(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
活性層(34)を含む複数の半導体層が積層されてなる半導体レーザ(10)と、光ファイバ(11)と、当該半導体レーザからの出射光を当該光ファイバに向けて集光するレンズ(12)と、を備える半導体レーザモジュール(1,2,3,4)であって、
前記半導体レーザの前記出射光の光強度分布が、前記活性層を中心とした層厚方向に非対称であり、
前記レンズの前記半導体レーザに対向する側の光学面(12a)が非球面形状をなし、
前記レンズの光軸が、前記半導体レーザの光軸に対し、前記半導体レーザに向かう方向において前記非対称な光強度分布の偏りの小さい側に傾斜しており、前記半導体レーザの光軸と前記レンズの光軸とが、互いに平行ではなく所定の角度をなして交差し、
前記所定の角度は、前記半導体レーザから前記レンズの前記半導体レーザに対向する前記光学面に入射した光の光強度分布が、前記光ファイバの光軸方向に垂直な方向に整形され、前記光学面に入射した光が、前記光ファイバの光軸に関して非対称性が緩和されて前記レンズの前記光ファイバに対向する光学面(12b)から出射されるように設定されていることを特徴とする半導体レーザモジュール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されたような従来の半導体レーザモジュールは、
図16に示したように、半導体レーザ100の光軸とレンズ120の光軸とが同一直線上に位置している。このため、上記の半導体レーザ100として特許文献2に開示された半導体レーザを用いる場合には、非対称な光強度分布を有する出力光がその非対称性を保ったまま光ファイバ110に入射される。従って、
図18に示すような対称な光強度分布を有するレーザ光を出力する半導体レーザを用いた場合と比較して、半導体レーザと光ファイバとの結合効率が悪いという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、非対称な光強度分布のレーザ光を出射する半導体レーザを備える半導体レーザモジュールにおいて、半導体レーザと光ファイバとの結合効率を向上させることが可能な半導体レーザモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の半導体レーザモジュールは、
活性層を含む複数の半導体層が積層されてなる半導体レーザと、光ファイバと、当該半導体レーザからの出射光を当該光ファイバに向けて集光するレンズと、を備える半導体レーザモジュールであって、前記半導体レーザの前記出射光の光強度分布が、前記活性層を中心とした層厚方向に非対称であり、前記レンズの前記半導体レーザに対向する側の光学面が非球面形状をなし、前記レンズの光軸が、前記半導体レーザの光軸に対し、前記半導体レーザに向かう方向において前記非対称な光強度分布の偏りの小さい側に傾斜しており、前記半導体レーザの光軸と前記レンズの光軸とが、互いに平行ではなく所定の角度をなして交差
し、前記所定の角度は、前記半導体レーザから前記レンズの前記半導体レーザに対向する前記光学面に入射した光の光強度分布が、前記光ファイバの光軸方向に垂直な方向に整形され、前記光学面に入射した光が、前記光ファイバの光軸に関して非対称性が緩和されて前記レンズの前記光ファイバに対向する光学面から出射されるように設定されている構成を有している。
【0011】
この構成により、レンズの半導体レーザに対向する光学面が非球面形状をなし、半導体レーザの出射光の光軸とレンズの光軸とが互いに平行ではなく所定の角度をなして交差することにより、半導体レーザからレンズに入射した非対称な光強度分布のレーザ光が、光ファイバの光軸を中心とした上下方向に整形されてレンズから出射されるため、非対称な光強度分布のレーザ光を出射する半導体レーザと光ファイバとの結合効率を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の請求項2の半導体レーザモジュールは、前記半導体レーザを支持する支持部材をさらに備え、前記支持部材は、前記半導体レーザの光軸と前記レンズの光軸とが前記所定の角度をなして交差した状態で前記半導体レーザを支持するための傾斜面を有する構成を有している。
【0013】
