(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多角形又は円形の基材上に第1電極層と、有機発光層と、第2電極層を備えた積層体を有する断面構造を備え、前記基材を平面視したときに、実際に発光する発光領域と、当該発光領域への給電に寄与する給電領域が存在する有機EL装置において、
当該給電領域は、発光領域の周囲であって、かつ、辺又は周から基材の短辺又は短軸の1/10以下の範囲に形成されており、
前記第2電極層上に封止層が積層されており、さらに封止層上に外部電源と電気的に接続可能な給電部材が載置されており、
給電部材と給電領域は、少なくとも3本以上のボンディングワイヤーによって接続されており、
前記給電領域と発光領域は、基材の少なくとも1つの辺又は周に平行に形成された第1分離部を有した溝によって分離されるものであり、
前記ボンディングワイヤーは、当該第1分離部を跨って給電部材に接着されていることを特徴とする有機EL装置。
前記給電部材と、前記給電領域の内、前記発光領域内の積層体の第1電極層と電気接続されている第1電極層給電領域とが、互いに直交する少なくとも2方向から、前記ボンディングワイヤーによって接続されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
前記ボンディングワイヤーは、銅、金、アルミニウムの中から選ばれる少なくとも1種以上の金属から形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機EL装置。
面状に広がりをもった基材上に第1電極層と、有機発光層と、第2電極層を備えた積層体を有する断面構造を備え、前記基材を平面視したときに、実際に発光する発光領域と、当該発光領域への給電に寄与する給電領域が存在する有機EL装置において、
当該給電領域は、発光領域の周囲に前記基材の幅の1/10以下の領域として形成されており、
前記第2電極層上に封止層が積層されており、さらに封止層上に外部電源と電気的に接続可能な給電部材が載置されており、
給電部を有し、
前記給電部は、前記給電領域に位置するものであって、前記第1電極層を含むものであり、
給電部材と前記給電部は、少なくとも3本以上のボンディングワイヤーによって接続されており、
前記ボンディングワイヤーは、前記給電領域と前記発光領域の境界部位を跨って給電部材に接着されており、
前記ボンディングワイヤーと給電部材との接着部位は、平面視したときに、第1電極層と有機発光層と第2電極層の重畳部位と重なっていることを特徴とする有機EL装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、有機EL装置に係るものである。
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL装置1を示している。以下、上下左右の位置関係は、特に断りのない限り、
図1の姿勢を基準に説明する。すなわち、使用時における光取り出し側が下である。
【0025】
本実施形態の有機EL装置1は、
図1,
図3,
図4のように長方形状の基板2(基材)上に有機EL素子10(積層体)を積層し、その上から無機封止層7(封止層)を積層して、封止したものである。そして、有機EL装置1は、無機封止層7の上に、箔状又は板状の給電部材8を載置したものである。
有機EL素子10は、
図6のように透光性を有した基板2側から順に第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6が積層されたものである。
本実施形態の有機EL装置では、基板2側から光を取り出す、いわゆるボトムエミッション型の有機EL装置を採用している。
【0026】
有機EL装置1は、
図4,
図5のように基板2上の有機EL素子10が複数の溝によって、複数の領域に分けられている。具体的には、有機EL装置1は、
図6,
図8のように、その面内において、使用時に実際に発光する発光領域30と、使用時の給電に寄与し発光領域30の周囲を囲む給電領域31,32とに分けられる。さらに給電領域31は、
図8のように、発光領域30内の第1電極層3と電気的に接続される第1電極給電領域35,36から形成されている。給電領域32は、発光領域30内の第2電極層6と電気的に接続される第2電極給電領域33,34から形成されている。
図7に示される給電領域31,32の幅L3,L4は、基板2の幅(幅方向w又は長手方向lの長さ)の1/10以下の領域となっており、1/12以下となっていることが好ましい。
【0027】
また、有機EL装置1は、
図2のように有機EL素子10上に無機封止層7が被覆した被覆領域25と、有機EL素子10が無機封止層7から張り出した額縁領域26,27を有している。
被覆領域25は、基板2の幅方向及び長手方向(幅方向に直交する方向であって、かつ、部材厚方向に直交する方向)中央に位置しており、額縁領域26,27は、基板2の各縁に沿って形成されている。被覆領域25は、
図4,
図5,
図6のように発光領域30から給電領域31,32に跨がって形成されており、有機EL装置1の製造時において、ワイヤー50,51を取り付け可能な領域となっている。
被覆領域25の面積は、額縁領域26,27の面積に比べてかなり大きくなっている。額縁領域26,27の面積は、基板2の面積の1/10以下となっている。
図2に示される額縁領域26,27の幅L1,L2は、基板2の幅(幅方向又は長手方向の長さ)の1/10以下の領域となっており、1/15以下となっていることが好ましい。
額縁領域26,27の幅L1,L2(基板2の縁からの距離)は、それぞれ50μm以上3mm以下となっていることが好ましく、50μm以上1mm以下となっていることがより好ましい。
図2に示される額縁領域26,27の幅L1,L2は、給電領域31,32の幅L3,L4(
図7参照)の1/2以上1以下であることが好ましい。
【0028】
ここで、本実施形態の有機EL装置1では、
図1,
図2,
図3のように、外部電源に電気的に接続可能な給電部材8を、発光領域30内の有機EL素子10への給電に寄与する給電領域31,32と接続する構造に主に特徴を有する。
