(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078052
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】両十字膝装置(BI−CRUCIATEKNEESYSTEM)
(51)【国際特許分類】
A61B 17/15 20060101AFI20170130BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
A61B17/15
A61B17/56
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-511440(P2014-511440)
(86)(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公表番号】特表2014-521382(P2014-521382A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】US2012037750
(87)【国際公開番号】WO2012158604
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年5月13日
(31)【優先権主張番号】61/486,023
(32)【優先日】2011年5月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/593,521
(32)【優先日】2012年2月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/470,630
(32)【優先日】2012年5月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513285893
【氏名又は名称】バイオメット・マニュファクチャリング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】メッツガー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ベルチャー,ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】ワトソン,オードラ・シー
(72)【発明者】
【氏名】ダーチョルツ,ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】カタンザリテ,ジョシュア
【審査官】
佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−504766(JP,A)
【文献】
国際公開第97/29696(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/15
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両十字保持手技時に近位脛骨を準備するための器械セットであって、
前記近位脛骨の前部分に固定するように構成され、前記近位脛骨に固定されたときに、内外方向に延びるスロットを画定する脛骨切除ブロックと、
本体、内側腕部および外側腕部を有し、内側切断スロットが前記本体および前記内側腕部の間に画定され、外側切断スロットが前記本体および前記外側腕部の間に画定された垂直切断ガイドであって、前記切断ガイドから延びる舌部をさらに備え、前記舌部が前記脛骨切除ブロックの前記スロットに受け入れられるように、かつ、前記スロットに沿って内外方向に摺動可能に平行移動するように構成されている、垂直切断ガイドと、
前記内側切断スロットと前記外側切断スロットとの間で前記切断ガイドの前記本体に取り付けられたロック用腕部であって、前記切断ガイドが前記脛骨切除ブロックに対して内外方向に平行移動できるロックされていない位置、および、前記ロック用腕部が前記脛骨切除ブロックと係合し、前記切断ガイドが前記脛骨切除ブロックに対して動かないようにするロックされた位置の間で回転可能であるロック用腕部と、
を備える器械セット。
【請求項2】
前記ロック用腕部が、前記ロック用腕部から延びる指部を備え、前記指部が前記ロックされた位置にあるときに前記脛骨切除ブロックと係合する、請求項1に記載の器械セット。
【請求項3】
前記垂直切断ガイドの前記本体が前記内側切断スロットおよび前記外側切断スロットで開放されている、請求項1に記載の器械セット。
【請求項4】
前記内側切断スロットおよび前記外側切断スロットが、ピンを受け入れるように構成された部分孔で終端している、請求項1に記載の器械セット。
【請求項5】
