(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した乾式方式(冷却凝縮+吸着濃縮方式)の溶剤回収システムにおいては、冷却回収装置にて被処理ガスから凝縮分離して回収した溶剤溶液の濃度と、溶剤を凝縮分離した後の被処理ガスに残存する溶剤蒸気の濃度との双方を管理する必要がある。例えば、冷却回収装置において分離回収する溶剤溶液の純度を高めるべく、溶剤溶液の濃度を高いレベルに管理することが要求される。
【0008】
一方、溶剤を凝縮分離した後の被処理ガスに残存する溶剤蒸気は、後段の吸着濃縮装置において吸着材に吸着され、被処理ガスから分離回収される。ここで、冷却回収装置から吸着濃縮装置に向けて送出される被処理ガスに残存する溶剤蒸気の濃度が高すぎると、吸着濃縮装置において溶剤を十分なレベルまで浄化することが難しくなる。そのため、吸着濃縮装置の能力を超えないように、冷却回収装置から送出される溶剤蒸気の濃度は、低いレベルに管理することが求められる。
【0009】
ところで、NMP溶剤等の水溶性溶剤は、水分が存在する状況、条件下において飽和蒸気圧が低下するという特性がある。従って、水溶性溶剤及び水分を含む排気ガス(混合ガス)は、溶剤純物質の飽和蒸気圧を上限として、排気ガスの湿度が高くなるに従って飽和蒸気圧が低下する。そのため、水溶性溶剤及び水分を含む排気ガス(混合ガス)は湿度が高くなるほど、凝縮し易くなる。従って、例えば、冷却回収装置において、冷却器(冷却コイル)の出口から排出される被処理ガスの温度をある一定の温度(例えば、12℃)に制御する場合、冷却回収装置において分離回収される溶剤溶液の濃度と、冷却回収装置から送出される被処理ガスに残存する溶剤蒸気の濃度とが、冷却回収装置に導入される被処理ガスの湿度に応じて変化することになる。その結果、冷却回収装置において分離回収される溶剤溶液の濃度、および/又は冷却回収装置から排出される被処理ガスに残存する溶剤蒸気の濃度が、所望のレベルから逸脱する虞がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされてものであって、その目的は、溶剤を含む被処理ガスを冷却することで溶剤蒸気を凝縮させて分離回収する冷却回収装置において、溶剤を凝縮分離した後の被処理ガスに残存する溶剤蒸気の濃度と回収した溶剤凝縮液の濃度との双方を所望のレベルに調整するとともに被処理ガスの冷却に消費されるエネルギー量を低減するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用した。すなわち、本発明は、溶剤蒸気を含む被処理ガスから溶剤を回収する溶剤回収装置であって、冷却媒体が管内を流れる冷却コイルに前記被処理ガスを接触させて、該被処理ガスに含まれる溶剤蒸気を凝縮させる冷却器と、前記冷却器に導入される被処理ガスの露点温度に応じて、前記冷却器の出口における被処理ガスの温度である出口ガス温度を目標温度に調整する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記冷却器の出口における被処理ガスに残存する溶剤蒸気の濃度が第1の基準濃度以下であって、かつ、前記冷却器において生成される溶剤凝縮液の濃度が第2の基準濃度以上となるように、前記出口ガス温度の目標温度を設定する。
【0012】
冷却媒体は、例えば冷凍機などによって製造された冷熱を輸送する液体あるいは気体であり、例えば、水やブライン、冷媒ガス等を例示できる。
【0013】
ここで、「ラウールの法則」によれば、混合溶液に含まれる各成分の飽和蒸気圧は、各々の純成分(純物質)の飽和蒸気圧に比べて低下する。従って、溶剤回収装置に導入される被処理ガスの露点温度が変化すれば、冷却器の出口における被処理ガスに残存する溶剤蒸気と冷却器において生成される溶剤凝縮液の濃度も変化する。
【0014】
本発明においては、出口における被処理ガスに残存する溶剤蒸気の濃度と、冷却器において生成される溶剤凝縮液の濃度の双方が所望のレベルに維持されるように、出口ガス温度の目標温度を冷却器に導入される被処理ガスの露点温度に応じて設定するようにした。これによれば、冷却器に導入される被処理ガスの露点温度に応じて目標温度が適正な値に設定され、冷却器において被処理ガスが必要以上(過剰)に冷却されることがないため、被処理ガスの冷却に消費されるエネルギー量を低減することができる。つまり、本発明によれば、被処理ガスの冷却に消費されるエネルギー量を低減しつつ、冷却器の出口における被処理ガスに残存する溶剤蒸気の濃度と冷却器において生成される溶剤凝縮液の濃度の双方を所望のレベルに調整することができる。
【0015】
