特許第6077898号(P6077898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077898
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20170130BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   B32B27/30 B
   B32B5/18
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-57002(P2013-57002)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-180814(P2014-180814A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】森田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】室井 崇
(72)【発明者】
【氏名】角田 博俊
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−257055(JP,A)
【文献】 特開2012−158065(JP,A)
【文献】 特開2003−094896(JP,A)
【文献】 特開2001−150610(JP,A)
【文献】 特開2009−155557(JP,A)
【文献】 特開平09−295365(JP,A)
【文献】 特開2001−129939(JP,A)
【文献】 特開平09−272165(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0178543(US,A1)
【文献】 特開2013−213104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 47/00−47/96
B65D 65/00−65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面に、着色剤を含有する複数のポリスチレン系樹脂層が共押出により積層された、見掛け密度0.04〜0.35g/cm、厚み0.5〜10mmの熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートであって、
該ポリスチレン系樹脂層は押出方向に沿って筋状であり、かつ、互いに幅方向に隣り合って形成されており、
該発泡シートの樹脂層積層面側における最表面部のセル壁厚みが50μm以下であり、該発泡シートの樹脂層積層面側における表面の輪郭曲線の最大高さが60μm以下であることを特徴とする熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項2】
前記発泡シートの樹脂層積層面側における、表面から厚み方向に200μmまで部分の表層密度が0.15g/cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
前記樹脂層1本当たりの積層樹脂重量が押出方向1m当たり0.01〜0.6g/mであり、隣り合う樹脂層の平均中心間距離が2〜30mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱成形用ポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数の筋状模様を有する、新規な熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厚み0.5〜10mm程度の薄物のポリスチレン系樹脂発泡シートは、軽量性、断熱性に優れる上、熱成形性にも優れているため、トレイ容器、即席麺容器、弁当容器、納豆容器等の食品物流包装材等を加工するための原反シート(熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シート)として広く利用されている。
【0003】
その中でも、表面に模様が施された外観を有する熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートは、見栄えに優れ、高級感も備えていることから、消費者のニーズが高まり、現在大量に生産されている。
【0004】
従来、このようなポリスチレン系樹脂発泡シートとしては、例えば、以下の(1)〜(3)のものが知られている。
【0005】
(1)ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面に模様を直接印刷したもの(特許文献1)。
(2)ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面に、模様が印刷されたフィルムを接着剤等によりラミネートしたもの(特許文献2)。
(3)共押出法により、ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面に着色された筋状又は帯状のポリスチレン系樹脂発泡層を積層したもの(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−7966号公報
【特許文献2】特開平5−38752号公報
【特許文献3】特開2003−94896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、(1)の発泡シートの表面に、模様を直接印刷したものは、インクと被包装物が直接接触する虞があるため、その用途が制限されたり、印刷面にフィルムを積層させたりする必要があるといった難点があった。
また、その製造には、原反である発泡シートの製造工程とこれに模様を印刷する工程の二つの工程を必要としていた。
【0008】
(2)の発泡シートの表面に模様が印刷されたフィルムを接着剤でラミネートしたものは、模様付与に用いられたインクがフィルムの内面側となるので、(1)のようにインクが直接食品に触れる恐れはないものの、その製造には、原反である発泡シートを製造する上に、さらにフィルムを製造する工程、これに模様を印刷し、印刷フィルムを原反シートと貼り合わせる工程などの多くの工程を必要としていた。
【0009】
(3)の発泡体芯層の外周面に筋状又は帯状の発泡層を共押出したものは、トレイ容器、即席麺容器、弁当容器や納豆容器の食品容器等の高い熱成形性が要求される食品物流包装材用の原反シートとしての、熱成形性を考慮したものではなかった。
【0010】