この構成により、半導体レーザの光軸をレンズの光軸に対して傾けることにより、非対称な光強度分布のレーザ光を出射する半導体レーザと光ファイバとの結合効率を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の請求項3の半導体レーザモジュールは、一方の端面と他方の端面とが互いに平行に形成された突き当てブロックと、前記半導体レーザを支持し、一端面において前記突き当てブロックの前記一方の端面に当接する支持部材と、前記レンズを保持し、当該保持したレンズの光軸と交差する端面を有するレンズホルダと、をさらに備え、前記レンズホルダは、前記半導体レーザの光軸と前記レンズの光軸とが前記所定の角度をなして交差した状態で、前記レンズの光軸と交差する前記端面の縁部において、前記突き当てブロックの前記他方の端面に固定される構成を有している。
【0015】
この構成により、レンズの光軸を半導体レーザの光軸に対して傾けることにより、非対称な光強度分布のレーザ光を出射する半導体レーザと光ファイバとの結合効率を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の請求項4の半導体レーザモジュールは、一方の端面と他方の端面とを有する突き当てブロックと、前記半導体レーザを支持し、一端面において前記突き当てブロックの前記一方の端面に当接する支持部材と、前記レンズを保持し、当該保持したレンズの光軸と交差する端面を有し、当該端面において前記突き当てブロックの前記他方の端面に当接して固定されるレンズホルダと、をさらに備え、前記突き当てブロックの前記他方の端面は、前記半導体レーザの光軸と前記レンズの光軸とが前記所定の角度をなして交差した状態で前記レンズホルダを固定するための傾斜面をなす構成を有している。
【0017】
この構成により、レンズの光軸を半導体レーザの光軸に対して傾けることにより、非対称な光強度分布のレーザ光を出射する半導体レーザと光ファイバとの結合効率を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の請求項5の半導体レーザモジュールは、前記半導体レーザは、InPからなる基板上に、活性層と、該活性層を挟むInGaAsPからなるn型クラッド層及びInPからなるp型クラッド層を設けてなる構成を有していても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、非対称な光強度分布のレーザ光を出射する半導体レーザを備える半導体レーザモジュールにおいて、半導体レーザと光ファイバとの結合効率を向上させることが可能な半導体レーザモジュールを提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る半導体レーザモジュールの実施形態について、図面を用いて説明する。なお、各図面上の各構成の寸法比は、実際の寸法比と必ずしも一致していない。
【0022】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態としての半導体レーザモジュールの構成について説明する。
【0023】
図1,2に示すように、バタフライ型の半導体レーザモジュール1は、半導体レーザ10と、シングルモード光ファイバとしての光ファイバ11と、半導体レーザ10からの出射光を光ファイバ11に向けて集光するレンズ12と、基板13と、を主に備える。
【0024】
半導体レーザ10、レンズ12、及び基板13は、内部が中空の直方体状のパッケージ(筺体)14に格納されている。光ファイバ11は、パッケージ14の正面側の壁面14aに接続され、レンズ12により集光された光をパッケージ14の外部に導くようになっている。
【0025】
図2に示すように、パッケージ14の両側壁14b,14cには、半導体レーザモジュール1の動作を制御するための信号が入出力される複数の端子15が、所定間隔で取り付けられている。これらの端子15は、プリント基板(図示せず)上のパターンに半田付けされるようになっている。また、パッケージ14の前端下部及び後端下部にはフランジ部16が設けられ、フランジ部16には半導体レーザモジュール1を放熱板(図示せず)にネジ止めするための取り付け穴17が設けられている。
【0026】
図1に示すように、パッケージ14内の底壁14dの上面には、ペルチェ素子18が固定されている。このペルチェ素子18上に上記の基板13が固定されている。
【0027】
さらに、パッケージ14の内部には、半導体レーザ10及びレンズ12に加え、光ファイバ11側から来る反射光などの戻り光を防止するアイソレータ19と、半導体レーザ10のレンズ12側と反対の光出射端面からわずかに出射される光を受光して半導体レーザ10の動作をモニタする受光素子20と、が格納されている。
【0028】
