(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078077
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】季節エネルギ蓄積冷却および加熱システム
(51)【国際特許分類】
F25B 27/00 20060101AFI20170130BHJP
F25B 27/02 20060101ALI20170130BHJP
F24D 11/00 20060101ALI20170130BHJP
F28D 20/02 20060101ALI20170130BHJP
F28D 20/00 20060101ALI20170130BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20170130BHJP
F28F 23/02 20060101ALI20170130BHJP
F24F 11/02 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
F25B27/00 L
F25B27/02 K
F24D11/00 B
F28D20/02 D
F28D20/00 B
F24F5/00 101A
F24F5/00 101B
F24F5/00 101Z
F28F23/02 C
F24F5/00 102C
F24F11/02 102B
F24F11/02 102R
F24F11/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-542691(P2014-542691)
(86)(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公表番号】特表2015-504506(P2015-504506A)
(43)【公表日】2015年2月12日
(86)【国際出願番号】CN2012083696
(87)【国際公開番号】WO2013075572
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2014年7月7日
(31)【優先権主張番号】201110381778.8
(32)【優先日】2011年11月25日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】313009936
【氏名又は名称】▲陽▼光▲凱▼迪新能源集▲団▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】▲陳義龍▼
(72)【発明者】
【氏名】胡▲書傳▼
【審査官】
横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−147563(JP,A)
【文献】
実開昭57−186470(JP,U)
【文献】
特開2007−017102(JP,A)
【文献】
特開昭57−021740(JP,A)
【文献】
特開2004−232897(JP,A)
【文献】
実開昭50−148140(JP,U)
【文献】
特開2010−271030(JP,A)
【文献】
特開2000−176460(JP,A)
【文献】
特開2010−025440(JP,A)
【文献】
特開2001−026773(JP,A)
【文献】
特開2004−012068(JP,A)
【文献】
米国特許第04273184(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 27/00
F24D 11/00
F24F 5/00
F24F 11/02
F25B 27/02
F28D 20/00
F28D 20/02
F28F 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギ蓄積装置と、太陽熱収集装置と、冷却ユニットと、ユーザ端末に閉ループ連結される給水装置を含む冷熱および温熱供給用季節熱エネルギ蓄積システムであって、前記エネルギ蓄積装置は少なくとも温熱源蓄積タンクおよび冷熱源蓄積タンクを含み、前記温熱源蓄積タンクおよび冷熱源蓄積タンクは第1水ポンプを介して水源と連結されて季節低エネルギ水を蓄積し、前記給水装置は対応する水ポンプおよび弁を介して、前記温熱源蓄積タンクと連結される温水供給プールと、前記冷熱源蓄積タンクと連結される冷水供給プールを含み、前記太陽熱収集装置は第2水ポンプを介して、前記温熱源蓄積タンクおよび温水供給プールと連結され、前記冷却ユニットは吸収式冷却装置であり、前記温水供給プールは夏季は前記吸収式冷却装置の熱源となるように構成されると共に水ポンプおよび弁を介して前記吸収式冷却装置に連結され、前記吸収式冷却装置からの冷水出力は水ポンプおよび弁を介して前記ユーザ端末に搬送され、前記吸収式冷却装置には水ポンプを介して前記温水供給プールに閉ループ連結される補助温水ボイラが設けられ、前記温水供給プールはまた熱エネルギを供給するための温熱源であるように構成されると共に、水ポンプ及び弁を介して前記ユーザ端末と連結され、前記エネルギ蓄積装置は更にエネルギ蓄積箱を含み、季節特性に応じて温熱エネルギ蓄積ボールまたは冷熱エネルギ蓄積ボールが前記エネルギ蓄積箱内に載置され、前記冷熱エネルギ蓄積ボールが前記エネルギ蓄積箱内に載置されるときには、前記冷熱エネルギ蓄積ボールは前記冷却ユニットに閉ループ連結されると共に前記冷水供給プールを介して前記ユーザ端末に連結され、前記温熱エネルギ蓄積ボールが前記エネルギ蓄積箱に載置されるときには、前記温熱エネルギ蓄積ボールは前記太陽熱収集装置に閉ループ連結されると共に前記温水供給プールを介して前記ユーザ端末に連結され、
前記ユーザ端末は低温床放射パネルであり、
温度センサおよび液面検出装置が前記温熱源蓄積タンク、冷熱源蓄積タンク、温水供給プールおよび冷水供給プールに載置されており、全ての水ポンプには電磁弁が設けられ、インテリジェント制御ユニットは温度センサ、液面検出装置、および電磁弁と連結されており、前記温度センサおよび液面検出装置により集められた信号に応じて前記電磁弁の開閉を制御することにより、対応する水ポンプを開閉させる、冷熱および温熱供給用季節熱エネルギ蓄積システム。
【請求項2】
前記太陽熱収集装置はトラフ型集熱装置を利用し、前記吸収式冷却装置は非電気臭化リチウム吸収式冷却装置を利用する、請求項1の冷熱および温熱供給用季節熱エネルギ蓄積システム。
【請求項3】
前記温熱源蓄積タンクおよび冷熱源蓄積タンクの給水管にはフィルタ式消毒装置が設けられる、請求項1の冷熱および温熱供給用季節熱エネルギ蓄積システム。
【請求項4】
前記太陽熱収集装置は工業排熱供給装置と置き換えられる、請求項1の冷熱および温熱供給用季節熱エネルギ蓄積システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、季節エネルギの蓄積の分野に関し、特に、冷熱および温熱供給のための季節熱エネルギ蓄積システムに関する。
【背景技術】
【0002】
1972年にストックホルムで開催された国連人間環境会議において、「持続可能な開発」のスローガンが提案されてから、世界中の人々は、一層この開発戦略に感心を持つようになった。また、建築の分野において「環境対応型建築」の動きが最高潮に達している。従来型の都市開発モードや建築システムは持続不可能であり、また人々の生活を悪化させているので、「環境対応型建築」が追求するのは、エネルギ効率に優れ、環境に優しく、健康的且つ高効率な生活環境である。また、「環境対応型建築」は益々多くの注目を集め、21世紀の主流となっている。中国に既存する建物は400億平方
メートルもあり、そのうちの僅か4%がエネルギ効率の優れた方策であるに過ぎない。毎年中国では、新たな建物のうちの99%以上がエネルギ消費の大きなものである。近年のデータによれば、中国は世界第二位のエネルギ消費国となっており、建物で使用されるエネルギは毎年増加し続けている。
【0003】
2020年までに中国の建築面積は300億平方メートルも増加することが予想され、このようなことが見られるのは世界中でも稀である。中国の建築物によって消費される商業エネルギは、商業エネルギ消費量全体の27.6%を占め、先進国のエネルギ消費量の30%〜40%にも達する。しかし統計によると、中国のエネルギ利用効率は、現在のところ33%に過ぎず、先進国に対して10%ポイント(約20年)も遅れており、エネルギ消費の強さは先進国や世界の平均レベルよりもずっと高く、米国の3倍、日本の7.2倍であり、また、一人当たりのエネルギ所有は世界の平均レベルよりも低い。そのため建物のエネルギ消費は最優先事項となっている。中国住宅都市農村建設部(MOHURD)は、「第12次五カ年計画」の間に、公共事業での省エネルギを目的とすると発表しており、この計画は、エネルギ消費を単位面積あたり公共事業で10%、大規模公共事業で15%減少させようと努力するものであり、また、太陽熱エネルギ、浅部地熱エネルギ、バイオマスエネルギ等の再生可能エネルギの適用を現実的に増加させて、再生可能エネルギが2020年までに建築エネルギ消費量の15%以上に達するようにすることを目的としている。
