【実施例1】
【0027】
本発明の実施例に係るターニングローラ装置について図面に基づいて説明する。
図1、
図2に示すように、ターニングローラ装置1は、円筒状のワークを載置してワークの軸心周りに回動可能に支持する装置である。以下、
図1における矢印Aを前方、矢印Bを後方、
図2における矢印Cを左方、矢印Dを右方として説明する。
【0028】
このターニングローラ装置1は、ベース側の台部材である架台2の前半部の上に装備された第1ターニングローラ装置10と、架台の後半部の上に装備された第2ターニングローラ装置20とを備えている。第1,第2ターニングローラ装置10,20には夫々円筒形のワークW1,W2が載置される。
第1,第2ターニングローラ装置10,20は同じ構成のものであるので、以下、第1ターニングローラ装置10について説明する。
【0029】
第1ターニングローラ装置10は、ワークW1の軸心Xと平行方向(前後方向)へ適当な間隔を空けて配置され2対のローラ機構11を備えている。
【0030】
前記2対のローラ機構11における各対のローラ機構11は、1対のローラ部材12と、1対の揺動アーム13と、1対の駆動手段14と、1対の減速機付きモータ15とを備えている。1対のローラ部材12はワークW1の軸心Xと平行な軸心を有する。1対のローラ機構11と1対のローラ部材12は、前記軸心Xと直交する水平方向(左右方向)へ間隔を空けて配置されている。
【0031】
1対の揺動アーム13は、一端部(内端部)が架台側静止部材であるステー部材16の上端にワークW1の軸心Xと平行な軸心回りに回動自在に支持された対称な1対の揺動アーム13であり、1対のローラ部材12を夫々回転自在に支持している。
【0032】
各ステー部材16は、コラムステー16aと斜材ステー16bとを有し、それらの上端は連結され、それらの夫々の下端が架台2に固着されている。
各揺動アーム13はへ字形に形成され、このへ字形の揺動アーム13の屈曲状の途中部にローラ部材12が回転自在に支持されている。
【0033】
1対の駆動手段14は、1対の揺動アーム13の他端部(外端部)に夫々ワークW1の軸心Xと平行なピンを介して連結され、各駆動手段14により揺動アーム13の他端部の高さ位置を調節することで、ローラ部材12の位置(高さ位置、水平方向位置)を独立に調節可能に構成されている。
【0034】
各駆動手段14は、サーボポンプ43aを含む油圧供給装置43に接続された複動型油圧シリンダ14aで構成されている。油圧シリンダ14aの出力ロッドの先端に連結された連結金具14bが揺動アーム13の他端部に回動可能に連結されている(
図6参照)。
1対の減速機付きモータ15は、1対のローラ部材12を夫々回転駆動するものであり、各モータ15の出力軸はローラ部材12を枢支する支軸に同軸状に配置されて連結されている。
【0035】
このターニングローラ装置1は、第1,第2ターニングローラ装置10,20によって、それらターニングローラ装置10,20に夫々載置した2つの円筒状のワークW1,W2 の軸心Xを一致する状態に、ワークW1,W2の位置(高さ位置、左右方向位置)を調節した状態で、ワークW1,W2を回転させながらワークW1,W2の突き合わせ端部同士を溶接装置30により溶接するための装置である。
【0036】
次に、ターニングローラ装置1の制御系について簡単に説明する。
図6に示すように、制御ユニット40と、操作盤41と、8つの油圧シリンダ14aの原点位置を夫々検出する8つの原点センサ42と、8つの油圧供給装置43と、8つの油圧シリンダ14aと、8つの減速機付きモータ44とが図示のように接続されている。
油圧供給装置43は、サーボボンプ43aとこれを駆動するサーボモータ43bとを備えている。減速機付きモータ15はローラ部材12を駆動するものである。制御ユニット40はマイクロコンピュータと、入出力インターフェイス(モータ駆動回路を含む)等で構成されている。
【0037】
この第1ターニングローラ装置10により、ワークW1の軸心Xの位置を調節する機能について説明する。
図3に示すように、ワークW1を実線で図示の状態に支持した状態から、右側のローラ部材12の高さ位置を油圧シリンダ14aによって低く調節し、左側のローラ部材12の高さ位置を油圧シリンダ14aによって高く調節することにより、ワークW1を右方へ小距離だけ移動させることができる。上記とは反対に、右側のローラ部材 12の高さ位置を油圧シリンダ14aによって高く調節し、左側のローラ部材12の高さ位置を油圧シリンダ14aによって低く調節することにより、ワークW1を左方へ小距離だけ移動させることができる。
【0038】
また、
図4に示すように、ワークW1を実線で図示の状態に支持した状態から、左右のローラ部材12,12の高さ位置を油圧シリンダ14a,14aによって高く調節することにより、ワークW1を上方へ小距離だけ移動させることができる。上記とは反対に、左右のローラ部材12,12の高さ位置を油圧シリンダ14a,14aによって低く調節することにより、ワークW1を下方へ小距離だけ移動させることができる。
