特許第6078006号(P6078006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6078006B200を含んでなる、局所投与用の医薬製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078006
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】B200を含んでなる、局所投与用の医薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4985 20060101AFI20170130BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170130BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20170130BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20170130BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170130BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20170130BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20170130BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   A61K31/4985
   A61K45/00
   A61P31/22
   A61K9/06
   A61K9/08
   A61K9/10
   A61K9/12
   A61K9/70
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-553949(P2013-553949)
(86)(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公表番号】特表2014-505716(P2014-505716A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】EP2012052763
(87)【国際公開番号】WO2012110631
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2015年2月5日
(31)【優先権主張番号】11154979.6
(32)【優先日】2011年2月18日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/444,275
(32)【優先日】2011年2月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515254954
【氏名又は名称】ヴィロノヴァ・ヘルペス・アクチェボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100098590
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 隆
(72)【発明者】
【氏名】ホマン,モハメド
(72)【発明者】
【氏名】ベリマン,ヤン
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−506417(JP,A)
【文献】 米国特許第05514667(US,A)
【文献】 特表平07−501045(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/044390(WO,A1)
【文献】 特開2004−026819(JP,A)
【文献】 特表平05−501564(JP,A)
【文献】 特表2008−502676(JP,A)
【文献】 HARMENBERG JOHAN,THE MECHANISM OF ACTION OF THE ANTI-HERPES VIRUS COMPOUND 2,3-DIMETHYL-6 以下備考,ANTIVIRAL RESEARCH,NL,ELSEVIER BV,1991年 3月 1日,V15 N3,P193-204,(2-DIMETHYLAMINOETHYL)-6H-INDOLO-(2,3-B)QUINOXALINE