【0004】
夏暑く冬寒い地域では、エネルギをかなり消費する。いわゆる「夏暑く冬寒い地域」とは、暖房地域と真夏日となる地域の移行帯を指しており、概して揚子江中域および下流に及ぶ地域であるといえる。この地域における人口は中国の総人口の約3分の1を占め、またこの地域のGDPは国全体の約40%を占める。即ち、この地域は経済および文化においてより発展しており、重要な役割を果たしている。
【0005】
しかし、この地域の天候は、同緯度の地域と比べて良くない。際立った特徴としては、暑い夏と寒い冬である。暑い夏では、この地域の7月の気温は同緯度の地域よりも2℃高く、乾燥した砂漠を除き、この緯度で最も高温である。緯度が低いことに起因して、太陽光の放射は夏に極めて強く、太平洋からの涼しい風は東南丘陵によって遮られることから、この地域は夏に風が吹かない。気温が35℃以上となる日は15
〜30日もある。最も暑い月では、午後2時の平均気温は32〜33℃であり、室内気温はそれよりも1〜2℃高い。なによりも、この地域は水が豊富であり、湿度が80%よりも高くなることが頻繁にあり、汗を蒸発させることが困難であることから、人々は不快な蒸し暑さを感じる。
【0006】
また寒い冬では、この地域の1月の気温は同緯度の地域の気温と比較して8〜10℃低い。冬になると、北極やシベリアからの寒波が華北平原を通り直接襲来し、南嶺山脈や東南丘陵に阻まれ停滞する。平均気温が5℃以下の日は、武漢では63日、南京では75日、合肥では70日もあり、湿度が73〜83%に達する高湿度の日は2〜2.5ヶ月にも達する。冬には、特に重慶市や四川省では太陽の日差しは殆どない。水蒸気が人体から熱を奪い去るので、とても冷えて寒い。このような地域は中国だけでなく、世界中の多くの地域でも見られる。気候が悪いにも拘らず、周辺の環境には多くのエネルギが存在しており、このエネルギは「季節エネルギの蓄積」手段により発展させることが可能だが、世界的には幾つかの小規模なエンジニアリング以外ではあまり適用されていない。典型的な例としては、以下のものがある。
【0007】
A)カナダ、カルガリーシティ、オケトクス(Oketoks)タウンにある太陽発電コミュニティ:
52戸の独立した住居(建築面積が約20,000平方
メートル)があり、太陽光の回収、土壌加熱ポンプにより加熱された土壌の蓄熱(144個の掘り抜き井戸、2メートル間隔および深さ37メートル)が適用されている。このプロジェクトは2004年に始動し、事業が2006年に開始された。
【0008】
B)ドイツ、ハンブング・ブランフェルド(Hambung-Branfeld)にある太陽発電コミュニティ:
太陽集熱管が2700平方メートルの面積に及び、20,000平方メートルの加熱面積と20,000平方メートルの蓄熱プールを備える。エネルギ蓄積水の温度は60℃であり性能は良好である。
【0009】
上記の例から分かるように、「季節エネルギの蓄積」は太陽光エネルギの使用に限定され、省エネ効果は殆どない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の課題に鑑み、本発明の目的は、冷熱および温熱供給のための季節熱エネルギ蓄積システムを提供することにある。本システムは、大規模や中規模の冷却加熱プロジェクトを含む様々な種類の建築物に適用することができ、季節エネルギの蓄積は大規模または中規模の冷却加熱プロジェクトに適用することができないという長年の技術課題を解決すると共に、エネルギの節約や排出量の低減に新しい方法をもたらすものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係り、冷熱および温熱供給用季節熱エネルギ蓄積システムを提供する。本システムは、エネルギ蓄積装置と、太陽熱収集装置と、冷却ユニットと、ユーザ端末に閉ループ連結される給水装置とを含む。エネルギ蓄積装置は、少なくとも温熱源蓄積タンクと冷熱源蓄積タンクを含み、温熱源蓄積タンクおよび冷熱源蓄積タンクは第1水ポンプを介して水源に連結されて季節低エネルギ水を蓄積し、給水装置は、対応する水ポンプおよび弁を介して、温熱源蓄積タンクと連結される温水供給プールと、冷熱源蓄積タンクと連結される冷水供給プールを含む。太陽熱収集装置は第2水ポンプを介して、温熱源蓄積タンクおよび温水供給プールと連結される。