また、溶剤回収装置は、溶剤蒸気が発生すると共に該溶剤蒸気を含む被処理ガスが排出される処理室に供給される前の給気、及び、前記処理室から排出された後であって前記冷却器に導入される前の被処理ガスのうち少なくとも何れか一方を除湿して露点温度を低下
させる除湿手段を更に備えていてもよい。そして、前記除湿手段は、前記冷却器の出口における被処理ガスに残存する溶剤蒸気の濃度が第1の基準濃度以下となる第1の条件と、前記冷却器において生成される溶剤凝縮液の濃度が第2の基準濃度以上となる第2の条件の双方を満足する前記出口ガス温度の目標温度が定まるように、前記処理室に供給される前の給気及び前記処理室から排出された後であって前記冷却器に導入される前の被処理ガスのうち少なくとも何れか一方を除湿してもよい。これによれば、外気の露点温度が高くなっても、上記第1の条件と第2の条件とを同時に満たすことの可能な出口ガス温度の目標温度を設定することができる。
【0016】
また、本発明は、溶剤回収装置の制御方法の側面として捉えることができる。すなわち、本発明は、冷却媒体が管内を流れる冷却コイルに被処理ガスを接触させてその被処理ガスに含まれる溶剤蒸気を凝縮させる冷却器を備えた溶剤回収装置の制御方法であって、前記冷却器に導入される被処理ガスの露点温度に応じて、前記冷却器の出口における被処理ガスの温度である出口ガス温度を目標温度に調整する冷却温度調整ステップを有し、前記出口ガス温度の目標温度は、前記冷却器の出口における被処理ガスに残存する溶剤蒸気の濃度が第1の基準濃度以下であって、かつ、前記冷却器において生成される溶剤凝縮液の濃度が第2の基準濃度以上となるような温度に設定される。
【0017】
なお、本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、溶剤を含む被処理ガスを冷却することで溶剤蒸気を凝縮させて分離回収する冷却回収装置において、溶剤を凝縮分離した後の被処理ガスに残存する溶剤蒸気の濃度と回収した溶剤凝縮液の濃度との双方を所望のレベルに調整するとともに被処理ガスの冷却に消費されるエネルギー量を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る溶剤回収装置及びその制御方法に関する実施形態について、図面に基づいて例示的に詳しく説明する。なお、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る溶剤回収システムの概略構成図である。溶剤回収システム1は、有機溶剤によって各種の化学処理を行う生産設備類から排出される排気ガスに含まれる溶剤を回収するシステムである。溶剤回収システム1は、
図1に示すように、溶剤蒸
気を含む被処理ガスをコイルで冷却して溶剤を凝縮回収する溶剤回収装置2と、溶剤回収装置2を通過した被処理ガス中に残存する溶剤蒸気をゼオライトあるいは活性炭等の吸着材で吸着回収する吸着濃縮装置3とを備える。また、溶剤回収システム1は、ガスを送気する各種のファンや熱交換を行うコイルを備える。
【0022】
本実施形態では、リチウムイオン電池工場で使用されるN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという)の溶剤蒸気を含む排気ガス(被処理ガス)からNMP溶剤を回収する例を説明するが、その他の溶剤類であってもよい。リチウムイオン電池工場では電極製造時にNMP溶剤を使用する。具体的には、リチウムイオン電池の電極製造時において、アルミ箔や銅箔の集電材表面にNMP溶剤は塗布され、これを乾燥炉にてNMP溶剤を蒸発、除去することで電極が製造される。リチウムイオン電池の電極製造工程においては、このようにして乾燥炉4からNMP溶剤の蒸気を含む排気が排出される。溶剤回収システム1は、乾燥炉4に付帯して設置されており、溶剤回収装置2及び吸着濃縮装置3を備える。本実施形態においては乾燥炉4が処理室に対応する。
【0023】
乾燥炉4には、雰囲気調整用の給気ガスとして外気OAを含む供給空気(給気)Aが、給気ファン11により給気路12を通じて供給される。一方、乾燥炉4からは、NMP溶剤蒸気を含む高温の排気ガスGが排出される。
【0024】
溶剤回収装置2は、ケーシング20内における排気ガスGの通風経路に上流側から3基のコイル式熱交換器からなる熱回収器21、冷却器22、再熱器23を配置したものである。熱回収器21、冷却器22、及び再熱器23はコイル式の熱交換器である。
【0025】
吸着濃縮装置3は、ケーシング30と、このケーシング30内に設けられると共に通気性の吸着剤層Xを有する吸着ロータ31とを有する。吸着剤層Xには、ゼオライト等の吸着剤が担持されている。ケーシング30の内部は、排気ガス通風ファン13を介装した中継路14を通じて溶剤回収装置2の出口から導かれる排気ガスG’を吸着ロータ31の吸着剤層Xに通過させる吸着域部R1と、脱着用ガス供給路15を通じて導かれる高温の脱着用ガスHを吸着ロータ31の吸着剤層Xに通過させる脱着域部R2とに区画されている。吸着ロータ31を回転させることにより、吸着ロータ31における各部の吸着剤層Xを吸着域部R1と脱着域部R2とに交互に位置(通過)させることができる。