前記切断ガイドの前記本体が上部内側壁部および上部外側壁部を有する、請求項1に記載の器械セット。
【請求項6】
アライメントガイドをさらに備え、前記アライメントガイドが前記切断ガイド本体の両側に設置されるように構成された細長い腕部を有する、請求項1に記載の器械セット。
【請求項7】
脛骨切除ガイドをさらに備え、前記脛骨切除ガイドが内側脛骨プラトーの最も低い地点に係合するように構成されたスタイラスを有する、請求項1に記載の器械セット。
【請求項8】
内側側部間隙を確認するために、前記近位脛骨の切除された内側側部に位置決めされるように構成された内側スペーサーをさらに含む請求項1に記載の器械セット。
【請求項9】
外側側部間隙を確認するために、前記近位脛骨の切除された外側側部に位置決めされるように構成された外側スペーサーをさらに含む請求項1に記載の器械セット。
【請求項10】
前記垂直切断ガイドを前記近位脛骨に固定するために、前記垂直切断ガイドに画定された孔を通して位置決めされるように構成された少なくとも1つのピンをさらに含む、請求項1に記載の器械セット。
【請求項11】
U字形状本体と、内側通路および外側通路と、内側ドリルガイドおよび外側ドリルガイドとを有する脛骨テンプレートを含む、
請求項1に記載の器械セット。
【請求項12】
脛骨トレートライアルインサートであって、前記トライアルインサートから延びる設置用ペグと、前記トライアルインサートから延びる設置用竜骨と、
をさらに含む請求項1に記載の器械セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本願は、2012年5月14日に出願された米国特許出願第13/470,630号の優先権、ならびに、2011年5月13日に出願された米国仮特許出願第61/486,023号および2012年2月1日に出願された米国仮特許出願第61/593,521号の利益を主張するものである。上記出願の全開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]以下の開示は、一般に、膝の手術を述べるものであり、より詳細には、両十字膝インプラント(bi−cruciate knee implant)のために膝を準備する器械、インプラント、および、関連する方法を述べるものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0001]このセクションは、開示の一般的な概要を提供するものであり、発明の全範囲または発明の全ての特徴を包括的に開示するものではない。
[0002]両十字(換言すれば、前後十字靭帯)保持手技時に近位脛骨を準備するための器械セットは、脛骨切除ブロックと、垂直切断ガイドと、ロック用腕部とを含むことができる。脛骨切除ブロックは、近位脛骨の前部分に固定するように構成できる。脛骨切除ブロックは、脛骨切除ブロックが近位脛骨に固定されたときに、内外(medial-lateral)方向に延びるスロットを画定することができる。垂直切断ガイドは、本体、内側腕部および外側腕部を有することができる。内側切断スロットは、本体および内側腕部の間に画定することができる。外側切断スロットは、本体および外側腕部の間に画定することができる。切断ガイドは、切断ガイドから延びる舌部をさらに備えることができる。舌部は、脛骨切除ブロックのスロットに入るように、かつ、このスロットに沿ってスライドしながら平行移動するように構成できる。ロック用腕部は、切断ガイドに取り付けることができ、ロックされていない位置およびロックされている位置の間で可動である。ロックされていない位置では、切断ガイドが脛骨切除ブロックに対して平行移動できる。ロックされていない位置では、ロック用腕部が脛骨切除ブロックと係合し、切断ガイドが脛骨切除ブロックに対して動かないようにすることができる。
【0004】
[0003]追加の特徴によれば、ロック用腕部は、切断ガイドに対して、ロックされていない位置およびロックされた位置の間で回転することができる。ロック用腕部は、ロック用腕部から延びる指部を備えることができ、この指部は、ロックされた位置にあるときに脛骨切除ブロックと係合する。切断ガイドの本体は、内側切断スロットおよび外側切断スロットで開口していることができる。内側切断スロットおよび外側切断スロットは、ピンが入るように構成された部分孔で終端できる。切断ガイドの本体は、上部内側壁部および上部外側壁部を有することができる。器械セットは、アライメントガイドをさらに備えることができ、このアライメントガイドは、切断ガイド本体の両側に設置されるように構成された細長い腕部を有する。器械セットは、脛骨切除ガイドをさらに備えることができ、この脛骨切除ガイドは、内側脛骨プラトーの最も低い地点に係合するように構成されたスタイラス(stylus)を有する。
