特許第6078276号(P6078276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078276
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】灯具ユニット
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20170130BHJP
   F21V 29/00 20150101ALI20170130BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170130BHJP
【FI】
   F21S8/10 151
   F21V29/00
   F21Y115:10
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-202415(P2012-202415)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-56797(P2014-56797A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】池田 智
【審査官】 石井 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−130232(JP,A)
【文献】 特開2012−064494(JP,A)
【文献】 特開2011−222295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
F21V 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具に用いられる灯具ユニットであって、
発光素子と、
前記発光素子が発する光の少なくとも一部を光源像として灯具前方へ投影する投影レンズと、
前記発光素子が固定される放熱部材であって、前記発光素子と前記投影レンズとの間の光路を含む空間の周囲に配置され、前記発光素子が発する熱を灯具ユニットの外部へ放熱する放熱部材と、を備え、
前記放熱部材は、
灯具ユニットの外部と前記空間との間を連通するように形成された貫通部と、
前記貫通部の開口部を横切るように設けられた放熱フィンと、
を有することを特徴とする灯具ユニット。
【請求項2】
前記貫通部は、鉛直方向へ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の灯具ユニット。
【請求項3】
前記放熱部材は、
前記投影レンズの上端または下端、前記投影レンズの後方焦点、および、前記投影レンズの上端または下端から灯具後方へ延ばした線と前記後方焦点から鉛直方向へ延ばした線との交点、の3点を結んだ直角三角形の領域内に、前記貫通部および前記放熱フィンの少なくとも一部が配置するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の灯具ユニット。
【請求項4】
前記放熱部材は、前記発光素子の灯具後方側に、該放熱部材の上下の空間を連通する後方貫通部が形成されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の灯具ユニット。
【請求項5】
車両用灯具に用いられる灯具ユニットであって、
第1の発光素子と、
第1の発光素子と異なる位置に配置されている第2の発光素子と、
第1の発光素子および第2の発光素子の少なくとも一方が発する光の少なくとも一部を光源像として灯具前方へ投影する投影レンズと、
前記第1の発光素子および前記第2の発光素子と前記投影レンズとの間の光路を含む空間の周囲に配置され、前記第1の発光素子が発する熱を灯具ユニットの外部へ放熱する第1の放熱部材と、
前記空間の周囲に配置され、前記第2の発光素子が発する熱を灯具ユニットの外部へ放熱する第2の放熱部材と、を備え、
前記第1の放熱部材は、
灯具ユニットの外部と前記空間との間を連通するように形成された第1の貫通部と、
前記第1の貫通部の開口部を横切るように設けられた第1の放熱フィンと、
前記第1の発光素子の灯具後方側に、該第1の放熱部材の上下の空間を連通するように形成された第2の貫通部と、を有し、
前記第2の放熱部材は、
前記第2の発光素子の灯具後方側に、該第2の放熱部材の上下の空間を連通するように形成された第3の貫通部を有し、該第3の貫通部の開口部と前記第2の貫通部の開口部とが対向するように構成されている、