【0039】
結局、左右のローラ部材12,12の位置(高さ位置、左右方向位置)を調節することにより、ワークW1の軸心Xを、
図3の所定の半径の仮想円31の範囲内の所望の位置に調節することができる。
そのため、ワークW1の外周形状が真円でない場合でも、2つのワークW1,W2の軸心を一致させたり、2つのワークW1,W2を所望の位置関係となるように位置調節することができる。
【0040】
図5は、非円形のワークである断面楕円形のワークW1aを載置して位置調節する状態を示し、ワークW1aの軸心を所望の中心位置に保持しながら、ワークW1aを回転させることができることを示している。
【0041】
上記の第1ターニングローラ装置10の作用、効果について説明する。
1対のローラ機構11を有し、この1対のローラ機構11の1対のローラ部材12は、一端部が架台側静止部材であるステー部材16に回動自在に支持された1対の揺動アーム13に回転自在に支持され、これら1対の揺動アーム13の他端部に連結され1対のローラ部材12の高さ位置を夫々独立に調節可能な1対の駆動手段14を設けたため、次の効果を奏する。揺動アーム13を駆動手段14により揺動させると、ローラ部材12は円弧軌跡を描いて移動することになるから、ローラ部材12の高さ位置と水平方向位置とが変化する。
【0042】
そのため、1対の駆動手段14により、1対の揺動アーム13を介して1対のローラ部材12の高さ位置及び/又は水平方向位置を、対称に又は非対称に変化させることができるから、1対のローラ部材12に載置した円筒状のワークW1,W1aの高さ位置を上下方向に調節したり、水平方向位置を左側又は右側へ調節したり、高さ位置と左右方向位置の両方を調節したりすることが可能である。
【0043】
ワークの断面形状が真円形であっても、非真円形(例えば、楕円形)であっても、ワークの軸心Xの高さ位置及び/又は水平方向位置を調節することができる。
しかも、ローラ機構11は、ローラ部材12と揺動アーム13と駆動手段14aを有する極めて簡単な構成であるから、設置スペースも小さく、製作コストの面でも有利である。
【0044】
1対のローラ機構11の他に、この1対のローラ機構11に対して前記ワークW1の軸心Xと平行方向へ間隔を空けて配置された1対のローラ機構11を設けたので、1つのワークW1を2対のローラ機構11で安定的に支持し、高さ位置及び/又は水平方向位置を調節することができる。
【0045】
揺動アーム13はへ字形に形成され、このへ字形の揺動アーム12の屈曲状の途中部にローラ部材12が回転自在に支持されたので、駆動手段14を小型化する上で有利である。
1対の駆動手段14は、サーボポンプ43aを含む油圧供給装置43に接続された1対の油圧シリンダ14aで構成されたので、油圧シリンダ14aを採用しながら、ローラ部材12の位置を精密に調節可能である。
【0046】
前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
(1)各ローラ機構11において、ローラ部材12を揺動アーム13の他端部(外端部)に枢着し、揺動アーム13の長さ方向の途中部に油圧シリンダ14aの出力ロッドの先端を連結してもよい。
(2)各駆動手段14は、電動シリンダで構成してもよい。
【0047】
(3)各ローラ機構11にローラ部材12にワークから作用する荷重を検知する荷重検知手段を設け、左右1対のローラ部材12に作用する荷重が等しくなるようにローラ部材 の位置を制御することで、自動的にワークの軸心を調芯するように構成してもよい。
(4)1対のローラ機構11にワークの高さ方向位置と水平方向位置を検知する位置検知手段を設け、それら位置検知手段で検知した高さ方向位置と水平方向位置に基づいて、ローラ部材12の位置を制御するように構成してもよい。
【0048】
(5)ワークの長さが小さい場合には、第1ターニングローラ装置10に1対のローラ機構11を設けてもよく、ワークの長さが長い場合には、第1ターニングローラ装置10に3対以上のローラ機構11を設ける場合もある。
(6)第1ターニングローラ装置10における4つのローラ機構11のうちの少なくとも1つのローラ部材12を減速機付きモータで駆動するように構成してもよいし、また、4つのローラ機構11のうちの2つのローラ部材12を減速機付きモータで駆動するように構成してもよい。
【0049】
(7)第1,第2ターニングローラ装置10,20に載置台したワークW1,W2に溶接を施す場合を例にして説明したが、溶接以外の種々の工作を施すものにも本発明のターニングローラ装置を同様に適用可能である。
(8)その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えた状態で実施可能である。