【0005】
[0004]両十字インプラントが入るように近位脛骨を準備する方法は、近位脛骨の切除高さを決定する段階を含むことができる。脛骨切断ブロックは、この決定に基づいて近位脛骨に対して固定することができる。垂直切断ガイドは、脛骨切断ブロックに画定されたスロットに沿って、近位脛骨に対する所望の内外方向の位置が得られるまでスライドさせながら平行移動させることができる。所望の内外方向の位置を得ることによって、垂直切断ガイドを脛骨切断ブロックに対して固定することができる。垂直内側切断部は、近位脛骨に、垂直切断ガイドに画定された内側スロットを参照しながら(換言すれば、基準にしながら)準備することができる。垂直外側切断部は、近位脛骨に、垂直切断ガイドに画定された外側スロットを参照しながら準備することができる。
【0006】
[0005]追加の特徴によれば、本方法は、垂直切断ブロックから延びる舌部を脛骨切断ブロックのスロットに設置することをさらに含むことができる。ロックされていない位置からロックされた位置まで垂直切断ガイドから延びるロック用腕部を移動させることができる。ロックされた位置では、腕部から延びる指部が脛骨切断ブロックと係合することができる。ロックされていない位置からロックされている位置までロック用腕部を垂直切断ガイドに対して回転させることができる。近位脛骨の内側側部を水平に切断することができる。近位脛骨の切除された内側側部にスペーサーを位置させることができる。内側側部間隙を確認することができる。近位脛骨の外側側部を水平に切除することができる。近位脛骨の切除された外側側部にスペーサーを位置させることができる。外側側部間隙を次に確認することができる。少なくとも1つのピンを前進させて垂直切断ガイドに画定された孔に通し、近位脛骨に入れることができる。垂直、内側、および、外側の切断部を準備するときにピンを参照することができる。ピンは、ACL島の下の切断(undercutting)を阻止できる。
【0007】
[0006]他の特徴によれば、前脛骨の骨は、水平に内側および外側の側部を切除する段階を準備した後に取り除くことができる。近位脛骨は、脛骨テンプレートを近位脛骨に設置することによって寸法を測定できる。脛骨テンプレートは、U字形状本体と、内側通路および外側通路と、内側切断ガイドおよび外側切断ガイドとを有することができる。前孔を脛骨に、脛骨テンプレートにある内側ドリルガイドおよび外側ドリルガイドを参照しながら準備することができる。竜骨孔(keel holes)を脛骨に、脛骨テンプレートにある内側通路および外側通路を参照しながら準備することができる。脛骨トレートライアル(tibial tray trial)に連結された脛骨トレートライアルインサート(tibial tray trial insert)を近位脛骨に位置させることができる。トライアルインサートから延びるペグを前孔に設置することができる。トライアルインサートから延びる竜骨を竜骨孔に設置することができる。
【0008】
[0007]適用できる他の領域は、本明細書の記載から明らかになるであろう。この概要の説明および具体例は、例示目的のみを意図しており、本開示の範囲を限定しようとするものではない。
【0009】
[0008]ここに記載の図面は、選択された実施形態の図示のみを目的とするものであり、可能な全ての実施例ではなく、また、本開示の範囲を限定しようとするものではない。
[0009]
図1〜49は、本願が教示するところの一例による脛骨準備を図示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】[0010]例示的な4イン1切断ブロックを選択的に取り付け可能なACL(前十字靭帯)プロテクター(ACL protector)と共に示す斜視図である。
【
図2】[0011]
図1の4イン1ブロックの斜視図である。
【
図3】[0012]例示的な脛骨の前側の図であって、脛骨準備を行う前を示す図である。
【
図4】[0013]
図3の脛骨の前側の図であって、脛骨準備の後を示す図である。
【
図5】[0014]脛骨の前側斜視図であって、髄外脛骨切除ガイドを脛骨に取り付けられた状態で示す図である。
【
図6】[0015]近位脛骨の前側斜視図であって、脛骨切除ブロックを髄外脛骨切除ガイドに取り付け、近位脛骨に当てるように設置した状態で示す図である。
【
図7】[0016]
図8の近位脛骨の内側斜視図であって、モジュール式スタイラスの終端部を内側脛骨プラトーの最も低い地点に係合させた状態を示す図である。
【
図8】[0017]近位脛骨の前側斜視図であって、モジュール式スタイラスの終端部が内側脛骨プラトーの最も低い地点に係合するようにモジュール式スタイラスを位置させた状態を示す図である。
【
図9】[0018]