【0026】
吸着濃縮装置3の吸着域部R1は、溶剤回収装置2で処理した後の排気ガスG’に残存するNMP溶剤蒸気を排気ガスG’から分離回収するように機能する。吸着域部R1で残存溶剤蒸気を分離回収した後の排気ガスG”は処理済ガスとして吸着濃縮装置3から処理済ガス路16へ送出される。浄化後の排気ガスG”の一部は、脱着用ファン17及び脱着用ガス加熱器18を介装した脱着用ガス供給路15を通じ、高温に加熱された状態で脱着用ガスHとして吸着濃縮装置3の脱着域部R2に供給される。
【0027】
また、浄化後における排気ガスG”の他の一部は、混合路51を通じて外気路52からの取り入れ外気OAと混合される。この混合空気は、給気Aとして給気路12を通じて給気ファン11により乾燥炉4へと供給される。この給気路12には、溶剤回収装置2に供給される排気ガスGから回収した温熱を用いて給気ガスとしての給気Aを予熱する給気予熱器53及び除塵用のフィルタ54が介装されている。なお、残りの排気ガスG”は、処理済ガス路16を通じて屋外等の外部に排出される。また、外気路52には、外気処理用の空気調和機である外調機6が設けられている。外調機6は、必要に応じて外気を除湿する。本実施形態においては外調機6が除湿手段に相当する。
【0028】
ここで、熱回収器21と再熱器23と給気予熱器53とは、温熱回収用熱媒循環路55を介して相互に接続されている。温熱回収用熱媒循環路55には、循環ポンプ56が設け
られている。循環ポンプ56が作動することにより、熱回収器21と給気予熱器53と再熱器23との三者にわたってこれらの順に温熱回収用の熱媒Naが温熱回収用熱媒循環路55を通じて循環する。なお、熱回収機21と再熱器23と吸気予熱器53とを温熱回収用熱媒循環路55を介して接続し、共通の熱媒Naを循環させる構成は例示的なものであり、種々の設計変更をすることができるのは言うまでもない。例えば、熱回収機21の上流側に別途予熱コイルを設置して当該予熱コイルと再熱器23との間で熱回収を行う構成や、冷却器22と再熱器23との間で熱回収を行う構成等を適宜採用することができる。
【0029】
また、溶剤回収装置2における冷却器22は、冷媒循環路57を介して冷凍機58に接続されている。冷媒循環路57には、循環ポンプ59が設けられている。循環ポンプ59が作動することにより、排気ガスGを冷却するために用いられる冷却水Nbが、冷媒循環路57を通じて冷凍機58から冷却器22に供給される。本実施形態において、冷凍機58から供給される冷却水Nbの温度は、例えば7℃に設定されている。
【0030】
冷媒循環路57には、この冷媒循環路57を流れる冷却水の流量を調節する流量調節弁60が設けられている。また、溶剤回収装置2は、制御器24、露点温度計61、温度計62を備えている。制御器24は、露点温度計61及び温度計62と電気配線(図示せず)を介して接続されており、露点温度計61及び温度計62の検出結果が制御器24に入力される。露点温度計61は、ケーシング20内における熱回収器21と冷却器22との間に配置されている。露点温度計61は、熱回収器21の通過後であって冷却器22に流入する前の排気ガスG、すなわち冷却器22の入口における排気ガスGの露点温度を検出する。なお、気体の露点温度は、相対湿度と温度から求めることができるので、露点温度計61を設置する代わりに湿度計と温度計を設置し、これらの出力値に基づいて排気ガスGの露点温度を取得してもよい。また、露点温度計61は、必ずしもケーシング20内における熱回収器21と冷却器22との間に配置されている必要はなく、他の箇所に配置した露点温度計61の検出結果に基づいて冷却器22の入口における排気ガスGの露点温度を推定してもよい。例えば、露点温度計61は吸気ファンよりも下流側の給気路12に設置してもよいし、排ガス路66に設置してもよい。給気路12に露点温度計61を設置する場合には、給気路12を流れる流体に含まれるNMP溶剤の濃度が低く、また流体の温度も比較的低いため、流体の露点温度の測定精度を高めることができる。
【0031】
温度計62は、ケーシング20内における冷却器22と再熱器23との間に配置されている。温度計62は、冷却器22の通過後であって再熱器23に流入する前の排気ガスGの温度、すなわち冷却器22の出口における排気ガスGの温度を検出する。制御器24は、露点温度計61及び温度計62の検出結果に基づいて、冷却器22の入口における排気ガスGの露点温度、及び、冷却器22の出口における排気ガスGの温度を取得する。
