(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔本発明の両性重合体〕
本明細書において、両性重合体とは、1分子内にカチオン性基とアニオン性基との両方を有する重合体をいう。
【0017】
<カチオン性基含有単量体(A)>
本発明の両性重合体は、下記一般式(1)で表されるカチオン性基含有単量体(A)に由来する構造単位(a)を必須とする重合体である。
【0018】
【化6】
上記一般式(1)中、R
0は、水素原子又はCH
3基を表す。R
1は、CH
2基、CH
2CH
2基、CO基(カルボニル基)又は直接結合を表す。R
2は、炭素数1〜5の有機基を表す。
R
3は、窒素原子含有置換基を示し、その他の置換基としては、水素原子又は炭素数1〜60の3級アミン又は4級アンモニウム塩を示す。また、R
3には、カウンターアニオンX
−を含む場合がある。Zは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Z−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
【0019】
上記一般式(1)において、R
1が直接結合である場合とは、上記一般式(1)のH
2C=C(R
0)−R
1−O−がH
2C=C(R
0)−O−で表されることを意味する。すなわちH
2C=C(R
0)−R
1−は、R
0が水素原子、R
1がCO基(カルボニル基)の場合はアクリル基、R
0がメチル基、R
1がCO基(カルボニル基)の場合はアクリル基、R
0がCH
3基、R
1がCH
2基の場合はメタリル基、R
0がCH
3基、R
1がCH
2CH
2基の場合はイソプレニル基、R
0がCH
3基、R
1が直接結合の場合はイソプロペニル基、R
0が水素原子、R
1がCH
2基の場合はアリル基、R
0が水素原子、R
1がCH
2CH
2基の場合はブテニル基、R
0が水素原子、R
1が直接結合の場合はビニル基である。
【0020】
上記カチオン性基含有単量体(A)における重合可能な炭素−炭素二重結合を有する基、すなわちH
2C=C(R
0)−R
1−としては、イソプレニル基、メタリル基、アリル基、ビニル基、メタクリル基、アクリル基が好ましい。重合性を高める観点からは、イソプレニル基、メタリル基、アリル基、メタクリル基がより好ましく、イソプレニル基、メタリル基が特に好ましい。
【0021】
上記一般式(1)におけるR
2は、炭素数1〜5の有機基を表し、水酸基、アミノ基、ケトン基、カルボキシル基、及び、ハロゲン化物を一つあるいは複数有しても良い。中でも水酸基を有した場合が、合成時の容易さという観点から好ましい。
また、上記一般式(1)におけるR
2は、炭素数1〜5の有機基の構造は、特に限定されないが、アルキル基、アリール基、アルケニル基である事が好ましい。
上記一般式(1)におけるR
2は、炭素数2〜3の有機基を有している事が好ましく、より好ましくは、炭素数3の有機基を有している場合である。
【0022】
また、上記一般式(1)におけるR
2のより好ましい形態としては、炭素数3の有機基を有して、その有機基に水酸基を有する場合である。水酸基の位置は、特に限定はないが、炭素数3の有機基が水酸基を有する場合は、−CH
2−CH(OH)−CH
2−という様に、中央部に位置する方が、合成時の容易さという観点から好ましい。
【0023】
上記一般式(1)におけるR
3は、窒素原子含有置換基を示す。該窒素原子に結合する化学種としては、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を1〜3個有しても良い。即ち、全て水素原子であった場合はアミノ基となり、水素原子と炭素数1〜20の有機基の組み合わせの時は、2級アミンとなり、炭素数1〜20の有機基が同一または異なる置換基が窒素原子に二つ結合した場合は、3級アミンとなる。さらに、炭素数1〜20の有機基が同一または異なる置換基が窒素原子に三つ結合して、さらにカウンターアニオンX
−が存在する場合は、第4級アンモニウム塩を示す。
【0024】
上記一般式(1)におけるR
3は、上述の通り窒素原子含有置換基を示し、窒素原子上の置換基としては、水素原子又は炭素数1〜20の有機基である。窒素原子上の置換基が炭素数1〜20の有機基であれば特に限定はないが、アルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましい。当該アルキル基、アリール基、アルケニル基は、無置換の基であっても、水素原子の1又は2以上が他の有機基によって置換された基であっても良い。
この場合の他の有機基としては、アルキル基(窒素原子に結合する有機基がアルキル基である場合には、置換後の有機基は全体として無置換のアルキル基に該当する。)、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、水酸基、アシル基、エーテル基、アミド基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、スルホン酸基、スルホン酸基の塩等が挙げられる。
【0025】
R
3の窒素原子に結合する有機基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜2が更に好ましい。炭素数が上記範囲にあれば、高い収率でカチオン性基含有単量体(A)を製造することができるため、単量体の重合性及び得られる重合体の純度が向上する。また、得られる重合体の炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能も向上する。
具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基;ブチレン基、オクチレン基、ノニレン基等のアルケニル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、2,3−若しくは2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基、又は、これらの水素原子の一部がアルコキシ基、カルボキシエステル基、アミノ基、アミド基、水酸基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、スルホン酸基、スルホン酸基の塩等で置換された基、例えばヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。中でも、得られる重合体の炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能を向上させる観点から、メチル基、エチル基が好ましい。
【0026】
上記一般式(1)におけるR
3に含まれる窒素原子に結合する有機基は、夫々結合して環状構造を形成していてもよい。この場合、環状構造が安定する点で、窒素原子、複数の有機基の結合で形成される環状構造は3〜7員環であること、すなわちR
3に含まれる有機基中の炭素数が2〜6であることが好ましい。
【0027】
上記一般式(1)におけるR
3を別の表記方法で表すと、3級アミンを示す:NR
4R
5、または第4級アンモニウム塩を示す:NR
6R
7R
8X
−(X
−は、カウンターアニオンを示す。)となる。R
4〜R
8は、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表す。
炭素数1〜20の有機基は全体として炭素数が1〜20であれば限定されないが、アルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましい。当該アルキル基、アリール基、アルケニル基は、無置換の基であっても、水素原子の1又は2以上が他の有機基によって置換された基であっても良い。この場合の他の有機基としては、アルキル基(R
4〜R
8で表される有機基がアルキル基である場合には、置換後の有機基は全体として無置換のアルキル基に該当する。)、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、水酸基、アシル基、エーテル基、アミド基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、スルホン酸基、スルホン酸基の塩等が挙げられる。
【0028】
R
4〜R
8の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜2が更に好ましい。炭素数が上記範囲にあれば、高い収率でカチオン性基含有単量体(A)を製造することができるため、単量体の重合性及び得られる重合体の純度が向上する。また、得られる重合体の炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能も向上する。
具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基;ブチレン基、オクチレン基、ノニレン基等のアルケニル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、2,3−若しくは2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基、又は、これらの水素原子の一部がアルコキシ基、カルボキシエステル基、アミノ基、アミド基、水酸基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、スルホン酸基、スルホン酸基の塩等で置換された基、例えばヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。中でも、得られる重合体の炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能を向上させる観点から、メチル基、エチル基が好ましい。
【0029】
上記一般式(1)におけるR
4〜R
5又は、R
6〜R