【文献】 SKARIN TOBIAS,PROTECTION AGAINST 12-O-TETRADECANOYLPHORBOL-13-ACETATE INDUCED SKIN-HYPERPLASIA 以下備考,CHEMICO-BIOLOGICAL INTERACTIONS,1999年 9月30日,V122 N2,P89-106,AND TUMOR PROMOTION, IN A TWO-STAGE CARCINOGENESIS MOUSE MODEL, BY THE 2,3-DIMETHYL-6 以下省略
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4985
A61K 9/00 − 9/72
A61K 47/00 − 47/48
A61K 45/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3−ジメチル−6−(N,N−ジメチルアミノエチル)−6H−インドロ−(2,3−b)キノキサリン(B−220)又はその医薬的に許容される塩を医薬的に許容される担体に含んでなる、再発性ヘルペスウイルス感染症の哺乳動物における予防及び/又は治療に使用するための局所投与用の医薬組成物。
【請求項2】
B−220を0.1〜10%(w/w)の量で含んでなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
B−220を0.5〜5%(w/w)の量で含んでなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの追加の治療有効成分を含んでなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
追加の治療有効成分が、抗ウイルス剤、抗生物質、鎮痛剤、麻酔剤、消炎剤、及び抗炎症剤より選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
追加の治療有効成分が消炎剤である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
追加の治療有効成分が抗炎症剤である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
追加の治療有効成分が0.005〜5%(w/w)の量で存在する、請求項4〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
皮膚又は粘膜の治療のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
クリーム剤、液剤、ローション剤、ゲル剤、スプレー剤、フォーム剤、又は軟膏剤の形態である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物を含有する、パッチ、スティック、スプレーディスペンサー、チューブ、又はペン。
【請求項12】
哺乳動物被検者の皮膚又は粘膜への局所投与による該哺乳動物被検者における皮膚又は粘膜の再発性ヘルペスウイルス感染症の治療に使用するための医薬組成物の製造における化合物:2,3−ジメチル−6−(N,N−ジメチルアミノエチル)−6H−インドロ−(2,3−b)キノキサリン(B−220)又は医薬的に許容されるその塩の使用。
【請求項13】
該医薬組成物が追加の医薬有効成分を含む、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
追加の医薬有効成分が、抗ウイルス剤、抗生物質、鎮痛剤、麻酔剤、消炎剤、及び抗炎症剤より選択される、請求項13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルペスウイルス感染症の予防及び治療に適した、局所投与用の医薬組成物に関する。この医薬組成物は、例えば、抗ウイルス剤、抗生物質、鎮痛剤、麻酔剤、消炎剤、及び抗炎症剤より選択される、局所投与に適した少なくとも1つの追加の治療有効成分と組み合わせてもよい、化合物:2,3−ジメチル−6−(N,N−ジメチルアミノエチル)−6H−インドロ−(2,3−b)キノキサリン(本明細書では、以下B−220とも言及する)又はその医薬的に許容される塩を含む。
【背景技術】
【0002】
ヒトのヘルペスウイルス感染症は、様々なヒト及び動物ヘルペスウイルスによって引き起こされ得るが、その最も一般的なものは、単純ヘルペスウイルスと帯状疱疹ウイルスである。
【0003】
単純ヘルペスウイルス又は帯状疱疹ウイルスでの一次感染に続き、このウイルスは、患者の人生の最後まで感覚神経に潜伏し続けて、引き続き、反復性のウイルス再活性化が起こり得る。神経細胞中での再活性化に続き、このウイルスは、神経を通して皮膚へ輸送されてから、病巣が発現する。ウイルス複製の突発の直後には、炎症が続く。この炎症は、発赤、腫脹、掻痒、及び疼痛、並びに病変を含めた、ヘルペスウイルス再発に関連した諸症状の一因となる。
【0004】