このように、模様を有する、従来の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートには大きな難点があり、外観に優れ、軽量性、表面平滑性、熱成形性等の各種物性特性を満足する、実用的な熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートの開発が強く要望されていた。しかしながら、未だ満足すべき提案がなされていないのが現状である。
本発明は、かかる課題を解消するためになされたものであって、外観に優れ、軽量性、表面平滑性、熱成形性等の各種物性特性を満足する、実用的な新規な熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートおよびその効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、軽量性、熱成形性にも優れると共に簡便かつ安価に製造可能な、表面に複数の筋状模様を有する、新規な熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明によれば、以下の<1>〜<3>に記載の筋状の模様が付与された新規な熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートが提供される。
【0013】
<1>ポリスチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面に、着色剤を含有する複数のポリスチレン系樹脂層が共押出により積層された、見掛け密度0.04〜0.35g/cm、厚み0.5〜10mmの熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートであって、該ポリスチレン系樹脂層は押出方向に沿って筋状であり、かつ、互いに幅方向に隣り合って形成されており、該発泡シートの樹脂層積層面側における最表面部のセル壁厚みが50μm以下であり、該発泡シートの樹脂層積層面側における表面の輪郭曲線の最大高さが60μm以下であることを特徴とする熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シート。
<2>前記発泡シートの樹脂層積層面側における、表面から厚み200μmまでの表層密度が0.15g/cm以上であることを特徴とする<1>に記載の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シート。
<3>前記樹脂層1本当たりの積層樹脂重量が、押出方向1m当たり0.01〜0.6g/mであり、隣り合う樹脂層の平均中心間距離が2〜30mmであることを特徴とする<1>または<2>に記載の熱成形用ポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートは、外観、軽量性、熱成形性に優れるとともに、従来品と異なり、製造コストも大幅に下げることができ、工業的に極めて有利に生産できる発泡シートである。したがって、トレイ容器、即席麺容器、弁当容器、納豆容器や丼等の食品物流包装材等の熱成形用の原反シートとして、広くその需要が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の代表的なポリスチレン系樹脂発泡シートの説明図である。
図2】本発明の代表的なポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法の説明図である。
図3】本発明で用いる代表的な環状ダイの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(熱成形用ポリスチレン系樹脂積層発泡シート)
図1は、本発明に係る熱成形用ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(以下、単に発泡シートともいう)1の厚み方向の模式断面図である。
【0017】
発泡シート1は、ポリスチレン系樹脂発泡層2(以下、単に発泡層ともいう)の少なくとも片面に、着色剤を含むポリスチレン系樹脂樹脂層3(以下、単に樹脂層ともいう)が共押出により筋状に、複数積層されている。
【0018】
ここで、筋状とは、例えば図1に示すように、押出方向である長手方向に形成された、線状または帯状の模様を意味する。
【0019】
図1では、発泡シートとして、発泡層の片面に、樹脂層が積層されたものを例に挙げて説明したが、発泡層の表裏両面に樹脂層が積層されていても良い。
【0020】
(本発明の発泡シートの見掛け密度)
本発明の発泡シートの見掛け密度は0.04〜0.35g/cmである。該見掛け密度が低すぎる場合には、熱成形用発泡シートとしての、強度を維持することが困難となるおそれがある。上記観点から、該見掛け密度の下限は、より好ましくは0.05g/cm、最も好ましくは0.07g/cmである。
一方、該見掛け密度が高すぎる場合には、成形品の軽量性を維持することが困難となるおそれがある。上記観点から該見掛け密度の上限は、より好ましくは0.21g/cm、さらに好ましくは0.15g/cmである。
【0021】
(本発明の発泡シートの厚み)
本発明の発泡シートの厚みは0.5〜10mmである。発泡シートの厚みが薄すぎる場合には、剛性の低いものとなり、容器として使用できないおそれがある。一方、発泡シートの厚みが厚すぎる場合には、金型再現性が低下するなどの熱成形が難しくなるおそれがある。
【0022】
本発明の発泡シートは、上記観点から、より好ましい厚さは0.7mm〜5mm、さらに好ましい厚さは1mm〜3mmである。
【0023】
(発泡シートの最表面部のセル壁厚み)
発泡シートの樹脂層積層面側における、最表面部のセル壁厚みは50μm以下である。該最表面部のセル壁厚みが50μmを超える場合には、表面凹凸が激しくなり、発泡シートの成形性に影響するおそれがある。上記観点から、該最表面部のセル壁厚みは、45μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
前記発泡シートにおける樹脂層積層面の最表面部のセル壁厚みは、発泡シート表面から、発泡シートの厚み方向に第一番目の気泡壁の内側表面までの厚みを意味する。なお、上記測定方法により、発泡層部分と樹脂層部分を区別しないで測定される。
【0025】
得られた測定値の最大値について5箇所の算術平均値を最表面部のセル壁厚みとする。なお、本発明の発泡シートにおいて、最表面部のセル壁厚みが50μm以下であるということは、樹脂層がごく薄く形成されているという特徴を有するものである。また、最表面部のセル壁厚みは、少なくとも発泡シート上の熱成形を行う箇所が上記範囲を満足することを要する。
