(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
患者に点滴チューブを介して点滴を行う点滴装置において、点滴の状態を検視できる点滴筒に連通するように前記点滴チューブに接続され、点滴の状態を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された点滴の状態を報知する報知手段と、を備え、
前記検出手段は、前記点滴チューブに連通するように接続され上部から流入した薬液が内部に貯留されるとともに下部から流出させることが可能なフロートケースと、該フロートケースの内部に設けられ前記薬液に浮遊可能なフロートと、前記フロートケースの外部に設けられ前記薬液に浮遊する前記フロートの有無に応じて点滴の状態を検出する光センサと、を有し、
前記フロートは、比重が前記薬液の比重よりも小さい材料からなる浮遊体と、該浮遊体と一体的に設けられて比重が前記浮遊体の比重よりも大きい材料からなる沈錘体とからなり、かつ前記浮遊体と前記沈錘体との合計の比重が前記薬液の比重よりも小さく設定されている点滴状態報知装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の点滴装置では、患者が点滴筒における点滴の状態を検視するため、患者の症状が重篤である場合には、患者が点滴筒における点滴の状態を目視で検視することができないから、看護師が点滴の状態を目視で検視するために、看護師が患者の傍に何度も巡回する必要があり、看護師にとって大きな労力となっていた。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて、患者に点滴チューブを介して点滴を行う点滴装置において、患者又は看護師に点滴の終了を確実に報知することにより、看護師の労力を低減させることができる点滴状態報知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係る点滴状態報知装置11は、患者Pに点滴チューブ3,4,6及び8を介して点滴を行う点滴装置10において、点滴の状態を検視できる点滴筒5に連通するように点滴チューブ4に接続され、点滴の状態を検出する検出手段11aと、検出手段11aにより検出された点滴の状態を報知する報知手段11bと、を備え
、
検出手段11aは、点滴チューブ3に連通するように接続され上部から流入した薬液Sが内部に貯留されるとともに下部から流出させることが可能なフロートケース21と、フロートケース21の内部に設けられ薬液Sに浮遊可能なフロート22と、フロートケース21の外部に設けられ薬液Sに浮遊するフロート22の有無に応じて点滴の状態を検出する光センサ23と、を有し、
フロート22は、比重が薬液Sの比重よりも小さい材料からなる浮遊体22aと、浮遊体22aと一体的に設けられて比重が浮遊体22aの比重よりも大きい材料からなる沈錘体22b,22cとからなり、かつ浮遊体22aと沈錘体22b,22cとの合計の比重が薬液Sの比重よりも小さく設定されている。
【0008】
請求項2の発明は、上記請求項1の点滴状態報知装置11において、報知手段11bは、点滴装置10が設置された病室Rよりも離間したナースステーションSに設置される。
【0010】
請求項
3の発明は、上記請求項
1又は2の点滴状態報知装置11において、フロートケース21は、光センサ23に対して着脱自在に設けられてなる。
【発明の効果】
【0012】
以下に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係る点滴状態報知装置11は、点滴筒5に連通するように点滴チューブ4に接続され、点滴の状態を検出する検出手段11aと、検出手段11aにより検出された点滴の状態を報知する報知手段11bと、を備えるから、検出手段11aが、点滴の状態として、点滴の終了を検出することにより、患者P又は看護師に点滴の終了を確実に報知することができる。ここでは、患者P又は看護師が点滴筒5における点滴の状態を目視で検視することなく点滴の終了を確実に知ることができるから、看護師が患者Pの傍に適切な時期に向かうことができる。したがって、看護師が患者Pの傍に何度も巡回する必要がなくなるから、看護師の労力を低減させることができる。