【0029】
そこで、以下の説明においては、この主な特徴的構成についてまず詳説し、その後、他の構成について説明する。
給電部材8は、防湿性及び導電性を有した箔状又は板状の部材であり、
図9のように第1導電部材52と、絶縁部材53と、第2導電部材55から形成されており、第1導電部材52と第2導電部材55との間に絶縁部材53が介在している。
【0030】
第1導電部材52は、箔状又は板状の導電体である。第1導電部材52の材質は、導電性を有していれば特に限定されるものではなく、例えば、銅、金、銀、白金、アルミニウム等の金属や、合金、金属表面にメッキ加工されたもの、などが採用できる。より好ましくは、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等の金属箔を使用して、水蒸気バリア層としての防湿機能を持たせることが好ましい。
【0031】
第2導電部材55は、箔状又は板状の導電体である。第1導電部材52の材質は、導電性を有していれば特に限定されるものではなく、例えば、銅、金、銀、白金、アルミニウム等の金属や、合金、金属表面にメッキ加工されたもの、などが採用できる。より好ましくは、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等の金属箔を使用して、水蒸気バリア層としての防湿機能を持たせることが好ましい。
なお、本実施形態では、第1導電部材52と第2導電部材55は共に銅板を採用し、水蒸気バリア層としての防湿機能を持たせている。
【0032】
絶縁部材53は、箔状又は板状の絶縁体であり、第1導電部材52と第2導電部材55とのが直接接触することを防止する部材である。絶縁部材53の材質は、絶縁性を有していれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス、樹脂フィルムなどが採用でき、その中でも、加工の容易さの観点からポリエチレンテレフタレート(PET)が好適である。
【0033】
また、給電部材8は、
図2のように本体部47と、取出部48から形成されている。
本体部47は略長方形状の部位であり、無機封止層7の上面を覆うことが可能となっている。具体的には、本体部47は、少なくとも発光領域30全面を覆うことが可能となっており、本実施形態では、被覆領域25全体を覆うことが可能となっている。
取出部48は、舌状の部位であり、外部電源と繋がる配線端子を接続可能となっている。すなわち、取出部48は、外部電源との接続するためのコネクターとして機能する部位である。
【0034】
給電部材8は、幅方向wに注目すると、
図3,
図9のように幅方向w両端部近傍に第1導電部材52が露出する第1導電露出領域41,42が形成されており、その幅方向w内側に第1導電部材52と、絶縁部材53と、第2導電部材55が積層した本体領域43を有している。第1導電露出領域41,42は、
図1のように有機EL装置1の組み立てた時において、第1電極給電領域35,36と複数本のワイヤー51によって接続される領域であり、本体領域43は、第2電極給電領域33,34と複数本のワイヤー50によって接続される領域である。
【0035】
具体的には、第1導電露出領域41,42には、
図1のように長手方向lに所定の間隔を空けて、少なくとも3本以上のワイヤー51が並設されており、本体領域43には、幅方向に所定の間隔を空けて、少なくとも3本以上のワイヤー50が並設されている。
接続するワイヤー50,51の本数は、基板2の大きさに合わせて適宜本数を変更するが、それぞれ5本以上100本以下であることが好ましく、10本以上50本以下であることが特に好ましい。また、隣接するワイヤー50,50間、隣接するワイヤー51,51間の間隔はそれぞれ200μm以上1cm以下であることが好ましく、500μm以上10mm以下であることが特に好ましい。
本実施形態では、ワイヤー50,51は、幅方向w及び長手方向lに等間隔に配されている。
【0036】
ワイヤー50,51は、線状の部材である。ワイヤー50,51の直径は、15μm以上100μm以下となっており、50μm以上100μm以下であることが好ましい。
ワイヤー50,51の材質は、電気伝導性を有していれば、特に限定されるものではないが、例えば、銅、金、アルミニウムなどが採用できる。
【0037】
有機EL装置1全体に目を移すと、有機EL装置1の中央に位置する発光領域30は、
図7,
図8のように領域分離溝60〜63によって分離された領域であり、平面視においてほぼ第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6が重畳する部位である。すなわち、有機EL装置1の駆動時には、発光領域30内の機能層5が面状に広がりをもって発光する。
なお、以下の説明においては、発光領域30に位置する有機EL素子10(第1電極層3と機能層5と第2電極層6の重畳部分)を発光素子65とも称する。
【0038】
発光領域30は、上記したように幅方向w及び長手方向lにおいて有機EL装置1の中央に位置しており、給電領域31,32は、発光領域30の周囲であって、発光領域30の縁に沿って配されている。
【0039】
第1電極給電領域35,36は、
図8のように領域分離溝62,63よりも幅方向外側に位置する領域である。言い換えると、第1電極給電領域35,36は、発光領域30を挟んで、幅方向に対向している。
また、第1電極給電領域35,36は、それぞれ基板2の対向する辺(本実施形態では長辺)近傍に位置している。換言すると、第1電極給電領域35,36は、それぞれ幅方向端部近傍に位置している。
第1電極給電領域35,36の一部は、
図4のように無機封止層7が被覆している。すなわち、無機封止層7は、発光領域30から第1電極給電領域35,36に跨がって被覆している。
【0040】
第2電極給電領域33,34は、
図8のように領域分離溝61,62よりも長手方向外側に位置する領域である。言い換えると、第2電極給電領域33,34は、発光領域30を挟んで、長手方向に対向している。また、第2電極給電領域33と第2電極給電領域34は、発光領域30を介して対称の関係となっている。
