特許第6078082号(P6078082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078082
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】トリフルオロエチレンの安定な組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 21/18 20060101AFI20170130BHJP
   C07C 17/42 20060101ALI20170130BHJP
   C07C 17/23 20060101ALN20170130BHJP
【FI】
   C07C21/18
   C07C17/42
   !C07C17/23
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-555192(P2014-555192)
(86)(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公表番号】特表2015-509926(P2015-509926A)
(43)【公表日】2015年4月2日
(86)【国際出願番号】EP2013051852
(87)【国際公開番号】WO2013113785
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】12153604.9
(32)【優先日】2012年2月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】アンテヌッチ, エマヌエーラ
【審査官】 緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05892135(US,A)
【文献】 特開平02−169035(JP,A)
【文献】 特開昭63−093737(JP,A)
【文献】 英国特許第00698386(GB,B)
【文献】 特表平08−511521(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/008695(WO,A1)
【文献】 LEUNG H. O. et al.,J. PHYS. CHEM. A,2010年,114,pp.10975-10980
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 21/18
C07C 17/42
C07C 17/23
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルオロエチレン:HClのモル比10:90〜63:37のトリフルオロエチレン及び塩化水素(HCl)と
トリフルオロエチレンの重合又は不均化を促進しない成分から選択される任意選択的な追加的な成分と
からなる液体状又は圧縮気体状の組成物であって、前記組成物が気体の場合圧力が0.50〜5.00MPaである組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の液体状組成物。
【請求項3】
トリフルオロエチレン:HClの前記モル比が50:50以下である、請求項2に記載の液体状組成物。
【請求項4】
少なくとも20重量%の合計重量のトリフルオロエチレン及びHClを含む、請求項2又は3に記載の液体状組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の圧縮気体状組成物。
【請求項6】
トリフルオロエチレン:HClの前記モル比が40:60〜60:40である、請求項5に記載の圧縮気体状組成物。
【請求項7】
少なくとも50重量%の合計重量のトリフルオロエチレン及びHClを含む、請求項5又は6に記載の圧縮気体状組成物。
【請求項8】
少なくとも95重量%の合計重量のトリフルオロエチレン及びHClを含有し、0.50〜2.00MPaの圧力を有する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の圧縮気体状組成物であって、トリフルオロエチレン:HClの前記モル比が50:50〜60:40である圧縮気体状組成物。
【請求項9】
少なくとも95重量%の合計重量のトリフルオロエチレン及びHClを含有し、0.50〜5.00MPaの圧力を有する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の圧縮気体状組成物であって、トリフルオロエチレン:HClの前記モル比が40:60〜50:50である圧縮気体状組成物。
【請求項10】
10:90〜63:37のモル比トリフルオロエチレン及びHClと
トリフルオロエチレンの重合又は不均化を促進しない成分から選択される任意選択的な追加的な成分と
からなる気体状組成物を圧縮して液体又は0.50MPa〜5.00MPaの圧力の圧縮気体を得る工程を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
