特許第6078275号(P6078275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078275
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】有機EL装置及び有機ELモジュール
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/06 20060101AFI20170130BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   H05B33/06
   H05B33/14 A
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-201457(P2012-201457)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-56751(P2014-56751A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 敏明
【審査官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−011043(JP,A)
【文献】 特開2009−259559(JP,A)
【文献】 特開2006−156205(JP,A)
【文献】 特開2007−273136(JP,A)
【文献】 特開2000−077181(JP,A)
【文献】 特開2009−218094(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0119402(US,A1)
【文献】 米国特許第06091195(US,A)
【文献】 特開2009−129700(JP,A)
【文献】 特開2010−003648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/06
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、第1電極層と、有機発光層と、第2電極層を備えた積層体を有する断面構造を備え、前記基材を平面視したときに、実際に発光する発光領域と、当該発光領域へ給電する給電領域が存在する有機EL装置において、
前記発光領域は、消灯時において前記第2電極層によって鏡面を形成するものであり、
前記給電領域は、平面視したときに前記発光領域の外側に位置しており、
前記鏡面と略同一の反射率の鏡面を備えた鏡面部材を有し、
前記鏡面部材は前記給電領域を覆うように配されており、消灯時において、発光領域と一体的な鏡面を形成するものであり、
前記鏡面部材は、板状又は箔状であって、有機EL装置の外周縁の全周に沿って設けられていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記鏡面部材は、導電性を有しており、かつ、
外部から給電領域に電気を供給する給電部材として機能することを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
基材側から光を取り出すボトムエミッション型の有機EL装置であって、
基材は透光性を有しており、
基材の光出射面側に鏡面部材が配されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記鏡面部材は、導電性を有しており、
給電領域に直接的に電気を供給する導電部材を有し、
当該導電部材は、給電領域において、基材の光入射面側から光出射面側に連続して配されており、
導電部材を介して光出射面側から給電領域に給電することを特徴とする請求項3に記載の有機EL装置。
【請求項5】
前記第2電極層は陰極を形成するものであり、
鏡面部材は、前記陰極を形成する前記第2電極層と同一の素材によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機EL装置。
【請求項6】
前記陰極を形成する前記第2電極層は、銀又はアルミニウムで形成されていることを特徴とする請求項5に記載の有機EL装置。
【請求項7】
透光性を有した基材上に、第1電極層と、有機発光層と、第2電極層を備えた積層体を有する断面構造を備え、前記基材を平面視したときに、実際に発光する発光領域と、当該発光領域へ給電する給電領域が存在する有機EL装置を有し、
前記発光領域は、消灯時において鏡面を形成するものであり、
