(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077890
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】築地塀の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04H 17/14 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
E04H17/14 101Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-43365(P2013-43365)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-169611(P2014-169611A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】511028571
【氏名又は名称】ミサワホーム四国株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 哲
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−271518(JP,A)
【文献】
特開平08−027925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/00−17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塀本体の外面の最下段に水平に支持材を取り付け、支持材の上に緩衝材を載置し、瓦部材の後縁部に接着剤を塗布して最下段の緩衝材の上に乗せ、接着剤を介して最下段の瓦部材の後縁部を塀本体の外面に接着し、
続いて、接着された最下段の瓦部材の上に下から2段目の支持材を塀本体の外面に沿って載置し、その上に2段目の緩衝材を載置し、
2段目の瓦部材の後縁部に接着剤を塗布して2段目の緩衝材の上に乗せ、接着剤を介して2段目の瓦部材の後縁部を塀本体1の外面に接着し、
3段目以降同じ手順を繰り返して最上段の瓦部材まで順次接着し、
瓦部材が塀本体の外面に固着されたところで、緩衝材と支持材とを取り外し、
瓦部材の間にて塀本体の外面に充填材を塗着することを特徴とする築地塀の施工方法。
【請求項2】
充填材の外面に化粧材を塗着することを特徴とする請求項1に記載の築地塀の施工方法。
【請求項3】
緩衝材と塀本体の外面との間に隙間を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の築地塀の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寺院等の塀に多く用いられる築地塀の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から古都の寺院や旧家等の塀には、例えば油と荒木田土などの土とを混ぜ、これを熨斗瓦と交互に積み上げ、最上部に屋根瓦を取り付け、熨斗瓦の間に化粧層としての漆喰を塗着する築地塀の一種がよく用いられている。
【0003】
しかしながら、この築地塀は土を積み上げ、乾燥させながらその間に熨斗瓦を敷き込んでゆくという昔ながらの工法が用いられているため手間が掛かり、熟練技能者を必要とする。そこで、特許文献1に示すように、特殊な形状をした熨斗瓦専用の保持部材を用いる簡便な施工方法が提案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3431566
【0005】
この方法は、コンクリート釘を使い、塀本体の外面に所定の間隔を開けて前述の特殊な形状の保持部材を複数段にわたって取り付け、これらの保持部材間に外装材を充填し、続いて熨斗瓦の前縁部が前記塀本体に対し外方に突出するように取り付けて前記熨斗瓦の後縁部を前記保持部材に固定し、最後に保持部材間にモルタルを充填し、更にその表面に必要に応じて漆喰等の化粧層を塗布して、保持部材の前端面と面一に仕上げる、というものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法は、伝統的な築地塀の施工方法に比べて、相当に簡素化され且つコスト的にも優れた方法であると言えるが、特殊な形状の保持部材を必要とすること、保持部材を一定の間隔で塀本体に釘止めしていかなければならず、なお、改善の余地が残されていた。
【0007】
本発明の目的は、外観は伝統的な築地塀と全く変わることなく、しかも前述の改良された築地塀の施工方法をさらに簡素化するとともにコストと施工時間を削減することができる新たな築地塀の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明の築地塀Aの施工方法は、
塀本体1の外面2の最下段に水平に支持材31を取り付け、支持材31の上に緩衝材41を載置し、瓦部材51の後縁部51aに接着剤61を塗布して最下段の緩衝材41の上に乗せ、接着剤61を介して最下段の瓦部材51の後縁部51aを塀本体1の外面2に接着し、
続いて、接着された最下段の瓦部材51の上に下から2段目の支持材32を塀本体1の外面2に沿って載置し、その上に2段目の緩衝材42を載置し、
2段目の瓦部材52の後縁部52aに接着剤62を塗布して2段目の緩衝材42の上に乗せ、接着剤62を介して2段目の瓦部材52の後縁部52aを塀本体1の外面2に接着し、
3段目以降同じ手順を繰り返して最上段の瓦部材5nまで順次接着し、
瓦部材5が塀本体1の外面2に固着されたところで、緩衝材4と支持材3とを取り外し、
