特許第6077891号(P6077891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6077891熱収縮性多層フィルム及び熱収縮性ラベル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077891
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】熱収縮性多層フィルム及び熱収縮性ラベル
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20170130BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   B32B27/30 B
   B32B27/36
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-44524(P2013-44524)
(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2014-172214(P2014-172214A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 清康
(72)【発明者】
【氏名】丸市 直之
(72)【発明者】
【氏名】尾濱 雄樹
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−241457(JP,A)
【文献】 特開2011−201239(JP,A)
【文献】 特開2010−284941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/30
B32B 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂を含有する中間層とが、接着層を介して積層されてなる熱収縮性多層フィルムであって、
前記接着層は、ポリスチレン系樹脂を25〜65重量%、及び、ポリエステル系エラストマーを35〜75重量%含有する
ことを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
【請求項2】
接着層を構成するポリスチレン系樹脂は、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体であることを特徴とする請求項1記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項3】
接着層を構成するポリエステル系エラストマーは、融点が120〜200℃であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項4】
接着層を構成するポリエステル系エラストマーは、比重が0.95〜1.20であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項5】
接着層を構成するポリエステル系エラストマーがα、β−エチレン性不飽和カルボン酸により変性されたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の熱収縮性多層フィルムを用いてなることを特徴とする熱収縮性ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温のみならず低温においても、表裏層と中間層との接着性に優れ、層間剥離を効果的に防止することができ、かつ、折り目部分に白色スジが残りにくい熱収縮性多層フィルムに関する。また、本発明は、該熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットボトル、金属罐等の容器の多くには、熱収縮性樹脂からなるベースフィルムに印刷等を施した熱収縮性ラベルが装着されている。
熱収縮性ラベルには、低温収縮性に優れることからポリスチレン系樹脂フィルムが多用されている。しかしながら、ポリスチレン系樹脂フィルムには、耐熱性及び耐溶剤性が不充分であるという問題がある。そこで、耐熱性及び耐溶剤性に優れたポリエステル系樹脂フィルムを用いる試みもなされているが、ポリエステル系樹脂フィルムは低温収縮性が悪く急激に収縮することから、容器に装着する際には皺が発生しやすい。また、熱収縮性ラベルには、容器をリサイクルするために使用後の容器から容易に熱収縮性ラベルを引き剥がせるようにミシン目が設けられていることが多いが、ポリエステル系樹脂フィルムはこのミシン目におけるカット性が悪い。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば、ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂を含有する中間層とを有する多層フィルムが検討されているが、多層フィルムにおいては、各層間の剥離を防ぐことが重要な課題である。
【0004】
各層間の剥離を防止するため、表裏層と中間層との間に接着層を設けることが行われており、特許文献1には、接着層の接着性樹脂としてポリエステル系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合物を用いた熱収縮性多層フィルムが記載されている。しかしながら、このような熱収縮性多層フィルムでは、表裏層と中間層との間の接着強度が低く、層間の接着強度は十分ではないという課題があった。
【0005】
また、特許文献2には、接着層の接着性樹脂として、スチレン含有量10〜50%の軟質ポリスチレン樹脂、エラストマー成分を多く含む変性スチレン系樹脂、又はポリエステルと親和性が高く、相溶可能な樹脂、又はこの混合物を用いた熱収縮性積層フィルムが記載されている。
【0006】
しかしながら、これらの熱収縮性積層フィルムでは、ラベルとして使用するために印刷をした後に表裏層と中間層との間の接着強度が低くなり、層間の接着強度は十分ではないという課題があった。
【0007】
また、特許文献3には、接着層を構成する成分として、ポリエステル系エラストマーを用いた熱収縮性多層フィルムが開示されている。
しかしながら、このような熱収縮性多層フィルムでは、例えば、熱収縮性ラベルを作製する時のセンターシール工程においてフィルムが強く折られた際に、熱収縮性ラベルを容器に被せ、熱収縮させた後にも、折り目部分に白色スジが残ることで、フィルムの外観が損なわれることがあった。
【0008】
さらに、例えば、ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂を含有する中間層との間に接着層を設けた多層フィルムを用いた熱収縮性ラベルであっても、冬期など低温環境下で該熱収縮性ラベルを保管後にペットボトルへの装着を行う場合や装着現場が低温環境である場合には、熱収縮時に該熱収縮性ラベルの層間で剥離が生じ、外観不良が生じたり、該熱収縮性ラベルがペットボトルから剥がれるなどの不具合が発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−315416号公報
【特許文献2】特開2006−015745号公報
【特許文献3】特開2008−037093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、常温のみならず低温においても、表裏層と中間層との接着性に優れ、層間剥離を効果的に防止することができ、かつ、熱収縮させた後に折り目部分に白色スジが残りにくい熱収縮性多層フィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、該熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂を含有する中間層とが、接着層を介して積層されてなる熱収縮性多層フィルムであって、前記接着層は、ポリスチレン系樹脂を25〜65重量%、及び、ポリエステル系エラストマーを35〜75重量%含有する熱収縮性多層フィルムである。
以下、本発明を詳述する。
【0012】
本発明者らは、ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂を含有する中間層とを、ポリスチレン系樹脂とポリエステル系エラストマーとを所定の混合比で含有する接着層を介して積層することで、常温のみならず低温環境下においても、各層間の接着強度(以下、層間強度ともいう。)を高めることができ、かつ、折り目部分に白色スジが残りにくい熱収縮性多層フィルムが得られることを見出した。このような接着性及び折り目白化の防止性に優れた熱収縮性多層フィルムは、ペットボトル等の容器の熱収縮性ラベルに用いられる場合にも好適に用いられる。
本明細書中において、「常温」とは18〜28℃をいい、「低温」とは0〜10℃をいう。
【0013】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、表裏層と中間層とを有する。
