螺合しており、駆動ネジ軸61が回転することによって、ナット65は、駆動ネジ軸61に沿って、左右方向の互いに反対方向に連動して移動するようになっている。同様に、駆動ネジ軸62には、左右一対のナット66が螺合しており、駆動ネジ軸62が回転することによって、ナット66は、駆動ネジ軸62に沿って、左右方向の互いに反対方向に連動して移動するようになっている。なお、駆動ネジ軸61及び駆動ネジ軸62は連動して回転するようになっているので、ナット65とナット66とは連動して左右に移動するようになっている。ナット65及びナット66には、それぞれ左右一対の連結板67が連結されており、ナット65及びナット66が左右に移動することによって、連結板67が左右に移動するようになっている。そして、連結板67が左右に移動することによって、連結板67と中央支持部122とが連結状態又は非連結状態となるようになっている。
【0032】
すなわち、中央支持部122と前方支持部121との連結、及び、中央支持部122と後方支持部123との連結は、以下のとおり行われる。
【0033】
駆動ネジ軸61及び駆動ネジ軸62が連動して回転すると、ナット65は、駆動ネジ軸61に沿って、左右方向の互いに反対方向に連動して移動し、ナット66は、駆動ネジ軸62に沿って、左右方向の互いに反対方向に連動して移動する。その結果、連結板67が左右方向の互いに反対方向に連動して移動し、連結板67が左右方向の互いに近づく方向に移動すると、連結板67の側方内方部が中央支持部122の凹部に嵌合し、連結板67と中央支持部122とが連結状態となる。ここで、駆動ネジ軸61の軸支持部63は前方支持部121と連結されており、駆動ネジ軸62の軸支持部64は後方支持部123と連結されているので、中央支持部122は、連結板67及び駆動ネジ軸61、62を介して、前方支持部121及び後方支持部123と連結される。この状態で、中央支持部122を、噛合いチェーン13によって、パレット本体11に対して、上下方向に昇降させると、同時に、前方支持部121及び後方支持部123も昇降する。
【0034】
また、駆動ネジ軸61及び駆動ネジ軸62が連動して回転し、連結板67が左右方向の互いに遠ざかる方向に移動すると、連結板67の側方内方部と中央支持部122の凹部との嵌合が解除され、連結板67と中央支持部122とが非連結状態となる。その結果、中央支持部122は、前方支持部121及び後方支持部123と非連結状態となる。この状態で、中央支持部122を、噛合いチェーン13によって、パレット本体11に対して、上下方向に昇降させると、中央支持部122のみが上下方向に昇降し、前方支持部121及び後方支持部123は昇降しない。
【0035】
パレット1には、支持部材12の上下方向位置を認識する位置センサが設けられており、例えば、上中下の3つの位置を組立ライン装置10の制御部に入力しておくことによって、作業員が上中下のいずれかの位置を指定するだけで、前記位置センサの認識結果から、前記制御部がスプロケット14を所定量回転させ、噛合いチェーン13を所定量上下方向に進退させることによって、自動的に、支持部材12を指定された上中下のいずれかの位置に適切に位置させることができるようになっている。また、作業員の要求に応じて、スプロケット14をさらに回転させ、噛合いチェーン13を上下方向に進退させることによって、支持部材12の上下方向位置を、上記上中下のいずれかの位置から、所望の量だけさらに上下方向に移動させることも可能となっている。また、パレット1に載置されるワークWの種類に応じて、搬送コンベア2上の各位置において、支持部材12の上下方向位置が規定されている場合、前記制御部にパレット1に載置されるワークWの種類を入力することによって、前記制御部は、搬送コンベア2上の各位置において、当該パレットの支持部材12を設定された上下方向位置となるように、スプロケット14及び噛合いチェーン13を自動的に制御するようになっている。
【0036】
後方支持部123は、自動二輪車の後輪をクランプするクランプ装置71を備えている。
図10はクランプ装置71の後面図であり、
図11はクランプ装置71の縦断面図である。
図10及び
