(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば油圧シリンダで駆動される水門の一つとしては、河川を横断して設置した転倒ゲート装置がある。この転倒ゲート装置は、河川を横断して設けた転倒ゲートの転倒量を制御して河川の水資源の有効利用目的、河口に設け海水と淡水の混合を防止する目的、海岸に設置して防潮の目的に利用される。また、工場設備としては、マシニングセンターに使用される各種の油圧機器がある。
【0003】
水資源の有効利用を図る転倒ゲート装置は、河川を横断して設置した転倒ゲートの両側にピア(pier)を設け、このピア内に前記転倒ゲートが固定されるシャフトと、このシャフトに固定してあり油圧シリンダで回動させられるカムが設置され、前記ピア内に設けた油圧シリンダで回動されるカムのシャフトによりその転倒量が制御される構造である。また、マシニングセンターには、そのワークを固定する油圧クランパーがある。
【0004】
この転倒ゲートの駆動源として用いられる往復動型の油圧シリンダの駆動回路は、駆動回路が油圧シリンダで分断されており、油圧シリンダを移動させるに必要な作動油(油圧シリンダの容積分)が回路内を往復するから、駆動回路と油圧シリンダ内の作動油は停滞している。したがって、使用時間が長くなると駆動回路や油圧シリンダの中にゴミ、あるいは油圧シリンダのシール部分から進入した空気が油圧シリンダ内で断熱圧縮され爆発するディーゼル爆発によるシールの焼損破片などの汚染物質で作動油が汚染される。同様に、工場設備などの油圧モータもそのシールの破損あるいは油圧モータの回転部分と本体の摩擦による金属粉により汚染された作動油のコンタミにより制御弁、速度調整弁などの制御機器が作動不良となる問題があった。
【0005】
この様に汚染物質(コンタミ)で汚染された作動油により作動不良となった制御機器は、分解清掃して作動不良の原因を排除し、油圧シリンダを制御できるようにする必要がある。また、制御機器は、それが作動不良を起こす前に整備点検を行なって作動不良に至らない様にする必要がある。さらに、油圧シリンダ、油圧モータ等の油圧機器も前記したコンタミにより作動不良が発生した場合には作動不良を解消する必要及び、作動不良が発生しないよう整備点検をする必要がある。従来油圧回路は、この制御機器の修理、点検、整備、分解掃除、あるいは定期検査などの回路は、
図9に示される技術が広く知られていた。
【0006】
図9に示す非特許文献1の油圧回路は、油圧シリンダの回路であるが、油圧モータであっても良いものであるから、油圧機器を代表して油圧シリンダと記載する。
図9に示す油圧回路は、メンテナンス弁81とメンテナンス弁86で構成する下部積層弁87と、速度調整弁体83とロードチェック弁体84と電磁切換弁体85で構成する上部積層弁88で、構成されるパイルアップ型の積層弁80に油圧源10及び油圧シリンダ60を接続した油圧回路が示されている。
【0007】
前記回路の油圧源10の油圧ポンプ11が吐出する作動圧油は、マニホールド89から下部積層弁87のメンテナンス弁体86を通過しメンテナンス弁81の止弁81a、81bを経て、上部積層弁88の速度調整弁体82を通過し電磁切換弁体85の電磁切換弁85aに到達する。この作動油は、電磁切換弁85aで油圧機器60への供給方向が切替えられ速度調整弁体82の速度調整弁82a、82b、メンテナンス弁体86の止弁86a、86bを経て油圧機器60の油圧シリンダ61に給排される構成である。
【0008】
上記の構成において、油圧源10からの作動油は、電磁切換弁体85の電磁切換弁85aの操作より油圧シリンダ61のロッド65を左右に移動させるよう給排される。
【0009】