図8の近位脛骨の前側斜視図であって、脛骨切除ブロックを、所望の場所に調節されたモジュール式スタイラスに取り付けた状態を示す図である。
【
図10】[0019]近位脛骨の前側斜視図であって、垂直切断ガイドを脛骨切除ブロックにACLおよび脛骨島と一直線に取り付けた状態で示す図である。
【
図11】[0020]
図10の脛骨の前側の図であって、ロックされた位置において脛骨切除ブロックに垂直切断ガイドが取り付けられた状態を示す図である。
【
図12】[0021]近位脛骨の前側の図であって、垂直切断ガイドを参照しながら作られたACL島の内側側部および外側側部を形成する一対の垂直切断を行った後を示す図である。
【
図13】[0022]脛骨の上面図であって、切除された脛骨の骨の高さを確認するために、予備トライアルスペーサーを外側プラトーの上に設置した状態を示す図である。
【
図14】[0023]
図13に示した近位脛骨および予備トライアルスペーサーの前側斜視図である。
【
図15】[0024]近位脛骨の上面図であって、脛骨の前部分を切除するために骨鉗子工具を最初に設置した状態で示す図である。
【
図16】[0025]
図15のACL島の前部分の拡大図である。
【
図18】[0027]
図17の脛骨の前側斜視図であって、前島を切除した後、ACL島を囲む面を仕上げるためにヤスリを使用しているところを示す図である。
【
図19】[0028]近位脛骨の前側斜視図であって、近位脛骨に脛骨プラトー角度ゲージが置かれた状態を示す図である。
【
図20】[0029]
図19の脛骨プラトー角度ゲージの目盛りの拡大図である。
【
図21】[0030]内側および外側の間隙を確認するために使用されるスペーサー工具の斜視図である。
【
図22】[0031]近位脛骨の上面図であって、随意の前後寸法測定器を使用して脛骨の寸法を確認するところを示す図である。
【
図23】[0032]
図22に示した寸法測定器の目盛りの拡大図である。
【
図24】[0033]近位脛骨の斜視図であって、脛骨テンプレートおよび前後寸法測定器が近位脛骨の上に置かれ、寸法、回転、および、傾斜を確認するのに使用されている状態を示す図である。
【
図25】[0034]近位脛骨の外側の図であって、
図24の脛骨テンプレートおよび前後寸法測定器が近位脛骨の上に置かれた状態を示す図である。
【
図26】[0035]近位脛骨の前側斜視図であって、脛骨テンプレートが近位脛骨の上に置かれた状態を示し、かつ、脛骨テンプレートの内側前ドリルガイドに入るようにドリルの位置を合わせた状態を示す図である。
【
図27】[0036]脛骨マスク(tibial mask)および脛骨テンプレートの分解正面斜視図である。
【
図28】[0037]近位脛骨の前側斜視図であって、脛骨テンプレートに設けられた内側通路に入るように歯ブラシ型竜骨ブレード(toothbrush keel blade)の位置を合わせた状態を示す図である。
【
図29】[0038]
図28の近位脛骨の前側の図であって、脛骨に内側溝を形成する間、歯ブラシ型竜骨ブレードが脛骨テンプレートの内側通路に入れられている状態を示す図である。
【
図30】[0039]本発明の教示するところの一例により構成された脛骨トレートライアルおよび脛骨トレートライアルインサートの正面斜視図である。
【
図31】[0040]脛骨トレートライアルおよび脛骨トレートライアルインサートを組み立てた位置で示す正面斜視図である。
【
図32】[0041]準備された近位脛骨の前側斜視図であって、脛骨トレートライアルおよび脛骨トレートライアルインサートが脛骨の上に設置された状態を示す図である。
【
図33】[0042]近位脛骨の内側斜視図であって、脛骨ベアリングトライアルハンドルおよび脛骨インパクターが脛骨トレートライアルに取り付けられた状態を示す図である。
【
図34】[0043]
図33の近位脛骨およびベアリングトライアルハンドル工具(bearing trial handle tool)の前側斜視図である。
【
図35】[0044]
図34の近位脛骨の前側斜視図であって、ベアリングトライアルハンドル工具がベアリングを脛骨トレーの上に位置させている状態を示す図である。
【
図36】[0045]
図35の近位脛骨の正面斜視図であって、内側および外側のベアリングが脛骨トレーに取り付けられた状態を示す図である。
【
図37】[0046]
図36の脛骨トレーの正面斜視図であって、大腿骨トライアルを使用して動く範囲を確認しているところを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0047]対応する参照番号は、対応する部分を図面のいくつかの絵を通じて示すものである。
