特許第6078076号(P6078076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078076
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】キナーゼ阻害剤多形体
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   C07D471/04 108Q
【請求項の数】9
【全頁数】81
(21)【出願番号】特願2014-541391(P2014-541391)
(86)(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公表番号】特表2014-533285(P2014-533285A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】US2012064729
(87)【国際公開番号】WO2013071272
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】61/558,962
(32)【優先日】2011年11月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510186720
【氏名又は名称】インテリカイン, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レン, ピンダ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウォーラル, クリストファー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ガンセド, スサナ デル リオ
【審査官】 東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/022439(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0090835(US,A1)
【文献】 特表2004−510820(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0019835(US,A1)
【文献】 特表2009−512636(JP,A)
【文献】 米国特許第04450164(US,A)
【文献】 特表2011−508782(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0312319(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0184760(US,A1)
【文献】 平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック,2008年,p.17-23,37-40,45-51,57-65
【文献】 社団法人日本化学会,化学便覧応用化学編第6版,丸善株式会社,2003年 1月30日,第4章化学合成技術,第178頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化106】

HCl塩の結晶質多形体であって、該結晶質多形体が、2θが9.2(±0.4)度、17.5(±0.4)度、24.5(±0.4)度、27.4(±0.4)度、および28.2(±0.4)度でX線粉末回折ピークによって特徴付けられるHClパターン1である、結晶質多形体
【請求項2】
前記HClパターン1が、
【化107】
におけるX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶質多形体。
【請求項3】
式I
【化106】

のHCl塩の結晶質多形体であって、該結晶質多形体は、2θが8.0(±0.4)度、16.0(±0.4)度、19.0(±0.4)度、26.5(±0.4)度、および27.7(±0.4)度のX線粉末回折ピークによって特徴付けられるHClパターン2である結晶質多形体。
【請求項4】
前記HClパターン2が、
【化108】
【化109】
におけるX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、請求項3に記載の結晶質多形体。
【請求項5】

【化104】

のHBr塩の結晶質多形体であって、該結晶質多形体は、2θが18.5(±0.4)度、21.6(±0.4)度、22.8(±0.4)度、および26.1(±0.4)度のX線粉末回折ピークによって特徴付けられるHBrパターン1である、結晶質多形体。
【請求項6】
前記HBrパターン1が、
【化110】
におけるX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、請求項5に記載の結晶質多形体。
【請求項7】
式I
【化106】

のHBr塩の結晶質多形体であって、該結晶質多形体は、2θが9.1(±0.4)度、17.3(±0.4)度、21.1(±0.4)度、および27.2(±0.4)度のX線粉末回折ピークによって特徴付けられるHBrパターン2である結晶質多形体。
【請求項8】
前記HBrパターン2が、
【化111】
におけるX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、請求項7に記載の結晶質多形体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶質多形体の治療有効量と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年11月11日に出願された、「Kinase Inhibitor Polymorphs」と題される米国仮特許出願第61/588,962号の優先権の利益を主張し、これは、全ての目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
細胞の活性は、細胞内イベントを刺激または阻害する、外部シグナルによって制御され得る。刺激性または阻害性シグナルが細胞の中へとかつ細胞内で伝達されて細胞内応答を引き出すプロセスは、シグナル伝達と称される。過去数十年にわたり、シグナル伝達イベントのカスケードが解明され、種々の生物学的応答において中心的役割を果たすことが見出されてきた。シグナル伝達経路の種々の構成成分における欠陥は、多数の形態の癌、炎症性障害、代謝障害、血管および神経疾患を含む、莫大な数の疾患の原因となることが見出されている(Gaestel et al.Current Medicinal Chemistry(2007)14:2214−2234(非特許文献1))。
【0003】
キナーゼは、重要なシグナル伝達分子の一分類である。キナーゼは、一般に、タンパク質キナーゼおよび脂質キナーゼに分類することができ、ある特定のキナーゼは、二重特異性を示す。タンパク質キナーゼは、他のタンパク質および/またはそれら自体をリン酸化する(自己リン酸化)酵素である。タンパク質キナーゼは、一般に、それらの基質利用に応じて、主にチロシン残基(例えば、erb2、PDGF受容体、EGF受容体、VEGF受容体、src、abl)上で基質をリン酸化するチロシンキナーゼ、主にセリンおよび/もしくはスレオニン残基(例えば、mTorC1、mTorC2、ATM、ATR、DNA−PK、Akt)上で基質をリン酸化するセリン/スレオニンキナーゼ、ならびに、チロシン、セリン、および/もしくはスレオニン残基上で基質をリン酸化する二重特異性キナーゼ、の3つの主要な群に分類することができる。
【0004】
脂質キナーゼは、細胞内の脂質のリン酸化を触媒する酵素である。これらの酵素、ならびに結果として得られるリン酸化された脂質および脂質由来の生物学的に活性な有機分子は、細胞の増殖、遊走、接着、および分化を含む、多数の異なる生理学的プロセスにおいて役割を果たす。脂質キナーゼの特定の群は、膜脂質キナーゼ、すなわち、細胞膜に含まれるか、またはそれと会合している脂質のリン酸化を触媒するキナーゼを含む。かかる酵素の例には、ホスフィノシチド(複数可)キナーゼ(PI3−キナーゼ、PI4−キナーゼ等)、ジアシルグリセロールキナーゼ、およびスフィンゴシンキナーゼが挙げられる。
【0005】
ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)シグナル伝達経路は、ヒトの癌において最も高度な突然変異系の1つである。PI3Kシグナル伝達は、アレルギー性接触皮膚炎、リウマチ性関節炎、骨関節炎、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患、乾癬、多発性硬化症、喘息、糖尿病合併症に関連する障害、および急性冠動脈症候群等の心血管系の炎症性合併症を含む、多数の他の疾患状態に関与する。
【0006】
PI3Kは、ホスファチジルイノシトールまたはホスホイノシチド上の3’−OH基をリン酸化する、細胞内脂質キナーゼの固有かつ保存されたファミリーのメンバーである。PI3Kファミリーは、特有の基質特異性、発現パターン、および制御様式を有する15個のキナーゼを含む(Katso et al.,2001)。クラスIのPI3K(p110α、p110β、p110δ、およびp110γ)は、典型的に、チロシンキナーゼ、またはGタンパク質共役型受容体によって活性化されてPIP3を生成し、これは、Akt/PDK1、mTOR、Tecファミリーキナーゼ、およびRhoファミリーGTPアーゼの経路にあるもの等、下流のエフェクターに関与する。クラスIIおよびIIIのPI3−Kは、PI(3)PおよびPI(3,4)Pの合成を通じた細胞内輸送に重要な役割を果たす。
【0007】
PI3Kのアルファ(α)アイソフォームは、例えば、種々のヒト癌に関連付けられている。血管新生は、内皮細胞遊走の制御において、PI3Kのαアイソフォームを選択的に要求することが示されている。(Graupera et al,Nature 2008;453;662−6(非特許文献2))。PI3Kαをコードする遺伝子における突然変異、またはPI3Kαの上方制御をもたらす突然変異は、肺癌、胃癌、子宮内膜癌、卵巣癌、膀胱癌、乳癌、結腸癌、脳癌、および皮膚癌等、多数のヒト癌において生じると考えられる。しばしば、PI3Kαをコードする遺伝子における突然変異は、E542K、E545K、およびH1047R等のヘリックスおよびキナーゼドメインにおける複数のホットスポット内でクラスター化される点突然変異である。これらの突然変異のうちの多くは、発癌性機能獲得型突然変異であることが示されている。PI3Kα突然変異が高率であるため、この経路の標的化は、貴重な治療機会を提供し得る。PI3KδまたはPI3Kγ等の他のPI3Kアイソフォームは主に造血細胞中で発現するが、PI3Kαは、PI3Kβと共に、構成的に発現する。
【0008】
クラスIのPI3Kのデルタ(δ)アイソフォームは、特に、いくつかの疾患および生物学的プロセスに関連付けられている。PI3Kδは、主に、T細胞、樹状細胞、好中球、肥満細胞、B細胞、およびマクロファージ等、白血球を含む造血細胞中で発現される。PI3Kδは、T細胞機能、B細胞活性化、肥満細胞活性化、樹状細胞機能、および好中球活性等の哺乳類免疫系機能に不可欠に関与する。免疫系機能におけるその不可欠な役割に起因して、PI3Kδはまた、アレルギー反応、炎症性疾患、炎症媒介型血管新生、リウマチ性関節炎、狼瘡等の自己免疫疾患、喘息、気腫、および他の呼吸器疾患等の望ましくない免疫応答に関連するいくつかの疾患にも関与する。免疫系機能に関与する他のクラスIのPI3Kには、PI3Kγが含まれ、これは、白血球シグナル伝達において役割を果たし、炎症、リウマチ性関節炎、および狼瘡等の自己免疫疾患に関連付けられている。
【0009】
PI3Kシグナル伝達経路の下流媒介因子には、Aktおよび哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)が含まれる。Aktは、PIP3に結合し、Aktキナーゼの活性化をもたらす、プレクストリン相同(PH)ドメインを有する。Aktは、多数の基質をリン酸化し、多様な細胞応答のPI3Kの中心的な下流エフェクターである。Aktの1つの重要な機能は、TSC2のリン酸化および他の機構を通じてmTORの活性を増強することである。mTORは、PI3Kファミリーの脂質キナーゼに関連するセリン−スレオニンキナーゼである。mTORは、細胞成長、細胞増殖、細胞運動性、および生存を含む、広範な生物学的プロセスに関連付けられている。mTOR経路の異常制御は、種々の癌において報告されている。mTORは、成長因子および栄養シグナルを統合して、タンパク質の翻訳、栄養取り込み、自食作用、およびミトコンドリア機能を制御する、多機能性キナーゼである。
【0010】
多数の他のキナーゼによって媒介されるシグナル伝達経路の異常制御は、ヒト疾患の発症における重要な要因である。異常または過剰なタンパク質キナーゼの活性または発現は、良性および悪性の増殖性疾患、アレルギー性接触皮膚炎、リウマチ性関節炎、骨関節炎、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患、乾癬、多発性硬化症、喘息、糖尿病合併症に関連する疾患、ならびに急性冠動脈症候群等の心血管系の炎症性合併症等の疾患を含む、多数の疾患状態に観察されている。
【0011】
このように、キナーゼ、特に、PI3K等の脂質キナーゼおよびmTor等のタンパク質キナーゼは、薬物開発の主要な標的である。かかる標的の阻害活性を有する化合物は、しばしば、溶液としてのそれらの活性が最初に評価されるが、多形性および塩の形態等の固体状態の特性もまた、重要である。PI3Kの阻害剤等の製剤原薬の多形体形態または塩形態は、融点、化学反応性、見かけの可溶性、溶解速度、光学的および機械的性質、蒸気圧、ならびに密度を含む、化学的および物理的性質が、異なり得る。これらの性質は、製剤原薬および製剤を加工または製造する能力に、直接的な影響を有し得る。さらに、これらの性質における違いは、異なる多形体形態または塩形態の薬物に対して異なる薬物動態プロファイルをもたらし得、またそうなることが多い。したがって、多形性および塩形態は、しばしば、種々の製造業者からの製剤の「同一性」の規制上の審査における非常に重要な要因である。例えば、多形性は、ワルファリンナトリウム、ファモチジン、およびラニチジンといった、数百万ドル規模、さらには数十億ドル規模の医薬品において評価されている。多形性および塩形態は、キナーゼ阻害剤等の製剤の品質、安全性、および/または有効性に影響を及ぼし得る。
したがって、PI3K、ならびにmTorおよび/またはAkt等の脂質キナーゼの阻害剤の多形体および塩形態に対する必要性が残っている。本発明は、この必要性に取り組み、関連する利点も同様に提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Gaestel et al.Current Medicinal Chemistry(2007)14:2214−2234
【非特許文献2】Graupera et al,Nature 2008;453;662−6
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施形態において、本発明は、式I
【化1】

の化合物の薬学的に許容される多形体を作製する方法を対象とし、
上記方法は、(i)式Iの化合物を有機溶媒系に懸濁または溶解することと、(ii)上記懸濁液または溶液に酸を添加して混合物を得ることと、(iii)上記混合物を少なくとも1回の加熱および冷却サイクルに供することと、(iv)上記多形体を単離することと、を含む。種々の実施形態において、有機溶媒系には、メタノール、エタノール、THF、ニトロメタン、アセトニトリル、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、DMSO、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、N−メチルピロリドン(NMP)、酢酸ブチル、またはトルエンが挙げられる。一実施形態において、有機溶媒系は、ニトロメタン、THF、メチルエチルケトン(MEK)、またはアセトニトリルである有機溶媒である。種々の実施形態において、酸としては、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、L−アスパラギン酸、p−トルエンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸(EDSA)、塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、クエン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、フマル酸、硫酸、マレイン酸、メタンスルホン酸(MSA)、リン酸、またはシュウ酸を挙げることができる。一実施形態において、酸は、塩酸(HCl)または臭化水素酸(HBr)である。種々の実施形態において、HClの濃度は、0.1〜5.0Mであり得る。さらなる実施形態において、HClの濃度は、THF中1.0Mである。種々の実施形態において、HBrの濃度は、0.1〜5.0Mであり得る。さらなる実施形態において、HBrの濃度は、THF中1.0Mである。種々の実施形態において、加熱サイクルは、−5℃〜30℃で開始し得る。種々の実施形態において、冷却サイクルは、40℃〜100℃で開始し得る。一実施形態において、加熱および冷却サイクルは、25℃〜50℃で実行される。種々の実施形態において、加熱または冷却サイクルは、0.1〜10℃/分で勾配し得る。一実施形態において、加熱または冷却サイクルは、1℃/分で勾配し得る。種々の実施形態において、加熱または冷却サイクルは、1時間から10週間継続し得る。
【0014】
薬学的に許容される多形体は、結晶質塩であり得る。種々の実施形態において、それは、式Iの化合物の結晶質HClまたはHBr塩である。一実施形態において、それは、2θが9.2(±0.4)度、17.5(±0.4)度、24.5(±0.4)度、27.4((±0.4)度、および28.2(±0.4)度でX線粉末回折ピークを有する結晶質HCl塩である。別の実施形態において、2θが18.5(±0.4)度、21.6(±0.4)度、22.8(±0.4)度、および26.1(±0.4)度でX線粉末回折ピークを有する結晶質HBr塩である。
【0015】
一実施形態において、本発明は、式I
【化2】

の化合物の薬学的に許容される多形体を作製する方法を対象とし、
上記方法は、(i)式Iの化合物を酸性水溶液に溶解して溶液を得ることと、(ii)上記溶液を有機溶媒と混合することと、(iv)上記塩を単離することと、を含む。種々の実施形態において、有機溶媒には、メタノール、エタノール、THF、ニトロメタン、アセトニトリル、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、DMSO、メチルt−ブチルエーテル(TBME)、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、N−メチルピロリドン(NMP)、酢酸ブチル、またはトルエンを挙げることができる。一実施形態において、有機溶媒は、THFである。種々の実施形態において、酸としては、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、L−アスパラギン酸、p−トルエンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸(EDSA)、塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、クエン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、フマル酸、硫酸、マレイン酸、メタンスルホン酸(MSA)、リン酸、またはシュウ酸を挙げることができる。一実施形態において、酸は、塩酸(HCl)または臭化水素酸(HBr)である。種々の実施形態において、HCl水溶液の濃度は、1重量%〜37重量%であり得る。さらなる実施形態において、HCl水溶液の濃度は、36〜37重量%である。種々の実施形態において、HBr水溶液の濃度は、1重量%〜48重量%であり得る。さらなる実施形態において、HBr水溶液の濃度は、47〜48重量%である。
【0016】
種々の実施形態において、薬学的に許容される塩は、結晶質塩であり得る。一実施形態において、それは、式Iの化合物の結晶質HClまたはHBr塩である。一実施形態において、それは、2θが8.0(±0.4)度、16.0(±0.4)度、19.0(±0.4)度、26.5(±0.4)度、および27.7(±0.4)度でX線粉末回折ピークを有する結晶質HCl塩である。別の実施形態において、2θが9.1(±0.4)度、17.3(±0.4)度、21.1(±0.4)度、および27.2(±0.4)度でX線粉末回折ピークを有する結晶質HBr塩である。
【0017】
一実施形態において、本発明は、式I
【化3】

の化合物のHCl塩の結晶質多形体を対象とする。
一実施形態において、結晶質HCl塩は、2θが9.2(±0.4)度、17.5(±0.4)度、24.5(±0.4)度、27.4(±0.4)度、および28.2(±0.4)度でX線粉末回折ピークを有する。別の実施形態において、結晶質HCl塩は、2θが8.0(±0.4)度、16.0(±0.4)度、19.0((±0.4)、26.5(±0.4)、および27.7(±0.4)度でX線粉末回折ピークを有する。
【0018】
一実施形態において、本発明は、式I
【化4】

の化合物のHBr塩の結晶質多形体を対象とする。
一実施形態において、結晶質HBr塩は、2θが18.5(±0.4)度、21.6(±0.4)度、22.8(±0.4)度、および26.1(±0.4)度でX線粉末回折ピークを有する。別の実施形態において、結晶質HBr塩は、2θが9.1(±0.4)度、17.3(±0.4)度、21.1(±0.4)度、および27.2(±0.4)度でX線粉末回折ピークを有する。
【0019】
種々の実施形態において、本発明は、式I
【化5】

の化合物のHCl塩の治療有効量と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物を対象とする。一実施形態において、治療上有効なHCl塩は、2θが9.2(±0.4)度、17.5(±0.4)度、24.5(±0.4)度、27.4(±0.4)度、および28.2(±0.4)度でX線粉末回折ピークを有する。別の実施形態において、治療上有効なHCl塩は、2θが8.0(±0.4)度、16.0(±0.4)度、19.0(±0.4)度、26.5(±0.4)度、および27.7(±0.4)度でX線粉末回折ピークを有する。
【0020】
参照による組み込み
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも各々の個々の刊行物、特許、および特許出願が、参照により具体的にかつ個々に組み込まれるように示されるかのごとく、それと同じ程度まで参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
本発明の新規の特長を、添付の特許請求の範囲で詳細に述べる。本発明の特長および利点の理解は、本発明の原理が利用される例となる実施形態について記載した以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得ることができる。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
式I
【化101】


の化合物の薬学的に許容される多形体を作製する方法であって、
(i)式Iの化合物を有機溶媒に懸濁させることと、
(ii)前記懸濁液に酸を添加して、混合物を得ることと、
(iii)前記混合物を、少なくとも1回の加熱および冷却サイクルに供することと、
(iv)前記多形体を単離することと、を含む、方法。
(項目2)
前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、THF、ニトロメタン、アセトニトリル、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、DMSO、メチル−tブチルエーテル(MTBE)、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、N−メチルピロリドン(NMP)、酢酸ブチル、またはトルエンを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記酸は、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、L−アスパラギン酸、p−トルエンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸(EDSA)、塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、クエン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、フマル酸、硫酸、マレイン酸、メタンスルホン酸(MSA)、リン酸、またはシュウ酸を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記加熱サイクルは、−5℃〜30℃で開始する、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記冷却サイクルは、40℃〜100℃で開始する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記少なくとも1回の加熱および冷却サイクルは、25℃〜50℃で実行される、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記加熱または冷却サイクルは、0.1〜10℃/分、例えば、1℃/分で勾配する、項目1に記載の方法。
(項目8)
各前記加熱または冷却サイクルは、1時間〜10週間継続する、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記有機溶媒は、ニトロメタン、THF、メチルエチルケトン(MEK)、またはアセトニトリルである、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記酸は、THF中0.1〜5.0MのHClである、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記酸は、THF中1MのHClである、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記多形体は、結晶質HCl塩である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記結晶質HCl塩は、2θが9.2(±0.4)度、17.5(±0.4)度、24.5(±0.4)度、27.4(±0.4)度、および28.2(±0.4)度にX線粉末回折ピークを有する、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記酸は、THF中0.1〜5.0MのHBrである、項目9に記載の方法。
(項目15)
前記酸は、THF中1MのHBrである、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記多形体は、結晶質HBr塩である、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記結晶質HBr塩は、2θが18.5(±0.4)度、21.6(±0.4)度、22.8(±0.4)度、および26.1(±0.4)度にX線粉末回折ピークを有する、項目16に記載の方法。
(項目18)
式I
【化102】


の化合物の薬学的に許容される多形体を作製する方法であって、
(i)式Iの化合物を酸性水溶液に溶解して、溶液を得ることと、
(ii)前記溶液を有機溶媒と混合することと、
(iv)前記多形体を単離することと、を含む、方法。
(項目19)
前記酸性水溶液は、HCl水溶液である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記HCl水溶液の濃度は、1重量%〜37重量%である、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記HCl水溶液の濃度は、36〜37重量%である、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記酸性水溶液は、HBr水溶液である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記HBr水溶液の濃度は、1重量%〜48重量%である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記HBr水溶液の濃度は、47〜48重量%である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、THF、ニトロメタン、アセトニトリル、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、DMSO、メチルブチルエーテル(MTBE)、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、n−メチルピロリドン(NMP)、酢酸ブチル、またはトルエンを含む、項目18に記載の方法。
(項目26)
前記有機溶媒は、THFである、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記酸性水溶液は、36〜37重量%の濃度のHCl水溶液である、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記多形体は、結晶質HCl塩である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記結晶質HCl塩は、2θが8.0(±0.4)度、16.0(±0.4)度、19.0(±0.4)度、26.5(±0.4)度、および27.7(±0.4)度にX線粉末回折ピークを有する、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記酸性水溶液は、47〜48重量%の濃度のHBr水溶液である、項目26に記載の方法。
(項目31)
前記多形体は、結晶質HBr塩である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記結晶質HBr塩は、2θが9.1(±0.4)度、17.3(±0.4)度、21.1(±0.4)度、および27.2(±0.4)度にX線粉末回折ピークを有する、項目31に記載の方法。
(項目33)
式I
【化103】


の化合物のHCl塩の結晶質多形体。
(項目34)
前記結晶質多形体は、2θが9.2(±0.4)度、17.5(±0.4)度、24.5(±0.4)度、27.4(±0.4)度、および28.2(±0.4)度にX線粉末回折ピークを有する、項目33に記載の結晶質多形体。
(項目35)
前記結晶質多形体は、2θが8.0(±0.4)度、16.0(±0.4)度、19.0(±0.4)度、26.5(±0.4)度、および27.7(±0.4)度にX線粉末回折ピークを有する、項目33に記載の結晶質多形体。
(項目36)
式I
【化104】


の化合物のHBr塩の結晶質多形体。
(項目37)
前記結晶質多形体は、2θが18.5(±0.4)度、21.6(±0.4)度、22.8(±0.4)度、および26.1(±0.4)度にX線粉末回折ピークを有する、項目36に記載の結晶質多形体。
(項目38)
前記結晶質多形体は、2θが9.1(±0.4)度、17.3(±0.4)度、21.1(±0.4)度、および27.2(±0.4)度にX線粉末回折ピークを有する、項目36に記載の結晶質多形体。
(項目39)
式I
【化105】


