(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態に即して説明する。
図1は本発明の一例によるガスケット10の模式断面図であり、
図2はかかるガスケット10を2つの被着体の間に介在させて、2つの面の合わせ面の間を密封した状態を模式的に示した断面図である。
【0014】
本発明のガスケットは、かかる一例のガスケット10に示されるように、粘着シート1と該粘着シート1の片面に積層された基材シート2とを有するものであり、2つの被着体20、21の対向面の間(すなわち、2つの面の合せ面の間)に介在させて用いられる(
図2)。
【0015】
被着体20、21へ密着させるガスケットの両面10A、10Bの一方(すなわち、ガスケットの一方の片面)が、粘着シート1の粘着面1aによって形成されており、粘着シート1の粘着面1aが一方の被着体20に貼り付くことで、ガスケット10は2つの被着体20、21の対向面の間に位置ズレを起こすことなく配置される。
【0016】
基材シート2は、粘着シート1に自己支持性を与えて、ガスケットの取り付け作業性を向上させるとともに、ガスケット10の不所望な変形を抑制して、被着体20、21へのガスケット10の密着性を向上させる。
【0017】
本発明のガスケットは、粘着シート1がノンハロゲン系難燃剤を含有することが好ましい。これにより、優れたシール性能とともに、燃焼時に有毒なハロゲン系ガスを発生することがなく、高い難燃性を付与することができる。
【0018】
上記一例のガスケット10において、粘着シート1は単一の粘着層1Aからなる粘着シートであるが、本発明において、粘着シート1は粘着層/芯材フィルム/粘着層の順に積層された積層形態の粘着シートであってもよい。
図3は積層形態の粘着シートであり、粘着層1A/芯材フィルム1B/粘着層1Aの順に積層されている。
【0019】
本発明のガスケットは、通常、2つの被着体の対向面の間(すなわち、2つの面の合せ面の間)に介在させ、2つの被着体間をボルト締めするなどして、2つの被着体の対向面の間に圧縮固定される。
【0020】
本発明のガスケットは、以下の圧縮歪み回復試験(I)による歪み回復率が40%以上である。
圧縮歪み回復試験(I):平面形状が10mm四方の正方形とした試料を80℃に加温した状態でその厚み方向に荷重を掛けて該試料の厚みが圧縮前の試料の総厚みに対して75%となるまで圧縮し、その後荷重を開放し、開放から3時間後の試料の総厚みを測定し、下記の式より、歪み回復率を算出する。
歪み回復率(%)=(開放から3時間後の試料の総厚み−(圧縮前の試料の総厚み×0.75))/(圧縮前の試料の総厚み×0.25)×100
【0021】
上記の歪み回復率は、基材シートを含めたガスケット全体のガスケットの厚み方向への圧縮に対する反発弾性の持続性の指標であり、その値が大きいほど、ガスケットの被着体への高い圧接力が持続する。本発明のガスケットは、かかる歪み回復率が40%以上であることから、より優れたシール性能(特に、水などの液体に対してより優れた密閉性)が得られる。かかる歪み回復率は、40〜100%であることが好ましく、50〜100%であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明のガスケットにおいて、粘着層は感圧性接着剤により形成される。また、ノンハロゲン系難燃剤を含有する粘着層の場合、感圧性接着剤にノンハロゲン系難燃剤を配合せしめた粘着剤組成物によって形成される。感圧性接着剤は特に限定はされないが、弾力性、圧縮性及び密着性に優れる粘着層を形成できるものが好ましく、アクリル系、シリコーン系又はポリオキシアルキレン系の粘着剤が挙げられる。なかでも、ポリオキシアルキレン系粘着剤は弾力性、圧縮性及び密着性に優れ、しかも、再剥離性に優れる粘着層を形成できるので、ポリオキシアルキレン系粘着剤を使用することで、メンテナンス時の被着体からのガスケットの離脱を容易に行えるという利点がある。
【0023】
(アクリル系粘着剤)
粘着層1Aの粘着剤にアクリル系粘着剤を使用する場合、アルキル(メタ)アクリレートを主たるモノマーユニットとするアクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。なお、ここでいう「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよび/またはメタクリレート」と同義である。
【0024】
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の平均炭素数は1〜18程度が好ましく、かかるアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用される。中でもアルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
アクリル系ポリマー中には、粘着シートの被着体への接着性や耐熱性の改善を目的に、1種類以上の各種モノマーを共重合により導入してもよい。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホ基含有モノマー;アクリル酸2−(ホスホノオキシ)エチル、などの燐酸基含有モノマーなどが挙げられる。また、窒素含有ビニルモノマーが挙げられ、例えば、マレイミド、N−シクロへキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド;N−アクリロイルモルホリン;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、3−(3−ピリジニル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマーなどが挙げられる。
【0026】
さらに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、含フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども挙げられる。
【0027】
これらの中でも、粘着シート1の被着体への接着性、接着耐久性、耐候性などの点から、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有モノマーが好適であり、特に好ましくはアクリル酸である。また、粘着層に架橋構造を導入するのが好ましく、アクリル系粘着剤には通常ベースポリマーに加えて架橋剤を含有させる。よって、架橋剤にイソシアネート系架橋剤を用いる場合は、イソシアネート基との反応性が良好である点から、共重合モノマーには、少なくともヒドロキシル基含有モノマーを使用するのが好適である。
【0028】
アクリル系ポリマー中の共重合モノマーの割合は、重量比率において、0.1〜10重量%程度であるのが好ましい。また、アクリル系ポリマーの平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量が、一般に30万〜250万程度である。
【0029】
アクリル系ポリマーは種々の公知の手法により製造され、たとえば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法などのラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。反応温度は通常50〜80℃程度、反応時間は1〜8時間とされる。
【0030】
アクリル系粘着剤に含有させる架橋剤(硬化剤)としては、イソシアネート系、エポキシ系、過酸化物系、金属キレート系、オキサゾリン系などの公知の架橋剤を適宜に使用可能である。これら架橋剤は1種を、または2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.5〜5重量部が好ましく、より好ましくは1〜2重量部である。架橋剤の使用量が、0.5重量部未満では、粘着層1Aのゲル分率を十分に高めることが困難な傾向となり、5重量部を超えると架橋が進みすぎて粘着層1Aの接着性が低下するおそれがある。