単純ヘルペスウイルスは、2つの血清型、HSV1型(HSV−1)と2型(HSV−2)へ群分けされる場合があり、その臨床症状は、良性で自己制限性の口顔面感染症及び性器感染症から、脳炎及び全身型新生児感染症のような潜在的に致命的な状態に及ぶ。口顔面HSV感染症は、(例えば、幼児期の)一次感染の後で潜伏したHSV−1によって主に引き起こされる。再活性化の後で、ごく一般的には単純疱瘡として知られている、再発性の口顔面HSV感染症が発現する。この患者の約半数は、初期症状(例、疼痛、灼熱感、又は掻痒感)を後続の病巣部位で体験する。一般に、この状態は、速やかに自己制限的であって、典型的なエピソードの治癒期間は、初期症状から約10日である。口唇中でのウイルス複製は、早期に開始されて、最大のウイルス負荷は、再活性化の発症後24時間で達成される。それからウイルス濃度は劇的に低下して、典型的には、発症から70〜80時間後にはウイルスを単離することができない。
【0005】
性器HSV感染症の臨床症状は、口顔面感染症に似ているが、いくつかの重要な例外がある。性器HSV感染症は、ごくしばしばHSV−2によって引き起こされて、一次感染に続いて、このウイルスは、感覚神経節又は自律神経節に潜伏的に感染する。再活性化により、このヘルペス感染に特徴的である再発性の局部病巣が性器の上又はその付近に産生される。
【0006】
帯状疱疹ウイルス(VZV)での一次感染は、水痘を引き起こす。HSVと同様に、VZVは、一次感染に続いて潜伏性になり、後の人生において、帯状疱疹として再活性化され得る。通常、帯状疱疹は、皮膚の発疹と強度の急性疼痛をもたらす。患者の30%では、この疼痛が長期化して、発疹が消失した後で数週間又は数ヶ月続く可能性があり、永久に続く場合さえある。
【0007】
HSVとVZVは、粘膜又は皮膚の徴候に加えて、眼に角膜炎を引き起こす場合もある。この状態も再発性であって、失明を引き起こす場合もある。
ヒトヘルペスウイルスに対して有効である、多数の抗ウイルス剤がある。しかしながら、これまでに再発性ヘルペスウイルス感染症の治療において臨床的に成功したものはごく限られていて、ヘルペスへの治癒法はまだ存在していない。
【0008】
例えば、アシクロビル(aciclovir)、バラシクロビル(valacyclovir)、ファムシクロビル、及びペンシクロビルといった、様々な成功事例のある様々な抗ウイルス剤が使用されている。例えば、アシクロビルの局所塗布用クリーム製剤がゾビラックス(Zovirax)という一般名で Ranbaxy によって販売されている。
【0009】
WO96/024355は、局所的に許容される抗ウイルス剤(例、アシクロビル)と抗炎症性グルココルチコイド(例、ヒドロコーチゾン)を含んでなる局所投与用の複合(combination)製剤について記載する。再発性口唇ヘルペス(単純疱疹)の局所治療に有用な、前記特許出願の範囲内の組成物は、XerclearTM(米国ではXereseTM)として市販されている。前記組成物は、クリーム製剤中に5%アシクロビルと1%ヒドロコーチゾンを含有する。
【0010】
しかしながら、一次並びに再発性ヘルペス感染症の治療に有効な薬物及び方法へのニーズが依然として存在する。
B−220は、1型と2型の両方の単純ヘルペスウイルスに対するいくつかのインドロキノキサリンの抗ウイルス効果を示す、WO87/04436として公開されたPCT出願において初めて開示された。この抗ウイルス効果は、このウイルスの脳内注射も受けたマウスにこの試験物質を注射することによって示された。
【0011】
WO07/084073として公開されたPCT出願では、ヒトサイトメガロウイルスに対するB−220の抗ウイルス効果についても言及されていて、ここでは改良プラークアッセイにおける参照化合物としてB−220が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO96/024355
【特許文献2】WO87/04436
【特許文献3】WO07/084073
【発明の概要】
【0013】
今回、驚くべきことに、一次及び再発性ヘルペスウイルス感染症をB−220の局所投与によって効果的に治療することができることを見出した。
故に、本発明は、2,3−ジメチル−6−(N,N−ジメチルアミノエチル)−6H−インドロ−(2,3−b)キノキサリン(B−220)又はその医薬的に許容される塩を医薬的に許容される担体に含んでなる、局所投与用の医薬組成物に関する。
【0014】
本発明の組成物は、特に、口顔面型の一次又は再発性ヘルペスウイルス感染症に罹患している哺乳動物被検者への局所投与に有用である。
1つの態様において、本発明の医薬組成物は、局所投与に適した少なくとも1つの追加の治療有効成分を追加的に含む。
【0015】