なお、本明細書中、表裏層とは、表面層と裏面層との両方を意味する。従って、本発明の熱収縮性多層フィルムは、中間層が表面層と裏面層とに挟まれた構造を有する。
【0014】
上記表裏層は、ポリエステル系樹脂を含有する。
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分とを縮重合させることにより得られるものが挙げられる。特に上記ジカルボン酸成分として、ジカルボン酸成分100モル%のうち、テレフタル酸が55モル%以上である芳香族ポリエステル系樹脂が好ましい。さらに上記ジカルボン酸成分として、上記テレフタル酸以外に、o−フタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等を含むことができる。
【0015】
上記ジオール成分としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類等が挙げられる。
【0016】
上記ポリエステル系樹脂としては、なかでも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有し、かつ、ジオール成分としてエチレングリコール及び/又は1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含有するものが好ましい。このような芳香族ポリエステル系ランダム共重合樹脂を用いることにより、熱収縮性多層フィルムに優れた収縮性を付与することができる。
収縮性をより高めたい場合には、ジオール成分100モル%のうち、エチレングリコールに由来する成分の含有量が60〜80モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分の含有量が10〜40モル%であるものを用いることが好ましい。
【0017】
このような芳香族ポリエステル系ランダム共重合樹脂は、更に、ジエチレングリコールに由来する成分を0〜30モル%、好ましくは1〜25モル%、より好ましくは2〜20モル%含有していてもよい。ジエチレングリコールを用いることにより、熱収縮性多層フィルムの主収縮方向の引張破断伸度が高まり、ミシン目を裂いたときに層間剥離が生じて内面側の表裏層のみが容器に残ってしまうことを防止することができる。ジエチレングリコールに由来する成分が30モル%を超えると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性が高くなり過ぎ、容器に装着するときにシワが入りやすくなる。
【0018】
また、上記ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有するポリエステル系樹脂は、ジオール成分として1,4−ブタンジオールに由来する成分を含有するものを用いることもできる。このようなポリエステル系樹脂は、一般に、ポリブチレンテレフタレート系樹脂と呼ばれる。
上記ポリブチレンテレフタレート系樹脂は、上記ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有し、かつ、ジオール成分としてエチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含有する芳香族ポリエステル系ランダム共重合樹脂と、併用されることが好ましい。このような混合樹脂を用いることでより優れた仕上り性を付与することができる。
【0019】
上記ポリブチレンテレフタレート系樹脂としては、テレフタル酸に由来する成分と1,4−ブタンジオールに由来する成分のみからなるポリブチレンテレフタレート系樹脂のほか、テレフタル酸に由来する成分以外のジカルボン酸成分及び/又は1,4−ブタンジオールに由来する成分以外のジオール成分を含有するポリブチレンテレフタレート系樹脂であってもよい。
なお、上記テレフタル酸に由来する成分以外のジカルボン酸成分の含有量は、ジカルボン酸成分100モル%のうち、10モル%以下であることが好ましい。10モル%を超えると、上記ポリブチレンテレフタレート系樹脂の耐熱性が低下し、経済的にも不利となることがある。また、上記1,4−ブタンジオールに由来する成分以外のジオール成分の含有量は、ジオール成分100モル%のうち、10モル%以下であることが好ましい。10モル%を超えると、上記ポリブチレンテレフタレート系樹脂の耐熱性が低下し、経済的にも不利となることがある。
【0020】
上記ポリブチレンテレフタレート系樹脂の添加量として特に限定されないが、30重量%以下であることが望ましい。30重量%を超えると自然収縮率が大きくなったり、フィルムの剛性が低下したりする場合がある。
【0021】
上記表裏層を構成するポリエステル系樹脂のビカット軟化温度の好ましい下限は55℃、好ましい上限は95℃である。上記ビカット軟化温度が55℃未満であると、熱収縮性多層フィルムの収縮開始温度が低くなりすぎたり、自然収縮率が大きくなったりすることがある。上記ビカット軟化温度が95℃を超えると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性及び収縮仕上り性が低下したり、経時での低温収縮性の低下が大きくなったりすることがある。上記ビカット軟化温度のより好ましい下限は60℃、より好ましい上限は90℃である。
なお、上記ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で測定することができる。
【0022】
上記表裏層を構成するポリエステル系樹脂の引張弾性率の好ましい下限は1000MPaを超え、好ましい上限は4000MPaである。上記引張弾性率が1000MPa以下であると熱収縮性フィルムの収縮開始温度が低くなりすぎたり、自然収縮率が大きくなったりすることがある。上記引張弾性率が4000MPaを超えると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性及び収縮仕上り性が低下したり、経時での低温収縮性の低下が大きくなったりすることがある。上記引張弾性率のより好ましい下限は1500MPa、より好ましい上限は3700MPaである。
なお、上記引張弾性率は、ASTM−D882(TestA)に準拠した方法で測定することができる。
【0023】
上記表裏層を構成するポリエステル系樹脂の市販品としては、例えば、「Easter」、「EmbraceLv」(イーストマンケミカル社製)、「ベルペット」(ベルポリエステルプロダクツ社製)、「ノバデュラン」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)等が挙げられる。
【0024】
上記表裏層に含まれるポリエステル系樹脂としては、上述した組成を有するポリエステル系樹脂を単独で用いてもよく、上述した組成を有する2種以上のポリエステル系樹脂を併用してもよい。また、上記ポリエステル系樹脂は、表面層と裏面層とで異なる組成を有するポリエステル系樹脂であってもよいが、フィルムのカール等によるトラブルを抑制するため、同一の組成を有するポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0025】
上記表裏層は、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0026】
上記中間層は、ポリスチレン系樹脂を含有する。
上記ポリスチレン系樹脂としては、例えば、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン等が挙げられる。上記ポリスチレン系樹脂を用いることで、本発明の熱収縮性多層フィルムは低温から収縮を開始することができ、また、高収縮性を有する。
【0027】
本明細書中、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体とは、芳香族ビニル炭化水素に由来する成分と、共役ジエンに由来する成分とを含有する共重合体をいう。
上記芳香族ビニル炭化水素は特に限定されず、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記共役ジエンは特に限定されず、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体は、特に熱収縮性に優れることから、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS樹脂)を含有することが好ましい。また、上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体は、よりフィッシュアイの少ない熱収縮性多層フィルムを作製するためには、上記共役ジエンとして2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)を用いたスチレン−イソプレン共重合体(SIS樹脂)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体(SIBS)等を含有することが好ましい。