前記鏡面と略同一の反射率の鏡面を備えた鏡面部材を有し、
前記鏡面部材は前記給電領域を覆うように配されており、
透明性を有した部材を有し、
前記透明性を有した部材は、前記有機EL装置を一体的に保持するものであり、
前記鏡面部材は、板状又は箔状であって、前記基材と前記透明性を有した部材との間に位置しており、
前記鏡面部材は、消灯時において、前記鏡面部材の色が前記透明性を有した部材を透過して外観に反映されて、前記発光領域と一体的な鏡面を形成することを特徴とする有機ELモジュール。
【請求項8】
複数の請求項1乃至のいずれかの有機EL装置を平面的に分布して敷設されて形成される有機ELモジュールであって、
前記鏡面部材は2以上の有機EL装置の給電領域に跨がって配されていることを特徴とする有機ELモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に照明として用いられる有機EL(Electro Luminescence)装置に関するものである。また本発明は、当該有機EL装置を用いた有機ELモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、白熱灯や蛍光灯に代わる照明装置として有機ELモジュールが注目され、多くの研究がなされている。
【0003】
ここで、有機ELモジュールは、有機EL装置に封止構造やケーシングを施したものである。また、有機EL装置は、ガラス基板等の基材に、有機EL素子を積層し、この有機EL素子に給電するための給電構造を形成したものである。
そして、有機EL素子は、一方又は双方が透光性を有する2つの電極を対向させ、この電極の間に有機化合物からなる発光層を積層したものである。有機EL装置は、電気的に励起された電子と正孔との再結合のエネルギーによって発光する。
すなわち、有機ELモジュールは、自発光デバイスであり、発光層の材料を適宜選択することにより、種々の波長の光を発光することができる。
【0004】
また、有機ELモジュールは、白熱灯や蛍光灯、LED照明に比べて厚さが極めて小さく軽量であり、且つ面状に発光するので、設置場所の制約が少ないという特長を有している。さらに、有機ELモジュールは、白熱灯や蛍光灯に比べて発光効率が高いので消費電力が少なく、発熱が少ないという特長も有している。
【0005】
ところで、近年の居住空間の照明機器は、単なる直接照明としての機能だけではなく、居住空間のデザイン性を高めるといった付加的な機能が求められている。例えば、照明機器は、主に夜等の暗い時間帯に使用されることが多く、太陽の光が差す時間帯(例えば、昼間)には、消灯(不使用状態)されていることが多い。このような時間帯では、照明機器は、発光時のみならず、消灯時においてもデザイン性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−119237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、照明装置として使用される有機EL装置としては特許文献1に記載されたものなどがある。
特許文献1に記載された有機EL装置は、同一平面上に実際に発光する発光領域と、当該発光領域への給電のための給電領域が混在している。給電領域においては、透明電極層のみが積層しており、給電用配線によって給電されている。
また、特許文献1に記載の有機EL装置の構造は、ガラス基板上に透明導電層、発光機能層、金属層が積層されている。消灯時には、ガラス基板と透明導電層と発光機能層はいずれも透光性を有している。すなわち、特許文献1に記載の有機EL装置を照明として使用した場合、消灯時における有機EL装置の発光領域における外観は、金属層の色が反映され、給電領域における外観は、給電用配線が反映される。そのため、有機EL装置の外観に給電用配線が現れてしまい、見栄えが悪い。それ故に、従来の有機ELモジュールは、見栄えを良くするために、給電領域を樹脂フレーム等によって隠す必要がある。
【0008】
ところが、発光領域における金属層は、真空蒸着装置等によって表面凹凸がきわめて少ない状態で積層されているため、鏡面光沢を有した状態で形成されている。そのため、消灯時における発光領域と樹脂フレームで覆った給電領域と間で外観が著しく異なるものとなってしまい、統一感がなく、デザイン性も悪いものとなっていた。
特に複数の有機EL装置を敷き詰めて大型の有機ELモジュールとして使用する場合には、有機EL装置間の境界部位を樹脂フレームで覆うと、消灯時に有機EL装置間の境界部位が目立ち、よりいっそう統一感が損なわれ、見栄えが悪い。