【請求項11】
気体状のトリフルオロエチレン供給物と気体状のHCl供給物を、0.5MPa未満の圧力で混合することによって、圧縮される気体状組成物を製造する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記0.5MPa未満の圧力が大気圧である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
任意の任意選択的な追加的な成分が、トリフルオロエチレン供給物及び/又はHCl供給物のいずれかの中に存在するか、又はトリフルオロエチレンとHClとの混合物とその製造後に混合される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
水素の存在下、クロロトリフルオロエチレンの気相触媒的水素化脱塩素反応によってトリフルオロエチレンとHClとからなる気体状組成物を製造する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
水素の存在下、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンの気相触媒的水素化脱塩素反応によってトリフルオロエチレンとHClとからなる気体状組成物を製造する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
組成物を液相に又は0.50MPa〜5.00MPaの圧力の圧縮気体相に維持する工程を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物を貯蔵又は輸送する方法。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物を含有する容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年2月2日に出願された欧州特許出願第12153604.9号明細書に対する優先権を主張し、この出願の全内容は、あらゆる目的について参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、トリフルオロエチレンと塩化水素との組成物に関し、特には爆燃に関して安定な、気体状及び液体状の組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
トリフルオロエチレン(CHF=CF)は、様々なフッ化ポリマーの合成でモノマーとして用いられている既知の化合物である。トリフルオロエチレンは室温で気体である。トリフルオロエチレンの貯蔵及び輸送は、トリフルオロエチレンが激しく爆燃し易いという点で安全性に関する多くの問題を有している(例えばFEIRING, A.E., et al.Trifluoroethylene deflagration.Chemical&Engineering News1997, vol.75, no.51, p.6.参照)。
【0004】
トリフルオロエチレンは、多量の熱を放出しながら不均化し、それによって著しい圧力の上昇及び爆発を引き起こすことが知られている。不均化反応は自発的に起こるトリフルオロエチレンの重合によって誘発され得る。このため、一般的に、リモネンなどの重合抑制剤がトリフルオロエチレンに対して5重量%以下の量で添加される。しかし、重合抑制剤はトリフルオロエチレンを安定にするものではなく、これらは潜在的な着火源を取り除くにすぎない。したがって、トリフルオロエチレンの貯蔵及び輸送に関する爆燃の危険性を取り除くためには既知の重合抑制剤を存在させることだけでは十分でない(FEIRING, A.E., et al.Trifluoroethylene deflagration.Chemical&Engineering News1997, vol.75, no.51, p.6参照)。
【0005】
トリフルオロエチレンは容器中で十分加圧することで液化可能であるが、液体と平衡状態にある気体の爆発の危険性のため、液体としてトリフルオロエチレンを貯蔵及び輸送することは一般的に避けられている(重合抑制剤はトリフルオロエチレンよりも揮発性が低いため、気相には重合抑制剤が十分には含まれていない場合がある)。そのため、予防措置として、液体状トリフルオロエチレンは通常−30℃未満に維持され、その量は工程に必要とされる最低限に維持される。他方で、液体の爆燃は通常気相の着火後のみに起こり得ることから、液相と平衡状態にある安定な気相は液相自体の着火の危険性を低減させるであろう。
【0006】
