(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持部材(20、20’、20’’、200)上に取り付けられる少なくとも1つのインクジェットヘッド(10、10’、11’、...、1’n、10’’、11’’、...、1’’n)を備え、前記少なくとも1つのヘッドを用いて対象表面(100)上にインクを付着させるインクジェット印刷装置であって、前記支持部材(20、20’、20’’、200)は、前記少なくとも1つのヘッドの周囲に配置される複数のオリフィス(30、31、...、3n)を含み、該オリフィスのそれぞれの各中心は円環をなすように配置され、該円環の中心は前記インクジェットヘッドの中心であり、さらに該複数のオリフィスは、該オリフィスを介して前記支持部材と前記対象表面との間の流体を吸引することによって、インク中に含まれている溶媒の蒸発をより急速にさせる手段(40)に流体接続されていることを特徴とする、インクジェット印刷装置。
複数のインクジェットヘッド(10、11、...、1n、10’、11’、...、1’n、10’’、11’’、...、1’’n)が前記支持部材上に取り付けられる、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
前記支持部材(200)は、複数のヘッド(10、11、...、1n)のうちのインクジェットヘッドのそれぞれの周囲に配置される複数のオリフィスを含む、請求項1または2に記載のインクジェット印刷装置。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷法は特にプリンターの分野、より包括的にはグラフィック用途において用いられる。
【0003】
現在、インクジェット印刷法を、グラフィック設計以外の分野、例えばマイクロテクノロジー及び/又はナノテクノロジー等に適用することが望まれている。
【0004】
この理由は、既知のインクジェット印刷装置は安価で信頼性が高いからである。したがって、グラフィック用途の分野以外の分野においてこれらの利点から利益を得ることができることが望ましい。
【0005】
しかしながら、或る特定の用途には、既知のインクジェット印刷装置が満たすことのできない固有のニーズがある。
【0006】
そのため、ナノテクノロジー分野では、既知のインクジェット印刷装置の使用は、安全上の問題に直面している。これらの安全上の問題は、インク中のナノ粒子のサイズ及び/又はインク中に用いられる溶媒の性質に関連する場合がある。付着するインクは、ナノ粒子と溶媒との混合物を含み、このインクは例えば、基板上に付着するように意図されている。
【0007】
インクジェット印刷法はまた、この分野において従来的に用いられているフォトリソグラフィー等の技法の解像度に対するインクジェット印刷法の解像度に関する問題に直面している。具体的には、既知のインクジェット印刷装置は、ナノテクノロジーの分野において従来的に用いられている技法によって得られる印刷品質(write quality)と同程度の精度である印刷品質でインクを基板上に付着させることができない。
【0008】
同様の問題が、マイクロテクノロジー分野においても生じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一目的は、特にマイクロテクノロジー及び/又はナノテクノロジー等のグラフィック用途以外の分野において、既存のインクジェット印刷装置よりも良好な解像度を得ることが可能なインクジェット印刷装置を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、安価で信頼性の高いインクジェット印刷装置を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的はまた、そのような装置の動作安全性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的のうちの少なくとも1つを達成するために、本発明は、支持部材上に取り付けられる少なくとも1つのインクジェットヘッドを備えるインクジェット印刷装置であって、前記支持部材は、前記少なくとも1つのヘッドの周囲に配置される少なくとも1つのオリフィスを含み、該オリフィスは、該オリフィスから抽出されるように意図されている流体を移動させる手段に流体接続することを特徴とする、インクジェット印刷装置を提供する。
【0013】
本方法は、場合によっては、単独であるか又は組み合わせによるかにかかわらず、以下の他の技術的特徴を有する:
前記少なくとも1つのオリフィスは、前記少なくとも1つのインクジェットヘッドを包囲し、
本装置は、前記少なくとも1つのインクジェットヘッドの周囲に配置される複数のオリフィスを備え、
