(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077906
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】スパッタリング装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20170130BHJP
C23C 14/56 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
C23C14/34 V
C23C14/34 C
C23C14/34 J
C23C14/56 J
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-68067(P2013-68067)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-189866(P2014-189866A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年3月1日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24年度経済産業省「同時複数組成蒸着膜製造技術による安全・小型・低コスト水素検知センサおよびシステムの製品化」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】391064005
【氏名又は名称】株式会社アツミテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】内山 直樹
【審査官】
安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−508927(JP,A)
【文献】
特開平08−319559(JP,A)
【文献】
特開平09−213634(JP,A)
【文献】
特開昭61−281865(JP,A)
【文献】
特表2003−532794(JP,A)
【文献】
特開2009−287069(JP,A)
【文献】
特開2011−149086(JP,A)
【文献】
特開2005−256112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/203,21/363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空引きされて密閉された真空室と、
該真空室内に並設され且つ固定され、成膜されるべき材料からなる複数のターゲットと、
該複数のターゲットのうち、成膜するターゲットのみを選択的に前記真空室内にさらすための遮蔽体と、
前記ターゲットから飛び出した微粒子が成膜される基板を保持する基板保持ユニットと、
該基板保持ユニットを固定保持して前記真空室内で移動させる第1の移動ユニットと、
前記ターゲットと前記基板との間に配されたマスクと、
該マスクを前記真空室内で移動させる第2の移動ユニットと、
前記マスクを貫通するパターン化された貫通孔からなる複数の貫通孔ユニットと、を備え、
前記第1の移動ユニットは一対の第1のローラ間に架け渡されたベルトを有するとともに、前記複数のターゲットの何れか1つ正面に前記基板を配し、
前記マスクは一対の第2のローラ間に架け渡された長尺のシート状に形成され、
前記第1のローラ及び第2のローラはそれぞれ第1のモータ及び第2のモータの出力軸に連結され、
前記複数の貫通孔ユニットは前記ターゲットごとに対応してそれぞれ形成され、
前記貫通孔ユニットは少なくとも一つの前記ターゲットに対して複数形成されていることを特徴とするスパッタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパッタリング装置、特に水素センサを製造するためのスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を吸蔵したときの調光特性を有する合金を利用した水素センサが知られている(例えば特許文献1参照)。水素センサは、基板上にMg-Ni等の合金からなる薄膜を複数形成して製造される。このような薄膜形成は、スパッタリング装置を用いて行われる(例えば特許文献2参照)。スパッタリング装置では、真空中に不活性ガス(Arガス)を導入し、合金材料からなるターゲットをプラズマ放電で加熱する。このターゲットに対してイオン化されたArが衝突し、合金材料の微粒子が基板に飛びだして成膜される。ArガスとともにN
2ガスやO
2ガスを入れることで反応性スパッタリングを行うこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−219841号公報
