(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078151
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ファンモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/04 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
H02K5/04
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-524167(P2015-524167)
(86)(22)【出願日】2013年6月24日
(65)【公表番号】特表2015-528279(P2015-528279A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】KR2013005551
(87)【国際公開番号】WO2014042341
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2015年1月23日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0102628
(32)【優先日】2012年9月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512272708
【氏名又は名称】ニュモテク株式会社
【氏名又は名称原語表記】NEW MOTECH CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジョンチョル
(72)【発明者】
【氏名】パーク ジェオングス
【審査官】
土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−088909(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0164784(US,A1)
【文献】
特開2005−020802(JP,A)
【文献】
特表2003−512004(JP,A)
【文献】
特開2004−028174(JP,A)
【文献】
実開昭62−014950(JP,U)
【文献】
特開2002−051501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に回転軸が貫通し、上部にブラケット融着溝が形成され、中心部の外部の前記回転軸の周囲に形成された下部ベアリング挿入空間を有する下部ブラケットと、
中心部に前記回転軸が貫通し、前記下部ブラケットのブラケット融着溝に対応する位置にブラケット融着突起が形成され、中心部の内部に前記回転軸の周囲に形成された上部ベアリング挿入空間を有する上部ブラケットと、
前記上部ブラケットの内部において前記回転軸に結合されて回転するローターと、
前記ローターの周囲に位置する固定子と、
前記下部ブラケットの下部の外部に形成されたプリント回路基板挿入空間と、
前記プリント回路基板挿入空間に挿入されたプリント回路基板と、
前記プリント回路基板が挿入された前記プリント回路基板挿入空間の残りの空間に充填されたシール材と、からなり、
前記下部ブラケットにおいて上部に前記ブラケット融着溝が形成された位置の下部は下方に突出し、この突出した部分は環状を呈し、かつ、その内側に前記プリント回路基板挿入空間が形成されていることを特徴とするファンモータ。
【請求項2】
前記下部ベアリング挿入空間の上部に形成された下部ベアリング押込部に押し込まれて固定される下部ベアリングと、
前記下部ブラケットの前記下部ベアリング挿入空間の周囲に形成された下部融着溝に対応する位置に下部融着突起が形成され、内部に前記回転軸の末端が位置する空間部を有する下部ベアリングカバーと、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のファンモータ。
【請求項3】
前記下部ベアリングの周囲に位置する下部フェルトと、前記下部ベアリングの下部を支持する下部ボードプッシュと、をさらに有することを特徴とする請求項2に記載のファンモータ。
【請求項4】
前記下部ブラケットの下部ベアリング挿入空間の上部には、下部オイルリターンワッシャ挿入部が形成され、前記下部オイルリターンワッシャ挿入部には、下部オイルリターンワッシャが挿入されていることを特徴とする請求項2に記載のファンモータ。
【請求項5】
前記上部ベアリング挿入空間の上部に形成された上部ベアリング押込部に押し込まれて固定される上部ベアリングと、
前記上部ブラケットの前記上部ベアリング挿入空間の周囲に形成された上部融着溝に対応する位置に上部融着突起が形成された上部ベアリングカバーと、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のファンモータ。
【請求項6】