又、本発明によれば、例えば、フロート22が、フロート22の上端面と薬液Sの液面とが一致するように形成されている場合において、まず、フロートケース21の内部空間21dに薬液Sが満たされているとき、薬液Sの液面がフロートケース21の内部の上端面に位置し、すなわち、フロート22の上端面がフロートケース21の内部の上端面に位置する。このとき、光センサ23の検出範囲D1がフロート22によって完全に覆われていないときは、光センサ23がフロート22がないと判断することによって、点滴の実施中を検出できる。次に、フロートケース21の内部空間21dの薬液Sが減少したとき、薬液Sの液面がフロートケース21の内部の上端面から下降した場所に位置し、すなわち、フロート22の上端面がフロートケース21の内部の上端面から下降した場所に位置する。このとき、光センサ23の検出範囲D1が、フロート22によって完全に覆われているときは、光センサ23がフロート22があると判断することによって、点滴の終了を検出できる。したがって、請求項3の発明によれば、光センサ23が薬液Sに対して浮遊するフロート22の有無を検出することによって、点滴の状態を確実に検知することができる。
更に又、本発明によれば、フロート22は、比重が薬液Sの比重よりも小さい材料からなる浮遊体22aと、比重が浮遊体22aの比重よりも大きい材料からなる沈錘体22b,22cとからなり、かつ浮遊体22aと沈錘体22b,22cとの合計の比重が薬液Sの比重よりも小さく設定されているから、例えば、フロート22の上端面と薬液Sの液面とが一致するように、フロート22の浮力を調整することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、報知手段11bは、点滴装置10が設置された病室Rよりも離間したナースステーションSに設置されるから、検出手段11aにより検出された点滴の状態をナースステーションSにて待機する看護師に確実かつ即時に報知することができる。
【0015】
請求項
3の発明によれば、例えば、光センサ23をハンガーHのアームH2に懸架した係止フック31に係止した取付プレート32に取り付ける場合には、光センサ23をハンガーHに取り付けた状態で、フロートケース21を光センサ23を取り付けたハンガーHに対して着脱することができるから、衛生上の観点から、フロートケース21を1回のみ使用するようにしながら、光センサ23を再使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る点滴装置10及び点滴状態報知装置11の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
点滴装置10は、
図1に示すように、病室Rにおいて患者Pの近傍に立設されるハンガーHと、ハンガーHのフックH3に係止され内部に薬液Sが収容される薬液容器1と、薬液容器1の下部のゴム栓1aに針先2aが穿刺される瓶針2と、瓶針2の針基2bに連通するように上部が接続される点滴チューブ3と、点滴チューブ3の下部に連通するように上部が接続され点滴状態報知装置11の検出手段11aを構成するフロートケース21と、フロートケース21の下部に連通するように上部が接続される点滴チューブ4と、点滴チューブ4の下部に連通するように上部が接続され薬液Sを滴下する点滴の状態を検視できる点滴筒5と、点滴筒5の下部に連通するように上部が接続される点滴チューブ6と、点滴チューブ6の下部に連通するように上部が接続され薬液Sの輸送速度を調節するクランプ7と、クランプ7の下部に連通するように上部が接続される点滴チューブ8と、点滴チューブ4の下部に連通するように針基9bが接続され患者Pの血管に針先9aが穿刺される静脈針9と、を備えている。この点滴装置10では、薬液容器1に収容された薬液Sが、瓶針2、点滴チューブ3、フロートケース21、点滴チューブ4、点滴筒5、点滴チューブ6、クランプ7、点滴チューブ8、静脈針9の順に輸送され、患者Pの血管に注入される。
【0020】
ハンガーHは、
図1に示すように、例えば、病室Rにおいて患者Pが点滴を行う腕部(