気相のトリフルオロエチレンを用いた研究から、0.35MPa未満の圧力で不均化の危険性が減ることが示されている。この値よりも圧力が増加するにつれ、不均化の危険性及びその結果としての爆燃の危険性が増大する。この理由のため、トリフルオロエチレンは一般的に0.30MPaを超えない圧力で貯蔵され、取り扱われ、輸送される。そのため、体積当たりのトリフルオロエチレン輸送量は非常に制限され、この材料のコストに多大な影響を与えている。トリフルオロエチレンの貯蔵及び輸送に関する安全性、及びその結果としてのコストの問題から、トリフルオロエチレンから得ることができるポリマーの潜在的な経済的利益にもかかわらず、モノマーとしてのトリフルオロエチレンの利用が限定されている(例えばWANG, Z., et al. High dielectric VDF/TrFE/CTFE terpolymers prepared by hydrogenation of VDF/CTFE copolymers:synthesis and characterization Macromolecules.2006, vol.39, p.4268−4271)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、トリフルオロエチレンを安全に貯蔵及び輸送する手段が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
トリフルオロエチレンと塩化水素(HCl)との特定の組成物が、0.35MPaより高い圧力に圧縮された場合でも爆燃に関して安定であり、そのためこれらを液体として、又は5.00MPaまでの圧力の圧縮された気体として、安全に貯蔵し、取り扱い、輸送することが可能であることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
したがって本発明の第1の目的は、トリフルオロエチレンとHClとを、トリフルオロエチレン:HClのモル比10:90〜63:37で含む、液体状組成物又は圧縮気体状組成物であって、組成物が気相の場合圧力が0.50〜5.00MPaである組成物である。
【0010】
トリフルオロエチレン:HClのモル比は、通常20:80以上であり、好ましくは25:75以上であり、更には30:70以上である。
【0011】
有利な組成物は、トリフルオロエチレン:HClのモル比が40:60〜60:40のものである。トリフルオロエチレン:HClのモル比が50:50のものが特に有用な組成物であることが見出された。
【0012】
トリフルオロエチレン:HClのモル比が50:50以下の組成物は、室温より高い温度でさえも、例えば45℃でさえも0.50〜5.0MPaの圧力の範囲全体にわたって非常に安定であることが明らかになった。
【0013】
トリフルオロエチレン:HClのモル比が50:50と63:37の間の組成物について、少なくとも1.80MPaまでの圧力まで安定であることが試験された。
【0014】
トリフルオロエチレン:HClのモル比が63:37を超える組成物は、特に気相では、爆燃に関して本発明の組成物と同様の安定性は示さなかった。
【0015】
トリフルオロエチレンとHClに加え、本発明の組成物は他の成分を含むこともできる。典型的なこれらの追加的な成分は、トリフルオロエチレンの重合又は不均化を促進しない成分から選択される。前記追加的な成分は、組成物の物理状態によって異なる性質のものとすることができる。例えば組成物は、1〜5重量%の、リモネンなどの既知の重合抑制剤を含有していてもよい。本発明の圧縮気体状組成物用の追加的な成分の例としては特には窒素などの不活性ガスが挙げられる。
【0016】
組成物は、上で規定したモル比のトリフルオロエチレンとHClとを、いかなる合計重量で含有していてもよい。組成物はトリフルオロエチレンとHClとを、5、10、20、更には30重量%の合計重量で含有していてもよい。典型的には、トリフルオロエチレンとHClは、組成物の少なくとも50重量%存在する。好ましくは、トリフルオロエチレンとHClは、組成物の少なくとも80重量%、より好ましくは組成物の少なくとも90重量%、更に好ましくは少なくとも95重量%、存在する。有利には、トリフルオロエチレンとHClの合計重量は、組成物の98重量%以上であってもよい。組成物は、爆燃の危険性なしにトリフルオロエチレンとHClとから構成されることもできる。
【0017】
本発明の組成物は、液体又は圧縮気体である。第1の実施形態では組成物は液体である。用語「液体」は、本明細書においては、その融点未満に液体状組成物を冷却することによって得られる固体状組成物も包含するように使用される。
【0018】
液体状組成物は、トリフルオロエチレンとHClとを、少なくとも20重量%、典型的には少なくとも50重量%、の合計重量で含有し、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、更に好ましくは少なくとも95重量%含む。
【0019】
液体状組成物中、トリフルオロエチレン:HClのモル比は、典型的には少なくとも10:90、好ましくは少なくとも30:70、より好ましくは少なくとも40:60である。トリフルオロエチレン:HClのモル比は、典型的には60:40以下、より好ましくは50:50以下である。