【0009】
そこで、本発明は、たとえ消灯時においてもデザインの統一性に優れた有機EL装置及び当該有機EL装置を備えた有機ELモジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、消灯時において、発光領域では、金属層の色が外観に影響を与えるともに、色の分布なく均一である点に注目した。すなわち、消灯時における発光領域の色調を利用して、全体的に統一性を高めることでデザイン性の向上を図った。そして、発光領域以外の部位に消灯時の金属層とほぼ同一の反射率を有した部材を配設することによって一体的な鏡面を形成し、外観上の統一感及びデザイン性が向上すると考えた。
【0011】
このような考えのもと導き出された請求項1に記載の発明は、基材上に、第1電極層と、有機発光層と、第2電極層を備えた積層体を有する断面構造を備え、前記基材を平面視したときに、実際に発光する発光領域と、当該発光領域へ給電する給電領域が存在する有機EL装置において、前記発光領域は、消灯時において前記第2電極層によって鏡面を形成するものであり、前記給電領域は、平面視したときに前記発光領域の外側に位置しており、前記鏡面と略同一の反射率の鏡面を備えた鏡面部材を有し、前記鏡面部材は前記給電領域を覆うように配されており、消灯時において、発光領域と一体的な鏡面を形成するものであり、前記鏡面部材は、板状又は箔状であって、有機EL装置の外周縁の全周に沿って設けられていることを特徴とする有機EL装置である。
すなわち、本発明は、基材上に、第1電極層と、有機発光層と、第2電極層を備えた積層体を有する断面構造を備え、前記基材を平面視したときに、実際に発光する発光領域と、当該発光領域へ給電する給電領域が存在する有機EL装置において、前記発光領域は、消灯時において鏡面を形成するものであり、前記鏡面と略同一の反射率の鏡面を備えた鏡面部材を有し、鏡面部材は給電領域を覆うように配されており、消灯時において、発光領域と一体的な鏡面を形成する。
【0012】
本発明の構成によれば、給電領域を鏡面部材で覆い隠している。そのため、給電領域内の配線や溝といった内部構造が外観に現れない。それ故に、良好な外観を得ることができる。
また、消灯時において、給電領域と一体的な鏡面を形成するため、発光領域と給電領域との境界部位が目立たなくなり、統一性が高く、見栄えがよい。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記鏡面部材は、導電性を有しており、かつ、外部から給電領域に電気を供給する給電部材として機能することを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置である。
【0014】
本発明の構成によれば、鏡面部材を給電部材として使用できるため、給電用の配線等を新たに設ける必要がない。
【0015】
請求項3に記載の発明は、基材側から光を取り出すボトムエミッション型の有機EL装置であって、基材は透光性を有しており、基材の光出射面側に鏡面部材が配されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置である。
【0016】
本発明の構成によれば、ボトムエミッション型である。すなわち、基材に光を透過させて光を取り出す構造となっている。そして、基材の光出射側の面(積層体の積層する側と反対側)、すなわち、外観に現れる側に鏡面部材が配されているため、給電領域が鏡面部材に隠されて、外観上に現れにくい。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記鏡面部材は、導電性を有しており、給電領域に直接的に電気を供給する導電部材を有し、当該導電部材は、給電領域において、基材の光入射面側から光出射面側に連続して配されており、導電部材を介して光出射面側から給電領域に給電することを特徴とする請求項3に記載の有機EL装置である。
【0018】
本発明の構成によれば、導電部材は、給電領域において基材の光入射面側から光出射面側に連続して配されており、導電部材を介して光出射面側から給電領域に給電する。すなわち、導電部材を介して、光出射面側から電気を給電可能な給電構造を有している。そのため、有機EL装置を鏡面部材に載置することで、鏡面部材を介して積層体に電気を給電することができる。言い換えると、鏡面部材は、給電領域を隠すだけではなく、給電部材の一部としても使用可能となっている。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記第2電極層は陰極を形成するものであり、鏡面部材は、前記陰極を形成する前記第2電極層と同一の素材によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機EL装置である。