図1では左腕)に近接した側に立設された支柱H1と、支柱H1の上端部に固定され左右方向に棒状に延びるアームH2と、アームH2の両端部において棒状部分が環状に折り曲げられ薬液容器1を着脱自在に係止可能なフックH3とを有している。薬液容器1は、内部に薬液Sが収容され、例えば、先端部がゴム栓1aにより封止されたボトル形状の密封容器であって、基端部に形成された貫通孔からなる係止孔1bをフックH3に係止することによって、ゴム栓1aが下方に向くようにハンガーHに懸架される。薬液Sは、例えば、各種の注射薬液を生理食塩水に混合して得られた薬液や、水や電解質等の水溶液であって、医師の指示によって所定の容量を所定の時間をかけて患者Pに投与するものである。瓶針2は、薬液容器1の下部のゴム栓1aに針先2aが穿刺され、薬液容器1から薬液Sを排出させるものであって、針基2bが点滴チューブ3上部に連通するように接続される。点滴チューブ3,4,6及び8は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)からなる導管チューブであって、点滴チューブ3は瓶針2とフロートケース21とを連通するように接続し、点滴チューブ4はフロートケース21と点滴筒5とを連通するように接続し、点滴チューブ6は点滴筒5とクランプ7とを連通するように接続し、点滴チューブ8はクランプ7と静脈針9とを連通するように接続するものである。フロートケース21は、点滴チューブ3に連通するように接続され、上部から流入した薬液Sが内部に貯留されるとともに下部から流出させることが可能な容器であって、薬液Sに浮遊可能なフロート22(
図3)が内部に設けられている。フロートケース21及びフロート22は、点滴の状態を検出する検出手段11aを構成している。点滴筒5は、PVC又はPP(ポリプロピレン)からなり、外部から内部を視認することにより点滴の状態を検視できる筒状部材であって、上部から下部に向かって薬液Sを滴下するとともに、通常、内部に全貯留量の50%程度の薬液Sが貯留されるものである。クランプ7は、円板状の押圧部材を上下方向に移動する開閉操作を行うことによって、上部及び下部が点滴チューブ6及び点滴チューブ8と連通するように接続された図示しない導管チューブを押圧解除及び押圧して薬液Sの輸送速度を調節するものである。静脈針9は、PP製の針基9bが図示しないタコ管及びゴム管を介して点滴チューブ8の下部に連通するように接続され、患者Pの血管にステンレス製の針先9aを穿刺して血管内に薬液Sを注入するものである。
【0021】
点滴状態報知装置11は、
図1に示すように、患者Pに点滴チューブ3,4,6及び8を介して点滴を行う点滴装置10において、点滴の状態を検視できる点滴筒5に連通するように点滴チューブ4に接続され、点滴の状態を検出する検出手段11aと、検出手段11aにより検出された点滴の状態を報知する報知手段11bと、を備える。検出手段11aは、
図2及び
図3に示すように、点滴チューブ3に連通するように接続され上部から流入した薬液Sが内部に貯留されるとともに下部から流出させることが可能なフロートケース21と、フロートケース21の内部に設けられ薬液Sに浮遊可能なフロート22と、フロートケース21の外部に設けられ薬液Sに浮遊するフロート22の有無に応じて点滴の状態を検出する光センサ23と、を有する。フロートケース21は、フロートケースホルダ34に対して着脱自在に装着され、フロートケースホルダ34は、位置決め部材33を介して取付プレート32に固定される。光センサ23は、位置決め部材33の上部において、取付プレート32に固定されており、これにより、フロートケース21は、光センサ23に対して着脱自在に設けられる。ここでは、光センサ23をハンガーHに取り付けた状態で、フロートケース21を光センサ23を取り付けたハンガーHに対して着脱することができるから、衛生上の観点から、フロートケース21を1回のみ使用するようにしながら、光センサ23を再使用することができる。また、報知手段11bは、光センサ23に図示しない信号ケーブルにより接続され、図示しないLED(発光ダイオード)を有する発光部24を有する。発光部24は、光センサ23の上部において、取付プレート32に固定される。取付プレート32は、
図1に示すように、ハンガーHのアームH2に懸架された係止フック31に係止される。本実施形態では、検出手段11a及び報知手段11bは、いずれもハンガーHに懸架され、患者Pに点滴を行う点滴装置10が設置された病室Rに設置される。
