(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078152
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】生分解性樹脂を含む発泡用樹脂組成物およびそれから製造された発泡体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/06 20060101AFI20170130BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20170130BHJP
C08L 67/06 20060101ALI20170130BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20170130BHJP
C08K 5/3477 20060101ALI20170130BHJP
C08K 3/00 20060101ALI20170130BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
C08J9/06CES
C08L23/08
C08L67/06
C08K5/14
C08K5/3477
C08K3/00
C08L101/16
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-525318(P2015-525318)
(86)(22)【出願日】2013年5月13日
(65)【公表番号】特表2015-528848(P2015-528848A)
(43)【公表日】2015年10月1日
(86)【国際出願番号】KR2013004228
(87)【国際公開番号】WO2014021544
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年2月26日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0083244
(32)【優先日】2012年7月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508130188
【氏名又は名称】ロッテ精密化學株式会社
【氏名又は名称原語表記】LOTTE Fine Chemical Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ジョン・ピル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒ・ス
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ス・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,イェ・ジン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,キ・チュル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミン・ギョン
【審査官】
飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−059892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
C08K 3/00
C08K 5/14
C08K 5/3477
C08L 23/08
C08L 67/06
C08L 101/16
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−ビニルアセテート樹脂;
二重結合を有するモノマーが結合してなる生分解性ポリエステル樹脂;
架橋剤;架橋助剤;充填剤;および発泡剤
を含むことを特徴とする、生分解性樹脂を含む発泡用樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン−ビニルアセテート樹脂に対して前記生分解性ポリエステル樹脂が20重量%〜50重量%の範囲内の量で用いられることを特徴とする、請求項1に記載の発泡用樹脂組成物。
【請求項3】
前記生分解性ポリエステル樹脂中に、二重結合を有するモノマーが0.003〜0.2のモル比で含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の発泡用樹脂組成物。
【請求項4】
前記生分解性ポリエステル樹脂に結合された、二重結合を有するモノマーが、不飽和酸類、不飽和イソシアネート類、不飽和アルコール類、および不飽和ヒドロキシカルボン酸類から選択される、2つ以上の官能基を有するモノマーであることを特徴とする、請求項1に記載の発泡用樹脂組成物。
【請求項5】
前記生分解性ポリエステル樹脂は、PBAF、PBAI、PBSAF、PBSAI、PBSFまたはPBSIから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の発泡用樹脂組成物。
【請求項6】