また、第2電極給電領域33,34は、それぞれ基板2の対向する辺(本実施形態では短辺)近傍に位置している。換言すると、第2電極給電領域33,34は、それぞれ長手方向端部近傍に位置している。また、第2電極給電領域33と第2電極給電領域34は、発光領域30を介して対称の関係となっている。また、第2電極給電領域33,34は、幅方向に第1電極給電領域35,36の一部によって挟まれている。
第2電極給電領域33,34の一部は、
図5のように無機封止層7が被覆している。すなわち、無機封止層7は、発光領域30から第2電極給電領域33,34に跨がって被覆している。
【0041】
第1電極給電領域35,36は、
図8のように第1電極接続溝20,21がそれぞれ1本ずつ、第1電極給電領域35,36を幅方向に2分割するように形成されている。
【0042】
第1電極給電領域35,36に位置する第2電極層6,6は、
図4のように第1電極給電領域35,36内の第1電極層3と直接接することによって電気的に接続されており、当該第1電極層3に給電可能となっており、第1給電部56,57(給電部)として機能する。
第2電極給電領域33,34に位置する第2電極層6,6は、
図5のように発光領域30内の第2電極層6と電気的に接続され(本実施形態では、発光領域30内の第2電極層6と第1電極層3を介して接続されており)、当該発光領域30内の第2電極層6に給電可能となっており、第2給電部58,59(給電部)として機能する。
なお、以下の説明においては、第1電極給電領域35,36の第2電極層6,6を第1給電部56,57とも称し、第2電極給電領域33,34の第2電極層6,6を第2給電部58,59とも称する。
【0043】
このように発光領域30は、幅方向に延びる2つの第2電極給電領域33,34及び長手方向に延びる2つの第1電極給電領域35,36によって囲まれている。
【0044】
また、本実施形態の有機EL装置1は、上記したように深さの異なる複数の溝によって、複数の区画に分離されて区切られている。
具体的には、有機EL装置1は、
図10のように部分的に第1電極層3を除去した取出電極分離溝11,12と、部分的に第2電極層6と機能層5の双方を除去した領域分離溝60〜63と、部分的に機能層5を除去した第1電極接続溝20,21、第2電極接続溝17,18並びに取出電極固定溝15,16と、を有しており、これらの溝によって複数の区画に分離されている。
【0045】
各溝について詳説すると、取出電極分離溝11,12は、
図10のように基板2上に積層された第1電極層3を3つの領域に分離する溝である。取出電極分離溝11,12は、第2電極給電領域33,34(
図5参照)及び発光領域30(
図5参照)の一部に跨がって形成されている。
【0046】
領域分離溝63,64は、
図10のように基板2の長手方向l全体に亘って延伸した溝であり、領域分離溝61,62は、
図10のように基板2の幅方向wに延伸した溝である。
また、領域分離溝61,62の幅方向wの端部は、領域分離溝63,64の中間部と連続している。
領域分離溝60〜63は、機能層5と第2電極層6の双方を複数の領域分離する溝である。また、領域分離溝60〜63は、有機EL装置1内を発光領域30、第2電極給電領域33,34、第1電極給電領域35,36に区分けしている。
領域分離溝60,61は、
図8のように幅方向に延伸して発光領域30の縁を形成しており、発光領域30と第2電極給電領域33,34とのそれぞれの境界部位に形成されている。
領域分離溝62,63は、長手方向にそれぞれ延伸して発光領域30の縁を形成しており、発光領域30と第1電極給電領域35,36とのそれぞれの境界部位、発光領域30と第2電極給電領域33,34とのそれぞれの境界部位に形成されている。
【0047】
領域分離溝60〜63内には、
図4,
図5,
図6のように絶縁性を有した無機封止層7の一部が進入しており、無機封止層7は領域分離溝60〜63の底部で第1電極層3と接触している。すなわち、無機封止層7によって、発光領域30と第2電極給電領域33,34と第1電極給電領域35,36のそれぞれの機能層5及び第2電極層6を、互いに電気的に切り離している。
【0048】
領域分離溝61,62の内側(発光領域30側)には、
図8,
図10のように第2電極接続溝17,18が位置しており、領域分離溝61,62の外側(給電領域31側)には取出電極固定溝15,16が位置している。すなわち、領域分離溝61,62は、第2電極接続溝17,18と取出電極固定溝15,16との間に介在している。
領域分離溝63,64の外側(給電領域32側)には第1電極接続溝20,21が位置している。
【0049】
第2電極接続溝17,18及び取出電極固定溝15,16は、
図10のように幅方向に延伸しており、機能層5のみを複数の領域に分離する溝である。第2電極接続溝17,18は、発光領域30内に位置しており、取出電極固定溝15,16は、第2電極給電領域33,34(
図8参照)内に位置している。第2電極接続溝17,18と取出電極固定溝15,16は互いに平行となっている。
【0050】
第1電極接続溝20,21は、
図10のように長手方向全体に亘って延伸した溝であり、機能層5のみを複数の領域に分離する溝である。第1電極接続溝20,21は、第1電極給電領域35,36(
図8参照)に位置している。
【0051】
第2電極接続溝17,18内には、
図5のように発光素子65を形成する第2電極層6の一部が進入しており、第2電極接続溝17,18の底部で第2電極給電領域33,
34と連続する第1電極層3と接触している。また、取出電極固定溝15,16内には、第2給電部58,59の一部が進入しており、取出電極固定溝15,16の底部で第2電極給電領域33,
34の第1電極層3と接触している。すなわち、第2給電部58,59と発光素子65を形成する第2電極層6との間には、取出電極固定溝15,16及び第2電極接続溝17,18を経由した導電経路が形成されており、第2給電部58,59と発光素子65の第2電極層6は電気的に接続されている。
【0052】
第1電極接続溝20,21内には、