本発明は、第1電極層又は第2電極層は陰極を形成するものであり、鏡面部材は、前記陰極を形成する第1電極層又は第2電極層と同一の素材によって形成されている有機EL装置に関連する。
【0020】
本発明の構成によれば、陰極を形成する第1電極層又は第2電極層と同一素材によって形成されているため、鏡面部材の反射率を、陰極を形成する第1電極層又は第2電極層の反射率に近づけやすい。それ故に、発光領域と給電領域との境界をより視認しにくくすることができ、使用者に発光領域と給電領域の全体を一面として認識させることができる。
【0021】
請求項5に記載の有機EL装置において、前記陰極を形成する第1電極層又は第2電極層は、銀又はアルミニウムで形成されていることが好ましい(請求項6)。
請求項7に記載の発明は、透光性を有した基材上に、第1電極層と、有機発光層と、第2電極層を備えた積層体を有する断面構造を備え、前記基材を平面視したときに、実際に発光する発光領域と、当該発光領域へ給電する給電領域が存在する有機EL装置を有し、前記発光領域は、消灯時において鏡面を形成するものであり、前記鏡面と略同一の反射率の鏡面を備えた鏡面部材を有し、前記鏡面部材は前記給電領域を覆うように配されており、透明性を有した部材を有し、前記透明性を有した部材は、前記有機EL装置を一体的に保持するものであり、前記鏡面部材は、板状又は箔状であって、前記基材と前記透明性を有した部材との間に位置しており、前記鏡面部材は、消灯時において、前記鏡面部材の色が前記透明性を有した部材を透過して外観に反映されて、前記発光領域と一体的な鏡面を形成することを特徴とする有機ELモジュールである。
【0022】
請求項8に記載の発明は、複数の請求項1乃至のいずれかの有機EL装置を平面的に分布して敷設されて形成される有機ELモジュールであって、前記鏡面部材は2以上の有機EL装置の給電領域に跨がって配されていることを特徴とする有機ELモジュールである。
【0023】
本発明の構成によれば、複数の有機EL装置を平面的に分布して敷設されて形成される有機ELモジュールである。すなわち、複数の有機EL装置を敷き詰めて発光面積を大型化するものである。
前記鏡面部材は2以上の有機EL装置の給電領域に跨がって配されているため、共通の鏡面部材によって給電領域を覆い隠せるため、部品点数を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の有機EL装置によれば、消灯時に発光領域と反射率が近い鏡面部材を給電領域に取り付けるため、消灯時の外観に統一性があり、見栄えがよい。
本発明の有機ELモジュールによれば、共通の鏡面部材で給電領域を隠すことができるため、部品点数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の有機ELモジュールの居住空間への設置例の説明図である。
図2図1の有機ELモジュールの拡大図である。
図3図1の有機ELモジュールの分解斜視図である。
図4図1の有機ELモジュールの分解斜視図であり、理解を容易にするため、フレーム部材を省略している。
図5図2の有機ELモジュールのA−A断面図である。
図6図3の有機EL装置の電極部と有機EL素子の積層構造との関係を表す説明図である。
図7図2の有機ELモジュールを居住空間側から視た平面図である。
図8図2の有機ELモジュールの回路構造を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、特に断りがない限り、有機ELモジュール1の上下の位置関係は、図1の姿勢を基準に説明する。すなわち、有機ELモジュール1を天井40と平行にし、有機ELモジュール1の発光面31が居住空間41側を向いている状態を基準とする。
【0027】
本実施形態の有機ELモジュール1は、図2図3図4のように、複数の有機EL装置2を平面状に分布して1つの大型照明を形成するものである。
【0028】
有機ELモジュール1は、図3のように複数の有機EL装置2(2a〜2p)と、第1導電部材5(5a〜5d),6(6a〜6d)と、第1鏡面部材7(7a〜7e)と、絶縁部材8と、第2鏡面部材10(10a〜10e)と、フレーム部材11によって形成されている。