基板13は、傾斜面としての上面13aを有する1つの上段部13bと、2つの下段部13c,13dとで形成されている。上段部13b上には、光(レーザ光)を出射する半導体レーザ10がチップキャリア21を介して固定されている。一方の下段部13c上には、レンズ12を保持するレンズホルダ22を支持する一対の突き当てブロック23,24と、アイソレータ19を支持する台座25と、が固定されている。また、他方の下段部13d上には、受光素子20を支持するPDサブマウント26が固定されている。
【0029】
即ち、チップキャリア21、突き当てブロック23,24、台座25、及びPDサブマウント26は、基板13上に固定されている。ここで、基板13の上段部13bは、半導体レーザ10を支持する支持部材を構成する。
【0030】
ここで、突き当てブロック23,24は、一方の端面23a,24aと他方の端面23b,24bとがXZ平面に対して互いに平行に形成されている。基板13の上段部13bの一端面は一方の端面23a,24aに当接している。
【0031】
レンズホルダ22は、ステンレスなどの金属からなっており、レンズ12の光軸と直交する端面22aが突き当てブロック23,24の他方の端面23b,24bに当接した状態で、他方の端面23b,24bに半田、溶接もしくは接着剤で固定されている。
【0032】
半導体レーザ10の光軸は、一対の突き当てブロック23,24の間を通過するようになっている。ここで、半導体レーザ10の光軸とは、半導体レーザ10の出射光の導波方向に沿った軸を意味する。
【0033】
パッケージ14の壁面14aには、半導体レーザ10から出射されるレーザ光を外部に導くための円形の出射口が形成されており、その手前側には窓ガラス27が取り付けられている。光ファイバ11の先端部分に取り付けられた円筒状のフェルール28は、スリーブ29によってパッケージ14の壁面14aに固定され、さらにフェルール28の全体及び光ファイバ11の一部を取り囲む円筒状のカバー30が、パッケージ14の壁面14aに固定されている。
【0034】
上記の構成により、半導体レーザ10から出射されたレーザ光は、レンズ12、アイソレータ19及び窓ガラス27を通ってパッケージ14の壁面14aに達し、光ファイバ11の一方の端部に入射する。そして、光ファイバ11に入射したレーザ光は、光ファイバ11内を伝搬して、光ファイバ11の他方の端部から出射される。
【0035】
次に、本実施形態の半導体レーザモジュール1が備える半導体レーザ10の構成について説明する。
【0036】
図3に示すように、半導体レーザ10は、例えば、n型InP(インジウム・リン)からなるn型半導体基板31の上に、n型InGaAsP(インジウム・ガリウム・砒素・リン)からなるn型クラッド層32、InGaAsPからなる光分離閉じ込め(SCH:Separate Confinement Heterostructure)層33、InGaAsPからなる活性層34、InGaAsPからなるSCH層35と、p型InPからなるp型クラッド層36と、が順番に積層されてなる。
【0037】
図3において、n型クラッド層32、SCH層33、活性層34、SCH層35、及びp型クラッド層36はメサ型の光導波路を構成しており、このメサ型の光導波路の両側方にp型InPからなる下部埋め込み層37及びn型InPからなる上部埋め込み層38が形成されている。
【0038】
p型InPからなるp型クラッド層36はSCH層35の上側及び上部埋め込み層38の上面に形成されており、このp型クラッド層36の上面には、p型InGaAsPからなるp型コンタクト層39が形成されている。さらに、このp型コンタクト層39の上面には、p型金属電極40が設けられている。また、n型半導体基板31の下面にはn型金属電極41が設けられている。
【0039】
また、半導体レーザ10の劈開によって形成された光出射端面42a,42bには、それぞれ所定の反射率を有する誘電体膜(図示せず)が施されている。
【0040】
活性層34は、
図4の拡大断面図に示すように、井戸層34aと障壁層34bとが繰返し交互に積層された多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造を有する。即ち、活性層34は、複数の障壁層34bと、当該複数の障壁層34bの個数よりも1つ少ない個数の井戸層34aと、を有する。あるいは、活性層34は、2つの障壁層34bの間に1つの井戸層34aが挟まれた単一量子井戸(SQW:Single Quantum Well)構造を有するものであっても良い。
【0041】
また、この活性層34の下側に位置するSCH層33は複数の層33a,33b,33cからなる多層構造を有する。同様に、活性層34の上側に位置するSCH層35は複数の層35a,35b,35cからなる多層構造を有する。