図4のように第1給電部56,57の一部が進入しており、第1電極接続溝20,21の底部で発光素子65を形成する第1電極層3と連続した第1電極層3と接触している。すなわち、第1給電部56,57と発光素子65の第1電極層3との間には、第1電極接続溝20,21を経由した導電経路が形成されており、第1給電部56,57と発光素子65の第1電極層3は電気的に接続されている。
【0053】
取出電極固定溝15,16の溝幅は、30μm以上80μm以下であり、40μm以上70μm以下であることが好ましく、45μm以上60μm以下であることが特に好ましい。
第2電極接続溝17,18の溝幅は、30μm以上80μm以下であり、40μm以上70μm以下であることが好ましく、45μm以上60μm以下であることが特に好ましい。
第1電極接続溝20,21の溝幅は、30μm以上80μm以下であり、40μm以上70μm以下であることが好ましく、45μm以上60μm以下であることが特に好ましい。
【0054】
発光素子65を覆う無機封止層7に目を移すと、無機封止層7は、
図5,
図6のように、少なくとも発光領域30の発光素子65全面を覆っている。
無機封止層7は、
図4,
図6のように長手方向において、さらにその外側に位置する第2電極給電領域33,34の一部まで至っている。具体的には、無機封止層7は、領域分離溝63,64を超えて外側に至っており、第1電極接続溝20,21の手前まで至っている。
【0055】
また、無機封止層7は、
図4,
図6のように幅方向において、さらに発光領域30の外側に位置する第1電極給電領域35,36の一部まで至っている。具体的には、無機封止層7は、領域分離溝61,62を超えて外側に至っており、取出電極固定溝15,16の手前まで至っている。
【0056】
そして、有機EL装置1は、額縁領域26,27で給電部材8と電気的に接続することにより、額縁領域26,27内の第1給電部56,57及び第2給電部58,59を介して被覆領域25内に位置する発光素子65と電気的に接続することが可能となっている。
【0057】
続いて、有機EL装置1の各層構成について説明する。
上記したように、有機EL装置1の基本構造は、基板2上に有機EL素子10が積層し、その上に、無機封止層7の順に積層したものである。
【0058】
基板2は、透光性及び絶縁性を有したものである。基板2の材質については特に限定されるものではなく、例えば、フレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板などから適宜選択され用いられる。特にガラス基板や透明なフィルム基板は透明性や加工性の良さの点から好適である。
基板2は、面状に広がりを持っており、円形又は多角形状をしている。本実施形態では、4角形状であり、具体的には長方形状をしている。
【0059】
第1電極層3の素材は、透明であって、導電性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明導電性酸化物などが採用される。機能層5内の発光層から発生した光を効果的に取り出せる点では、透明性が高いITOあるいはIZOが特に好ましい。本実施形態では、透明導電性酸化物であるITOを採用している。
【0060】
機能層5は、第1電極層3と第2電極層6との間に設けられ、少なくとも一つの発光層を有している層である。機能層5は、主に有機化合物からなる複数の層から構成されている。この機能層5は、一般な有機EL装置に用いられている低分子系色素材料や、共役系高分子材料などの公知のもので形成することができる。また、この機能層5は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの複数の層からなる積層多層構造であってもよい。
【0061】
また、これらの機能層5の構成層は真空蒸着法やスパッタ法、CVD法、ディッピング法、ロールコート法(印刷法)、スピンコート法、バーコート法、スプレー法、ダイコート法、フローコート法など適宜公知の方法によって成膜できる。
【0062】
第2電極層6の材料は、特に限定されるものではなく、例えば銀(Ag)やアルミニウム(Al)などの金属が挙げられる。本実施形態の第2電極層6は、アルミニウムで形成されている。また、これらの材料はスパッタ法又は真空蒸着法によって堆積されることが好ましい。
第2電極層6の電気伝導率及び熱伝導率は、第1電極層3よりも大きい。言い換えると、第2電極層6は、第1電極層3よりも電気伝導性及び熱伝導性が高い。
【0063】
無機封止層7の材質は、絶縁性及び封止性を有していれば、特に限定されるものではないが、酸素、炭素、窒素の中から選ばれた1種類以上の元素と、ケイ素元素とからなるシリコン合金により形成されていることが好ましく、Si−O、Si−N、Si−H、N−H等の結合を含む窒化珪素や酸化珪素、および両者の中間固溶体である酸窒化珪素であることが特に好ましい。また、本実施形態では、これらの構造を有した多層構造の無機封止層を使用してもよい。
具体的には、無機封止層7は、有機EL素子10側から乾式法によって形成される第1無機封止層と、湿式法によって形成される第2無機封止層がこの順に積層されて形成されていることが好ましい。
第1無機封止層は、化学気相蒸着によって形成される層であり、さらに詳細にはシランガスやアンモニアガス等を原料としてプラズマCVD法で成膜される層である。第1無機封止層は、有機EL装置の製造工程において、水分含量が少ない雰囲気下で、有機EL素子の形成工程に連続して成膜できるため、空気や水蒸気に晒さずに成膜でき、使用直後の初期ダークスポットの発生を低減することができる。
第2無機封止層は、液体状又はゲル状の原料を塗布した後、化学反応を介して成膜される層である。第2無機封止層は、より詳細には、緻密性を有したシリカを素材としている。また、第2無機封止層はポリシラザン誘導体を原料とするのが好ましい。ポリシラザン誘導体を用いてシリカ転化によって第2無機封止層を成膜した場合、シリカ転化時に重量増加を生じ、体積収縮が小さい。また、シリカ膜転化時(固化時)に樹脂の耐え得る温度で十分にしかもクラックを生じ難くすることができるという利点を有する。