1つの側面によれば、本発明は、哺乳動物被検者の皮膚及び/又は粘膜へのその治療有効量の局所投与による、該哺乳動物被検者における皮膚又は粘膜のヘルペスウイルス感染症の治療に使用のB−220又はその医薬的に許容される塩に関する。
【0016】
1つの態様において、本発明は、局所投与に適した少なくとも1つの追加の医薬有効成分との組合せにおいて使用されるB−220又はその医薬的に許容される塩に関する。
別の側面によれば、本発明は、B−220又はその医薬的に許容される塩の治療有効量の局所投与を含んでなる、哺乳動物被検者における皮膚又は粘膜のヘルペスウイルス感染症の予防的及び/又は治癒的治療の方法に関する。
【0017】
1つの態様において、上記方法は、例えば、抗ウイルス剤、抗生物質、麻酔剤、鎮痛剤、消炎剤、及び抗炎症剤より選択される、局所投与に適した少なくとも1つの追加の医薬有効成分の組合せ又は連続での局所投与も含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
B−220、即ち、2,3−ジメチル−6−(N,N−ジメチルアミノエチル)−6H−インドロ−(2,3−b)キノキサリンは、構造式:
【0019】
【化1】
【0020】
を有して、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、WO87/04436に記載のように製造することができる。
B−220の医薬的に許容される塩は、当業者によく知られているような、どの有機又は無機の医薬的に許容される酸を使用しても生成してよい。本発明による医薬的に許容される酸付加塩は、哺乳動物における局所使用に安全で有効であって、所望の生理活性を保有する塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、又はp−トルエンスルホン酸塩)である。
【0021】
本発明の医薬組成物は、B−220と少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含む。本発明の1つの態様において、医薬組成物は、B−220又はその医薬的に許容される塩を有効成分の局所送達に適した医薬担体に含む。
【0022】
1つの態様において、上記医薬組成物は、B−220又はその医薬的に許容される塩と、例えば、抗ウイルス剤、抗生物質、麻酔剤、鎮痛剤、消炎剤、及び抗炎症剤より選択される、局所投与に適した追加の治療有効成分を含む。
【0023】
1つの態様において、追加の治療有効成分は、抗ウイルス剤を含むか又は抗ウイルス剤である。本発明の目的に適した抗ウイルス剤は、局所的に許容される抗ウイルス化合物であって、それは、ヘルペスウイルス増殖の特異的な阻害剤であることに加えて、局所投与後も有効であって、加えて、局所投与用に医薬的に許容される。このことは、この抗ウイルス剤の毒性が人体との、そして特に皮膚及び粘膜との継続的な接触を可能にするほど十分に低くなければならないことを意味する。抗ウイルス剤の例は、ヌクレオシド類似体のように、その三リン酸型へのリン酸化後にウイルスDNAポリメラーゼに作用する化合物を含んでなる群内の物質;ホスホノギ酸及びホスホノ酢酸とそれらの類似体;並びに、異なる作用機序を有する他の抗ウイルス化合物である。本発明の組合せにおいて使用し得る抗ウイルス剤の例として、アシクロビル(ACV)、ACV−ホスホネート、ブリブジン(ブロモビニルデオキシウリジン、BVDU)、炭素環式BVDU、ブシクロビル、CDG(炭素環式2’−デオキシグアノシン)、シドフォビル(HPMPC、GS504)、環式HPMPC、デスシクロビル、エドクスジン、ファムシクロビル、ガンシクロビル(GCV)、GCV−ホスホネート、ゲニビル(DIP−253)、H2G(9−[4−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシ−メチル)ブチル]−グアニン)、HPMPA、ロブカビル(ビスヒドロキシメチルシクロブチルグアニン、BHCG)、ネチブジン(ゾナビル、BW882C87)、ペンシクロビル、PMEA(9−(2−ホスホニルメトキシ−エチル)アデニン)、PMEDAP、ソリブジン(ブロバビル、BV−araU)、バラシクロビル、2242(2−アミノ−7−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロポキシメチル)プリン)、HOE602、HOE961;BPFA(バチル−PFA)、PAA(ホスホノアセテート)、PFA(ホスホノホルメート);アリルドン、アマンタジン、BILD1263、シバミド(カプサイシン)、CRT、ISIS2922、ペプチドT、トロマンタジン、ビレンド、1−ドコサノール(リダコール)、及び348U87(2−アセチルピリジン−5−[2−クロロ−アニリノ−チオカルボニル]−チオカルボノ−ヒドラゾン)に言及することができる。
【0024】