【0031】
(シリコーン系粘着剤)
粘着層1Aの粘着剤にシリコーン系粘着剤を使用する場合、シリコーン系粘着剤は特に限定されず、一般的に多く用いられている、過酸化物架橋型シリコーン系粘着剤(過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤)や、付加反応型シリコーン系粘着剤を好適に用いることができる。これら、過酸化物架橋型シリコーン系粘着剤及び付加反応型シリコーン系粘着剤は市販品を使用することができ、過酸化物架橋型シリコーン系粘着剤の具体例としては、信越化学製のKR−3006A/BT、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSH 4280 PSAなどが挙げられる。また、付加反応型シリコーン系粘着剤の具体例としては、信越化学製のX−40−3501、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のBY 24−712、GE東芝シリコーン社製のTSE32Xなどが挙げられる。
【0032】
(ポリオキシアルキレン系粘着剤)
粘着層1Aの粘着剤にポリオキシアルキレン系粘着剤を使用する場合、ポリオキシアルキレン系粘着剤としては、下記A〜C成分を含む組成物の硬化物が好ましい。
A:1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体
B:1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物
C:ヒドロシリル化触媒
【0033】
上記A成分の「1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体」は、粘着剤の主体となる粘着ポリマーであり、特に制限はなく、各種のものを用いることができるが、中でも、重合体の主鎖が、下記の一般式(1)で示される繰り返し単位を有するものが好適である。
【0034】
一般式(1):−R
1−O−
(式中、R
1はアルキレン基である)
【0035】
R
1は、炭素数1〜14の、さらには2〜4の、直鎖状又は分岐状のアルキレン基が好ましい。
【0036】
一般式(1)で示される繰り返し単位の具体例としては、−CH
2O−、−CH
2CH
2O−、−CH
2CH(CH
3)O−、−CH
2CH(C
2H
5)O−、−CH
2C(CH
3)
2O−、−CH
2CH
2CH
2CH
2O−などが挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特に、入手性、作業性の点から、−CH
2CH(CH
3)O−を主たる繰り返し単位とする重合体が好ましい。また、重合体の主鎖にはオキシアルキレン基以外の繰り返し単位が含まれていてもよい。この場合、重合体中のオキシアルキレン単位の総和は、80重量%以上が好ましく、特に好ましくは90重量%以上である。
【0037】
A成分の重合体は、直鎖状の重合体でも分岐を有する重合体でもよく、それらの混合物であってもよいが、粘着層が種々の材質の面に対して良好な粘着性を示すために、直鎖状の重合体を50重量%以上含有していることが好ましい。
【0038】
A成分の重合体の分子量としては、数平均分子量で500〜50,000が好ましく、5,000〜30,000がさらに好ましい。数平均分子量が500未満のものでは、得られる硬化物が脆くなりすぎる傾向があり、逆に数平均分子量が50,000を超えるものは、高粘度になりすぎて作業性が著しく低下する傾向となるために好ましくない。ここでいう数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求められる値のことである。
【0039】
また、A成分の重合体は、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.6以下である分子量の分布が比較的狭いものが好ましく、Mw/Mnが1.6以下である重合体は、組成物の粘度が低くなり、作業性が向上する。よって、Mw/Mnは、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.4以下である。なお、ここでいう、Mw/Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求められる値のことである。
【0040】
ここで、GPC法による分子量の測定は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)を用いて測定される、ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
サンプル濃度:0.2重量%(THF溶液)
サンプル注入量:10μl
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
測定温度:40℃
カラム:サンプルカラム TSKgel GMH−H(S)
検出器:示差屈折計
【0041】
A成分の重合体(1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体)において、アルケニル基は特に制限はないが、下記の一般式(2)で示されるアルケニル基が好適である。
【0042】
一般式(2):H
2C=C(R
2)−
(式中、R
2は水素又はメチル基である)
【0043】
アルケニル基のポリオキシアルキレン系重合体への結合様式は、特に制限はないが、例えば、アルケニル基の直接結合、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、ウレア結合などが挙げられる。
【0044】
かかるA成分の重合体の具体例としては、
一般式(3):{H
2C=C(R
3a)−R
4a−O}a
1R
5a
(式中、R
3aは水素又はメチル基、R
4aは炭素数1〜20の2価の炭化水素基であって、1個以上のエーテル基が含まれていてもよい、R
5aはポリオキシアルキレン系重合体残基であり、a
1は正の整数である。)
で示される重合体が挙げられる。式中のR
4aは、具体的には、−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2−,−CH
2CH
2OCH
2CH
2−、または−CH
2CH
2OCH
2CH
2CH
2−などを挙げることができるが、合成の容易さからは−CH
2−が好ましい。
【0045】
また、一般式(4):{H
2C=C(R
3b)−R
4b−OCO}a
2R
5b
(式中、R
3b、R
4b、R
5b及びa
2は、それぞれR
3a、R
4a、R
5a、a
1と同義である。)
で示されるエステル結合を有する重合体が挙げられる。
【0046】
また、一般式(5):{H
2C=C(R
3c)}a
3R
5c
(式中、R
3c、R
5c及びa
3は、それぞれR
3a、R
5a、a
1と同義である。)
で示される重合体も挙げられる。
【0047】
さらに、一般式(6):{H
2C=C(R
3d)−R
4d−O(CO)O}a
4R
5d(式中、R
3d、R
4d、R
5d及びa
4は、それぞれR
3a、R
4a、R
5a及びa
1と同義である。)
で示されるカーボネート結合を有する重合体も挙げられる。
【0048】
アルケニル基は、A成分の重合体1分子中に少なくとも1個、好ましくは1〜5個、より好ましくは、1.5〜3個存在するのがよい。A成分の重合体1分子中に含まれるアルケニル基の数が1個未満になると、硬化性が不充分になり、また5個より多くなると網目構造があまりに密となるため、良好な粘着特性を示さなくなる場合がある。なお、A成分の重合体は、特開2003-292926号公報に記載の方法に従って、合成することができる。なお、市販されているものは、市販品を使用してもよい。