前記上部ベアリングの周囲に位置する上部フェルトと、前記上部ベアリングの下部を支持する上部ボードプッシュと、をさらに有することを特徴とする請求項5に記載のファンモータ。
【請求項7】
前記上部ベアリングカバーの中心部の内部には、上部オイルリターンワッシャ挿入部が形成され、前記上部オイルリターンワッシャ挿入部には、上部オイルリターンワッシャが挿入されていることを特徴とする請求項5に記載のファンモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関し、より詳しくは、製造工程がより簡単であり、製造単価を低くし、外部からの湿気の浸透を効率よく防止することができる構造を有するファンモータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷蔵庫の冷気を送風させ、またはある装置の内部と外部との空気を循環させるために用いられるモータをファンモータという。このようなファンモータは、大体、湿気の多い場所や、温度変化による結露が生じる環境に設置される場合が多い。したがって、モータの内部に湿気が浸透して故障を引き起こし得るため、これを防止するための様々な構造が研究されてきた。
【0003】
大韓民国特許第10‐0511324号、同第10‐1074935号、及び米国特許第6,577,031号には、モータの固定子及びプリント回路基板等を一緒にインサート射出によって、樹脂成形によるモータハウジングを作製する技術が開示されている。これらの特許によると、固定子とプリント回路基板が内部に埋め込まれるように、樹脂成形によってモータハウジングを作製するので、モータの内部に湿気が浸透しないのに効率的な構造を有している。しかしながら、上述したインサート射出によりモータを作製するのは、金型を作製する等のインサート射出に必要な工程と費用が増加するという問題点があった。また、インサート射出工程を経なければならないので、全ての工程を自動化し難いという問題点があった。
【0004】
そこで、本発明者等は、上述した問題点を解決するために、固定子をブラケットの内部に位置させ、プリント回路基板をブラケットの外部に設置してシールする構造を活用した新たな構造のファンモータを提案しようとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新たな構造のファンモータを提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、モータハウジングの作製のためのインサート射出を適用しないことで、製造費用を低くすることができるファンモータを提供することである。
【0007】
本発明のまた他の目的は、インサート射出を適用しないので、製造工程の全部を自動化することができる構造のファンモータを提供することである。
【0008】
本発明の上記した目的及びその他の内在されている目的は、後述する本発明により、全て容易に達成され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明によるファンモータは、中心部に回転軸が貫通し、上部にブラケット融着溝が形成され、中心部の外部の前記回転軸の周囲に形成された下部ベアリング挿入空間を有する下部ブラケットと、中心部に前記回転軸が貫通し、前記下部ブラケットのブラケット融着溝に対応する位置にブラケット融着突起が形成され、中心部の内部に前記回転軸の周囲に形成された上部ベアリング挿入空間を有する上部ブラケットと、前記上部ブラケットの内部において前記回転軸に結合されて回転するローターと、前記ローターの周囲に位置する固定子と、前記下部ブラケットの下部の外部に形成されたプリント回路基板挿入空間と、前記プリント回路基板挿入空間に挿入されたプリント回路基板と、前記プリント回路基板が挿入された前記プリント回路基板挿入空間の残りの空間に充填されたシール材と、からな
り、前記下部ブラケットにおいて上部に前記ブラケット融着溝が形成された位置の下部は下方に突出し、この突出した部分は環状を呈し、かつ、その内側に前記プリント回路基板挿入空間が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記下部ベアリング挿入空間の上部に形成された下部ベアリング押込部に押し込まれて固定される下部ベアリングと、前記下部ブラケットの前記下部ベアリング挿入空間の周囲に形成された下部融着溝に対応する位置に下部融着突起が形成され、内部に前記回転軸の末端が位置する空間部を有する下部ベアリングカバーと、をさらに有してもよい。
【0011】
本発明において、前記下部ベアリングの周囲に位置する下部フェルトと、前記下部ベアリングの下部を支持する下部ボードプッシュと、をさらに有してもよい。
【0012】
本発明において、前記下部ブラケットの下部ベアリング挿入空間の上部には、下部オイルリターンワッシャ挿入部が形成され、前記下部オイルリターンワッシャ挿入部には、下部オイルリターンワッシャが挿入されてもよい。
【0013】
