(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電極組立体と、正極又は負極の外部端子とを電気的に接続するとともに、前記電極組立体を収容するケースの内圧が所定レベルを超えて上昇したときに前記電極組立体と前記外部端子との通電経路を遮断する電流遮断装置であり、
前記電流遮断装置は、
前記所定レベルの内圧により所定の荷重が加わると破断して前記内圧の受圧方向に移動する破断部が設けられている通電板と、
前記通電板と対向配置されており、前記破断部と接触して導通された接点板と、
前記内圧が所定レベルを超えて上昇したときに変形する変形板と、
を備えており、
前記通電経路は、前記電極組立体から順に前記通電板、前記接点板を通る、もしくは、前記電極組立体から順に、前記接点板、前記通電板を通り、
前記変形板は、一方の面が前記内圧と同じ圧力に保持されている第1空間に面しているとともに、他方の面が前記ケースの内部空間とは隔離された第2空間にて前記通電板と対向しており、かつ、前記通電板に対して、前記接点板とは反対側に配置され、前記内圧が所定レベルを超えて上昇したときに前記通電板側に変形して前記破断部に所定の荷重を与えて破断させるものであり、
前記破断部の破断後は前記接点板が前記破断部とともに前記通電板の残部から離間して前記通電経路が遮断され、
前記変形板と前記接点板は、筒状の支持部材の内側に固定されており、前記接点板の板面を貫通する面外方向への曲げ剛性が、前記変形板の板面を貫通する面外方向への曲げ剛性よりも低いことを特徴とする電流遮断装置。
前記接点板と前記変形板と前記通電板の積層方向からみたときに、前記接点板は、前記接点板の中心に対して点対称の形状であることを特徴とする請求項3に記載の電流遮断装置。
前記変形板は、前記第1空間側に凸なすり鉢状に形成されているとともに、前記内圧が所定レベルを超えて上昇すると、前記第2空間側に凸なすり鉢状に飛び移り座屈を起こして変形すると同時に前記破断部に衝突して前記破断部を破断させる、請求項1から4のいずれか1項に記載の電流遮断装置。
【実施例】
【0023】
以下、本明細書で開示する電流遮断装置の実施例について説明する。なお、本明細書で開示する蓄電装置では、電流遮断装置以外の構成は様々なものを使用することができる。また、以下に説明する蓄電装置は、例えば車両に搭載され、モータに電力を供給することができる。
【0024】
蓄電装置の一例として、密閉型の二次電池、密閉型のキャパシタ等が挙げられる。二次電池の一例として、比較的高容量で大電流の充放電が行われる種類の電池、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等の二次電池が挙げられる。なお、二次電池の電極組立体の一例として、セパレータを介して対向する電極対(正極電極及び負極電極)を有するセルが複数積層された積層タイプの電極組立体、セパレータを介して対向する電極対を有するシート状のセルが渦巻状に加工された捲回型の電極組立体が挙げられる。なお、以下の説明では、正極外部端子と負極外部端子の双方がケースの一方向に露出している蓄電装置について説明する。しかしながら、本明細書で開示する技術は、円筒型の電池のように、ケースが一方の極性(例えば負極)の端子として機能し、他方の極性(例えば正極)の端子がケースから絶縁された状態でケースに固定されているタイプの蓄電装置等にも適用することができる。
【0025】
(第1実施例)
図1に示すように、蓄電装置100は、ケース1と、電極組立体60と、負極外部端子19と、正極外部端子119と、電流遮断装置2を備えている。ケース1は、矩形箱状の本体部分62と、本体部分62を閉塞する矩形平板状の蓋部分63を備えている。本体部分62及び蓋部分63は、金属製(例えば、ステンレス、アルミニウム)である。以下の説明では、本体部分62及び蓋部分63を、単にケース1と称することがある。ケース1の内部には、正極電極及び負極電極を備える電極組立体60が収容されている。ケース1と電極組立体60は、絶縁シート61によって絶縁されている。正極集電タブ65が、正極電極に固定されている。負極集電タブ67が、負極電極に固定されている。