そして、本実施形態の有機ELモジュール1は、第1鏡面部材7(7a〜7e)と、第2鏡面部材10(10a〜10e)によって、有機EL装置2間の境界近傍を隠す構造となっている。
【0029】
有機EL装置2は、図6のように点灯時に実際に発光する発光面31を囲むように給電領域26,27と額縁領域28,29を有している。
有機EL装置2は、図6のようにその面内において、点灯時に実際に発光する発光面31を有した発光領域25と、点灯時に発光領域25への給電に寄与する複数の電極部15,16を有した給電領域26,27と、図示しない配線等を設置可能な額縁領域28,29を有している。
具体的には、発光領域25は、長さ方向lにおいて有機EL装置2の中央に位置しており、その周囲であって、長さ方向lに対向する2辺近傍にそれぞれ給電領域26,27が配されている。また、発光領域25は、幅方向w(長さ方向及び部材厚方向に対して直交する方向)の中央に位置しており、その周囲であって、幅方向wに対向する2辺近傍にそれぞれ額縁領域28,29が配されている。
【0030】
有機EL装置2の発光領域25の長さ方向lの外側に位置する給電領域26,27の構成について説明すると、有機EL装置2の給電領域26,27は、図4図6のように有機EL素子30内の第1電極層33又は第2電極層36と電気的に接続された電極部15,16を複数有している。電極部15,16は、幅方向wに給電領域26,27全体に延伸している。
本実施形態の有機EL装置2では、電極部15が第1電極層33と電気的に接続されており、電極部16が第2電極層36と電気的に接続されている。
【0031】
本実施形態の有機EL装置2は、図6のように透光性を有した基板32(基材)上に有機EL素子30(積層体)を積層している。
有機EL素子30は、図6のように少なくとも第1電極層33と第2電極層36との間に実際に発光する機能層35(有機発光層)を備えたものである。本実施形態の有機ELモジュール1では、少なくとも基板32側から光を取り出すいわゆる「ボトムエミッション型」の有機EL装置2を採用しており、有機EL素子30は、基板32側から第1電極層33、機能層35、第2電極層36がこの順に積層されて形成されている。
【0032】
基板32の材質は、透明性と絶縁性を備えたものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、フレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板などから適宜選択され用いられる。特にガラス基板や透明なフィルム基板は透明性や加工性の良さの点から好適である。
【0033】
第1電極層33は、透明導電性酸化物によって形成された層であり、消灯時において、透明性を有した層である。具体的には、インジウム錫酸化物(ITO)などが採用できる。本実施形態の第1電極層33は、陽極として使用されており、ITOで形成されている。
【0034】
機能層35は、第1電極層33と第2電極層36との間に設けられ、少なくとも一層の有機発光層を備えた層である。本実施形態の機能層35は、主に有機化合物からなる複数の層から構成されている。この機能層35は、一般的な有機EL装置に用いられている低分子系色素材料や、共役系高分子材料などの公知のもので形成することができる。また、この機能層35は、ホール注入層、ホール輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層などの複数の層からなる積層多層構造であってもよい。
機能層35は、消灯時において、透明あるいはほぼ透明となっている。
【0035】
第2電極層36は、特に限定されるものではなく、例えば銀(Ag)やアルミニウム(Al)などが挙げられる。本実施形態の第2電極層36は、陰極として使用されており、Alで形成されている。
第2電極層36は、真空蒸着装置等によって形成されており、表面が鏡面となっている。
【0036】
続いて第1導電部材5,6について説明する。
第1導電部材5,6は、電気伝導性を有した箔状又は板状の部材であり、図4のように塑性変形させて使用可能な部材である。第1導電部材5,6は、各有機EL装置2の電極部15,16と、これらに対応する第1鏡面部材7a〜7eとを電気的に接続する部材である。本実施形態の第1導電部材5,6は、図4のように折り曲げて使用され、いずれも引き延ばすと、長い箔状の部材となる。また、第1導電部材5,6は、引き延した状態において、いずれも帯状に延びている。
【0037】