なお、上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体は、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちのいずれか1つを単独で含有してもよく、複数を組み合わせて含有してもよい。また、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちの複数を用いる場合には、各樹脂をドライブレンドしてもよく、各樹脂を特定の組成にて押出機を用いて練り上げペレタイズしたコンパウンド樹脂を用いてもよい。
【0029】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体がSBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂を単独又は複数で含有する場合には、特に熱収縮性に優れた熱収縮性多層フィルムが得られることから、上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体100重量%に占めるスチレン含有量が65〜90重量%、共役ジエン含有量が10〜35重量%であることが好ましい。上記スチレン含有量が90重量%を超えるか、上記共役ジエン含有量が10重量%未満であると、熱収縮性多層フィルムにテンションをかけたときに切れ易くなったり、印刷等の加工時に思いもよらず破断したりすることがある。上記スチレン含有量が65重量%未満であるか、上記共役ジエン含有量が35重量%を超えると、成形加工時にゲル等の異物が発生しやすくなったり、熱収縮性多層フィルムの腰が弱くなったりして、取り扱い性が悪化することがある。
【0030】
本明細書中、芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体とは、芳香族ビニル炭化水素に由来する成分と、脂肪族不飽和カルボン酸エステルに由来する成分とを含有する共重合体をいう。
上記芳香族ビニル炭化水素は特に限定されず、上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体において例示した芳香族ビニル炭化水素と同様の芳香族ビニル炭化水素を用いることができる。上記脂肪族不飽和カルボン酸エステルは特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートとの両方を示す。
【0031】
上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体として、スチレン−ブチルアクリレート共重合体を用いる場合には、上記スチレン−ブチルアクリレート共重合体100重量%に占めるスチレン含有量が60〜90重量%、ブチルアクリレート含有量が10〜40重量%であることが好ましい。このような組成の芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体を用いることで、熱収縮性に優れた熱収縮性多層フィルムを得ることができる。
【0032】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂は特に限定されないが、上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体の含有量が80重量%以下である混合樹脂であることが好ましい。
【0033】
上記ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンとは、スチレン、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキルの3元共重合体からなる連続相と、共役ジエンを主体とするゴム成分からなる分散相とで構成されるものを基本とするものである。
【0034】
上記連続相を形成するメタクリル酸アルキルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が、アクリル酸アルキルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
上記連続相を形成する共重合体中のスチレンの割合は20〜80重量%が好ましく、30〜70重量%がより好ましい。メタクリル酸アルキルの割合は10〜50重量%が好ましく、15〜40重量%がより好ましい。アクリル酸アルキルの割合は1〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。
【0035】
上記分散相を形成する共役ジエンを主体とするゴム成分としては、ポリブタジエン、又は、スチレン含有量が5〜30重量%のスチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。
上記分散相を形成する共役ジエンを主体とするゴム成分の粒子径は0.1〜1.2μmであることが好ましく、更に好ましくは0.3〜0.8μmである。粒子径が0.1μmを下回ると、上記ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンの耐衝撃性が不充分となることがあり、1.2μmを上回ると、上記中間層の透明性が低下することがある。
【0036】
上記ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンにおいて、スチレン、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキルの3元共重合体からなる連続相の割合は70〜95重量%、共役ジエンを主体とするゴム成分からなる分散相の割合は5〜20重量%が好ましい。上記分散相の割合が5重量%を下回ると、上記ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンの耐衝撃性が不充分となることがあり、20重量%を上回ると、上記中間層の透明性が低下することがある。
【0037】
上記ポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度の好ましい下限は60℃、好ましい上限は85℃である。上記ビカット軟化温度が60℃未満であると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性が高くなり過ぎ、容器に装着するときにシワが入りやすくなる。上記ビカット軟化温度が85℃を超えると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性が低下し、容器に装着するときに未収縮部分が発生しやすくなる。上記ビカット軟化温度のより好ましい下限は65℃、より好ましい上限は80℃である。なお、上記ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で測定することができる。
【0038】
上記ポリスチレン系樹脂の200℃でのMFR(melt flow rate)の好ましい下限は2g/10分、好ましい上限は15g/10分である。200℃でのMFRが2g/10分未満であると、フィルムの製膜が難しくなる。200℃でのMFRが15g/10分を超えると、フィルムの機械的強度が低くなり、実用に耐えられなくなる。200℃でのMFRのより好ましい下限は4g/10分、より好ましい上限は12g/10分である。なお、MFRは、ISO1133に準拠した方法で測定することができる。
【0039】
上記中間層を構成するポリスチレン系樹脂の市販品としては、例えば、「クリアレン」(電気化学工業社製)、「アサフレックス」(旭化成ケミカルズ社製)、「Styrolux」(BASF社製)、「PSJ−ポリスチレン」(PSジャパン社製)等が挙げられる。
【0040】
上記中間層は、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0041】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、上記表裏層と上記中間層とが、ポリスチレン系樹脂を20〜65重量%、及び、ポリエステル系エラストマーを35〜80重量%含有する接着層を介して積層されてなるものである。
このような接着層を用いることで、常温のみならず低温においても、熱収縮性多層フィルムの各層間の接着強度を高めることができるとともに、熱収縮性多層フィルムを折り曲げたときに折り目部分に生じる白色スジを抑制することができる。
【0042】
上記接着層に用いられるポリスチレン系樹脂としては、上述した中間層に用いられるポリスチレン系樹脂と同様のものを使用してもよく、別のものを使用してもよい。別のものを使用する場合には、中間層に用いられるポリスチレン系樹脂より軟質のものが好ましい。
【0043】