【0032】
更に、制御器24は、流量調節弁60と電気配線を介して接続されており、制御器24から出力される制御信号に基づいて流量調節弁60が制御される。このように制御器24が流量調節弁60を制御することにより、冷媒循環路57を流通する冷却水の流量が調節される。その結果、冷却器22における排気ガスGの冷却温度が調整される。
【0033】
更に、溶剤回収装置2には、排気ガスGを冷却した際に、NMP溶剤蒸気が凝縮することによって滴下するNMP溶剤の凝縮液(液溶剤)を受け止める受液パン63が設けられている。この受液パン63には、排液路64を介して回収容器65が接続されている。受液パン63で受け止めたNMP溶剤液は排液路64を通じて回収容器65に回収される。
【0034】
次に、溶剤回収システム1の運転動作について説明する。乾燥炉4から排出されるNMP溶剤蒸気を含む高温の排気ガスGは、排ガス路66を通じて溶剤回収装置2に供給される。溶剤回収装置2に供給された排気ガスGは、熱回収器21、冷却器22のそれぞれに
おいて熱媒Na、冷却水Nbとの間で熱交換を行い、段階的に冷却される。熱回収器21において熱媒Naが排気ガスGから回収した温熱は給気予熱器53へと供給され、給気Aの予熱に利用される。熱回収器21において冷却された排気ガスGは、冷却器22において更に低い温度まで冷却される。このような段階的な排気ガスGの冷却過程を経て、排気ガスGに含まれるNMP溶剤蒸気が凝縮することにより、NMP溶剤の凝縮液が生成される。このようにして分離回収されたNMP溶剤の凝縮液は、回収容器65に貯留される。
【0035】
上記の如く、冷却器22において冷却された後(すなわち、NMP溶剤を凝縮分離した後)の排気ガスGは、再熱器23において熱媒Naと熱交換を行う。この熱媒Naは、もともと乾燥炉4の排気の熱を付与され、給気予熱器53において外気、または外気と吸着濃縮装置3から送られてきた温排気の混合気と熱交換したものであり、冷却器22において冷却された排気ガスGに比べて温度が高い。そのため、再熱器23において、排気ガスGは加熱される。再熱器23において加熱された後の排気ガスG’は、中継路14を通じて吸着濃縮装置3の吸着域部R1に送気される。吸着濃縮装置3の吸着域部R1に導入された排気ガスG’は、吸着ロータ31の吸着剤層Xを通過する。その際、排気ガスG’に残存するNMP溶剤蒸気が、吸着剤層Xに担持された吸着剤に吸着されることで、排気ガスG’からNMP溶剤蒸気が分離回収される。
【0036】
次に、吸着ロータ31を回転させることによって、吸着域部R1でNMP溶剤蒸気を吸着した吸着剤層Xを脱着域部R2に移動させる。その結果、NMP溶剤蒸気を吸着している吸着剤層Xに対して、脱着用ガス加熱器18によって加熱された高温の脱着用ガスHが脱着用ガス供給路15を通じて導かれ、吸着剤層Xを脱着用ガスHが通過する。これにより、吸着剤層Xに吸着されているNMP溶剤蒸気を、脱着域部R2において排気ガスGよりも流量が少ない脱着用ガスHへと着脱移行させることができる。このようにして、吸着剤層Xから脱着したNMP溶剤蒸気を含む高濃度の濃縮ガスH’は、濃縮ガス移送路19を通じて、乾燥炉4からの排気ガスGとともに、溶剤回収装置2に供給される。これにより、濃縮ガスH’に含まれるNMP溶剤蒸気は、排気ガスGに含まれるNMP溶剤蒸気とともに溶剤回収装置2において冷却され、凝縮して得られたNMP溶剤液が回収容器65に回収される。
【0037】
次に、溶剤回収装置2の制御器24が行う排気ガスGの冷却温度の設定内容について詳しく説明する。溶剤回収装置2の制御器24は、例えば汎用のパーソナルコンピュータであって、プロセッサ、メモリ等を備える。メモリには、各種プログラムが記憶されており、これら各種プログラムが、CPUによって実行される。
【0038】
溶剤回収装置2の制御器24は、冷却器22の入口における排気ガスGの露点温度(湿度)に応じて、制御器24において排気ガスGを冷却する際の冷却温度を制御する冷却温度調整制御を行う。以下、冷却温度調整制御の詳細について説明する。冷却温度調整制御に際して、制御器24は、冷却器22の入口における排気ガスGの露点温度(湿度)に応じて、流量調節弁60の開度を制御する。その結果、上述のように冷媒循環路57を流通する冷却水の流量が調節されることで、冷却器22における排気ガスGの冷却温度が調整される。
【0039】
ところで、混合溶液の各成分の蒸気圧に関連して下記(1)式にて表される「ラウールの法則」が知られている。この「ラウール(Raoult)の法則」によれば、混合溶液の各成分i(i=1,2・・・)の蒸気圧は、それぞれの純液体の蒸気圧と混合液中のモル分率の積で表すことができる(非特許文献2を参照)。
Pi=Pi
*・Xi・・・(1)
ここで、Piは成分iの蒸気圧、Pi