本発明において、前記上部ベアリング挿入空間の上部に形成された上部ベアリング押込部に押し込まれて固定される上部ベアリングと、前記上部ブラケットの前記上部ベアリング挿入空間の周囲に形成された上部融着溝に対応する位置に上部融着突起が形成された上部ベアリングカバーと、をさらに有してもよい。
【0014】
本発明において、前記上部ベアリングの周囲に位置する上部フェルトと、前記上部ベアリングの下部を支持する上部ボードプッシュと、をさらに有してもよい。
【0015】
本発明において、前記上部ベアリングカバーの中心部の内部には、上部オイルリターンワッシャ挿入部が形成され、前記上部オイルリターンワッシャ挿入部には、上部オイルリターンワッシャが挿入されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、モータハウジングの作製のためのインサート射出を適用しないことで、製造費用を低くし、製造工程の全部を自動化することができる新たな構造のファンモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明によるファンモータを示す斜視図である。
【
図3】本発明によるファンモータにおいて、上部ブラケットを除去した状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明によるファンモータを下部からみた斜視図であって、プリント回路基板の結合前の様子を示す図である。
【
図5】本発明によるファンモータを下部からみた斜視図であって、プリント回路基板を結合させた様子を示す図である。
【
図6】本発明によるファンモータを下部からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付した図面に基づき、本発明の好適な実施例について詳述する。
【0019】
図1は、本発明によるファンモータ100を示す斜視図である。
【0020】
図1に示すように、本発明によるファンモータ100を外部からみると、下部ブラケット1と、上部ブラケット3と、回転軸5と、からなる。下部ブラケット1と上部ブラケット3は、プラスチック射出物からなるが、これらは、互いに超音波融着により密封される構造を有する。上部ブラケット3の内部には、固定子、ローター、及び回転軸が位置し、固定子に電源を供給し、モーターの回転を制御するためのプリント回路基板は、下部ブラケット1の外側の下部に位置する。いたがって、プリント回路基板と連結されるワイヤ81は、下部ブラケット1の下部から外部に突出している。
【0021】
図2は、本発明によるファンモータ100の断面を示すための、
図1のA‐A’線による断面図である。
【0022】
図2に示すように、本発明によるファンモータ100は、下部ブラケット1と上部ブラケット3が結合された状態で、モータのハウジングをなしている。下部ブラケット1と上部ブラケット3は、互いに超音波融着により密封結合され、結合された状態で、下部ブラケット1及び上部ブラケット3により形成される内部の空間にローター6及び固定子7が位置する。超音波融着のために、下部ブラケット1には、ブラケット融着溝17が形成され、上部ブラケット3には、下部ブラケット1のブラケット融着溝17と対応する位置にブラケット融着突起33が形成されている。このブラケット融着突起33を、超音波融着により、ブラケット融着溝17に密封固定させる。勿論、ブラケット融着溝17を突起状に、ブラケット融着突起33を溝状に形成してもよい。
【0023】
プリント回路基板(Printed Circuit Board、PCB)8は、下部ブラケット1の下部の外部空間に形成されたPCB挿入空間11に挿入される。固定子7に巻線されたコイル(図示せず)は、プリント回路基板8と電気的に連結されるが、このため、下部ブラケット1には、その内部と外部を貫通して形成され、前記コイルが通過する通路であるコイル通路10が形成されている。プリント回路基板8がPCB挿入空間11に挿入された後、PCB挿入空間11においてプリント回路基板8が占めた空間を除いた残りの空間は、シール材(
図6の図面符号82参照)で充填される。
【0024】
回転軸5は、下部ブラケット1と上部ブラケット3の中心部を貫通して位置する。回転軸5は、その下部が下部ベアリング51により回転支持され、上部ブラケット3の中心部の内部に位置する上部ベアリング52により回転支持されている。
【0025】
下部ベアリング51は、下部ブラケット1の中心部に形成された下部ベアリング挿入空間12に位置し、下部ベアリング挿入空間12の中心部の上部に形成された下部ベアリング押込部13に下部ベアリング51の上部が押し込まれて固定される。下部ベアリング51の下部は、下部ボードプッシュ14により支持されている。下部ベアリング51の外周面には、下部フェルト15が設けられており、ベアリングの回転支持のための潤滑油であるオイルを供給する。下部ベアリング押込部13の上部には、下部オイルリターンワッシャ挿入部18が形成され、この下部オイルリターンワッシャ挿入部18には、下部オイルリターンワッシャ19が挿入されており、オイルが下部ベアリング51の上部側に流れ出ることを防止する。