8は、夫々結合して環状構造を形成していてもよい。この場合、環状構造が安定する点で、窒素原子、R
4及びR
5(又は、R
6及びR
7)で形成される環状構造は3〜7員環であること、すなわちR
4とR
5との合計(又は、R
6とR
7との合計)の炭素数が2〜6であることが好ましい。
【0030】
上記一般式(1)において、Zは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基であるが、カチオン性基含有単量体(A)の重合性を良好にする観点から、Zは炭素数2〜4のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基であることがより好ましい。具体的にはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の炭素数2〜4のアルキレン基であることが好ましく、エチレン基、プロピレン基等の炭素数2〜3のアルキレン基であることがより好ましい。上記アルキレン基としては、1種又は2種以上を用いることができるが、2種以上を用いる場合は、−Z−O−で表されるオキシアルキレン基は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。
上記一般式(1)において、nはオキシアルキレン基(−Z−O−)の平均付加モル数であり、1〜300の数を表す。得られる重合体分子中でアニオン性基とカチオン性基とを互いに離れた位置に存在させることにより重合体の炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能を顕著に向上させるとの観点から、nは4以上が好ましく、9以上がより好ましく、18以上が更に好ましい。また、カチオン性基含有単量体(A)の重合性を良好にする観点から、nは190以下が好ましく、140以下がより好ましく、90以下が更に好ましい。
【0031】
上記カチオン性基含有単量体(A)が四級化した窒素原子を有する場合、四級化した窒素原子近傍には、カウンターアニオンX
−が存在することになる。カウンターアニオンX
−の種類は特に限定されないが、ハロゲン原子のイオン、アルキル硫酸イオンが好ましい。ハロゲン原子のイオンとしては、具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等のイオンが挙げられる。中でも、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のイオンが好ましく、塩素原子のイオンがより好ましい。アルキル硫酸イオンとしては、具体的には、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等が挙げられる。中でも、メチル硫酸イオンが好ましい。
【0032】
本発明の両性重合体は、上記カチオン性基含有単量体(A)に由来する構造単位(a)を有する。構造単位(a)は、カチオン性基含有単量体(A)の炭素−炭素二重結合が単結合になった構造であり、下記一般式(3)で表すことができる。
【0033】
【化7】
式中、R
0は、水素原子又はCH
3基を表す。R
1は、CH
2基、CH
2CH
2基、CO基(カルボニル基)又は直接結合を表す。R
2は、炭素数1〜5の有機基を表す。
R
3は、窒素原子含有置換基を示し、その他の置換基としては、水素原子又は炭素数1〜60の3級アミン又は4級アンモニウム塩を示す。また、R
3には、カウンターアニオンX
−を含む場合がある。Zは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Z−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
【0034】
なお、本発明の両性重合体が「カチオン性基含有単量体(A)に由来する構造単位(a)」を含むとは、最終的に得られた重合体が上記一般式(3)で表される構造単位を含むことを意味する。すなわち、本発明における「カチオン性基含有単量体(A)に由来する構造単位(a)」には、上記カチオン性基含有単量体(A)を合成した後、それを他の単量体成分と共重合させることによって重合体中に導入されるものだけでなく、例えば、まず両性重合体の主鎖部分を共重合によって形成し、その後特定の構造を有する側鎖を導入して得られるもののように、形成工程が重合反応の前後にわたるものも含まれる。
【0035】
本発明の両性重合体における上記構造単位(a)の含有量は、両性重合体を形成する全単量体に由来する構造単位の総量(構造単位(a)、後述する構造単位(b)及び後述する構造単位(c)の総量)100質量%に対し、1質量%以上、98質量%以下である。構造単位(a)の含有量が上記範囲内であれば、重合体の炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能の顕著な向上効果が得られる。構造単位(a)の含有量として、好ましくは1質量%以上、88質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上、77質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以上、64質量%以下である。
なお、上記構造単位(a)の、全単量体に由来する構造単位の総量に対する質量割合(質量%)や、上記単量体(A)の、全単量体の総量に対する質量割合を算出する際には、カウンターアニオンの質量は考慮しないで(含めないで)計算するものとする。
また、本発明の両性重合体が有する構造単位(a)は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0036】
本発明の両性重合体における上記構造単位(a)は、炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能の向上効果が特に高いことから、上記一般式(3)で表される構造単位を必須とすることが好ましい。上記一般式(3)で表される構造単位の含有量としては、両性重合体を形成する全単量体に由来する構造単位の総量100質量%に対し、1質量%以上、98質量%以下であることが好ましい。
【0037】
<カチオン性基含有単量体(A)の製造方法>
上記カチオン性基含有単量体(A)は、適用可能な公知の製造方法により製造することもできるが、上記カチオン性基含有単量体(A)が上記一般式(1)で表される構造を有する場合には、下記(i)〜(iii)の方法で製造することが好ましい。当該方法によれば、高い収率でカチオン性基含有単量体(A)を製造することができる。
製造方法(i)は、アミン化合物にアルキレングリコールを付加した構造を有するポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸をエステル化する工程を含む方法である。
製造方法(ii)は、アミン化合物にアルキレングリコールを付加した構造を有するポリアルキレングリコールと炭素―炭素二重結合を有するグリシジルエーテルのグリシジル基に付加する工程を含む方法である。
製造方法(iii)は、下記一般式(4)のポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとアルカリ化合物とを反応させる工程と、その工程で得られた反応物と三級アミン塩を反応させる工程とを含む方法である。
【0038】
【化8】
式中、R
0は、水素原子又はCH
3基を表す。R
1は、CH
2基、CH
2CH
2基、CO基(カルボニル基)又は直接結合を表す。Zは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nはオキシアルキレン基(−Z−O−)の平均付加モル数であり、1〜300の数を表す。
なお、R
0、R
1及びZの好ましい形態は、上記一般式(1)におけるR
0、R
1及びZの好ましい形態と同様である。
【0039】
<ポリアルキレングリコール単量体(B)>
本発明のポリアルキレングリコール系単量体は、下記一般式(2)で表されるポリアルキ
レングリコール系単量体(B)由来の構造単位(b)を特定の割合で有することを必須と
している。
【0041】
上記一般式(2)中、R
0は、水素原子又はCH
3基を表す。Rは、CH
2基、CH
2CH
2基、CO基(カルボニル基)又は直接結合を表す。Zは、水素原子又は炭素数8〜20の有機基を表す。Zは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。mは、オキシアルキレン基(−Z−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
得られる重合体分子中でアニオン性基とカチオン性基とを互いに離れた位置に存在させることにより重合体の炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能を顕著に向上させるとの観点から、mは5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。また、ポリアルキレングリコール単量体(B)の重合性を良好にする観点から、mは200以下が好ましく、150以下がより好ましく、100以下が更に好ましい。
【0042】
一般式(2)において、得られる共重合体の炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能の向上効果が高いことから、R
1は、CH
2基、CH
2CH
2基、CO基(カルボニル基)又は直接結合であることが好ましい。なお、本明細書において、R
1が直接結合を表す場合とは、例えばC−R−Oと表される場合にC−Cとなることを意味する。
【0043】
一般式(2)において、Zは、上述の通り、水素原子又は炭素数8〜20の有機基であるが、水素原子である事が最も好ましい。