上記接着層に用いられるポリスチレン系樹脂としては、特に接着性に優れることから、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体を含有することが好ましく、特に、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS樹脂)を含有することが好ましい。また、より接着性に優れる熱収縮性多層フィルムを作製するためには、上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体の共役ジエンとして2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)を用いたスチレン−イソプレン共重合体(SIS樹脂)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体(SIBS)等を含有することが好ましい。
なお、上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体は、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちのいずれか1つを単独で含有してもよく、複数を組み合わせて含有してもよい。また、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちの複数を用いる場合には、各樹脂をドライブレンドしてもよく、各樹脂を特定の組成にて押出機を用いて練り上げペレタイズしたコンパウンド樹脂を用いてもよい。
【0044】
上記ポリスチレン系樹脂が芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体であり、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂を単独又は複数で含有する場合には、特に各層間の接着強度に優れた熱収縮性多層フィルムが得られることから、上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体100重量%に占めるスチレン含有量が50〜90重量%、共役ジエン含有量が10〜50重量%であることが好ましい。上記スチレン含有量が50重量%未満であるか、上記共役ジエン含有量が50重量%を超えると、成形加工時にゲル等の異物が発生しやすくなったりすることがある。上記スチレン含有量が90重量%を超えるか、上記共役ジエン含有量が10重量%を下回ると、各層間の接着強度が低下しやすくなる。
【0045】
上記接着層に用いられるポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度の好ましい下限は55℃、好ましい上限は85℃である。上記ビカット軟化温度が55℃未満であると、熱収縮性多層フィルムは、容器に装着するときの加熱により各層間での層間剥離が生じやすくなる。上記ビカット軟化温度が85℃を超えると、熱収縮性多層フィルムの接着強度が低下しやすくなる。上記ビカット軟化温度のより好ましい下限は60℃、更に好ましい下限は65℃、特に好ましい下限は70℃、より好ましい上限は80℃である。なお、上記ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で測定することができる。
【0046】
上記接着層に用いられるポリスチレン系樹脂の200℃でのMFR(melt flow rate)の好ましい下限は2g/10分、好ましい上限は15g/10分である。200℃でのMFRが2g/10分未満であると、連続生産工程において押出機内で樹脂が滞留し、ゲル等の異物が発生し易くなる。200℃でのMFRが15g/10分を超えると、製膜工程において圧力が十分にかからず、厚み変動が大きくなり易くなる。200℃でのMFRのより好ましい下限は4g/10分、より好ましい上限は12g/10分である。なお、MFRは、ISO1133に準拠した方法で測定することができる。
【0047】
上記接着層において、上記ポリスチレン系樹脂の含有量は下限が20重量%、上限が65重量%である。
上記ポリスチレン系樹脂の含有量が20重量%未満であると、熱収縮性ラベルを作製するためにフィルムが強く折られた場合に、折り目部分に白色スジが残り、フィルムの外観が損なわれる。上記ポリスチレン系樹脂の含有量が65重量%を超えると、低温で充分な層間強度が得られず、実使用時において層間剥離が発生しやすくなる。上記ポリスチレン系樹脂の含有量の好ましい下限は25重量%、より好ましい下限は30重量%、好ましい上限は60重量%、より好ましい上限は55重量%、特に好ましい上限は49重量%である。
【0048】
上記ポリエステル系エラストマーとは、ハードセグメントであるポリエステルと、ゴム弾性に富むソフトセグメントであるポリエーテル又はポリエステルとから構成されるものであり、具体的には例えば、ハードセグメントとしての芳香族ポリエステルと、ソフトセグメントとしての脂肪族ポリエーテルとからなるブロック共重合体、又はハードセグメントとしての芳香族ポリエステルと、ソフトセグメントとしての脂肪族ポリエステルとからなるブロック共重合体等が挙げられ、飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましく、特に、ソフトセグメントとしてポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましい。
上記ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントとしての芳香族ポリエステルと、ソフトセグメントとしてのポリアルキレンエーテルグリコールとからなるブロック共重合体が好ましい。
【0049】
上記ポリエステル系エラストマーとして、芳香族ポリエステルとポリアルキレンエーテルグリコールとからなるブロック共重合体を用いる場合、ポリアルキレンエーテルグリコールからなるセグメントの割合は、好ましい下限が5重量%、好ましい上限が90重量%である。5重量%未満であると、中間層との接着性が低下し、90重量%を超えると、表裏層に対する接着性が低下する。より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は80重量%であり、更に好ましい下限は55重量%である。
【0050】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。
【0051】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量の好ましい下限は400、好ましい上限は6000である。より好ましい下限は600、より好ましい上限は4000、更に好ましい下限は1000、更に好ましい上限は3000である。上記範囲内の数平均分子量を有するポリアルキレンエーテルグリコールを用いることにより、良好な層間強度を得ることができ好ましい。なお、本明細書において、数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたもののことをいう。
【0052】
上記ポリエステル系エラストマーを作製する方法としては特に限定されないが、例えば、(i)炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールと、(ii)芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸又はそれらのエステルと、(iii)数平均分子量が400〜6000のポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応によりオリゴマーを得た後、更に、オリゴマーを重縮合させることにより、作製することができる。
【0053】
上記炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールとしては、例えば、ポリエステルの原料、特に、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として常用されているものが使用できる。具体的には例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらのなかでは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールが好ましく、1,4−ブタンジオールがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
上記芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸としては、例えば、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として常用されているものが使用できる。具体的には例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらのなかでは、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