【0020】
この第1の実施形態のある態様では、液体状組成物は気相と平衡状態にある。HClの蒸気圧はトリフルオロエチレンの蒸気圧よりも高く、そのため液体状組成物と平衡状態にある気相は一般的にHClリッチであり、液体/気体系の爆燃の危険性を更に低減させる。
【0021】
本発明の第2の実施形態では組成物は0.50〜5.00MPaの圧力の圧縮気体である。好ましくは、トリフルオロエチレンの分圧は2.50MPaを超えない。
【0022】
トリフルオロエチレン:HClのモル比が50:50以下の圧縮気体状組成物が、0.80MPaより大きい、1.00MPaより大きい、1.50MPaより大きい、2.00MPaより大きい、3.00MPaより大きい、4.00MPaより大きい、などの0.50〜5.00MPaの圧力で安定であることが見出された。
【0023】
トリフルオロエチレン:HClのモル比が50:50〜63:37の圧縮気体状組成物について、1.80MPaまで試験され、その圧力まで安定であることが見出された。
【0024】
圧縮気体状組成物中のトリフルオロエチレン:HClのモル比は10:90以上であり、通常20:80以上であり、好ましくは25:75以上であり、より好ましくは30:70以上であり、更に好ましくは40:60以上である。
【0025】
典型的には、圧縮気体状組成物はトリフルオロエチレンとHClとを、少なくとも50重量%の合計重量で含有し、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、更に好ましくは少なくとも95重量%含む。圧縮気体状組成物は、トリフルオロエチレンとHClとを99重量%以上の合計重量で含有していてもよく、更に有利にはHClとトリフルオロエチレンとから構成されていてもよい。
【0026】
有用な圧縮気体状組成物は、少なくとも95重量%、好ましくは99重量%以上の合計重量のトリフルオロエチレンとHClとを含有し、0.50〜2.00MPa、好ましくは1.00〜1.80MPaの圧力を有しており、トリフルオロエチレン:HClのモル比が50:50〜60:40の組成物である。
【0027】
特に有利な組成物は、少なくとも95重量%、好ましくは99重量%以上の合計重量のトリフルオロエチレンとHClとを含有し、0.50〜5.00MPa、好ましくは2.00〜5.00MPaの圧力を有しており、トリフルオロエチレン:HClのモル比が40:60〜50:50の組成物である。
【0028】
本発明の組成物は本質的に幅広い範囲の圧力及び組成で安定であることから爆燃の危険性が取り除かれると共に、上で詳述した組成物は、現在(0.30MPaの圧力で)貯蔵及び輸送されている量よりも多い体積当たりの正味量のトリフルオロエチレンの貯蔵及び輸送を可能にすることを理解することができる。
【0029】
本発明の第2の目的は、モル比10:90〜63:37でトリフルオロエチレンとHClとを含む気体状組成物を圧縮して、液体又は0.50MPa〜5.00MPaの圧力の圧縮気体を得る工程を含む、本発明の組成物の製造方法である。好ましくは、トリフルオロエチレンの分圧は本方法中いつでも2.50MPaを超えない。この方法は、温度を室温よりも下げて液体状組成物を得る工程を任意選択的に含有していてもよい。
【0030】
以下「気体状組成物」という表現は、0.50MPa未満の圧力で、トリフルオロエチレンとHClとを10:90〜63:37のモル比で含む気体状の組成物を示すことを意図する。
【0031】
危険物を圧縮するための、当該技術分野で既知のいずれの好適な方法及び装置も、本発明の組成物の製造方法を行うために用いることができる。
【0032】
圧縮される気体状組成物を製造するためにいずれの方法を用いてもよい。
【0033】
ある実施形態では、気体状のトリフルオロエチレン供給物と気体状のHCl供給物を、0.5MPa未満の圧力、典型的には大気圧(0.10MPa)で規定モル比で混合し、次いで圧縮することで本発明の組成物が得られる。組成物のいずれの追加的な成分も、トリフルオロエチレン供給物及び/又はHCl供給物のいずれにも存在させることができ、あるいはトリフルオロエチレンとHClとの混合物の製造後に、トリフルオロエチレンとHClとの混合物と混ぜることもできる。
【0034】
本方法の別の実施形態では、圧縮される気体状組成物は、トリフルオロエチレン合成のための気相触媒プロセスで得られる生成物である。トリフルオロエチレン合成のための様々な気相触媒プロセスが公知である。
【0035】