一方、疎水性を向上させる必要がある場合、炭素原子や窒素原子などその他の元素が含まれた有機基であっても良い。その場合のZは、好ましくは炭素数8〜17の有機基であることが好ましく、炭素数8〜14の有機基であることがより好ましい。Yは、アミノ基、アミド基、水酸基、アルコキシド基、スルホン酸基、カルボニル基、カルボキシル基等の官能基を含んでいても良い。Yは、エーテル結合やスルフィド結合、エステル結合、アミド結合を含んでいても良い。有機基としては、得られる共重合体の析出抑制能の向上効果が高いことから、アルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましい。
【0044】
疎水性を向上させる必要がある場合の好ましいYとして、具体的にはオクチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基のアルキル基;オクチレン基、ノニレン基等のアルケニル基;ナフチル基、ノニルフェニール基等のアリール基が挙げられる。
【0045】
上記の通り、上記一般式(2)において、Zは炭素数2〜30のアルキレン構造を表す。アルキレンとしては、エチレン、プロピレン、ブチレンが挙げられる。フェニレン、ナフチレン基を含んでいても良い。
重合体の製造が容易である観点から、上記一般式(2)におけるアルキレン構造のうち、50mol%以上はエチレン構造であることが好ましい。より好ましくはアルキレン構造のうち、80mol%以上はエチレン構造であり、最も好ましくは100mol%がエチレン構造である。アルキレン構造のうち、100mol%がエチレン構造であるとは、具体的には、例えば単量体(B)が上記一般式(2)で表される単量体である場合、単量体(B)が下記一般式(6)で表される構造を有することになる。
【0047】
上記一般式(6)中、R
0は、水素原子又はCH3基を表し、R
1は、CH
2基、CH
2CH
2基、CO基(カルボニル基)又は直接結合を表し、mは、オキシエチレン基の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。Yは水素原子又は炭素数8〜20の有機基を表す。
【0048】
本発明の本発明の両性重合体が、アルカリ条件下においても安定して炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能を発現することから、単量体(B)は、エステル基、アミド基を含有しないことが好ましい。
【0049】
上記構成単位(b)は、単量体(B)、すなわち上記式(2)において、不飽和二重結合(CH
2=CH−)が単結合(−CH
2−CH−)になった形態となる。
すなわち、単量体(B)由来の構造単位(b)とは下記一般式で表される構造を示す。
【0051】
上記一般式(7)中、R
0は、水素原子又はCH
3基を表す。Rは、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合を表す。Yは、水素原子又は炭素数8〜20の有機基を表す。Zは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。mは、オキシアルキレン基(−Z−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
【0052】
構成単位(b)を本発明の両性重合体中に導入することによって、両性重合体は、炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能を向上させることができる。
また、単量体(B)は、水などの親水性溶媒中においても、上述の単量体(A)、後述する単量体(C)と比較的共重合が容易であることから、得られる両性重合体の炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能を有意に向上することができる。
【0053】
本発明の両性重合体は、上記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(B)由来の構造単位(b)を全単量体由来の構造100質量%に対して、1質量%以上90質量%未満の割合で有することを必須としている。本発明において、単量体とは、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合をいう)を有する化合物を言う。構造単位(b)が上記範囲内であれば、優れた共重合体の炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能の向上効果が得られる。全単量体由来の構造100質量%に対する構造単位(b)の割合は、好ましくは1質量%以上98質量%未満であり、さらに好ましくは2質量%以上89質量%未満であり、より好ましくは3質量%以上78質量%未満であり、最も好ましくは6質量%以上68質量%未満である。本発明の両性重合体が、上記範囲で単量体(B)由来の構造単位(b)を有することにより、両性重合体が良好な水溶性を示し、また残存ポリアルキレングリコール系単量体が低減する傾向にある。残存ポリアルキレングリコール系単量体の低減に起因して、本発明の両性重合体を水溶液で保存した際の均一性が向上する。
【0054】
<カルボキシル基含有単量体(C)>
本発明の両性重合体は、カルボキシル基含有単量体(C)に由来する構造単位(c)を必須とする重合体である。
上記カルボキシル基含有単量体(C)は、1)不飽和二重結合と、2)カルボキシル基及び/又はその塩を必須として含有する単量体である。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びその誘導体等の、不飽和モノカルボン酸及びこれらの塩等の不飽和モノカルボン酸系単量体;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、2−メチレングルタル酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩等の不飽和ジカルボン酸系単量体が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸系単量体としては、分子内に1つの不飽和基と2つのカルボキシル基とを有する単量体であればよいが、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アンモニウム塩(有機アミン塩)等、又は、それらの無水物が好適である。
【0055】
上記カルボキシル基含有単量体(C)としては、上記のものの中でも、アクリル酸、アクリル酸塩、マレイン酸及びマレイン酸塩が、得られる両性重合体の炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能の向上効果が高いことから好ましく、アクリル酸、アクリル酸塩を必須とすることがより好ましい。
【0056】
上記不飽和モノカルボン酸の塩及び上記不飽和ジカルボン酸の塩としては、金属塩、アンモニウム塩又は有機アミン塩が好適である。
金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属の一価の金属の塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属の塩;アルミニウム、鉄等の塩等が挙げられる。
また、上記有機アミン塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;モノエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩;エチレンジアミン塩、トリエチレンジアミン塩等のポリアミン等の有機アミンの塩が挙げられる。
これらのうち、得られる共重合体の炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能の向上効果が高いことから、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0057】
上記カルボキシル基含有単量体(C)は、上述したもの以外に、不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜22のアルコールとのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸と炭素数2〜4のグリコールとのハーフエステル、マレアミド酸と炭素数2〜4のグリコールとのハーフアミド等であってもよい。
【0058】
上記カルボキシル基含有単量体(C)に由来する構造単位(c)は、単量体(C)の不飽和二重結合が単結合になった形態である。本発明の両性重合体が「カルボキシル基含有単量体(C)に由来する構造単位(c)」を含むとは、最終的に得られた重合体が、単量体(C)の不飽和二重結合を単結合に置き換えた構造単位を含むことを意味する。
本発明の両性重合体は、構造単位(c)を1種のみ有していてもよいが、2種以上の構造単位(c)を有してもよい。
上記両性重合体は、構造単位(c)を全単量体に由来する構造単位の総量(構造単位(a)、(b)及び後述する構造単位(c)の総量)100質量%に対して、1質量%以上、98質量%以下の割合で有することを必須としている。構造単位(c)の含有量が上記範囲内であれば、重合体の炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能の顕著な向上効果が得られる。全単量体由来の構造単位の総量100質量%に対する構造単位(b)の割合は、好ましくは1質量%以上、98質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上、97質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以上、95質量%以下であり、最も好ましくは30質量%以上、92質量%以下である。
本発明の両性重合体をスケール防止剤として使用する場合、構造単位(c)を上述した特定の割合で含有することにより、重合体の水溶性が良好になり、構造単位(a)及び構造単位(b)と相互作用した炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能を発揮することが可能となる。
