(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(A)の混合物が、無水酢酸ナトリウム1重量部に対し、0.01〜0.11重量部の酢酸、および0.01〜0.1重量部のショ糖脂肪酸エステルを含有するものである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【背景技術】
【0002】
現在の加工食品製造においては、食品の保存性を向上させる目的で様々な有機酸が用いられているが、有機酸のひとつである酢酸を主成分とする醸造酢は、古くから食品の保存性向上に利用されてきた。
【0003】
しかしながら、醸造酢は食品への添加量を増やすと酸味や酸臭により食品の風味が損なわれ商品価値が低下することから、保存効果を高めるために添加量を増やすことは好ましくなかった。また、醸造酢は通常、液体として流通しているため、これらを含有する日持ち向上剤も液体製剤の形態を採るものが多く、生野菜等を浸漬処理する場合などに利用されている。しかし、このような液体製剤は使用時に計量等が必要であり、作業性の点で課題があった。
【0004】
一方、醸造酢の粉末化方法や粉末醸造酢を食品用添加剤として用いる提案もなされている。
【0005】
特許文献1には、濃厚な醸造酢を粉末の酢酸ソーダに吸着させることによる粉末醸造酢の製造法が記載されている。しかしながら、この製造法では、醸造酢に含まれる水分を除去するための濃縮工程が必要であり、効率の良い製造法ではなかった。
【0006】
特許文献2には、酸度51%以上の濃縮醸造酢を無水酢酸ナトリウム、デキストリンなどの粉末基材に吸着・混合して粉末化した粉末醸造酢が記載されているが、醸造酢の酸度を51%以上にするための濃縮操作が必須であるため、効率の良い製造が困難であった。また、濃縮醸造酢を用いているため、酢酸に起因する酸味や酸臭が強く、最終製品における酸味や酸臭の問題は解決されていなかった。
【0007】
特許文献3には、醸造酢と酢酸ナトリウムを含有する魚畜肉ねり製品用品質改良剤が開示されており、酢酸ナトリウムとして無水酢酸ナトリウムを用いることによって粉末製剤とすることが記載されている。しかしながら、この方法では、固化の進行が遅く、粉砕可能な程度に固化するまでに長時間を要するものであった。
【0008】
特許文献4には、酢酸ナトリウム、酢酸およびジグリセリンモノ脂肪酸エステルを含有してなる食品の変質防止剤が開示され、酢酸ナトリウムとして無水酢酸ナトリウムを用いることによって粉末製剤とすることが記載されている。しかしながら、この方法では、ジグリセリン脂肪酸エステルを予め液状にする必要があり、効率良く製造できるものではなかった。
【0009】
上記特許文献1〜4に記載される食品用製剤は、いずれも醸造酢や酢酸を無水酢酸ナトリウムに吸着させることにより得られる粉末製剤である。しかし、吸着による方法で得られる粉末製剤は、各粒子に吸着される酢酸量が不均一であるため、輸送中等に粉末の偏析現象(粒子径の異なる粒子の混合粉末が振動により分離する現象)が生じると、食品に添加した際の酢酸量に偏りが生じ、日持ち向上効果が不十分となったり、酸味や酸臭が強くなったりする等の課題を有するものだった。
【0010】
このような粉末の偏析現象は以前から知られており、大粒子と小粒子の粒径比が4:1以上の場合に分離が生じ易いことなどが知られている(非特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の食品用粉末状日持ち向上剤の製造方法は、上記の工程(A)〜(C)を含むことにより、効率良く、短時間で、酸味や酸臭が抑制されると共に酢酸が均一に分散した食品用粉末状日持ち向上剤を製造することを可能にするものである。以下、該製造方法の各工程について記載する。
【0018】
工程(A)および(B)は、同じ装置内で行ってもよく、それぞれ別の装置で行ってもよい。また、工程(A)および(B)は、撹拌装置を備えた一般的な反応容器内で行っても良いが、短時間での製造が可能となる点および同じ装置で粉末化をも行うことができる点で、ニーダー等の混練装置を用いるのが好ましい。混練装置としては、ジャケット等の温度調節機構を備えた回分式および連続式の混練装置が使用可能であり、例えば、コニーダー、双腕型ニーダー、リボン型混合機、スクリュー型混合機、マラー型混合機、放射ロッド型混合機、ピンミキサー、ボテータ、セルフクリーニング型混合機、らいかい機、ミックスマラー、マルチマル、ウェットパンミル、速練機、万能ミキサ、カッターミキサ、シュギーミキサ、エクストルーダー、コンテイニュアスニーダー等が例示される。その中でもコニーダー、双腕型ニーダー、コンテイニュアスニーダー等のいわゆるニーダーと称せられるものが好ましい。工程(A)の加熱および工程(B)の冷却のために、水(湯)、水蒸気、空気、各種熱媒オイル、各種冷媒ガス等、当該技術分野において公知の熱交換媒体を使用することができる。使用する熱交換媒体は、上記ジャケット等の温度調節機構に適合するものである限り、特に限定されない。