ことを特徴とする灯具ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に用いられる灯具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED等の半導体発光素子を光源とした車両用前照灯が知られている。例えば、半導体発光素子が発した光をリフレクタで車両前方へ向けて反射し、投影レンズにより車両前方に照射する灯具ユニットが考案されている(特許文献1参照)。また、このような灯具ユニットには、発光素子が発する熱を放熱するためのヒートシンクが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−18840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、灯具ユニットの形状によっては、ヒートシンクからの放熱だけでは十分な放熱性を得られない場合もありうる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、灯具ユニットの放熱性を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の灯具ユニットは、車両用灯具に用いられる灯具ユニットであって、発光素子と、発光素子が発する光の少なくとも一部を光源像として灯具前方へ投影する投影レンズと、発光素子と投影レンズとの間の光路を含む空間の周囲に配置され、発光素子が発する熱を灯具ユニットの外部へ放熱する放熱部材と、を備える。放熱部材は、灯具ユニットの外部と空間との間を連通するように形成された貫通部と、貫通部の開口部を横切るように設けられた放熱フィンと、を有する。
【0007】
この態様によると、発光素子が発する熱によって加熱された灯具ユニット内部の空気を放熱部材の貫通部を経由して灯具ユニットの外部へ排出できるため、灯具ユニットの放熱性を向上できる。また、貫通部の開口部に放熱フィンを設けているため、貫通部を通過してきた空気によって放熱フィンからの放熱性を高めることができる。
【0008】
貫通部は、鉛直方向へ形成されていてもよい。これにより、加熱された空気の自然な上昇によって容易に灯具ユニットの外部へ熱を逃がすことができる。
【0009】
放熱部材は、投影レンズの上端または下端、投影レンズの後方焦点、および、投影レンズの上端または下端から灯具後方へ延ばした線と後方焦点から鉛直方向へ延ばした線との交点、の3点を結んだ直角三角形の領域内に、貫通部および放熱フィンの少なくとも一部が配置するように構成されていてもよい。これにより、発光素子から投影レンズへ向かう光路を放熱部材が遮らないようにできる。また、灯具ユニットを正面から見た場合に、放熱部材が投影レンズに隠れるように配置されているため、灯具ユニットの正面視において小型化を実現できる。
【0010】
放熱部材は、発光素子の灯具後方側に、該放熱部材の上下の空間を連通する後方貫通部が形成されていてもよい。これにより、例えば、灯具ユニットを灯室内に配置した場合に、後方貫通部によって放熱部材の上下の空間を連通できる。そのため、灯室と放熱部材との間隔を小さくしても、灯室内での空気の流れが確保されるため、灯室を含む車両用灯具の前後方向の長さを短くできる。
【0011】
本発明の別の態様もまた、灯具ユニットである。この灯具ユニットは、車両用灯具に用いられる灯具ユニットであって、第1の発光素子と、第1の発光素子と異なる位置に配置されている第2の発光素子と、第1の発光素子および第2の発光素子の少なくとも一方が発する光の少なくとも一部を光源像として灯具前方へ投影する投影レンズと、第1の発光素子および第2の発光素子と投影レンズとの間の光路を含む空間の周囲に配置され、第1の発光素子が発する熱を灯具ユニットの外部へ放熱する第1の放熱部材と、空間の周囲に配置され、第2の発光素子が発する熱を灯具ユニットの外部へ放熱する第2の放熱部材と、を備える。第1の放熱部材は、灯具ユニットの外部と空間との間を連通するように形成された第1の貫通部と、第1の貫通部の開口部を横切るように設けられた第1の放熱フィンと、第1の発光素子の灯具後方側に、該第1の放熱部材の上下の空間を連通するように形成された第2の貫通部と、を有する。第2の放熱部材は、第2の発光素子の灯具後方側に、該第2の放熱部材の上下の空間を連通するように形成された第3の貫通部を有し、該第3の貫通部の開口部と第2の貫通部の開口部とが対向するように構成されている。
【0012】
この態様によると、第1の発光素子や第2の発光素子が発する熱によって加熱された灯具ユニット内部の空気を第1の放熱部材の第1の貫通部を経由して灯具ユニットの外部へ排出できるため、灯具ユニットの放熱性を向上できる。また、第1の貫通部の開口部に第1の放熱フィンを設けているため、第1の貫通部を通過してきた空気によって第1の放熱フィンからの放熱性を高めることができる。また、例えば、灯具ユニットを灯室内に配置した場合に、第2の貫通部と第3との貫通部によって第1の放熱部材および第2の放熱部材の上下の空間を連通できる。そのため、第1の放熱部材および第2の放熱部材の後端と灯室を構成する部材との間隔を小さくしても、灯室内での空気の流れが確保されるため、灯室を含む車両用灯具の前後方向の長さを短くできる。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、灯具ユニットの放熱性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態に係る灯具ユニットを用いた車両用前照灯の断面図である。