本装置は、前記支持部材上に取り付けられる複数のインクジェットヘッドを備え、
前記支持部材は、複数のヘッドのうちのインクジェットヘッドのそれぞれの周囲に配置される複数のオリフィスを含み、
前記オリフィスのそれぞれの各中心は円環をなすように配置され、該円環の中心は前記インクジェットヘッドの中心であり、
前記オリフィスは等間隔で配置され、
前記オリフィスは同一であり、
前記オリフィスは円錐開口を有し、
本装置は、前記少なくとも1つのオリフィスと前記流体を移動させる前記手段との間に配置される流体抽出チャンバーを備え、
本装置は、前記インクが付着するように意図されている対象表面を加熱する手段を備える。
【0014】
これらの目的のうちの少なくとも1つを達成するために、本発明はまた、対象表面上に印刷するインクジェット印刷方法であって、
支持部材上に取り付けられている少なくとも1つのインクジェットヘッドを用いて対象表面上にインクを付着させるステップであって、上記インクは、該インクが対象表面と接触すると蒸発する傾向がある溶媒を含むステップと、
インクジェットヘッドの周囲に配置されている少なくとも1つのオリフィスによって、溶媒蒸気を含有している流体を抽出するステップであって、このオリフィスは、上記流体を移動させる手段に流体接続されるステップと、
を含むことを特徴とする、インクジェット印刷方法を提供する。
【0015】
本方法は、対象表面を加熱する措置をとることもできる。
【0016】
本発明の他の特徴、目的及び利点は、添付の図面を参照しながら与えられる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の実施形態が
図1(a)〜
図1(c)に示されている。
【0019】
インクジェット印刷装置1が、支持部材20上に取り付けられる少なくとも1つのインクジェットヘッド10を備える。これらの図では、インクジェット印刷装置1は、単一のヘッド10しか備えていない。このヘッド10は、インク噴出ノズル101において終端している。
【0020】
インクジェット印刷装置1はまた、ヘッド10の周囲に、すなわちこのヘッドを囲むスペース内に配置される流体抽出オリフィス30、31、...、3nを含む。オリフィス30、31、...、3nのそれぞれの各中心が、ヘッド10の長手方向軸から離れた距離のところに更に配置される。
【0021】
これらのオリフィスは、インクジェットヘッド10を支持する部材20内に形成されており、この部材を貫通している。これらのオリフィスはそれぞれ、ノズル101と同じ側に、支持部材20に対して配置される開口301、3n1を含む。この配置により、以下でより詳細に説明されるように、支持部材20とインクが付着するように意図されている対象表面100との間にある容積内に含まれている流体を除去することが可能になる。
【0022】
これらのオリフィス30、31、...、3nはまた、流体接続部によって上記流体を移動させる手段40に関連付けられる。
【0023】
流体を移動させる手段40は一般的にポンプである。ポンプは特に、流体の移動を強制する(強制対流)ことを可能にする。
【0024】
したがって、流体は、開口301、3n1からオリフィス自体の中に吸い込まれて抽出される。
【0025】
流体接続部は、流体抽出オリフィス30、31、...、3nと上記流体を移動させる手段40との間に配置される流体抽出チャンバー50と、流体抽出チャンバー50と上記流体を移動させる手段40との間に配置されるダクト60とを更に含む。
【0026】
マイクロテクノロジー用途又はナノテクノロジー用途の場合、当該流体は、空気等の流体と溶媒蒸気との混合物とすることができる。
【0027】
具体的には、これらの用途に使用されるインクは、粉末と、状況に応じてマイクロ粒子又はナノ粒子と、溶媒との混合物によって形成することができる。さらに、支持部材20と対象表面100との間にある容積が概して空気で満たされている。対象表面100はこの場合、特にナノテクノロジー分野において使用される傾向がある、例えばシリコンから作製される基板である。
【0028】
したがって、インクの滴101’が、
図1(c)に示されているように、基板100の表面上に付着すると、所望の付着物だけを残すように、滴中に含まれている溶媒が蒸発し、次に、溶媒蒸気が、支持部材20と基板100とを隔てている容積内に含まれている流体と混合する。
【0029】
溶媒の蒸発が急速であることは、基板上に所望の付着物を迅速に形成することができるかどうか、ひいては、この付着物が安価であるとともに優れた解像度を有しているかどうかに影響を及ぼす重要な要因である。
【0030】
したがって、流体を抽出することにより、インクジェットヘッド10と基板100との間にあるこの空間内に溶媒蒸気が蓄積することが防止され、それによって、以下で説明するように、溶媒の蒸発が促進される。
【0031】