の化合物のHCl塩の治療有効量と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
(項目40)
前記HCl塩は、2θが9.2(±0.4)度、17.5(±0.4)度、24.5(±0.4)度、27.4(±0.4)度、および28.2(±0.4)度にX線粉末回折ピークを有する、項目39に記載の組成物。
(項目41)
前記HCl塩は、2θが8.0(±0.4)度、16.0(±0.4)度、19.0(±0.4)度、26.5(±0.4)度、および27.7(±0.4)度にX線粉末回折ピークを有する、項目39に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】HClパターン1のXRPDパターンを示す。
図2】HClパターン2のXRPDパターンを示す。
図3】HClパターン1およびHClパターン2のH NMRを示す。
図4】HClパターン2のTGAトレースを示す。
図5】HClパターン2のDSCトレースを示す。
図6】HClパターン2のGVS動態プロットを示す。
図7】HBrパターン1のXRPDパターンを示す。
図8】HBrパターン1のH NMRを示す。
図9】HBrパターン1のDSCトレースを示す。
図10】HBrパターン2のXRPDパターンを示す。
図11】HBrパターン2のH NMRを示す。
図12】HClパターン2のVT−XRPDパターンを示す。
図13】HBrパターン3のXRPDパターンを示す。
図14】HClパターン2のGVS等温線プロットを示す
図15】HBrパターン4のXRPDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、記載されているが、当業者であれば、かかる実施形態が例として提供されるにすぎないことを理解するであろう。本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、および置換が今では当業者に想到されるであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する種々の代替手段が、本発明を実施する際に用いられ得ることを理解されたい。添付の特許請求の範囲が、本発明の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの均等物が、それによって包含されることが意図される。
I.定義
【0024】
別途定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって広く理解されるものと同じ意味を有する。
【0025】
本明細書および特許請求の範囲で使用される際、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈によりそうでない旨が明確に示されない限り、複数形への参照を含む。
【0026】
本明細書で使用される際、「薬剤」または「生物活性剤」は、生物学的、薬学的、または化学的な化合物または他の部分を指す。非限定的な例としては、単純なまたは複合の有機または無機分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体断片、ビタミン誘導体、炭水化物、毒素、または化学療法化合物が挙げられる。種々の化合物、例えば、小分子およびオリゴマー(例えば、オリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチド)、ならびに種々のコア構造に基づく合成有機化合物を、合成することができる。加えて、植物または動物抽出物等の種々の天然源が、スクリーニングのための化合物を提供することができる。当業者は、本発明の薬剤の構造的性質に関して限定がないことを容易に認識することができる。
【0027】
本明細書で使用される「アゴニスト」という用語は、標的タンパク質の活性または発現のいずれかを阻害することによって、標的タンパク質の生物学的機能を開始または強化する能力を有する化合物を指す。したがって、「アゴニスト」という用語は、標的ポリペプチドの生物学的役割の文脈において定義される。本明細書において好ましいアゴニストは、標的と特異的に相互作用する(例えば、それに結合する)が、標的ポリペプチドがそのメンバーであるシグナル伝達経路の他のメンバーとの相互作用によって、標的ポリペプチドの生物活性を開始または強化する化合物もまた、この定義内に具体的に含まれる。
【0028】
「アンタゴニスト」および「阻害剤」という用語は、互換的に使用され、それらは、標的タンパク質の活性または発現のいずれかを阻害することによって、標的タンパク質の生物学的機能を阻害する能力を有する化合物を指す。したがって、「アンタゴニスト」および「阻害剤」という用語は、標的タンパク質の生物学的役割の文脈において定義される。本明細書において好ましいアンタゴニストは、標的と特異的に相互作用する(例えば、それに結合する)が、標的タンパク質がそのメンバーであるシグナル伝達経路の他のメンバーとの相互作用によって、標的タンパク質の生物活性を阻害する化合物もまた、この定義内に具体的に含まれる。アンタゴニストによって阻害される好ましい生物活性は、腫瘍の発達、成長、もしくは拡散、または自己免疫疾患において見られる望ましくない免疫応答に関連する。
【0029】
「抗癌剤」、「抗腫瘍剤」、または「化学療法剤」は、腫瘍病態の治療において有用な任意の薬剤を指す。抗癌剤の1つのクラスは、化学療法剤を含む。「化学療法」は、静脈内、経口、筋肉内、腹腔内、膀胱内、皮下、経皮、口腔、または吸入もしくは坐剤の形態を含む、種々の方法による、1つ以上の化学療法薬および/または他の薬剤の、癌患者への投与を意味する。
【0030】
「細胞増殖」という用語は、分裂の結果として細胞数が変化した現象を指す。この用語はまた、増殖シグナルと一致して細胞形態が変化した(例えば、寸法が増加した)細胞成長を包含する。
【0031】
「共投与」、「と組み合わせて投与される」という用語、およびそれらの文法的同等形態は、本明細書に使用される際、2つ以上の薬剤を1つの動物に投与し、両方の薬剤および/またはそれらの代謝産物がその動物に同時に存在するようにすることを包含する。共投与には、別個の組成物での同時投与、別個の組成物の異なる時間での投与、または両方の薬剤が存在する組成物での投与が含まれる。
【0032】
「有効量」または「治療有効量」とは、以下に定義される、疾患の治療を含むがそれに限定されない、意図される適用に効果を有するのに十分である、本明細書に記載される化合物の量を指す。治療有効量は、意図される適用(インビトロもしくはインビボ)、または治療されている対象および病状、例えば、対象の体重および年齢、病状の重症度、投与様式等に応じて変動し得、それは当業者によって容易に決定され得る。この用語はまた、標的細胞における特定の応答、例えば、血小板の接着の低減および/または細胞遊走を誘導するであろう用量にも適用される。特定の用量は、選定される特定の化合物、従うべき投薬レジメン、それが他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与のタイミング、それが投与される組織、およびそれが担持される物理的送達系に応じて、変動するであろう。
【0033】
本明細書に使用される際、「治療」、「治療すること」、「一時緩和すること」、および「寛解させること」という用語は、本明細書に互換的に使用される。これらの用語は、治療的利点および/または予防的利点を含むがそれらに限定されない、有益なまたは所望される結果を得るためのアプローチを指す。治療的利点とは、治療されている基礎障害の根絶または寛解を意味する。また、治療的利点は、患者が依然として基礎障害に罹患している場合があるにもかかわらず、患者において改善が観察されるような、基礎障害に関連する生理的症状の1つ以上の根絶または寛解により達成される。予防的利点のために、組成物は、特定の疾患を発症する危険性がある患者、または、この疾患の診断が下されていないが疾患の1つ以上の生理的症状を報告する患者に、投与され得る。
【0034】
「治療効果」は、この用語が本明細書に使用される際、上述の治療的利点および/または予防的利点を包含する。予防効果には、疾患もしくは病態の出現を遅延もしくは排除すること、疾患もしくは病態の症状の発症を遅延もしくは排除すること、または疾患もしくは病態の進行を緩徐化、停止、もしくは反転させること、あるいはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0035】
「薬学的に許容される塩」という用語は、当該技術分野で周知の多様な有機および無機対イオンに由来する塩を指す。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸から形成することができる。塩が由来し得る無機酸には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等が含まれる。塩が由来し得る有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等が含まれる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基から形成することができる。塩が由来し得る無機塩基には、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等が含まれる。塩が由来し得る有機塩基には、例えば、一級、二級、および三級アミン、天然に生じる置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂等、具体的には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびエタノールアミン等が含まれる。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される塩基付加塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、およびマグネシウム塩から選定される。ビス塩(すなわち、2つの対イオン)、トリス塩、およびより高度な塩が、薬学的に許容される塩の意味に包含される。
【0036】
「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。薬学的活性物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。任意の従来的な媒体または薬剤が活性成分と不適合性である場合を除いて、本発明の治療組成物におけるその使用が企図される。補足的な活性成分もまた、組成物中に組み込むことができる。
【0037】
「対象」は、哺乳動物等の動物、例えばヒトを指す。本明細書に記載される方法は、ヒト治療学および獣医学適用の両方において有用であり得る。いくつかの実施形態において、患者は哺乳動物であり、いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0038】
「プロドラッグ」とは、生理学的条件下、または加溶媒分解によって、本明細書に記載される生物活性化合物へ変換され得る化合物を指すことを意味する。したがって、「プロドラッグ」という用語は、薬学的に許容される生物活性化合物の前駆体を指す。プロドラッグは、対象に投与されるときには不活性であり得るが、インビボで、例えば加水分解によって、活性化合物に変換される。プロドラッグ化合物は、しばしば、哺乳動物生物において、可溶性、組織適合性、または遅延放出の利点を提供する(例えば、Bundgard,H.,Design of Prodrugs(1985),pp.7−9,21−24(Elsevier,Amsterdam)を参照されたい。プロドラッグについての考察は、Higuchi,T.,et al.,“Pro−drugs as Novel Delivery Systems,”A.C.S.Symposium Series,Vol.14、およびBioreversible Carriers in Drug Design,ed. Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987に提供され、これらのいずれも、参照により本明細書に完全に組み込まれる。「プロドラッグ」という用語はまた、かかるプロドラッグが哺乳動物対象に投与されるとインビボで活性化合物を放出する、任意の共有結合された担体を含むことを意味する。活性化合物のプロドラッグは、本明細書に記載のように、活性化合物中に存在する官能基の修飾を、修飾が日常的な操作またはインビボのいずれかで親活性化合物に開裂されるような方式で行うことによって、調製することができる。プロドラッグは、ヒドロキシ、アミノ、またはメルカプト基が任意の基に結合された化合物を含み、この基は、活性化合物のプロドラッグを哺乳動物対象に投与すると、開裂して、それぞれ、遊離ヒドロキシ、遊離アミノ、または遊離メルカプト基を形成する。プロドラッグの例には、限定されないが、アルコールの酢酸塩、ギ酸塩、および安息香酸塩誘導体、または活性化合物中のアミン官能基のアセトアミド、ホルムアミド、およびベンズアミド誘導体等が挙げられる。
【0039】
「インビボ」という用語は、対象の身体内で起こる事象を指す。
【0040】
「インビトロ」という用語は、対象の身体の外側で起こる事象を指す。例えば、インビトロアッセイは、対象アッセイの外側で実行される任意のアッセイを包含する。インビトロアッセイは、生存または死滅した細胞が用いられる、細胞ベースのアッセイを包含する。インビトロアッセイはまた、無傷細胞が何ら用いられない無細胞アッセイも包含する。
【0041】
「単離する」という用語は、精製することもまた包含する。
【0042】
別途定めのない限り、本明細書に描写される構造はまた、1個以上の同位体濃縮した原子の存在においてのみ異なる、化合物を含むことが意図される。例えば、ジュウテリウムもしくはトリチウムによる水素の置換、または13C濃縮もしくは14C濃縮炭素による炭素の置換を除いて、本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0043】
本発明の化合物はまた、かかる化合物を構成する原子のうちの1個以上において、非天然の割合の原子の同位体を含有してもよい。例えば、化合物は、例えば、トリチウム(H)、ヨウ素−125(125I)、または炭素−14(14C)等の放射性同位体で放射標識されてもよい。本発明の化合物の全ての同位体変形は、放射性であるかどうかにかかわらず、本発明の範囲内に包含される。
【0044】
分子量等の物理的特性、または化学式等の化学的特性について、範囲が本明細書で使用されるとき、範囲の全ての組み合わせおよび部分的組み合わせ、ならびにその中の具体的な実施形態が含まれることが意図される。数または数値範囲を参照する際の「約」という用語は、参照される数または数値範囲が、実験的変動性(または統計的な実験的誤差)以内の近似値であることを意味し、したがって、数または数値範囲は、例えば、提示された数または数値範囲の1%〜15%の間で変動し得る。「含むこと(comprising)」という用語(および「含む(comprise)」または「含む(comprises)」または「有すること(having)」または「含むこと(including)」等の関連する用語)は、記載される特長「からなる」または記載される特長「から本質的になる」実施形態、例えば、任意の物質の組成物、組成物、方法、またはプロセス等の実施形態を含む。「から本質的になる」という表現は、物質または組成物を大幅な割合および/または微量で実質的に変化させる、明記されていない構成要素を除く。
【0045】
「溶媒」、「有機溶媒」、または「不活性溶媒」という用語は、それぞれ、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、クロロホルム、塩化メチレン(またはジクロロメタン)、ジエチルエーテル、メタノール、N−メチルピロリドン(「NMP」)、ピリジン等を含む、それと併記されている反応の条件下において不活性な溶媒を意味する。そうでないことが明示されない限り、本明細書に記載される反応に使用される溶媒は、不活性有機溶媒である。そうでないことが明示されない限り、限定試薬の1グラムに対し、1cc(またはmL)の溶媒が、体積当量に相当する。
【0046】
「溶媒和物」とは、薬学的に許容される溶媒の1つ以上の分子と物理的に会合した化合物(例えば、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩)を指す。
【0047】
「結晶質形態」、「多形体」、および「形態」は、本明細書で互換的に使用され得、特定の結晶質または非晶質形態が言及されない限り、例えば、多形体、偽多形体、塩、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形体(無水物を含む)、配座多形体、および非晶質形態、ならびにそれらの混合物を含む、化合物の全ての結晶質および非晶質形態を含むことを意味する。本発明の化合物は、例えば、化合物の多形体、偽多形体、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形体(無水物を含む)、配座多形体、および非晶質形態、ならびにそれらの混合物を含む、化合物の結晶質および非晶質形態を含む。
【0048】
「HClパターン」という用語は、化合物のHCl塩である特定の形態を指す。同様に、「HBrパターン」とは、化合物のHBr塩である特定の形態を指す。本明細書に使用される際、「HClパターン1」および「HClパターン2」という用語は、式Iの化合物のHCl塩の特定の形態を指す。同様に、「HBrパターン1」、「HBrパターン2」、および「HBrパターン3」は、式Iの化合物のHBr塩の特定の形態を指す。
【0049】
本明細書に記載される化合物の薬学的に許容される形態には、薬学的に許容される塩、キレート、非共有結合複合体、プロドラッグ、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される化合物は、薬学的に許容される塩の形態である。したがって、「化学的実体(複数可)」はまた、薬学的に許容される塩、キレート、非共有結合複合体、プロドラッグ、および混合物を包含する。
【0050】
さらに、本発明の化合物が酸付加塩として得られる場合、遊離塩基は、酸性塩の溶液の塩基性化によって得ることができる。逆に、製剤が遊離塩基である場合、付加塩、特に薬学的に許容される付加塩は、塩基化合物から酸付加塩を調製するための従来的な手順に従って、遊離塩基を好適な有機溶媒中に溶解し、その溶液を酸で処理することによって生成することができる。当業者であれば、非毒性の薬学的に許容される付加塩を調製するために使用され得る、種々の合成方法を認識するであろう。
II.化合物および作製方法
【0051】
本明細書に記載される化学的実体は、概して、一般に周知の合成方法の適切な組み合わせによって、合成することができる。これらの化学的実体の合成に有用な技術は、本開示に基づいて、関連技術分野の当業者にとって容易に明らかであり、かつ利用可能である。任意に置換される出発化合物および他の反応物質の多くは、例えば、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から市販入手可能であるか、または広く採用されている合成方法を使用して当業者が容易に調製することができる。
【0052】
本発明の方法に従って作製された多形体は、当該技術分野に従った任意の方法論によって特徴付けることができる。例えば、本発明の方法に従って作製された多形体は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、ホットステージ顕微鏡、および分光法(例えば、ラマン、固体核磁気共鳴(ssNMR)、および赤外線(IR))によって特徴付けることができる。
【0053】
XRPD
【0054】
本発明による多形体は、X線粉末回折パターン(XRPD)によって特徴付けることができる。XRPDピークの相対強度は、試料調製方法、試料載値手順、および利用される特定の機器に応じて、変動し得る。さらに、機器の種類および他の要因が2θ値に影響を及ぼし得る。したがって、XRPDピークの割り当ては、±約0.1、0.2、0.3、または0.4度で変動し得る。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のパターンの2θ値は、±約0.4度で変動し得る。他の実施形態において、本発明のパターンの2θ値は、±約0.2度で変動し得る。さらに他の実施形態において、本発明のパターンの2θ値は、±約0.1度で変動し得る。
【0055】
DSC
【0056】
本発明による多形体はまた、図面に示されるもの等、その特徴的な示差熱量計走査(DSC)トレースによって特定することができる。DSCについては、観察される温度は、温度変化の速度、ならびに試料調製技術および利用される特定の機器に応じて異なるであろうことが既知である。したがって、DSCサーモグラムに関連して本明細書に報告される値は、±約4、6、8、または10℃で変動し得る。例えば、値は、±約6℃で変動し得る。
【0057】
TGA
【0058】
本発明の多形体形態はまた、非晶質物質または別の多形体形態のものとは異なる熱挙動をもたらし得る。熱挙動は、熱重量分析(TGA)によって、研究室で測定することができ、これを使用して、一部の多形体形態を他の多形体形態と区別することができる。一態様において、多形体は、熱重量分析によって特徴付けることができる。
【0059】
GVS
本発明による多形体はまた、試料による溶媒吸収の速度および量を測定する、重量蒸気収着(GVS)によって特定することができる。一態様において、多形体は、重量蒸気収着分析によって特徴付けることができる。
【0060】
多形体
本発明の多形体形態は、医薬品の生成に有用であり、結晶質および半結晶質形態を生成するための結晶化プロセスまたは非晶質形態を得るための凝固プロセスによって、得ることができる。種々の実施形態において、結晶化は、反応混合物中で式Iの化合物を生成し、反応混合物から所望の多形体を単離すること、または溶媒中に未加工の化合物を溶解し、場合によっては加熱し、その後に冷却(能動冷却を含む)および/もしくは一定期間の逆溶媒の添加により生成物を結晶化/凝固させること、のいずれかによって、行われる。結晶化または凝固の後に、制御される条件下で所望される含水量が最終多形体形態において達成されるまで行われる、乾燥させてもよい。
【0061】
一態様において、本発明は、式I
【化6】

の化合物の1つ以上の多形体、またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和物を作製する方法を提供する。本発明の方法による多形体は、HClパターン1、HClパターン2、HBrパターン1、HBrパターン2、HBrパターン3、非晶質形態、および1つを上回る形態の混合物から選択され得る。さらに、本発明に従って作成される多形体には、溶媒和物が含まれ得る。種々の実施形態において、本発明の多形体は、遊離塩基、モノ塩、またはビス塩として、例えば、式Iの化合物のHCl塩もしくはビスHCl塩、または式Iの化合物のHBr塩として調製される。
【0062】
種々の実施形態において、式Iの化合物は、次のスキームに従って合成される。
【0063】
スキーム1
【化7】
【0064】
化合物1から化合物2への変換は、当該技術分野における任意の方法に従って行うことができる。一実施形態において、化合物1を、室温を上回る温度でメタノール中の臭化シアンで処理して、化合物2を得る。
【0065】
スキーム2
【化8】
【0066】
化合物2から化合物3への変換は、当該技術分野における任意の方法に従って行うことができる。種々の実施形態において、化合物2は、ジボロン試薬との遷移金属触媒交差カップリング反応を介して化合物3aに変換することができる。一実施形態において、化合物2を、昇温において、1,4−ジオキサン中、ビス−(ピナコラト)ジボロン、ジクロロメタンとの錯体である1,1’−ビス[(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)、および酢酸カリウムで処理して、ボロン酸エステル3aを得る。一実施形態において、化合物3aを、昇温において、酸、例えばHCl水溶液でさらに処理して、ボロン酸誘導体である化合物3を得る。
【0067】
スキーム3
【化9】
【0068】
化合物4から化合物5への変換は、当該技術分野における任意の方法に従って行うことができる。一実施形態において、化合物4を、メチルt−ブチルエーテル中、ギ酸エチルおよびナトリウムエトキシドで処理して、化合物5を得る。
【0069】
スキーム4
【化10】
【0070】
化合物6から化合物8への変換は、当該技術分野における任意の方法に従って行うことができる。一実施形態において、化合物5および6をメタノール中で加熱還流して、化合物7を得る。化合物7をNaOH水溶液でさらに加水分解することにより、酸性水溶液でのワークアップの後に、化合物8が得られる。
【0071】
スキーム5
【化11】
【0072】
化合物8から化合物9への変換は、当該技術分野における任意の方法に従って行うことができる。一実施形態において、化合物8を、まず、触媒量のDMFの存在下で、1,4−ジオキサン中、塩化チオニルでの処理によって、酸塩化物に変換させる。結果として得られる酸塩化物をモルホリンと反応させて、化合物9を得る。
【0073】
スキーム6
【化12】
【0074】
化合物8から化合物9への変換は、当該技術分野における任意の方法に従って行うことができる。種々の実施形態において、化合物9を、遷移金属触媒カップリング反応等の交差カップリング反応を介して化合物3とカップリングさせて、式Iの化合物を得る。一実施形態において、化合物9および3を、Pd(PPhおよび炭酸ナトリウムの存在下で1,4−ジオキサン/水中において加熱して、式Iの化合物を得る。反応生成物のワークアップには、式Iの化合物の溶液を活性炭で処理してパラジウムを除去することが含まれ得る。
【0075】
一態様において、本発明は、式I
【化13】