【0026】
負極外部端子19及び正極外部端子119が、ケース1(蓋部分63)に固定されている。図示は省略するが、負極外部端子19とケース1、及び正極外部端子119とケース1との間は、絶縁シート等により絶縁されている。負極外部端子19は、電流遮断装置2、負極リード68を介して、負極集電タブ67(負極電極)に電気的に接続している。電流遮断装置2の詳細は後述する。なお、電流遮断装置2と負極リード68は、導電性を有する接続部材13によって接続されている。正極外部端子119は、正極リード64を介して正極集電タブ65(正極電極)に電気的に接続している。負極リード68及び正極リード64は、ケース1(蓋部分63)に取り付けられている絶縁シート66によって、ケース1と絶縁されている。
【0027】
図2A及び
図2Bを参照し、第1実施例の電流遮断装置2について説明する。なお、
図2A、2Bでは、正極電極及び負極電極を備える電極組立体60(
図1を参照)の図示を省略している。電極組立体60は、
図2A、2Bの下方に配置されている。電流遮断装置2は、電極組立体60と負極外部端子19とを電気的に接続する。電流遮断装置2は、電極組立体60が収容されているケース1の内部とケース1の外部とのガスの流通を阻止する。電流遮断装置2は、ケース1内の内圧が所定レベルを超えて上昇したときに、電極組立体60と負極外部端子19の間の通電経路を遮断する。なお、
図2A、2Bでは、負極外部端子19とケース1との間に介在している絶縁シート66の図示を省略している。
【0028】
上記した「所定レベルの内圧」とは、蓄電装置100が過充電(過電圧)状態になったり、蓄電装置100が過昇温状態(活物質の熱暴走温度)になったときのケース1の内圧を意味する。「所定レベルの内圧」は、蓄電装置100の容量、出力電圧等の条件によって定められる。なお、蓄電装置100では、電流遮断装置2は、負極外部端子19の下方に配置される。しかしながら、電流遮断装置2を配置する位置は、負極外部端子19の下方に限定されるものではない。電流遮断装置2は、電極組立体60と負極外部端子19との直列な通電経路上に配置されていればよい。
【0029】
電流遮断装置2は、蓄電装置100のケース1内部に配置されており、ケース1の内部(電流遮断装置2の外部)のガスが電流遮断装置2の内部に流通しないようにシールされている(密封されている)。電流遮断装置2の外側空間(空間91)は、ケース内空間であるから、その圧力はケースの内圧と同じである。電流遮断装置2は密封されているので、その内部空間(空間92)にはケース1の内圧が影響しない。従って、ケース1の内圧上昇に伴って電流遮断装置2の内外で圧力差が大きくなり、内圧が所定レベルを超えると、その圧力差によって通電経路が遮断される。
【0030】
電流遮断装置2の構造を、蓄電装置100のケース1の内部(
図2Aの下方)からケース1の外側(
図2Aの上方)に向けて順に説明する。電流遮断装置2は、変形板3と、通電板4と、接点板5を備えている。
図2A、
図2Bは断面図であるが、変形板3と接点板5は円板状であり、図中の座標系のXY面内でどの方向から見ても同じである。
【0031】
変形板3は、薄板で形成されている。具体的には、変形板3は、金属性のダイアフラムである。変形板3は、その一方の面が空間91(即ち、ケース内部空間)に面しており、他方の面が空間92(即ち、電流遮断装置2の内部空間)に面している。変形板3は、その外周がシール部材14を介して筒状の筐体11に固定されている。変形板3は、空間91と空間92を隔離する隔壁の一部を構成する。前述したように、空間92は空間91(ケース内圧に保持されている空間)の圧力の影響を受けないので、ケース内圧が上昇すると、変形板3の両側で圧力差が生じる。変形板3はその圧力差によって変形する。