【0049】
A成分の重合体の特に好ましい態様としては、ポリプロピレングリコールの両末端にアリル基が結合した末端アリル化ポリオキシプロピレンが挙げられる。
【0050】
B成分である「1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を含有する化合物」は、A成分(粘着ポリマー)を硬化させる硬化剤であり、ヒドロシリル基(Si−H結合を有する基)を有するものであれば特に制限無く使用できるが、原材料の入手の容易さやA成分への相溶性の面から、特に有機成分で変性されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。上記有機成分で変性されたポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1分子中に平均して2〜8個のヒドロシリル基を有するものがより好ましい。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの構造を具体的に示すと、例えば、
【0052】
(式中、2≦m
1+n
1≦50、2≦m
1、0≦n
1である。R
6aは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であり、1個以上のフェニル基を含有してもよい)、
【0054】
(式中、0≦m
2+n
2≦50、0≦m
2、0≦n
2である。R
6bは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であり、1個以上のフェニル基を含有してもよい)、
又は、
【0056】
(式中、3≦m
3+n
3≦20、2≦m
3≦19、0≦n
3<18である。R
6cは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であり、1個以上のフェニル基を含有してもよい)
などで示される鎖状又は環状のものや、これらのユニットを2個以上有する、以下の
【0058】
(式中、1≦m
4+n
4≦50、1≦m
4、0≦n
4である。R
6dは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であり、1個以上のフェニル基を含有してもよい。2≦b
1である。R
8aは2〜4価の有機基であり、R
7aは2価の有機基である。ただし、R
7aは、R
8aの構造によってはなくても構わない。)、
【0060】
(式中、0≦m
5+n
5≦50、0≦m
5、0≦n
5である。R
6eは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であり、1個以上のフェニル基を含有してもよい。2≦b
2である。R
8bは2〜4価の有機基であり、R
7bは2価の有機基である。ただし、R
7bは、R
8bの構造によってはなくても構わない。)、又は
【0062】
(式中、3≦m
6+n
6≦50、1≦m
6、0≦n
6である。R
6fは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であり、1個以上のフェニル基を含有してもよい。2≦b
3である。R
8cは2〜4価の有機基であり、R
7cは2価の有機基である。ただし、R
7cは、R
8cの構造によってはなくても構わない。)
などで示されるものが挙げられる。
【0063】
B成分の「1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物」は、A成分及びC成分との相溶性、又は、系中での分散安定性が良好なものが好ましい。特に系全体の粘度が低い場合には、B成分として上記各成分との相溶性の低いものを使用すると、相分離が起こり硬化不良を引き起こすことがある。
【0064】
A成分及びC成分との相溶性、又は、分散安定性が比較的良好なB成分を具体的に示すと、以下のものが挙げられる。
【0066】
(式中、n
7は4以上10以下の整数である。)
【0068】
(式中、2≦m
8≦10、0≦n
8≦5であり、R
6gは炭素数8以上の炭化水素基である。)
【0069】
当該B成分の好ましい具体例としては、ポリメチルハイドロジェンシロキサンが挙げられ、また、A成分との相溶性確保と、SiH量の調整のために、α−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン、アリルアルキルエーテル、アリルアルキルエステル、アリルフェニルエーテル、アリルフェニルエステルなどにより変性した化合物が例示され、一例として、以下の構造があげられる。
【0071】
(式中、2≦m
9≦20、1≦n
9≦20である。)
【0072】
B成分は、公知の方法により合成することができるが、市販されているものは、市販品を使用してもよい。
【0073】
C成分の「ヒドロシリル化触媒」は特に限定されず、任意のものを使用できる。具体例としては、たとえば、塩化白金酸;白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、Pt
n(ViMe
2SiOSiMe
2Vi)
m、Pt〔(MeViSiO)
4〕
mなど};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh
3)
4、Pt(PBu
3)
4など};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)
3〕
4、Pt〔P(OBu)
3〕
4など};Pt(acac)
2;Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号に記載された白金−炭化水素複合体;Lamoreauxらの米国特許第3220972号に記載された白金アルコラート触媒などが挙げられる。なお、これらの式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基、acacはアセチルアセトナトを表し、n、mは整数を表す。
【0074】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh
3)
3、RhCl
3、Rh/Al
2O
3、RuCl
3、IrCl
3、FeCl
3、AlCl
3、PdCl
2・2H
2O、NiCl
2、TiCl
4などが挙げられる。
【0075】
これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−ホスフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)
2などが好ましい。
【0076】
C成分の配合量は、特に制限はないが、組成物のポットライフの確保及び硬化物(粘着層)の透明性の観点から、A成分中のアルケニル基1molに対して一般に1×10
−1mol以下、好ましくは5.3×10
−2mol以下であり、硬化物(粘着層)の透明性の観点から、より好ましくは3.5×10
−2mol以下、とりわけ好ましくは1.4×10
−3mol以下である。A成分中のアルケニル基1molに対して1×10
−1molを超えると、最終的に得られる硬化物(粘着層)が黄変しやすく、硬化物(粘着層)の透明性が損なわれる傾向となる。なお、C成分の配合量が少なすぎる場合、組成物の硬化速度が遅く、また硬化性が不安定になる傾向となるため、C成分の配合量は8.9×10
−5mol以上が好ましく、1.8×10
−4mol以上がより好ましい。
【0077】