[0048]以下の記載では、両十字膝インプラントを受け入れられるように左膝を準備することに焦点を当てる。この点で、以下の記載は、両十字膝装置を使用して左膝の準備をする器械を使用するさまざまな方法および術式に向けられる。もっとも、同じものを右膝での使用に適用してもよいことは分かるであろう。
【0012】
[0049]本願では焦点を脛骨の準備および関連するインプラントに特に向けられることを予定しているが、左大腿骨を準備する一例の概要を説明する。ボーンストック(bone stock)、潜在的靱帯不安定(ligament instability)、および、解剖学的軸を評価するために、立位前後像X線写真を使用してもよい。例によっては、91cm(36インチ)の長さの立位前後像X線写真を使用してもよい。最初に、遠位大腿骨切断部が機械的軸に対して確実に垂直になるようにしながら、解剖学的軸および機械的軸の間の角度を測定してもよい。この時点で、大腿骨コンポーネントの寸法を側面X線写真およびX線テンプレート(radio graphic templates)を使用して、手術前に見積もることができる。適切な寸法の大腿骨コンポーネントは、手術中に確かめてもよい。
【0013】
[0050]骨髄内(IM)ドリルを使用して遠位大腿骨の顆間切痕および密な海綿骨に深さ約3.5〜5cm(1.5〜2インチ)まで貫入してもよい。遠位大腿骨を貫通するのに、0.953cm(0.375インチ)のドリルを使用してもよい。管入口の場所は、後靱帯の付着部より1センチメートル上、かつ、顆間切痕の若干内側にしてもよい。適当な左または右のバルガスウィング(valgus wing)を選択し、スライドさせてIMロッドに取り付けてもよい。IMロッドを大腿骨管に導入して管を減圧してもよい。バルガスウィングは、遠位内側顆に当たって止まるまでスライドさせてもよい。スライデックス(Slidex(登録商標))遠位切除ブロックおよび切断ブロックアダプターは、両方ともスライドさせて、スライデックス遠位切除ブロックが大腿骨の前皮質に接触するまでバルガスウィングの前孔に入れる。
【0014】
[0051]外反角を確かめるために、アライメントハンドルを切断ブロックアダプターに挿入し、0.635cm(1/4インチ)アライメントロッドを挿入して大腿骨頭の中心まで延ばすことができる。次に、スライデックス遠位切除ブロックを所定の場所に、ブロックの最も近位のピン孔に入っている0.318cm(1/8インチ)急速解放ドリルピンを用いてピン留めすることができる。次に、バルガスウィングを取り除くことが、IMロッドを取り除き、バルガスウィングおよび切断ブロックアダプターを遠位切除ブロックから遠位へ離すように引っ張り、スライデックス遠位切除ブロックをその場に残すことによって行うことができる。0または+3mmの2つの切除スロットが遠位切除に利用可能である。0mmスロットは、遠位内側顆の最も突出した部分から9mmを切除する。さらに遠位を切除する必要があれば、+3mmスロットが12mm切除する。+3mmスロットを越えてさらに遠位を切除する必要があれば、+2または+4mmの0.318cm(1/8インチ)ピン孔を利用して切除ガイドを近位へずらすことができる。0.137cm(0.054インチ)の鋸刃を使用して、選択したスロットを通して遠位切除を完了させることができる。切除した遠位大腿骨は、平坦な器械を使用して検査することができる。骨面は、確実に正しく切除するために、必要に応じて再度切断してもよいし、ヤスリをかけてもよい。さらに安定させるためには、大腿骨ブロックハンドルを利用することができる。
【0015】
[0052]ここで、大腿骨寸法測定の例示的な方法を説明する。最初に、調節可能な前後寸法測定器を切除した遠位面に当て、足部が大腿骨の後顆と接触した状態で配置してもよい。第1のオプションでは、固定の回転足部を使用してもよい。別のオプションでは、調節可能な回転足部を使用してもよい。調節可能な回転目盛りを前後寸法測定器で使用することができる。調節可能な回転足部は、左右にさまざまにすることができ、設定は、外側へ0から10度回転させて設定することができる。一例では、最初に3度回転させた設定で利用することが推奨される。これで大腿骨コンポーネントの寸法を中央の目盛りから読みとることができる。示された寸法が標準寸法範囲内にある、または、より大きな屈曲間隙が望まれているのであれば、小さい寸法を選んで大腿骨4イン1ブロックを前側にずらして配置することを選択してもよい。コンポーネントを前側へずらすために、寸法測定器の中央部分にあるねじ機構を回してドリル孔の高さを1mmずつ持ち上げる。目盛りが寸法測定器に設置されていて、コンポーネントがどれだけ前側へずれることになるかを示す。内外幅が関心事であれば、適切な寸法の内外幅検査器を前後寸法測定器に挿入して、大腿骨の適切な寸法をさらに評価することができる。次に、2つの4イン1切断ブロック設置孔が0.318cm(1/8インチ)ドリルピンを利用して開けられる。一例では、大腿骨コンポーネントの最終的な内外位置は、この段階では決定されず、この術式の後で取り組まれる。