図11に示されるように、クランプ装置71は、車輪をクランプする左右一対のクランプ板72と、それぞれのクランプ板72を駆動させる左右一対のクランプ板駆動機構73と、を備えている。各クランプ板駆動機構73は、後方支持部123に設けられた本体部74と、クランプ板72を支持する支持部75と、を備えている。本体部74には、略直角に折り曲げられた鉤状の長孔741が形成されている。支持部75の一端部はクランプ板72を支持するようになっており、他端部には、長孔741に沿って長孔741内を移動する軸部751が設けられている。軸部751は、駆動ネジ軸77の回転によって、駆動ネジ軸77に沿って移動するナット76に連結されている。したがって、駆動ネジ軸77が回転することによって、ナット76が駆動ネジ軸77に沿って移動すると、ナット76に連結された軸部751が長孔741に沿って長孔741内を移動する。ここで、長孔741が略直角に折れ曲げられて形成されているので、駆動ネジ軸77が回転してナット76が互いに左右方向に近づく方向に移動すると、一点鎖線の矢印で示されるように、クランプ板72は、後方支持部123に収納される収納状態から、車輪をクランプするための起立状態となり、その後、車輪をクランプする方向にスライドするようになっている。
【0037】
図3に示されるように、パレット本体11の前端部の左右側端部11aには、第1切り欠き部が形成されている。さらに、
図5及び
図6に示されるように、パレット本体11の左右側端部の下部には、パレット本体11の前後方向全長に亘って、第2切り欠き部11bが形成されている。
図12は、移載装置5がパレット1を吊り上げている状態を示す前面図である。
図12に示されているように、移載装置5はパレット1をつかむ左右一対のツメ51を備えており、移載装置5がパレット1を吊り上げる際は、ツメ51が第2切り欠き部11bに挿入されるようになっている。
【0038】
以下、
図1及び
図2を用いて、組立ライン装置10の作動を説明する。
【0039】
まず、第1ステーションS1において、移載装置5は、ワークWが搬送コンベア2上に載置されるタイミングで、ワークWが載置されていない空のパレット1を搬送コンベア2上に載置する。ここで、ワークWが搬送コンベア2上に載置されるタイミングとは、第1ステーションS1において、パレット1上でエンジンユニット及びフレームユニットが組み付けられ、その後、搬送コンベア2によって、当該パレット1が前方に移動したタイミングを意味する。そして、エンジン組立ユニットライン(図示せず)から搬入されたエンジンユニットに、フレーム組立ユニットライン(図示せず)から搬入されたフレームユニットが組み付けられ、ワークWとしてパレット1上で支持され、組み立てが開始される。この際、前方支持部121と中央支持部122との連結は解除され、中央支持部122と後方支持部123との連結も解除されている。そして、中央支持部122のみが、噛合いチェーン13によって上昇し、上方に位置するようになっている。
【0040】
パレット1が第2ステーションS2に達すると、中央支持部122のピン18を第2底板17の長孔171の一端部171aから他端部171bに移動させることによって、中央支持部122をZ軸周りにR1方向に90度回動させ、組立ライン100の側方(本実施形態では右方)に位置し、搬送コンベア2上のパレット1と同期して搬送される台車9より供給された前輪及びフロント部品を組み付ける。この状態では、ワークWは左右方向に向いている。
【0041】
パレット1が第3ステーションS3に達すると、ピン18を第2底板17の長孔171の他端部171bから一端部171aに移動させることによって、中央支持部122をZ軸周りにR1方向と反対方向のR2方向に90度回動させる。この状態では、ワークWは前後方向を向いている。
【0042】
パレット1が第4ステーションS4に達すると、組立ライン100の側方の部品台車より供給された後輪及びリア部品を組み付ける。
【0043】
