特許第6078059号(P6078059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6078059置換シンナムアミド誘導体、その製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078059
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】置換シンナムアミド誘導体、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/62 20060101AFI20170130BHJP
   C07D 317/60 20060101ALI20170130BHJP
   C07D 317/64 20060101ALI20170130BHJP
   C07D 317/68 20060101ALI20170130BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20170130BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20170130BHJP
   A61K 31/4525 20060101ALI20170130BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170130BHJP
【FI】
   C07D317/62
   C07D317/60
   C07D317/64CSP
   C07D317/68
   A61P25/24
   A61K31/36
   A61K31/4525
   !C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-517419(P2014-517419)
(86)(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公表番号】特表2014-523886(P2014-523886A)
(43)【公表日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】CN2012077549
(87)【国際公開番号】WO2013000399
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2014年6月17日
(31)【優先権主張番号】201110174376.0
(32)【優先日】2011年6月27日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201210123842.7
(32)【優先日】2012年4月25日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511237874
【氏名又は名称】タスリー・ファーマシューティカル・グループ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TASLY PHARMACEUTICAL GROUP CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】マ、シャオフイ
(72)【発明者】
【氏名】ジン、ユアンペン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ミン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、シュイピン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ワンイ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、シュエジュン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、グオチェン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ルル
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ランラン
(72)【発明者】
【氏名】チュ、ヨンホン
【審査官】 小川 由美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/103527(WO,A1)
【文献】 特開平02−000722(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/028314(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1532182(CN,A)
【文献】 特開2011−068888(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0675619(KR,B1)
【文献】 JACOBS, H. ET AL.,Amides of Piper amalago var. nigrinodum,JOURNAL OF THE INDIAN CHEMICAL SOCIETY,1999年,vol. 76, no. 11-12,713 - 717
【文献】 WANG, SHUYU ET AL.,Molecular Shape Analysis and Quantitative Structure-Anticonvulsant Activity Relationships of Cinnamamides,CHINESE JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY,1988年,vol. 8, no. 3,217 - 220
【文献】 WANG, SHUYU ET AL.,Chemical Structure-Physiological Activity Relationship in Cinnamamides and Their Analogs III. The Relationship Between Chemical Structure and Anticonvulsant Action,JOURNAL OF PEKING UNIVERSITY,1982年,vol. 14, no. 1,65 - 70
【文献】 LI, RENLI ET AL.,Chemical Structure-Physiological Activity Relationship In Cinnamamides And Theiranalogs II. The relationship between chemical structure and anticonvulsant action,JOURNAL OF PEKING UNIVERSITY,1980年,vol. 12, no. 3,153 - 157
【文献】 ZHANG, XIAOHUI ET AL.,Chemical Structure-Physiological Activity Relationships In Cinnamamides And Their Analogs I. The study of anticonvulsant activity,JOURNAL OF PEKING UNIVERSITY,1980年,vol. 12, no. 2,83 - 91
【文献】 MBAZE, L.M. ET AL.,Oxidative burst inhibitory and cytotoxic amides andlignans from the stem bark of Fagara heitzii (Rutaceae),PHYTOCHEMISTRY,2009年,vol. 70, no. 11-12,1442 - 1447
【文献】 CHAAIB, F. ET AL.,Antifungal and antioxidant compounds from the root bark of Fagara zanthoxyloides,PLANTA MEDICA,2003年,vol. 69, no. 4,316 - 320
【文献】 NIU, LIYING ET AL.,The quantum study on structyre-activity relationship of 3,4-methnyl-dioxy cassia-acylamide,COMPUTERS AND APPLIED CHEMISTRY,2004年,vol. 21, no. 4,587 - 590
【文献】 DELANEY, A.D. ET AL.,Partition coefficients of some N-alkyl and N,N-dialkyl derivatives of some cinnamamides and benzalcyanoacetamides in the system cyclohexane-water,CANADIAN JOURNAL OF CHEMISTRY,1969年, vol. 47, no. 17,3273 - 3277
【文献】 LINKE, S. ET AL.,Wisanin und andere amide der 5-(2-methoxy-4,5-methylendioxyphenyl)-2,4-pentadiensa"ure: Synthesen, spektroskopische untersuchungen und pru"fung auf antibakterielle wirksamkeit,TETRAHEDRON,1978年,vol. 34, no. 13,1979 - 1983
【文献】 CARLTON, D.L. ET AL.,Discovery of small molecule agonists for the bombesin receptor subtype 3 (BRS-3) based on an omeprazole lead,BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY LETTERS,2008年,vol. 18, no. 20,5451 - 5455
【文献】 REGISTY[STN online],2011年 8月31日,RN:1325878-69-0
【文献】 REGISTRY[STN online],2011年 9月 9日,RN:1330482-32-0
【文献】 REGISTRY[STN online],2011年11月 9日,RN:1343119-20-9
【文献】 REGISTRY[STN online],2011年 9月 9日,RN:1330482-73-9
【文献】 REGISTRY[STN online],2011年 9月 9日,RN:1330481-94-1
【文献】 REGISTRY[STN online],2011年 9月 4日,RN:1327495-16-8
【文献】 REGISTRY[STN online],2011年 8月31日,RN:1326295-79-7
【文献】 REGISTRY[STN online],2011年 8月31日,RN:1325916-64-0
【文献】 REGISTRY[STN online],2007年 4月19日,RN:930892-41-4
【文献】 REGISTRY[STN online],2007年 4月19日,RN:931044-33-6
【文献】 REGISTRY[STN online],2009年 2月 2日,RN:1099745-50-2
【文献】 REGISTRY[STN online],2009年 2月 2日,RN:1099784-94-7
【文献】 REGISTRY[STN online],2008年 4月21日,RN:1016079-34-7
【文献】 REGISTRY[STN online],2009年 2月 2日,RN:1099283-55-2