冷却ユニットは吸収式冷却装置であり、温水供給プールは夏季は吸収式冷却装置の熱源となるように構成されると共に水ポンプおよび弁を介して吸収式冷却装置に連結され、吸収式冷却装置からの冷水出力は水ポンプおよび弁を介してユーザ端末に搬送され、吸収式冷却装置には水ポンプを介して温水供給プールに閉ループ連結される補助温水ボイラが設けられ、温水供給プールはまた熱エネルギを供給するための温熱源であるように構成されると共に、水ポンプ及び弁を介してユーザ端末と連結される。エネルギ蓄積装置は更にエネルギ蓄積箱を含み、季節特性に応じて温熱エネルギ蓄積ボールまたは冷熱エネルギ蓄積ボールがエネルギ蓄積箱内に載置され、冷熱エネルギ蓄積ボールがエネルギ蓄積箱内に載置されるときには、冷熱エネルギ蓄積ボールは冷却ユニットに閉ループ連結されると共に冷水供給プールを介してユーザ端末に連結され、温熱エネルギ蓄積ボールがエネルギ蓄積箱に載置されるときには、温熱エネルギ蓄積ボールは太陽熱収集装置に閉ループ連結されると共に温水供給プールを介してユーザ端末に連結される。前記ユーザ端末は低温床放射パネルである。温度センサおよび液面検出装置が前記温熱源蓄積タンク、冷熱源蓄積タンク、温水供給プールおよび冷水供給プールに載置されており、全ての水ポンプには電磁弁が設けられ、インテリジェント制御ユニットは温度センサ、液面検出装置、および電磁弁と連結されており、前記温度センサおよび液面検出装置により集められた信号に応じて前記電磁弁の開閉を制御することにより、対応する水ポンプを開閉させる。
【0015】
本実施形態の一態様において、太陽熱収集装置はトラフ型集熱装置を利用し、
吸収式冷却装置は非電気臭化リチウム吸収式冷却装置を利用する。
【0017】
本実施形態の一態様において、温熱源蓄積タンクおよび冷熱源蓄積タンクの給水管にはフィルタ式消毒装置が設けられる。
【0020】
本実施形態の一態様において、太陽熱収集装置は、工業排熱供給装置と置き換えられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態にかかる効果は、以下のとおりに要約される。
【0022】
本発明の実施形態では、季節エネルギ蓄積装置、太陽熱収集装置、給水装置、およびユーザ端末が閉ループ冷却加熱システムを形成する。季節エネルギ蓄積技術は、優れた省エネ効率を伴い、大規模冷却加熱プロジェクトに良好に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る冷熱および温熱供給用季節熱エネルギ蓄積システムの概略図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る冬季における冷熱および温熱供給用季節熱エネルギ蓄積システムの実行図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る夏季における冷熱および温熱供給用季節熱エネルギ蓄積システムの実行図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を更に例証するために、冷熱および温熱供給用季節熱エネルギ蓄積システムを詳述する実施例を、
図1〜
図3を参照して以下に説明する。
【0025】
図1に示すように、冷熱および温熱供給用季節熱エネルギ蓄積システムは、エネルギ蓄積装置1と、太陽熱収集装置2と、冷却ユニット3と、ユーザ端末5に閉ループ連結される給水装置4を含む。エネルギ蓄積装置は少なくとも温熱源蓄積タンク11と冷熱源蓄積タンク12を含み、温熱源蓄積タンク11および冷熱源蓄積タンク12は第1水ポンプを介して給水源と連結される。給水装置4は、温熱源蓄積タンク11に連結される温水供給プール41と、冷熱源蓄積タンク12に連結される冷水供給プール42を含む。太陽熱収集装置2は、第2水ポンプを介して温熱源蓄積タンク11および温水給水プール41に連結される。冷却ユニット3は第3水ポンプを介して、温水供給プール41および冷水供給プール42に連結されると共に、ユーザ端末5に閉ループ連結される。
【0026】
エネルギ蓄積装置1は更に、エネルギ蓄積箱に載置されるエネルギ蓄積ボール13を含む。エネルギ蓄積ボール13は温熱エネルギ蓄積ボール131と冷熱エネルギ蓄積ボール132を含む。温熱エネルギ蓄積ボール131は太陽熱収集装置2と閉ループ連結されると共に、ユーザ端末5と連結される。冷熱エネルギ蓄積ボール132は冷却ユニット3と閉ループ連結されると共に、ユーザ端末5および冷水供給プール42と連結される。
【0027】
