特許第6078284号(P6078284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078284
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】シール部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/18 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   F16J15/18 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-219297(P2012-219297)
(22)【出願日】2012年10月1日
(65)【公開番号】特開2014-70712(P2014-70712A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(72)【発明者】
【氏名】小林 繁夫
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−156874(JP,A)
【文献】 特開昭62−240179(JP,A)
【文献】 特開平05−214318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00 − 15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの金属製保持プレートの間に樹脂製シール部材が同心上に挟持されてなるシール部材であって、
前記2つの金属製保持プレートおよび前記樹脂製シール部材は、中空円板形状であり、前記樹脂製シール部材の外径寸法は前記2つの金属製保持プレートの外径寸法よりも大径であり、
前記2つの金属製保持プレートは、それぞれが一方のプレート表面に凸部を他方のプレート表面に凹部を有し、
一方の前記金属製保持プレートにおける凸部が、他方の前記金属製保持プレートにおける凹部に、前記樹脂製シール部材を挟み込みつつ、または、貫通しつつ嵌合されることで、前記2つの金属製保持プレートと前記樹脂製シール部材とが一体化されていることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
前記2つの金属製保持プレートは、互いに同一形状であることを特徴とする請求項1記載のシール部材。
【請求項3】
前記凸部および前記凹部が、それぞれ複数設けられていることを特徴とする請求項2記載のシール部材。
【請求項4】
前記凸部が、前記金属製保持プレートと同心の円柱形状の凸部であり、該凸部の外径寸法と、前記樹脂製シール部材の中空円板の内径寸法とが同一であることを特徴とする請求項2記載のシール部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項記載のシール部材の製造方法であって、
前記2つの金属製保持プレートの間に前記樹脂製シール部材を配置して、3層に積み重ねた状態でプレス型にセットし、前記凸部および前記凹部を形成できる型を用いてプレスすることで、前記凸部および凹部が形成されると同時に、該凸部が該凹部に、前記樹脂製シール部材を挟み込みつつ、または、貫通しつつ嵌合されて、前記2つの金属製保持プレートと前記樹脂製シール部材とが一体化されることを特徴とするシール部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体や液体を搬送するためのポンプや、気体を圧搾気体とするコンプレッサーに使用されるシール部材に関する。特に、樹脂製シール部材と金属製保持プレートとからなるシール部材、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流量計、圧縮機、ダンパー機構、ポンプなどにおいて、シリンダーとこのシリンダー内を往復運動するピストン本体との密封性を高めるために、ピストン本体よりも大径の延出部を有するシール部材を設けたピストンが知られている。
【0003】
このようなピストンに設けられる従来のシール部材の一例を図6に示す。図6は、シール部材の正面図および一部拡大断面図である。図6に示すように、このシール部材11は、テフロン(登録商標)にガラス繊維などの充填剤を入れた厚み0.5〜0.8mm程度のテープからプレスによりドーナツ状のワッシャ12が打抜かれ、アルミなどの非鉄金属13に接着され、そして、ワッシャの外周をカップ状に絞り加工したものをポンプのピストンに取付けている(特許文献1参照)。具体的には、樹脂ワッシャ12にシート状の接着剤14を仮止めし、接着剤14の剥離紙を取り除き、その後、接着剤14が仮接着された樹脂ワッシャ12を金属製保持プレートである非鉄金属13に接着固定している。金属製保持プレートへの樹脂ワッシャ12の固定は、複数枚を一度に接着することが可能な治具を用いて、加熱・加圧することで接着している。
【0004】