【文献】 REGISTRY[STN online],2009年 2月 2日,RN:1099294-40-2
【文献】 REGISTRY[STN online],2009年 2月 2日,RN:1099711-62-2
【文献】 REGISTRY[STN online],2011年 4月29日,RN:1287421-56-0
【文献】 REGISTRY[STN online],2008年 9月19日,RN:1050648-40-2
【文献】 REGISTRY[STN online],2008年 9月19日,RN:1050531-27-5
【文献】 REGISTRY[STN online],2007年 2月28日,RN:923686-10-6
【文献】 REGISTRY[STN online],2007年 2月26日,RN:923149-22-8
【文献】 REGISTRY[STN online],2006年 3月27日,RN:878126-55-7
【文献】 REGISTRY[STN online],2007年 4月17日,RN:930524-41-7
【文献】 REGISTRY[STN online],2009年 2月 1日,RN:1098355-85-1
【文献】 REGISTRY[STN online],2010年 9月13日,RN:1240638-55-4
【文献】 REGISTRY[STN online],2011年 4月28日,RN:1286960-13-1
【文献】 REGISTRY[STN online],2009年 6月 5日,RN:1152544-85-8
【文献】 REGISTRY[STN online],2009年 6月 5日,RN:1152538-92-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D,A61K
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、
はF、Cl、Br、I、OCH、OCF、OCHF、OCHF、CF、CHF、CHF、CH、CHCH、CFCH又はNOであり、
nは0、1、2又は3を表し、
【化2】
の単位は少なくとも1つの炭素−炭素単結合又は二重結合を含有し、
Xは=O又は=Sであり、
YはN又はNRであり、ここで、該RはH、C〜C10直鎖ヒドロカルビル又はC〜C10分枝鎖ヒドロカルビルであり、
はH、C〜C10直鎖ヒドロカルビル若しくはC〜C10分枝鎖ヒドロカルビル基であるか、又はRは隣接するYとピペリジル基を形成する基であり、
ただし、nが1を表すときにRがOCH又はClである場合及びnが0を表すときにRがCl又はBrである場合を除く)
の化合物又はその薬学的に許容可能な酸付加塩。
【請求項2】
が−CFであり、
nが0、1、2又は3を表し、
【化3】
が少なくとも1つの炭素−炭素単結合又は二重結合を含有し、
Xが=Oであり、
YがN又はNHであり、
がH、C〜C10直鎖ヒドロカルビル若しくはC〜C10分枝鎖ヒドロカルビル基であるか、又はRが隣接するYとピペリジル基を形成する基である、
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な酸付加塩。
【請求項3】
一般式(II):
【化4】
(式中、
はF、Br、IOCF、OCHF、OCHF、CF、CHF、CHF、CH、CHCH、CFCH又はNOであり、
はH、C〜C10直鎖ヒドロカルビル若しくはC〜C10分枝鎖ヒドロカルビル基である)
の置換シンナムアミド誘導体である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な酸付加塩。
【請求項4】
N−イソブチル−5’−ニトロ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド、
N−イソブチル−5’−ヨード−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド、
N−イソブチル−5’−クロロ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド、
N−イソブチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド、
N−イソブチル−5−(5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)ペンタジエンアミド、
N,N−ジメチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド、
N,N−ジエチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド、
1−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナミル)−ピペリジン、
N−イソブチル−3−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−プロピオンアミド、
N−イソブチル−5−トリフルオロメチル−3,4−メチレンジオキシベンズアミド及び
1−(5−トリフルオロメチル−3,4−メチレンジオキシベンゾイル)−ピペリジン
からなる群より選択される化合物又はその薬学的に許容可能な酸付加塩。
【請求項5】
前記薬学的に許容可能な酸付加塩が以下の:硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸又はコハク酸塩から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な酸付加塩。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な酸付加塩を含有する医薬組成物。
【請求項7】
更に薬学的に許容可能な担体(複数の場合もあり)を含有する、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な酸付加塩の製造方法であって、
a.ウィッティヒ反応又はウィッティヒ−ホーナー反応により置換ピペロナール化合物にエトキシホルミルメチレントリフェニルホスフィン又はホスホノ酢酸トリエチルを反応させて置換ケイ皮酸生成物を得る工程と、
b.前記置換ケイ皮酸生成物から該置換ケイ皮酸生成物のアシル化生成物(ハロゲン化アシル、アジド、無水物、活性エステルから選択される)を得て、該アシル化生成物に有機アミンを反応させて該置換ケイ皮酸生成物のアミド生成物を得る工程、代替的には、前記置換ケイ皮酸生成物に有機アミン及び縮合剤(HATU、HBTU、EDCI、DCC等)を反応させて該置換ケイ皮酸生成物のアミド生成物を得る工程、又は、
5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸を出発原料として用いてそのアシル化生成物(ハロゲン化アシル、アジド、無水物、活性エステルから選択される)を得て、該アシル化生成物に有機アミンを反応させて該5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸のアミド生成物を得る工程、若しくは5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸に有機アミン及び縮合剤(HATU、HBTU、EDCI、DCC等)を反応させて該5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸のアミド生成物を得る工程と、
側鎖に炭素−炭素二重結合を含有する生成物を接触水素化又は水素化ホウ素ナトリウムで還元することにより側鎖に炭素−炭素単結合を含有する生成物を製造する工程と、
を含む、製造方法。
【請求項9】
うつ型精神疾患を予防及び治療する薬物の製造における、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用。
【請求項10】
うつ型精神疾患を予防及び治療する薬物の製造における、化合物又はその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用であって、
前記化合物が、
N−イソブチル−5’−ニトロ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド、
N−イソブチル−5’−ヨード−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド、
N−イソブチル−5’−クロロ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド、
N−イソブチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド、
N−イソブチル−5−(5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)ペンタジエンアミド、
N,N−ジメチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド、
N,N−ジエチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド、
1−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナミル)−ピペリジン、
N−イソブチル−3−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−プロピオンアミド、
N−イソブチル−5−トリフルオロメチル−3,4−メチレンジオキシベンズアミド及び
1−(5−トリフルオロメチル−3,4−メチレンジオキシベンゾイル)−ピペリジン
からなる群より選択される使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化学及び製薬学の両方の分野に関し、特に、一般式(I)の化合物、一般式(I)の化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩、それらの製造方法、それらを含有する医薬組成物並びにうつ型精神疾患の治療及び/又は予防に対する一般式(I)の化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
うつ病は情動障害であり、抑うつ気分を主な特徴とする精神疾患症状であると考えられている。臨床的にはうつ病は、抑うつ気分、精神緩慢、発語減少、活動低下及び仕事への興味の喪失等を含む一連の症状により発現する。WHOにより報告されているように、うつ病は世界で4番目に多い疾患となっている。2020年までに、心臓疾患に次いで2番目に多い疾患になる可能性が高い。現在、中国には約2600万人のうつ病患者がいるが、その10%しか通常の薬物療法を受ける機会がない。それゆえ、抗うつ薬には確実に巨大な潜在的市場がある。
【0003】
多数の研究により示唆されるように、神経中枢モノアミン作動性神経伝達物質、ドーパミン及びコリン作動性の変化、それらの関連受容体機能の変動並びに神経内分泌機能障害はうつ病の発症及び進行に重要な役割を果たす可能性が高かった。現在まで、うつ病の治療原理は、視床下部内のモノアミン神経伝達物質の含有量、その受容体機能を調整すること及び正常な神経内分泌を回復させることに重点が置かれるべきものである。
【0004】