【0026】
(発泡シート表面の輪郭曲線の最大高さ)
本発明の発泡シートの樹脂層積層面側における、発泡シート表面の輪郭曲線の最大高さは、60μm以下である。該発泡シート表面の輪郭曲線の最大高さが60μmを超える場合には、発泡シート表面の凹凸が激しくなることから、発泡シートの成形性や、発泡シートの外観が悪化するおそれがある。上記観点から、該最大高さは50μm以下であることが好ましく、45μm以下であることがより好ましい。
【0027】
前記発泡シート表面の輪郭曲線の最大高さは、JIS B0601(2001年)に準拠して、発泡シート表面における、発泡層と樹脂層によって形成される、発泡シートの幅方向の凹凸の輪郭曲線要素の高さとして特定される。具体的には、株式会社小阪研究所製のサーフコーダSE1700αなどを使用して測定することができる。また、発泡シート表面の輪郭曲線の最大高さは、少なくとも発泡シート上の熱成形を行う箇所が上記範囲を満足することを要する。
【0028】
なお、本発明では、共押出法により筋状の模様を形成し、樹脂層が押出発泡時に適度に延伸されることにより、剛性が向上し、外観に優れつつも、熱成形性に優れた発泡シートとなる。
【0029】
(発泡シートの総坪量)
該発泡シートの総坪量は70〜600g/mであることが好ましい。上記範囲内であれば、熱成形に適する剛性を有し、かつ軽量性に優れる発泡シートとなる。該総坪量は、100〜500g/mがより好ましく、120〜400g/mが更に好ましい。
【0030】
発泡シートの総坪量の測定方法としては、発泡シート全幅に亘って幅250mmの試験片を切り出し、該試験片の重量(g)を該試験片の面積(シート幅(mm)×250mm)で割り算し、1m当たりの積層発泡シートの重量(g)に換算し、これを積層発泡シートの坪量「t」(g/m)とした。
【0031】
発泡シートの樹脂層積層面側における、表面から200μmまでの表面部分の表層密度は、0.15g/cm以上であることが好ましい。上記範囲内であれば、加熱成形に強く、成形性が良好な発泡シートとなる。上記観点から、該表層密度は0.16g/cm以上であることがより好ましく、0.17g/cm以上であることがさらに好ましい。
【0032】
前記表層密度の測定は次のように行なう。前記発泡シートの表面から200μmの部分をスライスし、幅5mm×長さ20mmの試験片に切りそろえるとともに、該試験片の重量と厚みをゲージで測定する。試験片の重量を試験片の体積で割算し、単位換算して表層密度を求める。上記測定を、前記発泡シートの幅方向における等間隔の10箇所について行い、それらの算術平均値の表層密度とする。
【0033】
(樹脂層)
ポリスチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面には、着色剤を含むポリスチレン系樹脂層が共押出により、押出方向に筋状に、複数積層されている。なお、発泡シートにおいて発泡層に積層されて形成される樹脂層は、必ずしも発泡層の表面から凸に形成される必要は無く、図1に示すように、樹脂層部分が発泡層に埋め込まれるような形で形成されることが好ましい。
【0034】
(樹脂層の総積層量)
樹脂層の総積層量は、発泡層の表面に押出方向に樹脂層の筋状模様が表出されるように適宜設定されるが、2〜50g/mの範囲であることが好ましい。本発明の発泡シートにおいては、上記範囲の薄い樹脂層が形成されることにより、非発泡の樹脂層を形成させることが容易となる。上記観点から、樹脂層の総積層量は、5〜40g/mであることがより好ましく、10〜30g/mであることがさらに好ましい。なお、樹脂層の総積層量とは、発泡シートの単位面積に存在する、筋状に形成された樹脂層の合計積層量である。
【0035】
なお、樹脂層の総積層量は、樹脂層押出機吐出量をL(kg/hr)、 シート引取速度M(m/min)、シート全幅N(m)として、以下の式(1)により求めることができる。
樹脂層の総積層量(g/m)=L×10/(M×N×60)・・・(1)
【0036】
(樹脂層の平均中心間距離)
筋状に積層された隣り合う樹脂層間の平均中心間距離は、発泡シートの押出方向に筋状模様が表出されるように、2〜30mmであることが好ましい。上記範囲内であれば、外観に優れた発泡シートとなる。
【0037】
さらに、隣り合う樹脂層の中心間距離の変動係数Cvは、25以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましい。
【0038】
本願明細書における、隣り合う樹脂層の中心間距離の変動係数Cvとは、該中心間距離の標準偏差(mm)を平均中心間距離成形体(mm)で割った値の百分率をいい、平均値からのばらつき度合を表す指標である。なお、該中心間距離の標準偏差Vは次式(2)により求めるものとする。
V={Σ(Ti−Tav)/(n−1)}1/2 (2)
上記(1)式においてTiは個々の中心間距離の測定値を、Tavは前記平均中心間距離を、nは測定数をそれぞれ表し、Σは個々の測定値について計算した(Ti−Tav)を全て足し算することを示す。
変動係数Cvは下記(3)式によって求められる。
Cv(%)=(V/Tav)×100 (3)
【0039】
また、厚みムラがなく、均質な積層発泡シートとなる観点から、隣り合う樹脂層の中心間距離において、その最大値と最小値の関係は、最大値/最小値≦7であることが好ましく、最大値/最小値≦6であることがより好ましく、最大値/最小値≦5であることがさらに好ましい。
【0040】
(着色剤について)
前記樹脂層には、着色剤が含有されている。該着色剤としては、無機系または有機系の顔料または染料を用いることができる。例えば、有機顔料の例としては、モノアゾ系、クロモフタールレッド等の縮合アゾ系、アンスラキノン系、イソインドリノン系、複素環系、ペリノン系、キナクリドン系、ペリレン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、フタロシアニン系、ニトロソ系、フタロシアニン顔料、有機蛍光顔料等が挙げられる。無機顔料の例としては酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、亜鉛華、沈降性シリカ、カドミウム赤等が挙げられる。また、有機染料の例としてはアンスラキノン系、複素環系、ペリノン系、塩基性染料、酸性染料、媒染染料等が挙げられる。これらの中で、無機顔料を用いることで安価に製造できるため好ましい。また、着色剤は、二種以上を混合して使用することもできる。
特に、食品容器に用いる場合には、上記の中からポリオレフィン等衛生協議会登録品を選択して用いることが好ましい。
【0041】