図2】第1の実施の形態に係る灯具ユニットの分解斜視図である。
図3】第1の実施の形態に係る放熱部材の上面図である。
図4】第2の実施の形態に係る灯具ユニットを用いた車両用前照灯の断面図である。
図5】第3の実施の形態に係る灯具ユニットを用いた車両用前照灯の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
図1は、第1の実施の形態に係る灯具ユニット10を用いた車両用前照灯100の断面図である。図2は、第1の実施の形態に係る灯具ユニット10の分解斜視図である。図3は、第1の実施の形態に係る放熱部材の上面図である。
【0018】
車両用前照灯100は、図1に示すように、灯具前方に開口された凹部を有するランプボディ12と、ランプボディ12の開口面を閉塞する透明な材料からなるカバー14とを備え、ランプボディ12とカバー14によって形成された内部空間が灯室16として形成されている。
【0019】
灯室16内には、灯具ユニット10が配置されている。図1に示すように、灯具ユニット10は、金属製支持部材18の略中央部に取り付けられている。金属製支持部材18の上部には第1エイミングスクリュー20が取り付けられており、金属製支持部材18の下部には第2エイミングスクリュー22が取り付けられている。金属製支持部材18は、第1エイミングスクリュー20および第2エイミングスクリュー22によってランプボディ12に傾動自在に支持されている。そして、第1エイミングスクリュー20や第2エイミングスクリュー22を回転することで金属製支持部材18が傾動し、それに伴って灯具ユニット10が傾動されて、照明光の光軸調整(エイミング調整)が行われる。
【0020】
灯具ユニット10は、第1の発光素子である第1のLED24と、第1のLED24と異なる位置に配置されている第2の発光素子である第2のLED26と、第1のLED24および第2のLED26の少なくとも一方が発する光の少なくとも一部を光源像として灯具前方へ投影する投影レンズ28と、第1のLED24および第2のLED26と投影レンズ28との間の光路を含む空間の周囲に配置され、第1のLED24が発する熱を灯具ユニット10の外部の灯室16へ放熱する第1の放熱部材としての上側ブラケット32と、空間30の周囲に配置され、第2のLED26が発する熱を灯具ユニット10の外部の灯室16へ放熱する第2の放熱部材としての下側ブラケット34と、を備える。
【0021】
第1のLED24は、第1基板36を介して上側ブラケット32の下面側に固定されている。第2のLED26は、第2基板38を介して下側ブラケット34の上面側に固定されている。
【0022】
投影レンズ28は、灯具ユニット10の前端部に設けられている。投影レンズ28は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を反転像として車両用前照灯100の前方に投影する。投影レンズ28は、その光軸Axが車両用前照灯100の設けられる車両の前後方向と略平行となるように配置される。投影レンズ28は、レンズホルダ40にレーザ溶接されている。レンズホルダ40は下側ブラケット34に固定される。
【0023】
図1に示すように、投影レンズ28の後方には、放熱部材として、上側ブラケット32および下側ブラケット34が設けられている。下側ブラケット34は、側面視において略長方形状とされている。一方、上側ブラケット32は、側面視において略Z字状とされており、下側ブラケット34の上方に設けられている。上側ブラケット32および下側ブラケット34が組み合わされたとき、投影レンズ28との間に空間30が形成される。上側ブラケット32および下側ブラケット34は、金属製支持部材18に固定されている。
【0024】
下側ブラケット34の上面34aには、第2基板38が設けられており、第2基板38上には、第2のLED26が設けられている。第2基板38には、第2のLED26に電力を供給するための回路や、第2のLED26を支持するための支持部が形成されている。第2のLED26は、発光面が鉛直上方を向くように配置されている。また、第2のLED26は、発光面が光軸Axよりも下方に位置するように配置されている。
【0025】