*は成分iの純成分の蒸気圧、Xiは溶液中のモ
ル分率である。
【0040】
上記のように、混合溶液に含まれる各成分の飽和蒸気圧は、各々の純成分(純物質)の飽和蒸気圧に比べて低下することがラウールの法則として知られている。この気液平衡状態は、冷却器22においてNMP溶剤蒸気を冷却し、凝縮させることでNMP溶剤を回収する冷却コイル(熱交換器)表面の濡れ面と気相の間にも成立する。そして、NMP溶剤は水溶性の有機溶剤であり、乾燥炉4から排出されるNMP溶剤蒸気を含む排気ガスGは幾分の湿分を含んでいる。以上のことより、NMP溶剤蒸気と水蒸気を含む排気ガスGの飽和蒸気圧は、NMP溶剤の純物質の飽和蒸気圧よりも低くなるといえる。つまり、溶剤回収装置2の冷却器22に流入する排気ガスGの露点温度(湿度)が高いほど、排気ガスGに含まれるNMP溶剤蒸気は冷却器22において凝縮しやすくなる。なお、排気ガスGの露点温度が高くなるということは排気ガスGに含まれる水蒸気の量が増える。すなわち、この場合にはNMPの濃度を同じとした場合に水蒸気のモル分率が上がり、ラウールの法則でいうと水蒸気は凝縮しにくくなるものの、排気ガスGに含まれる水蒸気の量が多いことにより凝縮する水蒸気の量は増える。
【0041】
図2は、冷却器22の入口における排気ガスGの露点温度(以下、「入口露点温度Tdi」という)と、冷却器22の出口における排気ガスGに残存(残留)するNMP溶剤蒸気の濃度(以下、「NMP蒸気濃度」という)Dveとの関係を例示する図である。
図2に示す入口露点温度TdiとNMP蒸気濃度Dveとの関係は、冷却器22の出口における排気ガスGの温度(以下、「出口ガス温度」という)Thgが12℃の場合のものを示したものである。排気ガスGにおける入口露点温度Tdiが高くなるに従い、排気ガスGに含まれるNMP溶剤蒸気及び水蒸気は冷却器22において凝縮しやすくなる。そのため、排気ガスGの入口露点温度TdiとNMP蒸気濃度Dveとの間には、入口露点温度Tdiが高いほどNMP蒸気濃度Dveが低くなるという関係が成り立つ。
【0042】
一方、
図3は、入口露点温度Tdiと、冷却器22においてNMP溶剤蒸気が凝縮することで生成されるNMP凝縮液濃度Dlqとの関係を例示する図である。
図3に示す入口露点温度TdiとNMP凝縮液濃度Dlqとの関係は、上述の出口ガス温度Thgが12℃の場合のものを示している。排気ガスGにおける入口露点温度Tdiが高くなるに従い、排気ガスG中の水蒸気の量が多くなるので、冷却器22において冷却された際にNMP溶剤蒸気とともに凝縮する水蒸気の凝縮量が増える。従って、排気ガスGにおける入口露点温度TdiとNMP凝縮液濃度Dlqとの間には、入口露点温度Tdiが高くなるに伴ってNMP凝縮液濃度Dlqが高くなるという関係が成り立つ。
【0043】
冷却温度調整制御においては、冷却器22の出口におけるNMP蒸気濃度Dveと、NMP凝縮液濃度Dlqの双方が共に所定の適正範囲に収まるように、冷却器22における排気ガスGの冷却温度が制御される。
【0044】
NMP蒸気濃度Dveの適正範囲は、排気ガスG’に残存するNMP溶剤蒸気を分離回収する吸着濃縮装置3の能力、すなわち吸着濃縮装置3において処理可能なNMP溶剤蒸気の濃度に応じて設定される。例えば、吸着濃縮装置3から処理済ガス路16へ送出される排気ガスG”に含まれるNMP溶剤蒸気に許容される濃度の上限値が20ppmであり、排気ガスG”に含まれるNMP溶剤蒸気の濃度を20ppm以下に維持するためには、吸着濃縮装置3に流入する排気ガスG’のNMP蒸気濃度を150ppm以下にする必要があると仮定する。この場合、冷却器22の出口におけるNMP蒸気濃度Dveに設定される許容上限濃度Dvsは、吸着濃縮装置3の処理能力を超えないように150ppm以下の濃度として設定される。本実施形態においては許容上限濃度Dvsが、第1の基準濃度に対応している。
【0045】
次に、NMP凝縮液濃度Dlqの適正範囲について説明する。溶剤回収装置2における
NMP溶剤凝縮液の回収に際しては、NMP溶剤凝縮液に含まれる水の比率を低減し、回収するNMP溶剤凝縮液の濃度を比較的高く維持したいという基本的な要求がある。これは、回収容器65にて回収したNMP溶剤溶液を再利用に資することを考慮したものである。本実施形態に係る冷却温度調整制御では、NMP凝縮液濃度Dlqの下限側の閾値として設定される許容下限濃度Dlsbを80wt%に設定している。但し、この許容下限濃度Dlsbは、適宜変更してもよい。本実施形態においては許容下限濃度Dlsbが、第2の基準濃度に対応している。
【0046】
図4から6を参照して、冷却器22における排気ガスGの冷却温度の設定方法について説明する。