【0032】
変形板3は、
図2Aに示すように、空間91の側に向かって突出するすり鉢状(空間91側に凸なすり鉢状)であり、その中央に、通電板4に対向するようにパンチング突部12が設けられている。より詳しくは、パンチング突部12は、通電板4の一部である破断部6(後述)に対向するように設けられている。パンチング突部12は絶縁性の材質で作られている。パンチング突部12の形状は、例えば筒状である。
【0033】
変形板3の図中上方に通電板4が位置している。別言すれば、通電板4は、変形板3に対向するように配置されている。通電板4も、金属板状であり、その周縁が筐体11に固定されている。通電板4は導電性を有し、同じく導電性の接続部材13、負極リード68(
図1参照)、負極集電タブ67(
図1参照)を介して、電極組立体60と電気的に接続されている。接続部材13は、通電板4と一体であってもよい。通電板4は、変形板3、及び接点板5と重なる(積層される)円形部を有する。通電板4の中央部15(前述の円形部に含まれる部分)は、通電板4の他の部分と比較して、厚みが薄い。その中央部15に、破断部6が設けられている。破断部6を囲むように破断溝16が形成されている。逆に言えば、破断溝16によって破断部6とそれ以外の領域が画定される。破断溝16は、他の部位よりも脆弱に作られており、破断部6が衝撃を受けると破断溝16に沿って破断部6が破断する。
【0034】
通電板4を挟んで変形板3とは反対側に接点板5が配置されている。別言すれば、変形板3が、通電板4に対して、接点板5とは反対側に配置されている。このように、変形板3、通電板4、及び、接点板5は、この順に積層して配置されている。変形板3と通電板4と接点板5が積層している方向が、請求項における「積層方向」に対応する。接点板5も金属円板であり、その周縁を筐体11が支持している。接点板5の周縁において通電板4との間にはシール部材17が配置されており、接点板5と通電板4は、周縁では絶縁されている。接点板5は、中央が通電板4に向かって突出するすり鉢状であり、その中央で通電板4の破断部6と接合されており、破断部6を通じて通電板4と導通している。逆にいえば、接点板5と通電板4は破断部6以外では導通していない。なお、接点板5の平面形状については後述する。
【0035】
通電板4は、板状であり、後述する導電性の封口蓋7を通じて負極外部端子19と電気的に接続している。結局、負極外部端子19は、封口蓋7、接点板5、通電板4、接続端子部材、負極リード68(
図1参照)、及び、負極集電タブ67(
図1参照)を介して、電極組立体60と導通している。即ち、上記の経路が通電経路に相当する。
図2Aにおいて符号21が示す太線が通電経路を表している。詳しくは後述するが、破断部6が破断し、接点板5と通電板4の間の電気的接続が遮断されると、負極外部端子19と電極組立体60の間の通電経路が遮断される。なお、通電経路は、電極組立体60から順に通電板4、接点板5を通って負極外部端子19に至る経路であってもよいし、逆に、電極組立体60から順に、接点板5、通電板4を通って負極外部端子19に至る経路であってもよい。
【0036】
筒状の筐体11の上端は、封口蓋7で封止されている。封口蓋7の外周部が、絶縁性の筐体11で支持されている。前述したように、封口蓋7の外周部は、接点板5と接触しており、接点板5と電気的に導通している。封口蓋7の内面(接点板5側の面)に、上方(接点板5から離れる側)に窪んでいる凹部18が設けられている。具体的には、封口蓋7の中央部が、封口蓋7の外周部(接点板5と接触している部分)よりも上方に窪んでいる。変形板3のパンチング突部12が通電板4に接触すると、接点板5が上方に変形する。凹部18は、接点板5の上方への変形を許容するための空間である。
【0037】