今日、薬物療法が依然としてうつ病の主な治療手段である。うつ病の病因は複雑で、多くの要因、例えば、社会心理学、遺伝、人体の生化学的変化及び神経内分泌学が関連していることが文献により確認されている。抗うつ薬は、受容体、モノアミン神経伝達物質の濃度及びサイトカイン等、各種の標的を有し得る。異なる抗うつ薬は異なる標的を通じて効果を生じる。抗うつ薬の第1世代はモノアミンオキシダーゼ阻害薬に属するものであった。しかし、その選択性及び酵素に対する不可逆阻害効果が中毒性肝障害をもたらし、或る特定の毒性及び副作用があるため、徐々に3環抗うつ薬に取って代わられてきている。かかる一般的に用いられる医薬としてはドキセピン、アミトリプチリン及びクロミプラミン等が挙げられる。これらの薬物は、内因性うつ病に対する治療効果がより良好であり、とりわけ、抑うつ気分、興味喪失及び悲観主義に対しては80%超の効力があるものの、心毒性がより高く、有害反応がより多いと考えられる。1980年代後半に、選択的5−HT再取り込み阻害薬(SSRI)が新規抗うつ薬の一種として現れた。現在までに、これらは古典的な抗うつ効果を維持し、かつ他の受容体によって引き起こされる有害反応を有意に低減させるため、欧州及び米国では一般的な第一選択抗うつ薬として用いられている。かかる一般的に用いられる医薬としてはフルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム及びフルボキサミン等が挙げられる。これらは胃及び腸を通じて吸収され、肝臓で代謝されるため、胃腸障害を引き起こし、中には更に性機能障害を引き起こすものもある。また、臨床試験から、単一の標的に向けて設計したこれらの合成薬では良好な効果を達成することが難しいことが示された。現在に至るまで、効力がより良好でかつ毒性及び副作用がより少ない理想的な抗うつ薬は開発されていない。
【0005】
特許文献1には、コショウ科植物大叶蒟(Piper laetispicum C. DC)から抽出したアルカロイドである、化合物N−イソブチル−5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミドが開示されている。その構造を以下に示す。動物実験に示すように、化合物N−イソブチル−5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミドは顕著な抗うつ効果を有した。
【0006】
【化1】
N−イソブチル−5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許出願第201010169679.9号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実際、大叶蒟の植物資源は限られており、その中の化合物N−イソブチル−5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミドの含有量は少ない。この植物のみからこの化合物を抽出及び分離することが基礎研究及び臨床試験の需要を満たすことは難しいであろう。したがって、本発明は、抗うつ活性のより高い薬物分子が得られるように、N−イソブチル−5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド及びその誘導体を化学的に合成するプロセスに重点を置く。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において、N−イソブチル−5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−1)及びその誘導体を合成し、それらの抗うつ活性を各種のマウスうつ病モデルにより選別した。最終的に、顕著な抗うつ効果を有する一連の薬物分子を見出した。
【0010】
本発明の目的は、一般式(I):
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、
はF、Cl、Br、I、OCH、OCF、OCHF、OCHF、CF、CHF、CHF、CH、CHCH、CFCH又はNOであり
nは0、1、2又は3を表し、
【0013】
【化3】
【0014】
の単位は少なくとも1つの炭素−炭素単結合又は二重結合を含有し、
Xは=O又は=Sであり、
YはN又はNRであり、ここで、該RはH、C〜C10直鎖ヒドロカルビル又はC〜C10分枝鎖ヒドロカルビルであり、
はH、C〜C10直鎖ヒドロカルビル若しくはC〜C10分枝鎖ヒドロカルビル基であるか、又はRは隣接するYとピペリジル基を形成する基であり、
ただし、nが1を表すときにがOCH又はClである場合及びnが0を表すときにRがCl又はBrである場合を除く)
の化合物及びその薬学的に許容可能な酸付加塩を提供することである。
【0015】
好ましくは、Rが−CFであり、
nが0、1、2又は3を表し、
【0016】
【化4】
【0017】
の単位が少なくとも1つの炭素−炭素単結合又は二重結合を含有し、
Xが=Oであり、
YがN又はNHであり、
がH、C〜C10直鎖ヒドロカルビル若しくは〜C10分枝鎖ヒドロカルビルであるか、又はRが隣接するYとピペリジル基を形成する基である。
【0018】
別の好ましい置換シンナムアミド誘導体は、以下の一般式(II):
【0019】
【化5】
【0020】
(式中、
はF、Br、IOCF、OCHF、OCHF、CF、CHF、CHF、CH、CHCH、CFCH又はNOであり、
はH、C〜C10直鎖ヒドロカルビル若しくはC〜C10分枝鎖ヒドロカルビル基である)
の構造で与えられる。
【0021】
最も好ましくは、本発明の化合物及びその薬学的に許容可能な酸付加塩の構造は以下の化合物で表される。ただし、化合物(I−4)及び(I−7)は参考例である。
N−イソブチル−5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−1)
【0022】
【化6】
【0023】
N−イソブチル−5’−ニトロ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−2)
【0024】
【化7】
【0025】
N−イソブチル−5’−ヨード−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−3)
【0026】
【化8】
【0027】
N−イソブチル−5’−クロロ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−4)
【0028】
【化9】
【0029】
N−イソブチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−5)
【0030】
【化10】
【0031】
N−イソブチル−5−(5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)ペンタジエンアミド(I−6)
【0032】
【化11】
【0033】
N−イソブチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−7)
【0034】
【化12】
【0035】
N,N−ジメチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−8)
【0036】
【化13】
【0037】
N,N−ジエチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−9)
【0038】
【化14】
【0039】
1−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナミル)−ピペリジン(I−10)
【0040】
【化15】
【0041】
N−イソブチル−3−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)プロピオンアミド(I−11)
【0042】
【化16】
【0043】
N−イソブチル−5−トリフルオロメチル−3,4−メチレンジオキシベンズアミド(I−12)
【0044】
【化17】
【0045】
1−(5−トリフルオロメチル−3,4−メチレンジオキシベンゾイル)−ピペリジン(I−13)
【0046】
【化18】
【0047】
本発明によれば、本発明の化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩は以下の:硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸又はコハク酸塩から選択される。好ましくは、本発明の化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩は塩酸塩である。
【0048】
別の態様では、本発明は、一般式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0049】
好ましくは、一般式(I)の化合物はN−イソブチル置換シンナムアミド誘導体である。一般式(I)の化合物は以下の合成経路により製造される。
【0050】
置換ケイ皮酸誘導体は、置換ピペロナール誘導体とエトキシホルミルメチレントリフェニルホスフィン又はホスホノ酢酸トリエチルとの間のウィッティヒ反応又はウィッティヒ−ホーナー反応により得られる。
【0051】
得られた置換ケイ皮酸誘導体を更にアシル化してそのアシル化誘導体(ハロゲン化アシル、アジド、無水物、活性エステルを含む)を得た後、該アシル化誘導体に有機アミンを反応させてアミド誘導体を得る。代替的には、置換ケイ皮酸誘導体に有機アミン及び縮合剤(HATU、HBTU、EDCI、DCC等)を反応させてアミド誘導体を得る。
【0052】
【化19】
【0053】
本発明によれば、最も簡便な合成方法は、最終生成物に対応する酸のアミド化反応によりアミド化合物を得ることである。
【0054】
5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド誘導体の好ましい構造は以下の合成経路により製造される。
【0055】
出発原料として5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸を用いてそのアシル化誘導体(ハロゲン化アシル、アジド、無水物、活性エステルを含む)を得た後、該アシル化誘導体に有機アミンを反応させてアミド誘導体を得る。代替的には、5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸に有機アミン及び縮合剤(HATU、HBTU、EDCI、DCC等)を反応させてアミド誘導体を得る。
【0056】
【化20】
【0057】
好ましくは、ハロゲン化アシルを用いて直接アシル化する。
【0058】
本発明によれば、本発明の化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩は従来の酸−塩基中和反応により製造される。例えば、本発明の対応する酸付加塩は、本発明の化合物に以下の酸:硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸又はコハク酸を反応させることにより製造される。好ましくは、本発明の化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩は塩酸塩である。
【0059】
本発明の別の態様では、本発明の化合物又はその薬学的に許容可能な酸付加塩を含有する医薬組成物を提供する。
【0060】
本発明によれば、医薬組成物は任意の剤形に調製することができる。剤形としては、錠剤、例えば、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶性コーティング錠又は徐放錠;カプセル、例えば、硬カプセル、軟カプセル又は徐放カプセル;経口液;口腔錠;顆粒剤;沸騰水に溶解した後の顆粒剤;丸剤;散剤;ペースト、例えば、軟膏、プラスター;ペレット;懸濁液;粉剤;液剤、例えば、注射剤;坐剤;クリーム;噴霧剤;滴剤及び貼布剤が挙げられる。
【0061】
本発明によれば、化合物は好ましくは単位剤形の製剤に調製することができる。
【0062】
本発明によれば、組成物は有効成分として上記化合物を単位剤形当たり0.1mg〜1000mg含み、残部は薬学的に許容可能な賦形剤(複数の場合もあり)である。薬学的に許容可能な賦形剤(複数の場合もあり)は製剤の総重量の0.01wt%〜99.99wt%を占める。
【0063】