なお、着色剤として酸化鉄、または酸化鉄を含有する茶系の着色剤、例えば酸化鉄、カーボンブラック、酸化チタンの混合物からなる着色剤を用いた場合には、樹脂層が茶系の色を呈し、木目調または柾目調の模様が形成されることから、より高級感溢れる容器を成形できる積層発泡シートを得ることができる。
【0042】
(本発明に係る熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートの利点)
本発明に係る熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートは、従来品と異なり、筋状の模様が形成されている発泡シートであり、外観、軽量性、熱成形性、表面平滑性にも優れたものである。
【0043】
したがって、安全性に優れた、筋状、例えば木目調の、高級感溢れる、トレイ容器、即席麺容器、弁当容器、納豆容器や丼等の食品物流包装材等の熱成形用原反シートとして、広くその需要が見込まれる。
【0044】
また、その製造は極めて簡便なものであるから、従来品と異なり、製造コストも大幅に下げることができ、工業的に極めて有利に生産できるといった、数多くの利点を有するものである。
【0045】
樹脂層は、筋状の模様を付与するために形成されたものであるが、発泡シートの強度向上にも寄与するものである。したがって、成形用シートおよびそれを成形して得る成形品の物性向上の観点から、樹脂層は非発泡層として形成されていることが好ましい。なお、非発泡層は、局所的には、一部気泡が形成されているものであっても構わない。
【0046】
次に、上記本発明に係る発泡シートの好ましい製造方法について説明する。
本発明の発泡シートの製造方法は、ポリスチレン系樹脂(A)と物理発泡剤とを混練してなる発泡層形成用樹脂溶融物に、ポリスチレン系樹脂(B)と着色剤と揮発性可塑剤とを混練してなる樹脂層形成用樹脂溶融物を、筋状に複数積層して共押出することからなることが好ましい。
この場合、各樹脂層1本当たりの、押出方向1m当たりの積層樹脂重量を0.01〜0.6g/mとして、ポリスチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面にポリスチレン系樹脂層を筋状に複数形成することが好ましい。
【0047】
本発明の発泡シートの製造方法の一例を図2に示す。
図2に示すように、本発明の発泡シートの製造方法は、ポリスチレン系樹脂(A)と物理発泡剤とを混練してなる発泡層形成用樹脂溶融物に、ポリスチレン系樹脂(B)と着色剤と揮発性可塑剤とを混練してなる樹脂層形成用樹脂溶融物を、筋状に複数積層して共押出して、所望の発泡シートを得るものが好ましい。
【0048】
(樹脂層形成用樹脂溶融物)
まず、樹脂層3を構成するポリスチレン系樹脂(B)4及び着色剤5、その他必要に応じて添加される添加剤等を第1の押出機に供給し、加熱溶融し揮発性可塑剤6を添加し溶融混練して、樹脂層形成用のポリスチレン系樹脂溶融物(樹脂層形成用樹脂溶融物7)とする。
樹脂層形成用のポリスチレン樹脂溶融物としては、ポリスチレン系樹脂、着色剤、その他必要に応じて添加される添加剤及び揮発性可塑剤等を混練したものが用いられる。
【0049】
(樹脂層を構成するポリスチレン樹脂(B)について)
上記ポリスチレン系樹脂(B)としては、例えば、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの混合物等が例示される。
【0050】
これらの樹脂に対し、所望の目的に応じて、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、スチレン−共役ジエンブロック共重合体やその水添物等の熱可塑性エラストマー、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム等のゴム等の重合体を40重量%以下の割合で含むものを使用することができる。
【0051】
樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂(B)としては、発泡層の少なくとも片面に、幅が狭く均等な樹脂層が積層されるように、例えば、溶融粘度η1を600〜1400Pa・sとすることが好ましく、より好ましくは700〜1300Pa・s、更に好ましくは800〜1200Pa・sのものを用いることが望ましい。
【0052】
(揮発性可塑剤)
本発明の発泡シートの製造方法においては、樹脂層形成用樹脂溶融物と発泡層形成用樹脂溶融物とを共押出する際に、適正発泡温度での、樹脂層形成用樹脂溶融物の溶融伸びを著しく向上させ、樹脂層形成用樹脂溶融物の伸びをポリスチレン系樹脂発泡層形成用樹脂溶融物の伸びに対応させるために、樹脂層形成用樹脂溶融物には可塑剤が添加されることが好ましい。
【0053】
上記可塑剤としては、発泡シート製造後に、発泡シートから逸散する揮発性可塑剤を使用することが好ましい。揮発性可塑剤は、樹脂層形成用樹脂溶融物中に存在している状態ではポリスチレン系樹脂の溶融粘度を低下させて、共押出による発泡に適する樹脂溶融物を形成することが可能となるとともに、押出発泡後には樹脂層から揮散して、樹脂層から容易に除去することが可能となる。従って、揮発性可塑剤を用いれば、樹脂層に配合した可塑剤が、食品などと接触することがないことから食品衛生の観点からも好ましい。
【0054】
また、押出後に可塑剤が残存して、樹脂層の剛性を低下させるおそれもないことからも、揮発性可塑剤が好ましく用いられる。
なお、樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂の物性低下を生じない程度の添加量であれば、通常の可塑剤を用いることもでき、その添加量は3%未満であることが好ましく、2%未満であることがより好ましい。
【0055】
揮発性可塑剤としては、炭素数2以上7以下の脂肪族炭化水素、炭素数1以上3以下のハロゲン化脂肪族炭化水素、炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール、又は炭素数2以上8以下の脂肪族エーテル等から選択される1種、又は2種以上で構成されるものが好ましく用いられる。
【0056】
揮発性可塑剤の例に挙げた炭素数2以上7以下の脂肪族炭化水素としては、例えば、エタン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンが挙げられる。
【0057】
上記炭素数1以上3以下のハロゲン化脂肪族炭化水素としては、例えば、塩化メチル、塩化エチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタンが挙げられる。