実施に際して、温熱エネルギ蓄積ボール131および冷熱エネルギ蓄積ボール132は、エネルギ蓄積箱内に冬季および夏季で交互に載置される。詳細には、冬季には、相転移温度が58℃、相変化潜熱が260kj/kgである温熱エネルギ蓄積ボールが利用される。夏季には、相転移温度が11℃、相変化潜熱が110kj/kgである冷熱エネルギ蓄積ボールが利用される。
【0028】
また、システムは水ポンプを介して温水供給プール41に閉ループ連結される補助温水ボイラ6を含む。
【0029】
実施に際して、太陽熱収集装置2はユーザ端末5に連結されると共に、温熱源蓄積タンク11に閉ループ連結される。
【0030】
温熱源蓄積タンク11および冷熱源蓄積タンク12の給水管には、フィルタ式消毒装置(図示なし)が設けられる。
【0031】
本実施例において、冷却ユニット
3は、非電気臭化リチウム吸収式冷却装置を利用する。また、温度センサTE及び液面検出装置LEが温熱源蓄積タンク11、冷熱源蓄積タンク12、温水供給プール41、冷水供給プール42に載置されており、全ての水ポンプには電磁弁80が設けられる。
【0032】
本システムは更に、インテリジェント制御ユニット(図示なし)を含む。インテリジェント制御ユニットは温度センサTE、液面検出装置LE、電磁弁に連結されており、温度センサTEおよび液面検出装置LEにより集められた信号に従い電磁弁の開閉を制御することにより、対応する水ポンプを開閉する。
【0033】
図2および
図3を参照して、本発明の作動原理を以下に詳細に説明する。
【0034】
使用に際して、本実施形態のシステム全体は、年間を通じて8ヵ月作動する。夏季の5月から9月までと、翌年11月15日から2月15日までである。夏季には冷熱供給と温熱蓄積が同時に作動し、冬季には温熱供給と冷熱蓄積が同時に作動する。温熱源蓄積タンク11および冷熱源蓄積タンク12は、3〜7日の負荷容量を備える。温水供給プール41および冷水供給プール42は1.5時間の負荷容量を備える。エネルギ蓄積ボールは、4時間の負荷となるように構成される。冬季には温熱エネルギ蓄積ボールがエネルギ蓄積箱内部に載置され、夏季には冷熱エネルギ蓄積ボールが載置される。ユーザ端末5のポテンシャルエネルギが低いならば、低温床放射パネルを主要空気システムに適用可能である。太陽熱収集装置2は、トラフ型集熱装置であってよく、また、太陽光強度が強い場所に置かれる熱式または通常の太陽光真空収集管であってもよい。
【0035】
図2は、冬季の作動条件での本実施形態の作動原理を示す。
図2に示すように、作動工程は以下のとおりである。
【0037】
温度が5℃未満の水が河川または湖から、第1水ポンプ701を介して抜き取られ、次に濾過および消毒装置を通して工業用の水質基準に達するように濾過および消毒された後に、冷熱源蓄積タンク12に搬送される。装備された液面測定装置LEで最高水位が観察されると、第1水ポンプ701は作動を停止する。冷熱源蓄積タンク12の水は夏季に使用するために貯蔵される。
【0039】
昼間作動させる前に、電磁弁B/E/X/W/Kを閉鎖すると共に、電磁弁A/D/Fを開放させて、第2水ポンプ702を始動させる。温熱源蓄積タンク11から45℃〜60℃の水を抜き取り、その水を温水供給プール41に搬送して貯蔵する。装備された液面測定装置LEで最高水位が観察されると、第2水ポンプ702の作動を停止する。作動の間に、電磁弁Aを閉鎖すると共に電磁弁X/Yを開放させて、第2水ポンプ702を停止させる。第3水ポンプ703を始動させて温水供給プール41から水を抜き取り、その水をユーザ端末5へ搬送して加熱する。温水供給プール41内の水温が使用者の要件に達していないならば、電磁弁Fを閉鎖すると共に電磁弁EおよびH/J/Kを同時に開放し、水をユーザ端末5の出水口からトラフ型集熱装置2へ搬送して熱交換を行う。高温の水を温水供給プール41の水と混合することにより、使用者の要件を満たす。水温要件を満たした後に、電磁弁Eを閉鎖し、電磁弁Fを開放し、電磁弁H/J/Kを閉鎖して、システムを継続してサイクル作動させる。作動期間後、温水供給プール41内の水温が温度要件を満たさない時には、同時に電磁弁Fを閉鎖し、電磁弁Eを開放し、電磁弁H/J/Gを開放する。正常なシステム作動を行うために、上記工程を繰り返す。また、トラフ型集熱装置2は、昼間、温熱エネルギ蓄積ボール131と熱交換を行う。冬季には、温熱エネルギ蓄積ボールの相転移温度は45℃〜58℃に設定される。作動の間に、第2水ポンプ702を始動させて水を温熱源蓄積タンク11から太陽熱収集装置2へ汲み上げ、水を50℃に加熱し、次に、電磁弁Uを開放して50℃の水をエネルギ蓄積箱13へ汲み上げる。熱交換後、電磁弁Vおよび第4水ポンプ704を開放して、45℃の水を太陽熱収集装置2へ戻し、これにより循環が形成される。温熱源蓄積タンク11で水を加熱する必要があるならば、第2水ポンプ702を始動させて、水を温熱源蓄積タンク11から太陽熱収集装置2へ汲み上げ加熱し、更にその水を温熱源蓄積タンク11へ戻す。