本発明によれば、組成物の用法(medical usage)及び用量は、例えば、1日1回〜3回及び1回1錠〜10錠のように、患者の状態により決定される。
【0064】
本発明によれば、組成物は経口投与剤形又は注射剤に調製することができる。
【0065】
ここで、上記経口投与剤形は以下の1種から選択される:カプセル、錠剤、滴丸剤、顆粒剤、濃縮丸剤及び経口液。
【0066】
ここで、上記注射剤は以下の1種から選択される:注射液、注射用凍結乾燥粉末及び水注射剤。
【0067】
本発明によれば、本発明の医薬組成物の経口投与剤形は概して従来の賦形剤(複数の場合もあり)、例えば、結着剤、充填剤、希釈剤、錠剤圧縮剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、着香剤、湿潤剤を含有し、必要に応じて、錠剤はコーティングすることができる。
【0068】
好適な充填剤としてはセルロース、マンニトール、ラクトース及び他の類似充填剤が挙げられる。好適な崩壊剤としてはデンプン、ポリビニルピロリドン(PVP)及びデンプン誘導体(好ましくはデンプングリコール酸ナトリウム)が挙げられる。好適な滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。好適な湿潤剤としてはドデシル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0069】
通常、経口投与固体製剤は常法、例えば、配合、充填及び錠剤圧縮等により製造することができる。繰り返して配合することにより、大量の充填剤を有するこれらの組成物中に活性物質を均一に分布させることができる。
【0070】
本発明によれば、経口液体製剤は例えば、水溶性若しくは脂溶性の懸濁液、溶液、乳剤、シロップ剤若しくはエリキシル剤、又は使用前に水若しくは他の好適な担体で再構成することができる乾燥品であり得る。液体製剤は従来の添加剤、例えば、懸濁剤、例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル又は水素添加食用脂;乳化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン又はアラビアガム;食用油であり得る非水性担体、例えば、アーモンド油、分別ヤシ油、グリセロールのエステル、プロピレングリコール又はエタノール;及び防腐剤、例えば、メチルパラベン、ニパソール又はソルビン酸を含有することができる。必要に応じて、従来の着香剤又は着色剤を含ませることができる。
【0071】
注射剤に関して、製造した液体単位剤形は本発明の活性成分(複数の場合もあり)及び滅菌担体(複数の場合もあり)を含有する。担体(複数の場合もあり)の種類及び活性成分(複数の場合もあり)の濃度に応じて、上記活性成分(複数の場合もあり)を溶解する又は懸濁することができる。概して、溶液は活性成分(複数の場合もあり)を担体に溶解し、濾過滅菌し、好適なバイアル又はアンプルに充填し、密封することにより製造される。幾つかの薬学的に許容可能なビヒクル、例えば、局所麻酔剤、防腐剤及び緩衝剤も担体に加えることができる。安定性を改善させるために、本発明の組成物は、バイアルに充填した後真空で処理して水を除去してから凍結することができる。
【0072】
本発明によれば、上記医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体を任意に加えることができる製剤に調製される。上記担体は、糖アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール;アミノ酸、例えば、塩酸システイン、メチオニン、グリシン;EDTA二ナトリウム、EDTAカルシウムナトリウム;無機塩、例えば、一価のアルカリ金属の炭酸塩、リン酸塩又はそれらの水溶液;塩化ナトリウム、塩化カリウム;ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム;炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム;ステアリン酸塩、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム;無機酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸;有機酸、例えば、酢酸、ビタミンC;有機酸塩、例えば、酢酸塩、乳酸ナトリウム;オリゴ糖、多糖、セルロース及びそれらの誘導体、例えば、マルトース、グルコース、フルクトース、デキストラン、スクロース、ラクトース、シクロデキストリン(β−シクロデキストリン等)、デンプン;メルカプト酢酸;ケイ素誘導体;アルギン酸塩;ゼラチン;PVP、グリセロール;Tween−80;寒天;界面活性剤;ポリエチレングリコール;リン脂質材料;カオリン;タルク粉末等から選択される。
【0073】
本発明によれば、上記医薬組成物は他の抗うつ薬と組み合わせて適用してもよい。すなわち、本発明の化合物を除いて、精神疾患の予防及び治療に臨床的に用いられる1つ又は複数の種類の抗うつ薬、例えば、ネファゾドン、スルピリド、アルプラゾラム、セレナーゼ、ブスピロン、タンドスピロン、メチルフェニデート、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、レクサプロ、フルボキサミン、レボキセチン、ベンラファキシン、フルアンキソール、メリトラセン及びニューロスタン等がある。
【0074】
本発明によれば、動物実験に示すように、置換シンナムアミド及びその誘導体は、2つのうつ病の獲得性行動絶望動物モデルである、マウスの強制水泳試験及び尾懸垂試験における無動時間を有意に短縮することができる。それらはモノアミンを消費するレセルピンの活性に拮抗する効果を有する。したがって、置換シンナムアミド及びその誘導体はうつ型精神疾患を治療及び予防する薬物として用いることができる。
【0075】
本発明の別の態様では、うつ型精神疾患を予防及び治療する薬物の製造における一般式(I)の化合物の使用を提供する。
【0076】
本発明によれば、精神疾患を予防及び治療する化合物及び組成物の有益な効果は以下の実験データにより確認される。
【0077】
試験1 マウスでの尾懸垂試験の「獲得性絶望」うつモデル
1 材料
1.1 試薬
本発明の方法に照らして、化合物I−1、I−2、I−3、I−4、I−5、I−6、I−7、I−8、I−9、I−10、I−11、I−12及びI−13を合成した(純度95%超)。それらの化合物を使用前に2% Tween−80水溶液に加えて1mg/mlの薬物化合物を含有する溶液を得た。
【0078】
塩酸フルオキセチンは、規格20mg/粒及びバッチ番号81958でPatheon Inc.(フランス)により製造され、Eli Lilly (Suzhou) Pharmaceutical Inc.により別途包装された。実験前に塩酸フルオキセチンを2% Tween−80水溶液に溶解して1mg/mlの薬物化合物を含有する溶液を調製した。
【0079】
1.2 動物
C57BL/6マウスはBeijing Vital River Experimental Animal Co. Ltd.から購入した。動物認証番号はSCXK(Beijing)2006−0009であった。
【0080】
1.3 装置
YLS−1A多機能マウス自律神経活動記録器はShandong Institute of Medical Instrumentsにより提供された。
【0081】
2.方法
体重18g〜22g、6週齢〜8週齢の雄性C57BL/6マウス240匹を2日〜3日間飼育して順応させた。
【0082】
実験1
マウス110匹をランダムに選択してそれらの自律神経活動の回数を観察した。マウスをYLS−1A多機能マウス自律神経活動記録器に入れ、1分間順応させた後、1分目の終わりから4分目までの期間、マウスの活動を計測した。自律神経活動の回数が70〜140の間のマウス96匹を選別し、ランダムに8群に分け、薬物化合物を表1に列記した用量で1日1回7日間連続して胃内投与した。溶媒対照群には同体積の2% Tween−80水溶液を投与した。6日目の投与30分後に全てのマウスを自律神経活動記録器に入れた。1分間順応させた後、1分目の終わりから4分目までの期間、マウスの活動を計測した。
【0083】
7日目の投与30分後、マウスの尾の端部から1cmの近さでマウスをゴム引布で支持台上に固定し、マウスを逆さ吊りにした。マウスの頭はテーブルの約30cm上方にあり、その視界を隣接するマウスからプレートで隔離した。通常、マウスは異常な体位を解消する目的でもがこうとする可能性がある。しかし、或る期間の後、マウスは発作的に無動を示し、絶望状態を呈した。各マウスの6分内の累計の無動時間を観察し、これを「絶望時間」とした。ここで、無動とはマウスの肢が呼吸をすることを除いて動かないことを指す。
【0084】
実験2
マウス130匹をランダムに選択してその自律神経活動の回数を観察した。方法は実験1と同一であった。自律神経活動の回数が70〜140の間のマウス108匹を選別し、ランダムに9群に分け、薬物化合物を表2に列記した用量で1日1回7日間連続して胃内投与した。溶媒対照群には同体積の2% Tween−80水溶液を投与した。6日目の投与30分後、各マウスの自律神経活動の回数を観察した。7日目の投与30分後、尾懸垂試験における無動時間を観察した。方法は実験1と同一であった。
【0085】
統計学:
SPSS10.0解析ソフトウェアを用い、一元配置分散分析法で結果を解析して群間の有意性を比較した。
【0086】
3. 結果
実験1を用いて自律神経活動の回数及び尾懸垂試験におけるマウスの無動時間に対する化合物I−1、I−2、I−3、I−4、I−5、I−6の効果を評価した。表1に示すように、溶媒対照群と比較して、塩酸フルオキセチンを10mg/kgの用量で1週間胃内投与すると、マウスの自律神経活動に対する効果はなく、尾懸垂試験における無動時間を有意に低減させることができた(p<0.01)。化合物I−4又はI−5を10mg/kgの用量で胃内投与しても、尾懸垂試験におけるマウスの無動時間を有意に低減させることができた(p<0.05、p<0.01)が、マウスの自律神経活動に対する影響はなかった。他の投与群に関しては、尾懸垂試験におけるマウスの無動時間が様々な程度で低減したが、統計学的な差はなかった。I−1と比較して、I−4又はI−5は尾懸垂試験におけるマウスの無動に拮抗する効果がより良好であった(p<0.05)。
【0087】
【表1】
【0088】
実験2を用いてマウスの自律神経活動の回数及び尾懸垂試験における無動時間に対する化合物I−5、I−8、I−9、I−10、I−11、I−12及びI−13の効果を評価した。表2に示すように、溶媒対照群と比較して、I−5、I−9、I−10、I−11、I−12、I−13を10mg/kgの用量で1週間胃内投与すると、尾懸垂試験におけるマウスの無動時間を有意に低減させることができた(p<0.01)が、マウスの自律神経活動に対する効果はなかった。これらの化合物が中枢神経系を興奮させる作用を有さずに或る特定の抗うつ活性を有することが示された。
【0089】
【表2】
【0090】
試験2 抗レセルピン誘発眼瞼下垂のうつモデル試験
1 材料
1.1 試薬
本発明の方法に照らして、化合物I−1、I−2、I−3、I−4、I−5、I−6、I−7、I−8、I−9、I−10、I−11、I−12及びI−13を合成した(純度95%超)。2% Tween−80水溶液を加えて1mg/mlの薬物化合物を含有する溶液を調製した。
【0091】
塩酸フルオキセチンは、規格20mg/粒及びバッチ番号81958でPatheon Inc.(フランス)により製造され、Eli Lilly (Suzhou) Pharmaceutical Inc.により別途包装された。実験前に塩酸フルオキセチンを2% Tween−80水溶液に溶解して1mg/mlの薬物化合物を含有する溶液を調製した。
【0092】