第1導電部材5,6は、図4図5のように使用時において、断面形状が「コ」字状をしており、その内側に有機EL装置2の給電領域26,27(図6参照)が介在可能となっている。すなわち、第1導電部材5,6は、図4のように天面部20と、底面部22と、天面部20と底面部22を接続する立壁部21から形成されており、これらによって囲まれた空間内に有機EL装置2を挿入可能となっている。
また、第1導電部材5,6の材質は、電気伝導性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、銅や銀、金、白金などが採用できる。本実施形態では、銅箔を採用している。
【0038】
続いて、第1鏡面部材7(7a〜7e)について説明する。
第1鏡面部材7は、有機EL装置2の第2電極層36と同程度の反射率及び鏡面光沢度を有した部材である。本実施形態の第1鏡面部材7は、外観上の露出面(絶縁部材8側の面)に鏡面を有している。当該鏡面の反射率は、80パーセント以上100パーセント以下であることが好ましく、85パーセント以上100パーセント以下であることがより好ましく、90パーセント以上100パーセント以下であることが特に好ましい。
ここでいう「鏡面光沢度」とは、光沢の度合いを比較する尺度であり、物体の表面に光が当たる際の正反射光の強さで光沢度を表したものである。
【0039】
第1鏡面部材7は、電気伝導性を有した板体又は箔体によって形成されている。
第1鏡面部材7は、鏡面及び電気伝導性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも1つの面が鏡面処理の施された銀箔、アルミニウム箔、銀板、アルミニウム板などが採用できる。
本実施形態では第1鏡面部材7は、有機EL素子30の第2電極層36と同一の素材によって形成されており、具体的には、アルミニウム箔が採用されている。
第1鏡面部材7の幅(長さ方向lの長さ)は、図3のように第1導電部材5,6の底面部22を外観上隠すことができる大きさとなっている。具体的には、長さ方向l両端に位置する第1鏡面部材7a,7eの幅(長さ方向lの長さ)L1は、第1導電部材5,6の底面部22の幅と等しい大きさとなっており、これらの内側に位置する第1鏡面部材7b,7c,7dの幅L2は、第1導電部材5,6の底面部22の幅の2倍の大きさとなっている。
【0040】
続いて、第2鏡面部材10(10a〜10e)について説明する。
第2鏡面部材10は、長尺状の板状体又は箔状体であり、第1鏡面部材7と同程度の反射率及び鏡面光沢度を有している。
本実施形態の第2鏡面部材10は、第1鏡面部材7と同一の材質で形成されており、第1鏡面部材7と同様、少なくとも1つの面が鏡面となっている。
当該鏡面の反射率は、80パーセント以上100パーセント以下であることが好ましく、85パーセント以上100パーセント以下であることがより好ましく、90パーセント以上100パーセント以下であることが特に好ましい。
【0041】
第2鏡面部材10の幅(幅方向wの長さ)は、図3のように有機EL装置2の額縁領域28,29を外観上隠すことができる大きさとなっている。具体的には、幅方向w両端に位置する第2鏡面部材10a,10eの幅(幅方向wの長さ)W1は、有機EL装置2の額縁領域28,29の幅(幅方向wの長さ)と等しい大きさとなっており、これらの内側に位置する第2鏡面部材10b,10c,10dの幅W2は、有機EL装置2の額縁領域28,29の幅(幅方向wの長さ)の2倍の大きさとなっている。
本実施形態では第2鏡面部材10は、有機EL素子30の第2電極層36と同一の素材によって形成されており、具体的には、アルミニウム箔が採用されている。
【0042】
続いて、絶縁部材8について説明する。
絶縁部材8は、絶縁性を有した板状体又はフィルムである。複数の有機EL装置2を敷き詰めた際に、全面を覆うことが可能となっている。
絶縁部材8の材質は、絶縁性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が採用できる。
絶縁部材8の幅方向wの長さは、第1鏡面部材7a〜7eの長手方向の長さとほぼ等しく、絶縁部材8の長さ方向lの長さは、第2鏡面部材10a〜10eの長手方向の長さとほぼ等しい。
【0043】
続いて、フレーム部材11について説明する。
フレーム部材11は、少なくとも底部12が透明性を有した筺体であり、敷き詰められた有機EL装置2a〜2pの一体的に保持する部材である。
フレーム部材11は、図3のように底部12と、底部12から上方に向けて立設した周壁部13によって形成されている。すなわち、フレーム部材11は、底部12と周壁部13によって囲まれた固定空間14を形成している。
