特許第6078219号(P6078219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078219
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】膨張弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/68 20060101AFI20170130BHJP
   F25B 41/06 20060101ALI20170130BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   F16K31/68 S
   F25B41/06 Q
   F16K27/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-17967(P2011-17967)
(22)【出願日】2011年1月31日
(65)【公開番号】特開2012-159119(P2012-159119A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2013年9月3日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 和人
(72)【発明者】
【氏名】茂木 隆
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−183082(JP,A)
【文献】 特開平11−325660(JP,A)
【文献】 意匠登録第1060988(JP,S)
【文献】 特開平9−26235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/68
F16K 27/00
F25B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮器から蒸発器に向かう高圧冷媒が導入され入口路、該入口路に設けられた弁室、該弁室に開口するオリフィス、該オリフィスに接続され、前記入口通路と平行に配置された出口通路、該出口通路に対して前記入口通路と反対側に、かつ前記入口通路及び前記出口通路に対して平行に設けられた戻り路、並びに前記出口通路及び前記戻り通路の間に形成された2つの取付穴を有する弁本体と、
前記弁室内に配設されて前記オリフィスを開閉する弁体と、
前記弁室内に設けられて前記弁体を前記オリフィスの下端に形成された弁座に向けて支持するコイルスプリングと、
前記戻り通路及び前記オリフィスを貫通し、その下端部が前記弁体に当接する弁棒と、
前記蒸発器の出口側の温度及び圧力に基づいて、前記弁棒を介して前記弁体を駆動するパワーエレメントと、を備え膨張弁であって、
前記弁本体は、押出成形により形成された部材であり、
前記押出成形の押出方向から見て前記取付穴位置における最外側に形成された一対の第1の把持面と、前記押出方向から見て前記戻り通路と前記弁本体の上面との間における最外側に形成された一対の第2の把持面と、前記第1の把持部及び前記第2の把持部の間に形成された凹部と、を備える
ことを特徴とする膨張弁。
【請求項2】
凝縮器から蒸発器に向かう高圧冷媒が導入される入口通路、該入口通路に設けられた弁室、該弁室に開口するオリフィス、該オリフィスに接続され、前記入口通路と平行に配置された出口通路、該出口通路に対して前記入口通路と反対側に、かつ前記入口通路及び前記出口通路に対して平行に設けられた戻り通路、並びに前記出口通路及び前記戻り通路の間に形成された2つの取付穴を有する弁本体と、
前記弁室内に配設されて前記オリフィスを開閉する弁体と、
前記弁室内に設けられて前記弁体を前記オリフィスの下端に形成された弁座に向けて支持するコイルスプリングと、
前記戻り通路及び前記オリフィスを貫通し、その下端部が前記弁体に当接する弁棒と、
前記蒸発器の出口側の温度及び圧力に基づいて、前記弁棒を介して前記弁体を駆動するパワーエレメントと、を備えた膨張弁であって、
前記弁本体は、押出成形により形成された部材であり、
前記押出成形の押出方向から見て前記取付穴の位置における最外側に形成された一対の第1の把持面と、前記押出方向から見て前記弁本体の下端部における最外側に形成された一対の第2の把持面と、前記第1の把持部及び前記第2の把持部の間に形成された凹部と、を備える