【0059】
なお、本発明において、カルボキシル基含有単量体(C)由来の構造単位(c)の全単量体由来の構造単位の総量に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、対応する酸換算で計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムに由来する構造単位−CH
2−CH(COONa)−の質量割合は、対応する酸であるアクリル酸に由来する構造単位−CH
2−CH(COOH)−の質量割合(質量%)として計算する。同様に、カルボキシル基含有単量体(C)の、全単量体の総量に対する質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸換算で計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムの質量割合は、対応する酸であるアクリル酸の質量割合(質量%)として計算する。
【0060】
<オキシアルキレン単位の平均付加モル数nとmの関係>
本発明の両性重合体は、カチオン性基含有単量体(A)に由来する構造単位(a)及びポリアルキレングリコール系単量体(B)に由来する構造単位(b)を必須成分としている。
カチオン性基含有単量体(A)に由来する構造単位(a)に含まれるアルキレングルコール単位の繰り返しを示す平均付加モル数nとポリアルキレングリコール系単量体(B)に由来する構造単位(b)に含まれるアルキレングルコール単位の繰り返しを示す平均付加モル数mは、m>nの関係である事を必須である。カチオン性基含有単量体(A)に由来する構造単位(a)に含まれるアルキレングルコール単位の繰り返しを示す平均付加モル数nとポリアルキレングリコール系単量体(B)に由来する構造単位(b)に含まれるアルキレングルコール単位の繰り返しを示す平均付加モル数mは、m>nの関係であれば特に限定はない。
m>nの関係で、mとnの差が、1〜300であれば特に限定はない。好ましくは、2〜100、さらに好ましくは、3〜70、最も好ましくは5〜50である。
mとnの関係が、前述の範囲を外れると、両性重合体の炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能が、低下するため好ましくない。
【0062】
【化13】
両性重合体は、該両性重合体を形成する全単量体に由来する構造単位の総量100質量%に対して、構造単位(a)を1〜98質量%含み、構造単位(b)を1〜98質量%含み、構造単位(c)を1〜98質量%含むことを特徴とする両性重合体。
【0063】
<その他の単量体>
本発明の両性重合体は、その他の単量体(D)(上記カチオン性基含有単量体(A)、ポリアルキレングリコール系単量体(B)及びカルボキシル基含有単量体(C)以外の単量体)に由来する構造単位(d)を有していてもよい。上記両性重合体は、構造単位(d)を1種のみ有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
上記その他の単量体(D)は、上記単量体(A)、(B)及び(C)と共重合可能なものであれば特に限定されず、所望の効果によって適宜選択可能である。具体的には、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環式芳香族炭化水素基を有するビニル芳香族系単量体の四級化物、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、アミノエチルメタクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類の四級化物、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミン等のアリルアミン類の四級化物、(メタ)アリルグリシジルエーテル、イソプレニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル等のエポキシ環に三級アミン塩を反応させることにより得られる単量体の四級化物、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミン等のアリルアミン類の四級化物、(メタ)アリルグリシジルエーテル、イソプレニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル等のエポキシ環に二級アミンを反応させた単量体を公知の四級化剤で四級化した単量体等のアミノ基含有単量体、上記単量体(A)以外の四級化されたアミノ基(カチオン性基)含有単量体等が挙げられる。
なお、上記二級アミンとしては、好ましくは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン;ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン;モルホリン、ピロール等の環状アミン類が挙げられる。公知の四級化剤としては、ハロゲン化アルキルや、ジアルキル硫酸等が挙げられ、上記三級アミン塩としては、具体的にはトリメチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩等が挙げられる。塩としては、塩酸塩や有機酸塩等が挙げられる。
【0064】
上記その他の単量体(D)としては、上述したもの以外に、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらの塩等のスルホン酸基含有単量体;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の水酸基含有単量体;ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシネオペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体;スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;イソブチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0065】
その他の単量体(D)に由来する構造単位(d)とは、その他の単量体(D)が有する不飽和二重結合が単結合に置き換わった構造単位である。本発明の両性重合体が「その他の単量体(D)に由来する構造単位(d)」を含むとは、最終的に得られた重合体が、単量体(D)の不飽和二重結合を単結合に置き換えた構造単位を含むことを意味する。
本発明の両性重合体が、任意成分であるその他の単量体(D)由来の構造単位(d)を含む場合には、全単量体由来の構造単位100質量%(すなわち構造単位(a)、(b)、(c)及び(d)の総量100質量%)に対して、0質量%以上、60質量%以下の割合で含むことが好ましい。より好ましくは、0質量%以上、50質量%以下である。
なお、アミノ基含有単量体由来の構造単位の、全単量体に由来する構造単位の総量に対する質量割合や、アミノ基含有単量体の、全単量体の総量に対する質量割合を算出する際には、対応する未中和アミンの質量割合として計算するものとする。例えば、その他の単量体(D)がビニルアミン塩酸塩の場合には、対応する未中和アミンであるビニルアミンの質量割合(質量%)を計算する。
四級化されたアミノ基を含有する単量体又はそれに由来する構造単位の質量割合(質量%)を計算する場合には、カウンターアニオンの質量は考慮しないで(含めないで)計算するものとする。
上記構造単位(d)が酸基含有単量体由来の構造単位である場合には、全単量体由来の構造単位の総量に対する質量割合(質量%)は、対応する酸換算で計算するものとする。また、酸基含有単量体の、全単量体の総量に対する質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸換算で計算するものとする。
【0066】
<両性重合体のその他の物性>
本発明の両性重合体は、上記構造単位(a)、(b)、(c)及び、必要に応じて構造単位(d)が、上記したような特定の割合で導入されていればよく、各構造単位は、ブロック状、ランダム状のいずれで存在していてもよい。
また、上記両性重合体の重量平均分子量は、適宜設定できるものであり、特に限定されない。具体的には、両性重合体の重量平均分子量は、2,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜100,000、最も好ましくは4,000〜60,000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能が向上する傾向にある。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値であり、後述する実施例において記載される装置及び測定条件により測定することが可能である。
【0067】
本発明の両性重合体は、炭酸カルシウムの分散能が高いものであるが、炭酸カルシウムの分散能が0.85以上であることが好ましい。より好ましくは0.9以上であり、更に好ましくは0.95以上である。
また、本発明の両性重合体は、水酸化鉄の分散能が高いものであるが、水酸化鉄の分散能が0.3以上であることが好ましい。より好ましくは0.35以上であり、更に好ましくは0.4以上である。
なお、炭酸カルシウムの分散能及び水酸化鉄の分散能は、後述する実施例と同様にして測定することができる。
【0068】
〔両性重合体組成物〕
本発明の両性重合体は、他の成分とともに両性重合体組成物を構成してもよい。上記他の成分としては、重合開始剤残渣、残存モノマー、重合時の副生成物、水分等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。上記両性重合体組成物は、本発明の両性重合体を、両性重合体組成物の総量100質量%に対して、1〜100質量%含有することが好ましい。上記両性重合体組成物の好ましい形態の一つは、本発明の両性重合体を40〜60質量%含有し、水を40〜60質量%含有する形態である。