以上説明したA〜C成分を含む組成物は、加熱により硬化する。すなわち、A成分(1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体)中のアルケニル基が、ヒドロシリル化触媒(C成分)の存在下、B成分の1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物のヒドロシリル基(Si−H結合を有する基)でヒドロシリル化されて、架橋構造が進行することによって硬化が成される。かかる硬化物は、粘着付与樹脂を無添加または少量添加であっても、粘着特性(他の物体への接着機能)を発現できるという特徴を有する。また、活性が低く、水、金属、プラスチック材料などの種々の物質に接触しても反応しない。
【0078】
A〜C成分を含む組成物において、A成分とB成分は、B成分(化合物B)のヒドロシリル基が、A成分(化合物A)のアルケニル基に対して官能基比が1以上、10未満となるように配合されることが好ましく、より好ましくは2以上、8未満の範囲であり、さらに一層好ましくは3以上、6未満の範囲である。前記官能基比が10以上の組成では、粘着層1Aのゲル分率を十分に高めることが困難な傾向となり、また、前記官能基比が1未満になると、硬化物における架橋が緩くなりすぎて、高温で特性保持が困難となる場合がある。
【0079】
(ノンハロゲン系難燃剤)
本発明において、粘着層1Aに含有し得るノンハロゲン系難燃剤は、特に限定されず、水和金属化合物系、無機化合物系、リン系、シリコーン系、窒素化合物系、有機金属化合物系などの公知のハロゲン原子を含有しない難燃剤を使用することができる。なかでも、難燃性の付与効果、燃焼時のドリップ抑制、環境規制への適合性などに優れる点でリン系難燃剤が好ましい。
【0080】
水和金属化合物系難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。また、無機化合物系難燃剤としては、アンチモン化合物、硼酸亜鉛、錫酸亜鉛、モリブデン化合物、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ゼオライト、酸化チタン、ナノフィラー(モンモリロナイト(MMT)、ナノ水和金属化合物、シリカ)、カーボンナノチューブ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0081】
リン系難燃剤としては、リン酸エステル類、芳香族縮合リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウム類などが挙げられる。リン酸エステル類の具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート(TEP)、トリn−ブチルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート(XDP)などが挙げられる。芳香族縮合リン酸エステル類の具体例としては、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビスジキシレニルホスフェートなどが挙げられる。ポリリン酸アンモニウム類の具体例としては、ポリリン酸アンモニウム(APP)、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム、被覆ポリリン酸アンモニウムが挙げられる。ここで被覆ポリリン酸アンモニウムとは、ポリリン酸アンモニウムを樹脂で被覆もしくはマイクロカプセル化して耐水性をあげたものである。なお、リン酸エステル類、芳香族縮合リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウム類は併用することができる。中でも、リン酸エステル類による炭化層形成の難燃効果と、ポリリン酸アンモニウム類による不燃性ガス発生の難燃効果の組み合わせにより、固相と気相の双方を難燃化できる点で、リン酸エステル類とポリリン酸アンモニウム類の併用が好ましい。
【0082】
シリコーン系難燃剤としては、ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンなどが挙げられる。
【0083】
窒素化合物系難燃剤としては、ヒンダードアミン化合物、メラミンシアヌレート、トリアジン化合物、グアニジン化合物などが挙げられる。
【0084】
有機金属化合物系難燃剤としては、エチレンジアミン4酢酸銅、パーフルオロブタンスルホン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0085】
ノンハロゲン系難燃剤は1種又は2種以上を併用することができる。また、その使用量は難燃剤の種類によっても異なるが、一般的には、難燃性付与、炭化層形成によるドリップ抑制効果などがより効果的に得られるという観点から、粘着剤の粘着ポリマー100重量部に対して10重量部以上が好ましく、30重量部以上がより好ましく、50重量部以上が特に好ましい。また、より良好な粘着特性、保存性などが得られるという観点から200重量部以下が好ましく、150重量部以下がより好ましく、100重量部以下が特に好ましい。
【0086】
(粘着付与樹脂)
本発明において、粘着層1Aには、ガスケットの被着体への密着性や難燃性を向上させるために、粘着付与樹脂を含有させることができる。粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、石油系粘着付与樹脂などが挙げられる。粘着付与樹脂は1種又は2種以上を使用できる。
【0087】
テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
【0088】
フェノール系粘着付与樹脂としては、各種フェノール類(例えば、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなど)とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂など)、前記フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、前記フェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックなどが挙げられる。
【0089】
ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)、これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合などにより変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンの他、その他の化学的に修飾されたロジンなど)、各種のロジン誘導体などが挙げられる。前記ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物などのロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン類又は不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体などのロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩などが挙げられる。また、ロジン誘導体としては、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂なども用いることができる。
【0090】
なお、上記のロジンエステル類を得る際に使用されるアルコール類はエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの2価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4価アルコール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなどが挙げられ、これらはいずれか1種が単独で、または2種以上が組み合わせて使用される。
