特許第6077917号(P6077917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立GEニュークリア・エナジー株式会社の特許一覧

特許6077917使用済燃料貯蔵キャスクおよびその転倒防止方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077917
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】使用済燃料貯蔵キャスクおよびその転倒防止方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/32 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   G21C19/32 R
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-81963(P2013-81963)
(22)【出願日】2013年4月10日
(65)【公開番号】特開2014-202729(P2014-202729A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友喜
(72)【発明者】
【氏名】福士 直己
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀範
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−223696(JP,A)
【文献】 実開昭59−193195(JP,U)
【文献】 特開昭51−144899(JP,A)
【文献】 特開平02−197490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/32
G21C 19/06−19/07
G21F 5/00−5/14
G21F 9/36
B65D 88/00−90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料集合体を輸送するための容器として用いられる使用済燃料貯蔵キャスクであって、気体を封入し、排出するようにされた浮力発生装置を備え、前記浮力発生装置は使用済燃料貯蔵キャスクを燃料貯蔵プール内に設置したときに、水中で発生する浮力により、水平地震力によって発生する前記使用済燃料貯蔵キャスクの転倒モーメントよりも大きな抵抗モーメントが発生することを特徴とする使用済燃料貯蔵キャスク。
【請求項2】
請求項1に記載の使用済燃料貯蔵キャスクであって、
使用済燃料貯蔵キャスクに対する前記浮力発生装置の取り付け位置は、使用済燃料貯蔵キャスクに燃料集合体を装荷するときの燃料集合体移動領域を避けて設定されていることを特徴とする使用済燃料貯蔵キャスク。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の使用済燃料貯蔵キャスクであって、
前記浮力発生装置は使用済燃料貯蔵キャスクの上部側面にその一端が接続され、かつ前記浮力発生装置の他端側に気体を封入し、排出するための弁機構を備えていることを特徴とする使用済燃料貯蔵キャスク。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の使用済燃料貯蔵キャスクであって、
前記浮力発生装置は、気体封入により膨張し、気体排出により萎むようにされたことを特徴とする使用済燃料貯蔵キャスク。
【請求項5】
燃料集合体を輸送するための容器として用いられる使用済燃料貯蔵キャスクの転倒防止方法であって、
気体を封入し、排出するようにされた浮力発生装置を使用済燃料貯蔵キャスクに備え、前記使用済燃料貯蔵キャスクを燃料貯蔵プール内に設置した状態においては、前記浮力発生装置に気体を封入し使用済燃料貯蔵キャスクに水中で浮力を発生させるとともに、水中で発生する浮力により、水平地震力によって発生する前記使用済燃料貯蔵キャスクの転倒モーメントよりも大きな抵抗モーメントが発生することを特徴とする使用済燃料貯蔵キャスクの転倒防止方法。
【請求項6】
請求項5に記載の使用済燃料貯蔵キャスクの転倒防止方法であって、