【0019】
工程(A)においては、本発明の日持ち向上剤の原料である無水酢酸ナトリウム、酢酸水溶液およびショ糖脂肪酸エステルの全てを最初に反応容器あるいは混練装置に投入してもよいし、撹拌または混練を行いつつ、各成分を順次投入してもよい。
【0020】
工程(A)において、原料を十分に混和させるため、撹拌または混練しながら品温が70〜100℃に達するまで加熱を行う。その後、工程(B)において、工程(A)で得られた混合物を十分に固化させるため、撹拌または混練しながら品温が10〜40℃に達するまで冷却を行う。工程(A)における加熱は、品温が75〜95℃に達するまで行うことが好ましく、品温が80〜90℃に達するまで行うことがより好ましい。また、工程(B)における冷却は、品温が15〜35℃に達するまで行うことが好ましく、品温が20〜30℃に達するまで行うことがより好ましい。
【0021】
工程(C)は、工程(B)において得られた固化物を粉砕し、所望の粒子径を有する粉末状日持ち向上剤を得る工程である。得られた粉末は、必要に応じて分級(例えば篩別)してもよい。粉砕装置としては、当該技術分野において公知の種々の粉砕装置が利用可能であり、これらに限定されないが、例えば、ジェットミル、ピンミル、セラミックボールミル、石臼、ブレンダー等が挙げられる。また、製造装置として、コニーダー、双腕型ニーダー、コンテイニュアスニーダー等の混練装置を用いた場合には、工程(A)および(B)に引き続いて同一装置内でそのまま混練を継続することによって粉砕・粉末化を行い、粉末状日持ち向上剤を得てもよい。
【0022】
本発明の日持ち向上剤の製造方法に用いる無水酢酸ナトリウムは、食品に対して使用可能なものであれば特に限定されず、例えば食品添加物として市販されるものであってもよく、酢酸ナトリウム三水和物の脱水等、公知の方法により製造したものであってもよい。
【0023】
本発明の日持ち向上剤の製造方法において用いる無水酢酸ナトリウムの割合は、工程(A)における混合物の全量に対し、40〜80重量%であることが好ましく、55〜75重量%であることがより好ましく、60〜70重量%であることがさらに好ましい。無水酢酸ナトリウムの割合が工程(A)の混合物全量に対し40重量%未満の場合、乾燥した粉末を得ることが困難となる傾向があり、工程(A)の混合物全量に対し80重量%を超える場合、食品の日持ち向上効果が不十分となる傾向がある。
【0024】
本発明の日持ち向上剤の製造方法において用いる酢酸水溶液は、食品に対して使用可能なものであれば特に限定されない。一つの態様において、酢酸水溶液は食酢であり、該食酢は醸造酢であっても合成酢であってもよい。醸造酢としては、例えば、米酢、黒酢等の穀物酢や、りんご酢、ブドウ酢等の果実酢を用いることが可能であり、これらを濃縮することによって得られた高酸度醸造酢を用いてもよい。
【0025】
使用する酢酸水溶液は、酢酸酸度4〜25%のものが好ましく、7〜20%のものがより好ましく、10〜18%のものがさらに好ましい。酢酸水溶液の酢酸酸度が4%未満の場合、日持ち向上効果が低下する傾向にあり、酢酸酸度が25%を超える場合、得られる日持ち向上剤の酸味や酸臭が強くなる傾向がある。ここで、酢酸酸度とは、「醸造酢の日本農林規格」(農林水産省)の第4条「測定方法」に規定される酸度測定方法に従って測定、算出したものをいう。
【0026】
なお、酢酸水溶液のうち、食酢は酢酸以外の有機酸を含む場合があるが、通常、該有機酸の量は僅かであり、酸度に寄与するほどではない。したがって、本明細書においては、酢酸水溶液(例えば醸造酢)について測定された酢酸酸度(w/v%)を、該酢酸水溶液の酢酸濃度(重量%)と同等のものとして扱う。
【0027】
本発明の日持ち向上剤の製造方法において、工程(A)の混合物中における酢酸の割合は、無水酢酸ナトリウム1重量部に対し、0.01〜0.11重量部であることが好ましく、0.03〜0.09重量部であることがより好ましく、0.05〜0.07重量部であることがさらに好ましい。酢酸の割合が無水酢酸ナトリウム1重量部に対し0.01重量部未満の場合、日持ち向上効果が不十分となる傾向があり、無水酢酸ナトリウム1重量部に対し0.11重量部を超える場合、得られる日持ち向上剤の酸味や酸臭が強くなる傾向がある。