【0091】
石油系粘着付与樹脂としては、例えば、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂(脂肪族環状石油樹脂)、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加石油樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂などの公知の石油樹脂を用いることができる。具体的には、芳香族系石油樹脂としては、例えば、炭素数が8〜10であるビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、インデン、メチルインデンなど)が1種のみ又は2種以上用いられた重合体などが挙げられる。芳香族系石油樹脂としては、ビニルトルエンやインデンなどの留分(いわゆる「C9石油留分」)から得られる芳香族系石油樹脂(いわゆる「C9系石油樹脂」)を好適に用いることができる。また、脂肪族系石油樹脂としては、炭素数4〜5のオレフィン(例えば、ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1など)、ブタジエン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン、イソプレンなどのジエン類から選択される1種又は2種以上を用いて得られた重合体などが挙げられる。また、脂肪族系石油樹脂としては、ブタジエン、ピペリレン、イソプレンなどの留分(いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」など)から得られる脂肪族系石油樹脂(いわゆる「C4系石油樹脂」や「C5系石油樹脂」など)を好適に用いることができる。脂環族系石油樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂(いわゆる「C4系石油樹脂」や「C5系石油樹脂」など)を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン、エチリデンビシクロヘプテン、ビニルシクロヘプテン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、リモネンなど)の重合体又はその水素添加物、前記の芳香族系炭化水素樹脂や下記の脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂などが挙げられる。脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、スチレン−オレフィン系共重合体などが挙げられる。また、脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、いわゆる「C5/C9共重合系石油樹脂」などを用いることができる。
【0092】
粘着付与樹脂は、ガスケットの難燃性の点から、テルペン系粘着付与樹脂及び/又はロジン系粘着付与樹脂が好ましく、ロジン系粘着付与樹脂が特に好ましい。テルペン系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂は難燃助剤としての効果が得られやすく、これらを使用することで、ガスケットの被着体への密着性とともにガスケットの難燃性をより顕著に向上させることができる。なお、テルペン系粘着付与樹脂は、テルペンフェノール樹脂が特に好ましく、ロジン系粘着付与樹脂はロジンエステル類(すなわち、未変性ロジン、水添ロジン、不均化ロジン又は重合ロジンのエステル化物)が特に好ましく、ロジンエステル類は、3価以上の多価アルコールエステルが好ましく、4〜6価の多価アルコールエステルが特に好ましい。
【0093】
粘着付与樹脂は1種又は2種以上を併用でき、その使用量は特に限定されないが、炭素源となって、リン系難燃剤の助剤としての効果が十分に発揮されるという観点から、粘着剤100重量部に対して5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましく、15重量部以上が特に好ましい。また、粘着特性の維持、保存性、ハンドリング性、分散性などの観点から、100重量部以下が好ましく、60重量部以下がより好ましく、40重量部以下が特に好ましい。
【0094】
本発明において、粘着層1Aには、必要に応じて、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末などからなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜配合することもできる。また、基材シート2との接着性をより高めるために接着付与剤を適宜配合することもできる。接着付与剤の例としては、各種シランカップリング剤やエポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、エポキシ基、メタクリロイル基、ビニル基などの官能基を有するシランカップリング剤は接着性の発現にも効果が大きいため、好ましい。また、シランカップリング剤やエポキシ樹脂と併用して、シリル基やエポキシ基を反応させるための触媒を添加することができる。なお、粘着剤にポリオキシアルキレン系粘着剤(上記A〜C成分を含む組成物の硬化物からなる粘着剤)を使用する場合、かかる触媒は、粘着剤を生成させる硬化反応(ヒドロシリル化反応)に対する影響を考慮しなければならない。
【0095】
また、粘着剤にポリオキシアルキレン系粘着剤(上記A〜C成分を含む組成物の硬化物からなる粘着剤)を使用する場合、保存安定性を改良する目的で、保存安定性改良剤を配合してもよく、この保存安定性改良剤としては、上記B成分の保存安定剤として知られている公知の化合物を制限なく使用できる。例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などを好適に用いることができる。具体的には、2−ベンゾチアゾリルサルファイド、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルアセチレンダイカルボキシレート、ジエチルアセチレンダイカルボキシレート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンE、2−(4−モルホリニルジチオ)ベンゾチアゾール、3−メチル−1−ブテン−3−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、アセチレンアルコール、3−メチル−1−ブチル−3−オール、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、ジメチルマレエート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
図3の例のように、粘着シート1を、粘着層1A/芯材フィルム1B/粘着層1Aの順に積層された態様の粘着シートで構成する場合、芯材フィルム1Bの材質は、特に制限されないが、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)など);ナイロン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、リアクターTPO、エチレン−酢酸ビニル共重合体など);フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)など)などから選ばれる1種又は2種以上からなるプラスチックフィルム、金属箔、前記プラスチックフィルムと金属箔を積層したフィルムなどが挙げられる。好ましくはプラスチックフィルムである。なお、芯材フィルムはガスケットの形状保持性、液体に対するシール性能(水止性)などの観点から「非多孔性」であるのが好ましい。なお、「非多孔性」とは、穿孔処理を施したフィルム、網布、織布、不織布、メッシュなどの形態のフィルムは除かれ、中実のフィルムであること意味する。