前記燃料貯蔵プール外で使用済燃料貯蔵キャスクに前記浮力発生装置を取り付け、前記燃料貯蔵プール内で前記浮力発生装置に気体を封入し使用済燃料貯蔵キャスクに水中で浮力を発生させることを特徴とする使用済燃料貯蔵キャスクの転倒防止方法。
【請求項7】
請求項6に記載の使用済燃料貯蔵キャスクの転倒防止方法であって、
前記燃料貯蔵プール内で前記使用済燃料貯蔵キャスクに燃料集合体を装荷した後、前記燃料貯蔵プール内で前記浮力発生装置から気体を排出し、前記燃料貯蔵プール外で使用済燃料貯蔵キャスクから前記浮力発生装置を取り外すことを特徴とする使用済燃料貯蔵キャスクの転倒防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所の燃料貯蔵プールに保管される使用済燃料貯蔵キャスクに係り、特に地震などの場合に転倒を防止できる使用済燃料貯蔵キャスクおよびその転倒防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
東北地方太平洋沖地震以降、原子力発電所の耐震性向上が求められている。特に、燃料貯蔵プールは原子炉建屋上階に位置し、多数の使用済燃料を保有することから、高い耐震性が要求されている。
【0003】
燃料貯蔵プール内では、使用済燃料貯蔵ラック内に保存されている燃料集合体(使用済燃料及び新燃料)を、燃料交換機を用いて使用済燃料貯蔵キャスクに移動させ、その後燃料集合体を収納した使用済燃料貯蔵キャスクを他の施設に移動させる作業が実施されている。
【0004】
然るに、使用済燃料貯蔵ラックは、基礎ボルトにより燃料貯蔵プール底面に固定されているが、使用済燃料貯蔵キャスクについては、使用済燃料貯蔵キャスク自体を運搬しているため燃料貯蔵プール底面に固定されていない。そのため、地震による使用済燃料貯蔵キャスクの転倒を防止する方法が必要とされている。
【0005】
これに対し使用済燃料貯蔵キャスクの転倒を防止する方法として特許文献1には、「両端に固定手段を有する支持アームを介して、架台上に起立させた金属キャスクを長期間に渡って支持する金属キャスクの支持方法」が記載されている。つまり燃料貯蔵プール内に収納保管した使用済燃料貯蔵キャスク自身を、燃料貯蔵プール内に支持部材により固定支持し、運搬の都度固定支持を解除することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−11769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、使用済燃料貯蔵キャスクに燃料集合体を収納した後、天井クレーンで燃料貯蔵プールから外に使用済燃料貯蔵キャスクを搬出する。そのため、前述の従来技術では、燃料貯蔵プール内で支持部材を使用済燃料貯蔵キャスクに取り付ける作業、及び支持部材を取り外す作業が発生する。この方法によれば、燃料貯蔵プールに使用済燃料貯蔵キャスクを収納した時の耐震性を確保できるが、実際問題としては、燃料貯蔵プール内で使用済燃料貯蔵キャスクを固定し、あるいは固定解除する作業を簡便に実現することには困難が伴う。
【0008】
以上のことから本発明は、燃料貯蔵プール内に置かれた使用済燃料貯蔵キャスクに発生する転倒モーメントを低減させることで使用済燃料貯蔵キャスクの転倒を防止する装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明においては、燃料集合体を輸送するための容器として用いられる使用済燃料貯蔵キャスクであって、気体を封入し、排出するようにされた浮力発生装置を備え、浮力発生装置は使用済燃料貯蔵キャスクを燃料貯蔵プール内に設置したときに使用済燃料貯蔵キャスクに水中で浮力を発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
使用済燃料貯蔵キャスクに対して上向きの力を発生させることで、地震時に使用済燃料貯蔵設備に加わる転倒モーメントに対抗するモーメントを発生させ、使用済燃料貯蔵キャスクの転倒の可能性を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の使用済燃料貯蔵キャスクの転倒防止方法および装置を示す図。
図2】使用済燃料貯蔵キャスクに加わるモーメントのイメージ図。