瓦部材5の間にて塀本体1の外面2に充填材7を塗着することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の本発明の築地塀の施工方法は、充填材7の外面に化粧材8を塗着することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の本発明の築地塀の施工方法は、緩衝材4と塀本体1の外面2との間に隙間9を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、最下段の支持材31を塀本体1の外面2に水平に取り付けさえすれば、後は順番に緩衝材41、瓦部材51の接着、2段目の支持材32の載置という作業を最上段まで繰り返して行い、瓦部材5の接着が完了したところで支持材3と緩衝材4とを取り除き、取り除いた部分にモルタルのような充填材7を塗着すること、さらには充填材7の外面に漆喰又はペイントのような化粧材8を塗着することで完了するものであり、従来例のような、熨斗瓦を保持するための特殊な形状の保持部材などを必要とせず、施工が非常に簡単であるだけでなく、コスト的にも非常に優れている。なお、緩衝材4と塀本体1の外面2との間に隙間9を設けておけば、接着剤6が垂れてきても緩衝材4や支持材3が外面2に接着されることがなく、取り外しをスムーズに行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】塀本体に最下段の支持材を取り付けた状態の断面図である。
【
図3】
図2の最下段の支持材の上に緩衝材を載置した状態の断面図である。
【
図4】
図3の最下段の緩衝材の上に瓦部材を載置し、塀本体の外面に接着した状態の断面図である。
【
図5】
図4の瓦部材の上に支持材を載置した状態の断面図である。
【
図6】塀本体に最上段の瓦部材を取り付けた状態の断面図である。
【
図7】
図6から支持材と緩衝材を取り外した状態の断面図である。
【
図8】
図7の状態から充填材を塀本体の外面に塗着した状態の断面図である。
【
図9】
図8において、塀本体の頂部に屋根瓦と丸瓦を施工した状態の断面図である。
【
図10】本発明に掛かる築地塀の完成状態の断面図である。
【
図11】本発明において、最下段部分の施工状態の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。塀本体1は、
図1に示すように、基礎10及び該基礎10上に鉄筋コンクリートやコンクリートブロック積み等により必要な高さ及び厚みに構築された構築物である。塀本体1の両面(外面2)は略垂直な面となっている。以下の説明において、支持材、緩衝材、瓦部材、後縁部、接着剤を上位概念で示す場合は、最初の符号で示し、下位概念で示す場合は、2番目以降の符号で区別する。例えば、支持材の上位概念は3で示すが、その下位概念である最下段の支持材は31から3nで表される。
【0014】
瓦部材5は、築地塀Aに用いられる熨斗瓦が一般的であるが、勿論、これに限られず築地塀Aに用いられるような瓦であれば、どのようなものも適用可能である。瓦部材5の出幅は支持材3の出幅より大きい。
【0015】
支持材3は、長尺の木質角材で、その上に緩衝材4を載置しても緩衝材4が脱落しないだけの大きさを持つ。支持材3の断面は正方形に限られず、勿論、長方形のようなものであってもよいことを言うまでもない。通常は野縁材のようなものが使用される。
【0016】
緩衝材4は、例えば新聞紙や段ボールのようなものが使われる。本発明の場合では厚みのある段ボールが好ましい。勿論、これらに限られず支持材3と瓦部材5との間にある程度の間隙を形成できるものであればよい。
【0017】
充填材7は、本発明の場合ではモルタルが使用される。また、化粧材8としては、築地塀Aを表現するために漆喰が使用される。勿論、漆喰に代えて単なるペイントでもよい。
【0018】
しかして、まず、塀本体1の略垂直面の外面2の最下段(基礎10または最下段のブロック)に支持材31をコンクリート釘20にて塀本体1の全長に亙って固定する(
図2参照)。この最下段の支持材31の上に緩衝材41を載置する(
図3参照)。緩衝材41は
図11から分かるように、緩衝材41の前端は支持材31の外側に出るようにし、後端は塀本体1の外面2との間に隙間9ができるように載置される。段ボールを使用すればこの上に載置される瓦部材51と支持材31との間に前述のようにある程度の間隙が形成される。
【0019】
緩衝材41の載置が終了すると、
図4に示すように瓦部材51を緩衝材41の上に順番に乗せていくことになるが、これに先立って瓦部材51の少なくとも接着面となる後縁部51aを清浄にしておく(
図11参照)。清浄にされた後縁部51aに接着剤61を塗布し、緩衝材41の上に単に載置し、最下段の瓦部材51の後縁部51aを塀本体1の外面2に接着する。この場合、接着剤61が垂れる場合があるが、前記隙間9により緩衝材41に付着せず、緩衝材41が外面2に接着することはない。同様に、支持材31まで垂れ込むこともなく、支持材31が外面2に接着してしまうようなこともない。この意味で、緩衝材4にはある程度の厚みがあることが好ましい。
【0020】
最下段の瓦部材51の接着が終了すると、
図5に示すようにその上に2段目の支持材32を、塀本体1と固定させることなく順次塀本体1に沿って当接させつつ或いは近接状態で載置する。2段目より上の支持材31〜3nは施工効率を高めるため最下段の支持材31の長さの1/2程度とするのが好ましい。なお、支持材3は施工中の反りを避けるために濡らさないことが重要である。
【0021】
2段目の支持材32の載置が終了すれば、前述同様、2段目の緩衝材42をその上に載置し、載置が終われば2段目の瓦部材52を接着することになる。そして、3段目以降同じ手順を繰り返して最上段の瓦部材5nまで順次接着する(
図6参照)。最上段の瓦部材5nの接着が終了すると、少なくとも1日程度の養生期間を設け、接着剤6が十分に固まったところで緩衝材4と支持材3とを取り外す(
図7参照)。
【0022】
続いて、瓦部材5の間、及び最下段の瓦部材51の下側(基礎10部分)、最上段の瓦部材5nより上の部分に、例えば、モルタルのような充填材7を塗着する(
図8参照)。さらに
図9に示すように塀本体1の頂面に山形に下地モルタル15を形成し、その上に屋外側と屋内側に振り分けて屋根瓦14を下地モルタル15の上に傾斜させて並べ、最後に内外の屋根瓦14の取り合いにモルタルのような充填材16を盛り、丸瓦13を敷設する。そして、充填材7が乾くとその上に漆喰あるいはペイントのような化粧材8を塗着する(
図10参照)。
【0023】
なお、塀本体1の室内側の外面2にも充填材11及びその上に漆喰あるいはペイントのような化粧材12を塗着する。
【符号の説明】
【0024】
A:築地塀、1:塀本体、2:外面、3(31〜3n):支持材、4(41〜4n):緩衝材、5(51〜5n):瓦部材、51a〜5na:後縁部、6(61〜6n):接着剤、7:充填材、8:化粧材、9:隙間、10:基礎、11:屋内側の充填材、12:屋内側の化粧材、20:コンクリート釘。