このような構成作用を有する従来技術は、パイルアップ型の積層弁80の制御機器である精密機器が集約される上部積層弁88の各種の弁が支障を来たした場合、あるいは、点検整備を必要とする場合には、メンテナンス弁81の止弁81a、81bとメンテナンス弁86の止弁86a、86bを閉鎖して油圧源10と油圧機器60の回路を閉鎖してパイルアップ型の積層弁80の上部積層弁88を取り外して修理、点検、整備、を行なう構成であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した非特許文献1に記載された油圧シリンダの回路とその回路に用いるパイルアップ型の積層弁80を用いた油圧回路は、その上部積層弁88を修理、点検、整備する為に、メンテナンス弁81とメンテナンス弁86でその回路を閉鎖するので、上部積層弁88の修理、点検、補修の期間は、油圧シリンダ61の試運転、回路のフラッシングを行なうことができない問題点を有する。すなわち、積層弁の修理、点検、補修の時は、油圧源を停止する必要があった。
【0012】
本発明は、油圧回路の積層弁の修理、点検、整備を行なう時、あるいはその回路により作動油が給排される作動機器の修理点検時においても、油圧源を駆動したままで積層弁の修理、点検、整備、油圧機器の修理、点検、整備及び回路のフラッシングを同時に行なうことが可能な油圧回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の油圧回路は、作動油を貯留するタンクとこのタンクに接続し作動圧油を発生する油圧ポンプで構成する油圧源と、この油圧源に接続し油圧源からの作動圧油を油圧機器に給排制御する方向切換弁を備えた積層弁と、前記油圧機器に近接させて設けてあり油圧機器への第1給排回路と第2給排回路を開閉する第1止弁と第2止弁とこの第1止弁と第2止弁の積層弁側に配置され第3止弁を有したバイパス回路を備えた多機能弁と、前記油圧源と前記積層弁と前記多機能弁が接続する複合弁と、で構成され、前記複合弁が前記多機能弁と前記積層弁との間を開閉する多機能弁側第1止弁を備えた多機能弁側第1通路と、前記多機能弁と前記積層弁との間を開閉する多機能弁側第2止弁を備えた多機能弁側第2通路と、油圧ポンプと前記積層弁との間を開閉するポンプ側止弁を備え
たポンプ側通路と、前記タンクと前記積層弁との間を開閉するタンク側止弁を備え
たタンク側通路と、前
記ポンプ側止弁のポンプ側で分岐し前記多機能弁側第1通路の間を開閉するポンプ側バイパス止弁を備えたポンプ側バイパス回路と、前記タンク側止弁のタンク側で分岐し前記多機能弁側第2通路の間を開閉するタンク側
バイパス止弁を備えたタンク側バイパス回路を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の油圧回路は、作動油を貯留するタンクとこのタンクに接続し作動圧油を発生する油圧ポンプで構成する油圧源と、この油圧源に接続し油圧源からの作動圧油を油圧機器に給排制御する方向切換弁を備えた積層弁と、前記油圧機器に近接させて設けてあり油圧機器への第1給排回路と第2給排回路を開閉する第1止弁と第2止弁とこの第1止弁と第2止弁の積層弁側に配置され第3止弁を有したバイパス回路を備えた多機能弁と、前記油圧源と前記積層弁と前記多機能弁が接続する複合弁と、で構成され、前記複合弁が前記多機能弁と前記積層弁との間を開閉する多機能弁側第1止弁を備えた多機能弁側第1通路と、前記多機能弁と前記積層弁との間を開閉する多機能弁側第2止弁を備えた多機能弁側第2通路と、油圧ポンプと前記積層弁との間を開閉するポンプ側止弁を備え
たポンプ側通路と、記タンクと前記積層弁との間を開閉するタンク側止弁を備え
たタンク側通路と、前記ポンプ側止弁のポンプ側で分岐し前記多機能弁側第2通路の間を開閉するポンプ側バイパス止弁を備えたポンプ側バイパス回路と、前記タンク側止弁のタンク側で分岐し前記多機能弁側第1通路の間を開閉するタンク側
バイパス止弁を備えたタンク側バイパス回路と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
作動油を貯留するタンクとこのタンクに接続し作動圧油を発生する油圧ポンプで構成する油圧源と、この油圧源に接続しその作動圧油を油圧機器に給排制御する方向切換弁を備えた積層弁と、前記油圧機器に近接させて設けてあり油圧機器への第1給排回路と第2給排回路を開閉する第1止弁と第2止弁とこの第1止弁と第2止弁の積層弁側に配置され第3止弁を有したパイパス回路を備えた多機能弁と、前記油圧源と前記積層弁と前記多機能弁が接続する複合弁と、より構成され、前記複合弁が前記多機能弁と前記積層弁との間を開閉する多機能弁側第1止弁を備えた多機能弁側第1通路と、前記多機能弁と前記積層弁との間を開閉する多機能弁側第2止弁を備えた多機能弁側第2通路と、油圧ポンプと前記積層弁との間を開閉するポンプ側止弁を備え