フレーム部材11は、樹脂製のフレームであり、伸縮自在となっている。また、フレーム部材11は、底部12が透明性を有しているため、その固定空間14内を底部12の下方(居住空間側)から視認可能となっている。
【0044】
続いて、有機ELモジュール1の各部材の位置関係について説明する。
1つの有機EL装置2に注目すると、図4図5のように有機EL装置2の長さ方向lの対辺の縁には第1導電部材5,6が取り付けられている。すなわち、第1導電部材5,6の空間内に有機EL装置2の端部が挿入されている。具体的には、有機EL装置2の給電領域26,27に対応する下面を底面部22が覆っており、有機EL装置2の端面を立壁部21が覆っており、有機EL装置2の上面を天面部20が覆っている。
有機EL装置2側から視ると、有機EL装置2の給電領域26,27には、第1導電部材5,6が巻き付けられている。そして、有機EL装置2の電極部15には、図4のように第1導電部材5の天面部20が接触しており、電極部16には、第1導電部材6の天面部20が接触している。
【0045】
有機ELモジュール1の全体からみると、有機ELモジュール1に内蔵される有機EL装置2は、図3のように長さ方向l及び幅方向wに碁盤状に並設されており、ほぼ隙間無く敷き詰められている。そして、有機ELモジュール1は、面状に敷き詰められた有機EL装置2の大外(外周)の輪郭をフレーム部材11によって固定されている。
第1鏡面部材7は、図3のように長さ方向lに所定の間隔を空けて互いに平行になるように配されている。具体的には、1つの有機EL装置2の給電領域26,27間の距離にほぼ等しい。言い換えると、発光領域25の長さとほぼ等しい。
また、第1鏡面部材7の長手方向は、幅方向wを向いている。
【0046】
第2鏡面部材10は、幅方向wに所定の間隔を空けて互いに平行になるように配されており、第2鏡面部材10の長手方向は、長さ方向lを向いている。すなわち、平面視すると、第1鏡面部材7と第2鏡面部材10は互いに交差する方向に向いており、本実施形態では、互いに直交している。
第1導電部材5,6は、それぞれの長手方向が幅方向wに向くように1列に並んでいる。すなわち、第1導電部材5,6は、第1鏡面部材7の長手方向に並設されている。
【0047】
図3に示されるように長さ方向lに並列された有機EL装置2a〜2dに取り付けられた第1導電部材5a,5a,5a,5aの下面全体に1枚の第1鏡面部材7aが位置しており、第1導電部材6a,6a,6a,6aの下面全体に前記第1鏡面部材7aに隣接する第1鏡面部材7bが位置している。同様に、有機EL装置2e〜2hに取り付けられた第1導電部材5b,5b,5b,5bの下面全体に1枚の第1鏡面部材7bが位置しており、第1導電部材6b,6b,6b,6bの下面全体に前記第1鏡面部材7bに隣接する第1鏡面部材7cが位置している。
【0048】
第1鏡面部材7b側からみると、図3図5に示されるように有機EL装置2の第1鏡面部材7bの上面には、有機EL装置2a〜2dに取り付けられた第1導電部材6aが載置されており、さらに前記有機EL装置2a〜2dの長さ方向lに隣接する有機EL装置2e〜2hに取り付けられた第1導電部材5bが載置されている。
このように、第1鏡面部材7は、複数の有機EL装置2に跨がって配されており、長さ方向l及び幅方向wにおいて複数の第1導電部材5,6が同一面に載置されている。
【0049】
また、図5に示されるように、長さ方向lに隣接する有機EL装置2間の境界部位に第1鏡面部材7及び第1導電部材5,6が位置しており、図3に示されるように、幅方向wに隣接する有機EL装置2間の境界部位に第2鏡面部材10が位置している。すなわち、第1鏡面部材7と第2鏡面部材10は、有機EL装置2の外周縁に沿って設けられており、それぞれ有機EL装置2の給電領域26,27及び額縁領域28,29を隠すように設けられている。
【0050】
絶縁部材8の周囲に注目すると、図3のように、絶縁部材8の裏面(有機EL装置2側の面)には、第1鏡面部材7a〜7eが配設されており、絶縁部材8の表面(有機EL装置2と反対側の面)には、第2鏡面部材10a〜10eが配設されている。言い換えると、第1鏡面部材7a〜7eと第2鏡面部材10a〜10eとの間には絶縁部材8が挟まれている。
【0051】
図7のように有機ELモジュール1を下方側(居住空間側)から視ると、各有機EL装置2の給電領域26,27(図6参照)は、第1鏡面部材7で隠されており、視認不能となっている。すなわち、有機EL装置2の給電領域26,27(図6参照)と第1導電部材5,6(図4参照)と第1鏡面部材7は部材厚方向に重なっている。