【特許文献2】特開平5−263228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、同一基板上に複数の異なる材料を成膜するためには、これら材料ごとに成膜する領域を予め規制するため、基板とターゲットとの間にマスクを配する必要がある。マスクには微粒子となった合金材料が通過できるパターン化された貫通孔が形成されていて、微粒子はこの貫通孔を通って基板の所定領域に成膜される。基板の別の領域に成膜する場合は、一旦装置から基板を取り出し、別パターンの貫通孔を有するマスクを配して再び装置内に投入する。このように一旦装置から基板を取り出して新たにマスクを配することは作業効率の悪化を招いている。また酸化されやすい合金材料を成膜している場合は装置から取り出すことで大気中にさらされることになり、薄膜特性が変化してしまうおそれもある。装置から基板を取り出す際に大気中にさらされないようにするため、さらに別の真空引きされた真空室を設けたり、別のスパッタリング装置を隣接させたりして対応することも考えられるが、装置が大規模になりスペース的、コスト的にも過大となってしまう。
【0005】
特許文献2では、マスクが固定されているため、基板に対して領域ごとに成膜するものではなく、膜厚制御のために基板とターゲットとを移動させている。ターゲットを移動させるのは非常に装置が大がかりとなるので、上述したスペース的、コスト的な問題点が残る。
【0006】
本発明は、上述した従来技術を考慮したものであり、基板の所定領域ごとに別の合金材料を成膜する場合でも基板を装置外に取り出して新たなマスクを配する動作を不要とし、スペース的、コスト的にも優れたスパッタリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明では、真空引きされて密閉された真空室と、該真空室内に固定され、成膜されるべき材料からなる複数のターゲットと、該複数のターゲットのうち、成膜するターゲットのみを選択的に前記真空室内にさらすための遮蔽体と、前記ターゲットから飛び出した微粒子が成膜される基板を保持する基板保持ユニットと、該基板保持ユニットを固定保持して前記真空室内で移動させる第1の移動ユニットと、前記ターゲットと前記基板との間に配されたマスクと、該マスクを前記真空室内で移動させる第2の移動ユニットと、前記マスクを貫通するパターン化された貫通孔からなる複数の貫通孔ユニットと
、を備え、前記第1の移動ユニットは一対の第1のローラ間に架け渡されたベルトを有するとともに、前記複数のターゲットの何れか1つ正面に前記基板を配し、前記マスクは一対の第2のローラ間に架け渡された長尺のシート状に形成され、前記第1のローラ及び第2のローラはそれぞれ第1のモータ及び第2のモータの出力軸に連結され、前記複数の貫通孔ユニットは前記ターゲットごとに対応してそれぞれ形成され、前記貫通孔ユニットは少なくとも一つの前記ターゲットに対して複数形成されていることを特徴とす
るスパッタリング装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板の所定領域ごとに別の合金材料を成膜する場合でも基板を装置外に取り出して新たなマスクを配する動作を不要とし、スペース的、コスト的にも優れたスパッタリング装置を提供することができる。すなわち、任意のターゲットを用いて成膜し、次に異なるパターンで別のターゲットを用いて成膜する場合に、第1の移動ユニットを用いて基板を該当するターゲットの位置まで移動させ、必要に応じて第2の移動ユニットを用いてマスクを移動させて所望の貫通孔を対応させることができる。したがって、装置内で異なるパターンでの複数の合金材料の成膜を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るスパッタリング装置の概略図であり、
図2のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すように、本発明に係るスパッタリング装置1は、真空室2となる略密閉された空間を有している。この真空室2は大きく分けて三つの領域からなり、それぞれターゲット部3、スパッタ部4、基板部5からなっている。各領域3〜5は互いに連通しているが、連通が許容されていれば仕切り壁6によってある程度仕切られていてもよい。この真空室2は真空引きにより真空状態とされる。真空室2の一部として形成されているターゲット部3には、複数(図では4個)のターゲット8が固定されている。このターゲット8は基板10に成膜されるべき材料からなっていて、具体的には金属(合金)の塊である。図の例では、ターゲット8a〜8dとして、それぞれ
WO3、Mg−Ti、Mg−Ni、
Pdとする。
【0012】