前記組成物は、前記エチレン−ビニルアセテート樹脂と生分解性ポリエステル樹脂の重量の合計100重量部に対して、架橋剤0.1〜10重量部、架橋助剤0.1〜5重量部、充填剤0.1〜5重量部および発泡剤1〜10重量部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の発泡用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の発泡用樹脂組成物を発泡成形させてなる発泡体。
【請求項8】
前記発泡成形は射出発泡成形またはプレス発泡成形である、請求項7に記載の発泡体。
【請求項9】
前記発泡体は、靴底、ミッドソールまたは靴の中敷きに用いられるものである、請求項7に記載の発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡用樹脂組成物およびそれから製造された発泡体に関し、より詳しくは、発泡用高分子であるエチレン−ビニルアセテート(EVA)樹脂に、二重結合を有するモノマーを結合してなる生分解性ポリエステル樹脂を適用して、発泡特性を改善させた発泡用樹脂組成物、およびそれから製造された、優れた物性を有する発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
有用に用いられる合成樹脂系発泡体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、ポリエステル、ポリウレタンなど様々な素材から製造されている。
中でも、エチレン−ビニルアセテート樹脂をベースにした発泡体は、通常、プレス発泡成形、射出発泡成形などといった様々な成形方法により製造されており、軽く、変色せず、安価であるという利点があるので、広く用いられている。
【0003】
前記発泡体において重要な技術的事項は、加工性に優れ、機械的物性の低下がなく、且つ、環境に優しいプラスチック製造である。これは至急に要請される発泡体の製造技術の条件である。従来のエチレン−ビニルアセテート樹脂、アゾジカーボンアミドのような発泡剤、有機過酸化物のような架橋剤などで構成された発泡体用組成物を用いた架橋発泡体は、廃棄されて地中に埋められた場合に、ほとんど生分解されず、また、焼却処理時にダイオキシンまたはVOCなどの有害ガスが発生するので、環境破壊など、生態系などを乱す可能性が大きい。
【0004】
このため、環境に優しいバイオプラスチックを導入するために、生分解性高分子樹脂とエチレン−ビニルアセテート樹脂を混合して用いている。しかし、例えば、ポリ乳酸とエチレン−ビニルアセテート樹脂の混合物からなる発泡体の場合は、エチレン−ビニルアセテート樹脂との相溶性が不足して、所望の発泡体の形態、例えば、気泡の均一な大きさなどのような発泡特性が得られないだけでなく、それによって機械的物性が低下するという問題があった。特に、ポリ乳酸の場合、高い溶融温度および低い熱的特性などにより、通常の加工温度では加工ができないなどの色々な問題点があった。
【0005】
したがって、色々な方法によってエチレン−ビニルアセテート樹脂と他の樹脂との混合物などをベースにした発泡体用組成物を活用した架橋発泡体で、従来の問題点を改善しようとする研究が行われてきたが、十分な性能は得られなかった。
例えば、発泡用高分子であるエチレン−ビニルアセテート樹脂に、架橋補助剤である架橋触媒(過酸化ジクミル)、架橋助剤(トリアリルシアヌレート)および発泡剤(アゾジカーボンアミド)を併用して、発泡特性を改善している。しかし、この場合でも、生分解性ポリエステル樹脂を25%以上の割合の量になるように併用すると、加工性が低下し、化学的な架橋後に、発泡特性がエチレン−ビニルアセテート樹脂とは独立して部分的に発現し、気泡の大きさまたは発泡体の形態(形状)が不良になるなど、依然として問題点を抱えている。
【0006】
したがって、環境に優しく、且つ、発泡特性および機械的物性を改善させた、卓越した発泡体の出現が切実に求められている。
そこで、本発明者らは、発泡用樹脂組成物に関する研究を行った結果、二重結合を有するモノマーが結合してなる生分解性ポリエステル樹脂が、エチレン−ビニルアセテート樹脂と混合された場合、前記生分解性ポリエステル樹脂内に含まれている二重結合が架橋剤を介してエチレン−ビニルアセテート樹脂と化学的に架橋することにより、相溶性が向上して、加工性および発泡特性が向上し、発泡体の機械的物性も向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、作業性および発泡特性が向上し、かつ発泡体の機械的物性を向上させることができる、生分解性樹脂を含む発泡用樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、作業性および発泡特性が向上し、かつ発泡体の機械的物性を向上させることができる、生分解性樹脂を含む発泡用樹脂組成物から製造された発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、エチレン−ビニルアセテート樹脂と、二重結合を有するモノマーが結合してなる生分解性ポリエステル樹脂と、架橋剤と、架橋助剤(共架橋剤)と、充填剤と、発泡剤とを含む、生分解性樹脂を含む発泡用樹脂組成物を提供する。
【0009】