トリフルオロエチレン合成のためのクロロトリフルオロエチレンの触媒的水素化脱塩素反応は、例えば国際公開第2012/000853A号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)1/5/2012に開示されている。このような方法では、クロロトリフルオロエチレンと水素は、不均一触媒、典型的にはパラジウム又は白金を含む触媒の存在下で気相で反応し、トリフルオロエチレンを生成する。HClも、トリフルオロエチレンとの理論上のモル比50:50で反応の副生成物として生成する。したがって、上述の方法から発生する排ガスは、未反応のクロロトリフルオロエチレン、水素、反応供給物中に任意選択的に存在する不活性ガス、及び工程中に付加的に生成する副生成物を除去するために十分に精製した後、本発明の組成物の製造に都合よく用いることができる。クロロトリフルオロエチレンの水素化脱塩素反応は一般的に減圧下又は大気圧下で行われるので、排ガスは典型的には非圧縮状態にある。トリフルオロエチレンとHClとのモル比は従来の手段によって所望の値に調整することができる。
【0036】
したがって、第1の好ましい態様では、本発明の組成物を製造するための方法は、水素の存在下でクロロトリフルオロエチレンの気相触媒的水素化脱塩素反応によってトリフルオロエチレンとHClとを含む気体状組成物を製造する工程と、トリフルオロエチレン:HClのモル比を10:90〜63:37、好ましくは40:60〜60:40範囲になるように調整する任意選択的な工程と、前記気体状組成物を圧縮して0.50MPa〜5.00MPaの圧力の液体又は圧縮気体を得る工程と、を含む。
【0037】
1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンと水素とが不均一触媒の存在下で気相で反応する、トリフルオロエチレン合成のための別の気相触媒プロセスも公知である(例えばEP 459463A(DAIKIN INDUSTRIES LIMITED)12/4/1991参照)。この方法は、トリフルオロエチレンと副生成物としてのHClを理論上のモル比25:75で与える。この方法は典型的には大気圧下で行われるため、流出ガスは、未反応の試薬及び副生成物を除去する精製工程の後、本発明の組成物を与えるために圧縮される必要がある。例えば当該技術分野で公知の従来の手段を用いることでHClを部分的に除去してトリフルオロエチレンの比率を上げることによって、組成物中のHClの量を任意選択的に調整することができる。
【0038】
したがって第2の好ましい態様では、本発明の組成物を製造するための方法は、水素の存在下で1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンの気相触媒的水素化脱塩素反応によってトリフルオロエチレンとHClとを含む気体状組成物を製造する工程と、トリフルオロエチレン:HClのモル比を10:90〜63:37、好ましくは25:75〜60:40範囲になるように調整する任意選択的な工程と、前記気体状組成物を圧縮して液体又は0.50MPa〜5.00MPaの圧力の圧縮気体を得る工程と、を含む。
【0039】
本発明の第3の目的は、組成物を0.50〜5.00MPaの圧力で、任意選択的には室温未満で、液相に又は圧縮気相に維持する工程を含む、第1の目的の組成物の貯蔵又は輸送の方法である。トリフルオロエチレンの分圧は、好ましくは2.50MPaを超えない。
【0040】
本明細書において用語「貯蔵」は、例えば分単位又は時間単位の短期間から、例えば週単位又は月単位の長期間までの、あらゆる時間の長さの間、組成物を貯蔵することを示すために使用される。
【0041】
本発明との関係においては、用語輸送とは、例えば同じ化学プラント内の1つの装置から別の装置へなどの短距離から、例えばある地理的な場所から別の場所へなどの長距離まで、あらゆるタイプの輸送のことをいう。
【0042】
貯蔵及び輸送はいずれのタイプの適切な容器でも行うことができる。従って、本発明の更なる目的は、第1の目的の組成物を含有する容器である。
【0043】
容器は様々な形状及び機能を有していてもよい。これはシリンダー、タンクローリー、鉄道タンクなどの、貯蔵タンク又は可搬型コンテナとすることができる。容器は、例えばある化学プラントのいずれかの部分から別の部分へと繋がる配管であってもよい。また、容器はいずれかの化学反応装置又は処理装置であってもよい。
【0044】
容器はHClと接触するのに適した材料で作られる必要があり、加えて容器は本発明で必要とされる圧力に耐える適切な方法で作製される必要がある。これらの要求は腐食性及び爆発性の物質を安全に取り扱う分野の当業者に周知である。
【0045】
本発明の組成物に関して上で規定された定義及び選択は、この組成物の製造方法、組成物を貯蔵及び輸送するための方法、及び前記組成物を含有する容器に適用される。
【0046】
その目的が単に例示であり、本発明の範囲を限定しない以下の実施例を参照することにより、今、本発明をより詳しく説明する。
【0047】
参照により本明細書に援用されている特許、特許出願および刊行物のいずれかの開示が、万一、用語を不明瞭にしかねないほどに本記載に抵触する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0048】
試験手順