ことを特徴とする膨張弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルに使用される膨張弁に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置等の冷凍サイクルに使用される膨張弁の弁本体は、アルミニウム合金等の金属材を押出成形した素材に機械加工を施して製造している。
特許文献1は、この種の弁本体を備えた膨張弁を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−206134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
膨張弁の弁本体は、アルミニウム合金材等の押出成形に適した素材を用いるので、材質としては軽量化の要求に適しているが、近年、空調装置の省エネルギー、環境への負荷低減等の要求により、膨張弁の更なる軽量化が強く求められている。膨張弁の弁本体の製造工程では、まず、アルミニウム合金材等を押出成形して長尺の素材を製造し、その長尺の素材を切断して素材を得る。この素材はほぼ角柱状の6面体であって、その4面に機械加工を施し、残る2面は機械加工時のチャック用の面として利用されている。
本発明は、上述した弁本体の構造に着目して、更なる軽量化を達成することができる膨張弁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の膨張弁は、凝縮器から蒸発器に向かう高圧冷媒が導入され入口路、該入口路に設けられた弁室、該弁室に開口するオリフィス、該オリフィスに接続され、前記入口通路と平行に配置された出口通路、該出口通路に対して前記入口通路と反対側に、かつ前記入口通路及び前記出口通路に対して平行に設けられた戻り路、並びに前記出口通路及び前記戻り通路の間に形成された2つの取付穴を有する弁本体と、前記弁室内に配設されて前記オリフィスを開閉する弁体と、前記弁室内に設けられて前記弁体を前記オリフィスの下端に形成された弁座に向けて支持するコイルスプリングと、前記戻り通路及び前記オリフィスを貫通し、その下端部が前記弁体に当接する弁棒と、前記蒸発器の出口側の温度及び圧力に基づいて、前記弁棒を介して前記弁体を駆動するパワーエレメントと、を備え、前記弁本体は、押出成形により形成された部材であり、前記押出成形の押出方向から見て前記取付穴位置における最外側に形成された一対の第1の把持面と、前記押出方向から見て前記戻り通路と前記弁本体の上面との間における最外側に形成された一対の第2の把持面と、前記第1の把持部及び前記第2の把持部の間に形成された凹部と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の膨張弁は、アルミニウム合金材料等を冷間押出成形して弁本体の素材を製造する際に、押出方向の両側面上の2個所を機械加工時にチャック機構で把持する把持面として残して、両側面の他の部分の肉を除去するように凹状に押出成形する。これにより、弁本体に機械加工により形成される冷媒通路周辺の強度を確保しつつ最大限の軽量化を達成することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図。
図2図1の膨張弁の断面図。
図3図1の膨張弁の弁本体の6面図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図、(d)は左側面図、(e)は上面図、(f)は下面図。
図4図3の弁本体をチャック機構で把持した状態を示す説明図。
図5図3の弁本体をチャック機構で把持した状態を示す説明図。
図6】本発明の他の実施形態の弁本体の6面図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図、(d)は左側面図、(e)は上面図、(f)は下面図。
図7図6の弁本体をチャック機構で把持した状態を示す説明図。
図8図6の弁本体をチャック機構で把持した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図3により本発明の一実施形態を説明する。本実施形態の膨張弁は、アルミニウム合金材料で形成される弁本体100と、弁本体100の上面100eに固着されるパワーエレメント40とを備える。図3に示すように、弁本体100は、アルミニウム合金材料を冷間押出成形する際に、押出金型により形成される2つの側面100a、100bと、2つの側面100a、100bに直交する正面100c、背面100d、上面100e及び下面100fとを有する。
【0010】
図2に示すように、弁本体100の背面100dの下端近傍には圧縮機側から送られてくる高圧の液冷媒が導入される入口通路110が形成される。入口通路110の奥壁には小径穴112が設けられ、弁室120に連通される。