本発明の発泡用樹脂組成物において、前記生分解性ポリエステル樹脂は、前記エチレン−ビニルアセテート樹脂に対して、20重量%〜50重量%の範囲内の量で用いられることが好ましい。
また、前記生分解性ポリエステル樹脂に結合された、二重結合を有するモノマーは、0.003〜0.2のモル比で含まれていることが好ましい。
【0010】
なお、前記生分解性ポリエステル樹脂としては、二重結合を有するモノマーとして、不飽和酸類、不飽和イソシアネート類、不飽和アルコール類、または不飽和ヒドロキシカルボン酸類等の、2つ以上の官能基を有するモノマーが結合してなるポリエステル樹脂から選択されることができる。具体的には、PBAF(ポリブチレンアジペート−co−フマレート)、PBAI(ポリブチレンアジペート−co−イタコネート)、PBSAF(ポリブチレンサクシネート−co−アジペート−co−フマレート)、PBSAI(ポリブチレンサクシネート−co−アジペート−co−イタコネート)、PBSF(ポリブチレンサクシネート−co−フマレート)、およびPBSI(ポリブチレンサクシネート−co−イタコネート)から選択されることが好ましい。
【0011】
本発明による発泡用樹脂組成物において、前記エチレン−ビニルアセテート樹脂と生分解性ポリエステル樹脂の重量の合計100重量部に対して、架橋剤0.1〜10重量部、架橋助剤0.1〜5重量部、充填剤0.1〜5重量部および発泡剤1〜10重量部を含むことが好ましい。
【0012】
前記他の課題を解決するために、本発明は、エチレン−ビニルアセテート樹脂と、二重結合を有するモノマーが結合してなる生分解性ポリエステル樹脂と、架橋剤と、架橋助剤と、充填剤と、発泡剤とを含む発泡用樹脂組成物を発泡成形してなる発泡体を提供する。
本発明による発泡体において、発泡成形は、プレス発泡成形または射出発泡成形によって発泡されることが好ましい。前記発泡体は、靴底(アウトソール)、ミッドソールまたは靴の中敷き(インソール)に用いられることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果は以下のとおりである。
第1に、本発明は、二重結合を有するモノマーが結合してなる生分解性ポリエステル樹脂を、エチレン−ビニルアセテート樹脂に適用して、エチレン−ビニルアセテート樹脂との相溶性を改善している。
第2に、本発明は、二重結合を有するモノマーが導入された生分解性ポリエステル樹脂を用いることによって、生分解性ポリエステル樹脂内の二重結合が架橋剤を介してエチレン−ビニルアセテートと化学的な架橋結合を形成するのを可能にして、混合および溶融過程における作業性(離型性)を改善させるだけでなく、発泡特性および発泡体の機械的物性を顕著に改善させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による作業性(離型性)および発泡特性が改善されかつ発泡体の機械的物性を改善できる発泡用樹脂組成物は、エチレン−ビニルアセテート樹脂と、二重結合を有するモノマーが結合してなる生分解性ポリエステル樹脂と、架橋剤と、架橋助剤と、充填剤と、発泡剤とを含む。
【0015】
前記エチレン−ビニルアセテート樹脂は、重量平均分子量が10万〜30万、好ましくは16万〜25万であり、ビニルアセテート含有量が10重量%〜30重量%、好ましくは15〜25重量%である。また、溶融指数(ASTM D1238、190℃、2.16kg)は、0.05〜20.0g/10分、より好ましくは0.3〜10.0g/分である。
【0016】
前記二重結合を有するモノマーが結合してなる生分解性ポリエステル樹脂は、前記エチレン−ビニルアセテート樹脂との混合および溶融時に作業性(離型性)を改善させることができる。また、前記生分解性ポリエステル樹脂内の二重結合は、架橋剤を介してエチレン−ビニルアセテート樹脂との化学的な架橋結合を可能にして、発泡特性および発泡体の機械的物性を顕著に改善させることができる。前記生分解性ポリエステル樹脂内の二重結合は、モノマーとして、二重結合を有しかつ2つ以上の官能基を有する不飽和化合物を用いて、重合することによって、生分解性ポリエステル樹脂内に導入されることができる。
【0017】
前記二重結合を有するモノマーにおいて、「二重結合」とは、既存のエステル化のためのカルボキシル基に存在するC=O二重結合の他に、炭素−炭素、炭素−酸素または炭素−窒素の二重結合を意味する。
【0018】
前記生分解性ポリエステル樹脂に結合された二重結合を有するモノマーとしては、不飽和酸類、不飽和イソシアネート類、不飽和アルコール類または不飽和ヒドロキシカルボン酸である、2つ以上の官能基を有するモノマーが選択されることができる。具体的には、下記化学式1のPBAF(ポリブチレンアジペート−co−フマレート)、下記化学式2のPBAI(ポリブチレンアジペート−co−イタコネート)、およびPBSAF(ポリブチレンサクシネート−co−アジペート−co−フマレート)、PBSAI(ポリブチレンサクシネート−co−アジペート−co−イタコネート)、PBSF(ポリブチレンサクシネート−co−フマレート)、PBSI(ポリブチレンサクシネート−co−イタコネート)などが挙げられる。
【0019】
[化学式1]
【化1】
ここで、m、nは相対的なモル比を示し、mは0.003〜0.2であり、nは0.8〜0.997である。