パレット1が第5ステーションS5に達すると、前輪が前方支持部121に接触し、後輪が後方支持部123に接触するまで、噛合いチェーン13によって、中央支持部122を下降させる。そして、クランプ装置71によって後輪を左右から挟んでクランプして固定する。この結果、ワークWは、前輪、後輪及びクランプ装置71による後輪のクランプによって、パレット1上で自立するので、フレーム支持部124によるワークWの支持が不要となり、フレーム支持部124はワークWから取り外されて前方支持部121に格納される。そして、駆動ネジ軸61、62を回転させ、前方支持部121と中央支持部122とを連結し、中央支持部122と後方支持部123を連結する。そして、噛合いチェーン13によって、前方支持部121、中央支持部122及び後方支持部123を一体として上下方向に昇降させ、適当な高さで、残りの部品を組み付けて、ワークWが自動二輪車として完成する。
【0044】
ワークWが自動二輪車として完成すると、戻しコンベア4のコンベア部分を搬送コンベア2と同方向に回動させ、搬送コンベア2から戻しコンベア4に、ワークWが載置されている状態でパレット1を受け渡す。そして、クランプ装置71による後輪のクランプを解除し、戻しコンベア4の前方へ、自動二輪車として完成したワークWを搬出する。パレット1上にワークWがなくなると、戻しコンベア4を上方位置41から下方位置42まで下降させる。
【0045】
戻しコンベア4が下降位置42に位置すると、戻しコンベア4のコンベア部分を上記とは逆方向に回動させ、さらに返送コンベア3のコンベア部分を回動させることによって、戻しコンベア4から返送コンベア3へ空のパレット1を受け渡す。そして、空のパレット1は、返送コンベア3によって、搬送コンベア2より速い速度で返送コンベア3の前端部から後端部に搬送される。空のパレット1が返送コンベア3の後端部に位置し、第1ステーションS1において、パレット1上でエンジンユニット及びフレームユニットが組み付けられ、その後、搬送コンベア2によって、当該パレット1が前方に移動した後、移載装置5によって、返送コンベア3上のパレット1を持ち上げ、パレット1を搬送コンベア2に引き渡す。以上のようにして、パレット1は、組立ライン100を循環することになる。
【0046】
前記構成の組立ライン装置10によれば、次のような効果を発揮できる。
【0047】
(1)支持部材12をパレット本体11に対して、Z軸回りに回動させることによってワークWを回動させることができ、その結果、部品、例えば前車輪の組み付けを容易に行うことができる。また、ワークWを水平方向に回動させることができるので、ワークWの前部及び後部における部品の組付作業を容易に行うことができ、その結果、搬送コンベア2上に載置するパレット1のピッチを詰め、車両の組立台数を増加させることができる。
【0048】
(2)支持部材12は、噛合いチェーン13によって、パレット本体11に対して、上下方向に昇降可能に設けられているので、ワークWの高さを変更でき、その結果、部品等を組み付ける際のワークWの高さを調整できるので、作業性を向上させることができる。
【0049】
(3)パレット1が、前方支持部121、中央支持部122及び後方支持部123を備えているので、中央支持部122によって自動二輪車のフレームを支持し、前方支持部によって自動二輪車の前輪を支持し、後方支持部によって自動二輪車の後輪を支持できる。また、前方支持部121と中央支持部122とが連結可能となっており、中央支持部122と後方支持部123とが連結可能となっているので、前方支持部121と中央支持部122とを連結状態とし、中央支持部122と後方支持部123とを連結状態とすることによって、中央支持部122をパレット本体11に対して上下方向に昇降させると、前方支持部121及び後方支持部123もパレット本体11に対して同時に上下方向に昇降させることができる。
【0050】
(4)昇降装置の噛合いチェーン13が、パレット本体11に回転自在に支持された一対のスプロケット14にそれぞれ巻き掛けられ、進退自在に繰り出されるようになっているので、中央支持部122を噛合いチェーン13によって容易に昇降させることができる。
【0051】
(5)帯状体駆動機構の給電を搬送コンベア2のトロリ線を用いて行うので、帯状体駆動機構の給電を合理的に行うことができる。
【0052】