シール部材11を、シリンダー内に取り付ける際には、金属製保持プレートからの樹脂ワッシャ12の脱落防止を兼ねて、別製造された保持プレート(図示省略)を用いて、ボルトによって該保持プレートと金属製保持プレートとの間で挟み込むことで固定している。
【0005】
また、金属製保持プレートを用いないシール部材として、樹脂成形体と、この樹脂成形体内に埋設部を有するとともに樹脂成形体の表面に延出部を有するシート状部材とからなり、シート状部材は樹脂成形体よりも柔軟な部材で、かつ、樹脂成形体と一体にされているものが知られている(特許文献2参照)。このシール部材では、シート状部材を金型内に配置し、樹脂製保持プレートとなる樹脂成形体を射出成形(インサート成形)して一体化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−214318号公報
【特許文献2】特開平10−156874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、接着剤を用いるシール部材では以下の(1)〜(6)のような問題がある。(1)フッ素樹脂製の樹脂ワッシャに対して接着可能化処理が必要である。(2)シート状接着剤をワッシャ形状にプレス加工する必要がある。また、プレス加工する工程で、プレス型に接着剤が張り付いてしまうことがある。(3)プレス加工した剥離紙付きワッシャ形状の接着剤を搬送や保管のために重ねると、接着剤同士が張り付いてしまう。また、それを防止するためには接着剤面と剥離紙面の方向を一定にする必要がある。(4)接着剤は劣化により接着強度が低下するため、消費期限内に使用することが必要である。また、劣化促進を防止するため、冷温保存が必要とされる。(5)接着剤の厚さが薄いため、剥離紙を取り除いた状態では取り扱いにくく、剥離紙付きの状態で、樹脂ワッシャへの仮接着固定が必要である。(6)接着剤の接着強度を確保するため、加熱および加温が必要である。
【0008】
また、金属製保持プレートではなく、樹脂製保持プレートをインサート成形で製作したシール部材では、シリンダー内に取り付けられるときの締め付けトルクによっては、樹脂製保持プレートの部分が割れるおそれがある。
【0009】
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、接着剤が不要な簡易な構造で製造が容易であり、取り付け時において別部材を必要とせず、締め付けトルクに対して割れることのないシール部材、および、この製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のシール部材は、2つの金属製保持プレートの間に樹脂製シール部材が同心上に挟持されてなり、上記2つの金属製保持プレートおよび上記樹脂製シール部材は、中空円板形状であり、上記樹脂製シール部材の外径寸法は上記2つの金属製保持プレートの外径寸法よりも大径であり、上記2つの金属製保持プレートは、それぞれが一方のプレート表面に凸部を他方のプレート表面に凹部を有し、一方の上記金属製保持プレートにおける凸部が、他方の上記金属製保持プレートにおける凹部に、上記樹脂製シール部材を挟み込みつつ、または、貫通しつつ嵌合され、上記2つの金属製保持プレートと上記樹脂製シール部材とが一体化されていることを特徴とする。
【0011】
上記2つの金属製保持プレートは、互いに同一形状であることを特徴とする。
【0012】
上記凸部および上記凹部が、それぞれ複数設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記凸部が、上記金属製保持プレートと同心の円柱形状の凸部であり、該凸部の外径寸法と、上記樹脂製シール部材の中空円板の内径寸法とが同一であることを特徴とする。
【0014】
本発明のシール部材の製造方法は、上記2つの金属製保持プレートの間に上記樹脂製シール部材を配置して、3層に積み重ねた状態でプレス型にセットし、上記凸部および上記凹部を形成できる型を用いてプレスすることで、上記凸部および凹部が形成されると同時に、該凸部が該凹部に、上記樹脂製シール部材を挟み込みつつ、または、貫通しつつ嵌合されて、上記2つの金属製保持プレートと上記樹脂製シール部材とが一体化されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシール部材は、2つの金属製保持プレートの間に樹脂製シール部材が同心上に挟持されてなり、上記2つの金属製保持プレートおよび上記樹脂製シール部材は、中空円板形状であり、上記樹脂製シール部材の外径寸法は上記2つの金属製保持プレートの外径寸法よりも大径であり、2つの金属製保持プレートは、一方のプレート表面に凸部を他方のプレート表面に凹部を有し、一方の金属製保持プレートにおける凸部が、他方の金属製保持プレートにおける凹部に、樹脂製シール部材を挟み込みつつ、または、貫通しつつ嵌合され、2つの金属製保持プレートと樹脂製シール部材とが一体化されているので、接着剤を使用せずに、2つの金属製保持プレートと樹脂製シール部材とを強固に一体化できる。このため、樹脂ワッシャへの接着可能化処理を不要にすることができる。また、接着剤同士の張り付きや、性能劣化など、接着剤を用いることに起因する問題が起こらない。また、取り付け時において、樹脂製シール部材を挟み込むための相手材(別部材)を必要としない。また、金属製の保持プレートを用いているので、機械的強度に優れ、締め付けトルクにより割れることを防止できる。