【0020】
[化学式2]
【化2】
ここで、m、nは相対的なモル比を示し、mは0.003〜0.2であり、nは0.8〜0.997である。
【0021】
前記生分解性ポリエステル樹脂内の二重結合を有するモノマーは、0.003〜0.2のモル比で含まれていることが好ましく、0.003〜0.1のモル比で含まれていることがより好ましい。前記生分解性ポリエステル樹脂中に、二重結合を有するモノマーが0.003未満のモル比で含まれていれば、混合および溶融時の作業性(離型性)の改善がわずかであり、また、エチレン−ビニルアセテート樹脂との化学的な架橋結合がわずかである。該モノマーが0.2を超えるモル比で含まれていれば、EVAとの過度な架橋密度による発泡特性の低下および色相の低下を招くので、好ましくない。
ここで、モル比とは、生成物である生分解性ポリエステル樹脂を構成するモノマーの総モルに対する、二重結合を有するモノマーのモルの比率を示すものである。
【0022】
前記二重結合を有するモノマーが結合してなるポリエステル樹脂は、重量平均分子量が10万〜30万、好ましくは16万〜25万であり、また、溶融指数(ASTM D1238、190℃、 2.16kg)が0.05〜20.0g/10分、より好ましくは0.3〜10.0g/分である。
前記エチレン−ビニルアセテート樹脂に対して、生分解性ポリエステル樹脂は、20重量%以上の割合で混合されても良く、この割合は、好ましくは20〜50重量%である。前記生分解性ポリエステル樹脂が10重量%未満で用いられる場合は、環境に優しいバイオプラスチック樹脂における生分解性の効果がわずかであるため、20重量%以上の割合で前記生分解性ポリエステル樹脂が含まれなければならない。
【0023】
本発明の発泡用樹脂組成物には、架橋剤、架橋助剤、充填剤および発泡剤が含まれる。
前記架橋剤としては有機過酸化物であって、例えば、過酸化ジクミル、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどから選択されたものを用いることができ、前記エチレン−ビニルアセテート樹脂および前記生分解性ポリエステル樹脂の重量の合計100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲内で用いることが好ましい。ここで、架橋剤の量が0.1重量部未満であれば、架橋度が低下したり、架橋が生じないことがある。架橋剤の量が10重量部を超えると、架橋結合の形成のみならず、主鎖間の切断が生じて、分子量の低下を招く。
【0024】
前記架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)またはトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)などから選択されたものを用いることができる。前記架橋助剤は、前記エチレン−ビニルアセテート樹脂および生分解性ポリエステル樹脂の重量の合計100重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲内で用いることが好ましい。ここで、架橋助剤が0.1重量部未満で用いられる場合は、その役割がわずかである。架橋助剤が5重量部を超えて用いられる場合は、主鎖と架橋助剤間の過度な架橋密度による発泡特性の低下を招く。
【0025】
前記充填剤としては、無機充填剤(無機質充填剤)が好ましい。前記無機充填剤は、発泡体の強度を改善する役割を有する。無機充填剤の具体的な例としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク、卵殻、シリカなどが挙げられる。無機充填剤の粒径は、特に限定されず、樹脂組成物に通常用いられている粒径であることができる。本発明の発泡性樹脂組成物において、無機充填剤の含有量は、前記エチレン−ビニルアセテート樹脂および前記生分解性ポリエステル樹脂の重量の合計100重量部に対して、0.1重量部〜5重量部の範囲内であることが好ましい。
【0026】
前記発泡剤としては、アゾ系化合物、ニトロソ系化合物、スルホニルヒドラジド系化合物、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼンおよびナトリウムジカーボネートからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含む。具体的には、前記発泡剤としては、アゾジカーボンアミドなどのアゾ系化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどのニトロソ系化合物、アゾビスイソブチロニトリル、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ジアゾアミノアゾベンゼン、アゾジカルボン酸バリウム、重炭酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。前記発泡剤は、発泡倍率および密度を考慮して、前記エチレン−ビニルアセテート樹脂および前記生分解性ポリエステル樹脂の重量の合計100重量部に対して、1〜10重量部の量で用いることが好ましい。ここで、発泡剤の量が1重量部未満であれば、発泡体の硬度が大きくなって、比重が大きくなる。発泡剤の量が10重量部を超えると、発泡体が裂けたり、不安定な発泡セルを形成する恐れがある。