【0058】
上記炭素数1以上4以下の脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールが挙げられる。
【0059】
上記炭素数2以上8以下の脂肪族エーテルとしては、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチルアミルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチルアミルエーテル、エチルイソアミルエーテル、ビニルエーテル、アリルエーテル、メチルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルビニルエーテル、エチルアリルエーテルが挙げられる。
【0060】
揮発性可塑剤の沸点は、樹脂層から揮発し易いことから、120℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以下である。揮発性可塑剤の沸点がこの範囲であれば、共押出し後の熱や、後の室温下でのガス透過により、揮発性可塑剤は樹脂層から自然に揮散して、自然に除去される。該沸点の下限値は、概ね−50℃である。
【0061】
上記揮発性可塑剤は、スチレン系樹脂4と着色剤5の合計量に対して、0.15mol/kg〜1.4mol/kg添加することが好ましく、0.2mol/kg〜1.2mol/kg添加することがより好ましい。上記範囲内であれば、良好な樹脂層形成用樹脂溶融物が得られる。
【0062】
なお、樹脂層形成用樹脂溶融物は、非発泡層の樹脂層を形成するように共押出することが好ましい。非発泡の樹脂層を形成させる方法としては、揮発性可塑剤の添加量を上記範囲とすると共に、樹脂層形成用樹脂溶融物に気泡調整剤を添加しない方法、共押出後に樹脂層を急冷する方法などにより発泡を抑制することが好ましい。
【0063】
(着色剤について)
前記樹脂層形成用樹脂溶融物には、上述の着色剤が配合される。なお、着色剤はマスターバッチとして添加することができる。
【0064】
また、本発明においては、樹脂層に着色剤を含有することを必須とするものであるが、発泡層に着色剤を含有させることもできる。なお、外観上は、樹脂層と発泡層において、樹脂層の方が濃色となることが好ましい。また、分光式色差計で測定される発泡シートの明度(L値)において、明度の最大値と最小値との差が2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。
【0065】
(その他の添加剤について)
また、樹脂層形成用樹脂溶融物には、各種の添加剤を添加してもよい。
各種の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0066】
(発泡層形成用のポリスチレン系樹脂溶融物(発泡層形成用樹脂溶融物))
別途、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂(A)8、その他必要に応じて添加される気泡調整剤などの添加剤を第2の押出機に供給し、加熱溶融し混練し、物理発泡剤9を圧入して、更に混練して発泡層形成用のポリスチレン系樹脂溶融物(発泡層形成用樹脂溶融物)10とする。
【0067】
(ポリスチレン系樹脂(A))
発泡層3を構成するポリスチレン系樹脂(A)としては、特に制限はなく、前記した、樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂(B)と同様なものが使用できる。
ポリスチレン系樹脂8の溶融粘度η2は、800〜2000Pa・sが好ましく、1000〜1700Pa・sがより好ましく、1200〜1500Pa・sがさらに好ましい。上記範囲内であれば、良好な発泡層を形成することができる。
【0068】
(物理発泡剤)
物理発泡剤としては、例えば、エタン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの炭素数2以上7以下の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタンなどの炭素数1以上3以下のハロゲン化脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール、又はメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチルアミルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチルアミルエーテル、エチルイソアミルエーテル、ビニルエーテル、アリルエーテル、メチルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルビニルエーテル、エチルアリルエーテルなどの炭素数2以上8以下の脂肪族エーテル、等の有機物理発泡剤、窒素、二酸化炭素等の無機系物理発泡剤が挙げられる。
【0069】
上記した物理発泡剤は、2種以上を混合して使用することが可能である。物理発泡剤は、上記したなかでもポリスチレン系樹脂(A)との相溶性、発泡効率の観点から有機系物理発泡剤が好ましく、中でもノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものが好適である。
【0070】
なお、物理発泡剤の添加量は、発泡シートの見かけ密度などに対応して、適宜調整されるものであるが、概ね、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂(A)に対して0.15〜1.8mol/kgであることが好ましく、0.3〜1.5mol/kgであることがより好ましく、0.4〜1.2mol/kgであることがさらに好ましい。
【0071】
なお、発泡剤としては、物理発泡剤以外の発泡剤を併用して用いることもできる。
【0072】
(気泡調整剤)
気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。
無機系の気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。
【0073】
また有機系の気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。またクエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることができる。
【0074】