【0016】
また、一方の金属製保持プレートの凸部が、他方の金属製保持プレートの凹部に、樹脂製シール部材を挟み込みつつ、または、貫通しつつ嵌合されているので、取り付け時や使用時における樹脂製シール部材の位置ずれを防止できる。
【0017】
さらに、樹脂製シール部材を挟持する2つの金属製保持プレートが、それぞれが一方のプレート表面に凸部を、他方のプレート表面に凹部を有し、一方の金属製保持プレートにおける凸部が、他方の金属製保持プレートにおける凹部に嵌合される形状の部品であるので、簡易な構造であり、挟持される樹脂製シール部材の裏表を考慮することなく固定できる。このため、挟持する部材が異なる場合と比較して、製造が容易であり、製造コストも低くすることができる。
【0018】
2つの金属製保持プレートの間に樹脂製シール部材が、同心上に挟持され、それぞれが中空円板形状であり、樹脂製シール部材の外径寸法が、2つの金属製保持プレートの外径寸法よりも大径であるので、樹脂製シール部材の延出部(外周端部)が均一幅となる。さらに、上記のとおり、凹凸部により樹脂製シール部材の位置ずれを防止できることから、この延出部を均一幅に維持でき、シール性の低下を防止できる。
【0019】
2つの金属製保持プレートが、同一形状の部品であるので、部品の共通化が可能になる。
【0020】
上記凸部および凹部が、それぞれ複数設けられているので、2つの金属製保持プレートと樹脂製シール部材とをより強固に一体化できる。また、取り付け時や使用時における樹脂製シール部材の位置ずれをより安定して防止できる。
【0021】
上記凸部が、金属製保持プレートと同心の円柱形状の凸部であり、該凸部の外径寸法と、樹脂製シール部材の中空円板の内径寸法とが同一であるので、該凸部が樹脂製シール部材の中空部分に隙間なく貫通した状態で配置でき、製造時の芯出しが容易である。
【0022】
本発明のシール部材の製造方法は、2つの金属製保持プレートの間に樹脂製シール部材を配置して、3層に積み重ねた状態でプレス型にセットし、上記凸部および凹部を形成できる型を用いてプレスすることで、該凸部および該凹部が形成されると同時に、該凸部が該凹部に、樹脂製シール部材を挟み込みつつ、または、貫通しつつ嵌合されて、2つの金属製保持プレートと樹脂製シール部材とが一体化されるので、接着剤を用いずに、取り付け時や使用時における樹脂製シール部材の位置ずれなどを防止でき、また、強固に一体化されたシール部材を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のシール部材の一例を示す正面図および断面図である。
図2図1における金属製保持プレートを示す正面図および断面図である。
図3図1における樹脂製シール部材を示す正面図および断面図である。
図4】本発明のシール部材の他の例を示す正面図および断面図である。
図5図4における金属製保持プレートを示す正面図および断面図である。
図6】従来のシール部材の一例を示す正面図および一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のシール部材の一例を図1図3に基づき説明する。図1はシール部材の全体を、図2は金属製保持プレートのみを、図3は樹脂製シール部材のみを、それぞれ示す正面図および断面図である。図1に示すように、本発明のシール部材1は、樹脂製シール部材2と、金属製保持プレート3と、金属製保持プレート3’とを備えてなる。樹脂製シール部材2は、2つの金属製保持プレート3、3’により、外周端部が延出しつつ挟持されている。2つの金属製保持プレート3、3’は、互いに同一形状の部品であることが生産効率上、望ましい。各金属製保持プレートは、それぞれが一方のプレート表面に凸部4を、他方のプレート表面に凹部5を有しており、金属製保持プレート3’の凸部4が、金属製保持プレート3の凹部5に、樹脂製シール部材2を挟み込みつつ嵌合されて、2つの金属製保持プレート3、3’と樹脂製シール部材2とが一体化されている。本発明のシール部材では、金属製保持プレートと樹脂製シール部材との固定、および、金属製保持プレート同士の固定に接着剤を用いていない。
【0025】
凸部4と凹部5とからなる嵌合部において、凸部4は凹部5に、樹脂製シール部材2を挟み込みつつ、または、貫通しつつ嵌合されていればよい。この構造により、取り付け時や使用時における樹脂製シール部材の位置ずれを防止できる。樹脂製シール部材2として柔軟な部材を用いる場合は、挟み込みつつ嵌合が可能である。また、貫通しつつ嵌合する場合は、樹脂製シール部材に予め凸部に対応した穴をプレス打ち抜き等により形成しておき、挟み込み固定時に該穴と凸部とを位置合わせして配置し、該穴を貫通しつつ凸部を凹部に嵌合させることができる。