【0028】
例えば、酢酸酸度が4〜25%の酢酸水溶液を用いる場合、工程(A)の混合物中における該酢酸水溶液の割合は、無水酢酸ナトリウム1重量部に対し0.2〜0.65重量部であることが好ましく、0.25〜0.6重量部であることがより好ましく、0.3〜0.55重量部であることがさらに好ましい。
【0029】
本発明の日持ち向上剤の製造方法において用いるショ糖脂肪酸エステルは、食品に対して使用可能なものであれば特に限定されないが、構成脂肪酸の炭素数が10〜22であるものが好ましく、12〜20であるものがより好ましく、14〜18であるものがさらに好ましい。また、ショ糖脂肪酸エステルは、HLB値が5〜20であるものが好ましく、10〜19であるものがより好ましく、14〜18であるものがさらに好ましい。日持ち向上効果の点から、ショ糖パルミチン酸エステルおよびショ糖ミリスチン酸エステルが好ましく、耐熱性菌に対する増殖抑制効果の点でショ糖パルミチン酸エステルがより好ましい。
【0030】
本発明の日持ち向上剤の製造方法において用いるショ糖脂肪酸エステルの割合は、無水酢酸ナトリウム1重量部に対し、0.01〜0.1重量部であることが好ましく、0.03〜0.09重量部であることがより好ましく、0.05〜0.08重量部であることがさらに好ましい。ショ糖脂肪酸エステルの割合が無水酢酸ナトリウム1重量部に対し0.01重量部未満の場合、日持ち向上効果が不十分となる傾向があり、無水酢酸ナトリウム1重量部に対し0.1重量部を超える場合、得られる日持ち向上剤の保管中にケーキングが生じ易い傾向がある。
【0031】
本発明の日持ち向上剤の製造方法における工程(A)は、無水酢酸ナトリウム、酢酸水溶液およびショ糖脂肪酸エステルを、所望の賦形剤と共に撹拌または混練しながら加熱して混合物を得る工程であってもよい。本発明の日持ち向上剤の製造方法において用い得る賦形剤としては、例えば、高度分岐環状デキストリン等のデキストリン類、グルコース、フラクトース、マンノース等の単糖類、ラクトース、マルトース、トレハロース、スクロース、パラチノース等の二糖類、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、還元パラチノース等の糖アルコール類、デンプン、化学修飾デンプン、加工デンプン、キチン、キトサン、セルロース、微結晶セルロース等の多糖類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸塩類、二酸化珪素等の無機粉末類が挙げられるが、食品に添加した際の酸味および酸臭抑制効果の点および保管中にケーキングが生じ難い点から、デキストリン類が好ましく、その中でも高度分岐環状デキストリンがより好ましい。
【0032】
本発明の日持ち向上剤の製造方法において賦形剤を用いる場合、該賦形剤の割合は、無水酢酸ナトリウム1重量部に対し、0.02〜0.1重量部が好ましく、0.03〜0.08重量部がより好ましく、0.04〜0.06重量部がさらに好ましい。賦形剤の割合が無水酢酸ナトリウム1重量部に対し0.02重量部未満の場合、得られる日持ち向上剤の酸味や酸臭が強くなる傾向があり、無水酢酸ナトリウム1重量部に対し0.1重量部を超える場合、日持ち向上効果が不十分となる傾向がある。
【0033】
次に本発明の食品用粉末状日持ち向上剤について説明する。
【0034】
本発明の食品用粉末状日持ち向上剤は、平均粒子径が100〜500μmであるものが好ましく、105〜400μmであるものがより好ましく、110〜300μmであるものがさらに好ましい。該日持ち向上剤の平均粒子径が100μm未満の場合、該日持ち向上剤の保管中にケーキングが生じやすい傾向があり、平均粒子径が500μmを超える場合には、該日持ち向上剤を食品中に均一に分散させることが困難となるおそれがある。
【0035】
本発明の食品用粉末状日持ち向上剤は、酢酸が均一に分散し、偏析現象による酢酸含有量の偏りが抑制されていることが特徴の一つである。かかる日持ち向上剤は、典型的には上記した本発明の日持ち向上剤の製造方法によって得られるものであるが、他の方法によって製造されたものであってもよい。
【0036】