図4は、冷却器22の出口における排気ガスGに含まれるNMP溶剤蒸気のNMP蒸気濃度Dveと出口ガス温度Thgとの関係を、入口ガス露点温度Tdi毎に例示した図である。
図5は、冷却器22において生成されるNMP溶剤凝縮液のNMP凝縮液濃度Dlqと出口ガス温度Thgとの関係を、入口ガス露点温度Tdi毎に例示した図である。
図4、5において、入口ガス露点温度Tdiは0℃、5℃、12℃の3水準を示している。また、出口ガス温度Thgは、冷却器22における冷却コイルの表面に排気ガスGが接触した際に冷却コイルの管内を流れる冷却水Nb(冷媒)との間で熱交換を行い、冷却された後の温度である。
【0047】
冷却器22において排気ガスGを冷却する際に、より低い温度に排気ガスGを冷却した方が(出口ガス温度Thgがより低くなるように排気ガスGを冷却した方が)、排気ガスGに含まれるNMP溶剤蒸気が凝縮しやすくなる。そのため、
図4に示されるように、出口ガス温度Thgが低くなる程、冷却器2の出口において排気ガスGに残存するNMP溶剤蒸気のNMP蒸気濃度Dveは低くなる。ここで、NMP蒸気濃度Dveの許容上限濃度Dvsを150ppmに設定した場合、許容上限濃度Dvsに対応する出口ガス温度Thgは、入口ガス露点温度Tdiが0℃のケースで13℃、入口ガス露点温度Tdiが5℃のケースで15℃、入口ガス露点温度Tdiが12℃のケースで19℃である。例えば、排気ガスGのNMP蒸気濃度Dveを一定に制御する場合、入口ガス露点温度Tdiによって適正な出口ガス温度Thgが相違し、入口ガス露点温度Tdiが高いほど対応する出口ガス温度Thgが高くなることが、
図4から読み取れる。これは、排気ガスGの入口ガス露点温度Tdiが高いほど、出口ガス温度Thgをあまり低温まで下げることなく、NMP蒸気濃度Dveを許容上限濃度Dvsである150ppm以下に維持することが可能であることを意味する。
図4の例では、入口ガス露点温度Tdiが0℃のケースでは出口ガス温度Thgを13℃以下、入口ガス露点温度Tdiが5℃のケースでは出口ガス温度Thgを15℃以下、入口ガス露点温度Tdiが12℃のケースでは出口ガス温度Thgを19℃以下に調整することで、NMP蒸気濃度Dveを許容上限濃度Dvs(150ppm)以下の適正範囲に維持することができる。
【0048】
次に、
図5を参照して、NMP凝縮液濃度Dlqと出口ガス温度Thgとの関係を説明する。
図5に示されるように、出口ガス温度Thgが高いときほど、NMP凝縮液濃度Dlqが高くなることが判る。更に、出口ガス温度Thgが等しい条件下では、排気ガスGにおける入口露点温度Tdiが低いほど、NMP凝縮液濃度Dlqが高くなる。入口露点温度TdiとNMP凝縮液濃度Dlqとの関係は、
図3において説明したように、入口露点温度Tdiが高いほど、冷却器22において凝縮する水蒸気の凝縮量が増えることによるものである。
【0049】
冷却温度調整制御においては、NMP凝縮液濃度Dlqを調整する際の下限値としての許容下限濃度Dlsbを80wt%に設定している。
図5に示す例では、許容下限濃度Dlsb(80wt%)に対応する出口ガス温度Thgは、入口ガス露点温度Tdiが12℃のケースで17℃、入口ガス露点温度Tdiが5℃のケースで7℃である。また、入口ガス露点温度Tdiが0℃のケースで、出口ガス温度Thgは少なくとも5℃より低くな
っている。
【0050】
以上のことから、NMP凝縮液濃度Dlqを一定に制御しようとする場合、入口ガス露点温度Tdiによって適正な出口ガス温度Thgが相違し、入口ガス露点温度Tdiが高いほど対応する出口ガス温度Thgも高くなる。これは、排気ガスGの入口ガス露点温度Tdiが高い場合、出口ガス温度Thgcをあまり低温まで下げることなく、NMP凝縮液濃度Dlqを許容下限濃度Dlsbである80wt%以上に維持できることを意味する。
図5の例では、入口ガス露点温度Tdiが12℃のケースでは出口ガス温度Thgを17℃以上、入口ガス露点温度Tdiが5℃のケースでは出口ガス温度Thgを7℃以上、入口ガス露点温度Tdiが0℃のケースでは出口ガス温度Thgを少なくとも5℃以上に調整することで、NMP凝縮液濃度Dlqを許容下限濃度Dlsb(80wt%)以上の適正範囲に維持できることが読み取れる。
【0051】
溶剤回収装置2の制御器24は、冷却器22の出口における排気ガスGのNMP蒸気濃度Dveが許容上限濃度Dvs以下に維持され、且つ、冷却器22で生成されるNMP溶剤凝縮液のNMP凝縮液濃度Dlqが許容下限濃度Dlsb以上に維持されるように定められる目標温度に、出口ガス温度Thgを制御する。本実施形態において、冷却温度調整制御を実行する制御器24が制御手段に対応する。
【0052】
図4及び