【0097】
芯材フィルム1Bの厚みは、フィルムの材質によっても異なるが、10〜70μmが好ましく、より好ましくは15〜50μmである。芯材フィルム2の厚みが70μmよりも大きい場合、テープをロール状に巻いたときに外観不良を生じやすい傾向となり、また、芯材フィルム2の厚みが10μmよりも小さい場合、製造段階での貼り合わせ不良が生じやすい傾向となる。
【0098】
(基材シート)
粘着シート1の片面に積層される基材シート2としては、ガスケットに要求される耐熱性を有するだけでなく、優れた撥水性を有するか、及び/又は、耐透湿性の高いシートが好ましく、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などのフッ素樹脂、シリコーン樹脂などからなるプラスチックシートが使用される。中でも、フッ素樹脂シートが好ましく、とりわけ好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートである。
【0099】
基材シート2の厚みは、被着体へのガスケットの良好な密着性及びメンテナンス時の剥離作業性を向上させるという観点から、10〜200μmが好ましく、90〜180μmがより好ましい。
【0100】
本発明のガスケットにおいて、粘着シート1の厚みは特に限定されないが、
図1の例のガスケットのように、粘着シート1を粘着層1Aの単一層にて構成する場合、かかる粘着層1Aの厚みは、シール性能(段差吸収性、段差追従性など)の観点から、200〜1400μmが好ましく、より好ましくは400〜1200μmである。
【0101】
また、
図3の例のガスケットのように、粘着シート1を粘着層1A/芯材フィルム1B/粘着層1Aの順に積層された積層形態の粘着シートにて構成する場合、芯材フィルム1Bを挟む2つの粘着層1Aの厚みは同一厚みでも、互いに異なる厚みであってもよいが、同一厚みが好ましい。シール性能(段差吸収性、段差追従性など)の観点から、粘着層1Aの厚みは、芯材フィルム1Bを挟む2つの層の合計厚みが、200〜1400μmであるのが好ましく、400〜1200μmがより好ましい。
【0102】
また、特に粘着シート1を、粘着層1A/芯材フィルム1B/粘着層1Aの順に積層された積層形態の粘着シートとする場合、芯材フィルム1Bの表面(少なくとも片面)にはプライマー層を形成することができる。プライマー層は芯材フィルム1Bと粘着層1A間の結合力を高めることができるものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリウレタン;塩素化ポリプロピレンなどの塩素化炭化水素樹脂;アクリル系ポリマーなどを挙げることができる。好ましくは、ポリエステルポリウレタンである。ポリエステルポリウレタンは、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基を2個以上有するポリエステルをポリイソシアネート化合物(2官能以上のイソシアネート化合物)によってウレタン変性させたものが挙げられる。また、プライマー層の厚みは、粘着層と芯材フィルム間の投錨力を向上させる観点から、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。
【0103】
本発明のガスケットの総厚みは、特に限定されないが、通常、300〜1800μmの範囲が好ましい。
【0104】
本発明のガスケットにおいて、粘着シートの作製方法は特に制限されず、一般的な粘着シートの製造方法を適用できる。粘着剤にアクリル系粘着剤を使用したアクリル系粘着シートの場合、例えば、ベースポリマーの主骨格用モノマーと共重合用モノマーにラジカル重合開始剤、架橋剤などを配合してなる光重合性組成物に、必要に応じてさらにノンハロゲン系難燃剤を混合し、それを基材シートの一方の片面に所定厚みの塗膜となるように塗布し、その上に離型シートの剥離処理面を貼り合わせ、これに紫外線を照射して重合反応を進行させる方法が挙げられる。粘着層に粘着付与樹脂やその他の添加剤を含有させる場合、光重合性組成物にノンハロゲン系難燃剤とともにそれらを混合すればよい。
【0105】
粘着剤にシリコーン系粘着剤を使用したシリコーン系粘着シートの場合、シリコーン系粘着剤を基材シートの片面に塗布し、その上に離型シートの剥離処理面を貼り合わせ、これを所定の加熱乾燥を行う方法が挙げられる。
【0106】
アクリル系粘着剤を使用した粘着シート、シリコーン系粘着剤を使用した粘着シートのいずれの製造においても、離型シートの剥離処理には、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤など一般的な剥離剤を適宜使用することができる。
【0107】
粘着剤にポリオキシアルキレン系粘着剤を使用したポリオキシアルキレン系粘着シートの場合は、例えば、以下の方法で作製される。先ず、前述のA〜C成分を、必要に応じてノンハロゲン系難燃剤(D成分)や有機溶剤とともに、真空機能を備えた攪拌装置に仕込み、真空状態(真空下)で攪拌することで脱泡して、脱泡された混合物(組成物)を調製する。粘着シートに粘着付与樹脂やその他の添加剤を含有させる場合は、上記A〜C成分などとともに粘着付与樹脂やその他の添加剤を加えて混合物(組成物)を調製する。次に、かかる脱泡処理後のA〜C成分を含む組成物(混合物)を基材シートの一方の片面上に所定厚みの塗膜となるように塗布し、その上に離型シートの剥離処理面を貼り合わせ、所定の熱処理を行なって、A〜C成分を含む組成物(混合物)を硬化させる。硬化反応は、A成分(1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体)中のアルケニル基が、ヒドロシリル化触媒(C成分)の存在下、B成分(ヒドロシリル基を有する化合物)中のヒドロシリル基(Si−H結合を有する基)でヒドロシリル化されて架橋構造が進行することによって成される。
【0108】
混合物の塗布は、例えば、グラビア、キス、コンマなどのロールコーター、スロット、ファンテンなどのダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーターなどの公知の塗布装置によって行うことができる。また、熱処理条件としては50〜200℃(好ましくは100〜160℃)で、0.01〜24時間(好ましくは0.05〜4時間)程度加熱するのが好ましい。なお、真空機能を備えた攪拌装置としては、公知の真空装置付攪拌装置を使用すればよく、具体的には、遊星式(公転/自転方式)攪拌脱泡装置やディスパー付脱泡装置などが挙げられる。また、真空脱泡を行う際の減圧の程度としては、10kPa以下が好ましく、3kPa以下がより好ましい。また、攪拌時間は攪拌装置や流動物の処理量によっても異なるが、概ね、0.5〜2時間程度が好ましい。脱泡処理により、形成される粘着層には実質的に気泡(ボイド)が存在せず、それによって高い透明性が得られる。
【0109】