第2のLED26の上方には、第2のLED26が発する光を投影レンズ28に向けて反射する第2リフレクタ42が配置されている。第2リフレクタ42は、投影レンズ28の光軸Axを挟んで第2のLED26と対向するように配置されており、上側ブラケット32に固定されている。第2リフレクタ42は、第2のLED26の発光中心と、投影レンズ28の後方焦点Fとに焦点を有する楕円反射面を有するよう構成されている。第2リフレクタ42で反射した第2のLED26からの光は、主に車両前方における水平線よりも下方の領域に照射される。
【0026】
上側ブラケット32における第2リフレクタ42よりも前方の部位には、第1基板36が設けられており、第1基板36上には第1のLED24が設けられている。第1基板36には、第1のLED24に電力を供給するための回路や、第1のLED24を支持するための支持部が形成されている。第1のLED24は、発光面が鉛直下方よりもやや後方を向くように配置されている。また、第1のLED24は、発光面が光軸Axよりも上方に位置するように配置されている。したがって、本実施の形態においては、第2基板38および第1基板36の各々は、第2のLED26および第1のLED24が投影レンズ28の光軸Axを挟んで配置されるよう第2のLED26および第1のLED24の各々を支持している。
【0027】
第1のLED24の下方には、第1のLED24が発する光を投影レンズ28に向けて反射する第1リフレクタ44が配置されている。この第1リフレクタ44は、投影レンズ28の光軸Axを挟んで第1のLED24と対向するように配置されており、下側ブラケット34における第2のLED26よりも前方の部位に形成された凹部34bに固定されている。したがって、本実施の形態において、第1リフレクタ44は、第2のLED26よりも投影レンズ28に近い位置に配置されている。第1リフレクタ44は、第1のLED24の発光中心と、投影レンズ28の後方焦点Fとに焦点を有する楕円反射面を有するよう構成されている。第1リフレクタ44で反射した第1のLED24からの光は、主に車両前方における水平線よりも上方の領域に照射される。
【0028】
シェード46は、第1リフレクタ44と投影レンズ28との間に配置された板状部材であり、その上端縁部は、ロービーム配光パターンのカットラインに応じた形状に形成されている。本実施の形態において、シェード46は、シェードアクチュエータ48により第2リフレクタ42からの光の一部を遮蔽する遮蔽位置と、遮蔽しない開放位置との間で移動可能に構成されている。シェードアクチュエータ48は、モータやソレノイドにより構成可能であり、下側ブラケット34の前端部に固定されている。
【0029】
図1は、シェード46が遮蔽位置にある状態を図示している。遮蔽位置にあるとき、シェード46は鉛直方向に立設した状態となっており、シェード46の上端縁部は、投影レンズ28の後方焦点Fの近傍に位置している。シェード46が遮蔽位置にあるとき、第2リフレクタ42で反射された第2のLED26からの光は、シェード46で一部が遮蔽されて投影レンズ28から出射される。図1の状態からシェードアクチュエータ48が駆動されると、シェード46は灯具前方に回転し、最終的に光軸Axと略水平な状態となる。この状態のとき、シェード46は開放位置にあり、第2リフレクタ42からの光は、投影レンズ28により遮蔽されずに、投影レンズ28から出射される。
【0030】
次に、本実施の形態に係る灯具ユニット10により形成される配光パターンについて説明する。
【0031】
前述のように、第2のLED26から出射された光は、第2リフレクタ42で反射した後、投影レンズ28の後方焦点F又はその近傍を通過し、投影レンズ28から灯具前方に照射される。その結果、第2のLED26から出射された光は、主に車両前方における水平線よりも下方の領域に照射される。
【0032】
一方、前述のように、第1のLED24から出射された光は、第1リフレクタ44で反射した後、投影レンズ28の後方焦点F又はその近傍を通過し、投影レンズ28から灯具前方に照射される。その結果、第1のLED24から出射された光は、主に車両前方における水平線よりも上方の領域に照射される。
【0033】
したがって、本実施の形態に係る灯具ユニット10によれば、第1のLED24および第2のLED26の点灯または消灯、およびシェード46の位置を制御することにより、ハイビーム配光パターンとロービーム配光パターンを形成することができる。つまり、第2のLED26および第2基板38は、ロービーム用LEDモジュール50として機能する。また、第1のLED24および第1基板36は、ハイビーム用LEDモジュール52として機能する。このように、異なる2つの配光パターンの形成を1つの灯具ユニット10で実現できるので、車両用前照灯100を小型化することができる。
【0034】
また、灯具ユニット10は、比較的小さな空間30に2つのLEDモジュールが配置されており、発熱量も多くなりがちなため、更なる放熱性を考慮した工夫が施されている。