【0016】
[0053]ここで
図1および2を最初に参照しながら、本発明の教示するところによる4イン1ブロック10を使用した遠位大腿骨の最初の準備を説明する。初めに、外科医が前後寸法測定器で選択された寸法に合う所望の4イン1ブロック10を選択し、遠位大腿骨に開けた0.318cm(1/8インチ)孔の中に配置することができる。0.137cm(0.054インチ)フィーラーブレード(feeler blade)を使用して、前骨切除の量を測定することができる。フィーラーブレードが切痕(notching)の可能性を示す場合、前後大腿骨シフトブロックを使用して切断ブロック孔を前側に1mmずつ調節してもよい。ブロックを前側に動かすと、後顆骨がさらに切除される。0.318cm(1/8インチ)ピンを大腿骨4イン1ブロック10に設けられた側孔に配置することができる。前後ブロックは、この時点で、遠位大腿骨とじかに接するように位置していなければならない。ACLプロテクター12は、4イン1ブロック10に対して所定の場所に固定されてもよい。ACLプロテクター12を使用して、ブレードが不用意にACLを切断することを阻むことができる。4イン1ブロック10の位置が満足なものとなると、外科医は、0.137cm(0.054インチ)の鋸刃を使用して前後の骨および前後のチャンファーを切除することができる。ここでも、前後チャンファーの骨を切除しているときに、ACLを切断しないように注意をしなければならない。
【0017】
[0054]ここで
図3から37を参照しながら、第1の実施形態による両十字膝装置のための近位脛骨の準備を説明する。
図3は、本外科術式を行う前の脛骨T1を図示している。
図4は、本願の教えるところにより脛骨術式を行った後の脛骨T2を図示している。なお、脛骨T2は、内側プラトー14、外側プラトー16、前側プラトー18、前チャンファー壁部20、内側垂直壁部22、および、外側垂直壁部24を含む。前チャンファー壁部20、内側垂直壁部22、および、外側垂直壁部24は、一緒に協働してACL島28を形成することができる。丸み(radius)30が内側プラトー14と、内側垂直壁部22との間の移行部に形成されている。同様に、丸み32が外側プラトー16と、外側垂直壁部24との間の移行部に形成されている。
【0018】
[0055]ここで
図5から29を参照しながら、脛骨Tの切除を説明する。膝を屈曲させた状態で、足根関節クランプ40のばね仕掛け腕部36および38が遠位脛骨Tの周りに、ちょうどくるぶしの周りで設置される。足根関節クランプ40は、一般に、髄外脛骨切除ガイド42に取り付けることができる。髄外脛骨切除ガイド42は、ハンドル部分44、入れ子式ロッド部分46、および、切除ブロック連結部分48をさらに備えることができる。押しボタン50を髄外脛骨切除ガイド42に設けることができ、この押しボタン50は、ロッド部分46の入れ子式伸縮動作の全体をハンドル部分44から制御することができる。
【0019】
[0056]この時点で、脛骨切除ブロック54(
図6)を近位脛骨Tに押し当てるようにして配置することができる。ここで
図5に戻ると、矢状方向から見たとき、髄外脛骨切除ガイド42の側面は、脛骨Tの軸とほぼ平行となるように調節される。脛骨切除ブロックは、髄外ガイドに取り付けたときに4度傾斜するように設定される(他の大きさを使用してもよい)。切除軸の調節が内外方向で見て正しくなると、切除ブロック連結部分48が、切除器のシャフトが脛骨結節のすぐ内側になるまで回される。スタイラス60を使用して(
図7および8)、髄外脛骨切除ガイド42が、スタイラス60の末端部62が内側脛骨プラトー64の最も低い地点と係合するように調節される。0.318cm(1/8インチ)ピン66を使用して、髄外脛骨切除ガイド42が脛骨Tに固定される。回転目盛り68は何らかの切断を行う前に切除する高さを微調整するのに使用してもよい(
図9)。
【0020】
[0057]なお、スタイラス60は、4mm切除用に設定される。髄外脛骨切除ガイド42を所定の場所にピン留めする前に、必ず脛骨切除切断ブロック70の高さを調節できるようにしなければならない。脛骨切除ブロック70は、水平スロット71を画定することができる。切除する高さが設定されたら、スタイラス60は取り除くことができる。次に、垂直切断ガイド72を脛骨切除ブロック70に取り付けることができる(
図10)。
【0021】