変形板3、通電板4、接点板5、及び、封口蓋7は、いずれも筒状の筐体11に固定されている。筐体11は、絶縁性を有しており、例えば樹脂モールドで成形されている。筐体11を平面視するとリング状である。ここで、平面視とは、図中の座標系におけるZ軸方向の視点に相当する。筒状の筐体11の両端にはその内周に小さなフランジが設けられており、変形板3、通電板4、接点板5、及び、封口蓋7は、そのフランジの間に配置される。筐体11の両端内周のフランジは、筐体11を外側から覆うカシメ部材20によって筐体11の筒状の軸方向に圧縮力を受ける。その軸方向の圧縮力により、変形板3、通電板4、接点板5、及び、封口蓋7が保持される。
【0038】
筐体11、封口蓋7、変形板3によって、電流遮断装置2の内部空間92は、ケース内空間91から隔離されている。それゆえ、ケース内空間91が電界液で充填されていても、通電板4と接点板5は電解液に浸らずに済む。通電板4と接点板5を電解液から保護することで、それらの劣化を抑制する。
【0039】
電流遮断装置2の動作について説明する。例えば蓄電装置100が過充電されると、密閉されたケース1の内部でガスが発生し、ケース1の内圧が上昇する。符号91が示す空間の圧力が上昇する。符号92が示す空間、即ち、電流遮断装置2の内部空間はケース内圧の影響を受けないので、変形板3の両側で圧力差が生じる。中央が空間91の側に凸なすり鉢状の変形板3は、空間91の側の圧力(即ちケース内圧)が所定レベルを超えると、飛び移り座屈を生じ、空間92の側に突出するように変形する。別言すれば、変形板3は、中央が空間91の側に凸なすり鉢状から、中央が空間92の側に凸なすり鉢状に変形する。変形板3と通電板4は、変形板3の初期形状においてパンチング突部12の頭頂面24と破断部6の間に隙間が存在する位置関係に配置される。また、変形板3と通電板4は、変形板3が変形したときにはパンチング突部12が通電板4を貫通する位置関係に配置される。
【0040】
飛び移り座屈による形状変化は瞬時に生じるため、パンチング突部12が破断部6に向かって高速に移動する。そして、パンチング突部12が破断部6に衝突すると、変形板3の両側の圧力差に衝撃力が加わり、圧力差と衝撃力の両者で破断部6が通電板4から破断し、通電板4から離間する。なお、破断部6の破断は、破断溝16を起点に生じる。破断部6が破断し、破断部6と接点板5が通電板4の残部から離間することによって、接点板5と通電板4の導通が遮断される。即ち、負極外部端子19と電極組立体60の間の通電経路が遮断される。
【0041】
上記の動作を別言すると、次の通りである。即ち、破断部6は、所定レベルのケース内圧により所定の荷重が加わると破断してケース内圧の受圧方向に移動する。ここで、所定の荷重は、変形板6のパンチング突部12によってもたらされる。また、「受圧方向」とは、ケース内圧が変形板6を押圧する方向であり、また、この方向は、変形板6のパンチング突部12が変形板6の変形により移動する方向に相当する。
【0042】
図2Bに示すように、飛び移り座屈した後の変形板3の形状では、パンチング突部12の頭頂面は通電板4を通過し、変形板の反対側に突き出る。飛び移り座屈による変形が一旦生じると、変形を生ぜしめた荷重が消失しても、元の形状には戻らない。それゆえ、破断部6と接点板5は、パンチング突部12に押し出されるようにして通電板4の残部から離間した状態に保たれる。接点板5あるいは破断部6が再び通電板4の残部と接触することが防止される。
【0043】
上記の電流遮断装置2では、ケース内圧が所定レベルを超えると変形板が飛び移り座屈を生じて変形する。飛び移り座屈の変形は瞬時に生じるものであり、電流遮断装置2では、変形板3の両面の圧力差に変形板3の変形時の勢いが加わって破断部を破断させる。それゆえ、ケース内圧が漸増するような場合であっても特定の一定の内圧レベル(上述した所定のレベル)で電流経路を確実に破断することができる。
【0044】
また、電流遮断装置2では、その内部空間にて通電板4と接点板5の接合箇所が露出している。他方、変形板3は、通電経路を遮断するメカニズムの一部品として機能するとともに、蓄電装置のケース内部の空間と電流遮断装置2の内部空間との隔壁の一部を構成する。従って、ケース内部が電解液で満たされていても、通電板4と接点板5の接合箇所が電解液に触れることがない。