たポンプ側通路と、前記タンクと前記積層弁との間を開閉するタンク側止弁を備え
たタンク側通路と、前記ポンプ側通路と前記タンク側通路の双方と、多機能弁側第1通路と多機能弁側第2通路の双方の接続を切替える方向切換弁を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の油圧回路は、油圧源と複合弁と積層弁と油圧機器に配置した多機能弁とで構成し、複合弁が積層弁と油圧源及び多機能弁の間を閉鎖する機能と、油圧源のポンプ側及びタンク側と多機能弁との間を開閉する機能を備え、多機能弁が油圧シリンダの給排回路の開閉および給排回路をバイパスする機能を備えている。
【0017】
本発明の油圧回路は、その複合弁が積層弁と油圧源及び油圧シリンダの間を閉鎖して積層弁を分離することで、油圧シリンダと油圧源の状況に関係なく積層弁の修理、点検、整備を行なうことができる。さらに、複合弁が、油圧ポンプと多機能を接続する循環回路を構成し、この循環回路において多機能弁が油圧シリンダの給排回路を遮断しバイパス回路を構成することで、油圧ポンプの吐出圧油を循環させるフラッシングを行なうことができる。さらに、多機能弁がそのバイパス回路を閉鎖し油圧シリンダの給排回路を連通させることで、複合弁を操作して油圧源と油圧シリンダを接続し、油圧シリンダを積層弁に関係なく作動させることが出来る。また、多機能弁を操作して給排回路を遮断することにより油圧シリンダをその給排回路から分離して保守、修理、点検、整備、を行なうことができる。
【0018】
このように、油圧源と複合弁と積層弁と油圧機器に配置した多機能弁とで構成した油圧回路は、複合弁により積層弁を他の機器から分離するので修理、点検、整備中に他の機器からの異物(コンタミ)の侵入を確実に防止できる。また、複合弁と多機能弁の操作により、油圧シリンダとその給排回路に各種の保守、試運転などの作動を行なわせることができる。積層弁の修理、点検、整備の作業と油圧シリンダとその給排回路の修理、点検、整備の作業を同時に行うことができる。さらに、これらの保守作業中に、一方の作業から発生する異物を他の作業に侵入させない効果を有する。
【0019】
本発明の油圧回路に用いる複後弁は、油圧ポンプが接続するpポートとタンク回路が接続するtポート及び第1給排回路に接続するaポートと第2給排回路に接続するbポートと、前記pポートが接続するp1ポートと前記tポートが接続するt1ポート及び前記aポートが接続するa1ポートと前記bポートが接続するb1ポートと、を備えた複合弁体30aを有し、この複合弁体30aが、前記pポートと前記p1ポートを接続し第1左コの字形通路を備えこの第1左コの字通路の下方通路にポンプ側止弁を設けた第1左側通路構成と、前記tポートと前記t1ポートを接続し第1右コの字通路と第1T字通路を備え前記第1右コの字通路の下方通路を前記第1左コの字形通路の上方通路とほぼ同一軸線上に配置しタンク側止弁を設けると共に前記第1T字通路を前記第1左コの字形通路の下方通路とほぼ同一軸線上に配置しタンク側バイパス止弁を配置した構成の第1右側通路構成と、を有する第1断面と、前記aポートと前記a1ポートを接続し第2右コの字形通路を備えこの第2右コの字通路の下方通路に多機能弁側第2止弁を設けた第2右側通路構成と、前記bポートと前記b
1ポートを接続し第2左コの字通路と第2T字通路を備え前記第2左コの字通路の下方通路を前記第2右コの字形通路の上方通路とほぼ同一軸線上に配置し多機能弁側第1止弁を設けると共に前記第2T字通路を前記第2右コの字形通路の下方通路と同一軸線上に配置しポンプ側バイパス止弁を配置した構成の第2左側通路構成と、を有する第2断面と、を備え、前記第1断面または第2断面の一方を水平方向に180度回転すると第1左側通路構成第と2右側通路構成及び第1右側通路構成と第2左側通路構成がほぼ同一になるように構成し、前記第1断面の第1左側通路構成の下方通路をポンプ側バイパス回路によりポンプ側バイパス止弁を介して前記第2断面の第2T字通路
に接続すると共に、前記第2断面の第2右側通路構成の下方通路をタンク側バイパス回路によりタンク側バイパス止弁を介して前記第1断面の第1T字通路