の化合物の多形体、または式Iの化合物の塩の多形体を作製する方法であって、式Iの化合物を溶媒系に懸濁または溶解することと、懸濁液に酸を添加して混合物を得ることと、混合物を加熱または冷却サイクルに供することと、多形体を単離することと、を含む、方法を対象とする。別の態様において、式Iの化合物の多形体、または式Iの化合物の塩の多形体は、式Iの化合物を酸性水溶液に懸濁または溶解し、有機溶媒系を添加し、多形体を単離することによって、調製される。
【0076】
種々の実施形態において、溶媒系は、有機溶媒系である。例えば、溶媒系には、メタノール、エタノール、THF、ニトロメタン、アセトニトリル、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、DMSO、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、N−メチルピロリドン(NMP)、酢酸ブチル、またはトルエンが挙げられる。種々の実施形態において、有機溶媒系には、メタノール、エタノール、THF、ニトロメタン、アセトニトリル、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、DMSO、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、N−メチルピロリドン(NMP)、酢酸ブチル、またはトルエンが挙げられる。一実施形態において、有機溶媒系は、ニトロメタン、THF、メチルエチルケトン(MEK)、またはアセトニトリルである有機溶媒である。
【0077】
種々の実施形態において、多形体は、式Iの化合物を、酸を含む水性溶媒系に懸濁または溶解することによって得られる。例えば、酸は、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、L−アスパラギン酸、p−トルエンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸(EDSA)、塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、クエン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、フマル酸、硫酸、マレイン酸、メタンスルホン酸(MSA)、リン酸、またはシュウ酸である。例えば、式Iの化合物を、塩化水素または臭化水素酸水溶液に懸濁または溶解して、スラリーまたは溶液をもたらす。混合または撹拌を行ってもよい。塩酸水溶液の濃度は、例えば、1重量%〜37重量%であり得る。いくつかの実施形態において、塩酸の濃度は、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、または37重量%である。例えば、35〜37重量%の塩酸が使用される。他の実施形態において、臭化水素酸水溶液が使用され、臭化水素酸水溶液の濃度は、例えば、1重量%〜48重量%である。いくつかの実施形態において、臭化水素酸の濃度は、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、または48重量%である。例えば、46〜48重量%の臭化水素酸が使用される。
【0078】
いくつかの実施形態において、加熱または冷却サイクルが、本発明の多形体を調製するために使用される。例えば、加熱サイクルは、−5℃〜30℃、0℃〜30℃、10℃〜30℃、または20℃〜30℃で開始する。いくつかの実施形態において、加熱サイクルは、室温(約20〜25℃)から開始する。加熱サイクルは、最大で約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100℃、またはそれを上回る温度で行われる。例えば、加熱サイクルは、最大で約40℃〜100℃、60℃〜100℃、80℃〜100℃、または90℃〜100℃の温度で行われる。加熱は、任意の速度、例えば、1分当たり0.1〜10℃で行われ得る。いくつかの実施形態において、加熱は、1分当たり0.1〜10℃、1分当たり0.5〜10℃、1分当たり1〜10℃、1分当たり2〜10℃、1分当たり5〜10℃、1分当たり10〜20℃、または1分当たり10〜30℃の速度で行われるか、または勾配する。
【0079】
いくつかの実施形態において、冷却サイクルが使用される。例えば、冷却サイクルは、15℃〜30℃、30℃〜60℃、40℃〜90℃、または40℃〜100℃で開始する。いくつかの実施形態において、冷却サイクルは、室温(約20〜25℃)から開始する。他の実施形態において、冷却サイクルは、100℃よりも高くから開始する。他の実施形態において、冷却サイクルは、70〜100℃の温度で開始する。冷却サイクルは、90、80、70、60、50、40、30、25、20、15、10、5、0℃、またはそれを下回る温度まで行われる。例えば、冷却サイクルは、約0℃〜40℃、0℃〜30℃、10℃〜30℃、15℃〜25℃の温度まで行われる。冷却は、任意の速度、例えば、1分当たり0.1〜10℃で行われ得る。いくつかの実施形態において、冷却は、1分当たり0.1〜10℃、1分当たり0.5〜10℃、1分当たり1〜10℃、1分当たり2〜10℃、1分当たり5〜10℃、1分当たり10〜20℃、または1分当たり10〜30℃の速度で行われるか、または勾配する。
【0080】
各加熱または冷却サイクルは、温度を所望のレベルに引き上げるのに必要である間、行われ得る。例えば、加熱サイクルは、1分〜5分、5分〜10分、10分〜1時間、または1時間〜24時間、継続し得る。いくつかの実施形態において、1時間〜10週間、または5時間〜1週間、または24時間〜72時間継続する冷却サイクルが用いられる。
【0081】
一態様において、本発明は、式I
【化14】