気体状組成物を用いた試験は、測定範囲0Mpa〜10MPaのタイプKELLER PA−10の圧電型圧力変換器と温度記録検出器とを備えた3dm耐圧性ステンレス鋼製容器を用いて、欧州規格EN1839「気体及び蒸気の爆発限界に関する規定」に従って行った。変換器によって初期圧力(p)及び着火後の圧力−時間−履歴を記録した。
【0049】
液体状組成物の反応性は、化学品の分類及び表示に関するUN世界調和システム(GHS、第4版、UN文書「ST/SG/AC.10/C.4/2010/9」及び「ST/SG/AC.10/C.4/2010/10」)のチャプター2.2「可燃性ガス」の改訂版に従って試験した。液面より約5mm上に配置した着火源を有する1dm耐圧性試験容器に試験物質を詰めた。
【0050】
両方のタイプの試験について、着火源は容器の中央に配置したフュージング(爆発)ワイヤー型点火器であった。点火器は、両端に直径0.12mmの紅砒ニッケル鉱ワイヤーを有している、5mm隔てた2つの絶縁体電極から構成されていた。ワイヤーが溶融し、その後最大で供給電圧の半減時間まで(0.01秒)電極間で電気アークが燃えた。試験には3.8msの燃焼時間が選択された。これは全ての存在する着火源のほぼ90%を占める、約15J〜23Jの着火エネルギーに相当する。
【0051】
安全性及び以下の実施例で使用された用語は次のように定義される。
初期圧力(p):着火前の密閉爆発容器中の圧力。
爆発圧力(pex):密閉爆発容器中での反応による着火の後に生じる圧力の最大値。
爆発圧力比(pex/p)爆発圧力比は着火の基準として使用される。pex/p>1.1であれば反応は爆発として定義される。
【0052】
気相の純粋なトリフルオロエチレン安定性及び液体トリフルオロエチレン安定性の圧力限界
減圧した着火容器にトリフルオロエチレンを供給して最初の試験圧力にした。
【0053】
約30秒後、平穏状態の気相に着火し、圧力−時間−履歴を記録した。初期圧力は定義された着火基準(pex/p>1.1)に従う爆発が起こらない最も高い圧力が決定されるまで、0.05MPaずつ変化させた。この圧力限界は0.40MPaであることが見出された。これは更に2回の着火によって確認されており、表1の値は3回繰り返した平均である。
【0054】
【0055】
トリフルオロエチレンのような化学的に不安定な気体が液化された場合、点火装置が存在する場合に液相も爆燃可能かどうかの疑問が生ずる。そのため、200mlの液化トリフルオロエチレンが入った1dmの容器中で20℃の温度で更に試験を行った。この温度に対応する蒸気圧は1.98MPaである。着火後、圧力の上昇が検出された。装置の安全圧抜きが圧力を開放した際、系の初期圧力は、0.40MPaの安全な圧力限界よりも3倍以上高かった。系で記録された著しい圧力の上昇から、液相表面での分解は着火の直後に始まったと結論付けることができる。熱の放出のため液体トリフルオロエチレンが気化し、更に表面での分解が生じた。
【0056】
実施例1:トリフルオロエチレン/HCl組成物の安定性
ノズルパイプを用いることによって、トリフルオロエチレンとHClとの混合物を着火容器中に直接用意した。最初のトリフルオロエチレンを、所望の初期圧力で、試験する組成物の所望のモル比に相当する分圧まで、減圧脱気した着火容器に供給した。次いでHClを初期圧力までガスシリンダーから直接入れた。約30秒後、平穏状態の気相に着火し、圧力−時間−履歴を記録した。3.00MPaまでの試験の開始温度は25℃であった。5.00MPaの試験は45℃で行った。結果は表2に報告されている。
【0057】
【0058】
表2のデータは、本発明の組成物の、純粋なトリフルオロエチレンに対して向上した安定性を示している。トリフルオロエチレン/HClの比率が63:37である、最も少ない量のHClを含む組成物は、純粋なトリフルオロエチレンの最大安定圧力よりも少なくとも4倍高い圧力まで安定である(1.80MPa対0.40)。
【0059】
実施例2:モル比50:50の液体トリフルオロエチレン/HCl組成物を用いた平
衡状態での気相の安定性の測定
モル比50:50のトリフルオロエチレンとHClとの液体状組成物を用いた平衡状態での気相の安定性を、タンクを部分的に液体で満たし、連続的に抜き出し、基本手順に従って試験することによって試験した。容器のヘッドスペースに気体が存在する。それぞれの試験用に、ヘッドスペースの気体を着火試験を行うために着火容器に入れた。タンクへの最初の投入量は1Lの総体積の約70%であった。ヘッドスペース中のトリフルオロエチレンとHClのモル分率は試験毎に異なっていた。HClの蒸気圧はトリフルオロエチレンの蒸気圧よりもはるかに高いため、最初の実験ではトリフルオロエチレンのモル分率は50%未満であり、実験ごとに増加すると考えることができる。そのため、実験ごとに着火し易くなっていった。実験から、少なくとも80〜85%までの初期投入量では、ヘッドスペース中の気相は可燃性でないことが示された。これは、タンクからの液体組成物の取り出しなどの操作の安全性を決定するのに重要な情報である。