【0026】
また、挟み込み固定時に、樹脂製シール部材が破断して貫通した状態で固定されてもよい。挟み込み固定時において、樹脂製シール部材に金属製保持プレートの凹凸部により穴をあける(破断して貫通した穴)ことで、予め樹脂製シール部材に加工をする必要がなくなる。
【0027】
凸部4と凹部5とからなる嵌合部において、凸部4を凹部5に樹脂製シール部材2を挟み込みつつ(破断して貫通する場合を含む)嵌合することで、予め樹脂製シール部材に穴をあける等の加工をする場合と比較して、位置ずれの発生やシール性の低下を防止できる。
【0028】
図1図3に示す態様では、樹脂製シール部材2および金属製保持プレート3、3’の形状は、同心に配置された中空円板形状(ワッシャ形状)である。樹脂製シール部材2の外周端部が、金属製保持プレート3、3’の外周から延出している延出部である。この延出部が、ピストンの往復運動に追従して弾性変形しながら、ピストンとシリンダー間をシールしている。
【0029】
図2に示すように、金属製保持プレート3は、一方のプレート表面3aに凸部4を、他方のプレート表面3bに凹部5を有している。凸部4はプレート表面3aから突出した円柱形状の凸部であり、凹部5はプレート表面3bから窪んだ円柱形状の凹部である。この凸部4と凹部5とは、相補的な形状であり、円板状の保持プレートの両表面において、同じ円周位置に形成されている。このような凹部と凸部は、例えば、保持プレートの製造時にプレスにより同時に形成できる。
【0030】
また、凸部4および凹部5は、それぞれ複数箇所に設けることが好ましい。複数箇所に設けることで、金属製保持プレートと樹脂製シール部材とをより強固に一体化でき、さらに、取り付け時や使用時における樹脂製シール部材の位置ずれをより安定して防止できる。個数としては、2〜6個が好ましく、図2に示すような4個が最も好ましい。
【0031】
凸部4および凹部5の形状は、図2に示すものに特に限定されず、嵌合可能な形状であれば任意の形状にすることができる。なお、凸部と凹部とを嵌合させるため、少なくとも凸部高さについては、挟持する樹脂製シール部材の厚みよりも高くする。好ましくは、樹脂製シール部材の厚みの2倍以上とする。また、凸部4および凹部5の形成位置は、樹脂製シール部材を挟み込める、または、貫通できる位置であればよい。図2に示す場合では、円板の半径方向外側位置で、円周方向に等間隔に4個形成している。
【0032】
金属製保持プレート3の材質としては、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、または銅合金などが挙げられる。これらの材質を採用することで、樹脂製の保持プレートよりも機械的強度に優れ、シリンダー内に取り付けられるときの締め付けトルクにより割れることを防止できる。鉄としては一般構造用炭素鋼(SS400など)、軟鋼(SPCC、SPCEなど)、ステンレス鋼(SUS304、SUS316など)などが、アルミニウムとしてはA1100、A1050などが、アルミニウム合金としてはA2017、A5052(アルマイト処理品も含む)などが、銅としてはC1100などが、銅合金としてはC2700、C2801などが、それぞれ挙げられる。これらの中でも、軽量であり、塑性加工性にも優れ、凹凸部の成形が容易であることから、アルミニウムやアルミニウム合金を用いることが好ましい。
【0033】
図3に示すように、樹脂製シール部材2は、中空円板形状(ワッシャ形状)の部材である。この樹脂製シール部材2は、任意の製造方法で得られたものを使用でき、例えば、圧縮成形材を切削加工したもの、テープ状のシート材をプレス打ち抜き加工したもの、同シート材をカッターやレーザーにより切断したものなどが挙げられる。ピストンの往復運動に追従した弾性変形などを可能にするため、柔軟性を有するシート材であることが好ましい。このようなシート材を形成する樹脂材料の物性としては、引張り破断伸びが100%以上、好ましくは150%以上であり、上限値は特に限定する必要はないが、常識的な数値としては450%である。また、引張り強度が5MPa以上、好ましくは10MPa以上であり、上限値は45MPaである。また、硬度がショア硬さ(デュロメータ)にてD40〜D90、好ましくはD50〜D80である。このような樹脂材料を用いることで、シール性や追従性に優れたシール部材とできる。
【0034】