の化合物の多形体、または式Iの化合物の塩の多形体を、式Iの化合物を合成した後に、第1の固体形態として所望される多形体を単離すること、または代替として、式Iの化合物の前固体形態からの遷移物として所望される多形体を単離することによって、作製する方法を対象とする。1つの形態から別の形態への遷移は、それらが、医薬品の生成に所望される形態を得るための代替の製造方法であり得るため、本発明の範囲内である。
【0082】
種々の実施形態において、本発明は、式Iの化合物の多形体を作製する方法を対象とし、本方法は、単離した多形体または多形体の混合物を所望される多形体に変換することを伴う。ある特定の実施形態において、本方法は、1つ以上の多形体を含む組成物を、元の多形体(複数可)の合計量の少なくとも約50%を所望される多形体の少なくとも約50%に変換するのに十分な条件に曝露し、必要に応じて所望される多形体を単離することを含む。
【0083】
HClパターン2
いくつかの実施形態において、本発明による多形体は、HClパターン2である。HClパターン2のXRPDパターンを、図2に示す。HClパターン2のTGAトレースを、図4に示す。HClパターン2のDSCトレースを、図5に示す。HClパターン2のGVS動態プロットを、図6に示す。HClパターン2のVT−XRPDパターンを、図12に表す。HClパターン2のGVS等温線プロットを、図14に示す。
【0084】
種々の実施形態において、HClパターン2は、非HClパターン2の多形体形態との混合物で得ることができる。例えば、種々の実施形態において、HClパターン2は、1つ以上の非HClパターン2の多形体形態をさらに含む組成物として存在し得る。非HClパターン2の多形体形態の量は、多様であり得る。例えば、種々の実施形態において、多形体HClパターン2と、1つ以上の非HClパターン2の多形体の合計量との重量比は、約7:1を上回る、約8:1を上回る、約9:1を上回る、約9.5:1を上回る、または約99:1を上回る。同様に、薬学的組成物に製剤化される場合、種々の量の非HClパターン2の多形体形態が存在してもよい。種々の実施形態において、薬学的組成物中の、多形体HClパターン2と、1つ以上の非HClパターン2の多形体の合計量との重量比は、約7.1を上回る、約8:1を上回る、約9:1を上回る、約9.5:1を上回る、または約99:1を上回る場合がある。
【0085】
種々の実施形態において、HClパターン2は、式Iの化合物を、溶媒または溶媒系に入れることによって生成することができる。例えば、有機溶媒または溶媒系が使用される。式Iの化合物は、懸濁液またはスラリーを形成し得る。塩酸を、上記懸濁液またはスラリーに添加して、混合物を得ることができる。この混合物を、所望される量のHClパターン2への変換が生じるまで、場合によっては加熱または冷却しながら、撹拌してもよい。いくつかの実施形態において、上記混合物を、撹拌することなく、少なくとも1回の加熱または冷却サイクルに供する。
【0086】
種々の実施形態において、溶媒系には、メタノール、エタノール、THF、ニトロメタン、アセトニトリル、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、DMSO、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、N−メチルピロリドン(NMP)、酢酸ブチル、またはトルエンが挙げられる。種々の実施形態において、有機溶媒系には、メタノール、エタノール、THF、ニトロメタン、アセトニトリル、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、DMSO、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、N−メチルピロリドン(NMP)、酢酸ブチル、またはトルエンが挙げられる。一実施形態において、有機溶媒系は、ニトロメタン、THF、メチルエチルケトン(MEK)、またはアセトニトリルである有機溶媒である。
【0087】
種々の実施形態において、HClパターン2は、非HClパターン2形態を完全に溶解した後に、いかなる不溶性粒子をも濾過によって除去し、続いて再結晶化してHClパターン2を得ることを含む、非HClパターン2形態の再結晶化によって得られる。種々の実施形態において、完全な溶解および濾過は行われず、その場合、スラリーが形成され、これが、1つ以上の非HClパターン2形態が完全に溶解することなく、HClパターン2へと変換する。
【0088】
種々の実施形態において、HClパターン2は、式Iの化合物を、塩酸を含む水性溶媒系に懸濁または溶解することによって得られる。例えば、式Iの化合物を、塩酸水溶液に懸濁または溶解して、スラリーまたは溶液を得る。混合または撹拌を行ってもよく、また場合によっては加熱または冷却サイクルを行ってもよい。一実施形態において、加熱または冷却は行われない。有機溶媒または溶媒系を、さらに、スラリーまたは溶液と混合してもよい。例えば、HClパターン2は、メタノール、エタノール、THF、ニトロメタン、アセトニトリル、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、DMSO、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、N−メチルピロリドン(NMP)、酢酸ブチル、またはトルエンを含む有機溶媒系の添加後に、単離される。例えば、有機溶媒系は、ニトロメタン、THF、メチルエチルケトン(MEK)、またはアセトニトリルである有機溶媒である。
【0089】
塩酸水溶液の濃度は、例えば、1重量%〜37重量%であり得る。いくつかの実施形態において、塩酸の濃度は、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、または37重量%である。例えば、35〜37重量%の塩酸が使用される。
【0090】
種々の実施形態において、式Iの化合物の元の固体形態は、約50%を上回る非(HClパターン2)多形体を含有し、所望される多形体は、HClパターン2である。HClパターン2への変換は、非HClパターン2の多形体の合計量の少なくとも50%を式Iの化合物のHClパターン2に変換するのに十分な期間、必要に応じて、任意の非HClパターン2多形体からHClパターン2を任意で単離することを伴って、行われ得る。
【0091】
塩形態
種々の実施形態において、式Iの化合物は、薬学的に許容される塩である。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸から形成することができる。塩が由来し得る無機酸には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。塩が由来し得る有機酸形態には、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、1,2−エタンジスルホン酸等が挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基から形成することができる。塩が由来し得る無機塩基には、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等が含まれる。塩が由来し得る有機塩基には、例えば、一級、二級、および三級アミン、天然に生じる置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂等、具体的には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびエタノールアミン等が挙げられる。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される塩基付加塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、およびマグネシウム塩から選定される。ビス塩(すなわち、2つの対イオン)およびより高度な塩が、薬学的に許容される塩の意味に包含される。
【0092】
種々の実施形態において、式Iの塩は、硫酸、p−トルエンスルホン酸、D−グルクロン酸(D−glucaronic acid)、エタン−1,2−ジスルホン酸(EDSA)、2−ナフタレンスルホン酸(NSA)、塩酸(HCl)(モノおよびビス)、臭化水素酸(HBr)、シュウ酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸(NDSA)、DL−マンデル酸、フマル酸、硫酸、マレイン酸、メタンスルホン酸(MSA)、ベンゼンスルホン酸(BSA)、エタンスルホン酸(ESA)、L−リンゴ酸、リン酸、およびアミノエタンスルホン酸(タウリン)から形成され得る。
III.組成物
【0093】
本発明は、本発明の1つ以上の多形体を含む、薬学的組成物を含む組成物を提供する。本発明は、さらに、実施例、具体的には実施例1〜6に記載される、組成物を調製するための方法を提供する。
【0094】
種々の実施形態において、HClパターン1、HClパターン2、HBrパターン1、HBrパターン2、またはHBrパターン3等、所望される多形体と、全ての他の多形体との比率は、約5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、またはそれ以上を上回り得る。
【0095】
主題の薬学的組成物は、典型的に、活性成分として、本発明の多形体、またはその薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、もしくはその誘導体の治療有効量を提供するために、製剤化される。所望される場合、薬学的組成物は、それらの薬学的に許容される塩および/または配位錯体、ならびに1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、不活性固体希釈剤および充填剤を含む担体、滅菌水溶液および種々の有機溶媒を含む希釈剤、浸透促進剤、可溶化剤、ならびにアジュバントを含有する。
【0096】
主題の薬学的組成物は、単独でか、または、薬学的組成物の形態で同様に典型的に投与される1つ以上の他の薬剤と組み合わせて、投与することができる。所望される場合、主題の多形体および他の薬剤(複数可)は、それらを別々に組み合わせてまたは同時に使用するために、1つの調製物に混合され得るか、または両方の構成成分が別個の調製物に製剤化され得る。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物において提供される多形体のうちの1つ以上の濃度は、100%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、0.01%未満、0.009%未満、0.008%未満、0.007%未満、0.006%未満、0.005%未満、0.004%未満、0.003%未満、0.002%未満、0.001%未満、0.0009%未満、0.0008%未満、0.0007%未満、0.0006%未満、0.0005%未満、0.0004%未満、0.0003%未満、0.0002%未満、または0.0001%未満(w/w、w/v、またはv/v)である。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明の多形体のうちの1つ以上の濃度は、90%超、80%超、70%超、60%超、50%超、40%超、30%超、20%超、19.75%超、19.50%超、19.25%超 19%超、18.75%超、18.50%超、18.25%超 18%超、17.75%超、17.50%超、17.25%超 17%超、16.75%超、16.50%超、16.25%超 16%超、15.75%超、15.50%超、15.25%超 15%超、14.75%超、14.50%超、14.25%超 14%超、13.75%超、13.50%超、13.25%超 13%超、12.75%超、12.50%超、12.25%超 12%超、11.75%超、11.50%超、11.25%超 11%超、10.75%超、10.50%超、10.25%超 10%超、9.75%超、9.50%超、9.25%超 9%超、8.75%超、8.50%超、8.25%超 8%超、7.75%超、7.50%超、7.25%超 7%超、6.75%超、6.50%超、6.25%超 6%超、5.75%超、5.50%超、5.25%超 5%超、4.75%超、4.50%超、4.25%超、4%超、3.75%超、3.50%超、3.25%超、3%超、2.75%超、2.50%超、2.25%超、2%超、1.75%超、1.50%超、125%超、1%超、0.5%超、0.4%超、0.3%超、0.2%超、0.1%超、0.09%超、0.08%超、0.07%超、0.06%超、0.05%超、0.04%超、0.03%超、0.02%超、0.01%超、0.009%超、0.008%超、0.007%超、0.006%超、0.005%超、0.004%超、0.003%超、0.002%超、0.001%超、0.0009%超、0.0008%超、0.0007%超、0.0006%超、0.0005%超、0.0004%超、0.0003%超、0.0002%超、または0.0001%超(w/w、w/v、またはv/v)である。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明の多形体のうちの1つ以上の濃度は、およそ0.0001%〜およそ50%、およそ0.001%〜およそ40%、およそ0.01%〜およそ30%、およそ0.02%〜およそ29%、およそ0.03%〜およそ28%、およそ0.04%〜およそ27%、およそ0.05%〜およそ26%、およそ0.06%〜およそ25%、およそ0.07%〜およそ24%、およそ0.08%〜およそ23%、およそ0.09%〜およそ22%、およそ0.1%〜およそ21%、およそ0.2%〜およそ20%、およそ0.3%〜およそ19%、およそ0.4%〜およそ18%、およそ0.5%〜およそ17%、およそ0.6%〜およそ16%、およそ0.7%〜およそ15%、およそ0.8%〜およそ14%、およそ0.9%〜およそ12%、およそ1%〜およそ10%(w/w、w/v、またはv/v)の範囲にある。v/v。
【0100】
いくつかの実施形態において、本発明の多形体のうちの1つ以上の濃度は、およそ0.001%〜およそ10%、およそ0.01%〜およそ5%、およそ0.02%〜およそ4.5%、およそ0.03%〜およそ4%、およそ0.04%〜およそ3.5%、およそ0.05%〜およそ3%、およそ0.06%〜およそ2.5%、およそ0.07%〜およそ2%、およそ0.08%〜およそ1.5%、およそ0.09%〜およそ1%、およそ0.1%〜およそ0.9%(w/w、w/v、またはv/v)の範囲にある。
【0101】
いくつかの実施形態において、本発明の多形体のうちの1つ以上の量は、10g以下、9.5g以下、9.0g以下、8.5g以下、8.0g以下、7.5g以下、7.0g以下、6.5g以下、6.0g以下、5.5g以下、5.0g以下、4.5g以下、4.0g以下、3.5g以下、3.0g以下、2.5g以下、2.0g以下、1.5g以下、1.0g以下、0.95g以下、0.9g以下、0.85g以下、0.8g以下、0.75g以下、0.7g以下、0.65g以下、0.6g以下、0.55g以下、0.5g以下、0.45g以下、0.4g以下、0.35g以下、0.3g以下、0.25g以下、0.2g以下、0.15g以下、0.1g以下、0.09g以下、0.08g以下、0.07g以下、0.06g以下、0.05g以下、0.04g以下、0.03g以下、0.02g以下、0.01g以下、0.009g以下、0.008g以下、0.007g以下、0.006g以下、0.005g以下、0.004g以下、0.003g以下、0.002g以下、0.001g以下、0.0009g以下、0.0008g以下、0.0007g以下、0.0006g以下、0.0005g以下、0.0004g以下、0.0003g以下、0.0002g以下、または0.0001g以下である。
【0102】
いくつかの実施形態において、本発明の多形体のうちの1つ以上の量は、0.0001g超、0.0002g超、0.0003g超、0.0004g超、0.0005g超、0.0006g超、0.0007g超、0.0008g超、0.0009g超、0.001g超、0.0015g超、0.002g超、0.0025g超、0.003g超、0.0035g超、0.004g超、0.0045g超、0.005g超、0.0055g超、0.006g超、0.0065g超、0.007g超、0.0075g超、0.008g超、0.0085g超、0.009g超、0.0095g超、0.01g超、0.015g超、0.02g超、0.025g超、0.03g超、0.035g超、0.04g超、0.045g超、0.05g超、0.055g超、0.06g超、0.065g超、0.07g超、0.075g超、0.08g超、0.085g超、0.09g超、0.095g超、0.1g超、0.15g超、0.2g超、0.25g超、0.3g超、0.35g超、0.4g超、0.45g超、0.5g超、0.55g超、0.6g超、0.65g超、0.7g超、0.75g超、0.8g超、0.85g超、0.9g超、0.95g超、1g超、1.5g超、2g超、2.5超、3g超、3.5超、4g超、4.5g超、5g超、5.5g超、6g超、6.5g超、7g超、7.5g超、8g超、8.5g超、9g超、9.5g超、または10g超である。
【0103】
いくつかの実施形態において、本発明の多形体のうちの1つ以上の量は、0.0001〜10g、0.0005〜9g、0.001〜8g、0.005〜7g、0.01〜6g、0.05〜5g、0.1〜4g、0.5〜4g、または1〜3gの範囲にある。
【0104】
本発明による多形体は、幅広い投薬量範囲にわたって有効である。例えば、ヒト成人の治療において、1日当たり0.01〜1000mg、0.5〜100mg、1〜50mg、および1日当たり5〜40mgの投薬量が、使用され得る投薬量の例である。例となる投薬量は、1日当たりまたは1週間当たり、10〜30mgである。厳密な投薬量は、投与経路、多形体が投与される形態、治療される対象、治療される対象の体重、ならびに主治医の選好および経験に依存するであろう。
【0105】
非限定的な例示的薬学的組成物およびそれらを調製する方法を、以下に記載する。
【0106】
経口投与のための薬学的組成物。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の多形体および経口投与に好適な薬学的賦形剤を含有する、経口投与のための薬学的組成物を提供する。
【0107】
いくつかの実施形態において、本発明は、(i)本発明の化合物の治療有効量、場合によっては(ii)第2の薬剤の有効量、および(iii)経口投与に好適な1つ以上の薬学的賦形剤を含有する、経口投与のための固体薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本組成物は、さらに、(iv)第3の薬剤の有効量を含有する。
【0108】
いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、経口摂取に好適な液体薬学的組成物であってもよい。経口投与に好適な本発明の薬学的組成物は、カプセル、カシェ、もしくは錠剤等の個別の剤形、あるいは、それぞれが粉末としてもしくは顆粒中に所定の量の活性成分を含有する液体もしくはエアロゾルスプレー、溶液、または水性もしくは非水性の液体中の懸濁液、水中油乳剤、もしくは油中水乳剤として、提示され得る。かかる剤形は、調剤方法のいずれによっても調製することができるが、全ての方法は、活性成分を、1つ以上の必要な成分を構成する担体と混合するステップを含む。一般に、組成物は、活性成分を、液体担体もしくは微粉化した固体担体またはその両方と均一かつ緊密に混和し、次いで、必要であれば、生成物を所望される提示形態に成形することによって、調製される。例えば、錠剤は、任意に1つ以上の副成分と共に、圧縮または成形することによって調製され得る。圧縮錠剤は、好適な機械中で、粉末または顆粒等の自由流動性形態の活性成分を、任意に結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、および/または界面活性剤もしくは分散剤等であるがそれらに限定されない賦形剤と混合して、圧縮することによって調製され得る。成形錠剤は、好適な機械中で、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末化化合物の混合物を成形することによって作製することができる。
【0109】
本発明は、水が一部の化合物の分解を促進する可能性があることから、活性成分を含む無水薬学的組成物および剤形をさらに包含する。例えば、水は、薬学技術分野において、製剤の経時的な貯蔵寿命または安定性等の特徴を決定するために長期保管をシミュレートする手段として、添加されてもよい(例えば、5%)。本発明の無水薬学的組成物および剤形は、無水または低水分含有成分および低水分または低湿度条件を使用して調製することができる。乳糖を含有する本発明の薬学的組成物および剤形は、製造、パッケージ化、および/または保管中の水分および/または湿度への相当の接触が予想される場合、無水にすることができる。無水薬学的組成物は、その無水性質が維持されるように調製および保管され得る。したがって、無水組成物は、それを好適な製剤キットに含めることができるような、水への曝露を防止することが知られる物質を使用してパッケージ化されてもよい。好適なパッケージ化の例としては、密封ホイル、プラスチック等、単位用量容器、ブリスターパック、およびストリップパックが挙げられるが、それらに限定されない。
【0110】
活性成分は、従来の薬学調合技法に従って、薬学的担体と緊密に混和して組み合わせることができる。担体は、投与に望ましい調製形態に応じて、多種多様な形態をとることができる。経口剤形のための組成物を調製する際は、例えば、経口液体調製物(懸濁液、溶液、およびエリキシル等)もしくはエアロゾルの場合には、通常の薬学的媒体のいずれかを、水、グリコール、油、アルコール、香料剤、防腐剤、着色剤等の担体として用いることができ、または経口固体調製物の場合には、デンプン、糖類、微晶質セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、および崩壊剤等の担体を使用することができ、いくつかの実施形態においては、乳糖の使用は伴わない。例えば、好適な担体には、固体経口調製物と共に、粉末、カプセル、および錠剤が含まれる。所望される場合、錠剤は、標準的な水性または非水性技法によってコーティングすることができる。
【0111】
薬学的組成物および剤形において使用するのに好適な結合剤には、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、または他のデンプン、ゼラチン、アカシア等の天然および合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末化トラガント、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、セルロース酢酸塩、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微晶質セルロース、ならびにそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。
【0112】
本明細書に開示される薬学的組成物および剤形において使用するのに好適な充填剤の例としては、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微晶質セルロース、粉末化セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0113】
本発明の組成物において崩壊剤を使用して、水性環境に曝露されると崩壊する錠剤を得てもよい。多すぎる崩壊剤は、瓶中で崩壊し得る錠剤をもたらす場合がある。少なすぎる崩壊剤は、崩壊が生じるのに不十分である場合があり、故に剤形からの活性成分(複数可)の放出の速度および程度を変化させる場合がある。したがって、活性成分(複数可)の放出を有害に変化させるほど少なすぎることも多すぎることもない、十分な量の崩壊剤を使用して、本明細書に開示される多形体の剤形が形成され得る。使用される崩壊剤の量は、製剤の種類および投与様式に基づいて変動し得、当業者にとって容易に識別可能であり得る。約0.5〜約15重量パーセントの崩壊剤、または約1〜約5重量パーセントの崩壊剤が、薬学的組成物において使用され得る。本発明の薬学的組成物および剤形を形成するために使用され得る崩壊剤には、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微晶質セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、他のデンプン、アルファ化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ゴム、またはそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。
【0114】
本発明の薬学的組成物および剤形を形成するために使用され得る滑沢剤には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、またはそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。さらなる滑沢剤には、例えば、シロイド(syloid)シリカゲル、合成シリカの凝固エアロゾル、またはそれらの混合物が含まれる。滑沢剤は、薬学的組成物の約1重量パーセント未満の量で、任意に添加することができる。
【0115】
いくつかの事例において、コロイド粒子は、少なくとも1つの陽イオン性薬剤、およびポロキサマー、チロキサポール、ポリソルベート、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ソルビタンエステル、またはステアリン酸ポリオキシル等の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含む。いくつかの事例において、陽イオン性薬剤は、アルキルアミン、三級アルキルアミン、四級アンモニウム化合物、陽イオン性脂質、アミノアルコール、ビグアニジン塩、陽イオン性化合物、またはそれらの混合物である。いくつかの事例では、陽イオン性薬剤は、クロルヘキシジン、ポリアミノプロピルビグアニジン、フェンホルミン、アルキルビグアニジン、またはそれらの混合物等のビグアニジン塩である。いくつかの事例では、四級アンモニウム化合物は、ベンザルコニウムハロゲン化物、ラウラコニウムハロゲン化物、セトリミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、テトラデシルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、ドデシルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、セトリモニウムハロゲン化物、ベンゼトニウムハロゲン化物、ベヘンアルコニウム(behenalkonium)ハロゲン化物、セタルコニウムハロゲン化物、セテチルジモニウム(cetethyldimonium)ハロゲン化物、セチルピリジニウムハロゲン化物、ベンゾドデシニウムハロゲン化物、クロラリルメテンアミン(chlorallyl methenamine)ハロゲン化物、ミリスチルアルコニウム(rnyristylalkonium)ハロゲン化物、ステアラルコニウムハロゲン化物、またはそれらの2つ以上の混合物である。いくつかの事例では、陽イオン性薬剤は、ベンザルコニウムクロリド、ラウラコニウムクロリド、ベンゾドデシニウムブロミド、ベンゼテニウム(benzethenium)クロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、またはそれらの2つ以上の混合物である。いくつかの事例では、油相は、鉱油および軽油、中鎖トリグリセリド(MCT)、ヤシ油;水素化綿実油、水素化パーム油、水素化ヒマシ油、または水素化大豆油を含む水素化油;ポルオキシル(poluoxyl)−40水素化ヒマシ油、ポリオキシル−60水素化ヒマシ油、またはポリオキシル−100水素化ヒマシ油を含むポリオキシエチレン水素化ヒマシ油誘導体である。
【0116】
経口投与のために水性懸濁液および/またはエリキシルが所望される場合、その中の活性成分は、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、およびそれらの種々の組み合わせ等の希釈剤と一緒に、種々の甘味剤または香味剤、着色物質または染料、およびそれが所望される場合、乳化剤および/または懸濁化剤と組み合わせることができる。
【0117】
錠剤は、コーティングされていなくてもよく、または消化管における崩壊および吸収を遅延させ、それによってより長期にわたる持続作用を提供するために、既知の技法によってコーティングされてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル等の時間遅延物質を用いることができる。経口使用のための製剤はまた、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、もしくはカオリンと混合される、硬質ゼラチンカプセルとして、または活性成分が水もしくは油性媒体、例えば、ピーナッツ油、液体パラフィン、もしくはオリーブ油と混合される、軟質ゼラチンカプセル剤として、提示されてもよい。
【0118】
本発明の薬学的組成物および剤形を形成するために使用され得る界面活性剤には、親水性界面活性剤、親油性界面活性剤、およびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。すなわち、親水性界面活性剤の混合物が用いられてもよく、親油性界面活性剤の混合物が用いられてもよく、または少なくとも1つの親水性界面活性剤と少なくとも1つの親油性界面活性剤との混合物が用いられてもよい。
【0119】
好適な親水性界面活性剤は、一般に、少なくとも10のHLB値を有し得るが、好適な親油性界面活性剤は、一般に、約10以下のHLB値を有し得る。非イオン性両親媒性化合物の相対的親水性および疎水性を特徴付けるために使用される実験的パラメータは、親水性−親油性平衡(「HLB」値)である。より低いHLB値を有する界面活性剤は、より親油性または疎水性であり、油中での溶解度がより高いが、より高いHLB値を有する界面活性剤は、より親水性であり、水溶液中での溶解度がより高い。親水性界面活性剤は、一般に、約10を超えるHLB値を有する化合物、ならびにHLB尺度が一般に適用できない陰イオン性、陽イオン性、または双性化合物であると見なされる。同様に、親油性(すなわち、疎水性)界面活性剤は、約10以下のHLB値を有する化合物である。しかしながら、界面活性剤のHLB値は、工業的、薬学的および、化粧用乳剤の製剤化を可能にするために一般に使用される大まかな指針であるにすぎない。
【0120】
親水性界面活性剤は、イオン性または非イオン性のいずれであってもよい。好適なイオン性界面活性剤には、アルキルアンモニウム塩;フシジン酸塩;アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチドの脂肪酸誘導体;アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチドのグリセリド誘導体;レシチンおよび水素化レシチン;リゾレシチンおよび水素化リゾレシチン;リン脂質およびその誘導体;リゾリン脂質およびその誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;硫酸アルキルの塩;脂肪酸塩;ドキュセートナトリウム;アシルアクチレート(acylactylate);モノおよびジグリセリドのモノおよびジアセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノおよびジグリセリド;モノおよびジグリセリドのクエン酸エステル;ならびにそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。
【0121】