【0045】
接点板5の平面形状とその利点について説明する。
図3に接点板5の平面図を示す。
図3は、筐体11とカシメ部材20の断面も示してある。筐体11とカシメ部材20は円筒状であるため、
図3では、筐体11とカシメ部材20はリング状の断面として表れる。なお、符号11aは、筐体11の内側面を示している。
【0046】
接点板5の外形状も円形である。接点板5の外形状は、
図3では、符号11aが示す円で表される。また、接点板5は、その周囲が筐体11に固定されている。接点板5には、4個の孔HLが設けられている。4個の孔HLは、接点板5の周方向に等間隔に設けられており、その結果、
図3の平面視において、接点板5の形状は、外形円形の中心CLに対して点対称である。
【0047】
接点板5と変形板3は、同じ特性、同じ厚みの金属板で作られており、また、両者は同じ筒状の筐体11の内側に固定されており外形状が同じであるが、変形板3は孔や切欠を有さず、接点板5は孔HLを有する。別言すれば、接点板5の面積は、孔HLの面積分だけ、変形板3の面積よりも小さい。接点板5は、4個の孔HLを有することにより、その面外方向の変形の曲げ剛性が変形板3の面外方向への曲げ剛性よりも低くなっている。接点板5は、平面視したときの面積が変形板3の面積よりも小さく、面外変形に対する曲げ剛性が変形板3の曲げ剛性よりも低い。それゆえ、
図2Bに示すように、変形板3が変形して破断部6が破断した後、変形板3を元の形状の方向、即ち通電板4に向けて押し戻す力が小さい。このことは、一旦遮断した通電経路が再導通する可能性が小さいことを意味する。
【0048】
また、接点板5の面外方向の曲げ剛性が変形板3よりも低いということは、変形板3が破断部6に衝突した直後に、破断部6とともに接点板5を押し上げるが、その際にも接点板5は変位し易く、破断部6の破断をより一層確実にする。
【0049】
また、孔を有する接点板5の平面形状が中心CLに対して点対称であるため、パンチング突部12の移動に伴って接点板5が面外方向に変形する場合、その中心部が、接点板5の面に直交する方向にまっすぐに変形し易い。
【0050】
(第2実施例)次に、
図4A、
図4B、及び、
図5を参照して第2実施例の電流遮断装置を説明する。蓄電装置200を説明する。蓄電装置200は、蓄電装置100の変形例であり、第3実施例の電流遮断装置202の構造が蓄電装置100の電流遮断装置2と相違する。蓄電装置100と同じ部材には、蓄電装置100と同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
図4Aは通電経路の破断前の状態を示し、
図4Bは通電経路の破断後の状態を示している。
図5は、接点板105の平面図を示す。なお、以下の実施例では、蓄電装置の全体の図示を省略し、電流遮断装置の周囲の構造だけを図示することがある。
図4Aにおいても、符号21が示す太線が通電経路を表している。通電経路は、
図2Aに示した第1実施例の場合と同じである。
【0051】
電流遮断装置202では、変形板25が、円弧状の波形部を有する薄板で構成されている。だたし、変形板25の中央部は平板状である。波形部は、中央部と外周部の間に設けられている。
【0052】
通電板4の破断部6が破断した後は、移動した破断部6と、通電板4の残部との距離が大きいことが好ましい。変形板が平板状の場合、通電板4と破断部6との距離を大きくするためには、変形板が変形する前(ケース1の内圧が通常のとき)に、変形板が電極組立体60側に大きく突出していることが必要である。しかしながら、電流遮断装置を取り付けるスペースが小さいと、変形板を電極組立体60側に大きく突出させることができない。そのため、変形板が飛び移り座屈による変形を生じたときに、変形板の中央部の変位量(ストローク)が大きくならない。今、通電板4と破断後の破断部6との距離を大きくすることができれば、電流遮断装置の信頼性(通電経路を再導通させないこと)を向上させることができる。