好ましい抗ウイルス剤は、ウイルス被感染細胞において選好的にリン酸化されて、細胞DNA中への非常に低いか又は非存在の取込みを有するヘルペス特異的ヌクレオシド類似体のような特異的抗ウイルス活性がある薬剤、並びに特異的な抗ウイルス活性がある他の化合物である。例えば、アシクロビルは、in vitro のHSV−1に対する阻害活性について約2000の選択比を有する。前記の好ましい物質の中では、アシクロビルに加えて、ブリブジン、シドホビル、デスシクロビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、HOE961、ロブカビル、ネチブジン、ペンシクロビル、PMEA、ソリブジン、バラシクロビル、2242、BPFA、PFA、PAAに言及することができる。
【0025】
好適な消炎剤(即ち、炎症、疼痛、及び/又は発熱を抑えることが可能な薬剤)は、例えば、ジクロフェナク(IUPAC名:2−(2,6−ジクロルアニリノ)フェニル酢酸)又はイブプロフェン(IUPAC名:(RS)−2−(4−(2−メチルプロピル)フェニル)プロパン酸)又はその医薬的に許容される塩(例、ナトリウム、カリウム、又はジエチルアミン塩)のような非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であってよい。
【0026】
好適な麻酔剤は、例えば、リドカイン(IUPAC名:2−(ジエチルアミノ)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アセトアミド)であってよい。
好適な抗炎症剤は、例えば、アデノシン(IUPAC名:(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール)であってよい。
【0027】
抗炎症剤はまた、抗炎症性グルココルチコイドより選択されてよい。好適なグルココルチコイドは、天然に存在するものであっても合成品でもよく、効力が弱い、低い、又は適度に強いグルココルチコイドに相当する、北欧諸国において使用されている局所用グルココルチコイドの分類体系による、I〜ID群のグルココルチコイドのいずれからも選択することができる。グルココルチコステロイド類の例は、アルクロメタゾン、アミシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロロサン、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、フルドロコルチゾン、フルドロキシコルチド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、ハルシノニド、ハロベタソール、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニカルベート、プレドニゾン、プレドニリデン、ロフレポニド、チプレダン、及びトリアムシノロンと、適宜、これらのエステル、塩、及び溶媒和物(即ち、水和物)である。
【0028】
いくつかの好ましいグルココルチコイド類は、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デソニド、フルプレドニデン、フルメタゾン、ヒドロコルチゾンブチレート、クロベタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾン、ブデソニド、デソキシメタゾン、ジフロロサン、フルオシノロン、フルオコルトロン、フルチカゾン、メチルプレドニゾロンアセポネート、モメタゾン、及びロフレポニドであり、特に、ヒドロコルチゾン、ブデソニド、及びフルチカゾンである。
【0029】
好適な抗生物質は、例えば、クリンドマイシン、エリスロマイシン、ムピロシン、バシトラシン、ポリミキシン、及びネオマイシンより選択されてよい。
医薬組成物の担体は、安定であって医薬的に許容されて、局所適用に適しているべきである。また、B−220又はその医薬的に許容される塩と、追加されてもよい有効成分(複数)の十分な量の取込みを可能にすべきである。クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、又は軟膏剤、エアゾール化可能な液剤、及びフォーム剤中の慣用成分に加えて、スフィンゴ脂質が含まれるリン脂質を基剤とする組成物が有利であり得る。クリーム剤又は軟膏剤の製剤において、担体は、白色ワセリンであってよい。
【0030】