同じ目的から、装置1は、
図1(c)に示されているように、上記基板100の、インク101’が付着する面105とは反対の、基板100の面106上に概ね配置される、基板100を加熱する手段104を備えることが好ましい。この理由は、加熱により溶媒の蒸発が早まるためである。
【0032】
溶媒蒸気の抽出により、これらの蒸気が有毒である可能性がある限り、安全性が向上する。具体的には、本発明に関しては、インクジェット印刷装置1と基板100とによって形成されるアセンブリを、密閉シールされたチャンバー内に収容することは必要ではない。
【0033】
流体の抽出は、ヘッド10と基板100との間のインクの噴流を乱してはならない。この理由から、流体抽出流量は、
図1(a)〜
図1(c)に示されている装置を用いた場合、概ね0.1l/分〜0.6l/分の間、好ましくは0.2l/分〜0.5l/分の間である。
【0034】
インクの噴流が乱されない限り、インクジェットヘッド10の周囲のオリフィス30、31、...、3nの分布、オリフィス30、31、...、3nのそれぞれの直径及び/又はオリフィス30、31、...、3nのそれぞれの中心とヘッド10の長手方向軸との間の距離を変えることができる。
【0035】
例えば、オリフィス30、31、...、3nは同一の直径を有することができ、これらのオリフィス30、31、...、3nは、流体がインクジェットヘッド10の周囲から均一に抽出されるようにインクジェットヘッドの周囲に等間隔で分布することができる。
【0036】
より詳細には、
図1(a)〜
図1(c)に示されている例では、流体抽出オリフィス30、31、...、3nのそれぞれの各中心は、円環をなすように等間隔で配置され、円環の中心はインクジェットヘッド10の中心である。
【0037】
この例では、この円環の径Φは9.5mmであり、オリフィスのそれぞれの径Φ
oは約2mmである。これらの条件下で、約10個よりも多いオリフィスをインクジェットヘッド10の周囲に配置することができる。径Φは
図1(a)に示されており、径Φ
oは
図1(b)に示されている。
【0038】
オリフィス30、31、...、3nは円錐開口301、3n1を含むことが好ましく、この円錐は、流体がオリフィスの中に入るゾーンからオリフィス内部に向かう方向に狭まっている。したがって、オリフィス30、31、...、3nの入口における、場合によってはインクジェットを乱す可能性がある、流体の乱流又は渦(turbulent motion or rotation)が抑えられる。
【0039】
その全体における直径がオリフィスの直径と同一である円筒開口301、3nlを想定することができる。
【0040】
本発明による装置1により、基板100上に得られるインクの付着物の解像度が既知のインクジェット印刷装置に比べて向上することも可能になる。
【0041】
図2(a)及び
図2(b)は、基板上に付着したインクの線を示し、これらの付着物はそれぞれ流体抽出を伴わずに及び流体抽出を伴って、
図1(a)〜
図1(c)を参照して説明した装置を用いて生成される。
【0043】
より詳細には、双方の試験について以下の条件が同じである。
【0044】
インクを、溶媒、すなわちエチレングリコール中に、10重量%濃度の酸化亜鉛ナノ粒子と、1重量%の界面活性剤、この場合ではTRITON X100とを混合した混合物から形成する。同じ量のインクを付着させる。
【0045】
用いる噴出ノズル101は直径が50μmであり、このノズルの温度は50℃である。圧電アクチュエーターの電圧は、用いるインクジェットヘッドを考慮して40ボルトに設定する。
【0046】
ノズルを450μm/秒の速度で基板に対して移動させる。
【0047】
ノズルから基板100に送出されるインク滴の降下速度は約3m/秒である。
【0048】
20μmごとに連続して滴を付着させることによって1本の線を形成する。
【0049】
ノズルが基板から離れている距離は約1mmである。基板上に付着するインク滴と基板との間の接触角度は15度である。
【0051】
図2(a)から、流体抽出を全く伴わない場合、基板100上に付着したインクの線102は、平均幅が110μmであり、この線の縁は真っ直ぐではないことを見てとることができる。
【0052】
対照的に、
図2(b)に見てとることができるように、流体抽出を伴った場合、より幅狭(88μm)の線103が得られ、さらに、この線の縁はより真っ直ぐである。流体抽出流量はこの場合では0.5l/分である。
【0053】
したがって、流体、より詳細にはエチレングリコール蒸気の抽出により、付着物の解像度を高めることが可能になる。この場合では、解像度は約20%向上する。
【0054】