に接続したこと特徴とする。
【0020】
上記構成の複合弁は、2つの面に機能を集約した回路を構成し、その一方の面を名が手方向に回転して重ね合わせると、機能を集約した回路がほぼ同一になるように構成したので、機能を集約する回路を画一化しかつ単純化し得ることができる。このため、その生産性の向上を図ることができる効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の好適な実施の形態の第1実施形態を
図1〜
図7に基づいて説明する。
【0023】
図1に示す本発明の実施形態である油圧回路は、油圧ポンプ11とタンク12とフィルター13とで構成される油圧源10と、油圧シリンダ61で構成する油圧機器60と、この油圧機器60の近傍に設けた多機能弁40と、前記油圧源10と多機能弁40とが接続しその上部に複合弁30と積層弁20が設けられるマニュホールド50とで構成する。
【0024】
前記多機能弁40と油圧機器60の関係は、多機能弁40と油圧機器60を構成する油圧シリンダ61が特許第3690850号に示すように、そのシリンダ本体62に直接取り付けてある。多機能弁40は、回路のフランシング作用を行なわせる機能と、油圧機器60の取外しを可能とする機能を有するものであるから、なるべく油圧機器の本体に取り付けることが望ましい。
【0025】
複合弁30を介してマニュホールド50の上部に積載設置される積層弁20は、方向切換弁22を備えた方向切換弁体21と、2つのロードチェック弁体23a、23b備えたロードチェック弁体23と、油圧機器60の作動速度を調整する速度制御弁24a、24bとで構成される速度制御弁体24とで構成してある。
【0026】
前記積層弁20の方向切換弁体21の方向切換弁22は、中立位置22aと右切換位置22b及び左切換位置22cを備えており、電磁操作部22d、22eへの信号の印加により、前記右切換位置22bまたは左切換位置22cの切換位置に切換操作され、電磁操作部22d、22eへの操作信号が印加されない場合はバネによって中立位置22aに保持される構成である。
【0027】
複合弁
複合弁30についてその回路図を
図6(a)参照して説明する。複合弁30は、多機能弁40と積層弁20との間を開閉する多機能弁側第1止弁31aを備えた多機能弁側第1通路31bと、多機能弁40と積層弁20との間を開閉する多機能弁側第2止弁32aを備えた多機能弁側第2通路32bと、油圧ポンプ11と積層弁20との間を開閉するポンプ側止弁33aを備えたポンプ側通路33bと、タンク12と積層弁20との間を開閉するタンク側止弁34aを備えたタンク側通路34bと、ポンプ側止弁33aの油圧ポンプ11側で分岐し多機能弁側第1通路1bとの間を開閉するポンプ側バイパス止弁36aを備えたポンプ側バイパス回路36bと、タンク側止弁34aのタンク側12で分岐し多機能弁側第2通路32aとの間を開閉するポンプ側バイパス止弁35aを備えたタンク側バイパス回路35bとを備えた構成である。
【0028】
多機能弁側第1通路31bは、第2給排回路38bが接続するbポート37bと速度制御弁24bへの給排回路24dが接続するb1ポート37b1との間に設けてあり、多機能弁側第1止弁31aで開閉される構成である。多機能弁側第2通路32bは、第1給排回路38aが接続するaポート37aと速度制御弁24aへの給排回路24cが接続するa1ポート37a1との間に設けてあり、多機能弁側第2止弁32aで開閉される構成である。従って、多機能弁側第1止弁31aと多機能弁側第2通路32bを閉鎖すると、多機能弁40と積層弁20との間が遮断される。
【0029】
ポンプ側通路33bは、ポンプ回路10aが接続するpポート37pと給排回路39aが接続するp1ポート37p1との間に設けてあり、ポンプ側止弁33aで開閉される構成である。タンク側通路34bは、タンク回路12aが接続するtポート37tと給排回路39bが接続するt1ポート37t1の間に設けてありタンク側止弁34aで開閉される構成である。従ってポンプ側止弁33aとタンク側止弁34aを閉鎖すると、積層弁20と油圧源10との間が遮断され、積層弁20と油圧源10の間が遮断される。