また、各有機EL装置の額縁領域28,29(図6参照)は、第2鏡面部材10で隠されており、視認不能となっている。すなわち、有機EL装置2の額縁領域28,29(図6参照)と第2鏡面部材10は部材厚方向に重なっている。
【0052】
続いて、有機ELモジュール1の消灯時の外観について説明する。
消灯時には、上記したように有機EL装置2は、基板32、第1電極層33、機能層35がいずれも透明となっており、さらに絶縁部材8及びフレーム部材11も透明となっているため、発光領域25においては、第2電極層36の色が外観に反映されており、鏡面となっている。
給電領域26,27においては、給電領域26,27にそれぞれ第1導電部材5,6が位置し、さらにその上が第1鏡面部材7によって覆われているため、絶縁部材8及びフレーム部材11を透過して第1鏡面部材7の色が外観に反映されており、鏡面となっている。
額縁領域28,29においては、第2鏡面部材10によって覆われているため、絶縁部材8及びフレーム部材11を透過して第2鏡面部材10の色が外観に反映されており、鏡面となっている。
このように、有機ELモジュール1は、各有機EL装置2の発光領域25、給電領域26,27、額縁領域28,29の全ての領域の外観が鏡面になっているため、消灯時であっても、外観が均一となり、一体感がある。それ故に、デザイン性が高い。
【0053】
発光時の有機ELモジュール1内の想定される電流の流れについて説明する。なお、図8のように有機ELモジュール1の両端に位置する第1鏡面部材7a,7eに、外部電源が電気的に接続された場合について説明する。
【0054】
外部電源から供給された電流は、図7図8に示される長さ方向lの一方の端部に位置する第1鏡面部材7aに伝わる。そして、第1鏡面部材7aに伝わった電流は、第1導電部材5aを介して、幅方向wに並列した有機EL装置2a〜2dのそれぞれの電極部15(図4参照)に電流が供給される。有機EL装置2a〜2dのそれぞれの電極部15に供給された電流は、発光領域25内の有機EL素子30に給電されて、有機EL素子30内の機能層35が発光し、発光面31が発光する。また、有機EL装置2a〜2dの有機EL素子30を通過した電流は、それぞれの電極部16(図4参照)から出て、第1導電部材6aに伝わる。第1導電部材6aに伝わった電流の大部分は、直接第1導電部材5bに直接伝わる。また、第1導電部材6aに伝わった電流の一部は、第1鏡面部材bを介して第1導電部材5bに伝わる。すなわち、第1鏡面部材7bは、電気伝導の補助として機能する。
そして、第1導電部材6bに伝わった電流は、幅方向wに並列した有機EL装置2e〜2hのそれぞれの電極部15に至る。
このようにして幅方向wに並設した有機EL装置2を介して電流が流れていき、第1導電部材6dから第1鏡面部材7eに至り、外部電源に伝わる。
このように、有機ELモジュール1に内蔵する有機EL装置2a〜2pが全て発光する。
【0055】
本発明の有機ELモジュールであれば、幅方向wに隣接する有機EL装置2のそれぞれの電極部15は、第1鏡面部材7によって同電位となり、幅方向wに隣接する有機EL装置2のそれぞれの電極部16も、第1鏡面部材7によって同電位となる。すなわち、電気的に並列回路を形成するため、有機EL装置2を交換しやすい。
【0056】
上記した実施形態では、複数の有機EL装置2を備えた有機ELモジュール1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つの有機EL装置2を備えた有機ELモジュール1であってもよい。
【0057】
上記した実施形態では、ボトムエミッション型の有機EL装置を採用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電極側(基板と反対側)から光を取り出すトップエミッション型の有機EL装置であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 有機ELモジュール
2 有機EL装置
5,6 第1導電部材(導電部材)
7 第1鏡面部材(鏡面部材)
10 第2鏡面部材
25 発光領域
26,27 給電領域
28,29 額縁領域
30 有機EL素子(積層体)
32 基板(基材)
33 第1電極層
35 機能層(有機発光層)
36 第2電極層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8