また、発泡層形成用樹脂溶融物10における気泡調整剤の添加量は、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂100重量部あたり、0.05重量部以上10重量部以下、好ましくは0.2重量部以上5重量部以下である。
【0075】
(その他の添加剤)
発泡層形成用樹脂溶融物10には各種の添加剤を添加してもよい。
各種の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機充填剤、抗菌剤、着色剤等が挙げられる。なお、着色剤を配合する場合には、樹脂層よりも淡色となるように、着色剤の種類、配合量を調整することが、積層発泡シートの質感を向上させる観点から好ましい。
【0076】
(発泡層形成用樹脂溶融物10と樹脂層形成用樹脂溶融物7の共押出)
次に、上記発泡層形成用樹脂溶融物10と樹脂層形成樹脂溶融物7とを、それぞれ後記するような適正温度に調整してから、環状ダイ13に導入する。ダイ内で樹脂層形成用樹脂溶融物7を発泡層形成用樹脂溶融物10の外周面上に、押出方向に、複数の筋状となるように積層させてから、共押出を行うと共に発泡層形成用樹脂を発泡させることにより、発泡層2の表面に樹脂層3が筋状に形成された筒状積層発泡体を製造する。
なお、共押出法では、発泡層形成用樹脂溶融物と樹脂層形成用樹脂溶融物との温度をできるだけ近づけた方がより独立気泡率の高い発泡シートが得られることから好ましい。
【0077】
発泡層形成用樹脂溶融物に、樹脂層形成用樹脂溶融物を押出方向に筋状に複数積層し、共押出する際には、各樹脂層1本当たりの、押出方向1m当たりの積層樹脂重量(以下、樹脂量ということがある)と、樹脂層の平均中心間距離(以下、ピッチということがある)が留意される。
【0078】
すなわち、発泡層形成用樹脂溶融物に、樹脂層形成用樹脂溶融物を押出方向に筋状に複数積層し共押出する際に、各樹脂層1本当たりの、押出方向1m当たりの積層樹脂重量を0.01〜0.6g/mとして、ポリスチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面にポリスチレン系樹脂層を筋状に複数形成することが好ましい。
前記積層樹脂量が上記範囲内である場合には、筋状模様の形成が容易となり、隣り合う樹脂層同士が重なったりすることなく、厚みムラの小さい発泡シートを得ることができる。
上記観点から、前記樹脂量は、0.02〜0.5g/mとすることが好ましく、0.03〜0.4g/mとすることがより好ましく、0.04〜0.3g/mとすることがさらに好ましい。
【0079】
前記各樹脂層1本当たりの、押出方向1m当たりの積層樹脂重量は、樹脂層の吐出量をX(Kg/hr)、発泡シートの引取速度をY(m/min)、発泡シート全幅当たりの樹脂層の本数Zとして、以下の式(4)により求めることができる。
(X×10)/(Y×Z×60)・・・・(4)
【0080】
また、発泡シートにおいて、隣り合う樹脂層の平均中心間距離を2〜30mmとして、ポリスチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面にポリスチレン系樹脂層を筋状に複数形成されることが好ましい。
隣り合う樹脂層の平均中心間距離が上記範囲内であれば、隣り合う樹脂層形成用樹脂溶融物同士が重なって筋状模様を形成することが困難となったり、筋状模様が広がりすぎて外観が低下することなく、良好な発泡シートが得られる。上記観点から、該平均中心間距離は2〜25mmとすることが好ましく、3〜15mmとすることがより好ましい。
【0081】
なお、該平均中心間距離は、発泡シートの全幅において、隣り合う樹脂層間において、樹脂層の中央部分から、隣の樹脂層の中央部分までの距離(押出方向に対する垂線の長さ)として定義される。
【0082】
なお、環状ダイにおいて、樹脂層形成用樹脂溶融物は、円周上に配された多数の樹脂層形成用孔の流路を介して、樹脂層形成用樹脂溶融物が樹脂層形成用のスリットから発泡層形成用樹脂溶融物の外周面に筋状に積層できる構造のものを用いることが好ましい。
【0083】
環状ダイ内に加工される、樹脂層形成用スリットについては、発泡層の外周面に樹脂層の筋状模様が形成されるのであれば、形状等特に限定されるものではないが、スリットの溝幅は0.4〜6.0mmとすることが好ましく、0.5〜5.0mmとすることがより好ましく、0.6〜4.0mmとすることがさらに好ましい。上記のスリット幅であれば、概ね、0.5〜20mm、好ましくは0.8〜15mmの幅の樹脂層が発泡シートに形成され易くなる。
【0084】
また、樹脂層形成用樹脂溶融物と発泡層形成用樹脂溶融物の積層部分における、隣り合うスリット間の平均中心間長さは、1〜12mmとすることが好ましく、2〜11mmとすることが、隣り合う樹脂層同士が重ならず、良好な樹脂層が形成される観点からより好ましい。
【0085】
なお、本発明の製造方法においては、共押出時に発泡層形成用樹脂溶融物が発泡するため、幅方向に延展されることから、環状ダイにおけるスリット幅よりも、筋状の樹脂層の平均中心間距離は拡がって形成される。なお、上記の拡幅は、ブローアップ比として定義される。また、発泡シートのブローアップ比(マンドレルの直径をダイ出口の口径で割った値)と引取速度とを制御して発泡シートを延伸することにより、熱成形用の積層発泡シートに適する収縮率(加熱前後での長さ変化)に制御することができる。
【0086】
また、本発明の積層発泡シートについては、両端部が熱成形されないことなどを考慮して、積層発泡シートの全幅に対して、80%以上の部分において、ポリスチレン系樹脂層が筋状に複数形成されていればよい。
【0087】
本発明の製造方法においては、発泡層形成用樹脂溶融物に、樹脂層形成用樹脂溶融物を押出方向に筋状に複数積層し共押出する際に、各樹脂層1本あたりの、押出方向1m当たりの積層樹脂重量を0.01〜0.6g/mとし、且つ隣り合う樹脂層の平均中心間距離を2〜30mmとして、ポリスチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面にポリスチレン系樹脂層を筋状に複数形成することが好ましい。上記範囲の発泡シートを得るには、例えば、発泡シートのブローアップ比(マンドレルの直径をダイ出口の口径で割った値)や引取速度を制御して発泡シートを延伸することなどにより、調整することができる。
【0088】
なお、発泡層形成用樹脂溶融物に、樹脂層形成用樹脂溶融物を押出方向に筋状に複数積層し共押出した後、環状ダイから押出された筒状積層発泡体は、その内面を円柱状冷却装置上に通過させて冷却し、筒状積層発泡体を切り開いてシート状とすることにより、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得ることができる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明の熱成形用ポリスチレン系樹脂積層発泡シートを実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0090】