【0022】
係止フック31は、
図1に示すように、金属製の棒状部材の一端部がS字状に折り曲げられハンガーHのアームH2に懸架される係止部31aと、棒状部材の他端部がS字状に折り曲げられた後にさらに周方向に90度折り曲げられ取付プレート32の係止孔32a(
図2参照)が係止される係止部31bと、両係止部31a,31bの間に薬液容器1が接触しないようにC字状に湾曲した湾曲部31cと、を有する。なお、係止フック31は、ハンガーHのアームH2に取付プレート32を着脱自在に懸架するものであれば、これに限定されるものではなく、例えば、棒状部材に代えて、板状部材や紐状部材であってもよい。
【0023】
取付プレート32は、上下方向に延びる金属製の板状部材であって、上部に設けられ係止フック31の係止部31bが係止される複数の貫通孔からなる係止孔32aと、下部に設けられ位置決め部材33の係合突起33a(
図5参照)が係合する係合孔32bと、を有する。
【0024】
係止孔32aは、
図4及び
図6に示すように、取付プレート32の上部において、上下方向に形成された複数個(本実施形態では、3個)の貫通孔であって、係止フック31の係止部31bを係止する貫通孔を変更することによって、取付プレート32の上下方向の位置を調整するものである。ここでは、取付プレート32の上下方向の位置が調整されると、取付プレート32に固定されたフロートケースホルダ34の上下方向の位置が調整され、フロートケースホルダ34に装着されたフロートケース21の上下方向の位置が調整され、フロートケース21の上端に点滴チューブ3を介して接続された瓶針2の針先2aの上下方向の位置が調整される。したがって、薬液容器1の大きさに応じて薬液容器1のゴム栓1aの上下方向の位置が相違している場合でも、係止フック31の係止部31bを係止する貫通孔を変更して瓶針2の針先2aの上下方向の位置を調整することにより、瓶針2の針先2aを薬液容器1のゴム栓1aに確実に穿刺できる。
【0025】
係合孔32bは、
図4及び
図6に示すように、取付プレート32の下部において、位置決め部材33の係合突起33aが係合可能な矩形の貫通孔であって、左右1対の貫通孔が上下方向に複数個(本実施形態では、2個)設けられるものである。
【0026】
位置決め部材33は、
図5及び
図6に示すように、フロートケースホルダ34の背面から側方に突出するように設けられ左右1対の係合孔32bにそれぞれ係合可能な左右1対の係合突起33aと、左右1対の係合突起33aの間に設けられ取付プレート32に当接可能な平坦面を有する当接部33bと、を有する。係合突起33aは、上下方向に複数個(本実施形態では、2個)設けられており、それぞれ対応する係合孔32bに弾性圧入係合することによって、位置決め部材33及びフロートケースホルダ34が取付プレート32に固定される。当接部33bの突出長さは、
図5に示すように、取付プレート32とフロートケースホルダ34との間の距離d1と合致している。すなわち、位置決め部材33は、
図3に示すように、光センサ23とフロート22との間の距離d2が適切な距離となるように、取付プレート32とフロートケースホルダ34との間の距離d1を決定するスペーサとしての機能を有する。光センサ23とフロート22との間の距離d2は、光センサ23がフロート22を検出可能な距離であって、例えば、1mm以上5mm以下の範囲であることが好ましく、本実施形態では、2mmである。なお、位置決め部材33は、上記の形態に限定されるものではなく、例えば、フロートケースホルダ34と別体で設けられ直方体形状の中実部材又は中空部材からなるスペーサであってもよく、位置決め部材33を取付プレート32及びフロートケースホルダ34にねじ止めや接着等の固定手段により固定してもよい。
【0027】
光センサ23及び発光部24は、
図2〜
図4及び
図6に示すように、取付プレート32の係止孔32aと係合孔32bとの間において、取付プレート32に固定される。光センサ23及び発光部24は、
図1に示すように、取付プレート32に装着された電源端子41に接続された電源ケーブル42を介して図示しない電源から必要とされる所定の電力が供給される。