本発明者らは、インクジェットヘッド10とインク滴が付着する基板との間にある空間から流体を抽出することにより、インク中に含まれている溶媒の蒸発速度が増加することを可能にし得る真空が形成されるものとみなしている。したがって、基板100上に付着したインクが基板の上に拡がる時間を短くすることができ、このことが、解像度の20%の増加が得られることの要因とすることができる。
【0055】
流体抽出を伴わずに、
図2(b)に示されているインクの線の幅と同様の幅のインクの線を得ることを想定することができる。
【0056】
しかしながら、この結果を得るには、溶媒がエチレングリコールである場合では、基板の温度を105℃から概ね110℃〜115℃の間のより高い値に上げる必要がある。より高い温度では溶媒が蒸発する速度が増加し、それによって、場合によっては、付着するインクの線がより優れた解像度を有することになることが理解されるであろう。
【0057】
不都合なことに、基板の温度が高すぎる場合、付着するインクの線が不均一になり、気孔又は凹凸を示す可能性があることが観察されている。
【0058】
対照的に、基板の加熱温度を下げても、流体抽出により、付着するインクの線の解像度を高めることが可能になる。したがって、内部化学構造を機械的に変形せずには、又は内部化学構造の改変を行わずには115℃もの高い温度に耐えることができない材料の使用を想定することができる。
【0059】
図1(a)〜
図1(c)に示されている第1の実施形態は、複数の抽出オリフィスが囲むインクジェットヘッドを1つだけ備える。
【0060】
インクジェット印刷装置1の第2の実施形態の底面図が
図3(a)に示されている。
【0061】
インクジェット印刷装置1は、インク噴出ノズルが備わった単一のインクジェットヘッド10
1を備え、このインクジェットヘッドの周囲には、流体抽出オリフィス30
1が、装置を支持する部材20
1内に形成されている。オリフィス30
1は、支持部材20
1を貫通している。
【0062】
したがって、流体抽出オリフィス30
1は実際には、インクジェットヘッドの周囲に配置されている。より詳細には、インクジェットヘッド10
1は、流体抽出オリフィス30
1によって包囲されている。
【0063】
したがって、抽出された流体はインクジェットヘッド10
1の外周に流れる。
【0064】
オリフィスは環形状を有し、そのように形成された環の中心はノズル10
1の長手方向軸がオリフィス30
1の対称軸を形成するようにこの長手方向軸と一致することが好ましい。
【0065】
インク噴出ノズル10
1を包囲するオリフィス30
1を介して抽出された流体は、インクの噴流を乱さない。本発明者らは、これは、抽出される流体の流量が概ね0.5l/分を超えないことに起因するものとみなしている。
【0066】
しかしながら、インクジェットを乱す、考えられ得るいかなるリスクも抑えるために、円錐オリフィス開口(図示せず)を設けることができる。
【0067】
図1(a)〜
図1(c)に示されている装置について上記で説明した条件と同一の条件下で、
図3(a)に示されている構成を用いて実験的試験(報告せず)を行い、この試験により、この第2の実施形態との関連性が実証された。
【0068】
図3(b)に示されているこの第2の実施形態の変形形態では、複数の個別のオリフィス30
1、30
2を、インクジェットヘッドを包囲するように設けることができる。これらのオリフィス30
1、30
2はこの場合、支持部材20を貫通している。例えば、このタイプの2つのオリフィスが設けられている場合、各オリフィスは、
図3(b)に示されているように断面が半環形状であるものとすることができる。このタイプの3つ以上のオリフィスを設けてもよい。
【0069】
複数のインクジェットヘッドを用いる他の実施形態は、
図4(a)、
図4(b)及び
図5を参照しながら以下で説明する。
【0070】
第3の実施形態が
図4(a)に示されており、この第3の実施形態の変形形態が
図4(b)に示されている。
【0071】
インクジェット印刷装置1はこの場合、支持部材200、200’上に取り付けられる複数のインクジェットヘッド10、11、...、1nを備える。支持部材は、この複数のヘッド10、11、...、1nのうちのインクジェットヘッドのそれぞれの周囲に少なくとも1つの流体抽出オリフィスを含む。この少なくとも1つのオリフィスは、上記支持部材200、200’を貫通している。
【0072】
図4(a)では、所与のインクジェットヘッドの周囲のオリフィスの直径に関する配置、数及び/又はサイズは、
図1(a)〜
図1(c)を参照しながら説明したオリフィスの配置、数及び/又はサイズと同一とすることができる。マルチノズルヘッドのオリフィスは一般に、より小さい。
図4(a)では、複数のインクジェットヘッドのうちの第1のヘッド10の周囲に配置されているオリフィスのうちの1つが、参照符号30によって示されている。
【0073】
図4(b)では、各インクジェットヘッドは、