前述の群のうちで、イオン性界面活性剤には、例として、レシチン、リゾレシチン、リン脂質、リゾリン脂質およびその誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;硫酸アルキルの塩;脂肪酸塩;ドキュセートナトリウム;アシルアクチレート;モノおよびジグリセリドのモノおよびジアセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノおよびジグリセリド;モノおよびジグリセリドのクエン酸エステル;ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0122】
イオン性界面活性剤は、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルセリン、PEG−ホスファチジルエタノールアミン、PVP−ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸のラクチル酸(lactylic)エステル、ステアロイル−2−ラクチレート、ステアロイルラクチレート、スクシニル化モノグリセリド、モノ/ジグリセリドのモノ/ジアセチル化酒石酸エステル、モノ/ジグリセリドのクエン酸エステル、コリルサルコシン(cholylsarcosine)、カプロン酸塩、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、オレイン酸塩、リシノール酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリル硫酸塩、テラセシル(teracecyl)硫酸塩、ドキュセート、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、ならびにそれらの塩および混合物のイオン化形態であってよい。
【0123】
親水性非イオン性界面活性剤には、アルキルグルコシド;アルキルマルトシド;アルキルチオグルコシド;ラウリルマクロゴールグリセリド;ポリエチレングリコールアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリエチレングリコールアルキルフェノール等のポリオキシアルキレンアルキルフェノール;ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステルおよびポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル等のポリオキシアルキレンアルキルフェノール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオールと、グリセリド、植物油、水素化植物油、脂肪酸、およびステロールからなる群の少なくとも1つのメンバーとの親水性エステル交換生成物;ポリオキシエチレンステロール、その誘導体および類似体;ポリオキシエチル化ビタミンおよびその誘導体;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;およびそれらの混合物;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ならびにポリオールと、トリグリセリド、植物油、および水素化植物油からなる群の少なくとも1つのメンバーとの親水性エステル交換生成物が含まれてもよいが、それらに限定されない。ポリオールは、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、プロピレングリコール、ペンタエリトリトール、またはサッカリドであってもよい。
【0124】
他の親水性非イオン性界面活性剤には、限定なしに、ラウリン酸PEG−10、ラウリン酸PEG−12、ラウリン酸PEG−20、ラウリン酸PEG−32、ジラウリン酸PEG−32、オレイン酸PEG−12、オレイン酸PEG−15、オレイン酸PEG−20、ジオレイン酸PEG−20、オレイン酸PEG−32、オレイン酸PEG−200、オレイン酸PEG−400、ステアリン酸PEG−15、ジステアリン酸PEG−32、ステアリン酸PEG−40、ステアリン酸PEG−100、ジラウリン酸PEG−20、トリオレイン酸PEG−25グリセリル、ジオレイン酸PEG−32、ラウリン酸PEG−20グリセリル、ラウリン酸PEG−30グリセリル、ステアリン酸PEG−20グリセリル、オレイン酸PEG−20グリセリル、オレイン酸PEG−30グリセリル、ラウリン酸PEG−30グリセリル、ラウリン酸PEG−40グリセリル、PEG−40パーム核油、PEG−50水素化ヒマシ油、PEG−40ヒマシ油、PEG−35ヒマシ油、PEG−60ヒマシ油、PEG−40水素化ヒマシ油、PEG−60水素化ヒマシ油、PEG−60トウモロコシ油、カプリン酸/カプリル酸PEG−6グリセリド、カプリン酸/カプリル酸PEG−8グリセリド、ポリグリセリル−10ラウリン酸、PEG−30コレステロール、PEG−25植物ステロール、PEG−30大豆ステロール、トリオレイン酸PEG−20、オレイン酸PEG−40ソルビタン、ラウリル酸PEG−80ソルビタン、ポリソルベート20、ポリソルベート80、POE−9ラウリルエーテル、POE−23ラウリルエーテル、POE−10オレイルエーテル、POE−20オレイルエーテル、POE−20ステアリールエーテル、コハク酸トコフェリルPEG−100、PEG−24コレステロール、オレイン酸ポリグリセリル−10、Tween 40、Tween 60、モノステアリン酸スクロース、モノラウリル酸スクロース、モノパルミチン酸スクロース、PEG10−100ノニルフェノールシリーズ、PEG15−100オクチルフェノールシリーズ、およびポロキサマーが含まれる。
【0125】
好適な親油性界面活性剤には、例にすぎないが、脂肪アルコール;グリセロール脂肪酸エステル;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;プロピレングリコール脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル;ステロールおよびステロール誘導体;ポリオキシエチル化ステロールおよびステロール誘導体;ポリエチレングリコールアルキルエーテル;糖エステル;糖エーテル;モノおよびジグリセリドの乳酸誘導体;ポリオールと、グリセリド、植物油、水素化植物油、脂肪酸、およびステロールからなる群の少なくとも1つのメンバーとの疎水性エステル交換生成物;油溶性ビタミン/ビタミン誘導体;ならびにそれらの混合物が含まれる。この群の中で、好ましい親油性界面活性剤には、グリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびそれらの混合物が含まれるか、またはそれはポリオールと、植物油、水素化植物油、およびトリグリセリドからなる群の少なくとも1つのメンバーとの疎水性エステル交換生成物である。
【0126】
一実施形態において、組成物は、本発明の化合物の良好な可溶性および/または溶解性を確実にして、本発明の化合物の沈殿を最小限するための可溶化剤を含んでもよい。これは特に、非経口使用のための組成物、例えば、注射用組成物にとって重要であり得る。可溶化剤はまた、親水性薬物および/もしくは界面活性剤等の他の構成成分の可溶性を増加させるため、または組成物を安定なもしくは均質な溶液もしくは分散液として維持するために添加されてもよい。
【0127】
好適な可溶化剤の例としては、次のものが挙げられるが、それらに限定されない:アルコールおよびポリオール、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、およびそれらの異性体等、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール(transcutol)、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および他のセルロース誘導体、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体;テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール)またはメトキシPEG等の約200〜約6000の平均分子量を有するポリエチレングリコールのエーテル;アミドならびに2−ピロリドン、2−ピペリドン、ε−カプロラクタム、N−アルキルピロリドン、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−アルキルピペリドン、N−アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、およびポリビニルピロリドン等の他の窒素含有化合物;プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、一酢酸プロピレングリコール、二酢酸プロピレングリコール、ε−カプロラクトンおよびその異性体、δ−バレロラクトンおよびその異性体、β−ブチロラクトンおよびその異性体等のエステル;ならびにジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、N−メチルピロリドン、モノオクタノイン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、および水等の当該技術分野で既知の他の可溶化剤。種々の実施形態において、12−ヒドロキシステアリン酸のポリグリコールモノおよびジエステル、ならびに約30%の遊離ポリエチレングリコール(Solutol HS 15として入手可能)を含む可溶化剤が、可溶化剤として使用される。
【0128】
可溶化剤の混合物もまた使用され得る。例としては、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、ポリエチレングリコール200−100、グリコフロール、トランスクトール、プロピレングリコール、およびジメチルイソソルビドが挙げられるが、それらに限定されない。特に好ましい可溶化剤には、ソルビトール、グリセロール、トリアセチン、エチルアルコール、PEG−400、グリコフロール、およびプロピレングリコールが含まれる。
【0129】
含まれ得る可溶化剤の量は、特に限定されない。所与の可溶化剤の量は、生物学的に許容される量に限定され得、それは当業者によって容易に決定され得る。いくつかの状況では、はるかに過剰の生物学的に許容される量の可溶化剤を含めて、例えば、薬物の濃度を最大限にし、組成物を対象に提供する前に、蒸留または蒸発等の従来の技法を使用して過剰の可溶化剤を除去することが有利であり得る。故に、存在する場合、可溶化剤は、薬物および他の賦形剤を組み合わせた重量に基づき、10重量%、25重量%、50重量%、100重量%、または最大約200重量%の重量比であり得る。所望される場合、5%、2%、1%、またはさらにはそれ未満等の非常に少量の可溶化剤もまた使用され得る。典型的に、可溶化剤は、約1重量%〜約100重量%の量で、より典型的には約5重量%〜約25重量%で存在し得る。
【0130】
組成物は、1つ以上の薬学的に許容される添加剤および賦形剤をさらに含むことができる。かかる添加剤および賦形剤には、限定なしに、脱粘着剤(detackifier)、消泡剤、緩衝剤、ポリマー、酸化防止剤、防腐剤、キレート剤、粘度調節剤、等張化剤(tonicifier)、香味剤、着色剤、着臭剤、乳白剤、懸濁化剤、結合剤、充填剤、可塑剤、滑沢剤、およびそれらの混合物が含まれる。
【0131】
加えて、酸または塩基が、プロセスを促進するため、安定性を増大させるため、または他の理由で、組成物に組み込まれてもよい。薬学的に許容される塩基の例としては、アミノ酸、アミノ酸エステル、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロカルサイト(hydrocalcite)、水酸化マグネシウムアルミニウム、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)等が挙げられる。また、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン(hydroquinosulfonic)酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸等の薬学的に許容される酸の塩である塩基も好適である。リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、およびリン酸二水素ナトリウム等の多塩基酸の塩を使用することもできる。塩基が塩である場合、陽イオンは、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の任意の好都合な薬学的に許容される陽イオンであり得る。例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、およびアンモニウムが挙げられてもよいが、それらに限定されない。
【0132】
好適な酸は、薬学的に許容される有機または無機酸である。好適な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸等が挙げられる。好適な有機酸の例としては、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸等が挙げられる。
【0133】
注射用薬学的組成物。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の化合物および注射に好適な薬学的賦形剤を含有する、注射用薬学的組成物を提供する。組成物中の薬剤の構成成分および量は、本明細書に記載される通りである。
【0134】
本発明の新規の組成物が、注射による投与のために組み込まれ得る形態は、ゴマ油、トウモロコシ油、綿実油、もしくはピーナッツ油、ならびにエリキシル剤、マンニトール、デキストロース、または滅菌水溶液、および同様の薬学的ビヒクルを用いる、水性もしくは油性懸濁液または乳剤が含まれる。
【0135】
食塩水中水溶液もまた、注射に慣習的に使用される。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等(およびそれらの好適な混合物)、シクロデキストリン誘導体、および植物油がまた用いられてもよい。適切な流動性は、例えば、分散剤の場合には必要とされる粒径の維持のために、レシチン等のコーティングの使用によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらすことができる。
【0136】
滅菌注射液は、必要に応じて、要求される量の本発明の化合物を、上に列挙された種々の他の成分と共に適切な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散剤は、種々の滅菌活性成分を、塩基性分散溶媒および上に列挙されたものからの要求される他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、ある種の望ましい調製方法は、活性成分に加えて、事前に滅菌濾過されたその溶液からの任意の追加的な所望の成分の粉末をもたらす、真空乾燥および凍結乾燥技法である。
【0137】
局所(例えば、経皮)送達のための薬学的組成物。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の化合物および経皮送達に好適な少なくとも1つの薬学的賦形剤を含有する、経皮送達のための薬学的組成物を提供する。
【0138】
本発明の組成物は、ゲル、水溶性ゼリー、クリーム、ローション、懸濁液、発泡体、粉末、スラリー、軟膏、溶液、油、ペースト、坐剤、スプレー、乳剤、食塩水溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)系溶液等の、局所(local)または局所(topical)投与に好適な固体、半固体、または液体形態の調製物へと製剤化することができる。一般に、高密度の担体は、領域を活性成分に長時間曝露することができる。対照的に、溶液製剤は、活性成分を選定領域により即時的に曝露し得る。
【0139】
薬学的組成物はまた、好適な固体またはゲル相担体または賦形剤を含んでもよく、これらは、皮膚の角質層透過性障壁を通る治療分子の増加した浸透を可能にするか、またはその送達を補助する化合物である。局所製剤技術分野の専門家に既知のこれらの浸透増大分子の多くが存在する。かかる担体および賦形剤の例としては、湿潤剤(例えば、尿素)、グリコール(例えば、プロピレングリコール)、アルコール(例えば、エタノール)、脂肪酸(例えば、オレイン酸)、界面活性剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピルおよびラウリル硫酸ナトリウム)、ピロリドン、モノラウリン酸グリセロール、スルホキシド、テルペン(例えば、メンソール)、アミン、アミド、アルカン、アルカノール、水、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコール等のポリマーが挙げられる。
【0140】
本発明の方法において使用するための別の例となる製剤は、経皮送達デバイス(「パッチ」)を用いる。かかる経皮パッチを使用して、別の薬剤と共にまたはそれを伴わずに、制御された量の本発明の化合物の連続的または非連続的注入を提供することができる。医薬品の送達のための経皮パッチの構造および使用は、当該技術分野で周知である。例えば、米国特許第5,023,252号、第4,992,445号、および第5,001,139号を参照されたい。かかるパッチは、医薬品の連続的送達、パルス型送達、または要求に応じた送達用に構成されてもよい。
【0141】
吸入用薬学的組成物。吸入または吹送用組成物には、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物中の溶液および懸濁液、ならびに粉末が含まれる。液体または固体組成物は、上述の好適な薬学的に許容される賦形剤を含有してもよい。好ましくは、組成物は、局所または全身効果のために、経口または経鼻呼吸経路によって投与される。好ましくは薬学的に許容される溶媒中の、組成物は、不活性ガスの使用によって噴霧されてもよい。噴霧される溶液は、噴霧デバイスから直接吸入されてもよく、または噴霧デバイスは、顔用マスクのテントもしくは間欠的陽圧呼吸機器に取付けられてもよい。溶液、懸濁液、または粉末組成物は、好ましくは経口または経鼻的に、製剤を適切な様態で送達するデバイスから投与され得る。
【0142】
いくつかの実施形態において、本発明は、眼科障害を治療するための薬学的組成物を提供する。本組成物は眼への投与のために製剤化され、これは、本発明の1つ以上の多形体の有効量および眼への投与に好適な薬学的賦形剤を含有する。眼への投与に好適な本発明の薬学的組成物は、それぞれが所定量の活性成分を溶液中に含有する点眼剤もしくはスプレー等の個別の剤形として、または水性もしくは非水性の液体中の溶液、水中油液状乳剤、もしくは油中水液状乳剤として、提示され得る。点眼剤は、活性成分を、生理食塩水、緩衝溶液等の滅菌水溶液に溶解することによって、または使用前に溶解される粉末組成物と合わせることによって、調製することができる。当該技術分野で既知のように、平衡塩類溶液、食塩水溶液、ポリエチレングリコール等の水溶性ポリエーテル、ポリビニルアルコールおよびポビドン等のポリビニル、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、鉱油および白色ワセリン等の石油誘導体、ラノリン等の動物性脂肪、カルボキシポリメチレンゲル等のアクリル酸のポリマー、ピーナツ油等の植物性脂肪、およびデキストラン等の多糖類、ならびにヒアルロン酸ナトリウム等のグリコサミノグリカンを含むがそれらに限定されない、他のビヒクルを選定してもよい。所望される場合、点眼剤に通常使用される添加剤を添加してもよい。かかる添加剤には、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム等)、緩衝剤(例えば、ホウ酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール等)、増粘剤(例えば、乳糖、マンニトール、マルトース等のサッカリド;例えば、ヒアルロン酸もしくはヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム等のその塩;例えば、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類;例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、架橋ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または当業者に既知の他の薬剤)が挙げられる。
【0143】
他の薬学的組成物。薬学的組成物はまた、本明細書に記載される組成物、および舌下、口腔、直腸、骨内、眼内、鼻腔内、硬膜外、または髄腔内投与に好適な1つ以上の薬学的に許容される賦形剤から調製されてもよい。かかる薬学的組成物のための調製は、当該技術分野で周知である。例えば、Anderson,Philip O.;Knoben,James E.;Troutman,William G,eds.,Handbook of Clinical Drug Data,Tenth Edition,McGraw−Hill,2002、Pratt and Taylor,eds.,Principles of Drug Action,Third Edition,Churchill Livingston,New York,1990、Katzung,ed.,Basic and Clinical Pharmacology,Ninth Edition,McGraw Hill,20037ybg、Goodman and Gilman,eds.,The Pharmacological Basis of Therapeutics,Tenth Edition,McGraw Hill,2001、Remingtons Pharmaceutical Sciences,20th Ed.,Lippincott Williams&Wilkins.,2000、Martindale,The Extra Pharmacopoeia,Thirty−Second Edition(The Pharmaceutical Press,London,1999)を参照されたく、これらの全ては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0144】
本発明の多形体または薬学的組成物の投与は、作用部位への多形体の送達を可能にする任意の方法によって達成することができる。これらの方法には、経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、血管内、腹腔内、もしくは注入を含む)、局所(例えば、経皮適用)、直腸投与、カテーテルもしくはステントによる局所送達を介するもの、または吸入を通じるものが含まれる。多形体はまた、脂肪内または髄腔内に投与することもできる。
【0145】
投与される化合物の量は、治療される哺乳動物、障害または病態の重症度、投与速度、化合物の動態、および処方医師の裁量に依存するであろう。しかしながら、有効な投薬量は、単回または分割用量で、1日につき体重1kg当たり約0.001〜約100mg、好ましくは約1〜約35mg/kg/日の範囲にある。70kgのヒトに対しては、この量は、約0.05〜7g/日、好ましくは約0.05〜約2.5g/日となろう。いくつかの事例では、前述の範囲の下限を下回る投薬量レベルで十分であり得るが、他の事例では、さらなる多用量が、例えば1日を通して投与するためにかかる多用量を複数の少用量に分割することによって、いかなる有害な副作用も引き起こすことなく用いられ得る。
【0146】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、単回用量で投与される。典型的に、かかる投与は、薬剤を迅速に導入するために注射によって、例えば、静脈内注射によって行われるであろう。しかしながら、他の経路が適宜使用されてもよい。本発明の化合物の単回用量はまた、急性病態の治療のために使用されてもよい。
【0147】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、複数回用量で投与される。投薬は、1日当たり約1回、2回、3回、4回、5回、6回、または7回以上であってもよい。投薬は、1カ月に1回、2週間に1回、週1回、または1日おきに1回であってもよい。別の実施形態では、本発明の化合物および別の薬剤は、1日当たり約1回〜約6回、一緒に投与される。別の実施形態では、本発明の化合物および薬剤の投与は、約7日未満継続される。なおも別の実施形態では、投与は、約6日、10日、14日、28日、2カ月、6カ月、または1年を超えて継続される。いくつかの場合において、連続投薬は、必要な限り達成および維持される。種々の実施形態において、投与は、週1回である。
【0148】
本発明の薬剤の投与は、必要な限り継続されてもよい。いくつかの実施形態では、本発明の薬剤は、1、2、3、4、5、6、7、14、または28日を超えて投与される。いくつかの実施形態では、本発明の薬剤は、28、14、7、6、5、4、3、2、または1日未満投与される。いくつかの実施形態では、本発明の薬剤は、例えば、慢性効果のある治療のために、継続的に慢性的に投与される。
【0149】
本発明の化合物の有効量は、単回または複数回のいずれかの用量で、直腸、口腔、鼻腔内、および経皮経路を含む、同様の実用性を有する薬剤の許容される投与様式のいずれかによって、動脈内注射によって、静脈内に、腹腔内に、非経口で、筋肉内に、皮下に、経口で、局所的に、または吸入剤として、投与され得る。
【0150】
本発明の組成物はまた、例えば、ステント等の浸漬もしくはコーティングされたデバイス、あるいは動脈挿入型円筒ポリマーを介して、投与されてもよい。かかる投与方法は、例えば、バルーン血管形成術等の術後の再狭窄の予防または寛解を補助し得る。理論に束縛されるものではないが、本発明の多形体は、再狭窄に寄与する動脈壁内の平滑筋細胞の遊走および増殖を遅延または阻害し得る。本発明の化合物は、例えば、ステントの支柱(strut)から、ステントグラフトから、グラフトから、またはステントのカバーもしくはシースから、局所送達によって投与され得る。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、マトリックスと混和される。かかるマトリックスは、ポリマーマトリックスであり得、化合物をステントに結合させる役目を果たし得る。かかる使用に好適なポリマーマトリックスには、例えば、ポリラクチド、ポリカプロラクトングリコリド、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリアミノ酸、多糖類、ポリホスファゼン、ポリ(エーテル−エステル)コポリマー(例えば、PEO−PLLA)等のラクトン系ポリエステルまたはコポリエステル;ポリジメチルシロキサン、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)、アクリレート系ポリマーまたはコポリマー(例えば、ポリヒドロキシエチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化ポリマー、およびセルロースエステルが含まれる。好適なマトリックスは、非分解性であってもよく、または経時的に分解して、化合物(1つまたは複数)を放出してもよい。本発明の多形体は、浸漬/スピンコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、および/または刷毛塗り等の種々の方法によって、ステントの表面に適用されてもよい。多形体は、溶媒中に適用されてもよく、その溶媒を蒸発させることによって、化合物の層をステント上に形成してもよい。代替的に、化合物は、ステントまたはグラフトの本体内に、例えば、マイクロチャネルまたは細孔内に位置してもよい。埋め込まれると、化合物は、ステントの本体から拡散して動脈壁に接触する。かかるステントは、かかる細孔またはマイクロチャネルを含有するように製造されたステントを、好適な溶媒中の本発明の化合物の溶液に浸漬し、続いて溶媒を蒸発させることによって調製されてもよい。ステントの表面上の過剰薬物は、追加的な簡便な溶媒洗浄を介して除去することができる。なおも他の実施形態において、本発明の多形体は、ステントまたはグラフトに共有結合されてもよい。インビボで分解して、本発明の化合物の放出をもたらす、共有結合のリンカーが使用されてもよい。かかる目的のために、エステル、アミド、または無水結合等の、任意の生体不安定性(bio−labile)結合が使用されてもよい。本発明の多形体はさらに、血管形成術中に使用されるバルーンから経脈管的に投与されてもよい。本発明の製剤の心膜または外膜(advential)適用を介する多形体の血管外投与もまた、再狭窄を減少させるために行われ得る。
【0151】
記載される通りに使用され得る多様なステントデバイスが、例えば、次の参考文献に開示され、それらの全ては参照により本明細書に組み込まれる:米国特許第5451233号、米国特許第5040548号、米国特許第5061273号、米国特許第5496346号、米国特許第5292331号、米国特許第5674278号、米国特許第3657744号、米国特許第4739762号、米国特許第5195984号、米国特許第5292331号、米国特許第5674278号、米国特許第5879382号、米国特許第6344053号。
【0152】
本発明の多形体は、複数投薬量で投与されてもよい。化合物の薬物動態の対象者間変動に起因して、最適な治療のために投薬レジメンの個別化が必要であることは、当該技術分野で既知である。本発明の化合物のための投薬は、本開示に照らして通例の実験によって見出され得る。
【0153】
本発明はまた、キットも提供する。キットは、好適なパッケージ中の本明細書に記載される本発明の化合物または多形体、および使用のための説明書、臨床研究の考察、副作用の一覧等を含み得る書面の資料を含む。かかるキットはまた、科学的参考文献、パッケージ添付文書類、臨床試験の結果、および/またはこれらの要約等の情報を含んでもよく、それらは、組成物の活性および/もしくは利点を示すかもしくは確立し、かつ/または投薬、投与、副作用、薬物相互作用、もしくは医療供給者にとって有用な他の情報を記載する。かかる情報は、種々の研究、例えば、インビボモデルが関与する実験動物を使用する研究、およびヒト臨床治験に基づく研究の結果に基づいてもよい。キットは、別の薬剤をさらに含有してもよい。いくつかの実施形態において、本発明の化合物および薬剤は、キット内の別個の容器中の別個の組成物として提供される。いくつかの実施形態において、本発明の化合物および薬剤は、キット内の1つの容器中の単一組成物として提供される。好適なパッケージおよび使用のための追加品(例えば、液体調製物のための計量カップ、空気への曝露を最小限にするためのホイルラッピング等)は、当該技術分野で既知であり、キットに含まれ得る。本明細書に記載されるキットは、医師、看護師、薬剤師、薬局等を含む医療供給者に、提供、市販、および/または販促することができる。キットはまた、いくつかの実施形態において、消費者に直接販売されてもよい。
【0154】
本明細書に記載される多形体は、治療される病態に応じて、本明細書に開示される薬剤または他の好適な薬剤と組み合わせて使用することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の多形体は、上述の他の薬剤と共投与される。併用療法で使用される際、本明細書に記載される多形体は、第2の薬剤と同時または別個に投与され得る。この組み合わせた投与には、同じ剤形での2つの薬剤の同時投与、別個の剤形での同時投与、および別個の投与が含まれ得る。すなわち、本明細書に記載される化合物および上述の薬剤のいずれかを、同じ剤形中に一緒に製剤化し、同時に投与することができる。あるいは、本発明の化合物および上述の薬剤のいずれかを同時に投与してもよく、ここで、両方の薬剤が別個の製剤中に存在する。別の代替手段では、本発明の化合物を投与した後すぐに、上述の薬剤のいずれかを投与することができ、逆もまた同様である。別個の投与プロトコルでは、本発明の化合物および上述の薬剤のいずれかは、数分間離れて、または数時間離れて、または数日間離れて、投与されてもよい。