【0027】
本発明において、環境に優しい発泡用樹脂組成物には、必要に応じて、白色増進剤、染料、顔料、酸化防止剤、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤、抗菌剤、生分解促進剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤などの各種の加工助剤を、本発明の目的を損なわない範囲内で配合することができる。
【0028】
本発明による発泡用樹脂組成物を用いた環境に優しい発泡体は、以下の方法により製造することができるが、これに限定されるものではない。
前記発泡用樹脂組成物を用いた発泡体の製造方法は、エチレン−ビニルアセテート、二重結合を有するモノマーが結合されてなる生分解性樹脂、充填剤、加工助剤および「EVA MB」(EVAと無機添加剤を押出機で混合し溶融して製造したマスターバッチ(Master Batch))を、加圧混練(Kneader)押出機にて、60〜110℃で3〜10分間混合し溶融して、1次混合物を製造する工程と、前記1次混合物、架橋剤、架橋助剤および発泡剤を60〜110℃で3〜10分間混合し溶融して、2次混合物を製造する工程と、前記2次混合物をカレンダーロール(Calender Roll)に3回繰り返して通過させた後、該混合物を80〜120℃で、チップ状の形状になるようにペレット化する工程と、射出発泡成形機にて100〜200℃の温度で200〜600秒間発泡を行う工程を含む。
【0029】
ここで、混合物を製造する工程は、ニーダーの他に、バンバリーミキサー、ロールミルなどの、この分野で一般的に用いられる混練機にて行うことができる。
前記「EVA MB」は、エチレンビニルアセテートと無機添加剤を押出機で混合し溶融して製造されるマスターバッチである。このようなマスターバッチは、無機添加剤を良く分散させて、相溶性を良くするために投入される。
また、前記混合および溶融後、得られた組成物は、ペレットの他に、シートまたはリボンの形態(形状)に成形することもできる。
なお、発泡の方法としては、射出発泡成形法の他に、本分野で一般的に用いられるプレス発泡成形法なども採用することができる。
前記得られた発泡体は、靴底(sole)、ミッドソール(midsole)または靴の中敷き(insole)に用いられることができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものにすぎず、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0031】
[製造例1]
[PBAFの製造]
撹拌機、温度計および真空ポンプと連結され、かつ、上部に温度計が設けられたコンデンサを備えた500mlの反応器に、1.15molの1,4−ブタンジオール(BDO)、0.95molのアジピン酸(AA)、0.05molのフマル酸、テトラブチルチタネート0.3g、トリフェニルホスフェート0.1g、および、分岐剤として、アジピン酸に対する重量比で0.58重量%のマレイン酸を混合した後、昇温して、195℃で80分間エステル反応させた。反応は、反応器のコンデンサの上部の温度が90℃以下に低下した時点で終えた。
次に、前記エステル反応で得られた中間生成物を、240℃、1torr未満の真空度で、135分間重縮合反応させて、生分解性樹脂を得た。
【0032】
[製造例2」
[PBAIの製造]
撹拌機、温度計および真空ポンプと連結され、かつ、上部に温度計が設けられたコンデンサを備えた500mlの反応器に、1.15molの1,4−ブタンジオール(BDO)、0.95molのアジピン酸(AA)、0.05molのイタコン酸、テトラブチルチタネート0.3g、トリフェニルホスフェート0.1g、および、分岐剤として、アジピン酸に対する重量比で0.58重量%のマレイン酸を混合した後、昇温して、195℃で80分間エステル反応させた。反応は、反応器のコンデンサの上部の温度が90℃以下に低下した時点で終えた。
次に、前記エステル反応で得られた中間生成物を、240℃、1torr未満の真空度で、135分間重縮合反応させて、生分解性樹脂を得た。
【0033】
[実施例1]
[生分解性発泡体の製造]
エチレン:ビニルアセテート=78:22の重量%の比率で重合して得た、溶融指数0.8g/10分のエチレン−ビニルアセテート樹脂(デュポン社3388 Grade製品)70重量%と、生分解性ポリエステル樹脂として前記製造例1のPBAF(ポリブチレンアジペート−co−フマレート)30重量%を混合してなる樹脂100重量部に対して、加工助剤(ステアリン酸)0.2重量部、「EVA MB」(「EVA」5重量部、炭酸カルシウム5重量部および酸化亜鉛5重量部)6重量部、充填剤(タルク)3重量部を計量してニーダー(kneader)に投入し、95℃で6分間混合および溶融して、1次混合物を製造した。次に、架橋剤として過酸化ジクミル0.5重量部、架橋助剤としてトリアリルシアヌレート3重量部、および発泡剤としてジアゾジカーボンアミド3重量部を計量して、ニーダー内の1次混合物に2次投入し、95℃で6分間混合および溶融して、2次混合物を製造した。前記2次混合物は、均一性を確保するために、カレンダーロール(Carender Roll)に3回通過させ、均一に混合および溶融された組成物を押出機においてバレル温度90℃で押出した後、ペレット化して乾燥させた。