【0028】
光センサ23は、位置決め部材33の上方に配置され、円形の受光部のみからなる光感知センサ(明暗センサ)であって、例えば、CdS(硫化カドミウム)セルを有するフォトレジスタ(光依存性抵抗)である。光センサ23は、フロートケースホルダ34の窓部34c(
図2参照)を介して、フロートケースホルダ34に装着されたフロートケース21内のフロート22の有無を検出するものである。具体的には、
図3に示すように、光センサ23の検出範囲D1が、フロート22によって完全に覆われていないときは、光センサ23の受光量が多い(明るい)から、光センサ23は、フロート22がないと判断し、発光部24を発光させる信号を送出することはない。これに対して、
図9に示すように、光センサ23の検出範囲D1が、フロート22によって完全に覆われているときは、光センサ23の受光量が少ない(暗い)から、光センサ23は、フロート22があると判断し、発光部24を発光させる信号を送出する。なお、光センサ23は、上記の光感知センサに限定されるものではなく、例えば、投光部及び受光部が一体となった拡散反射型の光電センサであってもよい。
【0029】
発光部24は、光センサ23の上方に一体的に設けられ、図示しないLEDを半透明の椀状のカバーで閉塞したものであって、点滴の状態を報知する報知手段11bを構成するものである。発光部24は、図示しない信号ケーブルによって光センサ23に接続されており、この信号ケーブルを介して光センサ23からの発光信号を受信したときに発光し、光センサ23からの発光信号を受信していないときには発光しない。光センサ23の発光方法としては、点灯させてもよいし、点滅させてもよい。なお、発光部24は、LEDに限定されるものではなく、例えば、白熱電球や蛍光灯であってもよい。また、報知手段11bは、発光部24に限定されるものではなく、発光部24に代えて、音声やブザー等の発音部であってもよいし、発光部24と発音部とを併設する構成にしてもよい。
【0030】
フロートケースホルダ34は、
図3及び
図6に示すように、位置決め部材33を介して取付プレート32に固定されるとともに、フロートケース21を着脱自在に保持するものである。フロートケースホルダ34は、
図6及び
図7に示すように、背面側に位置決め部材33が突出するように一体的に形成され、表面側の上方からフロートケース21を装着可能に上方及び表面側の一部が開放する合成樹脂製の筐状部材である。フロートケースホルダ34は、
図2及び
図7に示すように、フロートケース21の下部が装着され表面側への移動を規制する袋状のホルダ部34aと、ホルダ部34aの表面及び下面の中央部が切り欠かれフロートケース21の下部に設けられた点滴チューブ4を表面及び下面側から挿通可能な切欠き部34bと、位置決め部材33の上部に形成され表裏を貫通するとともに光センサ23を臨む矩形の窓部34cと、を有する。ホルダ部34aは、フロートケース21を装着したときにフロートケース21がフロートケースホルダ34に対して側方及び下方に移動不能となるように形成された袋状の部分である。切欠き部34bは、ホルダ部34aの表面及び下面の中央部が切り欠かれた部分であって、点滴チューブ4を表面及び下面側から挿通させるとともに、フロートケース21の表面を視認するための開口部分である。窓部34cは、光センサ23の検出範囲D1を全て臨むことができる大きさを有する開口部分である。なお、ホルダ部34a、切欠き部34b及び窓部34cの形状は、これらに限定されるものではなく、上記の機能を満たす形状であれば、任意の形状に形成できる。
【0031】
フロートケース21は、
図1及び
図3に示すように、上部が点滴チューブ3の下部に連通するように接続され、下部が点滴チューブ4の上部に連通するように接続され、上部から流入した薬液Sが内部空間21d(
図3参照)に貯留されるとともに、下部から薬液Sを流出させることが可能な密封ケースである。フロートケース21は、