IV.治療の方法
【0155】
本発明はまた、本発明の化合物または薬学的組成物を使用して、mTORまたは1つ以上の種類のPI3キナーゼの機能不全と関連する疾患を含むがこれに限定されない、病状を治療するための方法を提供する。
【0156】
本明細書に提供される治療方法は、対象に、本発明の化合物の治療有効量を投与することを含む。一実施形態において、本発明は、哺乳動物における自己免疫疾患を含む、炎症性障害を治療する方法を提供する。本方法は、上記哺乳動物に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、もしくは誘導体の治療有効量を投与することを含む。自己免疫疾患の例には、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、抗リン脂質抗体症候群(APS)、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、クローン病、真性糖尿病(1型)、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギランバレー症候群(GBS)、橋本病、エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、オプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、視神経炎、オード甲状腺炎、天疱瘡(oemphigus)、多発性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、リウマチ性関節炎、ライター症候群、高安関節炎、側頭動脈炎(「巨細胞性関節炎」としても知られる)、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、全身性脱毛症、シャーガス病、慢性疲労症候群、自律神経障害、子宮内膜症、化膿性汗腺炎、間質性膀胱炎、神経性筋強直症、サルコイドーシス、強皮症、潰瘍性大腸炎、白斑、および外陰部痛が挙げられるが、それらに限定されない。他の障害には、骨吸収障害および血栓症(thromobsis)が挙げられる。
【0157】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患または自己免疫疾患を治療する方法は、対象(例えば、哺乳動物)に、全ての他の種類のキナーゼと比較してPI3Kαを選択的に阻害する、本発明の1つ以上の化合物の治療有効量を投与することを含む。かかる選択的阻害は、本明細書に記載される疾患または病態のいずれかの治療に有利であり得る。例えば、選択的阻害は、喘息、肺気腫、アレルギー、皮膚炎、リウマチ性関節炎、乾癬、エリテマトーデス、または移植片対宿主病を含むがそれらに限定されない、炎症性疾患、自己免疫疾患、または望ましくない免疫応答に関連する疾患と関連する炎症性応答を阻害し得る。mTORの選択的阻害は、さらに、細菌、ウイルス、および/または真菌感染を低減させる能力を同時に(concomittant)低下させることなく、炎症性応答または望ましくない免疫応答の低減を提供し得る。
【0158】
一態様において、主題の方法の多数のうちの1つは、関節の腫脹の低減、血清抗コラーゲンレベルの低減、ならびに/または骨吸収、軟骨損傷、パンヌス、および/もしくは炎症等、関節病理の低減を含むがそれらに限定されない、リウマチ性関節炎と関連する症状を寛解させることに効果的である。別の態様において、主題の方法は、足首の炎症を、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、60%、または約75%〜90%低減させることに効果的である。別の態様において、主題の方法は、膝の炎症を、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、60%、または約75%〜90%もしくはそれ以上低減させることに効果的である。さらに別の態様において、主題の方法は、血清抗II型コラーゲンレベルを、少なくとも約10%、12%、15%、20%、24%、25%、30%、35%、50%、60%、75%、80%、86%、87%、または約90%もしくはそれ以上低減させることに効果的である。別の態様において、主題の方法は、足首の組織病理スコアを、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%またはそれ以上低減させることに効果的である。さらに別の態様において、主題の方法は、膝の組織病理スコアを、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%またはそれ以上低減させることに効果的である。
【0159】
他の実施形態において、本発明は、薬学的組成物を使用して、肺葉、胸腔、気管支、気管、上気道、または呼吸のための神経および筋肉を侵す疾患を含むがそれらに限定されない、呼吸器疾患を治療する方法を提供する。例えば、閉塞性肺疾患を治療するための方法が提供される。慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、空気流動の閉塞または制限を特徴とする、気道疾患群についての包括的用語である。この包括的用語に含まれる病態は、慢性気管支炎、肺気腫、および気管支拡張症である。
【0160】
別の実施形態において、本明細書に記載される薬学的組成物は、喘息の治療に使用される。さらに、本明細書に記載される薬学的組成物は、内毒素血症および敗血症の治療に使用され得る。一実施形態において、本明細書に記載される組成物または薬学的組成物は、リウマチ性関節炎(RA)の治療に使用される。さらに別の実施形態において、本明細書に記載される組成物または薬学的組成物は、接触性またはアトピー性皮膚炎の治療に使用される。接触性皮膚炎には、刺激性皮膚炎、光毒性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、光アレルギー性皮膚炎、接触性蕁麻疹、全身性接触型皮膚炎等が含まれる。刺激性皮膚炎は、皮膚がある特定の物質に感受性である場合の、過剰な物質が皮膚に使用された場合に発生し得る。時には湿疹とも称されるアトピー性皮膚炎は、皮膚炎の一種のアトピー性皮膚疾患である。
【0161】
本発明はまた、哺乳動物における過剰増殖性障害を治療する方法に関し、上記哺乳動物に、本発明の組成物、またはその薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、もしくは誘導体の治療有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、急性骨髄性白血病、胸腺癌、脳癌、肺癌、扁平上皮細胞癌、皮膚癌、眼癌、網膜芽腫、眼内黒色腫、口腔および口腔咽頭癌、膀胱癌、胃(gastric)癌、胃(stomach)癌、膵臓癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、頭部癌、頸部癌、腎臓(renal)癌、腎臓(kidney)癌、肝臓癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌、食道癌、精巣癌、婦人科癌、甲状腺癌、CNS、PNS、AIDS関連(例えば、リンパ腫およびカポジ肉腫)、またはウイルス誘発性癌等の癌の治療に関する。いくつかの実施形態において、上記方法は、皮膚(例えば、乾癬)、再狭窄、または前立腺(例えば、良性前立腺肥大(BPH))の良性過形成等、非癌性過剰増殖性障害の治療に関する。
【0162】
本発明はまた、哺乳動物における脈管形成または血管新生に関連する疾患を治療する方法にも関し、上記哺乳動物に、本発明の組成物、またはその薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、もしくは誘導体の治療有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、腫瘍血管新生、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患等の慢性炎症性疾患、乾癬、湿疹、および強皮症等の皮膚病、糖尿病、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性、血管腫、神経膠腫、黒色腫、カポジ肉腫、ならびに卵巣癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸癌、および類表皮癌からなる群から選択される疾患を治療するためのものである。
【0163】
本発明の方法に従って、本発明の組成物で治療され得る患者には、例えば、乾癬;再狭窄;アテローム性動脈硬化症;BPH;乳腺の管組織の腺管癌、髄様癌、膠様癌、管状癌、および炎症性乳癌等の乳癌;卵巣の腺癌および卵巣から腹腔に転移した腺癌等の上皮卵巣腫瘍を含む卵巣癌;子宮癌;扁平上皮細胞癌および腺癌を含む頸部上皮における腺癌等の子宮頸癌;次のもの、すなわち腺癌または骨に転移した腺癌(adenocarinoma)から選択される前立腺癌等の前立腺癌;膵臓管組織の類上皮(epitheliod)癌および膵臓管の腺癌等の膵臓癌;膀胱の移行上皮癌、尿路上皮癌(移行上皮癌)、膀胱の内側を覆う尿路上皮細胞の腫瘍、扁平上皮細胞癌、腺癌、および小細胞癌等の膀胱癌;急性骨髄性白血病(myeloid leukemia)(AML)、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、脊髄形成異常症、骨髄増殖性疾患、急性骨髄性白血病(myelogenous leukemia)(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、肥満細胞症、慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫(MM)、および骨髄異形成症候群(MDS)等の白血病;骨癌;扁平上皮細胞癌、腺癌、および未分化大細胞癌に分割される非小細胞肺癌(NSCLC)ならびに小細胞肺癌等の肺癌;基底細胞癌、黒色腫、扁平上皮細胞癌、および時に扁平上皮細胞癌に進展する皮膚病態である日光角化症等の皮膚癌;目網膜芽細胞腫;皮膚または眼内(目)黒色腫;原発性肝臓癌(肝臓で始まる癌);腎臓癌;乳頭状、濾胞性、髄質性、および未分化等の甲状腺癌;びまん性大型B細胞リンパ腫、B細胞免疫芽細胞リンパ腫、および小型非切れ込み核細胞性リンパ腫等のAIDS関連リンパ腫;カポジ肉腫;B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、および肝細胞癌を含むウイルス誘発性癌;ヒトリンパ球好性ウイルス1型(HTLV−1)および成人T細胞白血病/リンパ腫;ならびにヒトパピローマウイルス(HPV)および子宮頸癌;神経膠腫(星状細胞腫、未分化星状細胞腫、または多形神経膠芽腫)、乏突起神経膠腫、上衣腫、髄膜腫、リンパ腫、シュワン腫、および髄芽腫を含む、原発性脳腫瘍等の中枢神経系癌(CNS);聴神経腫瘍、ならびに神経線維腫およびシュワン腫を含む悪性末梢神経鞘腫(MPNST)、悪性線維性組織球腫(fibrous cytoma)、悪性線維性組織球腫(fibrous histiocytoma)、悪性髄膜腫、悪性中皮腫、ならびに悪性ミューラー管混合腫瘍等の末梢神経系(PNS)癌;下咽頭癌、喉頭癌、上咽頭癌、および口腔咽頭癌等の口腔および口腔咽頭癌;リンパ腫、胃の間質腫瘍、およびカルチノイド腫瘍等の胃癌;精上皮腫および非精上皮腫を含む胚細胞性腫瘍(GCT)、ならびにライディッヒ細胞腫およびセルトリ細胞腫を含む性腺間質腫瘍等の、精巣癌;胸腺腫、胸腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫カルチノイド、またはカルチノイド腫瘍等の胸腺癌;直腸癌;ならびに結腸癌を有すると診断された患者が含まれる。
【0164】
本発明の方法に従って、本発明の化合物で治療され得る患者には、例えば、聴神経腫瘍、腺癌、副腎癌、肛門癌、血管肉腫(例えば、リンパ管肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫、血管肉腫)、良性単クローン性免疫グロブリン血症、胆道癌(例えば、胆管癌)、膀胱癌、乳癌(例えば、乳腺癌、乳房乳頭癌、乳癌、乳房髄様癌)、脳癌(例えば、髄膜腫;神経膠腫、例えば、星状細胞腫、乏突起膠腫、髄芽細胞腫)、気管支癌、子宮頸癌(例えば、子宮頸部腺癌)、絨毛腫、脊索腫、頭蓋咽頭腫、結腸直腸癌(例えば、結腸癌、直腸癌、結腸直腸腺癌)、上皮性癌、上衣細胞腫、内皮肉腫(例えば、カポジ肉腫、多発性特発性出血性肉腫)、子宮内膜癌、食道癌(例えば、食道の腺癌、バレット腺癌)、ユーイング肉腫、一般的な過好酸球増加症、胃癌(例えば、胃腺癌)、消化管間質腫瘍(GIST)、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮細胞癌、口腔癌(例えば、口腔扁平上皮細胞癌(OSCC))、重鎖病(例えば、α鎖病、γ鎖病、μ鎖病)、血管芽細胞腫、炎症性筋線維芽細胞腫、免疫球性アミロイドーシス、腎臓癌(例えば、ウィルムス腫瘍としても知られる腎芽細胞腫、腎細胞癌)、肝臓癌(例えば、肝細胞癌(HCC)、悪性肝癌)、肺癌(例えば、気管支癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺腺癌)、白血病(例えば、B系統ALLおよびT系統ALLを含む急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、有毛細胞白血病(HLL)、およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM);末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病、およびリードステルンベルグ病(Reed−Stemberg disease);急性骨髄球性白血病(AML)、慢性骨髄球性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL))、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL))、平滑筋肉腫(LMS)、肥満細胞症(例えば、全身性肥満細胞症)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄異形成症候群(MDS)、中皮腫、骨髄増殖性疾患(MPD)(例えば、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板増加症(ET)、骨髄線維症(MF)としても知られる特発性骨髄化生(AMM)、慢性特発性骨髄線維症、慢性骨髄球性白血病(CML)、慢性好中球性白血病(CNL)、好酸球増加症候群(HES))、神経芽細胞腫、神経線維腫(例えば、神経線維腫症(NF)1型または2型、シュワン細胞腫)、神経内分泌癌(例えば、胃腸膵管系神経内分泌腫瘍(GEP−NET)、カルチノイド腫瘍)、骨肉腫、卵巣癌(例えば、嚢胞腺癌、卵巣胎児性癌、卵巣腺癌)、外陰部ページェット病、陰茎ページェット病、乳頭腺癌、膵臓癌(例えば、膵臓腺癌、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN))、松果体腫、原始神経外胚葉腫瘍(PNT)、前立腺癌(例えば、前立腺腺癌)、横紋筋肉腫、網膜芽細胞腫、唾液腺癌、皮膚癌(例えば、扁平上皮細胞癌(SCC)、角化棘細胞腫(KA)、黒色腫、基底細胞癌(BCC))、小腸癌(例えば、虫垂癌)、軟部組織肉腫(例えば、悪性線維性組織球腫(MFH)、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)、軟骨肉腫、線維肉腫、粘液肉腫)、脂腺癌、汗腺癌、滑膜腫、精巣癌(例えば、精上皮腫、精巣胎児性癌)、甲状腺癌(例えば、甲状腺乳頭癌、乳頭状甲状腺癌(PTC)、髄様甲状腺癌)、ならびにヴァルデンストレームマクログロブリン血症を含むがそれらに限定されない病態を有すると診断された患者が含まれる。
【0165】
本発明はまた、哺乳動物における糖尿病を治療する方法にも関し、上記哺乳動物に、本発明の組成物の治療有効量を投与することを含む。
【0166】
加えて、本明細書に記載される組成物は、座瘡を治療するために使用されてもよい。
【0167】
さらに、本明細書に記載される組成物は、アテローム性動脈硬化症を含む、動脈硬化症の治療のために使用されてもよい。動脈硬化症は、中動脈または大動脈の任意の硬化を説明する一般的用語である。アテローム性動脈硬化症は、具体的には粥状斑に起因する、動脈の硬化である。
【0168】
さらに、本明細書に記載される組成物は、糸球体腎炎の治療のために使用されてもよい。糸球体腎炎は、糸球体の炎症を特徴とする、原発性または続発性自己免疫腎疾患である。それは無症候性の場合も、または血尿症および/もしくはタンパク尿症を呈する場合もある。多くの認識されている型があり、急性、亜急性、または慢性糸球体腎炎に分割される。原因は、感染性(細菌、ウイルス、または寄生性病原体)、自己免疫性、または腫瘍随伴性である。
【0169】
さらに、本明細書に記載される組成物は、滑液包炎、狼瘡、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、抗リン脂質抗体症候群(APS)、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、クローン病、糖尿病(1型)、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギランバレー症候群(GBS)、橋本病、炎症性腸疾患、エリテマトーデス、重症筋無力症、オプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、視神経炎、オード甲状腺炎、変形性関節症(ostheoarthritis)、網膜ブドウ膜炎、天疱瘡、多発性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、全身性脱毛症、シャーガス病、慢性疲労症候群、自律神経障害、子宮内膜症、化膿性汗腺炎、間質性膀胱炎、神経性筋強直症、サルコイドーシス、強皮症、潰瘍性大腸炎、白斑、外陰部痛、虫垂炎、動脈炎、関節炎、眼瞼炎、細気管支炎、気管支炎、子宮頸管炎、胆管炎、胆嚢炎、絨毛羊膜炎、大腸炎、結膜炎、膀胱炎、涙腺炎、皮膚筋炎、心内膜炎、子宮内膜炎、腸炎、全腸炎、上顆炎、精巣上体炎、筋膜炎、結合織炎、胃炎、胃腸炎、歯肉炎、肝炎、汗腺炎、回腸炎、虹彩炎、喉頭炎、乳腺炎、髄膜炎、脊髄炎、心筋炎、筋炎、腎炎、臍炎、卵巣炎、精巣炎、骨炎、耳炎、膵炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、間質性肺炎、直腸炎、前立腺炎、腎盂腎炎、鼻炎、卵管炎、副鼻腔炎、口内炎、滑膜炎、腱炎、扁桃炎、ブドウ膜炎、腟炎、血管炎、または外陰炎の治療のために使用されてもよい。
【0170】
さらに、本発明の組成物は、通年性アレルギー性鼻炎、腸間膜炎、腹膜炎、先端皮膚炎、皮膚脈管炎、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹、多形性紅斑、間擦疹、スティーブンスジョンソン症候群、中毒性表皮剥離症、皮膚アレルギー、重度のアレルギー反応/アナフィラキシー、アレルギー性肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫症、アレルギー性結膜炎、脈絡網膜炎、結膜炎、伝染性角結膜炎、角結膜炎、新生児眼炎、トラコーマ、ブドウ膜炎、眼の炎症、眼瞼結膜炎、乳腺炎、歯肉炎、歯冠周囲炎、咽頭炎、鼻咽頭炎、唾液腺炎、筋骨格系炎症、成人発症スチル病、ベーチェット病、滑液包炎、軟骨石灰化症、指炎、フェルティ症候群、痛風、感染性関節炎、ライム病、炎症性骨関節炎、関節周囲炎、ライター症候群、ロスリバーウイルス感染症、急性呼吸、促迫症候群、急性気管支炎、急性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、喘息、重度の難治性喘息、咽頭炎、胸膜炎、鼻咽頭炎、季節性アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、喘息重積状態、気管気管支炎、鼻炎、漿膜炎、髄膜炎、視神経脊髄炎、ポリオウイルス感染、アルポート症候群、亀頭炎、精巣上体炎、精巣上体精巣炎、巣状分節、糸球体硬化症、糸球体腎炎、IgA腎症(ベルガー病)、精巣炎、子宮傍組織炎、骨盤内炎症性疾患、前立腺炎、腎盂炎、腎盂膀胱炎、腎盂腎炎、ウェゲナー肉芽腫症、高尿酸血症、大動脈炎、動脈炎、乳靡心膜炎、ドレスラー症候群、動脈内膜炎、心内膜炎、頭蓋外側頭動脈炎、HIV関連動脈炎、頭蓋内側頭動脈炎、川崎病、リンパ管静脈炎、モンドール病、動脈周囲炎、または心膜炎の治療のために使用されてもよい。
【0171】
他の態様において、本発明の組成物は、自己免疫性肝炎、空腸炎、腸間膜炎、粘膜炎、非アルコール性脂肪性肝炎、非ウイルス性肝炎、自己免疫性膵炎、肝周囲炎、腹膜炎、回腸嚢炎、直腸炎、偽膜性大腸炎、直腸S状結腸炎、卵管腹膜炎、S状結腸炎、脂肪性肝炎、潰瘍性大腸炎、チャーグストラウス症候群、潰瘍性直腸炎、過敏性腸症候群、胃腸炎、急性腸炎、肛門炎、膵性壊死、胆嚢炎、大腸炎、クローン病、憩室炎、腸炎、全腸炎、腸肝炎、好酸球性食道炎、食道炎、胃炎、出血性腸炎、肝炎、肝炎ウイルス感染、肝胆管炎、肥厚性胃炎、回腸炎、回盲炎、サルコイドーシス、炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、リウマチ性関節炎、若年性リウマチ性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、狼瘡(皮膚/全身/腎炎)、AIDS、無ガンマグロブリン血症、AIDS関連症候群、ブルトン病、チェディアック東症候群、分類不能型免疫不全症、ディジョージ症候群、ガンマグロブリン異常症、免疫グロブリン欠損症、ヨブ症候群、ネゼロフ症候群、食細胞殺菌障害、ウィスコットアルドリッチ症候群、無脾症、象皮病、脾機能亢進症、川崎病、リンパ節腫脹、リンパ浮腫、リンパ嚢腫、ノンネミルロイメイグ症候群、脾臓疾患、脾腫、胸腺腫、胸腺疾患、血管周囲炎、静脈炎、胸膜心膜炎、結節性多発性動脈炎、脈管炎、高安動脈炎、側頭動脈炎、血栓血管炎、閉塞性血栓血管炎、血栓性心内膜炎、血栓性静脈炎、またはCOPDの治療に使用される。
【0172】
本発明はまた、哺乳動物における心血管疾患を治療する方法にも関し、上記哺乳動物に、本発明の組成物の治療有効量を投与することを含む。心血管病態の例としては、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、血管閉塞、および頸動脈閉塞性疾患が挙げられるが、それらに限定されない。
【0173】
別の態様では、本発明は、白血球の機能を撹乱するか、または破骨細胞の機能を撹乱する方法を提供する。本方法は、白血球または破骨細胞を、機能を撹乱する量の本発明の組成物と接触させることを含む。
【0174】
本発明の別の態様では、対象の眼に主題の組成物または薬学的組成物のうちの1つ以上を投与することによって眼疾患を治療するための方法が提供される。
【0175】
点眼剤、眼内注射、硝子体内注射を介して局所的に、または薬物溶出デバイス、マイクロカプセル、埋込体、もしくはマイクロ流体デバイスの使用を通じて、本発明の組成物を投与するための方法がさらに提供される。いくつかの場合において、本発明の組成物は、界面膜によって取り囲まれた油性コアを有するコロイド粒子を含む油性および水性乳剤等、組成物の眼球内浸透度を増加させる担体または賦形剤と共に投与される。
【0176】
本発明は、キナーゼを、キナーゼの活性を調節するのに十分な量の本発明の組成物と接触させることによって、キナーゼ活性を調節する方法をさらに提供する。調節は、キナーゼ活性を阻害または活性化することであり得る。いくつかの実施形態において、本発明は、キナーゼを、キナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の組成物と接触させることによって、キナーゼ活性を阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、溶液中のキナーゼ活性の阻害を、上記溶液を上記溶液中のキナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の組成物と接触させることによって行う、方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、細胞内のキナーゼ活性の阻害を、上記細胞を上記細胞中のキナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の組成物と接触させることによって行う、方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、組織中のキナーゼ活性の阻害を、上記組織を上記組織中のキナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の組成物と接触させることによって行う、方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、生物におけるキナーゼ活性の阻害を、上記生物を上記生物におけるキナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の組成物と接触させることによって行う、方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、動物におけるキナーゼ活性の阻害を、上記動物を上記動物におけるキナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の組成物と接触させることによって行う、方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるキナーゼ活性の阻害を、上記哺乳動物を上記哺乳動物におけるキナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の組成物と接触させることによって行う、方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、ヒトにおけるキナーゼ活性の阻害を、上記ヒトを上記ヒトにおけるのキナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の組成物と接触させることによって行う、方法を提供する。いくつかの実施形態において、キナーゼを本発明の組成物と接触させた後のキナーゼ活性%は、上記接触ステップが存在しない場合のキナーゼ活性の1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、または99%未満である。
【0177】
いくつかの実施形態において、本発明の1つ以上の組成物は、インビトロキナーゼアッセイによって確認すると、約100nM、50nM、10nM、5nM、100pM、10pM、またはさらには1pM以下のIC50値で、PI3Kα活性を選択的に阻害する。
V.併用治療
【0178】
本発明はまた、他の経路または同じ経路の他の構成要素、またはさらには重複する一連の標的酵素を調節することが知られている1つの薬剤を、本発明の組成物と組み合わせて使用する、併用療法のための方法も提供する。一態様において、かかる療法は、相乗的または相加的治療効果を提供するために、主題の組成物を、化学療法剤、治療抗体、および放射線治療と組み合わせることを含むが、これに限定されない。
【0179】
一態様において、本発明の組成物または薬学的組成物は、IgE産生または活性を阻害する薬剤と組み合わせて投与した場合に、相乗的または相加的効果を呈し得る。かかる組み合わせは、かかる効果が生じる場合、1つ以上の阻害剤の使用と関連する高レベルのIgEの望ましくない効果を低減させ得る。これは、リウマチ性関節炎等の自己免疫および炎症性障害(AIID)の治療に特に有用であり得る。さらに、PI3Kα、PI3Kδ、PI3Kδ/γ、またはmTorの阻害剤と組み合わせた本発明の阻害剤の投与はまた、PI3K経路の阻害の強化を通じて、相乗効果を示し得る。
【0180】
IgE産生を阻害する薬剤は、当該技術分野で既知である、それらには、TEI−9874、2−(4−(6−シクロヘキシルオキシ−2−ナフチルオキシ)フェニルアセトアミド)安息香酸、ラパマイシン、ラパマイシン類似体(すなわち、ラパログ(rapalog))、TORC1阻害剤、TORC2阻害剤、およびmTORC1およびmTORC2を阻害する任意の他の組成物が含まれるが、それらに限定されない。IgE活性を阻害する薬剤には、例えば、オマリズマブおよびTNX−901等の抗IgE抗体が含まれる。
【0181】
自己免疫疾患の治療については、主題の組成物または薬学的組成物を、Enbrel(登録商標)、Remicade(登録商標)、Humira(登録商標)、Avonex(登録商標)、およびRebif(登録商標)を含むが、それらに限定されない一般的な処方薬と併用することができる。呼吸器疾患の治療については、主題の組成物または薬学的組成物を、Xolair(登録商標)、Advair(登録商標)、Singulair(登録商標)、およびSpiriva(登録商標)を含むが、それらに限定されない一般的な処方薬と組み合わせて投与することができる。
【0182】
本発明の組成物は、脳脊髄炎、喘息、および本明細書に記載される他の疾患等の炎症性病態の症状を軽減するように作用する他の薬剤と併せて製剤化または投与されてもよい。これらの薬剤には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えば、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ナブメトン、トルメチン等が含まれる。コルチコステロイドは、炎症を低減し、免疫系の活性を抑制するために使用される。このタイプの最も一般的な処方薬は、プレドニゾンである。クロロキン(Aralen)またはヒドロキシクロロキン(Plaquenil)もまた、狼瘡を有する一部の個体に非常に有用であり得る。それらは、狼瘡の皮膚および関節症状に対して最も頻繁に処方される。アザチオプリン(Imuran)およびシクロホスファミド(Cytoxan)は、炎症を抑制し、免疫系を抑制する傾向がある。他の薬剤、例えばメトトレキサートおよびシクロスポリンは、狼瘡の症状を制御するために使用される。抗凝固剤は、血液が急速に凝固するのを予防するために用いられる。それらは、血小板が粘着するのを予防する非常に低用量のアスピリンから、ヘパリン/クマディンにわたる。狼瘡の治療に使用される他の化合物には、ベリムマブ(Benlysta(登録商標))が挙げられる。
【0183】
別の一態様において、本発明はまた、ある量の抗癌剤(例えば、生物療法的化学療法剤)と組み合わせた、ある量の本発明の組成物を含む、哺乳動物における異常な細胞成長を阻害するための薬学的組成物にも関する。多数の化学療法剤が、現在、当該技術分野で既知であり、本発明の組成物と併用することができる。他の癌療法もまた本発明の組成物と併用することができ、それらには、手術および外科的処置ならびに放射線療法が含まれるが、それらに限定されない。