レセルピン注射剤を規格1mg/ml及びバッチ番号x070302でShanghai Fudan Fuhua Pharmaceutical Co., Ltd.から購入した。
【0093】
1.2 動物
C57BL/6マウスはBeijing Vital River Experimental Animal Co. Ltd.から購入した。動物認証番号はSCXK(Beijing)2006−0009であった。
【0094】
1.3 装置
YLS−1A多機能マウス自律神経活動記録器はShandong Institute of Medical Instrumentsにより提供された。
【0095】
2.方法
体重18g〜22g、6週齢〜8週齢の雄性C57BL/6マウス240匹を2日〜3日間飼育して順応させた。
【0096】
実験1
雄C57BL/6マウス120匹をランダムに選択してそれらの自律神経活動の回数を観察した。マウスをYLS−1A多機能マウス自律神経活動記録器に入れ、1分間順応させた後、1分目の終わりから4分目までの期間、マウスの活動を計測した。自律神経活動の回数が70〜140の間のマウス96匹を選別し、ランダムに8群に分け、薬物化合物を表3に列記した用量で1日1回7日間連続して胃内投与した。溶媒対照群には同体積の2% Tween−80水溶液を投与した。正常対照群を除いて、最後の投与から30分後、各群にレセルピンを4mg/kgの用量で腹腔内注射した。次に、運動不能、眼瞼下垂及び体表温度を観察した。
【0097】
I 運動不能:レセルピンの腹腔内注射から1時間後、マウスを直径7.5cmの円の中心に置き15秒間観察して「脱円(out-of-circle)」比を算出した。
【0098】
II 眼瞼下垂:レセルピンの腹腔内注射から1時間後、マウスの閉瞼を観察し、以下の基準によりスコア付けした:眼瞼が開いている、0;眼瞼が1/4閉じた、1;眼瞼が2/4閉じた、2;眼瞼が3/4閉じた、3;眼瞼が完全に閉じた、4。
【0099】
III 体表温度:レセルピンの腹腔内注射から2時間後、マウスの腹部の体表温度を測定した。
【0100】
実験2
C57BL/6マウス120匹をランダムに選択してその自律神経活動の回数を観察した。方法は実験1と同一であった。自律神経活動の回数が70〜140の間のマウス100匹を選別し、ランダムに10群に分け、薬物化合物を表4に列記した用量で1日1回7日間連続して胃内投与した。正常群及び溶媒対照群のマウスに同体積の2% Tween−80水溶液を投与した。正常対照群を除いて、最後の投与から30分後、各群にレセルピンを4mg/kgの用量で腹腔内注射した。次に、運動不能、眼瞼下垂及び体表温度を観察した。観察方法は実験1と同一であった。
【0101】
統計学:
SPSS10.0解析ソフトウェアを用い、一元配置分散分析法で結果を解析して群間の有意性を比較した。
【0102】
3 結果
レセルピン拮抗薬(Reserpine reversal)は小胞再取り込み阻害薬であると考えられており、これが伝達物質を小胞から外に出し、更にモノアミンオキシダーゼによる伝達物質の分解を容易にする。したがって、NE、E、DA及び5−HT等が枯渇し、これが生理学的又は行動学的な変化を生じ、結果的にうつ症状が観察される。
【0103】
実験1に示すように、レセルピンの投与後、運動不能、眼瞼下垂及び体表温度の低下を観察した。溶媒対照群と比較して、陽性薬物である塩酸フルオキセチン(10mg/kg)は、マウスの「脱円」比及び体表温度を顕著に上昇させ、マウスの閉瞼度を有意に低減させることができた(p<0.01)。溶媒対照群と比較して、I−1、I−2、I−3、I−4、I−5、I−6群の眼瞼下垂、「脱円」比及び体表温度は有意に改善した(p<0.05、p<0.01)。I−1と比較して、I−3、I−4、I−5群のマウスの閉瞼度は低減し(p<0.01)、I−2、I−3、I−4、I−5、I−6群の「脱円」比は有意に上昇した(p<0.05)。化合物1−4及び1−5は運動不能、眼瞼下垂及び体表温度を改善させる効果が最も良好であった。
【0104】
【表3】
【0105】
実験2では、レセルピンの腹腔内注射により化合物I−1、I−8、I−9、I−10、I−11、I−12及びI−13の拮抗効果を評価した。表4に示すように、正常群と比較して、溶媒対照群のマウスの閉瞼度は有意に増大した(p<0.01)が、体表温度及び「脱円」比は顕著に低下した(p<0.01)。レセルピンの腹腔内注射により誘発したマウスうつモデルが成功であったことが示された。
【0106】
溶媒対照群と比較して、陽性薬物である塩酸フルオキセチンは10mg/kgの用量で顕著に「脱円」比を改善し、有意に閉瞼度を低減させ、体表温度を上昇させることができた(p<0.01)。化合物I−1、I−8、I−9、I−11、I−12及びI−13は10mg/kgの用量で眼瞼下垂、体表温度及び「脱円」比を顕著に改善することができ、その改善は統計的に有意であった(p<0.05、p<0.01)。化合物I−10は10mg/kgの用量でマウスの眼瞼下垂を有意に改善し(p<0.01)、体表温度及び「脱円」比を或る程度向上させることができたが、統計学的有意差はなかった。化合物I−1と比較して、化合物I−11、I−12及びI−13はマウスの眼瞼下垂、体表温度及び「脱円」比を有意に改善する効果を有し(p<0.05、p<0.01)、I−9及びI−10は眼瞼下垂の改善を増大させた(p<0.05)。マウスの閉瞼及び体表温度の改善の点で、I−13はフルオキセチンよりも或る程度良好な効果を有した(p<0.05)。マウスの眼瞼下垂、体表温度及び「脱円」比の改善の点で、I−11、I−12及びI−13はより良好な効果を有した。
【0107】
【表4】
【0108】
試験3 マウスでの強制水泳実験
1 材料
1.1 試薬
化合物I−5、I−10、I−13は本発明の方法に従って合成した(純度95%超)。2% Tween−80水溶液を加えて1mg/mlの薬物化合物を含有する溶液を調製した。
【0109】
塩酸フルオキセチンは、規格20mg/粒及びバッチ番号81958でPatheon Inc.(フランス)により製造され、Eli Lilly (Suzhou) Pharmaceutical Inc.により別途包装された。実験前に塩酸フルオキセチンを2% Tween−80水溶液に溶解して1mg/mlの薬物化合物を含有する溶液を調製した。
【0110】
1.2 動物
C57BL/6マウスはBeijing Vital River Experimental Animal Co. Ltd.から購入した。動物認証番号はSCXK(Beijing)2006−0009であった。
【0111】
1.3 装置
YLS−1A多機能マウス自律神経活動記録器はShandong Institute of Medical Instrumentsにより提供された。
【0112】
2 方法
1日〜2日間飼育して順応させた後、体重18g〜22g、6週齢〜8週齢の雄性C57BL/6マウス80匹をYLS−1A多機能マウス自律神経活動記録器に入れた。1分目の終わりから4分目までの期間、マウスの活動を計測した。自律神経活動の回数が70〜140の間のマウス60匹を選別し、ランダムに6群に分け、薬物化合物を表5に列記した用量で1日1回7日間連続して胃内投与した。溶媒対照群には同体積の2% Tween−80水溶液を投与した。6日目の投与後、マウスを水深10cm及び25℃の筒型水槽に入れてマウスを強制水泳させた。15分後、マウスを取り出し、乾燥し及びケージに戻した。24時間後、最後の胃内投与から30分後、マウスを直径10cm、高さ30cm及び水深10cmのガラス瓶に入れ、瓶内の水の温度を25℃にした。マウスは互いに影響を及ぼさないように不透明なパーティションで隔離した。2分間順応させた後、2分目の終わりから6分目までの累計の無動時間を記録した。上記無動状態はマウスがもがくことを止めるか又は水面に浮き、四肢を少し動かすだけで全身が僅かに丸くなって、その鼻孔を空気に曝しながらその頭を水上に浮かせたままになることを指す。
【0113】
統計学:
SPSS10.0解析ソフトウェアを用い、一元配置分散分析法で結果を解析して群間の有意性を比較した。
【0114】
3 結果
結果に示すように、溶媒対照群と比較して、化合物I−5、I−10、I−13はマウスでの強制水泳試験において用量範囲内で無動時間を短縮する効果を有した。それは統計学的に有意であった(p<0.05、p<0.01)。I−5はマウスでの強制水泳試験における無動時間に対して用量依存的な効果を示した。
【0115】
【表5】
【0116】
上述の実験に基づいて、以下の結論を導くことができる。
【0117】
1. マウスでの尾懸垂試験の「獲得性絶望」うつモデルにおいて、化合物I−4、I−5、I−9、I−10、I−11、I−12及びI−13を10mg/kgの用量で7日間投与すると、マウスでの尾懸垂試験における無動時間を有意に短縮することができる。
【0118】
2. 抗レセルピン誘発眼瞼下垂のうつモデル試験において、化合物I−4、I−5、I−8、I−9、I−10、I−11、I−12及びI−13を10mg/kgの用量で7日間投与すると、レセルピンにより誘発されたマウスの体表温度の低下、運動不能に拮抗し、閉瞼度を改善する効果があるため、本発明の化合物は5−HT、NE及びDAの再取り込みに対する調節効果を有することが示唆される。
【0119】
3. マウスでの強制水泳試験において、本発明の化合物のI−5、I−10及びI−13は強制水泳試験における無動時間を短縮することができ、I−5はマウスでの強制水泳試験における無動時間に対して用量依存的な効果を示した。
【0120】
4. I−1の薬理効果と比較して、試験用量での試験モデルにおけるI−4、I−5、I−9、I−10、I−11、I−12及びI−13の抗うつ効果は或る程度増大した。
【0121】
要約すれば、上記本発明の置換シンナムアミド誘導体が、従来技術よりも良好な抗うつ活性を有することが確認された。
【発明を実施するための形態】
【0122】
以下の実施例は本発明を例示する目的のみで与えられる。典型的な化合物の合成及び関連する構造同定データを以下の実施例において提示する。以下の実施例は例示の目的のみで与えられ、本発明の範囲を何ら限定するものではない。本発明の本質に係る任意の簡単な改善は本発明の保護範囲内とみなされるべきである。
【実施例】
【0123】
実施例1 N−イソブチル−5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−1)
【0124】
【化21】
【0125】
ホスホノ酢酸トリエチル(300mg、1.3mmol)、無水テトラヒドロフラン(10ml)及び水酸化リチウム(163mg、3.9mmol)を50ml容の三口フラスコに加え、70℃に加熱して窒素保護下1時間反応させた。3,4−メチレンジオキシ−5−メトキシベンズアルデヒド(200mg、1.1mmol)を無水テトラヒドロフラン5mlに溶解し、得られた溶液をフラスコに0.5時間内に滴下した。反応溶液を70℃で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて反応をモニターした。反応が終了するまで加熱を止めなかった。得られた反応溶液をロータリーエバポレーションにより濃縮して乾燥固体にした。蒸留水20mlを加えて固体を溶解して溶液にした。2N塩酸を上述の溶液にゆっくりと滴下してpHを2.0に調整し、引き続き1時間撹拌して淡黄色固体を析出させた。固体を減圧下で濾集した後、真空乾燥法を用いて中間体5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(180mg、74%)を得た。
【0126】