【0011】
弁室120は、弁本体100の下面100f側から加工される多段円柱形状の丸穴であって、弁室120の下端開口の内周部にはプラグ16が螺合されるねじ122が形成される。弁室120内には、ボール状の弁体10が配設され、弁体10は支持部材12とコイルスプリング14を介してプラグ16により支持される。プラグ16の上端外周部には環状のシール部材20が嵌合される。弁室120の上部にはオリフィス130が設けられ、その下端には弁体10が接離する弁座124が形成される。
【0012】
弁体10には弁棒30の下端部が当接する。弁本体100には、冷媒の入口通路110と平行に冷媒の出口通路140、142が形成される。これらの出口通路140、142は、弁本体100の正面100c側から機械加工することにより形成される。
【0013】
入口通路110と出口通路140、142の間はオリフィス130により連通されている。オリフィス130内には弁棒30が挿入され、弁棒30は、弁本体100に形成されたガイド穴132により案内されて摺動する。ガイド穴132と同軸状に形成された穴134には防振部材32が装備されて弁棒30及び弁体10の振動を防止する。
【0014】
出口通路142から蒸発器側へ送られた冷媒は、蒸発器で外気との熱交換を行って蒸発し、圧縮機側へ戻るが、この際、冷媒は、弁本体100に形成された戻り通路150を通過する。この戻り通路150は、弁本体100の正面100cから背面100dを貫通する円柱状の穴である。
【0015】
弁棒30は、この戻り通路150を直径方向に貫通して弁本体100の上面100e側へ突出する。弁本体100の上面100e側にはパワーエレメント40を固定するためのねじ穴160が形成される。ねじ穴160に螺合されるパワーエレメント40は、その内部がダイアフラム42によって上下の室に区画され、上側の室がダイアフラム駆動用のガスを封入するガス室44とされている。ダイアフラム42の下面にはストッパ部材50が配設され、ダイアフラム42の変位を弁棒30に伝達し、弁体10を駆動する。
【0016】
ねじ穴160は開口136を介して戻り通路150と連通し、戻り通路150を通過する冷媒の温度と圧力がダイアフラム42の下面に伝達される。弁本体100の上面100eとパワーエレメント40の間には環状のシール部材60が配設される。
【0017】
弁本体100の背面100dの中央部には、1個の有底のねじ穴170が形成される。ねじ穴170の両側には、弁本体100の正面100cから背面100dに貫通する2個の取付穴180が形成される。
【0018】
本実施形態の弁本体100にあっては、弁本体100の左側面100aを形成する面のうちで、最外側の面を形成する2つの平坦な把持面101a、101bを残して、その他の面を把持面101a、101bよりも内側に凹んだ形状としている。
【0019】
把持面101a、101bの間の凹部101cは、戻り通路150の内周面に沿って可及的に薄肉となるように断面波形に形成されている。把持面101bよりも下方の凹部101dは、出口通路142と入口通路110の内周面に沿って可及的に薄肉となるように断面波形に形成されている。
【0020】
把持面101aは、戻り通路150と、パワーエレメント40が装備される弁本体100の上面100eとの間に形成される。把持面101bは、弁本体100の上面100eと下面100fの間のほぼ中央部に形成される。後述するように、2つの把持面101a、101bは、弁本体100に機械加工を施す際に、チャック爪で把持するのに適した幅寸法に形成される。弁本体100の右側面100b側にも同様に2つの把持面102a、102bと薄肉の凹部102c、102dが左側面と対称に形成される。
【0021】
図4は、弁本体100を工作機械のチャック爪C、Cで把持して弁本体100の正面100cと上面100eに機械加工を施す状態を示す。チャック爪C、Cは、弁本体100の左側面100aと右側面100bを押出方向と直交する方向に把持する。上述したように、左側面100aには把持面101a、101bが、右側面100bには把持面102a、102bが形成してあり、把持面101aと102a、101bと102bは互いに平行面を形成しているので、チャック爪C、Cは弁本体100を確実に把持することができる。
【0022】