上記ポリエステル系エラストマーのうち市販されているものとしては、例えば、商品名「プリマロイ」(三菱化学社製)、商品名「ペルプレン」(東洋紡績社製)、商品名「ハイトレル」(東レ・デュポン社製)等が挙げられる。
【0056】
上記ポリステル系エラストマーの融点は、120〜200℃であることが好ましい。120℃未満であると耐熱性が低下し、熱収縮性ラベルとして容器に被覆させる際に溶剤シール部分から剥離が発生し易くなり、200℃を超えると充分な接着強度が得られない場合がある。より好ましい下限は130℃、より好ましい上限は190℃である。
なお、上記融点は示差走査熱量計(島津製作所社製、DSC−60)を用いて、昇温速度0℃/分の条件で測定することが出来る。
【0057】
上記ポリエステル系エラストマーの融点はハードセグメントであるポリエステルと、ソフトセグメントであるポリエーテル又はポリエステルの共重合比率や構造に起因する。一般的にポリエステル系エラストマーの融点はソフトセグメントであるポリエーテル又はポリエステルの共重合量に依存しやすく、ポリエーテル又はポリエステルの共重合量が多いと融点が低く、少ないと融点が高くなる。
また、ポリエステル系エラストマーを構成するハードセグメントであるポリエステルの融点を共重合成分の変更により調整し、ポリエステル系エラストマー全体の融点を調整することが出来る。
また、ソフトセグメントであるポリエーテル又はポリエステルの分子量が小さくなると得られるポリエステル系エラストマーのブロック性が低下するため融点が低下しやすくなる。
【0058】
上記ポリエステル系エラストマーのJIS−D硬度の好ましい下限は10、好ましい上限は80である。JIS−D硬度を10以上とすることで、上記接着層の機械的強度が向上する。JIS−D硬度を80以下とすることで、上記接着層の柔軟性及び耐衝撃性が向上する。JIS−D硬度のより好ましい下限は15、より好ましい上限は70、更に好ましい下限は20、更に好ましい上限は60である。
なお、上記JIS−D硬度は、JIS K 6253に準拠した方法でデュロメータ タイプDを用いることにより測定することができる。
【0059】
上記ポリエステル系エラストマーの比重の好ましい下限は0.95、好ましい上限は1.20である。比重を0.95以上とすることで耐熱性を付与でき、熱収縮性ラベルとして容器に被覆させる際に溶剤シール部分からの剥離を抑制することができる。また、比重を1.20以下にすることで表裏層と中間層との接着強度を高めることができる。
上記比重のより好ましい下限は0.98、より好ましい上限は1.18である。
なお、上記比重はJIS K 7112(1999)に準拠した方法で水中置換法を用いて測定することが出来る。
【0060】
上記接着層を構成するポリエステル系エラストマーの引張弾性率の好ましい下限は1MPa、好ましい上限は1000MPaである。上記引張弾性率が1MPa未満であると上記接着層の機械的強度が低下しやすくなる。上記引張弾性率が1000MPaを超えると、表裏層と中間層との接着強度が低下しやすくなる。上記引張弾性率のより好ましい下限は5MPa、より好ましい上限は900MPaである。なお、上記引張弾性率は、ASTM−882(TestA)に準拠した方法で測定することができる。
【0061】
上記ポリエステル系エラストマーは、変性物であってもよい。変性物としては、上記ポリエステル系エラストマーに、例えば、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸をグラフトして変性したポリエステル系エラストマーを例示できる。
上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸;コハク酸2−オクテン−1−イル無水物、コハク酸2−ドデセン−1−イル無水物、コハク酸2−オクタデセン−1−イル無水物、マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、endo−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。これらのなかでは、反応性が高いことから、酸無水物が好ましい。
【0062】
上記接着層において、上記ポリエステル系エラストマーの含有量は下限が35重量%、上限が80重量%である。
上記ポリエステル系エラストマーの含有量が35重量%未満であると、低温で十分な層間強度が得られず、実使用時において層間剥離現象が発生しやすくなる。上記ポリエステル系エラストマーの含有量が80重量%を超えると、フィルムが強く折られた際に、折り目部分に白色スジが残り、フィルムの外観が損なわれる。上記ポリエステル系エラストマーの含有量の好ましい下限は40重量%、更に好ましい下限は45重量%、特に好ましい下限は51重量%、好ましい上限は75重量%、更に好ましい上限は70重量%である。
【0063】
上記接着層は、必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0064】
本発明の熱収縮性多層フィルム全体の厚さは、好ましい下限が10μm、好ましい上限が100μmであり、より好ましい下限が15μm、より好ましい上限が80μmであり、更に好ましい下限が20μm、更に好ましい上限が70μmである。熱収縮性多層フィルム全体の厚さが上記範囲内であると、優れた熱収縮性、印刷又はセンターシール等の優れたコンバーティング性、優れた装着性が得られる。
また、本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、上記表裏層の厚さは、熱収縮性多層フィルム全体の厚みに対する好ましい下限が5%、好ましい上限が25%であり、上記中間層の厚さは、熱収縮性多層フィルム全体の厚みに対する好ましい下限が50%、好ましい上限が90%である。上記表裏層及び上記中間層の厚さが上記範囲内であると、高い層間強度、高い透明性等が得られる。
【0065】
本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、上記接着層の厚さは、好ましい下限が0.3μm、好ましい上限が3.0μmである。上記接着層の厚さが0.3μm未満であると、上記接着層は充分な接着性が得られないことがある。上記接着層の厚さが3.0μmを超えると、熱収縮性多層フィルムの熱収縮特性、光学特性が悪化することがある。上記接着層の厚さのより好ましい下限は0.5μm、より好ましい上限は2.0μmである。
なお、上記接着層の厚さ分を差し引いて上記表裏層及び上記中間層の厚さを調整することにより、熱収縮性多層フィルム全体の厚さを調整することができる。
【0066】
また、例えば、本発明の熱収縮性多層フィルムが表面層(A)/接着層(E)/中間層(B)/接着層(E)/裏面層(C)の5層構造であり、熱収縮性多層フィルム全体の厚さが40μmである場合、上記表面層(A)及び上記裏面層(C)の厚さは、それぞれ、2.0〜10.0μmであることが好ましく、3.0〜8.0μmであることがより好ましい。また、上記接着層(E)の厚さは、0.3〜3.0μmであることが好ましく、0.5〜2.0μmであることがより好ましい。また、上記中間層(B)の厚さは、19.0〜35.4μmであることが好ましく、20.0〜33.0μmであることがより好ましい。
【0067】
本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、主収縮方向における収縮率は70℃10秒間において好ましくは5〜50%、より好ましくは8〜47%、更に好ましくは10〜45%、特に好ましくは15〜45%、80℃10秒間において好ましくは35〜70%、より好ましくは38〜69%、更に好ましくは41〜68%、特に好ましくは43〜67%、沸騰水10秒間において好ましくは65〜85%、より好ましくは68〜83%、更に好ましくは70〜82%である。このような収縮率とすることにより、熱風トンネル、スチームトンネルにて優れた収縮仕上がり性を付与出来る。
【0068】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、主収縮方向(TD方向)と直交する方向(MD方向)の常温での層間強度が0.50〜2.00N/10mmであることが好ましい。上記層間強度が0.50N/10mm未満であると、熱収縮性ラベルを容器に被せる時に層間剥離が発生することがある。上記層間強度のより好ましい下限は0.60N/10mm、更に好ましい下限は0.70N/10mmである。
また、本発明の熱収縮性多層フィルムは、主収縮方向(TD方向)の層間強度が0.50〜2.00N/10mmであることが好ましい。上記層間強度が0.50N/10mm未満であると、容器にラベルを被覆しダンボール輸送をした際に磨耗により層間剥離が発生することがある。上記層間強度のより好ましい下限は0.60N/10mm、更に好ましい下限は0.70N/10mmである。