これらのターゲット8は、例えばシャッター等の遮蔽体9(9a〜9d)がそれぞれ対応して設けられている。すなわち、成膜するターゲット以外のターゲットは遮蔽体9によって覆われ、これによって成膜すべきターゲット8のみが選択的に真空室2内に露出する。これらのターゲット8が成膜される基板10は基板部5に配された基板保持ユニット11に保持される。基板保持ユニット11は基板10を把持する把持部11aと基台部11bとからなり、把持部11aと基台部11bとは長尺の連結部11cで連結されている。この基板保持ユニット11のうち、基台部11bが基板部5内に収まっている。そして、連結部11cはスパッタ部4に向かって延び、把持部11aはスパッタ部4内に収まっている。したがって、把持部11aによって把持された基板10はスパッタ部4内に配されている。
【0013】
基板保持ユニット11は第1の移動ユニット14に固定保持されて真空室2内を移動する。具体的には第1の移動ユニット14は基板部5内に配された一対の第1のローラ12と、このローラ12間に架け渡されたベルト13とを有している。一方の第1のローラ12には第1のモータ15の出力軸が連結されている。したがって、第1のモータ15の駆動により出力軸を介して一方の第1のローラ12は回転する。これにより、従動する他方の第1のローラ12も回転し、ベルト13の移動とともに基板保持ユニット11は真空室2内を移動する。すなわち、基板保持ユニット11に保持された基板10は、ベルト13の移動方向に沿ってスパッタ部4内を移動する。
【0014】
ターゲット8と基板10との間であってスパッタ部4内には、マスク16が配されている。このマスク16には貫通孔17が形成され、この貫通孔17はパターン化されて形成されている。パターン化とはターゲット8側から視て所望のパターン形状に形成されていることをいう。貫通孔17は一又は複数をひとまとまりの単位として貫通孔ユニット17a〜17fとして形成される。この例では、合計6ユニットの貫通孔ユニット17a〜17fが形成されている。この例では、貫通孔ユニット17a〜17fは貫通孔17を3つ縦に並べたものとして表している。マスク16は第2の移動ユニット19によって真空室2内を移動する。第2の移動ユニット19は一対の第2のローラ18を有している。マスク16は長尺のシート状に形成されていて、一対の第2のローラ18間に架け渡されている。一方の第2のローラ
18には第2のモータ20の出力軸が連結されている。したがって、第2のモータ20の駆動により出力軸を介して一方の第2のローラ18は回転する。これにより、従動する他方の第2のモータ18も回転し、マスク16は真空室2(スパッタ部4)内を移動する。
【0015】
貫通孔17はそれぞれパターン化された複数の貫通孔ユニット17a〜17fとして形成され、この貫通孔ユニット17a〜17fはターゲット8ごとに対応してそれぞれ設けられている。この例では、
図2を参照すれば明らかなように、ターゲット8aに対応して貫通孔ユニット17aが、ターゲット8bに対応して貫通孔ユニット17bが、ターゲット8cに対応して貫通孔ユニット17cが、ターゲット8dに対応して貫通孔ユニット17d〜17fが形成されている。すなわち、ターゲット8dに対してのみ複数の貫通孔ユニット17d〜17fが対応している。
【0016】
以上のような構造を有するスパッタリング装置1を用いて実際に基板10に成膜する場合、以下のような工程を経る。
まず基板
10を基板保持ユニット11の把持部11aにセットし、真空室2内を真空引きして真空状態にする。そして真空室2内に不活性ガス(Arガス)を導入する。必要に応じてN
2ガスやO
2ガスも導入する。そして第1のモータ15を駆動させ、ベルト13とともに基板保持ユニット11を移動させる。そしてまずは
図1に示すように、基板10をターゲット8cである
Mg−Niの正面に配する。このとき基板10とターゲット8cとの間にマスク16に形成された貫通孔ユニット17cが位置するように第2のモータ20を用いて適宜マスク16の位置が調整される。
【0017】
遮蔽体9cのみを開き、この状態でターゲット8cをプラズマ放電で加熱すると、ターゲット8cに対してイオン化されたArが衝突し、Mg−Niの微粒子が基板10に飛びだして貫通孔ユニット17cを通って貫通孔ユニット17cが示すパターン通りに成膜される。以下、ターゲット8が変わっても同様の原理で成膜される。成膜されたMg−Niは第1層21として基板10上に形成される。
【0018】
次に