【0030】
ポンプ側バイパス回路36bは、ポンプ側通路33bと多機能弁側第1通路31bの間に設けてあり、ポンプ側バイパス止弁36aで開閉される構成であり、タンク側バイパス回路35bは、タンク側通路34bと多機能弁側第1通路31bとの間に設けてあり、タンク側バイパス止弁35aで開閉される構成である。この様に構成すると作動油の流れが
図6(a)矢印Aに示すように様に反時計方向の流れとなる。
【0031】
なお、
図6(a)のpポート37pにタンク回路12aを接続し、tポート37tにポンプ回路10aaを接続すると
図6(b)に示した複合弁70の流れと同様に時計方向の流れとなる。
【0032】
また、
図6(b)に示す複合弁70は、前記したポンプ側バイパス回路36bとタンク側バイパス回路35bの接続が相違するのみでその外は同一構造である。すなわち、ポンプ側バイパス回路36b1は、ポンプ側通路33bと多機能弁側第2通路32bとを接続する構成でタンク側バイパス止弁36a1を備えている。また、タンク側バイパス回路35b1は、タンク側通路34bと多機能弁側第1通路31bを接続する構成でポンプ側バイパス止弁35a1を備えた構成である。
【0033】
上記の構成の相違による作動は、複合弁30を作動油が、
図6(a)の矢印Aに示すように反時計方向に流れるのに対して、複合弁70の作動油が
図6(b)の矢印Bに示すように時計方向の流れる点が相違する。この相違は、作動油の流し方のみでありその外にほぼ同一であるから以後複合弁30について説明し、必要に応じて複合弁70の説明をする。
【0034】
複合弁30の具体的構成
複合弁30の具体的構成について、
図2〜
図5に基づいて説明する。なお、複合弁30の各止弁の具体的構造は、特開2011−231924号の
図2(a)に開示された構造の多目的ポートを省いた構造とほぼ同一であり、ハンドルの操作により弁体が通路を開閉する通常のポペット型の開閉弁であるから、その詳細説明を省く。
【0035】
複合弁30についてその複合弁体30a示す
図2に示した3つの断面により具体的構造を説明する。
【0036】
複合弁30は、
図2のY−Y断面を示した
図3で表される第1断面30bと、Z―Z断面を示した
図4で表される第2断面30cと、X−X断面を示した
図5で表される第3断面30dの3つの面で構成されおり、第1断面30bと第2断面30cが平行に設置してあり前記2つの断面と第3断面30dとが交差する構成で、各断面に弁類を配置することにより設計を容易に行なえる構成にしてある。
【0037】
図3に示す第1断面30bは、ポンプ回路10aが接続するpポート37pとこのpポート37pにポンプ側止弁33aを介して連通し給排回路39aが接続するp1ポート37p1と、油圧源10のタンク回路12aに接続するtポート37tとこのtポート37tにタンク側止弁34aを介して連通し給排回路39bが接続するt1ポート37t1とで構成する。
【0038】
図4に示す第2断面30cは、油圧シリンダ61のポート62bに接続する第2給排回路38bが接続するbポート37bとこのbポート37bに多機能弁側第1止弁31aを介して連通し速度制御弁24bに連通する給排回路24dが接続するb1ポート37b1と、油圧シリンダ61のポート62aに接続する第1給排回路38aが接続するaポート37aとこのaポート37aに多機能弁側第2止弁32aを介して連通し速度制御弁24aに連通する給排回路24cが接続するaポート37aとで構成する。
【0039】
図5に示す第3断面30dは、前記第1断面30bと第2断面30cと交差する平面であり、ポンプ側バイパス止弁36aとポンプ側止弁33a、およびタンク側バイパス止弁35aと多機能弁側第2止弁32aと、多機能弁側第1通路31bと多機能弁側第2通路32bおよびポンプ側バイパス回路36bとタンク側バイパス回路35bの各通路が配置された構造である。
【0040】
複合弁30は、第1断面30bと第2断面30cの2つの面内を第3断面30dが交差する構成にすることで加工性の容易さを向上させたものである。
【0041】