【0069】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、主収縮方向(TD方向)の低温での層間強度が0.50〜2.00N/10mmであることが好ましい。上記層間強度が0.50N/10mm未満であると、低温でラベルを装着機に掛けた際に層間剥離が発生したり、容器にラベルを被覆し低温でダンボール輸送をした際に磨耗により層間剥離が発生することがある。上記層間強度のより好ましい下限は0.60N/10mm、更に好ましい下限は0.70N/10mmである。
なお、上記層間強度は、例えば、測定サンプルについて、MD方向、TD方向に層間を180度方向に剥離させたときの層間強度を剥離試験機やオートグラフを用いて測定することができる。
【0070】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法は特に限定されないが、共押出法により各層を同時に成形する方法が好ましい。上記共押出法がTダイによる共押出である場合、積層の方法は、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法のいずれであってもよい。
【0071】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法としては、具体的には、例えば、上記表裏層、上記中間層及び上記接着層を構成する原料をそれぞれ押出機に投入し、多層ダイスによりシート状に押出し、引き取りロールにて冷却固化した後、1軸又は2軸に延伸する方法が挙げられる。
上記延伸の方法としては、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法又はこれらの組み合わせを用いることができる。延伸温度はフィルムを構成する樹脂の軟化温度、熱収縮性多層フィルムに要求される収縮特性等に応じて変更されるが、好ましい下限は65℃、好ましい上限は120℃、より好ましい下限は70℃、より好ましい上限は115℃である。主収縮方向の延伸倍率はフィルムを構成する樹脂、延伸手段、延伸温度等に応じて変更されるが、好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上であって、好ましくは7倍以下、より好ましくは6.5倍以下である。このような延伸温度及び延伸倍率とすることにより、優れた厚み精度を達成することができ、また、ミシン目を裂いたときに層間剥離が生じて内面側の表裏層のみが容器に残ってしまうことを防止することができる。
【0072】
本発明の熱収縮性多層フィルムの用途は特に限定されないが、本発明の熱収縮性多層フィルムは、層間強度が高く、容器装着後に重ね合わせ部分を引掻いたとき及びミシン目を裂いたときの層間剥離を抑制するとともに、透明性にも優れることから、例えば、ペットボトル、金属罐等の容器に装着される熱収縮性ラベルのベースフィルムとして好適に用いられる。本発明の熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルもまた本発明の1つである。
【発明の効果】
【0073】
本発明によれば、表裏層と中間層との接着性に優れ、層間剥離を効果的に防止することができ、かつ、折り目部分に白色スジが残りにくい熱収縮性多層フィルムを提供することができる。
また、本発明の熱収縮性多層フィルムは、仮に層間剥離が発生した場合でも、層間強度にムラがないことからジッピングが発生しない。更に、本発明の熱収縮性多層フィルムは、表裏層と接着層との界面での層間剥離が生じないため、熱収縮性ラベルの剥がれには至り難いという特徴を有する。
更に、本発明によれば、該熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルを提供することができる。本発明の熱収縮性ラベルは、溶剤シール部分において、層間剥離が生じ難く、熱収縮性ラベルの剥がれを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】層間強度評価におけるフィルムの剥離方法を示す模式図である。
図2】層間強度評価におけるフィルムの剥離方法を示す模式図である。
図3】中間層と接着層の界面で剥離が発生した場合の熱収縮性多層フィルムの模式図である。
図4】表層と接着層の界面で剥離が発生した場合の熱収縮性多層フィルムの模式図である。
図5】ラベル屈曲評価に用いた熱収縮性ラベルの模式図である。
図6】折目白化評価における折目白化が観察できない場合の一例を示す写真である。
図7】折目白化評価における折目白化が観察できる場合の一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
実施例及び比較例においては、以下の原料を用いた。
【0076】
(ポリエステル系樹脂)
・PET−1:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100モル%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を65モル%、ジエチレングリコールに由来する成分を12モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を23モル%含有し、引張弾性率が2000MPaである芳香族ポリエステル系ランダム共重合樹脂(ビカット軟化温度69℃)
・PET−2:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100モル%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を68モル%、ジエチレングリコールに由来する成分を2モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を30モル%含有し、引張弾性率が1950MPaである芳香族ポリエステル系ランダム共重合樹脂(ビカット軟化温度85℃)
(ポリスチレン系樹脂)
・PS−1:スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:ビカット軟化温度72℃、MFR5.6g/10分)
・PS−2:スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン80重量%、ブタジエン20重量%:ビカット軟化温度75℃、MFR5.5g/10分)
・PS−3:スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン84重量%、ブタジエン16重量%:ビカット軟化温度75℃、MFR6.2g/10分)
・PS−4:スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン80重量%、ブタジエン20重量%:ビカット軟化温度76℃、MFR9.7g/10分)
・PS−5:スチレン−ブタジエン共重合体(旭化成ケミカルズ社製、アサフレックス830、ビカット軟化温度72℃、MFR6.1g/10分)
・PS−6:スチレン−ブタジエン共重合体(電気化学工業社製、クリアレン220M、ビカット軟化温度78℃、MFR7.2g/10分)
(ポリエステル系エラストマー)
・TPE−1:ハードセグメントとしてのポリエステルと、ソフトセグメントとしてのポリアルキレンエーテルグリコールとから構成され、引張弾性率が55MPaであるポリエステル系エラストマー(東レデュポン社製、ハイトレル4057、融点163℃、比重1.15)
・TPE−2:ハードセグメントとしてのポリエステルと、ソフトセグメントとしてのポリアルキレンエーテルグリコールとから構成され、引張弾性率が45MPaであるポリエステル系エラストマー(三菱化学社製、プリマロイA1600N、融点160℃、比重1.00)
【0077】
ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で、各ポリエステル系樹脂及びポリスチレン系樹脂から試験片を採取した後、試験片に置いた針状圧子に10Nの荷重を加えながら120℃/hの速度で昇温し、針状圧子が1mm進入したときの温度を確認することにより測定した。
MFRは、ISO1133に準拠した方法で、各ポリスチレン系樹脂を200℃にて溶融し5kg荷重条件下での10分換算での樹脂の吐出量を計測することにより測定した。
融点は、示差走査熱量計(島津製作所社製、DCS−60)を用いて、各ポリエステル系エラストマーを10℃/分の速度で昇温することにより測定した。
比重は、JIS K 7112(1999)に準拠した方法で、各ポリエステル系エラストマーを浸漬液にエタノールを用いて水中置換法にて測定した(アルファーミラージュ社製、電子比重計MD−300S)。
引張弾性率は、ASTM−D882に準拠した方法で、ポリエステル系樹脂とポリエステル系エラストマーの各無延伸シートを東洋精機製作所製、ストログラフVE10を用いて測定した。
【0078】