[0058]次に、垂直切断ガイド72は、所望の垂直切断を行えるように(スロット71に沿った内外方向において)適切な位置に調節することができる。具体的には、垂直切断ガイド72から延びる舌部72aをスロット71に沿ってスライドさせることができる。アライメントガイド73を使用して、垂直切断ガイド72の位置決めを補助することができる。アライメントガイド73は、一般に、一対の平行で細長い腕部73aを含み、この腕部73aは、垂直切断ガイド72の両側に摺動可能に設置される。なお、垂直切断により最終的な脛骨コンポーネントの回転が決まる。ACL繊維の内側部および外側部に等しい量の骨を残すことが重要である。この時点で、ロック用腕部72bを
図10に示すロックされていない位置から
図11および12に示すロックされた位置に回すことにより垂直切断ガイド72を所定の場所にクランプ留めできる。一例では、ロック用腕部72bは、回転して切断ブロック70の上面72dと係合し、固定される指部72cを有することがある。レシプロソー(reciprocating saw)を用いると、垂直切断ガイド72の本体75bと、内側腕部75cとの間に画定された内側スロット75aに鋸を通しながら垂直内側切断部74を準備することができる。垂直内側切断部74は、垂直切断ガイド72の内側面75を参照しながら準備してもよい。垂直内側切断部74は、同時に内側腕部75cを参照しながら準備をしてもよいことは分かるであろう。垂直内側切断部74を準備した後、垂直外側切断部を作ってもよい。垂直外側切断部76は、垂直切断ガイド72の本体75bと、外側腕部77cとの間に画定された外側スロット77aに鋸を通しながら準備することができる。垂直外側切断部76は、垂直切断ガイド72の外側面77を参照しながら準備してもよい。垂直外側切断部76は、同時に外側腕部77cを参照しながら準備してもよいことは分かるであろう。頭部のない垂直ピン78を、前脛骨Tに押し込まれた垂直切断ガイド72に設けられた部分孔79(
図11および12)に通して、設置することができる。垂直内側切断部74および垂直外側切断部76は、共に、
図4で特定した丸み切断部(radius cuts)30および32を形成するのに整合する歯または切断構造を有する鋸刃を使用して準備することができる。なお、この移行部に丸みを導入することにより、内側プラトー14および外側プラトー16のそれぞれと、ACL島28との間の移行部における骨(
図4)は、90度で交差する横切断部と比べるとより強いことがある。次に、垂直切断ガイド72は、頭部がない垂直ピン78から取り除かれる。脛骨Tの内側側部は、その後、水平に切除されてもよい。
【0022】
[0059]
図12Aを参照すると、切断ガイド72の断面図が示されている。
図12Bおよび12Cは、代替垂直切断ガイド72’を示す。本明細書で他に説明しない限り、切断ガイド72’は、切断ガイド72と同様の特徴を含み、これらの特徴は、ダッシュが添えられた同じ参照番号で特定されている。切断ガイド72’は、捕捉型垂直内側スロット75a’および捕捉型垂直外側スロット77a’を提供する。具体的には、上部内側壁部80および上部外側壁部82がそれぞれの垂直内側スロット75a’および垂直外側スロット77a’を閉じる。上部内側および外側壁部80および82は、鋸刃をそれぞれの内側および外側スロット75a’および77a’に保持することを支援できる。
【0023】
[0060]この時点で、内側側部間隙は、8/9mmスペーサーブロック100(
図13〜14)を使用して広がったところを確認してもよい。9mmスペーサー部分102に余裕がなさ過ぎると、脛骨をさらに取り除くことが必要となる。これは、回転目盛りを回して切除ブロックを1mm下げるだけで行える。内側側部拡張間隙が十分であれば、脛骨Tの外側側部が、頭部のない垂直ピン78を所定の場所に残した状態で、水平に切除される。頭部のない垂直ピン78は、ACL島28の下を切ってしまうことを防止する。
【0024】
[0061]
図15〜17に図示されているように、骨鉗子工具108を用いて前骨を取り除き、確実に前島の角を丸めることができる。次に、ACL島ヤスリ120(
図18)を使用して切除された脛骨Tを仕上げ、ACL島28と、内側プラトー14および外側プラトー16のそれぞれの周りも粗い縁部が決して無いようにする。脛骨プラトー角度ゲージ130(
図19)を使用して、脛骨傾斜切断部が等しい大きさの傾斜を有することを確認する。これは、脛骨ベースプレートを適切に固定するのに重要なことであり、また、装置が適切に摩耗し、機能するために重要なことである。
【0025】
[0062]ここで
図21を参照し、完全かつ機能的なACLのための脛骨寸法測定について説明する。内側および外側の間隙がスペーサー工具140を使用して正確であることが確認される。一連の1mmのスペーサー142を必要に応じて磁気的に取り付けてもよい。回転および傾斜もまた正確であることを確認してもよい。オプションとして、脛骨Tは、前後寸法測定器143(