この状態で弁本体100の正面100c側から背面100d側へ出口通路140、142や戻り通路150の機械加工を行う。又、上面100e側からパワーエレメント40を取り付けるねじ穴160や弁棒30のガイド穴132等の機械加工を行う。チャック爪C、Cは互いに対向する把持面101a、102aと101b、102bとに適切な圧力P、Pを加えて、機械加工時に弁本体100に生じる応力を確実に受けることができる。把持面101a、102aと101b、102bの幅寸法は、圧力P、Pが加えられたときに、弁本体100に不必要な応力が生じることなく、かつ弁本体100の把持に必要な摩擦力を与えることができる最適な寸法に設定される。
【0023】
図5は、弁本体100を上下反転させて把持した状態を示す。この状態で、弁本体100の背面100d側から機械加工を施す。加工個所は、冷媒の入口通路110、小径穴112や戻り通路150をはじめ、有底のねじ穴170、取付用のボルトが挿入される貫通穴180等である。また、この状態で下面100f側から弁室120やオリフィス130等の加工を施す。
【0024】
次に、本発明の他の実施例を図6に基づいて説明する。なお、本実施例の断面形状は図2と同じである。
全体を符号200で示す弁本体は、前述した弁本体100と同様に、左側面200a、右側面200b、正面200c、背面200d、上面200e、下面200fを有する6面体の構造を有する。弁本体200の背面200dの下端側には、冷媒の入口通路210と弁室220に通ずる小径穴212が設けられる。弁本体200の正面200cには冷媒の蒸発器側への出口通路240、242が設けられる。弁本体の上面200e側からは、パワーエレメントの取付用のねじ穴260と、ねじ穴260と同軸状に設けられる弁棒のガイド穴232等が加工される。
【0025】
弁本体200の上面200eの近傍には正面200cから背面200dに貫通する冷媒の戻り通路250が形成され、背面200d側からは、有底のねじ穴270と取付用のボルトの貫通穴280が加工される。弁本体200の素材は、正面200c及び背面200dと直交する方向にアルミニウム合金材料を冷間押出成形することにより製造される。弁本体200の両側面200a、200bには機械加工を施す必要はない。
そこで、両側面200a、200bの上下方向のほぼ中央部に把持面201a、202aを形成し、下端部に把持面201b、202bを形成し、両側面200a、200bのその他の部分は把持面201a、202a及び201b、202bよりも内側に凹むように凹部状に形成する。
【0026】
図7は、この弁本体200を工作機械でチャックした状態を示す。チャック爪C、Cは弁本体200の対向する2個の把持面201a、202a及び201b、202bを把持する。この状態で弁本体200の背面200d側から冷媒の入口通路210、212、冷媒の戻り通路250、有底のねじ穴270、取付ボルト用の2個の貫通穴280等を機械加工する。また、上面200e側からはパワーエレメントの取付用のねじ穴260や弁棒の案内穴232等の必要な加工個所に機械加工が施される。
【0027】
図8は弁本体200を上下回転させてチャック爪C、Cで把持した状態を示す。この状態で弁本体の正面200c側から冷媒の出口通路240、242等の必要個所の機械加工が行われる。この状態で下面200f側からは、弁室220や弁室220を封止するプラグをねじ込むねじ穴222等が機械加工される。
【0028】
本発明の膨張弁の弁本体は以上のように、アルミニウム合金材料等を押出成形して素材を製造することと、押出成形時に金型の面を通過する対向する側面には後工程で機械加工を施す必要がないことに着目して、両側面に機械加工時のチャック爪で把持する2つの把持面を残して、その他の面を凹部に形成することで、最大限の軽量化を達成することができるものである。
【0029】
なお、上記実施形態では、弁本体の下面に弁室を封止するプラグを装着する構造の膨張弁を例に挙げて説明したが、本発明はプラグを装着しない無調整式の膨張弁にも適用可能である。
【0030】
その他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に種々の改変を施すことができる。
【符号の説明】
【0031】
10 弁体
40 パワーエレメント
100 弁本体
100a,100b 側面
100c 正面
100d 背面
100e 上面
100f 下面
101a,101b, 102a,102b 把持面
101c,101d, 102c,102d 凹部
110 入口通路(第1の通路)
112 小径穴(第1の通路)
120 弁室
130 オリフィス
140,142 出口通路(第1の通路)
150 戻り通路(第2の通路)
,Cチャック爪(チャック機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8