図5に示した例では、入口ガス露点温度Tdiが12℃の場合、出口ガス温度Thgの適正範囲は17〜19℃となる。また、入口ガス露点温度Tdiが5℃の場合、出口ガス温度Thgの適正範囲は7〜15℃となる。また、入口ガス露点温度Tdiが0℃の場合、出口ガス温度Thgの適正範囲は13℃以下となる。
【0053】
図6は、冷却温度調整制御に係る入口ガス露点温度Tdiと出口ガス温度Thgの目標温度Ttgtとの関係を例示する図である。ここで、冷却器22を稼働させる際、目標温度Ttgtを低く設定する場合に比べて、高く設定する方が、冷凍機58の運転コスト、設備費用を抑えることができる。そこで、本実施形態においては、
図6に示すように、冷却温度調整制御に係る出口ガス温度Thgの目標温度Ttgtを、入口ガス露点温度Tdiに応じて定まる適正範囲の上限値或いはその近傍の温度に設定するようにした。
【0054】
なお、
図6は、冷却器22の出口における排気ガスGのNMP蒸気濃度Dveを150ppmに制御する際の入口ガス露点温度Tdiと出口ガス温度Thgの目標温度Ttgtとの関係を示したものであり、NMP蒸気濃度Dveの値が変更されれば、入口ガス露点温度Tdiに対応する目標温度Ttgtの値が変化することは言うまでもない。また、
図6に示した入口ガス露点温度Tdiと目標温度Ttgtとの関係は、上記(1)式で表すラウールの法則に基づいて求めることができる。
【0055】
図7は、冷却温度調整制御に係る処理フローを示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートは、制御器24のプロセッサがメモリに記憶されている制御プログラムを実行することにより実現される。この制御プログラムは、例えば溶剤回収装置2の稼働中において、所定周期毎に繰り返し実行されるようになっている。
【0056】
ステップS101において、制御器24は、露点温度計61が出力する信号に基づいて、冷却器22の入口における排気ガスGの露点温度である入口ガス露点温度Tdiを取得する。ステップS102において、制御器24は、メモリに格納されている
図6に示したマップ、すなわち出口ガス温度Thgの目標温度Ttgtと入口ガス露点温度Tdiとの関係を規定されたマップを参照する。そして、このマップに現在のガス露点温度Tdiを入力して、対応する目標温度Ttgtを読み出す。
【0057】
続くステップS103において、制御器24は、温度計62が出力する信号に基づいて、現在の出口ガス温度Thgを取得する。そして、制御器24は、ステップS104に進み、出口ガス温度Thgが目標温度Ttgtに一致するように流量調節弁60の弁開度を制御する。その結果、冷却器22の冷却コイルに対して冷凍機58から供給される冷却水Nbの流量が調節され、出口ガス温度Thgが設定目標温度Ttgtに一致するように制御される。
【0058】
ステップS104では、出口ガス温度Thgと設定目標温度Ttgtとの差が基準値以下となるまで、流量調節弁60の弁開度をフィードバック制御してもよいし、また、出口ガス温度Thgと設定目標温度Ttgtとの差に応じて流量調節弁60の弁開度をフィードフォワード制御してもよい。勿論、制御器24は、冷却水Nbの流量を調節する代わりに、或いは冷却水Nbの流量調節と併行して、冷凍機58から送り出される冷却水Nbの温度を、例えばインバータ制御などによって調節してもよい。ステップS104の処理が終了すると、制御器24は本処理フローを一旦終了させる。制御器24は、所定の周期毎に本処理フローを繰り返し実行することで、冷却器22に導入される排気ガスGの入口ガス露点温度Tdiに応じて、冷却器22の出口における排気ガスGの温度である出口ガス温度Thgが調節される。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る冷却温度調整制御によれば、ラウールの法則に基づいて、NMP蒸気濃度Dveが許容上限濃度Dvs以下となるとともにNMP凝縮液濃度Dlqが許容下限濃度Dlsb以上となるような出口ガス温度Thg(目標温度Ttgt)と入口ガス露点温度Tdiとの関係を予め把握しておき、これらの関係が規定された
図6に示すマップを制御器24のメモリに記憶しておく。そして、逐次、入口ガス露点温度Tdiを取得する毎に
図6に示すマップにアクセスし、入口ガス露点温度Tdiに対応する出口ガス温度Thgを読み出すとともに、その読み出した値を出口ガス温度Thgの目標温度Ttgtに設定する。
【0060】
これによれば、冷却器22の出口における排気ガスGに残存するNMP溶剤蒸気のNMP蒸気濃度Dveを、予め設定された許容レベル(例えば、150ppm以下)に抑えることができ、且つ、冷却器22において生成されるNMP溶剤凝縮液の濃度を比較的高いレベル(例えば、80wt%以上)に維持することができる。
【0061】