図3に示す第1断面30bは、下平面46aに開口するpポート37pと上平面46bに開口するp1ポート37p1を接続するポンプ側通路33bと、下平面46aに開口するtポート37tと上平面46bに開口するt1ポート37t1を接続するタンク側通路34bを備えている。
【0042】
ポンプ側通路33bで構成する第1左側通路構成26は、下方通路26a1と上方通路26a2とで構成され左側面46dに向かって伸びる第1左コの字通路26kを備えており、下方通路26a1と上方通路26a2は下方通路26a1の軸線上に設けたポンプ側止弁33aで開閉されると共に、下方通路26a1のpポート37p側にポンプ側バイパス回路36bを開口させている。
【0043】
タンク側通路34bで構成する第1右側通路構成27は、下方通路27a1と中通路27a2と上方通路27a3で構成され、上方通路27a3と中通路27a2で右側面46cに向かって伸びる第1右コの字通路27kを構成しており、下方通路27a1はタンク側通路34bから分岐するT字通路27tを構成する。
【0044】
下方通路27a1は、タンク側バイパス止弁35aで開閉される構成であり第1左側通路構成26の下方通路26a1と同軸上に形成してあり、タンク側バイパス止弁35aにタンク側バイパス回路35bが開口する構成である。また、中通路27a2は、第1左側通路構成26の上方通路26a2と同軸上に形成してタンク側止弁34aを設けてあり、このタンク側止弁34aが上方通路27a3との間を開閉する。
【0045】
図4に示す第2断面30cは、下平面46aに開口するbポート37bと上平面46bに開口するb1ポート37b1を接続する多機能弁側第1止弁31aと、下平面46aに開口するaポート37aと上平面46bに開口するa1ポート37a1を接続する多機能弁側第2止弁32aを備えている。
【0046】
多機能弁側第2通路32bで構成する第2右側通路構成28は、下方通路28a1と上方通路28a2とで構成され左側面46cに向かって伸びる第2右コの字通路28kを備えており、下方通路28a1と上方通路28a2は、下方通路28a1の軸線上に設けた多機能弁側第2止弁32aで開閉されると共に、下方通路28a1のaポート37a側にタンク側バイパス回路35bを開口させている。
【0047】
多機能弁側第1通路31bで構成する第2左側通路構成29は、下方通路29a1と中通路29a2と上方通路29a3で構成され、上方通路29a3と中通路29a2で右側面46cに向かって伸びる第2コの字通路29kを構成しており、下方通路29a1は多機能弁側第1通路31bから分岐する第2T字通路29tを構成する。
【0048】
下方通路29a1は、ポンプ側バイパス止弁36aで開閉される構成であり第2右側通路構成28の下方通路28a1と同軸上に形成してあり、ポンプ側バイパス止弁36aにポンプ側バイパス回路36bが開口する構成である。また。中通路29a2は、第2右側通路構成28の上方通路28a2と同軸上に形成して多機能弁側第1止弁31aを設けてあり、この多機能弁側第1止弁31aが上方通路29a3との間を開閉する。
【0049】
図5に示す第3断面30dは、第1断面30bのタンク側バイパス止弁35aと第2断面30cのポンプ側バイパス止弁36aを含み第2断面30cと第1断面30bに交差する水平断面であり、タンク側バイパス回路35bとポンプ側バイパス回路36bが第2断面30cと第1断面30bを連結する構造である。
【0050】
この様な構成の複合弁30は、各種の止弁の配置を同一軸線上に配置してありその各種の止弁を接続する通路を一平面内に構成し、さらにこの平面に交差するもう一つの平面で連結する構成の単純な結合であるから構成しやすい。また、
図3に矢印Cで示すようにその第1断面30bを長手方向に180度回転すると、第1左側通路構成26と第2右側通路構成28及び第1右側通路構成27と第2右側通路構成28がほぼ同一になるように構成してある。
【0051】
多機能弁
多機能弁40は、油圧シリンダ61のポート62aとポート62bに密接して取り付けてあり、マニュホールド50に接続する第1給排回路38aと油圧シリンダ61のポート62aの間を開閉する第1止弁40aと、マニュホールド50に接続する第2給排回路38bと油圧シリンダ61のポート62bの間を開閉する第2止弁40bと、この多機能弁40は、第1給排回路38aと第2給排回路38bの間を開閉する第3止弁40cを設けたバイパス回路42bを有する構成である。
