【実施例】
【0042】
以下、本発明の具体例について、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるわけではない。なお、以下の実施例では、Ce濃度は、特定の結晶中における濃度か、融液(仕込み)における濃度かのいずれかの記載となっているが、各実施例において、結晶中の濃度1に対して仕込み時の濃度1〜10程度となるような関係があった。
【0043】
(実施例1)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.37Y
0.6Ce
0.03Ga
1Al
4O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた結晶を、
図1に示す。この単結晶は、透明であった。
【0044】
(実施例2)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.37Y
0.6Ce
0.03Ga
2Al
3O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた結晶を、
図2に示す。この単結晶は、透明であった。
【0045】
(実施例3)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.37Y
0.6Ce
0.03Ga
3Al
2O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた結晶を、
図3に示す。この単結晶は、透明であった。
【0046】
(実施例4)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.37Y
0.6Ce
0.03Ga
4Al
1O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0047】
(実施例5)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.57Y
2.4Ce
0.03Al
5O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0048】
(実施例6)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.57Y
2.4Ce
0.03Ga
1Al
4O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0049】
(実施例7)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.57Y
2.4Ce
0.03Ga
2Al
3O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0050】
(実施例8)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.57Y
2.4Ce
0.03Ga
3Al
2O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0051】
(実施例9)
マイクロ引下げ法により、Gd
1.97Lu
1Ce
0.03Al
5O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0052】
(実施例10)
マイクロ引下げ法により、Gd
1.97Lu
1Ce
0.03Ga
1Al
4O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0053】
(実施例11)
マイクロ引下げ法により、Gd
1.97Lu
1Ce
0.03Ga
2Al
3O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0054】
(実施例12)
マイクロ引下げ法により、Gd
1.97Lu
1Ce
0.03Ga
3Al
2O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0055】
(実施例13)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.27Lu
2.7Ce
0.03Al
5O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0056】
(実施例14)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.27Lu
2.7Ce
0.03Ga
1Al
4O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0057】
(実施例15)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.27Lu
2.7Ce
0.03Ga
2Al
3O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0058】
(実施例16)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.27Lu
2.7Ce
0.03Ga
3Al
2O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0059】
(実施例17)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.37Y
0.6Ce
0.03Sc
2Al
3O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0060】
(実施例18)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.27Lu
2.7Ce
0.03Sc
1Al
4O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0061】
(実施例19)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.27Lu
2.7Ce
0.03Sc
2Al
3O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0062】
(実施例20)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.297Lu
2.7Ce
0.003Ga
2Al
3O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0063】
(実施例21)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.27Lu
2.55Ce
0.18Ga
2Al
3O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ単結晶を作製した。得られた単結晶は、透明であった。
【0064】
(比較例1)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.97Ce
0.03Al
5O
12結晶の組成で表されるガーネット型シンチレータ結晶を作製した。得られた結晶は、不透明な多結晶であった。
【0065】
(比較例2)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.37Y