(実施例1)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET−1)を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−1)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−5)60重量%(60重量部)とポリエステル系エラストマー(TPE−1)40重量%(40重量部)とを用いた。
これらをバレル温度が160〜250℃の押出機に投入し、250℃の多層ダイスから5層構造のシート状に押出し、30℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、予熱ゾーン105℃、延伸ゾーン90℃、熱固定ゾーン85℃のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にて延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、主収縮方向と直交する方向がMD、主収縮方向がTDとなる熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが35μmであり、表裏層(4.0μm)/接着層(0.8μm)/中間層(25.4μm)/接着層(0.8μm)/表裏層(4.0μm)の5層構造であった。
【0079】
(実施例2)
接着層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−6)60重量%とポリエステル系エラストマー(TPE−1)40重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、総厚みが35μmであり、表裏層(3.7μm)/接着層(0.7μm)/中間層(26.2μm)/接着層(0.7μm)/表裏層(3.7μm)の5層構造のフィルムを得た。
【0080】
(実施例3)
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−2)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−5)50重量%とポリエステル系エラストマー(TPE−2)50重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、総厚みが35μmであり、表裏層(5.0μm)/接着層(0.7μm)/中間層(23.6μm)/接着層(0.7μm)/表裏層(5.0μm)の5層構造のフィルムを得た。
【0081】
(実施例4)
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−2)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−5)40重量%とポリエステル系エラストマー(TPE−1)60重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、総厚みが35μmであり、表裏層(4.0μm)/接着層(0.8μm)/中間層(25.4μm)/接着層(0.8μm)/表裏層(4.0μm)の5層構造のフィルムを得た。
【0082】
(実施例5)
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−3)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−5)40重量%とポリエステル系エラストマー(TPE−2)60重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、総厚みが35μmであり、表裏層(5.0μm)/接着層(0.8μm)/中間層(23.4μm)/接着層(0.8μm)/表裏層(5.0μm)5層構造のフィルムを得た。
【0083】
参考例6)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET−2)を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−4)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−5)20重量%とポリエステル系エラストマー(TPE−2)80重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、総厚みが35μmであり、表裏層(3.5μm)/接着層(0.8μm)/中間層(26.4μm)/接着層(0.8μm)/表裏層(3.5μm)5層構造のフィルムを得た。
【0084】
(実施例7)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET−2)を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−3)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−6)50重量%とポリエステル系エラストマー(TPE−1)50重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、総厚みが35μmであり、表裏層(4.0μm)/接着層(0.8μm)/中間層(25.4μm)/接着層(0.8μm)/表裏層(4.0μm)の5層構造のフィルムを得た。
【0085】
(比較例1)
接着層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−5)75重量%とポリエステル系エラストマー(TPE−1)25重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、総厚みが40μmであり、表裏層(5.5μm)/接着層(0.8μm)/中間層(27.4μm)/接着層(0.8μm)/表裏層(5.5μm)の5層構造のフィルムを得た。
【0086】
(比較例2)
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−2)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−6)15重量%とポリエステル系エラストマー(TPE−2)85重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、総厚みが35μmであり、表裏層(5.0μm)/接着層(0.7μm)/中間層(23.6μm)/接着層(0.7μm)/表裏層(5.0μm)の5層構造のフィルムを得た。
【0087】
(比較例3)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET−2)を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−2)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系エラストマー(TPE−2)を用いた。
その他は実施例1と同様にして、総厚みが35μmであり、表裏層(5.0μm)/接着層(0.7μm)/中間層(23.6μm)/接着層(0.7μm)/表裏層(5.0μm)の5層構造のフィルムを得た。
【0088】
(比較例4)
接着層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS−5)25重量%とポリエステル系樹脂(PET−1)75重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、総厚みが40μmであり、表裏層(5.0μm)/接着層(0.8μm)/中間層(28.4μm)/接着層(0.8μm)/表裏層(5.0μm)の5層構造のフィルムを得た。
【0089】
(評価)
実施例、参考例及び比較例で得られた熱収縮性多層フィルムについて、以下の評価を行った。熱収縮性多層フィルムの構成及び評価結果を表1に示した。
【0090】
(1)熱収縮率
熱収縮性多層フィルムを主収縮方向(TD)100mm×主収縮方向と直行する方向(MD)100mmの大きさにカットし、70℃の温水に10秒間浸漬させた後、熱収縮性多層フィルムを取り出し、すぐに水道水に10秒間浸漬させた。この熱収縮性多層フィルムのTDの1辺の長さ(L)をそれぞれ測定して、下記式(1)に従いTD方向の熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)={(100−L)/100}×100 (1)
【0091】
なお、収縮率は、サンプル数(n)=3としてその平均値を用いた。80℃の温水及び沸騰水についても同様に熱収縮率を測定した。
【0092】
(2)常温での層間強度
熱収縮性多層フィルムを長さ100mm×幅10mmのサイズにカットし、図1に示すようにフィルム端部の一部分を層間剥離した。サンプルの長さ方向に引張速度500mm/minで、図2に示すように180度方向に剥離させたときの常温(23℃)での強度(N/10mm)を、剥離試験機(Peeling TESTER HEIDON−17、新東科学社製)を用いて測定した。図1及び2は、層間強度評価におけるフィルムの剥離方法を示す模式図である。