【0040】
夜間には、システムの正常作動を確実に行うために、温熱エネルギ蓄積ボール131と季節エネルギ蓄積水のみが使用されてよい。熱エネルギ蓄積ボールの容量は、最大負荷が4時間となるように設定される。正常な昼間の作動方法に従い夜間作動を開始し、温水供給プール41の水温が使用者の要件に達し得ない時には、電磁弁Dを閉鎖し、電磁弁Bを開放して、ユーザ端末5の出水口から水をエネルギ蓄積箱13へ流出させて熱交換を行う。温熱エネルギ蓄積ボール131の相転移温度は45℃〜58℃であり、水温が40℃よりも低い水が熱エネルギ蓄積箱13を通過する時、温熱エネルギ蓄積ボール131は熱を解放して液体から固体へ変換する一方、水温は40℃から45℃よりも高温へ上昇し、水は第5水ポンプ705を介して温水供給プール41へ流入し、システムのサイクルが完成する。
【0041】
温熱エネルギ蓄積ボール131によって温度要件が満たされない時には、他の全ての電磁弁を閉じた状態で電磁弁A/Sを始動させる。第2水ポンプ702を始動させ、温熱源蓄積タンク11から水を汲み上げてユーザ端末5に直接供給し、使用済みの水を直接環境へ排出する。
【0042】
図3は夏季の作動条件下での実施例の作動原理を示す。
図3に示すように、作動工程は以下のとおりである。
【0043】
蓄熱工程
温度が30℃よりも高い水が河川または湖から第6水ポンプ706を介して抜き取られ、次に濾過消毒装置を通して工業用の水質基準に達するように濾過および消毒された後に、温熱源蓄積タンク11に搬送される。装備された液面測定装置LEで最高水位が観察されると、第6水ポンプ706は作動を停止する。温熱源蓄積タンク11の水温を上昇させるために、温熱源蓄積タンク11内の30℃の水を第7水ポンプ707を介して太陽熱収集装置2に汲み上げ85℃〜95℃に加熱し、次に、温熱源蓄積タンク11へ戻し、その中の30℃の水と混合する。水温が60℃に達すると、温度センサTEを介して電磁弁へ信号が送信されて、第7水ポンプ707が閉じられ、熱損失に起因して温熱源蓄積タンク11内の水温が50℃まで低下した時に、冬季の使用要件を満たすために温熱源蓄積タンク11内の水温を60℃に保持するのを保証するために、第7水ポンプ707を再始動させる。
【0044】
冷却工程
昼間作動を開始する前に、第2水ポンプ702を始動させる。30℃の水を温熱源蓄積タンク11から抜き取り、熱交換を行うために太陽熱収集装置2へ搬送し、次に水温が95℃に達した時に、その水を貯蔵するために温水供給プール41へ搬送する。第2水ポンプ702は、装備された液面測定装置で最高水位が観察されると作動を停止する。太陽エネルギの不足のために水温が95℃に達し得ない場合は、補助温水ボイラ6を介して並行加熱が行われて、水温を95℃以上に上昇させる。第8水ポンプ708を同時に始動させて、冷熱源蓄積タンク12内の温度が10℃未満の水を汲み上げ、水がユーザ端末5を通りエネルギ蓄積箱13へ流入した後に、第9ポンプ709を始動させて、冷水を冷水供給プール42へ搬送して貯蔵する。装備された液面測定装置LEで最高水位が観察されると、第8水ポンプ708および第9水ポンプ709の作動を停止させる。作動開始時に、第10水ポンプ710を始動させて、温水供給プール41から温度が95℃よりも高い水を、冷却用熱源としての臭化リチウム冷却装置3へ汲み上げる。冷水供給プール42からの水を汲み上げて、温度が7℃の冷水を第11ポンプ711を介してユーザ端末5へ準備する。この時点で、電磁弁R/L1/Pが開放された状態で電磁弁M/N/O/L2は閉鎖されており、ユーザ端末5からの水は臭化リチウム冷却装置3に戻る。また、冷房負荷が比較的小さい昼間には、臭化リチウム冷却装置3により準備された温度が7℃の冷水は、冷熱エネルギ蓄積ボール132と熱交換を行う。冷熱エネルギ蓄積ボール132の相転移温度は11℃である。温度7℃の冷水がエネルギ蓄積箱13を通過すると、冷熱エネルギ蓄積ボール132は放熱し、夜間使用するように冷水を液体から固体へ変化させる一方で、水温は7℃〜10℃から12℃〜15℃に上昇する。作動中、第11水ポンプ711は電磁弁Nが開くとともに始動する。エネルギ蓄積箱13内で熱交換が完了した後、電磁弁Qを開き、水を第12水ポンプ712を介して臭化リチウム冷却装置3へ戻す。