樹脂材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂、テトラフルオロエチレン−へキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)樹脂、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂などのフッ素系樹脂や、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリアミド6(PA6)樹脂、ポリアミド6−12(PA612)樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などが挙げられる。また、エラストマーなどのゴム弾性体も使用できる。これらの中でも、摺動特性が特に優れることから、フッ素系樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂に、ガラス繊維などの強化繊維やポリイミド樹脂粉末などの充填剤を配合してもよい。本発明で使用できるフッ素系樹脂の市販品としては、例えば、NTN精密樹脂社製商品名:ベアリーFL3000(フッ素樹脂シート;厚さ0.5〜1mm、引張破断伸び200%、引張り強度15MPa、硬さ(デュロメータ)D66)などが挙げられる。
【0035】
本発明のシール部材の他の例を図4および図5に基づき説明する。図4はシール部材の全体を、図5は金属製保持プレートのみを、それぞれ示す正面図および断面図である。図4に示すように、この態様のシール部材1は、金属製保持プレートの形状が異なる以外は図1に示すものと同じである。樹脂製シール部材2は、2つの金属製保持プレート6、6’により、外周端部が延出しつつ挟持されている。金属製保持プレート6’の凸部7が、金属製保持プレート6の凹部8に、樹脂製シール部材2を貫通しつつ嵌合され、2つの金属製保持プレート6、6’と樹脂製シール部材2とが一体化されている。この態様においても、金属製保持プレートと樹脂製シール部材との固定、および、金属製保持プレート同士の固定に接着剤を用いていない。
【0036】
図5に示すように、金属製保持プレート6は、一方のプレート表面6aに、該プレートと同心の円柱形状の凸部7を、他方のプレート表面6bに上記凸部7と相補的な形状である円柱形状の凹部8を有している。このような凹部8と凸部7は、図2に示すものと同様に、保持プレートの製造時にプレスにより同時に形成できる。また、凸部と凹部とを嵌合させるため、少なくとも凸部高さについては、挟持する樹脂製シール部材の厚みよりも高くする。
【0037】
凸部7の外径寸法は、樹脂製シール部材2の中空円板の内径寸法と同一に設定することが好ましい。このように設定することで、凸部7が、樹脂製シール部材2の中空部分に隙間なく貫通した状態で配置でき、製造時の芯出しが容易である(図4参照)。また、樹脂製シール部材の外径と、金属製保持プレートの内径との同軸度を高精度にすることができる。
【0038】
この態様では、1箇所の凹凸部で金属製保持プレートと樹脂製シール部材とを一体化できる。また、凸部が樹脂製シール部材の中空部分に隙間なく貫通した状態で配置されているので、取り付け時や使用時における樹脂製シール部材の位置ずれを防止できる。
【0039】
本発明のシール部材の製造方法について説明する。製造方法としては、主に、(1)凹凸部を有する金属製保持プレートを個別に製造した後、これを用いて製造する方法と、(2)金属製保持プレートと樹脂製シール部材との一体化の際に、同時に凹凸部を形成しつつ製造する方法とがある。
【0040】
(1)の場合、2つの金属製保持プレートを、一方の金属製保持プレートの凸部が、他方の金属製保持プレートの凹部に重なる位置に配置し、この保持プレート間に樹脂製シール部材を配置して、3層に積み重ねた状態でプレス型にセットし、プレスにより凸部と凹部とを、樹脂製シール部材を挟み込みつつ、または、貫通しつつ嵌合して一体化する。
【0041】
(2)の場合、2つの金属製保持プレートの間に樹脂製シール部材を配置して、3層に積み重ねた状態でプレス型にセットし、凸部および凹部を形成できる型(ピンなど)を用いてプレスすることで、凸部および凹部が形成されると同時に、該凸部が該凹部に、樹脂製シール部材を挟み込みつつ、または、貫通しつつ嵌合されて、2つの金属製保持プレートと樹脂製シール部材とが一体化される。
【0042】
いずれの場合の製造方法を採用しても、接着剤を用いずに、取り付け時や使用時における樹脂製シール部材の位置ずれなどを防止できる、強固に一体化されたシール部材を容易に製造することができる。特に、(2)の場合は、凹凸部の位置決めが必要なく、より容易に製造が可能となる。また、樹脂製シール部材を挟持する2つの金属製保持プレートが、同一形状の部品であるので、樹脂製シール部材の裏表を考慮することなく固定でき、製造が容易であり、製造コストも低くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のシール部材は、接着剤が不要な簡易な構造で製造が容易であり、取り付け時において別部材を必要とせず、位置ずれ等もないので、空圧機器、油圧機器、水圧機器等の流体用シール機器などに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 シール部材
2 樹脂製シール部材
3、6 金属製保持プレート
4、7 凸部
5、8 凹部
11 従来のシール部材
12 樹脂ワッシャ
13 非鉄金属
14 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6