図8に示すように、矩形の枠体21aと、枠体21aと別体で設けられ枠体21aの表面を閉塞する透明カバー21bと、枠体21aと別体で設けられ枠体21aの裏面を閉塞する透明カバー21cと、を備える。透明カバー21b,21cは、外部から内部を視認可能かつ外部の光センサ23が内部のフロート22の有無を検出可能な透明又は半透明な材料(例えば、PVC)により形成される。ここでは、枠体21aの内部にフロート22を設けた状態で、枠体21aに透明カバー21b,21cを装着することによって密封された内部空間21dが生成され、この内部空間21dにフロート22が設けられたフロートケース21が形成される。なお、本実施形態では、枠体21aは、透明カバー21b,21cと別体で形成されていたが、枠体21aと、透明カバー21b,21cの一方とを一体成形してもよい。また、枠体21aと、点滴チューブ3,4の一方又は両方とを一体成形してもよい。また、フロートケース21と点滴チューブ4とを別体で構成し、フロートケース21の下部に設けたゴム栓に、点滴チューブ4の上部に設けた瓶針を穿刺することによって、フロートケース21と点滴チューブ4とが連通するように接続してもよい。この場合には、瓶針、点滴チューブ、点滴筒、点滴チューブ、クランプ、点滴チューブ、静脈針が一体となった従来の点滴セットの瓶針を、フロートケース21のゴム栓に接続することができる。
【0032】
フロート22は、
図2及び
図3に示すように、フロートケース21の内部に設けられ、薬液Sに浮遊可能な板状部材である。フロート22の厚みは、
図3(a)に示すように、フロートケース21の幅よりも小さくなっており、このため、フロートケース21の内部空間21dに満たされた薬液Sがフロート22の表裏を通過することができる。さらに、フロート22の厚みは、点滴チューブ3,4の内径よりも小さくなっており、このため、フロート22の上端面又は下端面がフロートケース21の内部の上端面又は下端面に位置していたとしても、点滴チューブ3又は点滴チューブ4とフロート22の内部空間21dとの間を薬液Sが通過することが可能である。
【0033】
フロート22は、
図3に示すように、フロート22は、上部に設けられ比重が薬液Sの比重よりも小さい材料からなる浮遊体22aと、浮遊体22aの下部に浮遊体22aと一体的に設けられて比重が浮遊体22aの比重よりも大きい材料からなる沈錘体22bと、浮遊体22aと沈錘体22bとの接続部の表裏に浮遊体22a及び沈錘体22bと一体的に設けられて比重が浮遊体22aの比重よりも大きい材料からなる沈錘体22cと、浮遊体22aの上端角部及び沈錘体22bの下端角部の表裏に浮遊体22a及び沈錘体22bと一体的に設けられてフロートケース21に衝突したときの衝撃を緩和するための緩衝体22dと、を備え、かつ浮遊体22aと沈錘体22b,22cとの合計の比重が薬液Sの比重よりも小さくなっている。浮遊体22aは、比重が薬液Sの比重よりも小さい材料からなる浮きとして機能する部材であって、例えば、低発泡PVC等の低発泡樹脂からなる。沈錘体22b,22cは、比重が浮遊体22aの比重よりも大きい材料からなる錘として機能する部材であって。例えば、硬質PVC等の硬質樹脂からなる。そして、浮遊体22aと沈錘体22b,22cとの合計の比重は、薬液Sの比重よりも小さくなっている。したがって、フロート22は、比重が薬液Sの比重よりも小さい材料からなる浮遊体22aと、比重が浮遊体22aの比重よりも大きい材料からなる沈錘体22b,22cと、からなり、かつ浮遊体22aと沈錘体22b,22cとの合計の比重が薬液Sの比重よりも小さく設定されているから、フロート22の上端面と薬液Sの液面とが一致するように、フロート22の浮力を調整することができる。
【0034】
次に、点滴装置10及び点滴状態報知装置11の使用方法及びその動作について、以下に説明する。
【0035】
まず、
図1に示すように、ハンガーHのフックH3に薬液容器1の係止孔1bに係止する。次に、係止フック31の係止部31aをハンガーHのアームH2に懸架し、係止フック31の係止部31bに取付プレート32の係止孔32aを係止する。なお、係止孔32aは、薬液容器1の大きさに応じて適宜選択され、本実施形態では、