【0026】
下部ベアリング51が位置した下部ブラケット1の下部ベアリング挿入空間12は、下部ベアリングカバー2によりカバーされるとともに、密封されて結合される。このため、下部ブラケット1の下部ベアリング挿入空間12の周囲には、下部融着溝16が形成され、下部ベアリングカバー2には、前記下部融着溝16に対応する位置に下部融着突起21が形成されている。この下部融着突起21を、超音波融着により、下部融着溝16に密封結合させることにより、下部ベアリング挿入空間12を外部と孤立させ、外部からの湿気の浸透を遮断させることができる。勿論、下部融着突起21を溝状に、下部融着溝16を突起状に形成してもよい。下部ベアリングカバー2の中心部の内側には、空間部22が形成され、この空間に回転軸5の末端を位置させる。
【0027】
上部ベアリング52は、上部ブラケット3の上部ベアリング挿入空間35に挿入され、上部ブラケット3の中心部の内部に形成された上部ベアリング押込部31に押し込まれて固定される。上部ベアリング52の下部は、上部ボードプッシュ36により支持されている。上部ベアリング52の外周面には、上部フェルト34が位置し、この上部フェルト34は、ベアリングの円滑な回転のためのオイルを含んでいる。上部ベアリング52が挿入された空間である上部ベアリング挿入空間35は、上部ベアリングカバー4により密封されて覆われる。このため、上部ブラケット3には、上部融着溝32が形成され、上部ベアリングカバー4には、前記上部融着溝32の位置と対応する位置に上部融着突起41が形成されている。この上部融着突起41を、超音波融着により、上部融着溝32に融着密封して結合させる。勿論、上部融着突起41を溝状に、上部融着溝32を突起状に形成してもよい。
【0028】
上部ベアリングカバー4の中心部の内部には、上部オイルリターンワッシャ挿入部42が形成されている。この上部オイルリターンワッシャ挿入部42には、上部オイルリターンワッシャ43が挿入され、上部ベアリング52の下部にオイルが漏れることを防止している。
【0029】
図3は、本発明によるファンモータ100において、上部ブラケット3を除去した状態を示す斜視図である。
図3を参照すると、本発明のファンモータ100は、下部ブラケット1に、回転軸5、ローター6、及び固定子7を位置させた後、上部ブラケット3を超音波融着により結合して製造する。したがって、インサート射出によりモータのハウジングを形成するよりも、簡便であり、製造費用を低くすることができる。
【0030】
図4は、本発明によるファンモータ100を下部からみた斜視図であって、プリント回路基板の結合前の様子を示す図であり、
図5は、プリント回路基板の結合した様子を示す図であり、
図6は、本発明によるファンモータ100のプリント回路基板8の周囲をシール材で充填した状態を示す斜視図である。
【0031】
図4を参照すると、下部ブラケット1の下部の外部に形成されたPCB挿入空間11には、プリント回路基板8が挿入される。固定子7に巻線されたコイル(図示せず)は、下部ブラケット1に形成されたコイル通路10を通じてプリント回路基板8と電気的に連結される。
図5を参照すると、プリント回路基板8は、ワイヤ81を介して外部電源と連結されるが、このワイヤ81が通過するために、PCB挿入空間11の外周側の一部には、ワイヤ溝11aが形成され、下部ブラケット1の下部の最外郭側には、ワイヤが通過して整理されるワイヤパス孔11bが形成されている。
【0032】
図6に示すように、PCB挿入空間11にプリント回路基板8が挿入された後、その残りの空間には、シール材82が充填される。このシール材は、ウレタンモールディング、シーラント、硬化性接着材等の様々な材料を適用することができる。
【0033】
上述した本発明の詳細な説明は、本発明の理解のために例示して説明したものに過ぎず、本発明の範囲を定めようとするものではないことに留意すべきである。本発明の範囲は、下記の特許請求の範囲により定められ、この範囲内における単純な変形や変更は、全て本発明の範囲に属するものと理解されなければならない。
【符号の説明】
【0034】
1 下部ブラケット
2 下部ベアリングカバー
3 上部ブラケット
4 上部ベアリングカバー
5 回転軸
6 ローター
7 固定子
8 プリント回路基板
10 コイル通路
11 PCB挿入空間
12 下部ベアリング挿入空間
13 下部ベアリング押込部
14 下部ボードプッシュ
15 下部フェルト
16 下部融着溝
17 ブラケット融着溝
18 下部オイルリターンワッシャ挿入部
19 下部オイルリターンワッシャ
21 下部融着突起
22 空間部
31 上部ベアリング押込部
32 上部融着溝
33 ブラケット融着突起
34 上部フェルト
35 上部ベアリング挿入空間
36 上部ボードプッシュ
41 上部融着突起
42 上部オイルリターンワッシャ挿入部
43 上部オイルリターンワッシャ
81 ワイヤ
82 シール材