図3】回復力と傾き角度の関係を示した図。
図4】使用済燃料貯蔵キャスクの上面図。
図5】浮力発生装置の上面図。
図6(a)】図7の各手順において使用される機器と作業内容を示す図。
図6(b)】図7の各手順において使用される機器と作業内容を示す図。
図6(c)】図7の各手順において使用される機器と作業内容を示す図。
図6(d)】図7の各手順において使用される機器と作業内容を示す図。
図7】燃料貯蔵プールに収納し、燃料を装荷し、搬出に至るまでの手順を示す図。
図8】実施例2の使用済燃料貯蔵キャスクの側面図。
図9】実施例2の図8のA−A断面を示す図。
図10】実施例2の使用済燃料貯蔵キャスクの上面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図を用いて説明する。
【0013】
なお本発明においては使用済燃料貯蔵キャスクを燃料貯蔵プール内に固定することで耐震性を向上させるのではなく、逆に使用済燃料貯蔵キャスクに浮力を与えることで転倒させない方向で対策するものである。
【実施例1】
【0014】
図1に本発明による使用済燃料貯蔵キャスクの転倒を防止する方法および装置の実施例1を示す。図1において、燃料貯蔵プール1はプール水2を保持し、プール底面3に使用済燃料貯蔵キャスク4が設置されている。使用済燃料貯蔵キャスク4は、底面を有する円筒状の容器構造のものである。その内部には格子が切ってあり、数十本の燃料集合体10を高さ方向に収納することができる。その大きさは例えば高さ5m、直径3m程度のものである。一例ではプールの深さは、使用済燃料貯蔵キャスク4の高さに比して十分な深さの20m程度とされる。
【0015】
使用済燃料貯蔵キャスク4の上部には、複数のワイヤ固定部5が備え付けられており、ワイヤ固定部5にワイヤ6が固定されている。本発明の使用済燃料貯蔵キャスク4においては、転倒防止のために、ワイヤ6の上端に浮力発生装置7が設置されている。図1では浮力発生装置7を使用済燃料貯蔵キャスク4の上部2か所に設置した例を示している。
【0016】
浮力発生装置7は、鉛直方向に長い形状をしており、中は気体が封入できるよう空洞になっている。浮力発生装置7の頭頂部には弁機構8が設置されており、ここから内部の空気が出し入れされる。後述するが、燃料貯蔵プール1に使用済燃料貯蔵キャスク4を入れる前の段階において、使用済燃料貯蔵キャスク4上部のワイヤ固定部5にワイヤ6を固定して萎ませた状態の浮力発生装置7を取り付ける。浮力発生装置7を取り付けた使用済燃料貯蔵キャスク4を燃料貯蔵プール1に設置した後、浮力発生装置7頭頂部の弁機構8から気体を封入して膨らませる。なお燃料貯蔵プール1から使用済燃料貯蔵キャスク4を取り出す前の段階では、浮力発生装置7頭頂部の弁機構8から気体を排出して浮力発生装置7を萎ませた状態にしておく。
【0017】
このように使用済燃料貯蔵キャスク4は、水中では膨張させた浮力発生装置7を取り付けた状態とされている。なお浮力発生装置7の1個当たりの体積は、使用済燃料貯蔵キャスク4が排斥した水の重量と同程度とされるのがよい。これにより、燃料貯蔵プール1内の使用済燃料貯蔵キャスクに対して常に上向きの力が発生する。このため、地震時に使用済燃料貯蔵キャスク4に対して転倒モーメントが発生した際、浮力発生装置7による上向きの力から転倒モーメントに対抗するモーメントが発生し、使用済燃料貯蔵キャスク4の転倒を防ぐことが可能となる。
【0018】
次に、使用済燃料貯蔵キャスク4に対する転倒モーメントと、浮力発生装置7による対抗モーメントの関係について説明する。図2には、水平地震力によって発生する転倒モーメントMが使用済燃料貯蔵キャスク4に加わる際のイメージを示す。この図では、使用済燃料貯蔵キャスク4が地震により角度θ傾いた状態を示しており、使用済燃料貯蔵キャスク4の点P1のみでプール底面3に接している状態を示している。このときに使用済燃料貯蔵キャスク4の重心位置P2は、点P1の鉛直方向から距離L0の位置にある。また浮力発生装置7Aを使用済燃料貯蔵キャスク4に固定するためのワイヤ固定部5Aの位置P3は、点P1の鉛直方向から距離L1の位置にある。さらに浮力発生装置7Bを使用済燃料貯蔵キャスク4に固定するためのワイヤ固定部5Bの位置P4は、点P1の鉛直方向から距離L2の位置にある。
【0019】