製造装置として、バレル内径90mmの第一押出機と、第一押出機に接続されたバレル内径120mmの第二押出機とからなるタンデム型の発泡層形成用押出機を用い、該第二押出機の出口に共押出用環状ダイ(リップ径67mm、間隙0.6mm)を取付け、さらに該共押出用環状ダイに片面の樹脂層形成用第三押出機(内径65mm)を連結させた共押出装置を用いた。
【0091】
表1、2に示す発泡層形成用ポリスチレン樹脂、気泡核剤としてタルク(ポリスチレン樹脂とタルクの総量に対する重量割合として表に示す重量%)、を第1押出機に供給して加熱、溶融、混練し、これにブタンを表2中に示す量注入し、第2押出機中で発泡に適した樹脂温度に調整して、発泡層形成用樹脂溶融物とし、共押出用環状ダイ中に導入した。
【0092】
同時に樹脂層形成用ポリスチレン系樹脂、酸化鉄を主成分とする茶色無機顔料を第3押出機に供給して、加熱、溶融、混練した後、揮発性可塑剤を注入し、樹脂層形成用樹脂溶融物とし、共押出用環状ダイに導入した。
共押出用環状ダイ中で、筒状に流動する発泡層形成用樹脂溶融物とスリット状の内リップから筋状とした樹脂層形成用樹脂溶融物とを合流させて、発泡層形成用樹脂溶融物に樹脂層形成用樹脂溶融物を積層してから筒状に共押出した後、270mmψマンドレル(ブローアップ比4)を通して引取り、切開いて本発明の積層発泡シートを得た。なお、樹脂層は非発泡状態にて、発泡層の片面に積層されていた。
【0093】
なお、実施例、比較例における、製造条件、スリット状ダイの設計形状、積層発泡シートの物性などを表1、2に記す。
なお、表1、2において、発泡層、樹脂層に用いた原料PS系樹脂(1)と(2)は以下のポリスチレン系樹脂を意味する。
PS系樹脂(1):PSジャパン社製680 :溶融粘度930Pa・s
PS系樹脂(2):PSジャパン社製GX154:溶融粘度1430Pa・s
なお、ポリスチレン系樹脂の溶融粘度は、JIS K 7199に準拠し、キャピログラフ1D((株)東洋精機製作所製)の流動特性測定機を用いて、温度200℃、せん断速度100秒−1の条件で測定した値である。
また、着色剤としては、以下のものを使用した。
着色剤(1)大日精化工業株式会社製 PS−M−SSCA11N7470BR
着色剤(2)レジノカラー工業株式会社製SBF−T−3775
【0094】
(実施例1)
表1に示す製造条件により、ポリスチレン系樹脂(A)と物理発泡剤とを混練してなる発泡層形成用樹脂溶融物に、ポリスチレン系樹脂(B)と着色剤(1)と揮発性可塑剤とを混練してなる樹脂層形成用樹脂溶融物を、筋状に複数積層して共押出することにより積層発泡シートを得た。なお、着色剤(1)はマスターバッチとして、着色剤(1)の添加量がポリスチレン系樹脂(B)100重量部に対して0.9重量部となるように添加した。また、樹脂層形成用樹脂溶融物は、環状ダイ内の発泡層形成用樹脂溶融物の流路の円周外縁上に配された多数の樹脂層形成用孔(溝幅0.6mm、深さ2.1mmで170本のスリット)の流路を介して、共押出した。得られた積層発泡シートの特性等を表1に示す。
【0095】
(実施例2)
環状ダイ円周上に配された多数の樹脂層形成用孔(溝幅1.1mm、深さ2.2mmで90本のスリット)の流路を介して、共押出し、表1の条件とした以外は実施例1と同様に積層シートを得た。なお、発泡層形成用樹脂溶融物には、着色剤(2)をマスターバッチとして添加し、着色剤(2)の添加量がポリスチレン系樹脂(A)100重量部に対して0.5重量部となるように添加した。得られた積層発泡シートの特性等を表1に示す。実施例1と同様に全体に均質な筋状樹脂層を形成され、表面凹凸少なく良好な発泡シートであった。
【0096】
(実施例3)
各樹脂層1本当たりの、押出方向の1m当たりの積層樹脂重量を0.19g/mとし、表1の条件とした以外は実施例2と同様にサンプルを得た。得られた積層発泡シートの特性等を表1に示す。実施例1と同様に全体に均質な筋状樹脂層が形成され、表面凹凸も少なく良好な発泡シートであった。
【0097】
(実施例4)
樹脂層形成用孔(溝幅1.3mm、深さ3.1mmで53本のスリット)の流路から、共押出し、表1の条件とした以外は実施例1と同様にサンプルを得た。得られた積層発泡シートの特性等を表1に示す。やや発泡シート表面に凹凸もあるものの、成形性は良好な熱成形用発泡シートであった。
【0098】
(実施例5)
環状ダイ円周上に配された多数の樹脂層形成用孔(溝幅1.5mm、深さ3.5mmで40本のスリット)の流路を介して、共押出し、表1の条件とした以外は実施例1と同様にサンプルを得た。得られた積層発泡シートの特性等を表1に示す。やや発泡シート表面に凹凸があるものの、成形性には良好な熱成形用発泡シートであった。
【0099】
(実施例6)
樹脂層1本当たりの、押出方向1m当たりの積層樹脂重量を0.33g/mとし、表1の条件とした以外は実施例2と同様にサンプルを得た。得られた積層発泡シートの特性等を表1に示す。得られた発泡シートは、隣り合う樹脂層間の平均中心間距離が接近しやすくなるが、筋状の模様としては認識でき、熱成形性も良好であった。
【0100】
(実施例7)
樹脂層1本当たりの、押出方向1m当たりの積層樹脂重量を0.40g/mとし、表1の条件とした以外は実施例4と同様にサンプルを得た。得られた積層発泡シートの特性等を表1に示す。得られた積層発泡シートは、積層樹脂重量が多いため冷やされ難く、樹脂層の影響で厚みムラが若干目立つようになるが、発泡シート表面の輪郭曲線の最大高さは50μm以下であり、熱成形用発泡シートとしては、良好な範囲であった。
【0101】
(実施例8)
環状ダイ円周上に配された多数の樹脂層形成用孔(溝幅を0.6mmから0.8mm、1.0mmまで変化させ、深さが1.2mm、170本のスリット)の流路を介して、共押出し、表1の条件とした以外は実施例1と同様にして発泡シートを得た。得られた積層発泡シートの特性等を表1に示す。スリットの溝幅を変化させても、筋状模様は形成可能であり、表面凹凸の少ない発泡シートが得られた。
【0102】
(実施例9)
実施例8の環状ダイ円周上に配された多数の樹脂層形成用孔(溝幅を0.6mmから0.8mm、1.0mmまで変化させた、170本のスリット)の流路を介して、共押出し、引き取り機の速度および発泡剤量を調整して発泡シートを得た。得られた積層発泡シートの特性等を表1に示す。実施例8と同様にスリットの溝幅を変化させても、筋状模様は形成可能であり、表面凹凸の少ない発泡シートが得られた。