液体担体には、水、アルコール類、又はグリコール類、又は水−アルコール/グリコール混和物を含めてよく、ここに本発明による有効成分(複数)の有効量が、無毒の界面活性剤の補助が有っても無くてもよくて、溶解又は分散され得る。香味剤及び抗微生物剤のようなアジュバントを加えて、所与の使用のための特質を最適化することができる。ユーザーの皮膚及び/又は粘膜への直接的な適用のために、合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及びエステル、脂肪アルコール、改質セルロース又は改質ミネラル材料のような濃化剤も液体担体とともに利用して、広げ得るペースト剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、等を生成することができる。
【0031】
本発明の医薬組成物は、ヒトが含まれる哺乳動物におけるヘルペスウイルス感染症の予防及び/又は治療のために使用することができる。好ましい態様において、該組成物は、一次又は再発性ヘルペスウイルス感染の治療に使用される。感染の治療は、ウイルス複製の間に、好ましくは、発赤/病変又は前駆症状の最初の出現から、そして少なくとも3〜4日の期間の間、行うべきである。本製剤は、全体のエピソードの間、2時間まで毎に、治癒するまで反復的に適用してよい。
【0032】
定期的な再発性疾患を有する患者には、予防的治療を実施してよい。この症例では、最初の症状の出現前に、再発が予期される領域へ該製剤を適用する。本発明の組成物は、皮膚又は粘膜において複製する、すべての種類のヘルペスウイルス(例、HSV−1、HSV−2、及びVZV)を治療するために使用し得る。
【0033】
本発明による局所投与用の医薬組成物は、好ましくは、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、スプレー剤、フォーム剤、軟膏剤、又は滴剤である。医薬組成物は、ヘルペス感染症が治療される患者の皮膚へ適用される硬膏剤又はパッチ剤の中へ、又は皮膚又は粘膜への適用のためのペン剤又はスティック剤の中へ取り込むことができる。
【0034】
液体組成物は、包帯剤や他の包帯材料を滲み込ませるのに使用される吸収パッドより適用しても、ポンプ型又はエアゾールスプレーを使用して罹患領域上へ噴霧してもよい。
局所投与とは、本文脈において、皮膚又は粘膜への皮内又は粘膜投与を意味する。
【0035】
当業者は、例えば、「レミントン:調剤の科学と実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)」(第21版)、ペンシルヴェニア州フィラデルフィア、Lippincott Williams & Wilkins(2005)のような手引きを参照して、選択される投与の製剤及び形態に照らして好適な賦形剤を選択することが十分に可能であろう。
【0036】
本発明の医薬組成物にグルココルチコイドが含まれる態様では、グルココルチコイドのヘルペスウイルス刺激効果により、それぞれの成分の最適用量を明確化するように留意しなければならない。グルココルチコイドの用量があまりに高いと、抗ウイルス剤によって阻害し得ない程度まで、ウイルス増殖を刺激するかもしれない。その用量があまりに低いと、炎症の症状の望まれる抑制が達成されないかもしれない。
【0037】
本発明による医薬組成物は、B−220の治療有効量を含有すべきである。例えば、本発明による医薬組成物中のB−220の相対量は、0.1〜10%(w/w)、好ましくは0.5〜5%(w/w)の範囲内、例えば、約1%(w/w)であり得る。
【0038】
上記に言及した薬剤のいずれかのような、追加の治療有効成分が組成物に存在する態様において、その濃度は、例えば、0.005〜5%(w/w)の範囲内、又は0.01〜2%(w/w)又は0.25〜1%(w/w)の範囲内にあり得る。
【0039】
なお別の側面において、本発明は、B−220又はその医薬的に許容される塩の治療有効量と、本明細書の上記に言及したような少なくとも1つの追加の医薬有効成分の組合せ又は連続での局所投与を含んでなる、哺乳動物被検者(例、ヒト)における皮膚又は粘膜のヘルペスウイルス感染症の予防的及び/又は治癒的治療の方法に関する。
【実施例】
【0040】
B−220(1分量)を白色ワセリン(99分量)とホモジェナイザー中で混合して、他の成分を含まない、軟膏剤の形態で調製物を提供した。この軟膏剤は、24ヶ月より長く安定であるので、安定化剤も調節剤(conditioners)も加えるに及ばなかった。例えば、より高い百分率(2.5%(w/w)のような)のB−220を含有する、この調製物の変形態様も、同じやり方で製造することができる。
【0041】
生物学的試験
1重量%のB−220を白色ワセリンに含有する軟膏剤を、再発性口唇ヘルペスに罹患している10名のボランティアへ局所投与した。この投与は、この軟膏剤の薄層を罹患領域へ塗布することによって、毎日繰り返し実施した。すべての試験被検者は、1〜2日以内に疼痛が驚くほど消失したか又は実質的に軽減されて、2〜4日以内に発赤が消失したか又は実質的に低下した、と報告した。