なお、ここでいうポリシラザン誘導体は、珪素−窒素結合を持つポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO
2、Si
3N
4、および両者の中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体ポリマーである。また、このポリシラザン誘導体は、Siと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体も含む。ポリシラザン誘導体の中でも特に側鎖が全て水素であるペルヒドロポリシラザンや、珪素と結合する水素部分が一部メチル基に置換された誘導体が好ましい。第2無機封止層は、第1無機封止層に比べて緻密な層が形成できるため、封止性が高く、経時的な新たなダークスポットの発生を防止したり、発生したダークスポットの拡大化を抑制したりすることができる。
【0064】
次に、本実施形態に係る有機EL装置1の製造方法について説明する。
有機EL装置1は、図示しない真空蒸着装置及びCVD装置によって成膜し、図示しないパターニング装置、本実施形態では、レーザースクライブ装置を使用してパターニングを行い、製造される。
【0065】
まず、スパッタ法やCVD法によって基板2の一部又は全部に第1電極層3を成膜する(
図11(a)から
図11(b))。
【0066】
その後、第1電極層3が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって取出電極分離溝11,12を形成する(
図11(b)から
図11(c))。
このとき、取出電極分離溝11,12は、平面視して「コ」の字状に形成されており、基板の短辺と取出電極分離溝11,12によって島状の取出領域が形成されている。すなわち、取出電極分離溝11,12は、基板2の短辺に平行な部位と、基板2の長辺(短辺に対して直交する辺)に平行な部位からなる。
また、この基板上には取出電極分離溝11,12を除いて第1電極層3が存在している。そのため、このようにレーザースクライブ処理を用いることが可能であり、前記第1電極層3を成膜する際に、成膜を行わない被成膜面を隠すマスクプロセスを省略できる。
【0067】
次に、真空蒸着装置によって、この基板にホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの機能層5を順次成膜する(
図11(c)から
図11(d))。
このとき、取出電極分離溝11,12内に機能層5が積層され、取出電極分離溝11,12内に機能層5が満たされるとともに、この基板の全面に機能層5が積層される。
【0068】
その後、機能層5が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、取出電極固定溝15,16、第2電極接続溝17,18並びに第1電極接続溝20,21をそれぞれ形成する。本実施形態では、取出電極固定溝15,16と第2電極接続溝17,18と第1電極接続溝20,21をともに2本ずつ形成する(
図11(d)から
図11(e))。
このとき、取出電極固定溝15,16及び第2電極接続溝17,18は、それぞれ基板の短辺に平行になるように延びており、第1電極接続溝20,21は、基板の短辺に対して直交する方向(長辺と平行となる方向)に延びている。すなわち、取出電極固定溝15,16及び第2電極接続溝17,18はそれぞれ互いに平行となっており、第1電極接続溝20,21は、取出電極固定溝15,16及び第2電極接続溝17,18に対して直交している。
第1電極接続溝20,21は、基板の長辺近傍に長手方向全体に亘って形成されており、取出電極固定溝15,16及び第2電極接続溝17,18を挟むように形成されている。
また、取出電極固定溝15と第2電極接続溝17は所定の間隔を空けて形成されており、取出電極固定溝16と第2電極接続溝18も所定の間隔を空けて形成されている。そして、1辺側から順に取出電極固定溝15、第2電極接続溝17、第2電極接続溝18、取出電極固定溝16に並設されている。
そして、取出電極固定溝15,16、第2電極接続溝17,18並びに第1電極接続溝20,21はいずれも互いに連続していない。
なお、この基板上には取出電極固定溝15,16、第2電極接続溝17,18並びに第1電極接続溝20,21を除いて機能層5が存在している。そのため、このようにレーザースクライブ処理を用いることが可能であり、前記機能層5を成膜する際に、成膜を行わない被成膜面を隠すマスクプロセスを省略できる。
【0069】
次に、真空蒸着装置によって、この基板に第2電極層6を成膜する(
図11(e)から
図11(f))。
このとき、取出電極固定溝15,16、第2電極接続溝17,18並びに第1電極接続溝20,21内に第2電極層6が積層され、取出電極固定溝15,16、第2電極接続溝17,18並びに第1電極接続溝20,21内に第2電極層6が満たされるとともに、この基板全面に第2電極層6が積層される。すなわち、取出電極固定溝15,16、第2電極接続溝17,18並びに第1電極接続溝20,21のそれぞれの底部で第1電極層3と第2電極層6が接触した状態で固着し、第1電極層3と第2電極層6が電気的に接続される。
そのため、第1電極層3と第2電極層6の間に機能層5が介在する場合に比べて、剥離強度を向上させることができる。
【0070】
その後、第2電極層6が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、機能層5及び第2電極層6に亘って延伸した領域分離溝60〜63を形成する(
図11(f)から
図11(g))。
このとき、領域分離溝63,64は、第1電極接続溝20,21と平行に形成されており、第2電極層6が積層された領域の長手方向全体に亘って形成されている。