【0103】
(比較例1)
発泡シート表面の輪郭曲線の最大高さが60μmを超えている場合には、熱成形時に発泡シートの薄肉部がさらに伸び、成形品の強度低下が生じ、熱成形用シートには適さないものとなった。なお、発泡シートは、表2に示す条件以外は実施例1と同様にして製造した。
【0104】
(比較例2)
発泡シートの、最表面のセル壁厚みが厚すぎ、68μmである場合には、筋状模様の形成が困難であり、熱成形用発泡シートを得ることができなかった。これは、 樹脂層形成用樹脂溶融物同士が合流してしまい、最表面のセル壁厚みが厚くなって、均一な筋状模様の樹脂層を形成できなかったものと考えられる。なお、発泡シートは、表2に示す条件以外は実施例1と同様にして製造した。
【0105】
(比較例3)
発泡シート表面の輪郭曲線の最大高さが60μmを超えている場合には、発泡シートの厚みムラが激しくなり、また発泡シート表面の輪郭曲線の最大高さ高さが50μmを超えて、熱成形時に発泡シートの薄肉部がさらに伸び、成形品の強度低下が生じ、熱成形用シートには適さないものとなった。なお、発泡シートは、表2に示す条件以外は実施例1と同様にして製造した。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
表1〜2において各特性等は以下のようにして測定評価した。
【0109】
(熱成形性)
熱成形性は以下の通り評価した。
○・・・成形性良好(成形不具合等なし)
×・・・成形品に、発泡シートの凹凸形成に起因する強度低下が見られる
【0110】
なお、成形は、浅野研究所製 品番 FKS−0631−10の成形機を用いてマッチモールド真空成形により、ヒータ温度330℃、加熱時間7秒±1秒の条件において、サイズ縦120mm×横200mm×深さ25mm、スタック部分の側壁厚み1.5mm、積み高さピッチ2.85mmのトレー金型を用いて、熱成形を行なった。金型の上型と下型がつくる最小間隙はスタック部分の1.5mmとした。
【0111】
(外観評価)
発泡シートの外観の評価は、以下の基準により行った。
◎・・・筋状模様が形成されている。また、茶系着色剤使用時には高級感のある木目調模様がみられる。
〇・・・筋状模様が形成されている。また、茶系着色剤使用時には木目調模様がみられるものの、若干厚みムラがみられる。
△・・・筋状模様が形成されているものの、樹脂層の中心間距離が離れすぎて茶系着色剤使用時には木目調模様にならず、ストライプ状となる。
×・・・筋状模様が形成されていない。
【0112】
(発泡シートの厚み)
発泡シートの厚みは、発泡シートを幅方向に沿って、一方の端部から他方の端部に至るまで等間隔に複数箇所(5点以上)の地点について測定される厚み(mm)の算術平均値として求めた。
【0113】
(発泡シートの見かけ密度)
発泡シートの見掛け密度は、発泡シートの全幅にわたり、無作為に複数箇所(5箇所以上が望ましい)切り出した、試験片の重量(g)を、該試験片の外形寸法から求められる体積(cm)で除した値を単位換算(g/cm)して各サンプルの見掛け密度を求め、得られた値の平均値を見掛け密度とした。
【0114】
(発泡シート表面の輪郭曲線の最大高さ)
前記発泡シート表面の輪郭曲線の最大高さは、JIS B0601(2001年)に準拠して、株式会社小阪研究所製のサーフコーダSE1700αを使用して測定した。発泡シートの幅方向について、等間隔に30mmの試験片を5点切り出し、この試験片を水平な台に静置し、先端曲率半径が2μmの触針の先端を試験片のシート表面に当接させて、0.5mm/sの移動速度で幅方向に移動させて、触針の上下変異を順次測定した。試験片の移動距離で特定される測定長さはカットオフ値(8mm)の3倍以上の長さとした。得られた5点の測定値の算術平均値を発泡シート表面の輪郭曲線の最大高さとした。
【0115】
(発泡シートの最表面セル壁厚み)
発泡シートの最表面部のセル壁厚みの測定は、発泡シートの幅方向に100mmごとに10箇所、幅10mmの試験片を切り出し、該試験片の断面を拡大顕微鏡(デジタル顕微鏡:製品名:株式会社キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−900)により観察し、発泡シート表面から、発泡シートの厚み方向に第一番目の気泡壁の内側面までの厚みを測定した。なお、該セル壁厚みの測定は、試験片の全ての気泡について、気泡の中心部分(拡大顕微鏡写真における、幅方向の中心)を測定した。また、得られた測定値の最大値について5箇所の算術平均値を最表面部のセル壁厚みとした。
【0116】
(表層密度)
前記表層密度の測定は、前記発泡シートの表面から200μmの部分をスライスし、幅5mm×長さ20mmの試験片に切りそろえるとともに、試験片の重量と厚みをゲージで測定し、試験片の重量を試験片の体積で割算し、単位換算して表層密度を求めた。上記測定を、前記発泡シートの幅方向における等間隔の10箇所について行い、それらの算術平均値を積層面の表層密度とした。
【0117】
(発泡シート表面の明度)
発泡シート表面の明度は、発泡シートの幅方向に100mmごとに5箇所、幅10mmの試験片を切り出し、該試験片を測定範囲が6mmφの試料台に載せて錘にて固定した後、該試験片にダークボックスを被せ、反射法にて該試験片の表面を、分光式色差計SE2000(日本電色工業株式会社製)を使用して5mm間隔で明度を測定した。得られた測定値の最大値と最小値のそれぞれについて、5箇所の算術平均値を算出した。なお、外観上、樹脂層と発泡層において、樹脂層の方を濃色とした場合には、明度の最大値は発泡シートの発泡層に対応する測定値となり、明度の最小値は樹脂層に対応する測定値となる。発泡層部分を測定する場合には、樹脂層に相当する部分をスライスして取り除いた後に測定した。樹脂層部分を測定する場合には、試験片をそのまま測定した。なお、樹脂層の幅が測定範囲よりも小さい場合には、樹脂層部分を切り出した複数の試験片の明度を測定した。
【符号の説明】
【0118】
1 熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シート
2 ポリスチレン系樹脂発泡層
3 ポリスチレン系樹脂樹脂層
4 樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂
5 着色剤
6 揮発性可塑剤
7 樹脂層形成用のポリスチレン系樹脂溶融物
8 発泡層を構成するポリスチレン系樹脂
9 物理発泡剤
10 発泡層形成用のポリスチレン系樹脂溶融物
11 第1の押出機
12 第2の押出機
13 環状ダイ
図2
図3
図1