【0042】
ここで、活性層34における障壁層34bの屈折率をn
s、n型クラッド層32の屈折率をn
a、p型クラッド層36の屈折率をn
bとする。また、SCH層33を構成する各層33a,33b,33cの屈折率及び厚さをそれぞれn
1,n
2,n
3,t
1,t
2,t
3とし、同様に、SCH層35を構成する各層35a,35b,35cの屈折率及び厚さをn
1,n
2,n
3,t
1,t
2,t
3とする。
【0043】
そして、各屈折率の大小関係は、
図5に示すように、活性層34から遠ざかる程小さくなるように設定され、かつ、InGaAsPからなるn型クラッド層32の屈折率n
aは、InPからなるp型クラッド層36の屈折率n
bより高い。
【0045】
さらに、この半導体レーザ10においては、
図5に示すように、各SCH層33,35を構成する隣接する層相互間の屈折率差が、活性層34からn型クラッド層32及びp型クラッド層36へそれぞれ向かう程小さくなるように設定されている。
【0046】
即ち、
n
s−n
1>n
1−n
2>n
2−n
3>n
3−n
b>n
3−n
a
となるように設定されている。
【0047】
また、SCH層33,35を構成する各層33a,33b,33c,35a,35b,35cの厚みt
1,t
2,t
3は等しく設定されている。
【0048】
このように構成された半導体レーザ10では、p型金属電極40とn型金属電極41との間に直流電圧が印加されると、活性層34でレーザ光Pが生起され、そのレーザ光Pが
図3に示した半導体レーザ10の光出射端面42a,42bから外部へ出射される。
【0049】
この場合、
図5の屈折率特性に示すように、SCH層33,35を構成する隣接する層相互間の屈折率差が、活性層34からn型クラッド層32及びp型クラッド層36へそれぞれ向かう程小さくなるように設定されているので、SCH層33,35内における活性層34の近傍領域の屈折率の高い領域においては屈折率が急激に低下し、n型クラッド層32及びp型クラッド層36の近傍領域の屈折率の低い領域においては、屈折率が緩慢に低下する。
【0050】
このため、光導波路内で光の集中度を緩和する、即ち、光閉じ込め係数を低くすることができ、内部損失が低下する。
【0051】
また、InGaAsPからなるn型クラッド層32の屈折率n
aは、InPからなるp型クラッド層36の屈折率n
bより高いので、半導体レーザ10の出射光の光強度分布は、活性層34を中心とした層厚方向に非対称となる。より詳細には、光強度分布は、n型クラッド層32とp型クラッド層36を同一屈折率にしたときの対称な特性A'(
図6参照)に対して、特性A(
図6参照)のようにn型クラッド層32側に偏って分布する。
【0052】
このため、p型クラッド層36における価電子帯間光吸収による光損失の増加を抑制することができ、高出力なレーザ光を得ることができる。
【0053】
このように構成された半導体レーザ10は、半導体レーザモジュール1において上段部13b上にチップキャリア21を介してジャンクションダウンで固定されている。
【0054】
なお、層厚方向に非対称な光強度分布を示す半導体レーザは、上記のように屈折率分布が非対称なクラッド構造を有するInP系の埋め込み型の半導体レーザに限定されず、例えば、屈折率分布が非対称なクラッド構造を有するGaAs(ガリウム・砒素)系のリッジ型あるいは埋め込みリッジ型の半導体レーザであっても良い。
【0055】
次に、本実施形態の半導体レーザモジュール1の要部の構成について説明する。
図7に示すように、レンズ12は、半導体レーザ10に対向する側の光学面12aと、光ファイバ11に対向する側の光学面12bと、を有している。光学面12aは非球面形状をなしており、光学面12bはほぼ球面形状をなしている。このようなレンズ12としては、市場に出回っている非球面レンズを使用することができる。
なお、光学面12bは非球面形状をなしていても良い。
【0056】
また、
図7はレンズ12が1枚のレンズからなる構成を示しているが、レンズ12は、2枚レンズ系の構成であっても良い。この場合は、半導体レーザ10に近い方のレンズの半導体レーザ10に対向する側の光学面が非球面形状をなしていれば良い。
【0057】
半導体レーザ10の光軸とレンズ12の光軸とは、互いに平行ではなく所定の角度θをなして交差している。
図7に示すように、レンズ12の光軸は、半導体レーザ10の光軸に対し、半導体レーザ10に向かう方向において非対称な光強度分布の偏りの小さい側に傾斜している。
【0058】