5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(210mg、0.81mmol)、イソブテンアミン(71mg、0.97mmol)及びトリエチルアミン(122mg、1.2mmol)を無水ジクロロメタン10mlに溶解し、氷浴条件下で15分間撹拌し、HATU(368mg、0.97mmol)をゆっくりと加えた。得られた溶液を引き続き氷浴条件下で2時間撹拌した。撹拌停止後、水20mlを加え、振盪して有機相を分離した。水相をジクロロメタン(2×20ml)で抽出した。有機相を合わせた後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、得られた溶液を減圧下で濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:石油エーテル/酢酸エチル=3/1)により精製してN−イソブチル−5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(160mg、71%)を得た。
【0127】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.50(1H,d,J=15.6Hz)、6.72(1H,d,J=1.2Hz)、6.67(1H,d,J=1.6Hz)、6.25(1H,d,J=15.6Hz)、6.00(2H,s)、5.69(1H,br)、3.91(3H,s)、3.22(2H,t,J=6.8Hz)、1.84(1H,m)、0.96(3H,s)、0.95(3H,s);
13C NMR(CDCl,100MHz)δ166.19、149.49、143.85、140.90、136.93、129.97、119.64、109.18、102.05、101.04、56.83、47.33、28.87、20.38;
ESIMS: 278.1[M+H]
【0128】
実施例2 N−イソブチル−5’−ニトロ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−2)
【0129】
【化22】
【0130】
ホスホノ酢酸トリエチル(300mg、1.3mmol)、無水テトラヒドロフラン(10ml)及び水酸化リチウム(163mg、3.9mmol)を50ml容の三口フラスコに加え、70℃に加熱して窒素保護下1時間反応させた。3,4−メチレンジオキシ−5−ニトロベンズアルデヒド(215mg、1.1mmol)を無水テトラヒドロフラン5mlに溶解し、得られた溶液をフラスコに0.5時間内に滴下した。反応溶液を70℃で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて反応をモニターした。反応が終了するまで加熱を止めなかった。得られた反応溶液をロータリーエバポレーションにより濃縮して乾燥固体にした。蒸留水20mlを加えて固体を溶解して溶液にした。2N塩酸を上述の溶液にゆっくりと滴下してpHを2.0に調整し、引き続き1時間撹拌して黄色固体を析出させた。固体を減圧下で濾集した後、真空乾燥法を用いて中間体5’−ニトロ−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(190mg、73%)を得た。
【0131】
5’−ニトロ−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(190mg、0.80mmol)、イソブテンアミン(71mg、0.97mmol)及びトリエチルアミン(122mg、1.2mmol)を無水ジクロロメタン10mlに溶解し、氷浴条件下で15分間撹拌し、HATU(368mg、0.97mmol)をゆっくりと加えた。得られた溶液を引き続き氷浴条件下で2時間撹拌した。撹拌停止後、水20mlを加え、振盪して有機相を分離した。水相をジクロロメタン(2×20ml)で抽出した。有機相を合わせた後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、得られた溶液を減圧下で濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:石油エーテル/酢酸エチル=3/1)により精製してN−イソブチル−5’−ニトロ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(140mg、60%)を得た。
【0132】
H NMR(CDCl,400MHz)δ7.75(1H,d,J=1.2Hz)、7.53(1H,d,J=15.2Hz)、7.19(1H,d,J=1.6Hz)、6.36(1H,d,J=15.6Hz)、6.26(2H,s)、5.72(1H,br)、3.23(2H,t,J=6.8Hz)、1.85(1H,m)、0.97(3H,s)、0.96(3H,s);
13C NMR(CDCl,100MHz):δ165.32、151.37、144.62、138.53、132.27、129.83、122.31、117.12、111.64、104.20、47.42、28.23、20.36;
ESIMS: 293.1[M+H]
【0133】
実施例3 N−イソブチル−5’−ヨード−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−3)
【0134】
【化23】
【0135】
ホスホノ酢酸トリエチル(300mg、1.3mmol)、無水テトラヒドロフラン(10ml)及び水酸化リチウム(163mg、3.9mmol)を50ml容の三口フラスコに加え、70℃に加熱して窒素保護下1時間反応させた。3,4−メチレンジオキシ−5−ヨードベンズアルデヒド(300mg、1.1mmol)を無水テトラヒドロフラン5mlに溶解し、得られた溶液をフラスコに0.5時間内に滴下した。反応溶液を70℃で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて反応をモニターした。反応が終了するまで加熱を止めなかった。得られた反応溶液をロータリーエバポレーションにより濃縮して乾燥固体にした。蒸留水20mlを加えて固体を溶解して溶液にした。2N塩酸を上述の溶液にゆっくりと滴下してpHを2.0に調整し、引き続き1時間撹拌して黄色固体を析出させた。固体を減圧下で濾集した後、真空乾燥法を用いて中間体5’−ヨード−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(245mg、70%)を得た。
【0136】
5’−ヨード−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(245mg、0.77mmol)、イソブテンアミン(71mg、0.97mmol)及びトリエチルアミン(122mg、1.2mmol)を無水ジクロロメタン10mlに溶解し、氷浴条件下で15分間撹拌し、HATU(368mg、0.97mmol)をゆっくりと加えた。得られた溶液を引き続き氷浴条件下で2時間撹拌した。撹拌停止後、水20mlを加え、振盪して有機相を分離した。水相をジクロロメタン(2×20ml)で抽出した。有機相を合わせた後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、得られた溶液を減圧下で濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:石油エーテル/酢酸エチル=5/1)により精製してN−イソブチル−5’−ヨード−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(200mg、69%)を得た。
【0137】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.45(1H,d,J=15.6Hz)、7.29(1H,d,J=1.2Hz)、6.92(1H,d,J=1.2Hz)、6.23(1H,d,J=15.2Hz)、6.05(2H,s)、5.63(1H,br)、3.21(2H,t,J=6.8Hz)、1.84(1H,m)、0.96(3H,s)、0.95(3H,s);
13C NMR(CDCl,100MHz):δ165.93、150.75、147.20、139.35、131.53、131.49、120.47、106.46、106.85、101.29、70.86、47.35、28.86、20.39;
ESI−MS:374.0[M+H]
【0138】
実施例4(参考例) N−イソブチル−5’−クロロ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−4)
【0139】
【化24】
【0140】
ホスホノ酢酸トリエチル(300mg、1.3mmol)、無水テトラヒドロフラン(10ml)及び水酸化リチウム(163mg、3.9mmol)を50ml容の三口フラスコに加え、70℃に加熱して窒素保護下1時間反応させた。3,4−メチレンジオキシ−5−クロロベンズアルデヒド(200mg、1.1mmol)を無水テトラヒドロフラン5mlに溶解し、得られた溶液をフラスコに0.5時間内に滴下した。反応溶液を70℃で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて反応をモニターした。反応が終了するまで加熱を止めなかった。得られた反応溶液をロータリーエバポレーションにより濃縮して乾燥固体にした。蒸留水20mlを加えて固体を溶解して溶液にした。2N塩酸を上述の溶液にゆっくりと滴下してpHを2.0に調整し、引き続き1時間撹拌して淡黄色固体を析出させた。固体を減圧下で濾集した後、真空乾燥法を用いて中間体5’−クロロ−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(175mg、70%)を得た。
【0141】
5’−クロロ−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(175mg、0.77mmol)、イソブテンアミン(71mg、0.97mmol)及びトリエチルアミン(122mg、1.2mmol)を無水ジクロロメタン10mlに溶解し、氷浴条件下で15分間撹拌し、HATU(368mg、0.97mmol)をゆっくりと加えた。得られた溶液を引き続き氷浴条件下で2時間撹拌した。撹拌停止後、水20mlを加え、振盪して有機相を分離した。水相をジクロロメタン(2×20ml)で抽出した。有機相を合わせた後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、得られた溶液を減圧下で濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:石油エーテル/酢酸エチル=5/1)により精製してN−イソブチル−5’−クロロ−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(160mg、74%)を得た。
【0142】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.40(1H,d,J=15.6Hz)、6.92(1H,d,J=1.2Hz)、6.81(1H,d,J=1.2Hz)、6.18(1H,d,J=15.6Hz)、6.00(2H,s)、5.62(1H,br)、3.15(2H,t,J=6.8Hz)、1.77(1H,m)、0.89(3H,s)、0.88(3H,s);
13C NMR(CDCl,100MHz):δ165.87、149.23、145.59、139.62、130.52、123.68、120.60、114.43、105.57、102.41、47.34、28.85、20.37;
ESI−MS:282.1[M+H]
【0143】
実施例5 N−イソブチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−5)
【0144】
【化25】
【0145】