0.6Ce
0.03Al
5O
12結晶の組成で表されるガーネット型シンチレータ結晶を作製した。得られた結晶は、不透明な多結晶であった。
【0066】
(比較例3)
マイクロ引下げ法により、Gd
1.77Y
1.2Ce
0.03Al
5O
12結晶の組成で表されるガーネット型シンチレータ結晶を作製した。得られた結晶は、不透明な多結晶であった。
【0067】
(比較例4)
マイクロ引下げ法により、Y
2.97Ce
0.03Al
5O
12結晶の組成で表されるガーネット型シンチレータ結晶を作製した。得られた結晶は透明な単結晶であった。
【0068】
(比較例5)
マイクロ引下げ法により、Lu
2.97Ce
0.03Al
5O
12結晶の組成で表されるガーネット型シンチレータ結晶を作製した。得られた結晶は透明な単結晶であった。
【0069】
(比較例6)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.57Y
2.4Ce
0.03Ga
5O
12結晶の組成で表されるガーネット型シンチレータ結晶を作製した。得られた結晶は透明な単結晶であった。
【0070】
(比較例7)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.4Lu
0.6Ce
0.03Al
5O
12結晶の組成で表されるガーネット型シンチレータ結晶を作製した。得られた結晶は、不透明な多結晶であった。
【0071】
(比較例8)
マイクロ引下げ法により、Gd
1.97Lu
1Ce
0.03Ga
4Al
1O
12結晶の組成で表されるガーネット型シンチレータ結晶を作製した。得られた結晶は透明な単結晶であった。
【0072】
(比較例9)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.37Y
0.6Ce
0.03Sc
1Al
3O
12結晶の組成で表されるガーネット型シンチレータ結晶を作製した。得られた結晶は、不透明な多結晶であった。
【0073】
(比較例10)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.37Y
0.6Ce
0.03Sc
3Al
3O
12結晶の組成で表されるガーネット型シンチレータ結晶を作製した。得られた結晶は、不透明な多結晶であった。
【0074】
(比較例11)
マイクロ引下げ法により、Lu
2.67Gd
0.3Ce
0.03Sc
3Al
3O
12結晶の組成で表されるガーネット型シンチレータ結晶を作製した。得られた結晶は、不透明な多結晶であった。
【0075】
(比較例12)
熱間静水圧プレス燒結法により、Gd
2.97Ce
0.03Ga
3Al
2O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ透明セラミックスを作製した。得られた透明セラミックスを、
図4に示す。
【0076】
(比較例13)
熱間静水圧プレス燒結法により、Gd
2.97Ce
0.03Ga
3Al
2O
12の組成で表されるガーネット型シンチレータ透明セラミックスを作製した。
【0077】
実施例1〜19、比較例1〜13で得られた単結晶をφ3x2mmサイズに加工・研磨した後、各々のシンチレータ特性を評価した。
【0078】
実施例13、実施例16で得られた結晶をPhotoluminescenceにて測定した。得られたプロファイルを、
図5、6に示す。
図5、6において、横軸は発光波長(nm)、縦軸は励起波長(nm)を表す。
図5においてGd
0.27Lu
2.7Ce
0.03Al
5O
12結晶は発光波長510nm付近にCe
3+の4f5d発光由来の発光ピークが確認され、発光波長312nm付近にGd
3+の4f4f発光由来の発光ピークが確認された。Gd
3+の4f4f発光由来の発光の励起波長は250nm付近であったが、270nm励起においてCe
3+の4f5d発光由来の発光も生じることが分かる。このことから、Gd
3+のエネルギー準位からCe
3+のエネルギー準位へのエネルギー遷移現象の存在が確認できる。一方、実施例16で得られたGd
0.27Lu
2.7Ce
0.03Ga
3Al
2O
12結晶では、Ce
3+の4f5d発光由来の発光ピークは確認されなかった。
【0079】
さらに、実施例13〜16および18,19で得られた単結晶の蛍光減衰曲線を、Photoluminescenceにて観測し、510nm付近のCe
3+の4f5d発光および発光波長312nmのGd
3+の4f4f発光についてそれぞれ蛍光寿命(蛍光減衰時間)を測定した。結果を、表1に示す。510nm付近のCe
3+の4f5d発光を励起波長450nmで直接励起した場合には、32〜51nsの蛍光寿命を示し、GaおよびSc濃度の増加とともに、蛍光寿命が短くなった。また、Ce
3+の4f5d発光をGd
3+の4f4f発光の励起波長である励起波長250nmで励起した場合には、92〜102nsの長寿命成分が確認された。
【0080】
さらに、発光波長312nmのGd
3+の4f4f発光を250nmで励起した場合には、数μs〜127nsの蛍光寿命が得られ、GaおよびSc濃度の増加とともに、蛍光寿命が短くなった。以上の測定結果からもGd
3+のエネルギー準位からCe
3+のエネルギー準位へのエネルギー遷移現象の存在が確認できる。
【0081】
【表1】
【0082】
さらに、実施例15、20,21で得られた単結晶について
137Csからのγ線を照射し蛍光減衰時間および発光量を測定した。結果を、表2に示す。Ce濃度が増加するに従い、蛍光寿命は短くなった。また、実施例20において確認された385nsの長寿命成分は、Ce濃度が増加すると減少した。当該長寿命成分はGd
3+のエネルギー準位からCe
3+のエネルギー準位へのエネルギー遷移の結果生じるものと考えられ、Ce濃度が増加すると、エネルギー遷移の確立が増加し、長寿命成分が減少すると考えられる。同時に発光量も向上しGd
0.27Lu
2.7Ce
0.03Ga
2Al
3O
12で最大となった。この測定結果からもGd
3+のエネルギー準位からCe
3+のエネルギー準位へのエネルギー遷移現象の存在が確認できる。
【0083】
【表2】
【0084】
さらに、実施例3で得られた単結晶について
137Csからのγ線を照射しAPDを用いてエネルギースペクトルを測定した。結果を、
図7に示す。エネルギー分解能は3.6%であった。
【0085】
図8はGd
2.37Y
0.6Ce
0.03Ga
3Al
2O
12結晶を光学接着剤を用いて光電子増倍管に接着し,
252Cf中性子線を照射して得られたエネルギースペクトルである。Gd
2.37Y
0.6Ce
0.03Ga
3Al
2O
12中に含まれるGdと中性子との(n,γ)反応により放出されるγ線がGd
2.37Y
0.6Ce
0.03Ga
3Al
2O
12に吸収されることで生じるフォトピークを確認した。
【0086】
比較例1〜13、実施例1〜21で得られた結晶に関する諸特性を表3にまとめる。これらの結果からもわかる通り、本発明におけるセリウム付活ガーネット型単結晶は、最適なGa濃度、Ce濃度をとることで、高い発光量と高いエネルギー分解能を持ち、さらに蛍光減衰時間を短くかつ長寿命成分も低減できることが分かった。また、発光量480〜550nm付近に発光ピーク波長を有することから、シリコン半導体から構成されるPDやSi−PM等の480〜700nmに感度の高い波長を有する受光器との組み合わせに適している。さらに蛍光寿命は、30〜95ナノ秒程度であり、シンチレータ材料として非常に優れていることが分かる。
【0087】
【表3】