一つの態様において、本発明の食品用粉末状日持ち向上剤は、粒子径75μm以下の粉末に含まれる酢酸の割合(重量%; 以下、酢酸割合(a)とする)と、粒子径が300μmを超える粉末に含まれる酢酸の割合(重量%; 以下、酢酸割合(b)とする)との差(絶対値)が6重量%以下となるものであり、酢酸割合(a)と酢酸割合(b)との差が5重量%以下となるものが好ましく、酢酸割合(a)と酢酸割合(b)との差が4重量%以下となるものがより好ましい。粒子径75μm以下の粉末に含まれる酢酸の割合と、粒子径が300μmを超える粉末に含まれる酢酸の割合との差が6重量%を超える場合、日持ち向上剤の保管中にケーキングが生じ易くなる傾向がある他、偏析によって、日持ち向上効果がばらつく傾向がある。
【0037】
酢酸の分散性を確認するには、例えば篩を用いて、粉末を粒子径によって複数の階級に分級し、各階級の粉末に含まれる酢酸含量を測定して比較すればよい。酢酸含量の測定は、各階級の粉末をそれぞれ蒸留水に懸濁・溶解させ、水酸化ナトリウムによって中和滴定することによって、測定することができる。
【0038】
別の態様において、本発明の食品用粉末状日持ち向上剤は、該日持ち向上剤中における異なる粒子径を有する粉末、例えば粒子径によって複数の階級に分級された粉末の酢酸含量について算出した標準偏差の値が2.3以下、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.7以下となるものである。分級を行う場合、標準偏差の値は以下の式によって算出される。
【数1】
【0039】
本発明の食品用粉末状日持ち向上剤の、食品に対する添加量は、食品の種類や状態によって得られる保存効果や味質への影響が異なるため、希望する保存効果や味質が得られるように適宜調整すればよい。例えば、酢酸を3.8〜5.3重量%含む日持ち向上剤であれば、食品全量に対して0.1〜3重量%、好ましくは0.2〜2.8重量%、より好ましくは0.3〜2.5重量%を目安に添加すればよい。
【0040】
また、本発明の食品用粉末状日持ち向上剤は、目的に応じて、別途、有機酸(酢酸を除く)、有機酸塩(酢酸ナトリウムを除く)、アミノ酸等の他の成分と組み合わせて使用してもよい。有機酸としては乳酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、アジピン酸等の一般に食品保存剤に使用されている有機酸が例示される。有機酸塩としては前記有機酸のナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩が例示される。アミノ酸としては、グリシン、アラニン、グルタミン酸等が例示される。これら他の成分と本発明の食品用粉末状日持ち向上剤を併用する場合、該他の成分の割合は特に限定されず、適用する食品に応じて希望する保存効果や味質が得られるように調整すればよいが、目安としては、本発明の食品用粉末状日持ち向上剤100重量部に対して、10〜200重量部程度である。
【0041】
本発明の食品用粉末状日持ち向上剤が使用可能な食品は特に制限されず、例えば、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、魚肉ハム、ソーセージなどの水産練り製品類、ハム、ソーセージ、ベーコン、ハンバーグ、ミンチボールなどの畜肉製品類、コロッケ、トンカツ、フライドチキン、魚フライ、唐揚げなどのフライ製品類、チャーハン、炊き込み御飯等の米飯類、中華麺、パスタ、うどん、そば等の麺類、ポテトサラダ、餃子、シュウマイ、卵焼き、煮物、和え物等の惣菜類、カレーパンや中華饅頭の詰め物、サンドイッチの具材等のフィリング類、カスタードクリーム、ホイップクリーム、フラワーペースト等のクリーム類、カステラ、スポンジケーキ、饅頭、餡等の菓子類、ジャム等の果実加工品類などが挙げられる。
【0042】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0043】
実施例1および比較例1
食品用日持ち向上剤の製造
無水酢酸ナトリウム1308g、高酸度醸造酢(酢酸酸度15%)542g、ショ糖パルミチン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製P−1670、モノエステル含量約80%、HLB値=16)94gおよび高度分岐環状デキストリン56gを双腕型バッチニーダー(KC−6、佐竹化学機械工業株式会社製)に投入し、3分間混練した後、ジャケットに蒸気(蒸気温度120℃)を入れることにより加熱を開始し、引き続き混練した。加熱しながら約12分間混練し、品温が90℃に達した時点で加熱を停止すると共に、同ジャケット内を冷水(冷水温度=10℃)に置換することにより冷却しながら引き続き混練した。冷却しながら約20分間混練し、品温が33℃に達した時点で混練物が固化した為、混練を停止し、固化物を回収した(実施例1)。