離型シートの剥離処理は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤などを使用でき、中でも、シリコーン系剥離剤が好ましく、硬化方法としては、紫外線照射や電子線照射などの硬化方法を用いるのが好ましい。さらに、シリコーン系剥離剤の中でもカチオン重合性の紫外線硬化型シリコーン系剥離剤が好ましい。カチオン重合性の紫外線硬化型シリコーン系剥離剤は、カチオン重合型のシリコーン(分子内にエポキシ官能基を有するポリオルガノシロキサン)とオニウム塩系光開始剤を含む混合物であるが、オニウム塩系光開始剤がホウ素系光開始剤からなるものが特に好ましく、このようなオニウム塩系光開始剤がホウ素系光開始剤からなるカチオン重合性の紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を使用することで特に良好な剥離性(離型性)が得られる。カチオン重合型のシリコーン(分子内にエポキシ官能基を有するポリオルガノシロキサン)は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ官能基を有するものであって、直鎖状のもの、分岐鎖状のものまたはこれらの混合物であってもよい。ポリオルガノシロキサンに含有されるエポキシ官能基の種類は特に制限されないが、オニウム塩系光開始剤によって開環カチオン重合が進行するものであればよい。具体的には、γ−グリシジルオキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、β−(4−メチル−3,4エポキシシクロヘキシル)プロピル基などが例示できる。かかるカチオン重合型のシリコーン(分子内にエポキシ官能基を有するポリオルガノシロキサン)は上市されており、市販品を使用することができる。例えば、東芝シリコーン社製のUV9315、UV9430、UV9300、TPR6500、TPR6501など、信越化学工業社製のX−62−7622、X−62−7629、X−62−7655、X−62−7660、X−62−7634Aなど、荒川化学社製のPoly200、Poly201、RCA200、RCA250、RCA251などを挙げることができる。
【0110】
剥離処理剤の塗布は、例えば、ロールコーター法、リバースコーター法、ドクターブレード法などの一般的な塗工装置を用いて行うことができる。剥離処理剤の塗布量(固形分量)は特に限定はされないが、一般に0.05〜6mg/cm
2程度である。
【0111】
なお、芯材フィルムを有するガスケットを製造する場合は、以下の
図4に示す方法が好ましい。
先ず、基材シート2の片面に粘着層1Aを形成し、粘着層1Aに芯材フィルム1Bを貼り合わせる(
図4(A))。
【0112】
離型シート7を用意し、離型シート7の片面に粘着層1Aを形成する(
図4(B))。
【0113】
上記の離型シート7の片面に形成された粘着層1Aを芯材フィルム1Bの片面(粘着層非形成面)に圧着して貼り合わせる(
図4(C))。この際の圧着条件は1〜50kgf/cm
2程度が好ましい。
【0114】
本発明のガスケットは、
図5(A)及び
図5(B)に示されるように、2つの面の合せ面の間に装着する前は、ロール状物(ロール状ガスケット)100として保管するのが好ましく、この場合、基材シート2の背面に剥離処理を行ったものを使用する。
【0115】
本発明のガスケットにおいて、2つの被着体の対向面の間(すなわち、2つの面の合せ面の間)への装着は、通常、ガスケットを2つの面の合わせ面の間にガスケットを介在させた状態で、2つの被着体間をボルト締めなどすることによって行われる。
【0116】
本発明のガスケットは、種々の技術分野の機械や機器、構造物中の2つの面の合せ面の間の密閉に使用することができる。例えば、航空機、車、電車などにおける機体や車両の外板(ボディー)への各種の機器や機材の装着部、航空機、車、電車などにおける機体や車両内の2つの部材がそれらの主面同士を対向させて(すなわち、2つの面の合わせ面を形成して)固定される構造部などを挙げることができる。特に、高い難燃性を有し、しかも、金属を腐食させることがないため、航空機用材料として特に有利である。
【0117】
本発明のガスケットが、ポリオキシアルキレン系粘着剤を使用した粘着シートを用いて作製されたガスケットの場合、粘着シートの粘着面を被着体に貼り付けた後、粘着力(剥離力)が経時により上昇するため、より優れたシール性能が得られ、しかも、被着体に長期間貼付されても、粘着力(剥離力)が過度に上昇しないため、メンテナンス時にはガスケットを簡単に被着体から離脱できるので好ましい。
【0118】
また、ポリオキシアルキレン系粘着剤を用いた粘着層は、−30℃でのせん断貯蔵弾性率(G’)が6.0×10
5(Pa)以下、好ましくは5.5×10
5(Pa)以下を示す。せん断貯蔵弾性率(G’)は粘弾性体の硬さの指標として知られるが、ポリオキシアルキレン系粘着剤を用いた粘着層は−30℃でのせん断貯蔵弾性率(G’)が6.0×10
5(Pa)以下であり、低温で剛直化しないため、氷点下の温度下でも、高い柔軟性を維持すると考えられる。また、温度−時間換算則を考慮すると、ある温度における高速の変形に対しては、より低温での粘弾性体の特性が影響する。そのため、−30℃における粘着力を議論する際には、より低温での粘弾性挙動を考慮する必要がある。本発明のガスケットにおけるポリオキシアルキレン系粘着剤を用いた粘着シートは、−50℃におけるせん断貯蔵弾性率も6.0×10
5以下である。そのため、低温での接着安定性が非常に優れていると考えられる。ここでいう「せん断貯蔵弾性率(G’)」は以下の方法で測定される。
【0119】
[せん断貯蔵弾性率(G’)]
離型シートの剥離処理面に粘着層を形成したサンプルを複数作成し、得られた粘着層同士を貼り合せて厚みが約0.5〜1mmの積層体とする。該積層体を直径7.9mmの円形に打抜いたものを測定試料とし、以下の方法で測定する。
測定装置:Rheometric Scientific社製 ARES
測定条件:測定温度 −30℃及び−50℃
測定周波数:1Hz(6.28rad/sec)
【実施例】
【0120】
以下、実施例と比較例を示して、本発明をより具体的に説明する。なお、実施例及び比較例のガスケットの物性評価試験は次の方法で行った。
【0121】
1.燃焼試験
UL規格「UL−94」に準拠。
すなわち、長さ5インチ×幅1インチで、厚さが最大のもの、厚さが最小のもの、厚さが中間の3種類の試料を作製して、以下の条件にて試験を実施した。なお、厚さが最大、最小、中間のそれぞれにおいて5個の試料を作製し、計15個の試料について試験を実施した。
試験雰囲気:大気中
点火:10秒間
試験手順:10秒接炎後、試験炎を取り去り炎焼(flaming)と余じん(glowing)時間を記録。30秒以内に火が止まったら、さらに10秒接炎。
【0122】
(評価基準)
UL規格「UL−94」に準拠。等級(5VA、5VB、V−0、V−1、V−2、HB)により評価し、HB以上である場合を合格(○)とした。
【0123】
2.ハロゲン含有量
JISK0127に準拠。
5ppm以上のCl、Brなどのハロゲンが検出されたら不合格(×)、検出量が5ppm未満であれば合格(○)とした。
【0124】
3.歪み回復試験(I)
室温環境(温度:20±15℃、相対湿度:65±20%RH)下で、ガスケットを平面形状が10mm四方の正方形に裁断して試料を作成した。島津製作所製の電磁力式微小試験機(マイクロサーボ)を使用し、この台座に試料をセットし、圧縮モードで80℃に加温しながら試料の厚み方向に荷重を掛けて、試料の総厚みが圧縮前の試料の総厚みに対して75%となるまで圧縮し、その後荷重を開放し、3時間後の試料の総厚みを測定した。そして歪み回復率を以下の式から算出した。
歪み回復率(%)=(開放から3時間後の試料の総厚み−(圧縮前の試料の総厚み×0.75))/(圧縮前の試料の総厚み×0.25)×100
【0125】
4.止水性試験(回復後止水性)
ガスケットを、
図6(A)に示す、幅10mm、高さ148mm、両先端の間隔54mmの平面形状がU字状のサンプルS1に打ち抜いた。このサンプルS1を、
図6(B)に示すように、2枚のアルミニウム板12、13の間に挟んで厚さ方向に25%圧縮し、この状態で80℃で3時間放置後、
図6(C)に示されるように、15%圧縮まで戻して、室温(温度:20±15℃)で3時間放置した。この後、