長さ方向が、主収縮方向(TD)又は主収縮方向と直交する方向(MD)となるように試験を行った。
なお、MD及びTDの両方向に対し10回試験を行い、MD及びTDの各方向の層間強度の平均値を求めた。
【0093】
得られたMD及びTDの各方向の層間強度の平均値から以下の基準で評価した。これらの評価が「○」であれば、熱収縮性ラベルを容器等に装着する際のラベル剥がれ不良等を抑制できる。
【0094】
(MD方向の層間強度)
平均層間強度が0.50N/10mm以上を「○」、0.50N/10mm未満を「×」とした。
(TD方向の層間強度)
平均層間強度が0.50N/10mm以上を「○」、0.50N/10mm未満を「×」とした。
【0095】
(3)常温での剥離面判定
常温での層間剥離強度測定において、TD方向測定時の層間剥離界面を観察し、以下の基準で評価した。
【0096】
(剥離面判定)
層間剥離が中間層と接着層の界面である場合を「○」、層間剥離が表裏層と接着層の界面である場合を「×」とした。
【0097】
容器に熱収縮性ラベルを装着する際には、装着機によるラベルの折り返し等の荷重で熱収縮性ラベルの外側に位置する表層に傷が入ることがある。表層に傷が入ると、この傷を起点として層間剥離が進行し、最悪の場合、装着後にラベルが剥がれることがある。ラベルの剥がれにまで至るか否かは、熱収縮性多層フィルムのどの界面で層間剥離が発生したかによって異なる。図3は、中間層と接着層の界面で剥離が発生した場合の熱収縮性多層フィルムの模式図であり、図4は、表層と接着層の界面で剥離が発生した場合の熱収縮性多層フィルムの模式図である。
図3に示すように、層間剥離が中間層と接着層の界面で発生している場合には、装着機により傷が入ったとしても、その傷が表層と接着層とを貫通していなければ、層間剥離は進行せず、ラベルの剥がれは起こりにくい。一方、図4に示すように、層間剥離が表層と接着層の界面で発生している場合には、表層に傷が入るだけで層間剥離が進行し、ラベルの剥がれを引き起こす。
【0098】
(4)常温でのジッピングの有無
熱収縮性多層フィルムを長さ100mm×幅10mmのサイズにカットし、常温(23℃)で10分間放置した後、層間強度測定と同様にフィルム端部の一部分を層間剥離した。ジッピングの発生の有無は、以下の基準で評価した。これらの評価が「有り」であれば、層間強度にムラが生じていることが分かる。
ジッピングとは、熱収縮性多層フィルムを剥離した際に、層間強度のムラにより、層間強度が高い部分では剥離抵抗力が高く、層間強度が低い部分では剥離抵抗力が低いことから剥離抵抗力が一定とならず、剥離進行が止まる部分と、一気に剥離が進む部分とが規則的にあるいは不規則に現れる状態をいう。
【0099】
(ジッピングの発生の有無)
有り:剥離した表裏層に段々模様の跡がつく。
無し:剥離した表裏層に段々模様の跡がつかない。
【0100】
(5)低温での層間強度
熱収縮性多層フィルムを長さ100mm×幅10mmのサイズにカットし、低温(5℃)で10分間放置した後、層間強度(N/10mm)を測定した。測定温度を5℃とした点以外は、常温での層間強度評価と同様の方法で測定を行った。
各測定毎にTD方向の層間強度と最小値を測定し、10回試験を行った中で、各測定のTD方向の層間強度の平均をTD方向平均値とし、各測定の最小値の平均をTD方向最小値とした。低温での評価では、特にTD方向の層間強度を測定することで、低温環境下において装着機等で熱収縮性ラベルのTD方向に荷重がかかったときの層間の剥離に対する抵抗力が分かる。また、TD方向の層間強度の平均値と最小値とを求めることで、低温環境下での層間剥離強度のバラツキの大きさが分かる。
【0101】
(TD方向の層間強度)
平均層間強度が0.50N/10mm以上を「○」、0.50N/10mm未満を「×」とした。
【0102】
(6)低温での剥離面判定
低温での層間剥離強度測定において、TD方向測定時の層間剥離界面を観察し、常温での剥離面判定と同様の基準で評価した。
【0103】
(7)低温でのジッピングの有無
熱収縮性多層フィルムを長さ100mm×幅10mmのサイズにカットし、低温(5℃)で10分間放置した後、層間強度測定と同様にフィルム端部の一部分を層間剥離した。ジッピングの発生の有無は、常温でのジッピング有無と同様の基準で評価した。
【0104】
(8)ラベル屈曲後の層間剥離評価
得られた熱収縮性多層フィルムをTD方向の幅227mmに切断し、1,4−ジオキソラン100重量部に対してシクロヘキサンを30重量部混合した溶剤を、MD方向と平行となるように幅3mmで塗布し、TD方向の幅が108mmとなるように扁平に折り畳んで接着して筒状とした。筒状とした熱収縮性多層フィルムを、図5に示すように、MD方向の幅100mmにカットし熱収縮性ラベルとした。図5は、ラベル屈曲評価に用いた熱収縮性ラベルの模式図である。ラベルの両端が溶剤により接着された部分を、「溶剤シール部分」ともいう。
次いで、低温(5℃)雰囲気下で熱収縮性ラベルのシール部両端を指で担持し、TD方向に力が加わるようにラベルを20回屈曲した。ラベルを屈曲する作業を熱収縮性ラベルの6ヵ所で行い、屈曲後熱収縮性ラベルを得た。
該屈曲後熱収縮性ラベルを直径約66mm丸型の275gのボトル缶容器に沸騰水中に10秒間浸漬し、熱収縮させ容器に被覆させた際の接着部分の外観について以下の基準で評価した。
【0105】
○:ラベル10枚中全てにおいて、溶剤シール部分での層間剥離が発生していない。
△:ラベル10枚中1〜2枚のラベルにおいて、溶剤シール部分での層間剥離が発生している。
×:ラベル10枚中3枚以上のラベルにおいて、溶剤シール部分での層間剥離が発生している。
【0106】
(9)折目白化評価
熱収縮性多層フィルム(フィルム幅:500mm)に対して、グラビア印刷法により、ファインスター黒(東洋インキ社製)を用いて印刷を行った後、ファインスター白(東洋インキ社製)を用いて印刷を行った。これにより、黒色と白色の2色裏面印刷の施された熱収縮性多層フィルムを得た。印刷版としては、版深度30μm、線数175線のダイレクトレーザー製版により作製した版を用いた。
次いで、熱収縮性多層フィルムを黒色印刷部分からMD方向100mm×TD方向200mmの長方形にカットした。このカットサンプルを印刷面が内側になるように、常温(23℃)でMD方向と平行にゴムローラーを2kg荷重で2秒/100mmの速度で2回押しつけることでカットサンプルに折目を付けた後、カットサンプルを展開し、更にゴムローラーを2kg荷重で2秒/100mmの速度で1回押しつけることで折目を元に戻した。その後、TD方向の収縮率が規制できるような冶具を用いて、サンプルを75℃の温水に7秒間浸漬させ、TD方向に5%収縮させた。その際の折目の外観を以下の基準で評価した。
なお、外観の評価は、サンプルの斜め45度の角度から蛍光灯の光を照射し、蛍光灯と反対の斜め45度の角度の位置から10人が目視にて行った。折目白化が観察できない場合の一例を図6に、折目白化が観察できる場合の一例を図7に示す。
【0107】
(折目白化評価)
○:10人全員が折目白化を観察できない。
△:10人のうち2人以下が折目白化を観察できる。
×:10人のうち3人以上が折目白化を観察できる。
【0108】
(総合評価)
○:上記(1)〜(9)の評価において、「×」が1つもない。
×:上記(1)〜(9)の評価において、「×」が1つ以上ある。
【0109】
【表1】
【0110】
実施例1〜5及び7、参考例6で得られた熱収縮性多層フィルムでは、全ての評価において良好な結果が得られた。また、仮に熱収縮性多層フィルムに層間剥離が発生しても、中間層と接着層の界面で剥離が発生するため、ラベル剥がれは発生しない。
これに対し、比較例1〜4のように接着層を構成する樹脂の混合比が本発明で規定する範囲を満たさない場合には、低温での層間強度が低下したり、溶剤シール工程においてフィルムが強く折られた際に折目が白化し、外観不良が生じたり、容器に装着する際の衝撃で層間剥離した。また、低温においては、ジッピングが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明によれば、常温のみならず低温においても、表裏層と中間層との接着性に優れ、層間剥離を効果的に防止することができ、かつ、熱収縮させた後に折り目部分に白色スジが残りにくい熱収縮性多層フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、該熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルを提供することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 表裏層
2 中間層
3 接着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7