【0053】
電流遮断装置202では、変形板25に波形部が設けられている。そのため、変形板25が変位する方向(
図4A、4Bの図中の座標系におけるZ軸方向)において、電流遮断装置202を取り付けるスペースが小さくても、変形板25の変位量を十分に確保することができる。すなわち、変形板25が変位する方向において、変形板25の変形量を増大させることができ、変形板25のストロークを大きくすることができる。なお、波形部が設けられている変形板25の場合、変形板25は、飛び移り座屈を生じる構造であることが望ましいが、飛び移り座屈による変形ではなく、ケース内圧の上昇に伴って徐々に変形する構造であってもよい。変形板25が飛び移り座屈を起こさない構造の場合、接点板5が飛び移り座屈による変形を生じる構造であることが好ましい。
【0054】
図5に、接点板105の平面図を示す。
図5にも、
図3と同様に、筐体11とカシメ部材20の断面も示してある。筐体11とカシメ部材20は円筒状である。符号11aは、筐体11の内面を示している。
【0055】
接点板105は、4箇所の切欠HCを有する。4箇所の切欠HCは、接点板105の中心CLに対して点対称の位置に設けられている。従って接点板105の外形状は、
図5の平面視でみたときに十字形である。接点板105の面積も、4箇所の切欠HCの面積分だけ、変形板25の面積よりも小さい。接点板105のこの形状も、第1実施例の接点板5と同様の利点を有する。
【0056】
(第3実施例)
図6A、6B、6Cを参照し、蓄電装置300について説明する。蓄電装置300は、蓄電装置100の変形例であり、第3実施例の電流遮断装置302の構造が蓄電装置100の電流遮断装置2と相違する。蓄電装置100と同じ部材には、蓄電装置100と同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
図6Aは通電経路の破断前の状態を示し、
図6Bは通電経路の破断直後の状態を示し、
図6Cは通電経路が破断してから所定時間が経過した状態を示している。
【0057】
電流遮断装置302を構成する部品の形態は、電流遮断装置2と同一である。電流遮断装置302では、変形板3と接点板5の材料・寸法等が、
図6A、6B、6Cの順に動作するように調整されている。
図6Aに示すように、ケース1の内圧が所定レベル未満のときは、電極組立体60(
図1を参照)から負極外部端子19に至る直列な通電経路が形成されている。このとき、変形板3の通電板4側の端面(パンチング突部12の頭頂面24と通電板4と対向する面)と、通電板4との間には、隙間が存在する(第1状態)。
【0058】
図6Bに示すように、ケース1の内部でガスが発生しケース1の内圧が所定レベルを超えると、変形板3は、中央がケース内部空間(空間91)に向かって突出するすり鉢形状から、通電板4に向かって突出するすり鉢形状に変形する。このときの変形は飛び移り座屈によるものであり瞬間的に生じる。すると、変形の際にパンチング突部12が通電板4の破断部6に衝突する。衝突の衝撃により、破断部6が破断溝16を起点に破断する。飛び移り座屈による変形の結果、パンチング突部12の頭頂面24は、通電板4を貫通して反対方向に突出する。すると、接点板5が、通電板4の破断部6とともに通電板4から離反する(第2状態)。その結果、電極組立体60(
図1を参照)から負極外部端子19に至る通電経路が遮断される。
【0059】
図6Cに示すように、通電板4が破断して所定時間が経過すると、接点板5と通電板4の距離が、第2状態のときよりも短くなる(第3状態)。パンチング突部12から接点板5に加えられた衝撃がなくなり、接点板5に復元力が生じるからである。接点板5は、接点板5が通電板4側に移動する力と、変形板3が飛び移り座屈後の形状を維持する力とが釣り合った位置で停止する。なお、接点板5の平面形状は、