【0035】
具体的には、灯具ユニット10において、上側ブラケット32は、図1に示すように灯具ユニット10の外部の灯室16と空間30との間を連通するように形成された第1の貫通部54と、第1の貫通部54の開口部54aを横切るように設けられた第1の放熱フィン56と、を有する。これにより、第1のLED24や第2のLED26が発する熱によって加熱された灯具ユニット10内部の空気を第1の貫通部54を経由して灯具ユニット10の外部へ排出できるため、灯具ユニット10の放熱性を向上できる。
【0036】
また、灯具ユニット10は、第1のLED24の灯具後方側に、上側ブラケット32の上下の空間を連通するように形成された第2の貫通部58と、を有する。また、下側ブラケット34は、第2のLED26の灯具後方側に、下側ブラケット34の上下の空間を連通するように形成された第3の貫通部60を有し、第3の貫通部60の開口部60aと第2の貫通部58の開口部58aとが対向するように構成されている。前述の第1の放熱フィン56は、第2の貫通部58の開口部58aを横切るように設けられている。また、第2の放熱フィン62は、第3の貫通部60の開口部60aを横切るように設けられている。
【0037】
また、灯具ユニット10は、第1の貫通部54の開口部54aに第1の放熱フィン56を設けているため、第1の貫通部54を通過してきた空気(矢印B)によって第1の放熱フィン56からの放熱性を高めることができる。また、灯具ユニット10を灯室16内に配置した場合に、第2の貫通部58と第3の貫通部60によって上側ブラケット32および下側ブラケット34の上下の空間を連通できる。そのため、上側ブラケット32および下側ブラケット34の後端と灯室16を構成するランプボディ12との間隔を小さくしても、灯室16内での空気の流れが確保されるため、灯室16を含む車両用前照灯100の前後方向の長さを短くできる。
【0038】
また、第1の貫通部54は、灯具ユニット10の上部において鉛直方向へ形成されている。これにより、加熱された空気の自然な上昇によって容易に灯具ユニット10の外部へ熱を逃がすことができる。
【0039】
上側ブラケット32は、投影レンズ28の上端28a、投影レンズ28の後方焦点F、および、投影レンズ28の上端28aから灯具後方へ延ばした線L1と後方焦点Fから鉛直方向へ延ばした線L2との交点C、の3点を結んだ直角三角形の領域R内に、第1の貫通部54および第1の放熱フィン56の少なくとも一部が配置するように構成されている。これにより、第1のLED24や第2のLED26から投影レンズ28へ向かう光路を上側ブラケット32が遮らないようにできる。また、灯具ユニット10を正面から見た場合に、上側ブラケット32が投影レンズに隠れるように配置されているため、灯具ユニット10の正面視において灯具ユニット10の小型化を実現できる。
【0040】
(第2の実施の形態)
図4は、第2の実施の形態に係る灯具ユニット110を用いた車両用前照灯200の断面図である。
【0041】
車両用前照灯200は、図4に示すように、車両前方側に開口部を有するランプボディ112と、ランプボディ112の開口部を覆うように取り付けられた透光カバー114とを備える。透光カバー114は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成されている。ランプボディ112と透光カバー114とにより形成される灯室113内には、灯具ユニット110が収容されている。
【0042】
図1に示すように、灯具ユニット110は、車両用灯具に用いられるいわゆるプロジェクタ型の光学ユニットであり、リフレクタ120と、ヒートシンク130と、ベース部150とを備える。また、本実施の形態の灯具ユニット110は、ロービーム用配光パターンを形成可能な光学ユニットである。灯具ユニット110は、その光軸が車両前後方向に延びるように配置されてランプボディ112に連結されている。
【0043】
リフレクタ120は、光源モジュール160からの光を反射するための反射面120aを有する。光源モジュール160は、例えば、発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子162と、半導体発光素子162を支持する基板164とを有する。放熱部材であるヒートシンク130は、光源モジュール160が搭載される光源搭載部132と、光源搭載部132の前面から光軸方向前方に延びる延長部134と、この延長部134に設けられた放熱フィン135とを有する。また、ヒートシンク130は、光源搭載部132の背面上部から上方に延びる背面部136と、この背面部136に設けられた放熱フィン137とを有する。ベース部150は、リフレクタ載置面152aを有するリフレクタ取付部152と、投影レンズ102が取り付けられるレンズ取付部154と、リフレクタ取付部152とレンズ取付部154の結合部(不図示)とを有する。