領域分離溝61,62は、取出電極固定溝15,16と第2電極接続溝17,18との間に介在するように形成されている。すなわち、領域分離溝23は、取出電極固定溝15と第2電極接続溝17とによって挟まれており、領域分離溝24は、取出電極固定溝16と第2電極接続溝18とによって挟まれている。また、領域分離溝61,62と、取出電極固定溝15,16及び第2電極接続溝17,18はそれぞれ平行に並設されている。取出電極固定溝15,16と領域分離溝61,62、領域分離溝61,62と第2電極接続溝17,18はそれぞれ所定の間隔を空けて配されている。領域分離溝63,64は、領域分離溝61,62を介して連続している。
領域分離溝61,62は、発光領域30と第2電極給電領域33,34との境界部位に形成されており、領域分離溝63,64は、発光領域30と第1電極給電領域35,36との境界部位に形成されている。すなわち、領域分離溝61,62は、長手方向に機能層5及び第2電極層6を3つの領域に分割しており、領域分離溝63,64は、幅方向に機能層5及び第2電極層6を3つの領域に分割している。
また、この基板上には領域分離溝60〜63を除いて第2電極層6が存在している。そのため、このようにレーザースクライブ処理を用いることが可能であり、前記第2電極層6を成膜する際に、成膜を行わない被成膜面を隠すマスクプロセスを省略できる。
【0071】
続いて、この基板の一部をマスクで覆い、CVD装置によって、無機封止層7を成膜する(
図11(g)から
図11(h))。
このとき、無機封止層7は、少なくとも発光領域30内の第2電極層6を覆っており、さらに領域分離溝60〜63を跨がって給電領域31,32の一部も覆っている。すなわち、領域分離溝60〜63内に無機封止層7が積層され、領域分離溝60〜63内に無機封止層7が満たされる。そのため、発光素子65への封止機能を十分に確保することができる。
【0072】
続いて、無機封止層7上に給電部材8を載置し、本発明の特徴たるワイヤーボンディング処理を施す。
第1導電部材52と第1電極給電領域35,36を複数本のワイヤー50でボンディングする。第2導電部材55と第2電極給電領域33,34を複数本のワイヤー51でボンディングする。
このとき、ワイヤー50は、第1電極接続溝20,21の部材厚方向の投影面上に位置しており、ワイヤー51は、取出電極固定溝15,16の部材厚方向の投影面上に位置している。ワイヤー50は、第1電極層3と第1給電部56,57とが直接接した部位に接続され、ワイヤー51は、第1電極層3と第2給電部58,59とが直接接した部位に接続されている。そのため、接着強度が高く、ワイヤー50,51の引っ張りに対して、第2電極層が剥がれにくい。それ故に、信頼性も高い。
【0073】
このようにして有機EL装置1が完成する。
【0074】
最後に、有機EL装置1を外部電源に接続した場合におけて想定される電流の流れについて説明する。なお、ここでは、
図12のように直流の外部電源を使用した場合であって、外部電源の正極を第1導電部材52に接続し、外部電源の負極を第2導電部材55に接続した場合について説明する。
【0075】
第1導電部材52に伝わった電流は、
図13のようにワイヤー51を介して第1給電部56(第1給電部57)に伝わり、第1電極給電領域35(第1電極給電領域36)内の第1電極接続溝20(第1電極接続溝21)内を経由して第1電極層3に伝わる。第1電極層3に伝わった電流は、発光領域30内に至り、発光素子65の機能層5を経由して第2電極層6に伝わる。第2電極層6に伝わった電流は、第2電極接続溝17(第2電極接続溝18)内を経由して第1電極層3に伝わり、第1電極層3に伝わった電流は、第2電極給電領域33(第2電極給電領域34)内の取出電極固定溝15(取出電極固定溝16)を介して第2給電部58(第2給電部59)に至る。そして、第2給電部58(第2給電部59)からワイヤー50を介して第2導電部材55に伝わり、外部電源に伝わる。
このように、電流の流れは、一方方向から交差する方向に方向転換をして全体に伝わる。
【0076】
本実施形態の有機EL装置1によれば、ワイヤーボンディングで給電部材8と給電部56〜59を接続しているため、点接続であり、接着面積が小さくすることができる。
本実施形態の有機EL装置1によれば、ワイヤー50,51は、それぞれ幅方向又は長手方向に等間隔に配されている。すなわち、給電部材8の第1導電部材52とワイヤー50の接着部位及び給電部材8の第2導電部材55とワイヤー51の接着部位を面上に分布させて形成している。同様に、ワイヤー50と第1電極給電領域35,36の第1給電部56,57の接着部位及びワイヤー51と第2電極給電領域33,34の第2給電部58,59の接着部位を面上に分布させて形成している。そのため、給電部材8と給電部56〜59との接続強度が高い。
【0077】
続いて、第2実施形態の有機EL装置100について説明する。なお、第1実施形態の有機EL装置1と同様のものは同じ符番を付して説明を省略する。以下の説明においては、平面視した場合における
図16を基準として縦横方向を規定している。
【0078】
第2実施形態の有機EL装置100は、第1実施形態の有機EL装置1と同様、
図21のように、正方形状の基板2上に第1電極層3、機能層5、第2電極層6からなる有機EL素子10が積層しており、有機EL素子10上に無機封止層7が積層している。
そして、有機EL装置100では、
図17のように、さらに無機封止層7の上方に給電部材110が載置されており、無機封止層7と給電部材110が軟質樹脂層101によって接着されている。
また、有機EL装置100は、
図15のように給電部材110と第1電極層3がワイヤー111,112によって接続されており、
図14のようにワイヤー111,112が硬質壁部106内に埋没するように接着されている。
【0079】
第2実施形態の有機EL装置100は、
図20(a)のように基板2を平面視したときに、その面内において、発光領域130と、額縁領域131を有している。
発光領域130は、第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6の重畳部位に当たる領域であり、点灯時に実際に発光する領域である。また発光領域130は、基板2の形状と相似した形状を有しており、基板2の中央にあって大部分を占めている。本実施形態では、発光領域130は、正方形状を成している。
【0080】