【0052】
この多機能弁40は、第1止弁40a、第2止弁40bを閉鎖して第3止弁40cを開くと、第1給排回路38aと第2給排回路38bをバイパス回路42bが連結する機能と、第3止弁40cを閉じ第1止弁40aと第2止弁40bを開くと油圧シリンダ61を通常の作動(往復動作用)にする機能を有する。第1止弁40a、第2止弁40bを閉鎖すると、油圧シリンダ61を外して保守、点検、修理を行なうことができる。
【0053】
前記多機能弁40は、油圧シリンダ61のポート62aと第1給排回路38aの間を開閉する第1止弁40aと、第2給排回路38bと油圧シリンダ61のポート62bとの間を開閉する第2止弁40bとこの第1止弁40aと第2止弁40bの積層弁20側から分岐して第3止弁40cで開閉されるバイパス回路42bとを有する構成であり、詳細は、特許第3696850号に記載されている多機能弁とほぼ同一であるから、詳細説明を省く。
【0054】
油圧機器
油圧機器60を構成する油圧シリンダ61は、本体62のロッド側油圧室63aにポート62aを介して作動圧油が供給されるとそのロッド65が引き込み方向に作動し、ヘッド側圧力室63bに作動圧力油が供給されるとロッド65が押し出し方向に作動する構成である。
【0055】
第1実施形態作用説明
図7(a)(b)に基づいて第1実施形態の作用についてのべる。なお、
図7(a)(b)は、本発明の作動と関連が薄いので
図1のロードチェック弁体23と速度制御弁体24を省いてある。
【0056】
通常作動
図7(a)において、方向切換弁体21の方向切換弁22を操作して油圧シリンダ61を通常動作させる場合は、まず、複合弁30のタンク側バイパス回路35bのタンク側バイパス止弁35aとポンプ側バイパス回路36bのポンプ側バイパス止弁36aを閉じその外の止弁を開いた状態にし、多機能弁40の第3止弁40cを閉じその他の止弁を開いておく状態にする。
【0057】
複合弁30と多機能弁40を上記の状態にセットして、方向切換弁体21の方向切換弁22を右切換位置22bに操作すると、油圧ポンプ11の作動油が、複合弁30を介して右切換位置22bからロードチェック弁体23、速度制御弁体24を介し第1給排回路38aから多機能弁40を経て、ロッド側油圧室63aに供給される。
【0058】
油圧シリンダ61のヘッド側圧力室63bの作動油は、多機能弁40から第2給排回路38b複合弁30を経て速度制御弁体24、ロードチェック弁体23から右切換位置22bを介して複合弁30からタンク12に帰還するので、油圧シリンダ61のロッド65は引き込み方向に作動する。
【0059】
図7(a)に示すように、複合弁30のタンク側バイパス止弁35aとポンプ側バイパス止弁36aと多機能弁40の第3止弁40cを閉鎖しておき、方向切換弁22を左切換位置22cに操作すると、ヘッド側圧力室63bに作動油が供給され、ロッド側油圧室63aの作動油がタンク12に帰還するので、油圧シリンダ61のロッド65が押出し方向に作動する。
【0060】
すなわち、複合弁30と多機能弁40の状態を上述した状態で保持すると、油圧シリンダ61の動作は方向切換弁体21の方向切換弁22の操作により通常作動となる。
【0061】
積層弁の検査、修理、点検、整備及び油圧シリンダ試運転及びフラッシングについて
まず、
図7(b)により、積層弁20の修理、点検、整備及び油圧シリンダ61の試運転について説明する。
【0062】
積層弁20の修理、点検、整備は、
図7(b)に示すように、複合弁30の多機能弁側第1止弁31aと多機能弁側第2止弁32aおよびタンク側止弁34aとポンプ側止弁33aを閉鎖する。この操作により、複合弁30が積層弁20と油圧シリンダ61および油圧源10の間を閉鎖するので、複合弁30から積層弁20を取り外して修理、点検、整備などを行なうことができる。
【0063】
油圧シリンダ61の試運転は、上記した積層弁20の修理、点検、整備の操作時にポンプ側バイパス止弁35aとタンク側バイパス止弁36aを開き、多機能弁40の第2止弁40bと第2止弁40bを開くと、油圧シリンダ61に、油圧源10からの作動油の給排がなされるので、ロッド65が伸びる方向に作動する。