【0069】
〔本発明の両性重合体の製造方法〕
本発明の両性重合体の製造方法としては、特に断りの無い限りは、公知の重合方法又はそれを修飾した方法が採用できる。本発明の両性重合体は、例えば、上記一般式(1)で表されるカチオン性基含有単量体(A)(単量体(A))、ポリアルキレングリコール系単量体(B)(単量体(B))及びカルボキシル基含有単量体(C)(単量体(C))を必須とし、必要に応じてその他の単量体(D)(単量体(D))を含む単量体成分を共重合することにより製造することができる。
具体的な重合方法としては、例えば、水中油型乳化重合法、油中水型乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈澱重合法、溶液重合法、水溶液重合法、塊状重合法等を採用することができる。上記例示の重合方法の中でも、安全性が高く、また、生産コスト(重合コスト)を低減することができる点で、水溶液重合法又は乳化重合法を採用することが好ましい。このような製造方法においては、重合開始剤を用いて単量体成分を共重合することができる。
【0070】
本発明の両性重合体の製造方法において、重合に使用する各単量体の組成比は、全単量体(単量体(A)、(B)、(C)、(D))の総量100質量%に対して、単量体(A)が1質量%以上、98質量%以下、単量体(B)が1質量%以上、98質量%以下、単量体(B)が1質量%以上、98質量%以下である。
好ましくは、単量体(A)が1質量%以上、88質量%以下、単量体(B)が2質量%以上、89質量%以下、単量体(C)が10質量%以上、97質量%以下であり、
より好ましくは、単量体(A)が2質量%以上、77質量%以下、単量体(B)が3質量%以上、78質量%以下、単量体(C)が20質量%以上、95質量%以下であり、
特に好ましくは、単量体(A)が2質量%以上、64質量%以下、単量体(B)が6質量%以上、68質量%以下、単量体(C)が30質量%以上、92質量%以下である。
また、全単量体(単量体(A)、(B)、(C)、(D))の総量100質量%に対して、単量体(D)を0質量%以上、60質量%以下の割合で含んでいてもよい。
【0071】
<重合開始剤>
上記製造方法において、上記重合開始剤としては、公知のものを使用することができる。具体的には、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩が好ましく、過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上を混合して使用されてもよい。
【0072】
<連鎖移動剤>
本発明の両性重合体の製造方法においては、必要に応じ、重合に悪影響を及ぼさない範囲内で、重合体の分子量調整剤として連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物及びその塩等が挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもよく、2種以上を混合して使用されてもよい。
連鎖移動剤を使用すると、製造される重合体が必要以上に高分子量化することを抑制し、低分子量の両性重合体を効率よく製造することができるという利点がある。
【0073】
本発明の両性重合体の製造方法において、亜硫酸及び/又は亜硫酸塩(以下、「亜硫酸(塩)」とも記載する)を連鎖移動剤として使用することは好ましい形態である。その場合、亜硫酸(塩)に加えて重合開始剤を使用する。更に、後述する反応促進剤として、重金属イオンを併用してもよい。
上記亜硫酸(塩)は、亜硫酸若しくは亜硫酸水素又はこれらの塩を意味する。中でも、亜硫酸及び/又は亜硫酸水素が塩である形態が好適である。亜硫酸及び/又は亜硫酸水素が塩である場合、上記した例に加えて、金属原子、アンモニウム又は有機アンモニウムの塩が好適である。
上記金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の一価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の二価の金属原子;アルミニウム、鉄等の三価の金属原子等が好ましい。
また、有機アンモニウム(有機アミン)としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、トリエチルアミン等が好適である。更に、上記亜硫酸塩は、アンモニウム塩であってもよい。
よって、本発明で好ましく使用される亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられ、亜硫酸水素ナトリウムが特に好適である。上記亜硫酸(塩)は、単独で使用されてもよく、2種以上を混合して使用されてもよい。
【0074】
<反応促進剤>
本発明の両性重合体の製造方法においては、開始剤等の使用量を低減する等の目的で反応促進剤を加えてもよい。反応促進剤としては、例えば、重金属イオンが挙げられる。本発明において、重金属イオンとは、比重が4g/cm
3以上の金属を意味する。上記金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe
2+であっても、Fe
3+であってよく、これらが両方含まれていてもよい。
上記重金属イオンは、イオンの形態として含まれるものであれば特に限定されないが、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いることが、取り扱い性に優れるため好適である。その際に用いる重金属化合物は、開始剤に含有することを所望する重金属イオンを含むものであれば良く、用いる開始剤に応じて決定することができる。上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH
4)
2(SO
4)
2・6H
2O)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属化合物等を用いることが好ましい。また、重金属イオンとしてマンガンを用いる場合、塩化マンガン等を好適に用いることができる。これらはいずれも水溶性の化合物であるため、水溶液の形態として用いることができ、取り扱い性に優れたものとなる。なお、上記重金属化合物を溶解してなる溶液の溶媒としては、水に限定されるものではなく、本発明の両性重合体の製造において、重合反応を妨げるものでなく、かつ、重金属化合物を溶解するものであればよい。
【0075】
上記重金属イオンの添加方法は特に限定されないが、単量体の添加終了までに添加することが好ましく、全量を初期仕込することが特に好ましい。また、使用量としては反応液全量に対して100ppm以下であることが好ましく、より好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、特に好ましくは30ppm以下である。100ppmを越えると添加による効果が見られず、また得られた両性重合体の劣化と考えられる着色が大きいため好ましくない。
上記重金属イオンの含有量は、また、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が充分に発現しないおそれがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる重合体の色調の悪化を来たすおそれがある。また、重金属イオンの含有量が多いと、生成物である重合体を水処理剤として用いる場合に、着色汚れの原因となるおそれがある。
なお、上記重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了し、所望する重合体が得られた時点を意味する。例えば、重合反応液中において重合された重合体が酸成分で中和される場合には、中和した後の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。
【0076】
本発明の両性重合体の製造方法において、重合の際には、上述した化合物等に加えて、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物を反応系に添加してもよい。
重合開始剤の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物;塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、イソラク酸、安息香酸等のカルボン酸、そのエステル及びその金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾール等の複素環アミン及びその誘導体等が挙げられる。これらの分解触媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
また、還元性化合物としては、例えば、フェロセン等の有機金属化合物;ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン等の金属イオンを発生できる無機化合物;三フッ化ホウ素エーテル付加物、過マンガン酸カリウム、過塩素酸等の無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸及びその置換体、パラトルエンスルフィン酸等の環状スルフィン酸の同族体等の硫黄含有化合物;オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロピルエステル、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステル等のメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレリアンアルデヒド等のアルデヒド類;アスコルビン酸等が挙げられる。これらの還元性化合物もまた、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、メルカプト化合物等の還元性化合物は、連鎖移動剤として添加してもよい。