額縁領域131は、発光領域130を囲むように設けられ、かつ、基板2の縁に沿って配された領域であり、発光領域130への給電に寄与する領域である第1電極給電領域132及び第2電極給電領域133を有している。
額縁領域131の幅は、発光領域130が占める面積を大きくする観点から、基板2の幅(横方向s又は縦方向pの長さ)の1/10以下の領域となっており、1/12以下となっていることが好ましい。
【0081】
第1電極給電領域132は、
図20(b)のように発光領域130の外側であって、発光領域130の第1電極層3と電気的に接続された領域であり、発光領域130内の有機EL素子10に給電する場合に、陽極を担う領域である。第1電極給電領域132は、それぞれ各辺に対して平行に延びた長方形状の領域である。
第2電極給電領域133は、
図20(b)のように発光領域130の外側であって、発光領域130の第2電極層6と電気的に接続された領域であり、発光領域130内の有機EL素子10に給電する場合に、陰極を担う領域である。第2電極給電領域133は、それぞれ各辺と平行に延びた長方形状の領域である。
第1電極給電領域132と第2電極給電領域133は、額縁領域131内を周方向(各辺に沿った方向)に1列に並んで配置されている。有機EL装置100の一辺に注目すると、一方の角部側から順に、第2電極給電領域133、第1電極給電領域132、第2電極給電領域133が当該辺に対して平行に交互に並んでいる。
【0082】
有機EL装置100は、
図20,
図21のように、第1電極層3を第1電極分離溝107によって、複数の区画に分離されている。すなわち、有機EL装置100は、第1電極分離溝107によって、第1電極給電領域132と第2電極給電領域133を分離し、さらに発光領域130と第2電極給電領域133を分離している。
【0083】
具体的には、第1電極分離溝107は、
図20のように平面視して略「L」字状の溝であり、基板2の各辺に平行に延びた第1分離部135と、基板2の各辺に対して直交方向に延びた第2分離部136から形成されている。
第1分離部135は、
図20のように発光領域130と第2電極給電領域133を分離する部位である。それぞれの第1分離部135は、縦方向p又は横方向sに同一直線上に並んでおり、発光領域130の縁を形成している。言い換えると、第1分離部135は、各辺に平行に並んでいる。本実施形態では、第1分離部135は、第2電極給電領域133以外の部位に設けられており、1つの環状(四角環)を形成している。
【0084】
第2分離部136は、
図20のように第1電極給電領域132と第2電極給電領域133を分離する部位である。第2分離部136は内外方向(各辺に対して直交する方向)に延びており、隣接する第2分離部136は、第1電極給電領域132を挟んで平行に配されている。
【0085】
額縁領域131の内部構造について注目すると、第1電極給電領域132では、
図18のA−A断面のように発光領域130内の第1電極層3が無機封止層7から張り出している。すなわち、第1電極給電領域132に位置する第1電極層3(以下、第1給電部125ともいう)は、発光領域130内の第1電極層3と連続している。当然の事ながら、発光領域130内の第1電極層3と第1給電部125は、電気的に接続されている。
また、第1電極給電領域132では、
図18,
図19のように、機能層5は、発光領域130に位置する第2電極層6から外側に張り出しており、機能層5によって発光領域130内の第2電極層6と第1給電部125が電気的に接続されることを妨げている。
【0086】
第2電極給電領域133では、
図18のC−C断面のように、第1電極層3上に機能層5が覆い被さっており、さらに機能層5の上を第2電極層6が覆い被さっている。そして、第2電極層6の一部が、第2電極給電領域133に位置する第1電極層3(以下、第2給電部126ともいう)と直接接触している。すなわち、第2給電部126は、発光領域130内の第2電極層6と第2給電部126は電気的に接続されている。
また、機能層5は、第1電極分離溝107の第1分離部135に進入しており、基板2に固着している。すなわち、発光領域130内の第1電極層3と第2給電部126は、機能層5によって電気的に切り離されている。
【0087】
給電部材110に目を移すと、給電部材110は、板状又は箔状の部材であり、
図17のように第1導電部材102と、絶縁部材103と、第2導電部材105が部材厚方向に重ね合わさって形成されている。給電部材110は、基板2と相似形状となっており、本実施形態では、正方形状となっている。
【0088】
給電部材110は、縦横方向(縦辺方向p及び横辺方向s)の中央に外部電源と接続された電極端子を接続可能な給電穴115を有している。
給電穴115は、
図15,
図17のように第1導電部材102を底部とする有底穴であって、絶縁部材103に設けられた第1貫通孔116と、第2導電部材105に設けられた第2貫通孔117が連通して形成された連通穴である。
第1貫通孔116の開口形状は正方形状であり、第2貫通孔117の開口形状は、第1貫通孔116の開口形状の相似形状(正方形状)である。
また、第1貫通孔116の開口面積は、第2貫通孔117の開口面積よりも大きい。すなわち、給電穴115の内壁は、絶縁部材103の天面を介して段状に連続している。
言い換えると、
図16のように給電穴115を平面視した場合では、第1導電部材102の天面と絶縁部材103の天面が露出しており、第1導電部材102の天面の周りを絶縁部材103の天面が囲んでいる。
このように、給電穴115を通過させて第1導電部材102に外部電源の一方の電極を接続し、第2導電部材105に外部電源の他方の電極を接続することで、第1導電部材102と第2導電部材105に異なる電極として機能させることができる。
【0089】
また、給電部材110は、
図22のように平面視した際に、第1導電部材102が絶縁部材103から露出した露出領域138を有している。
露出領域138は、有機EL装置100の組み立てた状態において、ワイヤー111が接着される領域である。
露出領域138は、