図3あるいは
図5に示した形状であり、孔あるいは切欠が設けられており、その面積は変形板3の面積よりも小さい。それゆえ、接点板5の面外変形の曲げ剛性、即ち、復元力が、変形板3の曲げ剛性よりも小さい。つまり、第2状態と第3状態における破断部6の位置の差は小さく、破断後の破断部6が通電板4に再導通することがより確実に防止される。
【0060】
電流遮断装置302では、第3状態のときに接点板5と通電板4の隙間が1mm以上になるように、接点板5に設ける孔あるいは切欠の大きさが調整されている。接点板5と通電板4の隙間が1mm以上であれば、接点板5と通電板4の間が再導通しない。すなわち、通電経路が遮断した状態を維持することができ、電極組立体60と負極外部端子19が再導通することを確実に防止することができる。
【0061】
電流遮断装置302が備える特徴は、上述した全ての実施例に適用することができる。すなわち、上述した全ての実施例において、通電経路が遮断されてから所定時間が経過した後に、接点板5が通電板4と導通しない位置で、接点板5が通電板4側に移動する力と変形板3が反転する力とが釣り合うように調整してもよい。
【0062】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例では、負極の外部端子と電極組立体(電池本体)の間に電流遮断装置が挿入されていた。電流遮断装置は、正極の外部端子と電極組立体の間に挿入されていてもよい。
【0063】
通電板は、所定の荷重が加わると破断部が破断するように作られている。ここでの「所定の荷重」(所定の大きさの荷重)は、電流を遮断させたいときのケース内圧(内圧閾値)に応じて設定される。例えば、所定の荷重は、内圧閾値に変形板の面積を乗じた荷重に定められる。変形板は飛び移り座屈により瞬間的に変形し、破断部が受ける荷重は、内圧閾値に変形板の面積を乗じた荷重に、パンチング突部が破断部に衝突する衝撃の荷重が加わる。それゆえ、「所定の荷重」の大きさを、内圧閾値に変形板の面積を乗じた荷重に定めた場合、変形板の飛び移り座屈による変形で破断部は確実に破断する。通電板は、所定の大きさの荷重が加わると破断部が破断するように作られるが、ここでの「所定の荷重」は、電流遮断装置を作動させたいケース内圧の所定レベルに応じて定められる。
【0064】
実施例の筐体11が、「筒状の支持部材」の一例に相当する。実施例の通電板では、溝により破断部が画定されていた。溝に代えてパーフォレイション(ミシン目、あるいは、一定間隔で設けられた細孔の列)で破断部を画定してもよい。溝の大きさ/深さ、あるいはパーフォレイションの形状は、破断部に所定の閾値の荷重が加わったときに破断するように定められる。
【0065】
実施例では変形板の一方の面はケース内部空間(図中の空間91)に面していた。この場合、ケース内部空間が「ケース内圧と同じ圧力に保持されている第1空間」に相当する。また、ケース内部空間に対して密閉された電流遮断装置2の内部空間(図中の空間92)が「ケースの内部空間とは隔離された第2空間」に相当する。変形板は、一方の面が空間91に面しており、他方の面が空間92に面している。別言すれば、変形板は、電流遮断装置2の内部空間と、ケース内部空間を隔てる隔壁の一部を構成している。なお、ケース内部に電解液が充填されている場合、変形板の劣化を防止するために、ケース内部空間側に暴露している変形板をシリコンシート等で覆っていてもよい。シリコンシートは柔軟であるため、ケース内圧に応じて変形する。即ち、変形板とシリコンシートの間の空間は、ケース内圧と同じ圧力に保持された空間に相当する。従ってシリコンシート等によって変形板を覆う場合、シリコンシートと変形板の間の空間が、「ケース内圧と同じ圧力に保持されている第1空間」に相当する。
【0066】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。