【0184】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、インターカレート抗生物質、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答修飾物質、抗ホルモン剤、血管新生阻害剤、および抗アンドロゲン薬からなる群から選択される。非限定的な例としては、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、ならびにGleevec(イマチニブメシル酸塩)、Velcade(ボルテゾミブ)、Casodex(ビカルタミド)、Iressa(ゲフィチニブ)、およびアドリアマイシン等の非ペプチド小分子、ならびに多くの化学療法剤が挙げられる。化学療法剤の非限定的な例としては、チオテパおよびシクロスホスファミド(CYTOXAN(商標))等のアルキル化剤;ブスルファン、イムプロスルファン、およびピポスルファン等のスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa)等のアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホラミド、およびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamines);クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード等の窒素マスタード類;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン等のニトロス尿素類(nitrosurea);アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、Casodex(商標)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン等の抗生物質;メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)等の代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキセート等の葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン等のピリミジン類似体、カルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎物質(anti−adrenal);フロリン酸等の葉酸補充物質;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デホファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エルホミチン(elfomithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK.R(商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えば、パクリタキセル(TAXOL(商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)およびドセタキセル(TAXOTERE(商標)、Rhone−Poulenc Rorer,Antony,France);レチノイン酸;エスペラマイシン類;カペシタビン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられる。また、好適な化学療法細胞調整剤として、例えばタモキシフェン(Nolvadex(商標))、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 117018、オナプリストン、およびトレミフェン(フェアストン)を含む抗エストロゲン薬;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリン等の抗アンドロゲン薬等の、腫瘍へのホルモン作用を制御または阻害するように作用する抗ホルモン剤;クロランブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチン等の白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロネート;カンプトテシン−11(CPT−11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)も含まれる。所望される場合、本発明の組成物または薬学的組成物は、Herceptin(登録商標)、Avastin(登録商標)、Erbitux(登録商標)、Rituxan(登録商標)、Taxol(登録商標)、Arimidex(登録商標)、Taxotere(登録商標)、およびVelcade(登録商標)等の一般的に処方される抗癌薬と併用することができる。
【0185】
他の化学療法剤には、抗エストロゲン薬(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、およびメゲストロール)、LHRHアゴニスト(例えば、ゴスクルクリン(goscrclin)およびロイプロリド)、抗アンドロゲン薬(例えば、フルタミドおよびビカルタミド)、光線力学療法剤(例えば、ベルトポルフィン(vertoporfin)(BPD−MA)、フタロシアニン、光増感剤Pc4、およびデメトキシヒポクレリンA(2BA−2−DMHA))、窒素マスタード類(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロランブシル、エストラムスチン、およびメルファラン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン(BCNU)およびロムスチン(CCNU))、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファンおよびトレオスルファン)、トリアゼン(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド)、白金含有化合物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビン)、タキソイド類(例えば、パクリタキセルまたはナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(Abraxane)、ドコサヘキサエン酸結合パクリタキセル(DHA−パクリタキセル、Taxoprexin)、ポリグルタミン酸塩結合パクリタキセル(PG−パクリタキセル、パクリタキセルポリグルメックス、CT−2103、ジオタックス)、腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)ANG1005(パクリタキセルの3つの分子に結合したAngiopep−2)、パクリタキセル−EC−1(erbB2−認識ペプチドEC−1に結合したパクリタキセル)、およびグルコース共役パクリタキセル、例えば、2’−パクリタキセルメチル2−グルコピラノシルスクシネート;ドセタキセル、taxol)、エピポドフィリン類(epipodophyllin)(例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、トポテカン、9−アミノカンプトテシン、カンプトイリノテカン、イリノテカン、クリスナトール、マイトマイシンC)、代謝拮抗剤、DHFR阻害剤(例えば、メトトレキサート、ジクロロメトトレキサート、トリメトレキサート、エダトレキサート)、IMPデヒドロゲナーゼ阻害剤(例えば、ミコフェノール酸、チアゾフリン、リバビリン、およびEICAR)、リボヌクロチドレダクターゼ阻害剤(ribonuclotide reductase inhibitor)(例えば、ヒドロキシ尿素およびデフェロキサミン)、ウラシル類似体(例えば、5−フルオロウラシル(5−FU)、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラチトレキセド(ratitrexed)、テガフール−ウラシル、カペシタビン)、シトシン類似体(例えは、シタラビン(ara C)、シトシンアラビノシド、およびフルダラビン)、プリン類似体(例えば、メルカプトプリンおよびチオグアニン)、ビタミンD3類似体(例えば、EB 1089、CB 1093、およびKH 1060)、イソプレニル化阻害剤(例えば、ロバスタチン)、ドーパミン作動性神経毒(例えば、1−メチル−4−フェニルピリジニウムイオン)、細胞周期阻害剤(例えば、スタウロスポリン)、アクチノマイシン(例えば、アクチノマイシンD、ダクチノマイシン)、ブレオマイシン(例えば、ブレオマイシンA2、ブレオマイシンB2、ペプロマイシン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン)、MDR阻害剤(例えば、ベラパミル)、Ca2+ ATPase阻害剤(例えば、タプシガルギン)、イマチニブ、サリドマイド、レナリドマイド、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、アキシチニブ(AG013736)、ボスチニブ(SKI−606)、セディラニブ(RECENTIN(商標)、AZD2171)、ダサチニブ(SPRYCEL(登録商標)、BMS−354825)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、イマチニブ(Gleevec(登録商標)、CGP57148B、STI−571)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、TYVERB(登録商標))、レスタウルチニブ(CEP−701)、ネラチニブ(HKI−272)、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、セマクサニブ(セマキシニブ、SU5416)、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、SU11248)、トセラニブ(toceranib)(PALLADIA(登録商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(登録商標)、ZD6474)、バタラニブ(PTK787、PTK/ZK)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、エベロリムス(AFINITOR(登録商標))、アレムツズマブ(CAMPATH(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標))、テムシロリムス(TORISEL(登録商標))、ENMD−2076、PCI−32765、AC220、ドビチニブ乳酸(TKI258、CHIR−258)、BIBW 2992(TOVOK(商標))、SGX523、PF−04217903、PF−02341066、PF−299804、BMS−777607、ABT−869、MP470、BIBF 1120(VARGATEF(登録商標))、AP24534、JNJ−26483327、MGCD265、DCC−2036、BMS−690154、CEP−11981、チボザニブ(AV−951)、OSI−930、MM−121、XL−184、XL−647、および/またはXL228)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ(ベルケイド))、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、テムシロリムス(CCI−779)、エベロリムス(RAD−001)、リダフォロリムス、AP23573(Ariad)、AZD8055(AstraZeneca)、BEZ235(Novartis)、BGT226(Norvartis)、XL765(Sanofi Aventis)、PF−4691502(Pfizer)、GDC0980(Genetech)、SF1126(Semafoe)、およびOSI−027(OSI))、オブリメルセン、ゲムシタビン、カルミノマイシン、ロイコボリン、ペメトレキセド、シクロホスファミド、ダカルバジン、プロカルビジン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、カンパテシン(campathecin)、プリカマイシン、アスパラギナーゼ、アミノプテリン、メトプテリン、ポルフィロマイシン、メルファラン、ロイロシジン、ロイロシン、クロラムブシル、トラベクテジン、プロカルバジン、ディスコデルモリド、カルミノマイシン、アミノプテリン、ならびにヘキサメチルメラミンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0186】
例となる生物療法剤には、インターフェロン、サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子、インターフェロンα、インターフェロンγ)、ワクチン、造血成長因子、モノクローナル血清療法、免疫刺激薬および/または免疫調節剤(例えば、IL−1、2、4、6、もしくは12)、免疫細胞成長因子(例えば、GM−CSF)、ならびに抗体(例えば、Herceptin(トラスツズマブ)、T−DM1、AVASTIN(ベバシズマブ)、ERBITUX(セツキシマブ)、Vectibix(パニツムマブ)、Rituxan(リツキシマブ)、Bexxar(トシツモマブ))が挙げられるがそれらに限定されない。
【0187】
本発明は、さらに、哺乳動物における異常な細胞成長の阻害または過剰増殖性障害の治療の際に、本組成物または薬学的組成物を放射線療法と組み合わせて使用するための方法に関する。放射線療法を施すための技法は、当該技術分野で既知であり、これらの技法は、本明細書に記載される併用療法において使用することができる。この併用療法における本発明の組成物の投与は、本明細書に記載されるように決定することができる。
【0188】
放射線療法(Radiation therapy)は、限定なしに外部照射療法、内部放射線療法、組織内照射、定位放射線手術、全身放射線療法、放射線療法(radiotherapy)および半永久的または一時的な間質近接照射療法を含む、複数の方法のうちの1つ、または方法の組み合わせを通じて施すことができる。本明細書で使用されるとき、「近接照射療法」という用語は、腫瘍または他の増殖性組織疾患部位でまたはその近くで体内に挿入された空間的に閉じ込められた放射性物質によって送達される放射線療法を指す。この用語は、限定なしに、放射性同位体(例えば、At−211、I−131、I−125、Y−90、Re−186、Re−188、Sm−153、Bi−212、P−32、およびLuの放射性同位体)への曝露を含むことが意図される。本発明の細胞調整剤として使用するのに好適な放射線源には、固体および液体の両方が含まれる。非限定的な例として、放射線源は、固体源としてI−125、I−131、Yb−169、Ir−192、固体源としてI−125等の放射性核種、または光子、ベータ粒子、ガンマ線、もしくは他の治療用放射線を放出する他の放射性核種であり得る。放射性物質はまた、放射性核種(複数可)の任意の溶液、例えば、I−125もしくはI−131の溶液から作製される流体であり得るか、または放射性流体は、Au−198、Y−90等の固体放射性核種の小粒子を含有する好適な流体のスラリーを使用して生成され得る。さらに、放射性核種(複数可)は、ゲルまたは放射性ミクロスフェア中で具現化され得る。
【0189】
いかなる理論にも制限されるものではないが、本発明の組成物は、異常細胞を、かかる細胞を死滅させるおよび/またはかかる細胞の成長を阻害する目的のために、放射線による治療に対してより感受性にすることができる。したがって、本発明はさらに、哺乳動物に、ある量の本発明の組成物を投与することを含む、哺乳動物における異常細胞を放射線による治療に対して感作するための方法に関し、その量が有効であるのは、異常細胞を放射線による治療に対して感作することである。本方法における組成物の量は、本明細書に記載されるかかる組成物の有効量を確認するための手段に従って決定され得る。
【0190】
本発明の組成物または薬学的組成物は、抗血管新生剤、シグナル伝達阻害剤、および抗増殖剤から選択される、ある量の1つ以上の物質と併用することができる。
【0191】
MMP−2(マトリックス−メタロプロテイナーゼ2)阻害剤、MMP−9(マトリックス−メタロプロテイナーゼ9)阻害剤、およびCOX−11(シクロオキシゲナーゼ11)阻害剤等の抗血管新生剤は、本明細書に記載される本発明の組成物および薬学的組成物と併用することができる。有用なCOX−II阻害剤の例としては、CELEBREX(商標)(アレコキシブ)、バルデコキシブ、およびロフェコキシブが挙げられる。有用なマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤の例は、国際公開第96/33172号(1996年10月24日公開)、国際公開第96/27583号(1996年3月7日公開)、欧州特許出願第97304971.1号(1997年7月8日出願)、欧州特許出願第99308617.2号(1999年10月29日出願)、国際公開第98/07697号(1998年2月26日公開)、国際公開第98/03516号(1998年1月29日公開)、国際公開第98/34918号(1998年8月13日公開)、国際公開第98/34915号(1998年8月13日公開)、国際公開第98/33768号(1998年8月6日公開)、国際公開第98/30566号(1998年7月16日公開)、欧州特許公開第606,046号(1994年7月13日公開)、欧州特許公開第931,788号(1999年7月18日公開)、国際公開第90/05719号(1990年5月31日公開)、国際公開第99/52910号(1999年10月21日公開)、国際公開第99/52889号(1999年10月21日公開)、国際公開第99/29667号(1999年6月17日公開)、PCT国際出願第PCT/IB98/01113号(1998年7月21日出願)、欧州特許出願第99302232.1号(1999年3月25日出願)、英国特許出願第9912961.1号(1999年6月3日出願)、米国仮出願第60/148,464号(1999年8月12日出願)、米国特許第5,863、949号(1999年1月26日発行)、米国特許第5,861,510号(1999年1月19日発行)、および欧州特許公開第780,386号(1997年6月25日公開)に記載され、それらの全ては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。好ましいMMP−2およびMMP−9阻害剤は、MMP−1を阻害する活性をほとんど有さないか、または全く有さないものである。より好ましくは、他のマトリックス−プロテイナーゼ(すなわち、MAP−1、MMP−3、MMP−4、MMP−5、MMP−6、MMP−7、MMP−8、MMP−10、MMP−11、MMP−12、およびMMP−13)と比べて、MMP−2および/またはAMP−9を選択的に阻害するものである。本発明において有用なMMP阻害剤のいくつかの具体的な例は、AG−3340、RO32−3555、およびRS13−0830である。
【0192】
本発明はまた、哺乳動物における心血管疾患を治療する方法、ならびにある量の本発明の化合物またはその同位体標識された誘導体と心血管疾患の治療に使用されるある量の1つ以上の治療剤とを含む薬学的組成物に関する。
【0193】
心血管疾患適用において使用するための例は、抗血栓剤、例えば、プロスタサイクリンおよびサリチル酸、血栓溶解剤、例えば、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、およびアニソイル化プラスミノーゲン−ストレプトキナーゼ活性化因子複合体(APSAC)、抗血小板剤、例えば、アセチル−サリチル酸(ASA)およびクロピドロゲル(clopidrogel)、血管拡張剤、例えば、硝酸塩、カルシウムチャネル遮断薬、抗増殖剤、例えば、コルヒチンおよびアルキル化剤、インターカレート剤、インターロイキン等の成長調節因子、トランスフォーミング成長因子βおよび血小板由来成長因子の同類物、成長因子に対して向けられたモノクローナル抗体、抗炎症剤、ステロイド性および非ステロイド性の両方、ならびに血管緊張、機能、動脈硬化症、および介入後の血管または臓器損傷に対する治癒反応を調節することができる他の薬剤である。抗生物質はまた、組み合わせでまたは本発明によって含まれるコーティング内に含まれてもよい。さらに、コーティングを使用して、血管壁内に限局して治療薬送達を達成することができる。活性剤を膨潤性ポリマー中に組み込むことによって、活性剤は、ポリマーの膨潤時に放出されることになる。
【0194】
本明細書に記載される組成物は、滑沢剤としても知られる液体または固体の組織障壁と併せて製剤化または投与されてもよい。細胞障壁の例には、多糖類、ポリグリカン、セプラフィルム、インターシード、およびヒアルロン酸が挙げられるがそれらに限定されない。
【0195】
本明細書に記載される組成物と併せて投与され得る薬には、吸入によって有用に送達される任意の好適な薬物、例えば、鎮痛剤、例えば、コデイン、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、フェンタニル、もしくはモルヒネ;狭心症用調製物、例えば、ジルチアゼム;抗アレルギー薬、例えば、クロモグリケート、ケトチフェン、もしくはネドクロミル;抗感染薬、例えば、セファロスポリン、ペニシリン、ストレプトマイシン、スルホンアミド、テトラサイクリン、もしくはペンタミジン;抗ヒスタミン剤、例えば、メタピリレン;抗炎症薬、例えば、ベクロメタゾン、フルニソリド、ブデソニド、チプレダン、トリアムシノロンアセトニド、もしくはフルチカゾン;鎮咳剤、例えば、ノスカピン;気管支拡張剤、例えば、エフェドリン、アドレナリン、フェノテロール、ホルモテロール、イソプレナリン、メタプロテレノール、フェニルエフリン、フェニルプロパノールアミン、ピルブテロール、レプロテロール、リミテロール、サルブタモール、サメテロール、テルブタリン、イソエタリン、ツロブテロール、オルシプレナリン、もしくは(−)−4−アミノ−3,5−ジクロロ−α−[[[6−[2−(2−ピリジニル)エトキシ]ヘキシル]−アミノ]メチル]ベンゼンメタノール;利尿剤、例えば、アミロライド;抗コリン作動薬、例えば、イプラトロピウム、アトロピン、もしくはオキシトロピウム;ホルモン剤、例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、もしくはプレドニゾロン;キサンチン、例えば、アミノフィリン、コリンテオフィリネート、リジンテオフィリネート、もしくはテオフィリン;ならびに治療用タンパク質およびペプチド、例えば、インスリンもしくはグルカゴンが含まれる。適切な場合、薬の活性および/または安定性を最適化するために、薬が塩の形態(例えば、アルカリ金属もしくはアミン塩として、または酸付加塩として)で、またはエステル(例えば、低級アルキルエステル)として、または溶媒和物(例えば、水和物)として使用され得ることは当業者には明白であろう。
【0196】
併用療法に有用な他の例となる治療剤には、上述の薬剤、放射線療法、ホルモンアンタゴニスト、ホルモンおよびそれらの放出因子、甲状腺および抗甲状腺薬、エストロゲンおよびプロゲスチン、アンドロゲン、副腎皮質刺激ホルモン;副腎皮質ステロイドおよびそれらの合成類似体;副腎皮質ホルモンの合成および作用の阻害剤、インスリン、経口血糖降下剤、および膵臓内分泌部の薬理、石灰化および骨代謝に影響を及ぼす薬剤:カルシウム、リン酸塩、副甲状腺ホルモン、ビタミンD、カルシトニン、水溶性ビタミン、ビタミンB複合体、アスコルビン酸、脂溶性ビタミン、ビタミンA、K、およびE等のビタミン、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、ムスカリン受容体アゴニストおよびアンタゴニスト;抗コリンエステラーゼ薬剤;神経筋接合部および/または自律神経節で作用する薬剤;カテコールアミン、交感神経模倣薬、およびアドレナリン受容体アゴニストもしくはアンタゴニスト;ならびに5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT、セロトニン)受容体アゴニストおよびアンタゴニストが含まれるが、それらに限定されない。
【0197】
治療剤はまた、ヒスタミンおよびヒスタミンアンタゴニスト、ブラジキニンおよびブラジキニンアンタゴニスト、5−ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)、膜リン脂質の選択的加水分解の生成物の生体内変換によって生成される脂質物質、エイコサノイド、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンス、アスピリン、非ステロイド性抗炎症剤、鎮痛−解熱剤、プロスタグランジンおよびトロンボキサンの合成を阻害する薬剤、誘導型シクロオキシゲナーゼの選択的阻害剤、誘導型シクロオキシゲナーゼ−2の選択的阻害剤、オータコイド、傍分泌ホルモン、ソマトスタチン、ガストリン、体液性および細胞性免疫反応に関与する相互作用を媒介するサイトカイン、脂質由来オータコイド、エイコサノイド、β−アドレナリン作動性アゴニスト、イプラトロピウム、糖質コルチコイド、メチルキサンチン、ナトリウムチャネル遮断薬、オピオイド受容体アゴニスト、カルシウムチャネル遮断薬、膜安定化物質およびロイコトリエン阻害剤等の、疼痛および炎症に対する薬剤を含むことができる。
【0198】
本明細書において企図されるさらなる治療剤には、利尿剤、バソプレッシン、腎臓の水保持能に影響を及ぼす薬剤、レンニン、アンジオテンシン、心筋虚血症の治療に有用な薬剤、降圧剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、β−アドレナリン作動性受容体アンタゴニスト、高コレステロール血症の治療のための薬剤、および脂質代謝異常の治療のための薬剤が含まれる。
【0199】
企図される他の治療剤には、胃酸度の調節に使用される薬物、消化性潰瘍の治療のための薬剤、胃食道逆流病の治療のための薬剤、運動促進剤、鎮吐剤、過敏性腸症候群に使用される薬剤、下痢に使用される薬剤、便秘に使用される薬剤、炎症性腸疾患に使用される薬剤、胆道疾患に使用される薬剤、膵臓疾患に使用される薬剤が含まれる。原虫感染症を治療するために使用される治療剤、マラリア、アメーバ症、ジアルジア症、トリコモナス症、トリパノゾーマ病、および/もしくはリーシュマニア症を治療するために使用される薬物、ならびに/または蠕虫症の化学療法において使用される薬物。他の治療剤には、抗菌剤、スルホンアミド、トリメトプリム−スルファメトキサゾールキノロン、および尿路感染症に対する薬剤、ペニシリン、セファロスポリン、およびその他、β−ラクタム抗生物質、アミノグリコシドを含む薬剤、タンパク質合成阻害剤、結核、マイコバクテリウムアビウム複合疾患、およびハンセン病の化学療法において使用される薬物、抗真菌剤、非レトロウイルス剤および抗レトロウイルス剤を含む抗ウイルス薬剤が含まれる。
【0200】
主題の組成物と組み合わせることができる治療用抗体の例としては、抗受容体型チロシンキナーゼ抗体(セツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブ)、抗CD20抗体(リツキシマブ、トシツモマブ)、ならびにアレムツズマブ、ベバシズマブ、およびゲムツズマブ等の他の抗体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0201】
さらに、免疫調節物質、免疫抑制剤、寛容原、および免疫刺激薬等の、免疫調節に使用される治療剤が本明細書における方法によって企図される。加えて、血液および造血臓器に対して作用する治療剤、造血薬剤、成長因子、ミネラル、およびビタミン、抗凝血剤、血栓溶解剤、および抗血小板薬。
【0202】
主題の組成物と組み合わせることが可能なさらなる治療剤は、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,Tenth Edition, edited by Hardman,Limbird,and Gilman、およびPhysician’s Desk Referenceに見出すことができ、それらのいずれも、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0203】
本明細書に記載される組成物は、治療される病態に応じて、本明細書に開示される薬剤または他の好適な薬剤と組み合わせて使用することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、上述の他の薬剤と共投与される。併用療法で使用される際、本明細書に記載される組成物は、第2の薬剤と同時または別個に投与され得る。この組み合わせた投与には、同じ剤形での2つの薬剤の同時投与、別個の剤形での同時投与、および別個の投与が含まれ得る。すなわち、本明細書に記載される組成物および上述の薬剤のいずれかを、同じ剤形中に一緒に製剤化し、同時に投与することができる。あるいは、本発明の組成物および上述の薬剤のいずれかを同時に投与してもよく、ここで、両方の薬剤が別個の製剤中に存在する。別の代替手段では、本発明の組成物を投与した後すぐに、上述の薬剤のいずれかを投与することができ、逆もまた同様である。別個の投与プロトコルでは、本発明の組成物および上述の薬剤のいずれかは、数分間離れて、または数時間離れて、または数日間離れて、投与されてもよい。
実施例
【0204】
以下に提供される実施例および調製物は、本発明の組成物およびかかる組成物を調製する方法をさらに例示説明および例を提示する。本発明の範囲は以下の実施例および調製物の範囲によって決して限定されないことを理解されたい。以下の実施例では、単一のキラル中心を有する分子は、別途注記のない限り、ラセミ混合物として存在する。2つ以上のキラル中心を有する分子は、別途注記のない限り、ジアステレオマーのラセミ混合物として存在する。単一のエナンチオマー/ジアステレオマーは、当業者に既知の方法によって得ることができる。
【実施例1】
【0205】
【化15】
【0206】
化合物2の調製:
【0207】
1.2−アミノ−4−ブロモフェノール(12574g)およびメタノール(100.6L、79.6kg)を、適切な寸法の反応器に充填し、室温(約18〜20℃)で撹拌した。
【0208】
2.別個の50ガロンの反応器において、臭化シアン(8500g)の溶液をメタノール(25.1L、19.9kg)中に調製し、この溶液を、添加漏斗を介して出発物質の反応混合物に充填した(総反応体積約150L、40ガロン)。
【0209】
3.反応混合物を37℃で約15時間加熱した。
【0210】
4.反応を、完了するまでHPLCによって監視した。
【0211】
5.完了した後、反応混合物を18〜20℃に冷却した。
【0212】
6.40%炭酸ナトリウム溶液(水30.2L中12.41KgのNaCO)を周囲温度で添加し、混合物を約1時間撹拌した。
【0213】
7.溶媒を30〜40℃で真空下において蒸留し、ほとんどのメタノールを除去した。
【0214】
8.水(50.2L、50.2kg)を充填した。
【0215】
9.酢酸エチル(125L、113kg)を添加し、結果として得られた混合物を、約10分間撹拌した。
【0216】
10.かき混ぜを停止し、層を分離させた。
【0217】
11.より下部の水相を排出させた。
【0218】
12.水(50L、50kg)を、反応器中の有機相に添加し、結果として得られた混合物を、少なくとも20分間撹拌した。
【0219】
13.かき混ぜを停止し、層を分離させた。
【0220】
14.より下部の水相を排出させ、ステップ11からの水相と合わせた。
【0221】
15.ブライン(25kgのHO中7.0KgのNaCl)を添加し、結果として得られた混合物を、約10分間撹拌した。
【0222】
16.かき混ぜを停止し、層を分離させた。
【0223】
17.より下部の水相を排出させ、ステップ14からの水相と合わせた。
【0224】
18.硫酸マグネシウム(1.9Kg)を添加し、結果として得られた混合物を、少なくとも15分間撹拌した。
【0225】
19.混合物を、1umのインラインフィルタを使用して、清潔な反応器に濾過した。
【0226】
20.反応器およびフィルタラインを酢酸エチル(12L)で洗浄した。
【0227】
21.30〜40℃で真空下において、最小操作可能体積(約2体積量、約25L)まで蒸留を行った。
【0228】
22.ヘプタン(63L、43kg)を添加した。
【0229】
23.30〜40℃で真空下において、最小撹拌可能体積(約2体積量、約25L)まで蒸留を行った。
【0230】
24.ステップ22および23を、もう1回繰り返した。
【0231】
25.ヘプタン(32L)を添加し、結果として得られた混合物を周囲温度(18℃〜20℃)で少なくとも3時間撹拌した。
【0232】
26.反応をHPLCによって監視した。
【0233】
27.固体を真空濾過によって収集し、ヘプタン(2×13L、8.9kg)で洗浄した。
【0234】
28.固体を、約47℃において真空炉中で一定重量まで乾燥させて、茶色〜薄茶色の固体を得た(13510g、収率95%;HPLC純度97.2%;HNMR(DMSO−d6,300MHz)δ 7.6(s,2H),7.38−7.28(m,2H),7.15−7.08(1H))。