図7に示されるように、2枚のアルミニウム板の間に圧縮固定されたサンプルS1のU字内の100mm高さまで水を入れ、室温環境に3時間放置して、U字内からの水漏れ量を距離として測定した。すなわち、3時間放置後の水面高さを測定し、以下の式にて水漏れ量を距離として算出した。
水漏れ量(mm)=初期の水面高さ(100(mm))−試験後の水面高さ(mm)
【0126】
なお、図中の符号15は2枚のアルミニウム板12、13を固定するボルト、14はアルミニウムからなる、直方体のスぺーサーであり、2枚のアルミニウム板12、13の離間距離はかかるスぺーサー14の厚みによって調整される。
【0127】
実施例1
平均分子量約28000のポリプロピレングリコールの両末端にアリル基を結合させてなる末端アリル化ポリオキシプロピレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂(カネカ社製、商品名「ACX022」)100重量部に、粘着付与樹脂であるロジンペンタエリスリトール10重量部を添加混合し、100℃に加熱して30分間攪拌した。そして、混合液が透明になっていることを確認して、粘着付与樹脂が熱硬化性常温液状樹脂に溶解していることを確認した。ここに、白金/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の2−プロパノール溶液(錯体濃度3%、エヌ・イーケムキャット社製、製品名「3%Pt−VTS−IPA溶液」)よりなる硬化触媒0.05重量部、分子中に平均5個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物(カネカ社製、商品名「CR500」)よりなる硬化剤7.65重量部、難燃剤であるトリクレジルホスフェート(TCP)70重量部を、各々添加し攪拌して混合した。その後、減圧脱泡を行い、攪拌混合時に噛み込んだ気泡を取り除き、均一な組成物を得た。
【0128】
上記の粘着剤組成物を、厚み20μmのPTFE製シートに、加熱処理後の厚みが500μmとなるように塗布し、130℃で、10分間加熱処理し、その上に厚み20μmのポリプロピレンフィルムを重ねて、第1の粘着シートを形成した。
【0129】
また、上記の粘着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム製離型シートの剥離処理面に、加熱処理後の厚みが500μmとなるように塗布し、130℃で、10分間加熱処理し、その上にポリエチレンテレフタレートフィルム製離型シートの剥離処理面を重ねて、第2の粘着シートを形成した。
【0130】
第2の粘着シートの離型シートを剥離して粘着層を露出させ、その粘着層を第1の粘着シートのポリプロピレンフィルムに貼り合わせて、総厚みが1195μmのガスケットを完成させた。
【0131】
実施例2
実施例1で使用した粘着剤組成物を使用し、厚み135μmのPTFE製シートに、加熱処理後の厚みが1000μmとなるように塗布し、その上にポリエチレンテレフタレートフィルム製離型シートの剥離処理面を重ねて、130℃で、10分間加熱処理して、総厚みが1135μmのガスケットを完成させた。
【0132】
実施例3
メタクリル酸ラウリル:100重量部に、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(光開始剤、商品名「イルガキュア651」BASF社製):0.05重量部、および1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(光開始剤、商品名「イルガキュア184」BASF社製):0.05重量部を加えて、4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることにより、重合率7%のモノマーシロップ(部分重合物)を得た。なお、該モノマーシロップは、分子量(Mw)が600万のプレポリマーを含んでいる。該モノマーシロップ:100重量部に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(商品名「NKエステルA−HD:新中村化学工業社製」)0.08重量部および難燃剤であるトリクレジルホスフェート(TCP):70重量部を均一に混合して、脱泡処理を行うことにより光重合性組成物(光硬化性組成物)を調製した。該光重合性組成物を調製してから24時間後、該光重合性組成物を基材フィルム(商品名「MKF−38」三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm、ポリエステルフィルム)上に光硬化後の厚さが1.0mmとなるように塗布して重合性組成物を形成し、該重合性組成物層上に剥離フィルム[一方の面がシリコーン系離型処理剤で離型処理されたポリエステルフィルム(商品名「MRN―38」三菱化学ポリエステルフィルム社製)]を設けて、シートを得た。該シートの両面から、ブラックライトランプ(株式会社東芝ライテック社製)を用いて、照度5mW/cm
2で、紫外線(UV)を重合率が99%に達する十分な時間照射し、重合性組成物層を光硬化させて、粘弾性体を形成させることにより、粘弾性体層シートを得た。
なお、紫外線の照度は、紫外線強度計(商品名「UVRT−1」トプコンテクノハウス社製、ピーク感度最大波長350nm)を用いて調整した。
前記粘着剤層のPET基材を剥がして粘着層を露出させ、厚み135μmのPTFE製シートに貼り合わせ、さらに反対側のPET基材を剥がすことで、総厚みが1135μmのガスケットを完成させた。
【0133】
比較例1
分子中に平均5個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物(カネカ社製、商品名「CR500」)よりなる硬化剤を5重量部に変更した以外は実施例1で使用した粘着剤組成物と同様にして粘着剤組成物を調製した。そして、ポリプロピレンフィルムの厚みを20μm、粘着剤組成物の加熱処理後の厚みを400μmに変更した以外は、実施例1と同様にして第1の粘着シートを作製し、さらに粘着剤組成物の加熱処理後の厚みを400μmに変更した以外は、実施例1と同様にして第2の粘着シートを作製し、第2の粘着シートの離型シートを剥離して粘着層を露出させ、その粘着層を第1の粘着シートのポリプロピレンフィルムに貼り合わせて、総厚みが955μmのガスケットを完成させた。
【0134】
比較例2
比較例1で使用した粘着剤組成物を使用し、厚み135μmのPTFE製シートに、加熱処理後の厚みが800μmとなるように塗布し、その上にポリエチレンテレフタレートフィルム製離型シートの剥離処理面を重ねて、130℃で、10分間加熱処理して、総厚みが935μmのガスケットを完成させた。
【0135】
比較例3
ウレタン樹脂溶液、多官能イソシアネート、ヘキサシクロブロモドデカン(ウレタン樹脂溶液、多官能イソシアネート成分の合計量100重量部当たり20重量部を含む組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム製離型シートの剥離処理面に塗布し、100℃で、2分間加熱処理することで、粘着層厚みが1000μmの粘着シートを形成した。そして、さらにその上にポリ塩化ビニル製のメッシュシート(10メッシュ)を貼り合わせ、上記の組成物をメッシュシートの上から塗布し、100℃で、2分間加熱処理することで、厚みが135μmの粘着層を形成して、総厚みが1135μmのガスケットを完成させた。
【0136】
以上の実施例1〜3、比較例1〜3で作製したそれぞれの粘着シートに対し、前述の試験を実施した。その結果を表1に示す。表中の材料の欄に記載の数値は「重量部」を示す。また、粘着層の厚みは、粘着層が一層の場合は一層の厚み、粘着層が二層の場合は二層の合計厚みである。
【0137】
【表1】