図3(a)を参照しながら説明したように、単一のオリフィスによって包囲されている。そのため、
図4(b)では、参照符号30
1は、インクジェットヘッド10
1を包囲するオリフィスを示す。
【0074】
第4の実施形態が
図5に示されている。
【0075】
この実施形態では、複数のインクジェットヘッド10’、11’、...、1n’(又は10’’、11’’、...、1n’’)を備えるインクジェット印刷装置1が、インクジェットヘッドの全ての周囲に配置される複数の流体抽出オリフィス30’(又は30’’)を有する支持部材20’(又は20’’)を備えることを想定することができる。
【0076】
したがって、この変形形態では、各インクジェットヘッドの周囲に配置される複数のオリフィス(
図4(a))はもはやないが、インクジェットヘッドのアレイの周囲に配置される複数のオリフィスがある。
【0077】
この変形形態では、溶媒は、噴流を乱すことなくより高い流量で抽出することができる。
【0078】
オリフィス30’、30’’の入口は、
図1(a)〜
図1(c)に示されている実施形態と同様にして、各インクジェットヘッドの噴出ノズルの高さと同様の高さに配置することができる。
【0079】
図5に示されているように、オリフィス30’、30’’の入口をインクジェットヘッドの噴出ノズルに対してシフトされた平面内に配置することを想定することができることが好ましい。その場合、オリフィス30’、30’’は、インクが付着する対象表面(図示せず)に、インクジェットヘッドがあるよりも近くにある。この解決策は、インクジェットヘッドのそれぞれから送出されるインクの噴流の外乱を防ぐことを更にいっそう確実にする。
【0080】
オリフィスの直径は同一であることが好ましい。さらに、オリフィスはインクジェットヘッドのアレイの周囲に等間隔で分布することが好ましい。
【0081】
この変形形態では、支持部材20’、20’’は、オリフィスと流体を移動させる手段(参照せず)との間に抽出チャンバー(参照せず)を組み込むことができる。他の変形実施形態におけるように、オリフィスの間に、又はより詳細には、チャンバーが設けられる場合はチャンバーと流体を移動させる手段との間に流体接続部としてダクト60’、60’’が設けられる。
【0082】
そのため、オリフィス30’、30’’が、流体が関連するダクト60’、60’’を介して出るように、関連する支持部材20’、20’’を貫通している。
【0083】
最後に、
図4に示されている実施形態は、複数のインク噴出ノズルが備わっている単一のヘッドにも適用することができることに留意すべきである。
【0084】
最終的に、本発明による装置は、既知の装置に勝る多くの利点を有する。
【0085】
一利点は、より低温の対象表面上、すなわちより低い温度における対象表面上に、インクを印刷することが可能であることである。
【0086】
したがって、得られる付着物の解像度を維持しつつも、高温に耐えることができないポリマーから作製される基板上に印刷することが可能である。
【0087】
生物学的化合物を含むインク等の、高温に耐えることができない、インクの溶媒中に希釈された材料を印刷することも可能である。
【0088】
さらに、このような基板温度についての利益により、装置の製造コスト及び使用コストが抑えられる。
【0089】
特に、ナノテクノロジー又はマイクロテクノロジーの分野において、基板キャリアの熱膨張が抑えられるため、基板キャリアの製造がより容易に行われるとともにその整合の精度が高まる。
【0090】
加えて、基板上にもたらされる傾向がある表面処理の耐用年数が延びる。具体的には、滴の直径よりも小さなエリア上にインクを付着させることが望まれる場合、このエリアの周囲に、フォトリソグラフィーによって、オクタデシルトリクロロシランで官能化される疎水性領域が概ね画定される。その場合、付着する滴が疎水性ゾーン内のエリアに閉じ込められる。しかしながら、この疎水処理の耐用年数は、基板の動作温度に非常に左右される。基板の温度が低いほど、処理の耐用年数が長くなる。
【0091】
別の利点は、そのようにして得られた付着物の解像度の向上に関する。
【0092】
具体的には、本発明による装置により、対象表面上に付着したインクの線の解像度が、既知の装置に比べて、また、この対象表面の温度がより低い場合に、実質的に向上することが可能になる。
【0093】
さらに、解像度を低下させることなく、詰まりによる問題を防止するために、既知のノズルよりも大きい直径を有するノズルを選択することが可能である。
【0094】
別の利点は、インクジェット印刷装置と適合性のあるインクの範囲の増加に関する。
【0095】
高い沸点を有するそのようなインクの使用により、インクジェット印刷装置が停止している段階及びインクジェット装置が再始動する段階中にノズルが詰まるリスクが減る。