【0045】
冷熱エネルギ蓄積ボール132および季節エネルギ蓄積水のみを使用して、夜間の正常なシステム作動を確実に行う。冷熱エネルギ蓄積ボール132の容量は、4時間の最大負荷となるように設定される。夜間作動時に、冷水供給プール42内の水が温度要件を満たし得ない場合には、電磁弁Oを開き、ユーザ端末5からの温度15℃の戻り水をエネルギ蓄積箱13へ流入させて、熱交換を行う。冷熱エネルギ蓄積ボール132の相転移温度は11℃であり、15℃の水がエネルギ蓄積箱13へ流入した時に、冷熱エネルギ蓄積ボール132は水の熱を吸収して固体から液体へ変化する一方で、水温は15℃から10℃に低下し、且つ、水は第9水ポンプ709を介して冷水供給プール42へ搬送されることにより、システムのサイクルが完成する。
【0046】
冷熱エネルギ蓄積ボール132によって要件を満たし得ない場合には、他の全ての電磁弁を閉じた状態で電磁弁LZ/Tを開く。第8水ポンプ708を始動させて、冷熱源蓄積タンク12からの水を汲み上げてユーザ端末5に直接供給し、使用済みの水は環境へ直接排出される。
【0047】
従来技術と比較すると、本発明の効果としては、低ポテンシャルエネルギの用途の新しい概念が提案されており、即ち、太陽熱エネルギと人工的に組み合わせた新しい資源としての蓄積された季節エネルギが使用されると共に、高い熱容量により顕熱および潜熱で蓄積するためのキャリアとして地表水が使用されることにより、季節的な使用が可能となる。これは、エンジニアリングにおける低ポテンシャルエネルギの使用という新しい試みであり、世界中で未だ先例はない。本発明の主な特徴は以下のとおりである。
【0048】
夏季には日照がより強いことを考慮して、冷却用熱源としてトラフ型集熱装置を利用して太陽熱エネルギを回収する。
【0049】
冬季には、加熱量を保証するために、エネルギ蓄積水の熱不足を補うべく太陽エネルギを最大限利用する。
【0050】
夜間、太陽が出ていない時には、建築物の冷却および加熱工程は、昼間に蓄積されたエネルギを吸収および開放するエネルギ蓄積ボールによって確実に行われる。温熱蓄積タンクまたは冷熱蓄積タンク内のエネルギ蓄積水はまた、太陽エネルギが不足する場合に、システムの正常な加熱および冷却を保証するために使用されてもよい。
【0051】
夜間にエネルギ蓄積ボールによって開放されたエネルギを昼間に取り戻して、夜間の正常な作動を確実に行う。エネルギ蓄積ボールはボイラおよび冷却装置として機能する。
【0052】
安全性を高めるために、システム用予備機器として、補助温水ボイラを利用する。
【0053】
システムのエネルギ多様化への適応性の一実施形態として、周囲に既存する工業用排熱供給機器を利用して太陽熱収集装置と置き換えてもよい。
【0054】
インテリジェント制御をシステム全体に使用して、気候変動に伴い快適な生活環境をもたらすとともに省エネルギを達成する。
【0055】
太陽エネルギを「蓄積季節エネルギ」と組み合わせた再生可能な自然エネルギを使用する革新的なシステム標準により、従来型の空調装置や地熱ポンプおよびウォータヒートポンプを備えた空調装置システムと比べて、省エネや社会的な利益といった点での貢献が著しい。
【0056】
世界中でC0
2の排出が非常に多く、統計によると、地球の気温は毎年最大で1℃も上昇している。従来型の独立した空調装置と比較して、本発明は、1平方メートル当たり11Kg/m
2もCO
2の排出量を減少させることができ、中国に存在する建築物の平均排出量に略等しいことから、長江流域の中国で最も発展した地域の一つである「夏暑く冬寒い」地域で特に、この能力は顕著である。中国では新しい建築物の総面積は毎年20億平方メートルも増加している。「夏暑く冬寒い」地域で新しい建築物の面積が5億平方メートル増加し、そのうちの2億平方
メートルに本構想が適用されるとすると、CO
2の排出量を22×108kgも削減することができ、地球の気温を低下させることに貢献する。
【0057】