図3に示すように、一番上の係止孔32aを係止する。次に、取付プレート32に装着された電源端子41に電源ケーブル42を接続し、光センサ23及び発光部24に給電するとともに、光センサ23の検出が開始される。次に、瓶針2、点滴チューブ3、フロートケース21、点滴チューブ4、点滴筒5、点滴チューブ6、クランプ7、点滴チューブ8、静脈針9が一体となった点滴セットを準備する。次に、クランプ7を完全に閉じて、薬液Sが点滴チューブ8及び静脈針9に輸送されない状態で、瓶針2の針先2aを薬液容器1のゴム栓1aに穿刺するとともに、フロートケース21をフロートケースホルダ34に装着する。すると、薬液容器1の内部の薬液Sは、瓶針2、点滴チューブ3、フロートケース21、点滴チューブ4の内部に満たされる。次に、点滴筒5を指でゆっくり押しつぶして離す操作を行うと、点滴チューブ4の内部の薬液Sが点滴筒5及び点滴チューブ6の内部に輸送される。そして、点滴筒5の内部に全貯留量の50%程度の薬液Sが貯留されるまで、点滴筒5を指でゆっくり押しつぶして離す操作を繰り返し行う。次に、クランプ7を徐々に開いて、点滴チューブ6の内部の薬液Sを点滴チューブ8及び静脈針9に輸送する。そして、患者Pの血管に静脈針9の針先9aを穿刺して血管内に薬液Sを注入し、点滴が開始される。
【0036】
点滴が開始されると、
図3に示すように、フロートケース21の内部空間21dに薬液Sが満たされ、薬液Sの液面がフロートケース21の内部の上端面に位置し、すなわち、本実施形態では、フロート22の上端面と薬液Sの液面とが一致しているから、フロート22の上端面がフロートケース21の内部の上端面に位置する。このとき、光センサ23の検出範囲D1がフロート22によって完全に覆われていないときは、光センサ23がフロート22がないと判断することによって、点滴の実施中を検出し、発光部24を発光させる信号を送出することはなく、発光部24が発光することはない。
【0037】
点滴が続行され、
図9に示すように、フロートケース21の内部空間21dの薬液Sが減少したとき、薬液Sの液面がフロートケース21の内部の上端面から下降した場所に位置し、すなわち、フロート22の上端面がフロートケース21の内部の上端面から下降した場所に位置する。このとき、光センサ23の検出範囲D1がフロート22によって完全に覆われているときは、光センサ23がフロート22があると判断することによって、点滴の終了を検出し、発光部24を発光させる信号を送出し、光センサ23からの発光信号を受信した発光部24が発光し、患者Pに点滴の終了を報知する。患者Pは直ちにナースコールを使用してナースステーションにて待機する看護師に点滴の終了を報知し、看護師の呼び出しを行う。そして、看護師は、フロートケースホルダ34からフロートケース21を取り外すことによって、あるいは、取付プレート32に装着された電源端子41から電源ケーブル42を取り外すことによって、光センサ23のフロート22の検出及び発光部24の発光を停止する。そして、患者Pの血管から静脈針9の針先9aを取り外し、各種の適切な処置を行う。
【0038】
しかして、本発明によれば、上述した実施形態から示唆されるように、点滴状態報知装置11は、点滴筒5に連通するように点滴チューブ4に接続され、点滴の状態を検出する検出手段11aと、検出手段11aにより検出された点滴の状態を報知する報知手段11bと、を備えるから、検出手段11aが、点滴の状態として、点滴の終了を検出することにより、患者P又は看護師に点滴の終了を確実に報知することができる。ここでは、患者P又は看護師が点滴筒5における点滴の状態を目視で検視することなく点滴の終了を確実に知ることができるから、看護師が患者Pの傍に適切な時期に向かうことができる。したがって、看護師が患者Pの傍に何度も巡回する必要がなくなるから、看護師の労力を低減させることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、報知手段11bは、病室Rに設置されていたが、
図10に示すように、病室Rより室壁Kを挟んで離間したナースステーションNに設置されていてもよい。例えば、光センサ23から取付プレート32に形成した挿通孔32cを挿通して単線又は複線の信号ケーブル51を延出し、病室Rよりも離間したナースステーションNに設置した報知手段11bとしてのLEDを有する発光部52に接続してもよい。この場合には、報知手段11bは、点滴装置10が設置された病室Rよりも離間したナースステーションSに設置されるから、検出手段11aにより検出された点滴の状態をナースステーションSにて待機する看護師に確実かつ即時に報知することができる。