ホスホノ酢酸トリエチル(300mg、1.3mmol)、無水テトラヒドロフラン(10ml)及び水酸化リチウム(163mg、3.9mmol)を50ml容の三口フラスコに加え、70℃に加熱して窒素保護下1時間反応させた。3,4−メチレンジオキシ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒド(240mg、1.1mmol)を無水テトラヒドロフラン5mlに溶解し、得られた溶液をフラスコに0.5時間内に滴下した。反応溶液を70℃で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて反応をモニターした。反応が終了するまで加熱を止めなかった。得られた反応溶液をロータリーエバポレーションにより濃縮して乾燥固体にした。蒸留水20mlを加えて固体を溶解して溶液にした。2N塩酸を上述の溶液にゆっくりと滴下してpHを2.0に調整し、引き続き1時間撹拌して淡黄色固体を析出させた。固体を減圧下で濾集した後、真空乾燥法を用いて中間体5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(170mg、59%)を得た。
【0146】
5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(170mg、0.65mmol)、イソブテンアミン(57mg、0.78mmol)及びトリエチルアミン(100mg、0.97mmol)を無水ジクロロメタン10mlに溶解し、氷浴条件下で15分間撹拌し、HATU(300mg、0.78mmol)をゆっくりと加えた。得られた溶液を引き続き氷浴条件下で2時間撹拌した。撹拌停止後、水20mlを加え、振盪して有機相を分離した。水相をジクロロメタン(2×20ml)で抽出した。有機相を合わせた後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、得られた溶液を減圧下で濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:石油エーテル/酢酸エチル=5/1)により精製してN−イソブチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(140mg、70%)を得た。
【0147】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.53(1H,d,J=15.6Hz)、7.17(1H,d,J=1.2Hz)、7.11(1H,d,J=1.2Hz)、6.29(1H,d,J=15.6Hz)、6.13(2H,s)、5.65(1H,br)、3.22(2H,t,J=6.8Hz)、1.84(1H,m)、0.97(3H,s)、0.95(3H,s);
13C NMR(CDCl,100MHz):δ165.97、149.60、146.31、139.08、129.81、123.80、121.63、121.29、119.36、109.49、103.09、47.42、28.84、20.35;
ESI−MS:316.1[M+H]
【0148】
実施例6 N−イソブチル−5−(5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)ペンタジエンアミド(I−6)
【0149】
【化26】
【0150】
4−ホスホノクロトン酸トリエチル(325mg、1.3mmol)、無水テトラヒドロフラン(10ml)及び水酸化リチウム(163mg、3.9mmol)を50ml容の三口フラスコに加え、70℃に加熱して窒素保護下1時間反応させた。3,4−メチレンジオキシ−5−メトキシベンズアルデヒド(200mg、1.1mmol)を無水テトラヒドロフラン5mlに溶解し、得られた溶液をフラスコに0.5時間内に滴下した。反応溶液を70℃で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて反応をモニターした。反応が終了するまで加熱を止めなかった。得られた反応溶液をロータリーエバポレーションにより濃縮して乾燥固体にした。蒸留水20mlを加えて固体を溶解して溶液にした。2N塩酸を上述の溶液にゆっくりと滴下してpHを2.0に調整し、引き続き1時間撹拌して淡黄色固体を析出させた。固体を減圧下で濾集した後、真空乾燥法を用いて中間体5−(5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)ペンタジエン酸(125mg、65%)を得た。
【0151】
5−(5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)ペンタジエン酸(125mg、0.65mmol)、イソブテンアミン(57mg、0.78mmol)及びトリエチルアミン(100mg、0.97mmol)を無水ジクロロメタン10mlに溶解し、氷浴条件下で15分間撹拌し、HATU(300mg、0.78mmol)をゆっくりと加えた。得られた溶液を引き続き氷浴条件下で2時間撹拌した。撹拌停止後、水20mlを加え、振盪して有機相を分離した。水相をジクロロメタン(2×20ml)で抽出した。有機相を合わせた後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、得られた溶液を減圧下で濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:石油エーテル/酢酸エチル=3/1)により精製してN−イソブチル−5−(5’−メトキシ−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)ペンタジエンアミド(140mg、71%)を得た。
【0152】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.29(1H,dd,J=10.0Hz,J=12.8Hz)、6.69〜6.58(3H,m)、6.51(1H,s)、5.91(2H,s)、5.87(1H,d,J=14.8Hz)、5.55(1H,br)、3.85(3H,S)、3.12(2H,t,J=6.4Hz)、1.76(1H,m)、0.88(3H,s)、0.86(3H,s);
13C NMR(CDCl,100MHz):δ166.45、149.46、143.82、140.94、138.97、136.15、131.52、125.42、123.83、108.08、101.94、100.28、56.78、47.26、28.87、20.40;
ESI−MS:304.2[M+H]
【0153】
実施例7(参考例) N−イソブチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−7)
【0154】
【化27】
【0155】
ホスホノ酢酸トリエチル(300mg、1.3mmol)、無水テトラヒドロフラン(10ml)及び水酸化リチウム(163mg、3.9mmol)を50ml容の三口フラスコに加え、70℃に加熱して窒素保護下1時間反応させた。3,4−(メチレンジオキシ)ベンズアルデヒド(165mg、1.1mmol)を無水テトラヒドロフラン5mlに溶解し、得られた溶液をフラスコに0.5時間内に滴下した。反応溶液を70℃で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて反応をモニターした。反応が終了するまで加熱を止めなかった。得られた反応溶液をロータリーエバポレーションにより濃縮して乾燥固体にした。蒸留水20mlを加えて固体を溶解して溶液にした。2N塩酸を上述の溶液にゆっくりと滴下してpHを2.0に調整し、引き続き1時間撹拌して淡黄色固体を析出させた。固体を減圧下で濾集した後、真空乾燥法を用いて中間体3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(180mg、80%)を得た。
【0156】
3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(180mg、0.94mmol)、イソブテンアミン(83mg、1.12mmol)及びトリエチルアミン(142mg、1.4mmol)を無水ジクロロメタン10mlに溶解し、氷浴条件下で15分間撹拌し、HATU(425mg、1.12mmol)をゆっくりと加えた。得られた溶液を引き続き氷浴条件下で2時間撹拌した。撹拌停止後、水20mlを加え、振盪して有機相を分離した。水相をジクロロメタン(2×20ml)で抽出した。有機相を合わせた後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、得られた溶液を減圧下で濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:石油エーテル/酢酸エチル=3/1)により精製してN−イソブチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(188mg、81%)を得た。
【0157】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.45(1H,d,J=20.4Hz)、6.90(1H,s)、6.88(1H,d,J=10.8Hz)、6.68(1H,d,J=10.8Hz)、6.22(1H,d,J=20.8Hz)、5.96(1H,br)、5.89(2H,s)、3.13(2H,t,J=8.8Hz)、1.77(1H,m)、0.88(3H,s)、0.86(3H,s);
13C NMR(CDCl,100MHz):δ166.53、149.10、148.36、140.58、129.57、123.92、119.36、108.65、106.54、101.59、47.35、28.87、20.35;
ESI−MS:248.1[M+H]
【0158】
実施例8 N,N−ジメチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−8)
【0159】
【化28】
【0160】
5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(200mg、0.77mmol)、ジメチルアミン(1.54mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液及びトリエチルアミン(233mg、2.3mmol)を無水ジクロロメタン20mlに溶解し、氷浴条件下で15分間撹拌した。得られた溶液にHBTU(352mg、0.92mmol)をゆっくりと加え、氷浴条件下で2時間撹拌した。撹拌停止後、水20mlを加え、振盪して有機相を分離した。水相をジクロロメタン(2×20ml)で抽出した。有機相を合わせた後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、得られた溶液を減圧下で濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:石油エーテル/酢酸エチル=3/1)により精製してN,N−ジメチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(200mg、90%)を得た。
【0161】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.57(1H,d,J=15.6Hz)、7.18(1H,s)、7.15(1H,s)、6.78(1H,d,J=15.6Hz)、6.14(2H,s)、3.19(3H,s)、3.08(3H,s);
13C NMR(CDCl,100MHz):δ166.24、149.44、146.15、140.62、130.01、123.89、121.19、119.26、117.28、109.40、102.91、37.43、35.98;
19F NMR(CDCl,400MHz):δ−61.48
ESI−MS:310.1[M+Na]
【0162】
実施例9 N,N−ジエチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−9)
【0163】
【化29】
【0164】