【0077】
上記連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせは、特に制限されず、上記各例示の中から適宜選択できる。例えば、連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせとしては、亜硫酸水素ナトリウム/過酸化水素、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム/Fe(イオン)、亜硫酸水素ナトリウム/過酸化水素/Fe(イオン)、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe(イオン)、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/過酸化水素、亜硫酸水素ナトリウム/酸素/Fe(イオン)等の形態が好ましい。より好ましくは、過硫酸ナトリウム/過酸化水素、過硫酸ナトリウム/過酸化水素/Fe(イオン)、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe(イオン)であり、最も好ましくは亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe(イオン)、過硫酸ナトリウム/過酸化水素/Fe(イオン)である。
【0078】
<重合開始剤等の使用量>
重合開始剤の使用量は、単量体の共重合を開始できる量であれば特に制限されないが、全単量体成分(単量体(A)、(B)、(C)及び(D))の総量1モルに対して15g以下であることが好ましい。より好ましくは1〜12gである。
開始剤として、過酸化水素を使用する場合、過酸化水素の添加量は、全単量体成分の総量1モルに対して1.0〜10.0gであることが好ましく、2.0〜8.0gであることがより好ましい。過酸化水素の添加量が1.0g未満であると、得られる共重合体の重合平均分子量が高くなる傾向にある。一方、添加量が10.0gを超えると、添加量の増加に見合うだけの効果が得られなくなり、更に、残存する過酸化水素量が多くなる等の悪影響を及ぼす。
開始剤として、過硫酸塩を使用する場合、過硫酸塩の添加量は、全単量体成分の総量1モルに対して1.0〜10.0gであることが好ましく、2.0〜8.0gであることがより好ましい。過硫酸塩の添加量が上記範囲より少ないと、得られる共重合体の分子量が高くなる傾向がある。一方、添加量が上記範囲より多いと、添加量の増加に見合うだけの効果が得られなくなり、更に、得られる共重合体の純度が低下するなど悪影響を及ぼすことになる。
開始剤として過酸化水素と過硫酸塩とを併用する場合、過酸化水素及び過硫酸塩の添加比率は、過酸化水素に対する過硫酸塩の重量比が0.1〜5.0であることが好ましく、0.2〜2.0であることがより好ましい。過硫酸塩の重量比が0.1未満であると、得られる共重合体の重量平均分子量が高くなる傾向がある。一方、過硫酸塩の重量比が5.0を超えると、過硫酸塩の添加による分子量低下の効果が、添加量の増加に見合うほどには得られなくなり、重合反応系において過硫酸塩が無駄に消費されることになる。
【0079】
過酸化水素の添加方法としては、実質的に連続的に滴下することにより添加する量が、必要所定量の85重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、100重量%、すなわち全量を滴下により添加することが最も好ましい。過酸化水素を連続的に滴下する際、その滴下速度は変えてもよい。
【0080】
過酸化水素の滴下は、後述する好適な反応条件(温度、圧力、pH等)の下で反応を行う場合において、単量体(初期仕込みする単量体を除く)の滴下開始後、遅らせて開始することが好ましい。具体的には、好ましくはカチオン性基含有単量体(A)の滴下開始後1分以上経過後、より好ましくは3分以上経過後、更に好ましくは5分以上経過後、最も好ましくは10分以上経過後に過酸化水素の滴下を開始することである。過酸化水素の滴下開始を遅らせることにより、初期の重合開始をスムーズにし、分子量分布を狭くすることが可能となる。
過酸化水素の滴下開始を遅らせる時間は、単量体の滴下開始後60分以内であることが好ましく、30分以内であることがより好ましい。
過酸化水素の滴下を単量体の滴下と同時に開始することや、単量体の滴下前に予め過酸化水素を仕込むことも可能であるが、予め過酸化水素を仕込む場合は、必要所定量の10%以下であることが好ましい。より好ましくは7%以下、更に好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。
単量体の滴下開始までに必要所定量の10%を超える過酸化水素を添加すると、例えば過硫酸塩を併用する場合には過硫酸塩に対する過酸化水素の濃度の比率が大きくなり、重合が停止するおそれがある。一方、単量体の滴下開始から60分より遅く開始すると、過酸化水素による連鎖移動反応等が起こらなくなるため、重合初期の分子量が高くなる。
【0081】
また、過酸化水素の滴下は、後述する好適な反応条件(温度、圧力、pH等)の下で反応を行う場合において、単量体の滴下終了と同時に終了することが好ましい。また、単量体滴下終了時間よりも10分以上早く終了することがより好ましく、30分以上早く終了することが特に好ましい。なお、単量体の滴下終了時間より遅く終了しても、重合系において特に悪影響を及ぼすものではない。ただ、添加した過酸化水素が重合終了時までに完全には分解しないため、未反応の過酸化水素については添加による効果が得られず無駄となる。また、過酸化水素が多量に残存すると、得られた重合体の熱的安定性に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくない。
【0082】
過硫酸塩の添加方法としては、特に限定はされないが、その分解性等を考慮すると、実質的に連続的に滴下することにより添加する量が必要所定量の50重量%以上であることが好ましい。より好ましくは80重量%以上であり、100重量%すなわち全量を滴下することが最も好ましい。過硫酸塩を連続的に滴下する際、その滴下速度は変えてもよい。
滴下時間も特に限定されないが、後述する好適な反応条件(温度、圧力、pH等)の下で反応を行う場合において、過硫酸塩は比較的分解の早い開始剤であるため、単量体の滴下終了時間まで滴下を続けることが好ましい。また、単量体滴下終了後から30分以内に滴下を終了することがより好ましく、単量体滴下後5分〜20分以内に滴下を終了することが特に好ましい。これにより、製造した重合体における単量体の残量を著しく減じることが出来る。
なお、単量体の滴下終了前に、これら開始剤の滴下を終了しても、重合に特に悪影響を及ぼすものではなく、得られた共重合体中の単量体の残存量に応じて開始剤の滴下終了時間を設定すればよい。
上記過硫酸塩のように比較的分解の早い開始剤について、滴下終了時間についてのみ好ましい範囲を述べたが、滴下開始時間は何ら限定されるものではなく、適宜設定すればよい。例えば、単量体の滴下開始前に開始剤の滴下を開始してもよいし、2種以上の開始剤を併用する場合においては、一つの開始剤の滴下を開始し、一定の時間が経過後又は滴下が終了してから別の開始剤の滴下を開始してもよい。いずれの場合にも、開始剤の分解速度、単量体の反応性に応じて適宜開始剤の滴下開始時間を設定すればよい。
【0083】
重合開始剤を滴下により添加する場合の開始剤溶液の濃度は、特には限定されないが、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。開始剤の濃度が5重量%未満であると、結果的に重合中の単量体濃度が非常に低くなるので、単量体の重合性が非常に悪くなり得られる共重合体中における単量体の残存量が非常に多くなる。また輸送等の効率や生産性も低くなり経済的な面からも好ましくない。逆に60重量%を超えると、安全性や滴下の簡便性の面で問題となる。
【0084】
連鎖移動剤の添加量は、単量体(A)、(B)、(C)及び(D)が良好に重合する量であれば制限されないが、好ましくは単量体(A)、(B)、(C)及び(D)からなる全単量体成分の総量1モルに対して、1〜20g、より好ましくは2〜15gである。1g未満であると、分子量の制御ができないおそれがある。一方、20gを超えると、不純物が多量に生成し、重合体純分が低下するおそれがある。特に、亜硫酸塩を使用する場合には、余剰の亜硫酸塩が反応系中で分解され、亜硫酸ガスが発生するおそれがある。更に、経済的にも不利となるおそれがある。
【0085】
上記開始剤と連鎖移動剤との組み合わせとしては、過硫酸塩と亜硫酸塩とをそれぞれ1種以上用いることが最も好ましい。この場合、過硫酸塩と亜硫酸塩との混合比は、特に制限されないが、過硫酸塩1質量部に対して、亜硫酸塩0.05〜5質量部を用いることが好ましい。亜硫酸塩量の下限は、過硫酸塩1質量部に対して0.1質量部であることがより好ましく、最も好ましくは1質量部である。また、亜硫酸塩量の上限は、過硫酸塩1質量部に対して4質量部であることがより好ましく、最も好ましくは3質量部である。過硫酸塩1質量部に対して亜硫酸塩が0.5質量部未満であると、低分子量化する際に、必要となる開始剤総量が増加するおそれがあり、5質量部を超えると、副反応が増加し、それによる不純物が増加するおそれがある。
【0086】
上記連鎖移動剤、開始剤、及び反応促進剤の総使用量は、単量体(A)、(B)、(C)及び(D)からなる全単量体成分の総量1モルに対して、2〜20gであることが好ましい。このような範囲とすることで、本発明の両性重合体を効率よく生産することができ、また、両性重合体の分子量分布を所望のものとすることができる。より好ましくは、4〜18gであり、更に好ましくは、6〜15gである。
【0087】
<重合溶媒>