【0044】
ヒートシンク130は、リフレクタ120およびベース部150を支持するための支持部材として機能し、リフレクタ120が取り付けられたベース部150がヒートシンク130に連結されている。また、ヒートシンク130は、光源搭載部132の背面下部および背面部136の背面に螺孔138を有し、ランプボディ112を貫通して前方に延出するエイミングスクリュー116、およびレベリングシャフト118がこの螺孔138に螺合している。このようにして、ヒートシンク130がランプボディ112に取り付けられ、これにより灯具ユニット110がランプボディ112に取り付けられている。
【0045】
レベリングシャフト118は、レベリングアクチュエータ119に接続されている。車両用前照灯200は、エイミングスクリュー116、レベリングシャフト118、およびレベリングアクチュエータ119によって灯具ユニット110の光軸を水平方向および鉛直方向に調整できるように構成されている。
【0046】
リフレクタ120は、例えば回転楕円面の一部で構成された反射面120aが内側に形成された反射部材である。リフレクタ120は、反射面120aの第1焦点が光源モジュール160の近傍に位置し、反射面120aの第2焦点が投影レンズ102の後方焦点Fの近傍に位置するようにして、投影レンズ102よりも車両後方側に配置されている。
【0047】
上述のように、本実施の形態に係る灯具ユニット110は、半導体発光素子162と、半導体発光素子162が発する光の少なくとも一部を光源像として灯具前方へ投影する投影レンズ102と、半導体発光素子162と投影レンズ102との間の光路を含む空間140の周囲に配置され、半導体発光素子162が発する熱を灯具ユニット110の外部へ放熱するヒートシンク130と、を備える。ヒートシンク130の延長部134には、灯具ユニット10の外部の灯室113と空間140との間を連通するように貫通部142が形成されている。また、貫通部142の開口部142aを横切るように放熱フィン135が設けられている。
【0048】
これにより、灯具ユニット110は、半導体発光素子162が発する熱によって加熱された灯具ユニット110内部の空気をヒートシンク130の貫通部142を経由して灯具ユニットの外部へ排出できるため、灯具ユニットの放熱性を向上できる。あるいは、灯具ユニット110の外部の空気をヒートシンク130の貫通部142を経由して下方から取り込み、上方へ排出することで、空間140の熱を灯具ユニット110の外部へ排出できる。また、貫通部142の開口部142aに放熱フィン135を設けているため、貫通部142を通過してきた空気によって放熱フィン135からの放熱性を高めることができる。
【0049】
ヒートシンク130は、投影レンズ102の下端102a、投影レンズ28の後方焦点F、および、投影レンズ102の下端102aから灯具後方へ延ばした線L1と後方焦点Fから鉛直方向へ延ばした線L2との交点C、の3点を結んだ直角三角形の領域R内に、貫通部142および放熱フィン135の少なくとも一部が配置するように構成されている。これにより、半導体発光素子162から投影レンズ102へ向かう光路をヒートシンク130が余り遮らないようにできる。
【0050】
(第3の実施の形態)
図5は、第3の実施の形態に係る灯具ユニット210を用いた車両用前照灯300の断面図である。
【0051】
車両用前照灯300は、図5に示すように、ランプボディ212と、透光カバー214と、ランプボディ212および透光カバー214によって形成された灯室216内に収容されている灯具ユニット210と、灯室216内において灯具ユニット210を支持する支持部材としてのブラケット215と、を備える。灯具ユニット210は、直射方式のプロジェクタ型灯具ユニットであり、複数の半導体発光素子を備える発光モジュール222と、投影レンズ221と、を備える。また、灯具ユニット210の光軸を中心とする外周部と透光カバー214との間には、エクステンション218が設けられている。
【0052】
発光モジュール222は、半導体発光素子としてのLEDチップ222aと、セラミックなどで形成された熱伝導性絶縁基板222bと、シェード225とを備える。発光モジュール222は、その照射軸が灯具ユニット210の照射方向(図5中左方向)と略平行となる車両前方に向けられた状態で、ブラケット215の中央凹部215aに載置されている。
【0053】
ブラケット215は、発光モジュール222が搭載されている中央凹部215bの上部および下部より光軸方向前方に延びる延長部224a,224bを有する。投影レンズ221は、発光モジュール222から出射した光を灯具前方に投影する、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであって、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置され、ブラケット215の延長部224a,224bの車両前方側先端部に固定されている。