5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(300mg、1.15mmol)、ジエチルアミン(170mg、2.3mmol)及びトリエチルアミン(350mg、3.45mmol)を無水ジクロロメタン10mlに溶解し、氷浴条件下で15分間撹拌した。得られた溶液にHBTU(530mg、1.38mmol)をゆっくりと加え、氷浴条件下で2時間撹拌した。撹拌停止後、水20mlを加え、振盪して有機相を分離した。水相をジクロロメタン(2×20ml)で抽出した。有機相を合わせた後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、得られた溶液を減圧下で濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:石油エーテル/酢酸エチル=5/1)により精製してN,N−ジエチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(350mg、96%)を得た。
【0165】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.61(1H,d,J=15.2Hz)、7.17(1H,s)、7.16(1H,s)、6.71(1H,d,J=15.2Hz)、6.14(2H,s)、3.53〜3.46(4H,m)、1.28(3H,t,J=7.2Hz)、1.20(3H,t,J=7.2Hz);
13C NMR(CDCl,100MHz):δ165.23、149.42、146.08、140.59、130.16、123.91、121.20、119.22、117.66、109.36、102.89、42.30、41.13、15.13、13.19;
19F NMR(CDCl,400MHz):δ−61.48
ESI−MS:338.1[M+Na]
【0166】
実施例10 1−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナミル)−ピペリジン(I−10)
【0167】
【化30】
【0168】
5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシケイ皮酸(300mg、1.15mmol)、ピペリジン(195mg、2.3mmol)及びトリエチルアミン(350mg、3.45mmol)を無水ジクロロメタン10mlに溶解し、氷浴条件下で15分間撹拌した。得られた溶液にHBTU(530mg、1.38mmol)をゆっくりと加え、氷浴条件下で2時間撹拌した。撹拌停止後、水20mlを加え、振盪して有機相を分離した。水相をジクロロメタン(2×20ml)で抽出した。有機相を合わせた後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、得られた溶液を減圧下で濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:石油エーテル/酢酸エチル=5/1)により精製して1−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナミル)−ピペリジン(350mg、92%)を得た。
【0169】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.55(1H,d,J=15.6Hz)、7.18(1H,s)、7.15(1H,s)、6.80(1H,d,J=15.6Hz)、6.14(2H,s)、3.63(4H,br)、1.72〜1.68(2H,m)、1.64〜1.60(4H,m);
13C NMR(CDCl,100MHz):δ164.86、149.43、146.06、140.47、130.19、123.93、121.23、119.06、117.64、109.43、102.89、47.07、43.44、26.77、25.68、24.64;
19F NMR(CDCl,400MHz):δ−61.46
ESI−MS:350.1[M+Na]
【0170】
実施例11 N−イソブチル−3−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−プロピオンアミド(I−11)
【0171】
【化31】
【0172】
N−イソブチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(200mg、0.63mmol)をメタノール30mlに溶解し、氷浴条件下でCoCl・6HO(600mg、2.54mmol)を加えた。0.5時間撹拌した後、得られた溶液にNaBH(195mg、5.1mmol)を数回に分けて加え、1時間後室温に加熱し、引き続き2時間撹拌した。撹拌停止後、溶媒を蒸発乾固させた。粗生成物をジクロロメタン(2×20ml)で抽出した。有機相を合わせた後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、得られた溶液を減圧下で濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:石油エーテル/酢酸エチル=5/1)により精製してN−イソブチル−3−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−プロピオンアミド(140mg、70%)を得た。
【0173】
H NMR(CDCl,400MHz):δ6.86(1H,s)、6.85(1H,s)、6.06(2H,s)、5.55(1H,br)、3.06(2H,t,J=6.4Hz)、2.93(2H,t,J=7.2Hz)、2.45(2H,t,J=7.2Hz)、1.75〜1.68(1H,m)、0.87(3H,s)、0.85(3H,s);
13C NMR(CDCl,100MHz):δ171.44、148.91、143.54、135.21、124.21、121.51、117.42、112.01、102.29、46.89、38.39、31.27、28.44、19.98;
19F NMR(CDCl,400MHz):δ−119.72;
ESI−MS:340.1[M+Na]
【0174】
実施例12 N−イソブチル−5−トリフルオロメチル−3,4−メチレンジオキシベンズアミド(I−12)
【0175】
【化32】
【0176】
5−トリフルオロメチル−3,4−メチレンジオキシ安息香酸(260mg、1.11mmol)、イソブチルアミン(162mg、2.22mmol)及びトリエチルアミン(330mg、3.33mmol)を無水ジクロロメタン10mlに溶解し、氷浴条件下で15分間撹拌した。得られた溶液にHBTU(500mg、1.33mmol)をゆっくりと加え、氷浴条件下で2時間撹拌した。撹拌停止後、水20mlを加え、振盪して有機相を分離した。水相をジクロロメタン(2×20ml)で抽出した。有機相を合わせた後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、得られた溶液を減圧下で濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:石油エーテル/酢酸エチル=3/1)により精製してN−イソブチル−5−トリフルオロメチル−3,4−メチレンジオキシベンズアミド(250mg、78%)を得た。
【0177】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.46(1H,s)、7.41(1H,s)、6.37(1H,br)、6.16(2H,s)、3.26(2H,t,J=6.4Hz)、1.95〜1.85(1H,m)、0.98(3H,s)、0.96(3H,s);
13C NMR(CDCl,100MHz):δ165.73、149.27、147.56、129.47、123.79、121.08、117.73、110.40、103.19、47.57、28.59、20.16;
19F NMR(CDCl,400MHz):δ−61.45;
ESI−MS:312.1[M+Na]
【0178】
実施例13 1−(5−トリフルオロメチル−3,4−メチレンジオキシベンゾイル)−ピペリジン(I−13)
【0179】
【化33】
【0180】
5−トリフルオロメチル−3,4−メチレンジオキシ安息香酸(260mg、1.11mmol)、ピペリジン(190mg、2.22mmol)及びトリエチルアミン(330mg、3.33mmol)を無水ジクロロメタン10mlに溶解し、氷浴条件下で15分間撹拌した。得られた溶液にHBTU(500mg、1.33mmol)をゆっくりと加え、氷浴条件下で2時間撹拌した。撹拌停止後、水20mlを加え、振盪して有機相を分離した。水相をジクロロメタン(2×20ml)で抽出した。有機相を合わせた後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、得られた溶液を減圧下で濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:石油エーテル/酢酸エチル=3/1)により精製して1−(5−トリフルオロメチル−3,4−メチレンジオキシベンゾイル)−ピペリジン(280mg、87%)を得た。
【0181】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.11(1H,s)、7.03(1H,s)、6.14(2H,s)、3.64〜3.41(4H,m)、1.69〜1.62(6H,m);
13C NMR(CDCl,100MHz):δ168.37、148.91、146.11、130.45、123.82、121.12、117.72、110.69、102.91、102.91、29.73、24.53;
19F NMR(CDCl,400MHz):δ−61.48;
ESI−MS:324.1[M+Na]
【0182】
実施例14 N−イソブチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミドの錠剤の製造
N−イソブチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−5)を取り、常法に従ってデンプン、デキストリン、微結晶セルロース及びステアリン酸マグネシウムと混合して湿式顆粒を製造した。錠剤は機械打抜きにより製造し、コーティング工程を実施してコーティング錠を得た。各錠剤はN−イソブチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド20mgを含有した。用法:1日2回及び1回1錠〜2錠。
【0183】
実施例15 N−イソブチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミドのカプセルの製造
60メッシュ篩を用いて篩い分けしたN−イソブチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド(I−5)、ラクトース及びヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を十分に混合し、適量のTween−80を加えた後、3%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)水溶液を加え、20メッシュ篩を通過させた。得られた顆粒を焼成オーブン内で空気乾燥した。乾燥した材料にタルク粉末を加え、十分に混合し、カプセル殻に充填した。各カプセルはN−イソブチル−5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシシンナムアミド20mgを含有した。用法:1日2回及び1回1カプセル〜2カプセル。
【0184】
製薬学の分野における本発明の用途は、本明細書中に開示したものに何ら限定されるものではない。原料薬物は本発明において記載した化合物又はその薬学的に許容可能な酸付加塩のいずれか一つである。
【0185】
剤形は本明細書中に開示したものに何ら限定されるものではない。化合物は更に他の薬学的に許容可能な剤形、例えば、滴丸剤、徐放製剤等に調製することができる。