レンズ12の光学面12aの形状は非球面形状であるため、所定の角度θを適切に選べば、半導体レーザ10からレンズ12の光学面12aに入射したレーザ光は、その非対称性が緩和されてレンズ12の光学面12bから出射されることとなる。そして、非対称性が緩和されたレーザ光が光ファイバ11に入射されることにより、半導体レーザ10と光ファイバ11の結合効率が向上することとなる。
【0059】
従って、上記の角度θは、半導体レーザ10からレンズ12の光学面12aに入射した非対称な光強度分布のレーザ光が、光ファイバ11の光軸を中心としたZ軸方向に整形されてレンズ12の光学面12bから出射される角度に設定されることが望ましい。具体的な構成としては、
図1に示すように、基板13の傾斜面13aのXY平面に対する傾斜角度をθとすることにより、半導体レーザ10の光軸をレンズ12の光軸に対して傾ける。
【0060】
さらに、本願出願人は、
図7の構成において、半導体レーザ10のレーザ光の出射点が光ファイバ11の光軸の延長線上に配置された場合に、半導体レーザ10と光ファイバ11との結合効率が良好な値となることを実験で確認している。なお、
図7においては、レンズ12の中心点も光ファイバ11の光軸の延長線上に配置されているが、本構成は一例であり、必ずこのような構成とする必要はない。
【0061】
図8に半導体レーザ10と光ファイバ11間の結合損失と角度θとの関係の一例を示す。
図8のグラフから、角度θを0(ゼロ)度から増加させることにより結合損失が減少し、半導体レーザ10と光ファイバ11との結合効率が向上することが確認できる。
【0062】
図8のグラフには示されていないが、角度θには最小の結合損失、言い換えれば最大の結合効率を得られる角度θ
0が存在する。このときの角度θ
0は、レンズ12の光学面12bから出射されるレーザ光の光強度分布が、光ファイバ11の光軸に関して最も対称となる角度である。
【0063】
なお、
図1に示した傾斜面13aは、YZ平面内において右肩上がりに傾斜しているが、傾斜面13aの傾斜の向きはこれに限定されず、半導体レーザ10の出射光の偏りの方向やレンズ12の光学面12aの非球面形状に応じて、YZ平面内において右肩下がりに傾斜する場合もあり得る。
【0064】
さらに、
図3等に示した半導体レーザ10に代えて、水平方向(X軸方向)に非対称な光強度分布のレーザ光を出射する半導体レーザを半導体レーザモジュール1に設置する場合には、傾斜面13aの傾斜の向きをXZ平面内において右肩上がりまたは右肩下がりに傾斜させても良い。
【0065】
ここで、水平方向(X軸方向)に非対称な光強度分布のレーザ光を出射する半導体レーザとしては、例えば、光導波路の光軸が光出射端面の法線に対して0(ゼロ)度ではない角度をなす斜め端面の半導体レーザが挙げられる。
【0066】
また、
図1には傾斜面13aを基板13に設けた例を示したが、基板13の上面をXY平面に平行としてチップキャリア21に傾斜面を設けても良い。あるいは、基板13及びチップキャリア21の両方に傾斜面を設けても良い。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の半導体レーザモジュール1は、半導体レーザ10の光軸を非球面形状の光学面12aを有するレンズ12の光軸に対して傾けることにより、非対称な光強度分布のレーザ光を出射する半導体レーザ10と光ファイバ11との結合効率を向上させることができる。
【0068】
半導体レーザ10と光ファイバ11とを光結合するレンズ12としては、市場に出回っている非球面レンズを使用することができるため、安価かつ簡易な構成で半導体レーザ10と光ファイバ11との結合効率を向上させることができる。
【0069】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態としての半導体レーザモジュール2について図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0070】
図9に示すように、本実施形態の半導体レーザモジュール2は、第1の実施形態の基板に代えて、チップキャリア21を介して半導体レーザ10を固定する1つの上段部53bと、2つの下段部53c,53dとを有する基板53を備える。
【0071】
上段部53bの上面53aはXY平面に平行であり、その上に配置される半導体レーザ10の光軸もXY平面に平行となる。ここで、基板53の上段部53bは、半導体レーザ10を支持する支持部材を構成する。基板53の上段部53bの一端面は、一対の突き当てブロック23,24の一方の端面23a,24aに当接している。
【0072】