【実施例2】
【0235】
【化16】
【0236】
化合物4の調製:
【0237】
1.5−ブロモベンゾ[b]オキサゾール−2−アミン(化合物2、13400g)、ビス−(ピナコラト)ジボロン(19168g)、および1,4−ジオキサン(134L)を、適切な寸法の反応器に添加し、室温(約18〜20℃)で撹拌した。
【0238】
2.撹拌しながら、反応混合物に20℃未満で約10分間、窒素を拡散させた。
【0239】
3.ジクロロメタンとの錯体である1,1´−ビス[(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)((PdC1(dppf))、2569g))、および酢酸カリウム(KOAc、18520g)を、反応器に添加した。
【0240】
4.撹拌しながら、窒素の拡散を、20℃未満で約10分間継続した。
【0241】
5.反応混合物を、わずかな窒素ブランケット下において加熱還流させ(100〜103℃)、3〜5時間撹拌した。
【0242】
6.反応をHPLCによって監視した。
【0243】
7.完了した後、反応混合物を18〜20℃に冷却し、シリカゲル(40.5Kg、約30重量%)のプラグを通して濾過した。
【0244】
8.生成物を、さらに、わずかな真空下で酢酸エチル(37mL/g)により溶出した。
【0245】
9.試料の最後の溶出部分を、TLC分析に供した。
【0246】
10.合わせた濾液を、30〜40℃で真空下において最小撹拌可能体積まで濃縮した(合計約1.5〜2体積量)。
【0247】
11.50%塩酸水溶液(1:1の濃HCl:HO、水67L中、10mL/g、67Lの濃HCl)を、反応器中の濃スラリーに充填し、反応混合物を、80〜84℃に加熱した後、80〜84℃で2〜4時間撹拌した。
【0248】
12.反応をHPLCによって監視した。
【0249】
13.完了した後、反応混合物を18〜20℃に冷却した。
【0250】
14.固体を、真空濾過を介して収集し、10%塩酸水溶液(1:9の濃HCl:HO)(水67L中13Lの濃HClで洗浄した。
【0251】
15.薄茶〜茶色の固体(湿潤)を酢酸エチル(134L)中に懸濁し、18〜20℃で約30分間撹拌した。
【0252】
16.固体を、真空濾過を介して収集し、酢酸エチル(67L)で洗浄した。
【0253】
17.固体を、窒素ブランケット下で約1時間乾燥させ、次いで、約50℃において真空炉中で、わずかに窒素を流しながら一定重量まで乾燥させて(約72〜90時間)、化合物3を茶色〜薄茶色の固体として得た(9479g、収率70%;HPLC純度94.2%;HNMR(DMSO−d6,300MHz)δ 10.2−9.5(1H),7.85−7.71(1H),7.62−7.50(1H))。
【実施例3】
【0254】
【化17】
【0255】
化合物5の調製:
【0256】
1.メチルt−ブチルエーテル(MTBE、102L)を、適切な寸法の反応器に添加し、撹拌した後、窒素雰囲気下において室温でナトリウムエトキシド(6230g)を添加した。
【0257】
2.結果として得られた懸濁液を、室温で15分間撹拌し、次いで、5〜0℃まで冷却した。
【0258】
3.ギ酸エチル(8015g)およびクロロ酢酸エチル(10200g)を、0〜5℃で1時間の期間にわたり添加漏斗を通じて添加した。
【0259】
4.反応混合物を、0〜5℃で30分間撹拌した。
【0260】
5.反応混合物を室温に温めた。
【0261】
6.反応混合物を室温で6〜18時間撹拌した。
【0262】
7.反応をGCによって監視した。
【0263】
8.GC分析によって反応が完了した後、反応混合物を5〜10℃に冷却した。
【0264】
9.水(51L)を、10℃未満で最低30分にわたって添加した。
【0265】
10.反応混合物を、5〜10℃で30分間撹拌した。
【0266】
11.反応混合物を、10℃未満において濃HCl(およそ8L)でpH1〜2に達するまで中和した。
【0267】
12.反応混合物を室温(15〜25℃)に温め、室温で30分間撹拌した。
【0268】
13.層を分離し、生成物を含有する上部の有機相を収集した。より下部の水相を、MTBE(51L)で抽出した。
【0269】
14.2つの有機相を合わせ、より下部の水相を廃棄した。
【0270】
15.合わせた有機相を、ブライン溶液(51L)で洗浄した。
【0271】
16.MTBEを、真空下において、20〜25℃の被覆部温度で最小撹拌体積まで除去した。
【0272】
17.真空を停止し、エタノール(51L)を反応混合物に添加した。残ったMTBEを、反応混合物の内部温度が70〜78℃に達するまで、周囲圧下で蒸留した。
【0273】
18.エタノール中のこの反応混合物を、さらなる精製なしに次のステップで使用して、化合物5を淡黄色〜茶色がかった液体として得た(12530g、推定収率100%)。
【実施例4】
【0274】
【化18】
【0275】
化合物8の調製:
【0276】
1.化合物5のエタノール溶液(エタノール51L中12400g)を、室温で窒素雰囲気下において適切な寸法のステンレス鋼製の反応器に添加した。
【0277】
2.化合物6(9500g)を、室温で、固体として一度に添加した。
【0278】
3.反応混合物を加熱還流させ(約78℃)、1〜2日間撹拌した。
【0279】
4.反応をHPLCによって監視した。
【0280】
5.完了した後、反応混合物を室温に冷ました。
【0281】
6.NaOH溶液(水38L中に溶解した9884gの固体ペレット)を、35℃未満の内部温度で30分間の期間にわたって、1つの流れとして添加した。
【0282】
7.反応混合物を、3〜4時間、加熱還流した(約78℃)。
【0283】
8.反応をHPLCによって監視した。
【0284】
9.完了した後、反応混合物を適切な温度に冷却し、溶媒の除去を開始した。
【0285】
10.全てのエタノール(およそ5体積量のエタノール)を、40〜45℃で真空下において除去した。
【0286】
11.反応混合物を室温に冷却した。
【0287】
12.水(57L、6体積量)を室温で添加した。
【0288】
13.水溶液を酢酸エチルで洗浄して(2×38L)、全ての有機不純物を除去した。
【0289】
14.より下部の水層を、0〜5℃に冷却し、濃HCl(約15L)でpH1〜2に達するまで酸化させた。
【0290】
15.反応混合物を、0〜5℃で1〜2時間撹拌した。
【0291】
16.混合物を濾過し、濾滓を、水(2×38L)およびアセトン(2×19L)で洗浄した後、1〜2時間乾燥させた。
【0292】
17.収集した固体を、適切な寸法の反応器に戻した。
【0293】
18.ヘプタン(95L、10体積量)を反応器に添加し、懸濁液を室温で4〜5時間撹拌した。
【0294】
19.固体を濾過によって収集し、ヘプタン(2×19L)で洗浄した。
【0295】
20.固体(15kg)を、室温で2時間、メタノール(75L、5体積量)中に懸濁させた。
【0296】
21.懸濁液を濾過し、収集した固体をメタノール(2×5L)で洗浄した。
22.固体を、50℃で真空下において一定重量まで乾燥させて、化合物8を灰色がかった白色〜白色の固体として得た(10169g、収率83.3%;HPLC純度99.2%;HNMR(DMSO−d6,300MHz)δ 9.4(s,1H),8.3(s,1H),7.85−7.67(m,2H))。
【実施例5】
【0297】
【化19】
【0298】
化合物9の合成:
【0299】
1.適切な寸法の丸底フラスコ(5L)に、機械的撹拌器、熱電対、添加漏斗、窒素注入口、および冷却槽を設置した。
【0300】
2.フラスコに、室温で、ジオキサン(2.73L)および化合物8(273g)を窒素雰囲気下で充填した。
【0301】
3.結果として得られたスラリーを、室温で15分間撹拌した。
【0302】
4.DMF(8.3g)を室温で添加した。
【0303】
5.反応混合物を0℃〜5℃に冷却した。
【0304】
6.塩化チオニル(269g)を、添加漏斗を通じて反応混合物にゆっくりと添加し、内部温度を0℃〜5℃に維持した。添加漏斗を、最低量の1,4−ジオキサン(135mL、0.5体積量)ですすいだ。
【0305】
7.反抗混合物を加熱還流させ(98℃〜102℃)、12〜20時間撹拌した。
【0306】
8.反応の進行をHPLCによって監視した。
【0307】
9.完了した後、反応混合物を0℃〜10℃に冷却した。
【0308】
10.モルホリン(492g)を、添加漏斗を通じて反応混合物にゆっくりと添加し、窒素雰囲気下で内部温度を0℃〜10℃に維持した。
【0309】
11.反応混合物を室温に温め、室温で12〜18時間撹拌した。
【0310】
12.反応の進行をHPLCによって監視した。
【0311】
13.完了した後、溶媒を、50℃未満で真空下において化合物8を基準として3体積量まで除去して、濃スラリーを得た。
【0312】
14.スラリーを丸底フラスコに移し、室温に冷却した。
【0313】
15.水(5.46L)を室温で添加した。
【0314】
16.結果として得られた混合物を、室温で3時間撹拌した。
【0315】
17.固体を、濾過によって収集し、水(2×1.4L)およびヘプタン(2×1.4L)で洗浄した。
18.固体を、50℃で真空下において一定重量まで乾燥させて、化合物9をベージュ色の固体として得た(296g、収率84%;HPLC純度99.5%;HNMR(DMSO−d6,300MHz)δ 9.2(s,1H),7.8(s,1H),7.58−7.5(d,1H),7.45−7.38(d,1H),3.9−3.7(m,8H))。
【実施例6】
【0316】
【化20】
【0317】
(6−(2−アミノベンゾ[d]オキサゾール−5−イル)イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)(モルホリノ)メタノン(式I)の調製:
【0318】
1.5Lの三つ口丸底フラスコに、機械的撹拌器、熱電対プローブ、窒素/真空吸気口、および還流冷却器を設置し、加熱マントルに入れた。
【0319】
2.1,4−ジオキサン(3.75L)および水(1.25L)を室温で添加した。
【0320】
3.化合物9(250g)および化合物3(210g)を、室温でフラスコに添加した。
【0321】
4.反応混合物を、室温で10分間撹拌した。
【0322】
5.炭酸ナトリウム(300g)をフラスコに添加した後、室温で窒素下においてPd(PPh(47g)を添加した。
【0323】
6.撹拌しながら、反応器に20℃未満で約30分間、窒素を拡散させた。
【0324】
7.反応混合物を、5〜6回の真空/窒素サイクルを行うことによって脱酸素化させた。
【0325】
8.反応混合物を、わずかな窒素バブリング下で加熱還流させ(88℃〜102℃)、5〜8時間撹拌した。
【0326】
9.反応をHPLCによって監視した。
【0327】
10.完了した後、反応混合物を75〜80℃に冷却した。
【0328】
11.水(3.75L)および酢酸エチル(1.25L)を、75〜80℃で反応混合物に添加した。
【0329】
12.結果として得られた混合物を室温に冷却し、室温で2時間撹拌した。
【0330】
13.混合物を濾過し、収集した固体を、水(2×1.25L)、メタノール(1.25L)、および酢酸エチル(2×1.25L)で洗浄した。
【0331】
14.固体を、室温で1時間、酢酸エチル(1.5L)中に懸濁させた。
【0332】
15.懸濁液を濾過し、収集した固体を酢酸エチル(250mL)で洗浄した。
【0333】
16.このプロセスを、さらに2回繰り返した。
【0334】
17.得られた固体を真空下で乾燥させて、粗生成物を得た(250g、収率85%;HPLC純度98.1%;Pdレベル1831ppm)。
【0335】
粗生成物のさらなる精製:
【0336】
18.粗生成物(250g)を、室温で、メタノール(2.5L)およびHCl(158mL)中に懸濁させた。
【0337】
19.混合物を40〜45℃に加熱して、わずかに濁った溶液を得た。
【0338】
20.炭(250g)を、40〜45℃で反応混合物に添加した。
【0339】
21.反応混合物を、40〜45℃で30分間撹拌した。
【0340】
22.高温の溶液を、2インチのセライトベッドを備えるポリパッドを通して濾過し、濾滓をメタノール(3×500mL)で洗浄した。
【0341】
23.溶液をフラスコに充填した(Pdレベル:330ppm)。
【0342】
24.溶液を40〜45℃に加熱した。
【0343】
25.炭(50g)およびシリカチオール(50g)を、40〜45℃で添加した。
【0344】
26.混合物を、40〜45℃で30分間撹拌した。
【0345】
27.高温の溶液を、ポリパッドを通して濾過し、濾滓をメタノール(250mL)で洗浄した。
【0346】
28.このプロセスを、もう1回繰り返した。
【0347】
29.メタノールを、30〜35℃で真空下において約2.5Lまで除去した。
【0348】
30.溶液を10〜15℃に冷却した。
【0349】
31.濃アンモニア水溶液(200mL)を、pH8〜9に達するまで添加した。
【0350】
32.反応混合物を0〜5℃に冷却し、0〜5℃で1−2時間撹拌した。
【0351】
33.混合物を濾過し、濾滓を水(2×500mL)およびメタノール(2×500mL)で洗浄した。
【0352】
34.収集した固体を丸底フラスコに戻し、室温で2〜3時間、酢酸エチル(2.5L)中に懸濁させた。
【0353】
35.固体を濾過によって収集し、酢酸エチル(750mL)で洗浄した。
36.固体を、約50℃で真空下において一定重量まで乾燥させて、式Iの化合物を灰色がかった白色の固体として得た(180g、収率61%;HPLC純度98.5%;HNMR(DMSO−d6,300MHz)δ 9.1(s,1H),8.1(s,1H),7.8−7.65(2H),7.60−7.40(m,4H),7.3−7.2(1H),3.8−3.6(m,8H);Pdレベル1ppm)。
【実施例7】
【0354】
機器および方法論の詳細
【0355】
GVS
【0356】
収着等温線を、DVS Intrinsic Controlソフトウェアv1.0.0.30によって制御されるSMSのDVS Intrinsic水分収着分析器を使用して得た。試料温度を、機器の制御によって25℃に維持した。湿度は、200mL/分の総流速で乾燥および湿潤窒素の混合流によって制御した。相対湿度を、試料付近に位置する較正型Rotronicプローブ(ダイナミックレンジ1.0〜100%RH)によって測定した。%RHの関数としての試料の重量変化(質量緩和(mass relaxation))を、微量天秤(精度±0.005mg)によって絶えず監視した。
【0357】
およそ5〜20mgの試料を、周囲条件下において、風袋の重量を釣り合わせたメッシュステンレス鋼バスケットに入れた。試料は、40%RHおよび25℃(通常の室内条件)で装填および取り出しを行った。水分収着等温線を、以下に概説されるように実行した(走査2回で1回の完全なサイクル)。標準等温線は、0〜90%のRH範囲にわたって、10%RH間隔で25℃において実行した。データ分析は、DVS Analysis Suite v6.0.0.7を使用して、Microsoft Excelにて行った。
【0358】
図14は、拡張HClパターン2のGVS等温線プロットを示す。
【0359】
XRPD
X線粉末回折パターンを、Bruker AXS C2 GADDS回折器またはBruker AXS D8回折器のいずれかにおいて収集した。Bruker AXS C2 GADDS回折器では、次のパラメータを使用した:Cu Kα放射線(40kV、40mA)、自動化XYZステージ、自動試料位置決定のためのレーザービデオ顕微鏡、およびHiStar 2次元領域検出器。X線光学は、0.3mmのピンホールコリメータと接続された一つのGobel多層膜ミラーから構成されていた。週1回の性能チェックを、認定標準物質NIST 1976 コランダム(平板)を使用して行った。
【0360】
ビームの発散、すなわち、試料に対するX線ビームの有効寸法は、およそ4mmであった。θ−θ連続走査モードを、3.2°〜29.7°の有効2θ範囲が得られる、試料から検出器まで20cmの距離で用いた。典型的な実験では、試料を、120秒間X線ビームに曝露させる。データ収集に使用したソフトウェアは、WNT 4.1.16用のGADDSであり、データは、Diffrac PlusEVA v11.0.0.2またはv13.0.0.2を用いて分析および提示した。
【0361】
周囲条件
【0362】
周囲条件下で用いられる試料は、受容した状態のまま粉末を粉砕することなく使用して、平板標本として調製した。およそ1〜2mgの試料を、スライドガラスに軽く押し付けて、平らな表面を得た。
【0363】
非周囲条件
【0364】
非周囲条件下で用いられる試料を、熱伝導化合物と共にシリコンウエハ上に載置した。次いで、試料を、10℃/分で適切な温度に加熱し、続いて1分間等温に保った後、データ収集を開始した。
【0365】
Bruker D8回折器では、次のパラメータを使用した:Cu Kα放射線(40kV、40mA)、θ〜2θゴニオメータ、ならびにV4発散および受光スリット、GeモノクロメータおよびLynxeye検出器。機器に、認定コランダム標準物質(NIST 1976)を使用して性能のチェックを行った。データ収集に使用したソフトウェアは、Diffrac Plus XRD Commander v2.5.0であり、データは、Diffrac Plus EVA v11.0.0.2またはv13.0.0.2を用いて分析および提示した。
【0366】
試料を、受容した状態のまま粉末を使用して平板標本として周囲条件下で用いた。試料を、鏡面加工でゼロバックグラウンド(510)のシリコンウエハに切り込まれた空洞に穏やかに充填した。分析の際、試料をそれ自体の平面上で回転させた。データ収集の詳細:
・角度範囲:2θが2〜42°
・ステップ幅:2θが0.05°
・収集時間:0.5秒/ステップ
【0367】
HClパターン1、HClパターン2、HBrパターン1、HBrパターン2、HBrパターン3のXRPDパターンを、それぞれ、図1、2、7、10、および13に示す。
【0368】
核磁気共鳴(H−NMR)
【0369】
NMRスペクトルを、オートサンプラーを備えるBruker 400MHz機器において収集し、DRX400コンソールによって制御した。自動化実験を、標準的なBruker装填実験を使用して、Topspin v1.3で動作するICON−NMR v4.0.4を用いて得た。非日常的な分光法については、データはTopspin単独の使用を通じて取得した。HClパターン1およびHClパターン2のH−NMRスペクトルを、図3に示す。HBrパターン1およびHBrパターン2のH−NMRスペクトルを、それぞれ、図8および11に示す。
【0370】
示差走査熱量測定(DSC)
【0371】
DSCデータを、50ポジションのオートサンプラーを備えるTA Instruments Q2000で収集した。熱容量の較正を、サファイアを用いて行い、エネルギーおよび温度の較正は、認定インジウムを用いて行った。
【0372】
典型的には、ピンホール付きアルミニウム製パン中、0.5〜3mgの各試料を、10℃/分で25℃から300℃に加熱した。50mL/分での乾燥窒素パージを、試料全体に維持した。
【0373】
機器制御ソフトウェアは、Q Series用のAdvantage v2.8.0.392およびThermal Advantage v4.8.3であり、データは、Universal Analysis v4.4Aを使用して分析した。
【0374】
HClパターン2およびHBrパターン1のDSCトレースを、それぞれ、図5および9に示す。
【0375】
熱重量分析(TGA)
【0376】
TGAデータを、16ポジションのオートサンプラーを備えるTA Instruments Q500 TGAで収集した。機器に、認定アルメルおよびニッケルを使用して温度較正を行った。典型的には、5〜10mgの各試料を、事前に風袋の重量を釣り合わせたアルミニウム製DSCパンに装填し、10℃/分で周囲温度から350℃に加熱した。60mL/分での窒素パージを、試料全体に維持した。
【0377】
機器制御ソフトウェアは、Q Series用のAdvantage v2.8.0.392およびThermal Advantage v4.8.3であり、データは、Universal Analysis v4.4Aを使用して分析した。
【0378】
図4は、HClパターン2のTGAトレースを示す。
【0379】
イオンクロマトグラフィー(IC)
【0380】
データを、IC Netソフトウェアv2.3を使用して、Metrohm 861 Advanced Compact ICで収集した。正確に計量した試料を、適切な溶解液中のストック溶液として調製し、試験の前に適切に希釈した。定量化を、分析されるイオンの既知の濃度の標準溶液との比較によって達成した。
【表1】
【実施例8】
【0381】
塩の選択
【0382】
塩酸塩の調製を、塩のスクリーニングに最適な溶媒を選択するために、可溶性スクリーニングに使用した20種類の溶媒中で行った。式Iの遊離塩基(約10mg)を、40℃で撹拌しながら、選択した溶媒(50体積量、500μL)中に懸濁させた。HCl(1.1当量、THF中の1M溶液29μL)を添加し、温度を30分間維持した。バイアルを、室温と50℃との間の加熱/冷却サイクルに、各条件4時間で供した。1日後、各実験のアリコートを取り、真空濾過によって単離し、吸引により乾燥させ、XRPDによって分析した。実験に、さらに3日間このサイクルを続けた。各実験のアリコートを取り、真空濾過によって単離し、吸引により乾燥させ、XRPDによって分析した。結果を、表2に要約する。
【0383】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0384】
式Iの遊離塩基(約30mg)を、50℃で撹拌しながら選択した溶媒(THF、ニトロメタン、アセトニトリル、およびMEK;50体積量、1.5mL)中に懸濁させた。対応する酸(1当量)を添加し、試料を30分間撹拌した後、1℃/分の勾配で25℃にした。試料をシェーカーに入れ、室温と50℃との間の加熱/冷却サイクルに、各条件4時間で供した。投入物質および量を含む、これらの実験に使用した酸についての詳細を、以下の表3に要約する。
【表3】
【0385】
16時間後、アリコートを取り、真空濾過によって単離し、吸引により乾燥させ、XRPDによって分析した。さらなる溶媒(25体積量)を添加し、懸濁液に、さらに4日間サイクルを行った。アリコートを取り、真空濾過によって単離し、吸引により乾燥させ、XRPDによって分析した。さらに、酸(0.2当量、17μL)および溶媒(25体積量)を、XRPDパターンに遊離塩基の存在を示し、不完全な塩の形成を示唆するこれらの試料に添加した。試料をシェーカー内に保管し、室温と50℃との間の加熱/冷却サイクルに、各条件4時間で1週間供した。アリコートを取り、真空濾過によって単離し、吸引により乾燥させ、XRPDによって分析した。水(約1.5mLの溶媒に基づいて、MeCNについては10%、ならびにTHF、MEK、およびニトロメタンについては5%)を添加し、試料をさらに5日間サイクルに供した。アリコートを取り、真空濾過によって単離し、吸引により乾燥させ、XRPDによって分析した。
【0386】
新たなXRPDパターンを示す試料については、残留固体を真空濾過によって単離し、吸引により乾燥させ、さらなる特徴付けを次の通りに行った。
【表4】
【表5-1】
【表5-2】
【表6】
【表7】
【0387】
ハイライトした試料を、吸引下で濾過し、室温で約68時間真空乾燥させた。HClおよびHBrから得られた固体に、XRPD、H−NMR、DSC、およびイオンクロマトグラフィーによって特徴付けを行い、これらの結果を、次の通りに示す。
【0388】
式IのHCl塩は、ニトロメタン中追加の溶媒による熟成によって得られた。
【表8】
【0389】
式IのHBr塩を、アセトニトリルおよびTHF中での3日間の熟成、およびニトロメタン中のさらなる溶媒での熟成によって得た。
【表9】
【0390】
有機溶媒のスクリーニング時に得られた全ての固体のXRPDデータの要約を、表10に示す。
【表10-1】
【表10-2】
【0391】
水溶液のスクリーニングを行った。式Iの遊離塩基(約30mg)を、50℃で、水(50体積量)中に対応する酸(1.2当量)を含有する酸性溶液にゆっくりと添加し、白色の懸濁液を得、これを、室温と50℃との間の加熱/冷却サイクルに、各条件4時間で24時間供した。アリコートを取り、真空濾過によって単離し、吸引により乾燥させ、XRPDによって分析した。
【表11】
【0392】
HBr試料は、HBrパターン3として示される新たなパターンを示した。残った固体を吸引により濾過し、室温で16時間真空乾燥させ、XRPD、H−NMR、DSC、およびイオンクロマトグラフィーによって特徴付けを行った。
【表12】
【0393】
塩の調製を、濃有機酸水溶液中での溶解、および続くTHFでの沈殿によって、行った。10mgまたは50mgの規模で2つの手順を実行し、THFの添加順序が、得られる生成物に及ぼす影響を調査した。
【0394】
手順A:式Iの遊離塩基(約10mg)を、室温で撹拌しながら、対応する濃酸(50μL)中に溶解し、THF(500μL)に滴下添加した。HBrおよびHClを用いた試料からは固体が得られ、10分間振動させ、固体を真空濾過し、吸引により乾燥させた。HPOにより溶液を得、それを、室温と50℃との間の加熱/冷却サイクルに、各条件4時間で7日間供した。手順B:式Iの遊離塩基(約50mg)を、室温で撹拌しながら対応する濃酸(250μL)中に溶解した。THF(2.5mL)を溶液に滴下添加し、沈殿を開始させた。試料を30分間振動させた後、2〜8℃で約16時間おいた。HBrおよびHClでは固体が得られ、これらを真空濾過し、THFで洗浄し、吸引下および真空下において40℃で16時間乾燥させた。結果を表13に示す。
【表13】
【0395】
得られた固体に、XRPD、DSC、H−NMR、およびイオンクロマトグラフィーによる特徴付けを行った。結果を以下の表14および表15に示す。
【表14】
【表15】
【0396】
塩酸塩および臭化水素酸塩は、このスクリーニングから得られた結晶質塩をもたらした。2つの手順の結果の間に差は見られなかった。イオンクロマトグラフィーの結果は、2つの方法にわたって一貫していた。HClパターン2の形成を、この方法を用いて観察した。イオンクロマトグラフィーは、推定15%の水での2当量と同等である、1.5当量を上回る対イオンの根拠を示した。HBrパターン2および4と示される新たなHBrパターンの形成も観察され、イオンクロマトグラフィーはビス塩の形成の可能性を示唆した。HClパターン2に類似して、HBrパターン2および4のDSC分析により、複数の重複する吸熱が得られ、これらは、水和物の形成を示し得る(NMRによって残留溶媒が全く示されなかったため)。水の存在の可能性を考慮に入れたイオンクロマトグラフィー結果の補正により、結果として、臭化物の相対当量は2当量前後である。
【実施例9】
【0397】
HCl塩形成の拡張
【0398】
HClパターン1:式Iの遊離塩基(約500mg)を、撹拌しながらニトロメタン(50体積量、25mL)中に懸濁させた。HCl(THF中1M、1.2当量、1.65mL)を添加した。懸濁液を、室温と50℃との間の加熱/冷却サイクルに、各条件4時間で1週間供した。アリコートを取り、XRPDによって分析し、これにより、結晶質遊離塩基が依然として存在していることが示された。さらなるHCl(0.3当量、400μL)を添加し、熟成をもう1週間継続させたとき、XRPD分析が所望のHClパターン1を示した。固体を真空濾過によって単離し、室温で16時間真空乾燥させた。XRPD分析は、物質が部分的に遊離塩基に戻ったことを示したが、ICは、モノHCl塩の形成を示唆した。
【0399】
HClパターン2:式Iの遊離塩基(約500mg)を、撹拌しながら1時間、HCl(37%水溶液、2.5mL)中に溶解した。THF(25mL)を、30分間にわたって滴下添加した。約5mLのTHFを添加した後に、沈殿が開始した。懸濁液を、5日間撹拌し続けた。固体を吸引により濾過し、空気乾燥させ、XRPDにより新たなパターン(パターン3)が示された。固体を、室温で約16時間真空下において乾燥させ、その後、XRPD分析により、HClパターン2の形成を確認した。XRPDパターンに観察された変化は、HClパターン3が、恐らくは溶媒和を受けた不安定な塩形態であり、乾燥させるとHClパターン2に変換することを示唆した。HClパターン2の完全な特徴付けが行われており、詳細は、以下の表16〜17に見ることができる。
【表16】
【表17】
【0400】
HClパターン2が、室温で一晩の真空乾燥後に観察され、湿潤固体との明らかな違いを示した。塩の形成をH−NMRによって確認し、高い化学的純度がHPLCにより判定された。約15%の水の存在を補正したイオンクロマトグラフィー分析は、ビスHCl塩の形成を示唆した。VT−XRPDは、80℃を上回って加熱すると、HClパターン3を特定する新たなパターンへの変換を示し、これは、空気中で室温に冷却すると部分的結晶質のHClパターン2に戻った。同様に、TGAにおいて100℃に加熱した別の試料は(8重量%の損失は2.3当量のH2Oと同等である)、冷却するとXRPDにより低結晶質のHClパターン2を示したが、ICは塩の損失を確認しなかった。これらは、HClパターン2が50℃を上回って加熱されると脱水し、冷却すると容易に再水和することを示唆する。140℃までの加熱/冷却TGA実験(2.3重量%の損失は0.7当量のHOと同等である)はまた、塩化物を損失することなく低結晶質のHClパターン2物質を生成した。さらなる加熱は、解離に起因する可能性の高い分解をもたらした。
【0401】
GVS分析(図6および14)は、30〜40%RHで水和種の形成を示し、分析の終了時の取り込みは10.6重量%で、三水和物と同等であった。HClパターン2は、30%RHに対して安定であると見られたが、脱水が30%未満で観察され、再水和が40%で生じた。さらなる重量損失が0%RHに観察され、これは、不安定で、恐らくは無水である形態をもたらすVT−XRPDおよびTGA実験で観察された不安定な一水和物からの水の損失を示し得る。これらの結果は、三水和物HClパターン2および容易に再水和してHClパターン2をもたらす一水和物という、2つの水和形態の存在を示す。加熱による不安定な一水和物の脱水は、さらなる加熱による塩の解離、または冷却によって三水和物HClパターン2の再水和を示す、さらに不安定で恐らくは無水である物質を生成した。
【0402】
可変湿度XRPD分析を、2つの水和種が存在しているかどうかを判定するために行った。VH−XRPDは、HClパターン2が14%RHまで安定であることを示し、この湿度で物質がHClパターン3に変化し始め、0.5%RHで完全に変換した。湿度を増加させると、物質は13%RHから再水和し始め、45%RHでHClパターン2に完全に戻った。興味深いことに、またVT−XRPDとは異なって、結晶性の損失は、再水和時に観察されなかった。1つのXRPDパターンのみが脱水時に観察されたため、これが完全に無水の形態であるか、部分的に水和した形態であるかを結論付けることは不可能である。試料は6時間の間0.5%RHにあったが、VH−XRPDの動態は、GVS機器のものとは有意に異なる。
【0403】
さらなる実験において、HClパターン2を、多形体評価に使用した。非晶質物質は、パターン2の式IのHCl塩(約500mg)で開始し、150mLの水中に懸濁させ、濁った溶液を得、それを真空濾過することによって生じた。溶液を一晩凍結乾燥させ、部分的結晶質のHClパターン2物質を得た。最も低い結晶質のバッチのHClパターン2物質を、多形体評価に使用した。凍結乾燥した物質(約8mg)を、バイアルに計量し、選択した溶媒(20体積量、200μL)を添加した。懸濁液を、室温と50℃との間の加熱/冷却サイクルに、各条件4時間で3日間供した。アリコートを取り、真空濾過によって単離し、吸引により乾燥させ、XRPDによって分析し、その結果を、表18に要約する。試料は、溶媒のスクリーニングの際に非晶質物質をもたらしたアルコール溶媒におけるものを含む、既知の形態のHClパターン2を示し、全ての事例において出発物質と比較して改善された結晶性を有した。
【0404】
【表18】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15