都市部のヒートアイランド現象は、都市部の気温が周辺郊外の気温よりもかなり高いという現象である。都市部では気温が高い一方で、郊外では温度変化が殆どないことから、都市部は、地表面温度マップで海上の島のようになり、都市部のヒートアイランドであると盛んに叫ばれている。この影響により、都市部の毎年の平均気温は郊外よりも、1℃またはそれよりも高くなっている。夏季には、都市部での局所的な気温は、時として6℃も高い。この影響の理由は多様化しているが、主に独立した空調装置の劇的な増加によるものである。例えば1997年に上海では、100戸当たり独立した空調装置は62.5台であったが、今では300台に達している。夏季には、これらの空調装置から大量の熱が放出されることにより、都市部のヒートアイランド現象を悪化させている。理論上では、この影響は一年中あるが、特に夏の暑い日には、人々の生活や消費に大きく影響するであろう。この問題を解決するために、人々は空調装置の出力を増加させてきたが、ヒートアイランド現象を悪化させているだけであり、我々はこのような悪循環を日々見ている。新しい建築物には独立した空調装置は適さないので、従来型の空調装置に代えて、本構想で端末として低温床放射パネルを使用することにより、空調装置からの放熱を減少させて、都市部のヒートアイランド現象を緩和する。
【0058】
本発明では空調装置が存在しないので、エネルギ消費は主に水ポンプによるものである。エネルギ蓄積システムとして、監視システムを除いて、殆どの副システムは連続作動せず、またシステム全体は全てインテリジェント制御されることから、多くの電力を節約する。従来型の独立空調装置に比べて、建物面積および空調装置面積夫々について、30W/m
2および60W/m
2の電力を節約する。本システムが「夏暑く冬寒い」地域で2億平方メートルの新しい建築物に適用されるならば、毎年節約される電力は6×106キロワットに達し、これは600万MWの10機の発電設備により作られる電力に等しいことから、この効果は極めて優れたものである。
【0059】
また、本発明は、5月から10月の間は室内温度を25℃±1℃に、また12月から2月の間は18℃±1℃に保ち、また湿度を60%±10%に保つことにより、人々を極めて快適にする。本明細書で言及する価値のあることとしては湿度制御があり、この地域は水が豊富であり、湿度が高く80%を超えることも頻繁にあることから、汗を蒸発させることが難しく、これにより人々は不快な蒸し暑さを感じている。冬季は湿度が73%〜83%と高い。また、冬季には日照が殆ど無く、水蒸気が人体から熱を奪うことから、とても冷えて寒い。湿度を制御することができるならば、人々はいまよりもずっと快適さを感じることになる。従来型の分割空調装置および中央集中空調装置のいずれにおいても、新鮮な空気の量に注目していないことを考慮すると、本システムの新鮮な空気の量は仕様のものの3倍であり、人々は空調装置を長期間使用しても不快さを感じることがない。また頭をスッキリさせ、空調装置により気分がすぐれないということはなくなる。概して、本システムは我々の社会に多大に貢献するだけでなく、実際の利益を伴い利用者の生活を向上させる。
【0060】
本発明は特に「夏暑く冬寒い」地域に適するものであり、そこでの生活をより良くし、従来型の空調装置によって引き起こされる環境汚染を回避し、且つ昨今の省エネおよび排出削減に大きな利益をもたらす。
【0061】
要約すれば、本発明は、周囲の環境からの多大なエネルギの季節的な温熱および冷熱蓄積による大規模なエンジニアリングのための大量のエネルギ蓄積という問題を解消しようというものであり、全体的に大規模エンジニアリングに適するとともに、ヒートポンプを伴うことなく、太陽熱エネルギを季節エネルギの蓄積と組み合わせることにより、顕著な省エネ効果をもたらす。本システム標準は世界の技術の先駆けとなるものであり、中規模および大規模プロジェクトにおいて加熱や冷却に使用される低ポテンシャルエネルギを備えた再生可能エネルギへの再生不能エネルギからの置換を導くものである。
【0062】
本発明の実施形態について図示および説明してきたが、当該技術分野に属する者には明らかなように、本発明のより広い態様において、本発明から逸脱することなく変形や変更が行われてよく、従って、添付の請求の範囲の目的とするところは、本発明の真の趣旨および範囲に入るものとしてそのような変形や変更は含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1 エネルギ蓄積装置
2 太陽熱収集装置
3 冷却ユニット
4 給水装置
5 ユーザ端末
11 温熱源蓄積タンク
12 冷熱源蓄積タンク
13 エネルギ蓄積箱
41 温水供給プール
42 冷水供給プール
131 温熱エネルギ蓄積ボール
132 冷熱エネルギ蓄積ボール