【0044】
また、実施例1と同じ原料および装置を用い、品温を23℃に保持して、約35分間混練したが、固化物は得られなかった。その後、継続して混練したが、混練開始から約105分経過後も固化しなかった為、混練を停止し、クリーム状の混合物をステンレストレーに排出し、室温に24時間静置して固化物を得た(比較例1)。
【0045】
尚、実施例1および比較例1で得られた固化物は、各々120gをブレンダー(PHOENIX BLENDER、OSTER社製)で20秒間粉砕したものを以下の試験に供した。
【0046】
平均粒子径の測定
上記製造方法により得られた実施例1および比較例1の粉末状日持ち向上剤を用い、「日本薬局方16版」に記載される「一般試験法 3.04 粒度測定法 第2法 ふるい分け法 2.2.1 機械的しんとう法」に従って、ふるい分けを行った。また、JISZ8815「ふるい分け試験方法通則」の「8.結果の表示方法」に従って篩下積算粒度分布を求め、質量基準平均粒子径を求めた。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
酢酸含有量の比較
上記製造方法により得られた実施例1および比較例1の粉末状日持ち向上剤を用い、JISZ8801−1に合致する、公称目開き300μmおよび公称目開き75μmの篩を用いて、粒子径が75μm以下の粉末、75μmを超え300μm以下の粉末および300μmを超える粉末に篩別した。篩別した各粉末1gを蒸留水に溶解し、0.1mol水酸化ナトリウム水溶液を用いる中和滴定により酢酸含有量を測定した。なお、中和滴定には電位差自動滴定装置(COM−1700S、平沼産業株式会社製)を使用した。
【0049】
実施例1の日持ち向上剤は、比較例1の日持ち向上剤と比較して各粒度間における酢酸含有量の差が少なく、酢酸が均一に分散していた。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
ケーキング性の比較
上記製造方法により得られた実施例1および比較例1の粉末状日持ち向上剤各120gを100mLガラス瓶に入れ、37℃の恒温器内に保管した。3日、7日および10日の保管期間経過後にガラス瓶を逆さにし、以下の評価基準によりケーキング性を評価した。
[評価基準]
−:瓶を手で叩くと崩れる
+:瓶を手で叩いても崩れない
【0052】
実施例1の日持ち向上剤は、保管10日目においてもケーキングが抑制されていた。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
官能評価
上記製造方法により得られた実施例1および比較例1の粉末状日持ち向上剤を用い、パネラー8名により、下記の評価基準で酸味及び酸臭の強弱を評価した。
[評価基準]
酸味または酸臭−○:実施例1の方が酸味または酸臭が弱い
×:実施例1の方が酸味または酸臭が強い
【0055】
実施例1の日持ち向上剤は、比較例1の日持ち向上剤に比べ、明らかに酸味および酸臭が抑制されていた。結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
実施例2〜4および比較例2〜4
抗菌力試験
オートクレーブで滅菌したトリプトソーヤブイヨン(SCDブイヨン)98gに、表5に示す組成の粉末状日持ち向上剤を2g(全材料の2重量%添加)添加した。また、日持ち向上剤を添加していない滅菌後の同トリプトソーヤブイヨンを比較例4の液体培地とした。次にCO
2ガスセンサー入りの試験管に上記の各液体培地を5mlずつ分注し、下記供試菌の菌液100μl(10
2CFU/ml)を接種した。接種後、30℃にて培養し、菌の増殖により発生するCO
2が検出されるまでの時間を測定した。尚、CO
2ガスセンサー入りの試験管はSensiMedia
(登録商標) SM000(マイクロバイオ株式会社製)を使用した。尚、実施例2〜4の日持ち向上剤は上記実施例1と同様の方法により調製し、比較例2〜3の日持ち向上剤は上記比較例1と同様の方法により調製した。
供試菌:Bacillus cereus IAM1029
【0058】
【表5】
【0059】
実施例2〜4の日持ち向上剤を添加した培地は、比較例2〜3の日持ち向上剤を添加した培地に比べ、CO
2の検出時間が遅く、供試菌の増殖が抑制されていた。結果を表6に示す。
【0060】
【表6】