図9,10に示すように、レンズ12を保持するレンズホルダ22は、レンズ12の光軸と直交する端面22aの縁部の任意の箇所Pにおいて、一対の突き当てブロック23,24の他方の端面23b,24bと半田、溶接もしくは接着剤で固定される。
【0073】
次に、本実施形態の半導体レーザモジュール2の要部の構成について説明する。
図11に示すように、半導体レーザ10の光軸とレンズ12の光軸とは、互いに平行ではなく所定の角度θをなして交差している。第1の実施形態と同様に、レンズ12の光軸は、半導体レーザ10の光軸に対し、半導体レーザ10に向かう方向において非対称な光強度分布の偏りの小さい側に傾斜している。さらに、上記の角度θは、半導体レーザ10からレンズ12の光学面12aに入射した非対称な光強度分布のレーザ光が、光ファイバ11の光軸を中心としたZ軸方向に整形されてレンズ12の光学面12bから出射される角度に設定されている。
【0074】
具体的には、
図9に示すように、レンズホルダ22の端面22aが突き当てブロック23,24の他方の端面23b,24bに対してなす角度をθとすることにより、レンズ12の光軸を半導体レーザ10の光軸に対して傾けている。
【0075】
以上のように構成された半導体レーザモジュール2は、非球面形状の光学面12aを有するレンズ12の光軸を半導体レーザ10の光軸に対して傾けることにより、第1の実施形態と同様に、非対称な光強度分布のレーザ光を出射する半導体レーザ10と光ファイバ11との結合効率を向上させることができる。
【0076】
なお、本実施形態においては、半導体レーザ10の光軸がXY平面に平行であるとしたが、基板53の上面53aを傾斜面として、第1の実施形態のように半導体レーザ10の光軸を傾けても良い。また、チップキャリア21に傾斜面を設けても良い。あるいは、基板53及びチップキャリア21の両方に傾斜面を設けても良い。
【0077】
また、本実施形態においては、レンズホルダ22の端面22aがレンズ12の光軸と直交するとしたが、必ずしもこの構成に限定されず、端面22aの法線とレンズ12の光軸の向きが一致しない状態でレンズ12がレンズホルダ22内に固定されていても良い。
【0078】
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態としての半導体レーザモジュール3について図面を参照しながら説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0079】
図12は、本実施形態の半導体レーザモジュール3の構成を示す側面図である。第2の実施形態と同様に、基板53は、チップキャリア21を介して半導体レーザ10を固定する1つの上段部53bと、2つの下段部53c,53dとで形成されている。上段部53bの上面53aはXY平面に平行であり、その上に配置される半導体レーザ10の光軸もXY平面に平行となる。ここで、基板53の上段部53bは、半導体レーザ10を支持する支持部材を構成する。
【0080】
また、
図12,13に示すように、本実施形態の半導体レーザモジュール3は、第1及び第2の実施形態の突き当てブロックに代えて、XZ平面に平行な一方の端面63a,64aと、一方の端面63a,64aに対して所定の角度θをなす傾斜面としての他方の端面63b,64bとを有する突き当てブロック63,64を備える。
【0081】
ここで、基板53の上段部53bの一端面は、突き当てブロック63,64の一方の端面63a,64aに当接している。また、
図12,13に示すように、レンズ12を保持するレンズホルダ22は、レンズ12の光軸と直交する端面22aが突き当てブロック63,64の他方の端面63b,64bに当接した状態で、他方の端面63b,64bに半田、溶接もしくは接着剤で固定されている。半導体レーザ10の光軸は、一対の突き当てブロック63,64の間を通過するようになっている。
【0082】
突き当てブロック63,64が上記の傾斜面63b,64bを有することにより、
図12,13に示すように、半導体レーザ10の光軸とレンズ12の光軸とは、互いに平行ではなく所定の角度θをなして交差する。第1及び第2の実施形態と同様に、この角度θは、半導体レーザ10からレンズ12の光学面12aに入射した非対称な光強度分布のレーザ光が、光ファイバ11の光軸を中心としたZ軸方向に整形されてレンズ12の光学面12bから出射される角度に設定されている。
【0083】
以上のように構成された半導体レーザモジュール3は、非球面形状の光学面12aを有するレンズ12の光軸を半導体レーザ10の光軸に対して傾けることにより、第1及び第2の実施形態と同様に、半導体レーザ10と光ファイバ11との結合効率を向上させることができる。