【0064】
また、上記した積層弁20の修理、点検、整備の操作時にポンプ側バイパス止弁35aとタンク側バイパス止弁36aを開き、多機能弁40の第1止弁40aと第2止弁40bを閉じ第3止弁40cを開くとバイパス回路42bが構成されるので、作動油が第1給排回路38aからバイパス回路42bを介して第2給排回路38bから複合弁30を介してタンク12へ還流するフラッシングを行なうことができる。
【0065】
すなわち、
図7(a)(b)に示した第1実施形態の複合弁30は、
図6(a)に示した回路構成であるから、油圧ポンプ11の吐出側が油圧シリンダ61のヘッド側圧力室63bに連結し、タンク12が油圧シリンダ61のロッド側油圧室63aに連結する構成である。このために、油圧シリンダ61の試運転は、油圧シリンダ61のロッド65を伸張する方向のみである。
【0066】
また、
図7(a)(b)に示した第1実施形態の複合弁30を、
図6(b)に示した複合弁70の回路構成にすると、油圧ポンプ11の吐出側が油圧シリンダ61のヘッド側圧力室63aに連結し、タンク12が油圧シリンダ61のロッド側油圧室63bに連結する構成である。このために、油圧シリンダ61の試運転は、油圧シリンダ61のロッド65を縮小方向のみである。
【0067】
第2実施形態
第2実施形態の回路図を示す
図8に示すように、複合弁30のタンク側バイパス止弁35aとポンプ側バイパス止弁36aを、方向切換弁45に置き換えると、油圧シリンダ61は、この方向切換弁45の操作により、伸張、縮小方向への試運転を行なうことができる。なお、方向切換弁45は、中立位置45aと第1切換位置45bと第2切換位置45cの3位置を備えた構造にしたが、中立位置と前記第1または第2切換位置の一方のみで構成する2位置の方向切換弁でもよい。
【0068】
向切換弁45を図示の中立位置45aに操作すると、タンク側バイパス回路35bとポンプ側バイパス回路36bが遮断され、油圧シリンダ61は停止位置のままである。
【0069】
第1切換位置45bに操作すると、タンク側バイパス回路35bがとポンプ側バイパス回路36bが連通されるので、ヘッド側圧力室63bと油圧ポンプ11が接続され、タンク12とヘッド側圧力室63bが接続され、ロッド65を伸張する方向に作動させることが出来る。
【0070】
また、第2切換位置45cに操作すると、タンク側バイパス回路35bがタンク側通路34bと多機能弁側第1通路31bを接続し、ポンプ側バイパス回路36bがポンプ側通路33bと多機能弁側第2通路32bが連通されるので、ロッド側油圧室63aと油圧ポンプ11が接続され、タンク12とロッド側油圧室63aが接続されるので、ロッド65を縮小する方向に作動させることが出来る。
【0071】
さらに、多機能弁40の第3止弁40cを開き他の第1止弁40aと第2止弁40bを閉じると、油圧シリンダ61への作動油の給排も停止されるが第1給排回路38aと第2給排回路38bが多機能弁40のバイパス回路42bで接続されるので、第1給排回路38aと第2給排回路38bをフラッシングすることが出来る。
【0072】
上記のフラッシング作動において、方向切換弁45を第1切換位置45bに操作すると、フランシングの方向が時計回りとなり、第2切換位置45cに操作すると反時計回りとなる。すなわち、フラッシングの方向を変えることで取れにくい汚染もフラッシングできる可能性がある。
【0073】
油圧機器60の油圧シリンダ61は、多機能弁40の第3止弁40cのみを開くことで、油圧機器60を積層弁20および油圧源10から完全に分離できるので、油圧シリンダ61の修理、点検、整備を行なうことができる。
【0074】
上記した積層弁20と油圧シリンダ61の修理、点検、整備は、複合弁30と多機能弁40により、積層弁20と油圧シリンダ61を確実に分離した状態で行うのでコンタミの混入の恐れがない。また、修理、点検、整備中も油圧源10を停止させる必用が無くまたフラッシング回路を構成できるので、修理、点検、整備中にフラッシング作業を並行させることが出来る。さらに、油圧シリンダ61の修理、点検、整備が終了し再び多機能弁40に取り付けた後に、油圧シリンダ61を試運転、微動操作が可能である。