更に、本実施形態に係る冷却温度調整制御によれば、冷却器22に流入する排気ガスGの入口ガス露点温度Tdiが変動しても、その入口ガス露点温度Tdiに応じて出口ガス温度Thgを適切な温度に調整することができる。これによれば、入口ガス露点温度Tdiが比較的に高いときには、出口ガス温度Thgの目標温度Ttgtを比較的高めに設定することができるため、冷凍機58の運転コストを低減することができる。
【0062】
以上より、本実施形態に係る溶剤回収装置2は、冷却器22に流入する排気ガスGの湿度(露点温度)に応じて、NMP蒸気濃度Dve及びNMP凝縮液濃度Dlqを所望のレベルに管理することができ、しかも、排気ガスGの冷却時に消費されるエネルギー量を可及的に低減することができるので冷凍機58の運転コスト削減の観点からも有利である。
【0063】
次に、実施形態に係る溶剤回収システム1の変形例について説明する。ここで、濃度が85wt%を超えるNMP溶剤は危険物の扱いになるため、回収したNMP溶剤凝縮液が過度に高くならないようにしたいという要請がある。そこで、第1変形例においては、回収容器65に貯留されているNMP溶剤凝縮液の濃度が85wt%を超えた場合には、回収容器65に水を添加する等してNMP溶剤凝縮液の濃度を85wt%以下に維持するとよい。例えば、回収容器65に貯留されているNMP溶剤凝縮液の濃度を80〜85wt%の範囲に維持されるように、必要に応じてNMP溶剤凝縮液に水を添加することが好ま
しい。
【0064】
次に、溶剤回収システム1における第2変形例について説明する。本変形例では、排気ガスGにおける入口露点温度Tdiが基準露点温度Tdib以下に維持されるように、外調機6を用いて予め外気OA(給気A)を除湿する。
【0065】
ところで、排気ガスGの入口露点温度Tdiが高くなるに従い、冷却器22の出口におけるNMP蒸気濃度Dveを許容上限濃度Dvs以下に維持する事が可能な出口ガス温度Thgの上限値と、NMP凝縮液濃度Dlqを許容下限濃度Dlsb以上に維持可能な出口ガス温度Thgの下限値の双方が上昇する(
図4、5を参照)。
【0066】
従って、入口露点温度Tdiが高くなり過ぎると、NMP蒸気濃度Dve及びNMP凝縮液濃度Dlqを同時に適正範囲に維持できる温度に出口ガス温度Thgの目標温度Ttgtを設定することができなくなる虞がある。例えば、東京の夏期における設計外気温湿度条件である、気温33℃、相対湿度60%RHであれば、外気OAの露点温度は24℃となる。この条件下では、冷却器22に乾燥炉4から排出された排気ガスGをそのまま導いたのでは、入口露点温度Tdiが高すぎてしまい、出口ガス温度Thgの目標温度Ttgtを適切に設定することができなくなる。
【0067】
そこで、本変形例において、外調機6は、冷却器22の出口におけるNMP溶剤蒸気のNMP蒸気濃度Dveが許容上限濃度Dvs以下となる第1の条件と、冷却器22において生成されるNMP溶剤凝縮液のNMP凝縮液濃度Dlqが許容下限濃度Dlsb以上となる第2の条件の双方を満足する出口ガス温度Thgの目標温度Ttgtが定まるように、外気OAを除湿するようにした。
【0068】
本変形例において、上記基準露点温度Tdibは12℃に設定されており、入口露点温度Tdiが12℃以下となるように、外気OAは必要に応じて外調機6によって除湿される。例えば、外調機6は、入口露点温度Tdiが12℃以下に保たれるように、温度23℃、相対湿度50%RH程度の空調条件にて外気OAを除湿し、外気OAの露点温度を予め低下させておくようにしてもよい。
【0069】
これによれば、外部から取り込まれる外気OAの露点温度が高くなる条件下であっても、外調機6が外気OAの除湿を行う事によって、上述した第1の条件と第2の条件の双方を満足するような目標温度Ttgtを容易に設定することができる。なお、第1の条件に関し、許容上限濃度Dvsは、吸着濃縮装置3の処理能力(容量)に応じて決定される。そのため、基準露点温度Tdibの設定は、吸着濃縮装置3の処理能力(容量)の大小を考慮して定めることが好ましい。別の言い方をすると、吸着濃縮装置3の容量は、外調機6や冷却器22の処理能力を考慮して決定することが好ましい。
【0070】
なお、本変形例においては、排ガス路66に空調機(図示せず)を配置し、この空調機を用いて乾燥炉4から排出された後であって冷却器22に導入される前の排気ガスGを除湿してもよい。この場合、排ガス路66に配置する空調機及び外調機6を併用して、入口露点温度Tdiを基準露点温度Tdib以下にコントロールしてもよい。
【0071】
以上述べた実施の形態は本発明を説明するための一例であって、本発明の本旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得る。上述した実施形態及びその変形例は、組み合わせて実施することができる。