【0084】
なお、本実施形態においては、半導体レーザ10の光軸がXY平面に平行であるとしたが、基板53の上面53aを傾斜面として、第1の実施形態のように半導体レーザ10の光軸を傾けても良い。また、チップキャリア21に傾斜面を設けても良い。あるいは、基板53及びチップキャリア21の両方に傾斜面を設けても良い。
【0085】
また、本実施形態においては、レンズホルダ22の端面22aがレンズ12の光軸と直交するとしたが、必ずしもこの構成に限定されず、端面22aの法線とレンズ12の光軸の向きが一致しない状態でレンズ12がレンズホルダ22内に固定されていても良い。
【0086】
(第4の実施形態)
第1〜第3の実施形態では、半導体レーザモジュールとしてバタフライ型を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体レーザモジュールが同軸型であっても良い。以下、本発明の第4の実施形態としての同軸型の半導体レーザモジュール4について図面を参照しながら説明する。なお、第1〜第3の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0087】
図14,15に示すように、本実施形態の半導体レーザモジュール4は、底板71に固定されて用いられるCANパッケージ72と、CANパッケージ72から出射されたレーザ光が入射する光ファイバ11と、を主に備える。
【0088】
CANパッケージ72は、3本のリード73が背面側に向けて突出している円盤状のステム74と、ステム74の正面側に固定された中空で円筒状のキャップ75と、によってその外形が形成される。
【0089】
図15に示すように、キャップ75の中には、半導体レーザ10と、ステム74から延伸し、半導体レーザ10を支持固定するための保持ブロック76と、半導体レーザ10と保持ブロック76との間に配置されるチップキャリア77と、半導体レーザ10から出射されるレーザ光を光ファイバ11に結合させるレンズ12と、半導体レーザ10からのレーザ光を受光するフォトダイオード(不図示)と、が収められている。
【0090】
ここで、保持ブロック76は半導体レーザ10を支持する支持部材を構成する。なお、
図15はレンズ12が1枚のレンズからなる構成を示しているが、レンズ12は、2枚レンズ系の構成であっても良い。この場合においては、半導体レーザ10に近い方のレンズの半導体レーザ10に対向する側の光学面が非球面形状をなしていれば良い。
【0091】
図14に示すように、底板71は、背面71a側から正面71b側に向かって段階的に径が狭まる貫通穴78を有している。CANパッケージ72は、貫通穴78の内部に配置される。
【0092】
半導体レーザモジュール4は、さらに、CANパッケージ72のキャップ75と光ファイバ11とを結ぶホルダ79と、光ファイバ11の先端部分に取り付けられた円筒状のフェルール80をホルダ79に固定するスリーブ81と、CANパッケージ72、光ファイバ11、ホルダ79、及びスリーブ81を覆うカバー82と、を備える。
【0093】
ホルダ79とスリーブ81とは溶接により連結固定される。また、カバー82は底板71と接着剤により連結固定される。また、フェルール80は、溶接によりスリーブ81内に固定される。
【0094】
次に、本実施形態の半導体レーザモジュール4の要部の構成について説明する。
図15に示すように、保持ブロック76は、XY平面に対して所定の角度θをなす傾斜面としての上面76aを有する。保持ブロック76が上記の傾斜面76aを有することにより、
図7に示すように、半導体レーザ10の光軸とレンズ12の光軸とは、互いに平行ではなく所定の角度θをなして交差する。第1〜第3の実施形態と同様に、この角度θは、半導体レーザ10からレンズ12の光学面12aに入射した非対称な光強度分布のレーザ光が、光ファイバ11の光軸を中心としたZ軸方向に整形されてレンズ12の光学面12bから出射される角度に設定されている。
【0095】
以上のように構成された半導体レーザモジュール4は、半導体レーザ10の光軸を非球面形状の光学面12aを有するレンズ12の光軸に対して傾けることにより、第1〜第3の実施形態と同様に、半導体レーザ10と光ファイバ11との結合効率を向上させることができる。
【0096】
なお、本実施形態においては、保持ブロック76が傾斜面76aを有するとしたが、保持ブロック76の上面をXY平面に平行としてチップキャリア77に傾斜面を設けても良い。あるいは、保持ブロック76及びチップキャリア77の両方に傾斜面を設けても良い。