(6)後方支持部123にはクランプ装置71が設けられているので、クランプ装置71によって、自動二輪車の後輪を側方から固定することができる。その結果、自動二輪車を保持することができる。
【0053】
(7)クランプ装置71のクランプ板72は、クランプ板駆動機構73によって、後方支持部123に収納される収納状態から、自動二輪車の後輪をクランプするための起立状態となった後、クランプ方向にスライドするようになっている。その結果、クランプ装置71が後輪をクランプしない場合、クランプ板72は後方支持部123に収納されているので、例えば、パレット1を返送コンベア3で返送する際に、クランプ板72が邪魔になることはない。また、クランプ板72がクランプ方向にスライドするようになっているので、後輪の厚さ(幅)に関係なく、後輪を適切にクランプすることができる。
【0054】
(8)駆動ネジ軸が回転することによって、ナット76が駆動ネジ軸に沿って移動し、その結果、ナット76に連結された軸部751が長孔741内を移動するようになっているので、クランプ板駆動機構73を駆動ネジ軸によって容易に駆動させることができる。
【0055】
(9)パレット本体11の前端部の左右側端部には、第1切り欠き部11aが形成されているので、作業員が、パレット1の前端部により近づきやすくなり、パレット前端部でのワークWの組立作業性を向上させることができる。
【0056】
(10)パレット本体11の左右側端部の下部には、パレット本体11の前後方向全長に亘って第2切り欠き部11bが形成されているので、作業員が、パレット1の左右からより近づきやすくなり、ワークWの組立作業性を向上させることができる。また、移載装置5のツメ51を第2切り欠き部11bに挿入することによって、第2切り欠き部11bを移載装置5の支持部として利用できるので、パレット1を持ち上げることができる。
【0057】
(11)パレット1は、搬送コンベア2に対して非連結状態となっており、搬送コンベア2に載置されているだけなので、搬送コンベア2上に載置するパレット1のピッチを変更するだけで、組立台数の変更を行うことができる。すなわち、組立台数の変更を容易に行うことができる。なお、パレット1は重量物であり、載置状態における安定性に優れた形状となっているので、搬送コンベア2に固定されていなくても、搬送コンベア2上に安定して位置している。また、従来の組立ラインでは、オーバーヘッドコンベアにフレームを吊り下げるアタッチメントのために、組立部品によっては、オーバーヘッドコンベア上で組み付けができず、組立工程に制約があった。しかし、前記構成の組立ライン装置10では、搬送コンベア2上のパレット1ですべての組み付けを行うので、組立工程に制約が無くなり、組立工程の自由度を向上させることができる。
【0058】
(12)搬送コンベア2、返送コンベア3、戻しコンベア4及び移載装置5によって、組立ライン100におけるパレット1の循環を容易に行うことができる。また、搬送コンベア2と返送コンベア3とは、上下に配置されているので、組立ライン装置10のスペースを有効に利用することができる。
【0059】
上記実施形態では、組立ライン100が、始端部から終端部に向かって略直線状となっているが、組立ラインは屈曲していても、また円弧状であっても良い。
【0060】
上記実施形態では、フレーム支持部124の側方支持部126は、軸126aを中心として前方に回動し、前方支持部121に格納されるようになっているが、中央支持部122に対して取り外し可能に構成されて前方支持部121に格納されても良い。
【0061】
上記実施形態では、移載装置5は、返送コンベア3からパレット1をクレーン又はリフトのようなもので持ち上げて搬送コンベア2に受け渡すようになっているが、戻しコンベア4のような上下に昇降するコンベアであっても良い。
【0062】
上記実施形態では、自動二輪車の組立ライン装置に用いられるパレットを例として説明したが、本発明のパレットは、自動二輪車に限定されず、車両全般の組立ライン装置に用いられることが可能である。
【0063】
特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。