次に、乾燥させたチップを射出発泡成形機を介してモールド(6cm×18cm×2cm)内に射出した後、170℃で360秒後に発泡させた。発泡体(163%の発泡度)を6時間エイジングして、最終発泡体を製造した。
【0034】
[実施例2]
前記生分解性ポリエステル樹脂としてPBAFの代わりに前記製造例2のPBAI(ポリブチレン−アジペート−co−イタコネート)を用いたことを除いては、実施例1と同様に発泡体を製造した。
[比較例1]
前記生分解性ポリエステル樹脂を用いなかったことを除いては、実施例1と同様に発泡体を製造した。
[比較例2]
前記生分解性ポリエステル樹脂としてPBAFの代わりにPBA(ポリブチレンアジペート)を用いたことを除いては、実施例1と同様に発泡体を製造した。
[比較例3]
前記生分解性ポリエステル樹脂としてPBAFの代わりにPBSA(ポリブチレンサクシネート−co−アジペート)を用いたことを除いては、実施例1と同様に発泡体を製造した。
[比較例4]
前記生分解性ポリエステル樹脂としてPBAFの代わりにPBS(ポリブチレンサクシネート)を用いたことを除いては、実施例1と同様に発泡体を製造した。
[比較例5]
前記生分解性ポリエステル樹脂としてPBAFの代わりにPBAT(ポリブチレンアジペート−co−テレフタレート)を用いたことを除いては、実施例1と同様に発泡体を製造した。
【0035】
[試験例1]
[性能評価]
前記実施例1〜2および比較例1〜5で製造された発泡体について、次のような項目を評価し、その結果を下記の表1および表2に示す。
[作業性(離型性)]
加圧混練(Kneader)押出機内で混合および溶融された混合物が金属表面から円滑に離型されるか否かを肉眼で観察した。
[引張強度(kg/cm
2)]
引張強度は、材料が受ける最大荷重を試験片の断面積で割った値を意味する。幅が6mmで、厚さが3mmである試験片を製作して、ASTM D412に準じて引張強度を測定した。この時、同じ試験に用いた試験片の個数は、5個とし、引張速度は500mm/分にした。
【0036】
[引裂強度(kg/cm)]
引裂強度は、切断から、引裂き(切断)の対象である材料が受ける最大の力を、切断部の厚さで割った値を意味する。厚さ3mmの試験片を製作して、ASTM D3574とASTM D634に準じて、引裂強度を測定した。測定速度は500mm/分として、5回測定して、平均値を得た。
[硬度]
硬度は、表面の硬さの程度を示す。1kg荷重下で硬度を測定した。厚さ10mmの試験片を製作して、最も硬くて平坦な重複しない5個のポイントを設定した後、Asker Cタイプの硬度計で、ASTM D2240に準じて硬度を測定した。
[スプリットティア(split tear)(kg/cm)]
スプリットティアは、試験片の厚さに垂直に切った線に沿って平行に引き裂くために必要な力を、試験片の幅で割った値を意味する。この時、試験片は、横、縦および厚さをカッターで各々15cm、2.54cmおよび10mmになるようにして製作し、この試験片を用いて、スプリットティアを測定した。
【0037】
[圧縮永久歪み(%)]
発泡体を厚さが10mmになるように切断して、直径30+0.05mmの円柱形態に製造した試験片を、ASTM D3547に準じて測定した。2枚の平行な金属板の間に試験片を入れ、試験片の厚さの50%に該当する厚さを有するスペーサ(spacer)を介在させた後に圧縮させた。次いで、50+0.1℃が維持される空気循環式オーブンで6時間熱処理した後、圧縮装置から試験片を取り出して、室温で30分間冷却した後に厚さを測定した。同じ試験に用いられた試験片の個数を3個にし、圧縮永久歪み(compression set)を次の数式1によって計算した。
【0038】
[数式1]
C
s(%)=[(t
o−t
f)/(t
o−t
s)]×100
ここで、C
sは圧縮永久歪み、t
oは試験片の初期厚さ、t
fは熱処理後に冷却された試験片の厚さ、t
sはスペーサの厚さである。
[発泡体の形態]
発泡体の形態は、射出発泡成形機で発泡させて、エイジングした後の発泡体の形状および気泡の大きさの均一性を、肉眼で観察した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
前記表1および表2から明らかなように、本発明による発泡体は、作業性(加工性)に優れ、生分解性樹脂が含まれていない比較例1に比べて、引裂強度、引張強度および硬度が大きく、圧縮永久歪みが同等である。このように、本発明による発泡体は、機械的物性に優れていることがわかる。また、本発明による発泡体は、二重結合を有しないモノマーが結合されてなる生分解性樹脂を含ませた比較例2〜5に比べて、引裂強度、引張強度および硬度が同等であるものの、圧縮永久歪みが小さい。このように、本発明による発泡体は、気泡の大きさの均一性および発泡体の形状(形態)などの発泡特性に優れることがわかる。