本発明の両性重合体の製造方法において、単量体(A)、(B)、(C)及び(D)の共重合は、単量体(A)、(B)、(C)及び(D)を溶解可能な溶媒を使用して行うことが好ましく、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いることが好ましい。用途によっては有機溶剤の混入が厳しく制限されることがあるが、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いることによって、重合に使用される有機溶剤の量を抑制できるため、重合終了後の有機溶剤の留去が容易であるという利点がある。
水と混合して使用されうる溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されても2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上述した観点からは、水の量は、使用する溶媒の総量100質量%に対して80質量%以上であることが好ましく、最も好ましくは100質量%、すなわち、溶媒として水のみを用いることである。有機溶媒を添加する場合は、単量体成分及び得られる共重合体の溶解性の点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上の溶媒を用いることが好ましい。
【0088】
水等の溶媒の使用量としては、全単量体成分の総量100質量%に対して40〜200質量%が好ましい。より好ましくは、45質量%以上であり、更に好ましくは、50質量%以上である。また、より好ましくは、180質量%以下であり、更に好ましくは、150質量%以下である。溶媒の使用量が40質量%未満であると、得られる共重合体の分子量が高くなるおそれがあり、200質量%を超えると、得られる共重合体の濃度が低くなり、溶媒除去が必要となるおそれがある。なお、溶媒は、重合初期に一部又は全量を反応容器内に仕込んでおけばよいが、溶媒の一部を重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよいし、単量体成分や開始剤等を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよい。
【0089】
上記製造方法において、単量体成分、重合開始剤及び連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することができる。また、それぞれ単独で反応容器へ導入してもよく、他の成分や、溶媒等とあらかじめ混合しておいてもよい。
具体的な添加方法としては、反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分とを反応容器内に連続してあるいは段階的に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体成分と重合開始剤の全量を添加する方法;等が挙げられる。このような方法の中でも、得られる共重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、汚れの分散性や再汚染防止能を向上することができることから、重合開始剤と単量体成分とを反応容器に逐次滴下する方法で共重合を行うことが好ましい。このような重合は、回分式でも連続式でも行うことができる。
【0090】
<重合条件>
上記製造方法において、重合温度等の重合条件は、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤等により適宜定められるが、重合温度としては、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、60℃以上であり、特に好ましくは、70℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、110℃以下である。
特に、亜硫酸(塩)を用いる場合には、重合温度は60℃〜95℃が好ましい。より好ましくは70℃〜95℃、更に好ましくは70℃〜90℃である。60℃未満では、亜硫酸(塩)由来の不純物が多量に生成するおそれがある。一方、95℃を越えると、有毒な亜硫酸ガスが放出されるおそれがある。
上記重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応中に経時的に温度変動(昇温又は降温)させてもよい。
【0091】
重合時間は特に制限されないが、好ましくは30〜420分であり、より好ましくは45〜390分であり、更に好ましくは60〜360分であり、最も好ましくは90〜300分である。なお、本発明において「重合時間」とは、特に断らない限り、単量体を添加している時間、すなわち、単量体の添加を開始してから終了するまでの時間を表す。
【0092】
上記重合方法における反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよいが、得られる共重合体の分子量を適切に制御する観点では、常圧下、又は、反応系内を密閉し、加圧下で行うのが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備を必要としない点では、常圧(大気圧)下で行うのが好ましい。
反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
【0093】
上記重合方法における重合中のpHは、特に制限されない。上記連鎖移動剤として、重亜硫酸塩を使用する場合は、酸性条件下で行うことが好ましい。
【0094】
〔本発明の両性重合体及び両性重合体組成物の用途〕
本発明の両性重合体(又は両性重合体組成物)は、凝固剤、凝集剤、印刷インク、接着剤、土壌調整(改質)剤、難燃剤、スキンケア剤、ヘアケア剤、シャンプー・ヘアースプレー・石鹸・化粧品用添加剤、アニオン交換樹脂、繊維・写真用フィルムの染料媒染剤や助剤、製紙における顔料展着剤、紙力増強剤、乳化剤、防腐剤、織物・紙の柔軟剤、潤滑油の添加剤、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、スケール防止剤(スケール抑制剤)、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー、乳化剤等として用いられうる。
【0095】
<水処理剤>
本発明の両性重合体(又は両性重合体組成物)は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いてもよい。
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0096】
<繊維処理剤>
本発明の両性重合体(又は両性重合体組成物)はまた、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明の両性重合体(又は両性重合体組成物)とを含む。
上記繊維処理剤における本発明の両性重合体の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
以下に、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物及び界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
本発明の両性重合体と、染色剤、過酸化物及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明の重合体1重量部に対して、染色剤、過酸化物及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維及びこれらの織物及び混紡品が挙げられる。
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明の重合体と、アルカリ剤及び界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明の重合体と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
【0097】
<無機顔料分散剤>
本発明の両性重合体(又は両性重合体組成物)はまた、無機顔料分散剤に用いることができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸及びその塩、ホスホン酸及びその塩、ポリビニルアルコールを用いてもよい。
上記無機顔料分散剤中における、本発明の両性重合体の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、充分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【実施例】
【0098】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
カチオン性基含有単量体およびイソプレノールのエチレンオキシド付加物は、液体クロマトグラフィーにより定量した。また、重合体の重量平均分子量及び炭酸カルシウム分散能と水酸化鉄分散能は、下記方法に従って測定した。
【0099】
<カチオン性基含有単量体およびイソプレノールのエチレンオキシド付加物の定量方法>
カチオン性基含有単量体およびイソプレノールのエチレンオキシド付加物の定量は、以下の条件の高速クロマトグラフィーで行った。
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C8 DD 4.6mmΦ×250mm 5μm
温度:40.0℃
溶離液:10mMリン酸Na(pH6.8)/アセトニトリル=55/45vol%(体積比)
流速:0.1ml/min
検出器:RI、UV(検出波長210nm)。
【0100】
<カルボキシル基含有単量体等の定量>
装置:東ソー社製HLC8320
検出器:UV(214nm)
カラム:東ソー社製 TSKgel guardcolumnα,α‐M,α‐2500
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min.