係る図2の状態において、使用済燃料貯蔵キャスク4のワイヤ固定部5A、5Bには、それぞれ浮力発生装置7A、7Bによって上向きの力F及びFが生じる。F及びFが作用する点P3,P4と、使用済燃料貯蔵キャスク4がプール底面3と接している点P1(以下、支点)との距離がそれぞれL及びLであり、使用済燃料貯蔵キャスク4の重心P2と支点P1の間の距離がLである。このとき使用済燃料貯蔵キャスク4に働く転倒モーメントMは、次の(1)式で表される。ただし、Wは使用済燃料貯蔵キャスク4の重量を示す。
[数1]
M=M−L−L+LW (1)
この式によれば、使用済燃料貯蔵キャスク4のプール底面3からの傾きθが大きくなると、L及びLが大きくなり、水平地震力によって発生する転倒モーメントMに対抗するモーメントL及びLが大きくなるため、使用済燃料貯蔵キャスク4の転倒を防止する効果が得られる。
【0020】
図3は、回復力と傾き角度の関係を示した図である。この図3において横軸はプール底面3に対する使用済燃料貯蔵キャスク4の傾き角度θであり、縦軸は使用済燃料貯蔵キャスク4に働く回転モーメントの和である。縦軸の値がゼロであるラインは、転倒モーメントMと抵抗モーメント(モーメントL及びL)が等しい値になることを表しており、このラインの上部が転倒モーメントM>抵抗モーメントの領域であり、ラインの下部が転倒モーメントM<抵抗モーメントの領域である。
【0021】
この特性によれば、傾きの当初(角度がゼロからθ1の範囲)は転倒モーメントM>抵抗モーメントの領域にあり転倒方向であるが、以後最大安定傾斜角度θmまでの範囲では転倒モーメントM<抵抗モーメントの領域に入り、転倒を阻止する力が上回ることになる。なお最大安定傾斜角度θm以上になると、転倒モーメントMが抵抗モーメントを上回り、以後回復することができない。
【0022】
試算によれば、θ1は10度程度、抵抗モーメントが最も大きく作用する角度θ2は40度程度、最大安定傾斜角度θmは70度程度である。従って、地震の規模にもよるが傾斜角度が70度を超す規模のものでなければ、回復可能であることが分かる。
【0023】
図4に使用済燃料貯蔵キャスク4の上面図を示す。使用済燃料貯蔵キャスク4をその上部からみると、燃料集合体10を収納するための格子11が形成されている。使用済燃料貯蔵キャスク4に形成された格子11内に燃料集合体10を収納するためには、燃料集合体10をクレーンなどで吊り下げ、図4の矢印Yに沿って移動させ、所定の格子の位置吊り下ろすことになる。このため、図4の領域Y2は燃料集合体の移動経路にあたる。
【0024】
このため、使用済燃料貯蔵キャスク4に浮力発生装置7を取り付けるときには、以下の点を考慮する必要がある。まず、ワイヤ固定部5A、5Bは、キャスク4の側面に位置させる。そのうえで、円筒形の浮力発生装置7は、燃料集合体10の移動経路の領域Y2外に位置させる。これにより、燃料交換器を用いて燃料集合体10を使用済燃料貯蔵キャスク4内へ移動させる際、浮力発生装置7及びワイヤ固定部5が燃料集合体10の移動に対して障害とならないようにすることが可能となる。
【0025】
図5に、浮力発生装置7の上面図を示す。浮力発生装置7の上端には、気体を封入するための弁8が取り付けられている。弁8は、常に燃料貯蔵プール1の水面上に浮き上がるよう、浮きが付属されている。このため、燃料貯蔵プール1の水面上から浮力発生装置7に容易に気体を封入することが可能となる。
【0026】
また、使用済燃料貯蔵キャスク4を燃料貯蔵プール1から取り出す際の浮力発生装置7の取り外し方法について説明する。浮力発生装置7に備えられた弁8を開け、浮力発生装置7に封入されている気体を放出することで、浮力発生装置7の体積を縮小させる。その後、使用済燃料貯蔵キャスク4を天井クレーンより吊り上げ、燃料貯蔵プール1から外に搬出した際に、浮力発生装置7を使用済燃料貯蔵キャスク4から取り外す。この方法により、浮力発生装置7が、使用済燃料貯蔵キャスク4の燃料貯蔵プール1の取り出しの妨げにならないようにすることが可能となる。
【0027】
次に、使用済燃料貯蔵キャスク4を原子力発電設備などの燃料貯蔵プール1に収納し、燃料を装荷し、最終的に搬出に至るまでの手順と、これらの手順において浮力発生装置7がどのように使用されていくのかについて説明する。図6は各手順において使用される機器と作業内容を示しており、図7は一連の処理手順を示している。なお図6は、図6(a)、図6(b)、図6(c)、図6(d)に分けて順次説明する。