図22および23)を用いて測定してもよい。
【0026】
[0063]脛骨Tは、その後、脛骨テンプレート144を用いて寸法を測定してもよい(
図24〜25)。脛骨テンプレート144は、一般にU字形状の本体部分146を備えており、このU字形状の本体部分146は外側側部148および内側側部150を含む。外側通路152および外側前ドリルガイド154を外側側部148に設けることができる。同様に、内側通路162および内側前ドリルガイド164を内側側部150に設けることができる。回転は、ACL島28の位置で決まるため、正確な回転を確認することが重要である。基礎の回転は、脛骨結節および内顆軸に対して行うことができる。この時点で、0.635cm(1/4インチ)アライメントロッドを脛骨テンプレート144のハンドル170に通すことによって髄外のアライメントを確認することができる。若干外側に回転させることが、膝蓋大腿トラッキングを最適化するのに好ましい。最終的な回転が測定されたら、脛骨テンプレート144の前側の印を前脛骨に電気メスを用いるなどして延ばすことによりその位置の印を付けることができる。前後寸法測定器143から延びる位置指示ピン173を脛骨Tの後方縁部の周りに設置することができる。外側軟組織があるために、脛骨テンプレート144が内側に回転してしまわないように特に注意する必要がある。
【0027】
[0064]ここで、完全かつ機能的なACLのための脛骨の準備を説明する。脛骨テンプレート144を例えばピン174を用いて適切に位置させた状態で(
図26)、ドリル175を使用して、外側前ドリルガイド154を参照しながら前孔を準備することができる。脛骨マスク176を脛骨テンプレート144に取り付けてもよい。一例では、0.318cm(1/8インチ)のドリル175を使用してもよい(
図26)。次に、別の前孔をドリル175を用いて、内側前ドリルガイド164を参照しながら開けることができる。
【0028】
[0065]脛骨プレート144を所定の場所に固定した状態で、歯ブラシ型竜骨ブレード190を使用して、内側および外側脛骨の両方を竜骨ベースプレート用に準備することができる。具体的には、歯ブラシ型竜骨ブレード190を外側通路152および内側通路162を通して挿入することができる(
図28および29)。脛骨Tを準備している間に、脛骨トライアルアセンブリ(tibial trial assembly)200(
図30および31)を準備することができる。脛骨トライアルアセンブリ200は、脛骨トレートライアル202および脛骨トレートライアルインサート204を含むことができる。脛骨の準備が完了したら、脛骨テンプレート144を近位脛骨から取り除くことができる。脛骨トレートライアル202は、さまざまな寸法を提供する複数のバージョンを有することができる。同様に、脛骨トレートライアルインサート204もまた特定の患者の要求に適するさまざまな寸法を提供することができる。なお、脛骨トレートライアルインサート204は、ペグ210と、竜骨213とを含む。ペグ210には、ドリル175を用いて前もって作られた通路に対応する間隔が開いている。同様に、竜骨213は、歯ブラシ型竜骨ブレード190を用いて準備した溝に挿入するのに適した寸法を有する。
図33に示されているように、脛骨トレートライアル202は、脛骨インパクター(impactor)232を使用して脛骨Tに叩き込まれているところが示されている。
図34〜36に図示されているように、外側脛骨ベアリングトライアル(lateral tibial bearing trial)224および内側脛骨ベアリングトライアル(medial tibial bearing trial)226を脛骨トレートライアル202にベアリングトライアルハンドル工具228を使用して取り付け、そして試すことができる。さらに、脛骨トレートライアル202をベアリングトライアルハンドル工具228を用いて位置決めすることができる(
図34)。
図37に示されるように、大腿骨トライアル240を使用して動く範囲を確認できる。
【0029】
[0066]上記実施形態の説明は、例示および説明の目的で提供した。上記実施形態の説明は、網羅的であること、または、開示を限定することは意図してない。ある特定の実施形態での個々の要素または特徴は、一般にその特定の実施形態に限定されず、適用可能であれば、互換性があり、かつ、例え具体的に示されたり、説明されたりしていなくても、選択された実施形態で使用することができる。ある特定の実施形態での個々の要素や特徴はまた多くの方法で修正できるであろう。このような修正例は、本開示から逸脱するものとはみなされず、また、このような変更例は全て、本開示の範囲に含まれることが意図されている。