【0054】
投影レンズ221の後方焦点F近傍には、発光モジュール222のLEDチップ222aが配置されている。発光モジュール222から出射した光は、投影レンズ221に直接入射する。投影レンズ221に入射した光は、投影レンズ221で集光されて略平行な光として前方に照射される。
【0055】
ブラケット215の所定の縁部(3つの角部)にはねじ穴が形成されている。ねじ穴には、エイミングスクリュー205およびレベリングシャフト208のいずれかの一端が締結されている。また、エイミングスクリュー205およびレベリングシャフト208の他端は、ランプボディ212のねじ穴(不図示)に締結されている。これにより、ブラケット215は、ランプボディ212の後面から前方へ離間した状態でランプボディ212に取り付けられている。車両用前照灯300は、エイミングスクリュー205、レベリングシャフト208およびレベリングアクチュエータ209により、灯具ユニット210の光軸を水平方向あるいは垂直方向に調整できるように、構成されている。
【0056】
また、ブラケット215の後方側の面には、放熱フィン226が設けられている。また、放熱フィン226とランプボディ212との間には、放熱フィン226に向けて空気を送風し、放熱フィン226を冷却するファン227が設けられている。また、ブラケット215の前方側であって、延長部224a,224bの内側の領域にも、放熱フィン230が設けられている。
【0057】
上述のように、本実施の形態に係る灯具ユニット210は、LEDチップ222aと、LEDチップ222aが発する光の少なくとも一部を光源像として灯具前方へ投影する投影レンズ221と、LEDチップ222aと投影レンズ221との間の光路を含む空間232の周囲に配置され、LEDチップ222aが発する熱を灯具ユニット210の外部へ放熱する放熱部材としてのブラケット215と、を備える。ブラケット215の延長部224a,224bには、灯具ユニット210の外部の灯室216と空間232との間を連通するように貫通部234a,234bが形成されている。また、放熱フィン230は、貫通部234a,234bの開口部236a,236bを横切るように放熱フィン230が設けられている。
【0058】
これにより、灯具ユニット210は、LEDチップ222aが発する熱によって加熱された灯具ユニット210内部の空気をブラケット215の上下に形成されている貫通部234a,234bを経由して灯具ユニットの外部へ排出できるため、灯具ユニットの放熱性を向上できる。あるいは、灯具ユニット210の外部の空気をブラケット215の下部に形成されている貫通部234aを経由して下方から取り込み、上部に形成されている貫通部234aを経由して外部へ排出することで、空間232の熱を灯具ユニット110の外部へ排出できる。また、貫通部234a,234bの開口部236a,236bに放熱フィン230を設けているため、貫通部234a,234bを通過してきた空気によって放熱フィン230からの放熱性を高めることができる。
【0059】
ブラケット215は、投影レンズ221の下端221a、投影レンズ221の後方焦点F、および、投影レンズ221の下端221aから灯具後方へ延ばした線L1と後方焦点Fから鉛直方向へ延ばした線L2との交点C、の3点を結んだ直角三角形の領域R内に、貫通部234aおよび放熱フィン230の少なくとも一部が配置するように構成されている。また、ブラケット215は、投影レンズ221の上端221b、投影レンズ221の後方焦点F、および、投影レンズ221の上端221bから灯具後方へ延ばした線L1’と後方焦点Fから鉛直方向へ延ばした線L2’との交点C’、の3点を結んだ直角三角形の領域R’内に、貫通部234bおよび放熱フィン230の少なくとも一部が配置するように構成されている。
【0060】
これにより、LEDチップ222aから投影レンズ221へ向かう光路をブラケット215が余り遮らないようにできる。
【0061】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0062】
10 灯具ユニット、 12 ランプボディ、 16 灯室、 18 金属製支持部材、 24 第1のLED、 26 第2のLED、 28 投影レンズ、 30 空間、 32 上側ブラケット、 34 下側ブラケット、 34a 上面、 34b 凹部、 54 第1の貫通部、 54a 開口部、 56 第1の放熱フィン、 58 第2の貫通部、 58a 開口部、 60 第3の貫通部、 60a 開口部、 62 第2の放熱フィン、 100 車両用前照灯。
図1
図2
図3
図4
図5