【0028】
図7の一連の処理手順の最初の処理ステップS1では、図6(a)S1に図示しているように原子力発電設備などのトレーラエリア111にトレーラ109により積載されてきた空の使用済燃料貯蔵キャスク4を搬入し、天井クレーン110により吊りあげる。図7の次の処理ステップS2では、図6(a)S2に図示しているように使用済燃料貯蔵キャスク4をオペレーティングフロア112に置き、使用済燃料貯蔵キャスク4に水を注入する。次いで処理ステップS3では、使用済燃料貯蔵キャスク4に萎んだ状態の浮力発生装置7を取り付ける。
【0029】
図7の処理ステップS4では、図6(b)S4に図示しているように萎んだ状態の浮力発生装置7を取り付けた使用済燃料貯蔵キャスク4を天井クレーン110により吊りあげ、処理ステップS5では燃料貯蔵プール1のキャスクピット113まで搬送し、水中に設置する。処理ステップS6では、燃料貯蔵プール1内の萎んだ状態の浮力発生装置7の弁8を利用して気体を封入し、浮力発生装置7を膨張させる。これにより使用済燃料貯蔵キャスク4には回復力が作用できる状態となった。
【0030】
図7の処理ステップS7では、図6(c)S7に図示しているように、燃料貯蔵プール1内に別途設置されている燃料貯蔵ラック15から燃料集合体16を、燃料移動用クレーン18を用いて取り出し、キャスクピット113内の使用済燃料貯蔵キャスク4に収納する。なお、燃料集合体を移動して使用済燃料貯蔵キャスク4に収納するに際し、図4で説明したように浮力発生装置7の位置を避けてY1方向から進入するようにされることは言うまでもない。次いで処理ステップS8では、燃料集合体を装荷した使用済燃料貯蔵キャスク4の搬出のために、浮力発生装置7の弁8を開いて内部気体を放出させ、萎んだ状態にする。
【0031】
図7の処理ステップS9では、図6(d)S9に図示しているように、天井クレーン110を用いて使用済燃料貯蔵キャスク4の一次蓋を閉め、使用済燃料貯蔵キャスク4を上に持ち上げ水中から出す。処理ステップS10では、使用済燃料貯蔵キャスク4をオペレーティングフロア112に置き、内部の水を排水し、使用済燃料貯蔵キャスク4の二次蓋を閉める。処理ステップS11では、使用済燃料貯蔵キャスク4から萎んだ状態の浮力発生装置7を取り外す。処理ステップS12では、使用済燃料貯蔵キャスク4を天井クレーン110により吊り上げ、処理ステップS12では使用済燃料貯蔵キャスク4をトレーラ109に積載して搬出する。
【実施例2】
【0032】
図8に本発明による耐震性向上方法の実施例2を示す。浮力発生装置7は、使用済燃料貯蔵キャスク4の上部に備えられている。図9図8のA−A断面を表している。図10は、使用済燃料貯蔵キャスク4の上面図を示す。これにより、浮力発生装置7は円筒形状をしており、かつ使用済燃料貯蔵キャスク4の上部外周側に設けられることで、燃料集合体を上部より装荷することが可能であることがわかる。
【0033】
実施例2によれば、実施例1と同様に、使用済燃料貯蔵キャスク4のプール底面3からの傾きが大きくなる場合、水平地震力によって発生する転倒モーメントに対抗するモーメントが大きくなり、使用済燃料貯蔵キャスク4の転倒を防止する効果が得られる。
【0034】
また、本実施例の場合、使用済燃料貯蔵設備4自体が浮力を備えていることにより、浮力発生装置7を固定するための構造物が存在しない簡易な構造とすることができる。なお、この場合であっても浮力発生装置7への気体導入、排出の考え方は実施例1と同じに扱うことができる。
【符号の説明】
【0035】
1:燃料貯蔵プール
2:プール水
3:プール底面
4:使用済燃料貯蔵キャスク
5:ワイヤ固定部
6:ワイヤ
7:浮力発生装置
8:弁
10:燃料集合体
11:格子
110:天井クレーン
111:トレーラエリア
112:オペレーティングフロア
113:キャスクピット
115:燃料貯蔵ラック
116;燃料集合体
図1
図2
図3
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図6(d)】
図7
図8
図9
図10