図3に示すように、基板10をターゲット8dであるPdの正面に配する。この例では、ターゲット8dと基板10との間に配されたマスク16の貫通孔ユニット17dのパターン形状は貫通孔ユニット17cのパターン形状と同一である。遮蔽体9dのみを開き、ターゲット8dを基板10に対して成膜する。これにより、第1層21の真上に第2層22としてPdの層が形成される。このような同一パターンで成膜する場合、先に成膜したターゲット8cに対する基板10の位置と、今回のターゲット8dに対する基板10の位置を揃えることにより、第1層21に重ねて第2層22を成膜することができる。
【0019】
次に
図4に示すように、遮蔽体9bのみを開き、基板10をターゲット8bであるMg−Tiの正面に配する。マスク16は、貫通孔ユニット17bが介在されるように第2のモータ20を駆動させて調整される。そして成膜を行うと、基板10上に第3層23としてMg−Tiの層が形成される。
図4の例では、貫通孔ユニット
17bは貫通孔ユニット17cとは異なるパターンであり、基板10に対して成膜する位置も少しずらしている。したがって、第3層23は基板10に直接成膜されている。
【0020】
次に
図5に示すように、遮蔽体9dのみを開き、基板10を再びターゲット8dであるPdの正面に配する。そしてマスク16も移動させ、この例では貫通孔ユニット17bと同一パターンの貫通孔ユニット17eを介在させる。このとき、先に成膜したターゲット8bに対する基板10の位置と、今回のターゲット8dに対する基板10の位置は揃えられる。この状態で成膜することで、第3層23の真上に重ねて第4層24としてPdの層が形成される。
【0021】
次に
図6に示すように、遮蔽体9aのみを開き、基板10をターゲット8aである
WO3の正面に配する。マスク16は、貫通孔ユニット17aが介在されるように第2のモータ20を駆動させて調整される。
図6の例では、貫通孔ユニット17aは貫通孔ユニット
17bや
17cとは異なるパターンであり、基板10に対して成膜する位置もターゲット8bや8cの位置とは少しずらされている。この状態で成膜を行うと、基板10に直接第5層25として
WO3の層が形成される。なおこの後、第5層25の直上にPd層を設けたい場合には貫通孔ユニット17fを用いてPdを成膜すればよい。
【0022】
これにより、ターゲット8の変更ごとに基板10をスパッタリング装置1から取り出さずにマスク16の位置も変更しながらスパッタリング操作を行うことができる。すなわち、複数のターゲット8を成膜する場合であって、マスクのパターンを変更する必要がある場合でも、第1の移動ユニット14を用いて基板10を該当するターゲット8の位置まで移動させ、必要に応じて第2の移動ユニット19を用いてマスク16を移動させて所望の貫通孔17を対応させることができる。したがって、装置1内で異なるパターンでの複数の合金材料の成膜を行うことができ、例えば酸化されやすいターゲットを用いた場合に成膜の品質を向上させることができる。すなわち、基板10の所定領域ごとに別の合金材料を成膜する場合でも基板10を装置1外に取り出して新たなマスク16を配する動作が不要となる。なお、図示したように、Pdのように複数の貫通孔ユニット17d〜17fを使用することが予めわかっている場合には、このターゲット8dに対応する貫通孔ユニット17d〜17fとして複数用意しておくことで、貫通孔ユニットごとに一つのターゲット8を設ける必要がなくなるので、スペース的、コスト的にも有利になる。
【0023】
また、水素センサでは、上述したようなMg−Niの合金等が水素を吸蔵するための合金として用いられている。このとき、触媒層となるPd層をさらに介在させることで、水素吸蔵特性が向上することが知られている。このため、上記のように例えばPdのターゲット8dについてはMg−Niのターゲット8cと同一のパターンとなっている貫通孔ユニット17c、17dを用いることで、第2層22(触媒層)で第1層21(水素吸蔵層)を覆うことができ、上記の装置1は特に水素センサを製造するために適している。また、半導体におけるスパッタリングは隣り合うパターンが重ならないようにする必要があるが、水素センサの場合は隣り合う合金層同士が重なっても水素が吸蔵されたときの調光度合いを目視できればいいので、縁の部分が重なっても特に影響はない。したがって貫通孔ユニット17と基板10との距離や、ターゲット8とマスク16との距離等、成膜された隣り合う層が重ならないような機構を設ける必要がなく、簡略化された装置でよい。この点でも上記装置1は水素センサを製造するに適している。
【符号の説明】
【0024】
1:スパッタリング装置、2:真空室、3:ターゲット部、4:スパッタ部、5:基板部、6:仕切り壁、7:ターゲット、8:ターゲット、9:遮蔽体、10:基板、11:基板保持ユニット、12:第1のローラ、13:ベルト、14:第1の移動ユニット、15:第1のモータ、16:マスク、17:貫通孔、18:第2のローラ、19:第2の移動ユニット、20:第2のモータ、21:第1層、22:第2層、23:第3層、24:第4層、25:第5層