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)。
【0101】
<重量平均分子量の測定条件>
装置:東ソー社製HLC8320
検出器:RI
カラム:東ソー社製 TSKgel guardcolumnα,α‐M,α‐2500
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min.
検量線:ジーエルサイエンス株式会社製 POLYETHYLENGLYCOL STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)。
【0102】
<固形分の測定>
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンで、本発明の重合体(本発明の重合体組成物1.0gに水1.0gを加えたもの)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と揮発成分(%)を算出した。
【0103】
<炭酸カルシウム分散能>
グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、水酸化ナトリウム2.4gに純水を加え、600gとした(これをバッファー(1)とする。バッファー(1)60gに塩化カルシウムに水和物0.3268gを加え、さらに純水を加え1000gとした(これをバッファー(2)とする)。測定対象の共重合体0.1質量%水溶液4gにバッファー(2)36gを加え、撹拌し、分散液とした。試験管(IWAKI GLASS製、直径18mm、高さ180mm)に炭酸カルシウム(関東化学製)0.6gを入れたあと、上記の分散液30gを入れて密封した。試験管を振り、炭酸カルシウムを均一に分散させた。その後、試験管を20時間静置したのちに、上澄みを5cc取り、UV分光器(波長380nm)で吸光度を測定した。この値が大きいほど炭酸カルシウム分散能が高いことを示す。
【0104】
<水酸化鉄分散能>
グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、水酸化ナトリウム2.4gに純水を加え、600gとした(これをバッファー(1)とする。バッファー(1)60gに塩化カルシウムに水和物0.3268gを加え、さらに純水を加え1000gとした(これをバッファー(2)とする)。測定対象の共重合体0.1質量%水溶液4gにバッファー(2)36gを加え、撹拌し、分散液とした。試験管(IWAKI GLASS製、直径18mm、高さ180mm)に酸化水酸化鉄(III)(関東化学製)0.3gを入れたあと、上記の分散液30gを入れて密封した。試験管を振り、水酸化鉄を均一に分散させた。その後、試験管を20時間静置したのちに、上澄みを5cc取り、UV分光器(波長380nm)で吸光度を測定した。この値が大きいほど水酸化鉄分散能が高いことを示す。
【0105】
<単量体合成例1>
1L4つ口フラスコを用いて、IPN10を400g、エピクロルヒドリン351.4g及び48質量%水酸化ナトリウム水溶液(以下、「48%NaOH」とも称する。)94.9gを仕込み、50℃に保ちながら6時間攪拌し、反応させた。反応後、生成する塩を除去した後、残った有機層からエピクロルヒドリンと水とを除去して中間体(IPEG10)を324.9g、IPN10を64.1gを含む反応液を451.2gを得た。次に、1L4つ口フラスコを用いて、IPEG10を324.9g含む反応液451.2gと30質量%トリメチルアミン塩酸塩水溶液268.7gを仕込み、50℃に保ちながら8時間反応させ、IPN10のカチオン化物(以下、IPEC10とも称する。)を336.4g、IPN10を63.8g含む反応液(以下、単量体組成物(1)と称す。)を719.9g得た。
【0106】
<単量体合成例2>
上記合成例1と同様にして合成したIPEG10を100.0gとジエタノールアミン17.4gを仕込み、80℃に保ちながら8時間攪拌し、単量体組成物(2)を117.4g得た。液体クロマトグラフィーによる分析の結果、IPN10のアミノ化物(すなわち一般式(1)においてR
3中の窒素原子に結合する有機基二つが−CH
2CH
2OH基であるもの、以下、IPEA10−DEAとも称する。)が102.3g、IPN10が4.3g含まれていた。
【0107】
<両性重合体の製造>
<実施例1>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水40.0g、および、モール塩0.0018gを仕込み、攪拌しながら、70℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、70℃に保持された重合反応系中に、80%アクリル酸水溶液(以下、80%AAと称す。)45.0g、単量体組成物(1)57.8g、60%IPN50水溶液を36.5g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSと称す。)26.0g、35%亜硫酸水素ナトリウム(以下、35%SBSと称す。)23.9gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。
各溶液の滴下開始は同時とし、各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、単量体組成物(1)については120分間、60%IPN50については120分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては180分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を70℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷してから、48%水酸化ナトリウム(以下、48%NaOHと略す。)29.2gを加えて中和した。このようにして、共重合体(1)を含む固形分濃度46%の両性重合体組成物(1)を得た。重量平均分子量は50000であった。
【0108】
<実施例2>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水45.0g、および、モール塩0.0012gを仕込み、攪拌しながら、70℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、70℃に保持された重合反応系中に、80%AAを40.5g、単量体組成物(2)27.9g、60%IPN50水溶液を38.8g、15%NaPSを23.3g、35%SBSを5.0g、純水9.9gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。
各溶液の滴下開始は同時とし、各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、単量体組成物(2)については150分間、60%IPN50については150分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては180分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を70℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷してから、48%水酸化ナトリウム(以下、48%NaOHと略す。)26.3gを加えて中和した。このようにして、共重合体(2)を含む固形分濃度45%の両性重合体組成物(2)を得た。重量平均分子量は50000であった。
【0109】
<比較例1>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水50.0g、および、モール塩0.0018gを仕込み、攪拌しながら、70℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、70℃に保持された重合反応系中に、80%AAを45.0g、単量体組成物(1)57.8g、80%IPN10水溶液を27.3g、15%NaPSを27.7g、35%SBSを5.1g、純水11.6gをそれぞれ別々のノズルより滴下した。
各溶液の滴下開始は同時とし、各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、単量体組成物(1)については150分間、80%IPN10については150分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては180分間、および、純水については180分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を70℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷してから、48%NaOHを29.2g加えて中和した。このようにして、比較共重合体(1)を含む固形分濃度46%の比較両性重合体組成物(1)を得た。重量平均分子量は46000であった。
【0110】
<実施例3>
重合体組成物(1)〜(2)、及び比較重合体組成物(1)〜(2)について、上記方法に従って炭酸カルシウム分散能と水酸化鉄分散能について評価を行なった。結果を表1にまとめた。
【0111】
【表1】
【0112】
表1から明らかなように、本発明における両性重合体は、従来の比較両性重合体組成物に比して、有意に優れた炭酸カルシウム分散能と水酸化鉄分散能を有している。以上により、本発明の両性重合体は、水処理剤用添加剤として、好ましく使用できることが明らかとなった。