図22のように平面視して「L」字状の領域であり、給電部材110の四角に沿って設けられている。すなわち、露出領域138は、給電部材110の角部を形成する2辺に沿って形成されている。
本実施形態では、給電部材110の平均厚み(膜厚)は、有機EL装置100の薄いという特長を活かす観点から1μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0090】
給電部材110の各部材に注目すると、第1導電部材102は、第1実施形態の第1導電部材52とほぼ同様の部材であって、形状が異なる。すなわち、第1導電部材102は、
図17のように正方形状の板状又は箔状の部材であり、導電性を有した部材である。
【0091】
絶縁部材103は、第1実施形態の絶縁部材53とほぼ同様の部材であって、形状が異なる。
絶縁部材103は、
図17に示されるように、組み立てた際に発光領域130全体を覆う本体部121と、本体部121から第2電極給電領域133の一部まで延びる延長部122から形成されている。本体部121は、発光領域130の面積よりもやや大きくなっている。
【0092】
第2導電部材105は、第1実施形態の第2導電部材55とほぼ同様の部材であって、形状が異なる。具体的には、第2導電部材105は、
図22のように平面視すると、「十」字状をしており、その中央から縦方向p(縦辺と平行な方向)及び横方向s(横辺と平行な方向)に広がりをもって延びている。第2導電部材105は、発光領域130をほぼ横断及び縦断可能となっている。すなわち、第2導電部材105の先端(外側)は給電部材110の各辺の近傍まで至っているが、第2導電部材105の外側(全周)には、絶縁部材103が張り出しており、第2導電部材105は、給電部材110の各辺までは至っていない。
なお、本実施形態では、第1導電部材102と第2導電部材105は共に銅箔を採用し、水蒸気バリア層としての防湿機能を持たせている。
【0093】
給電部材110の各部材の位置関係について注目すると、第1導電部材102上に絶縁部材103が被覆している。絶縁部材103上に第2導電部材105が被覆している。第2導電部材105は、絶縁部材103の本体部121と延長部122に跨がって被覆している。
延長部122の中央側に第2導電部材105は位置している。すなわち、第2導電部材105の両側に絶縁部材103が張り出しており、第1導電部材102と第2導電部材105が接触することを防止している。
【0094】
ワイヤー111,112に注目すると、ワイヤー111,112は、ワイヤー50,51と同様の部材である。
ワイヤー112は、第1電極給電領域132に位置する第1電極層3(第1給電部125)と第2導電部材105の先端近傍(外側方向端部)を直接接続し、第1給電部125と第2導電部材105を電気的に接続する部材である。
ワイヤー111は、第2電極給電領域133に位置する第1電極層3(第2給電部126)と第1導電部材102の露出領域138を直接接続し、第2給電部126と露出領域138を電気的に接続する部材である。
【0095】
ワイヤー111は、
図16のように縦方向p又は横方向sに隣接するワイヤー111と所定の間隔を空けて配されており、1つの第2電極給電領域133に配設されるワイヤー111はそれぞれ等間隔に配されている。本実施形態の有機EL装置100では、1つの第2電極給電領域133につき、3本以上のワイヤー111が接続されている。
また、ワイヤー111は、
第1分離部135の部材厚方向の投影面上を跨がって接続されている。
ワイヤー112は、縦方向p又は横方向sに隣接するワイヤー112と所定の間隔を空けて配されており、1つの第1電極給電領域132に配設されるワイヤー112はそれぞれ等間隔に配されている。本実施形態の有機EL装置100では、1つの第1電極給電領域132につき、3本以上のワイヤー111が接続されている。
【0096】
硬質壁部106に注目すると、硬質壁部106は、
図14のように発光領域130(
図20参照)を含む領域を囲むような壁を形成しており、給電部材110が有機EL素子10側から離反しないように固定している。すなわち、硬質壁部106は、給電部材110の一部を覆っており、給電部材110の縁部を巻き込んでいる。本実施形態では、硬質壁部106は、
図14のように額縁領域131上に形成されている。
【0097】
硬質壁部106は、
図14のようにワイヤー111,112の大部分を被覆している。言い換えると、ワイヤー111,112の大部分が硬質壁部106内に埋設されている。本実施形態では、ワイヤー111,112全体が硬質壁部106内に埋没している。すなわち、ワイヤー111,112は外部に露出していない。
【0098】
軟質樹脂層101は、柔軟性及び接着機能を有した層であり、給電部材110と無機封止層7を接着させる接着層である。
軟質樹脂層101は、
図17,
図18のように無機封止層7上であって、少なくとも、発光領域130の部材厚方向の投影面全面を覆うように積層されている。軟質樹脂層101は、面状に広がりをもって、無機封止層7の大部分を覆っている。
【0099】
軟質樹脂層101は、上記したように柔軟性を有し、所定の条件によって塑性変形又は弾性変形する層である。そのため、軟質樹脂層101は、発光領域30内の有機EL素子10の膨張等による無機封止層7に加わる応力を緩和させることが可能となっている。
JIS K 6253に準じた軟質樹脂層101のショア硬さは、ショア硬さがA30以上、A70以下であり、A40以上、A65以下であることが好ましく、A45以上、A63以下であることがより好ましい。
軟質樹脂層101のショア硬さがA70より大きい場合、軟質樹脂層101の剛性が大きすぎて、ふくらみや衝撃を十分吸収できない。また、ショア硬さがA30より小さい場合には、防湿部材の形状を維持できない。
【0100】
軟質樹脂層101の材料の曲げ弾性率は、3MPa以上、30MPa以下であることが好ましく、3MPa以上、25MPa以下であることがより好ましい。
軟質樹脂層101の具体的な材質としては、アクリルゴム(ACM)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、シリコーンゴム(Q)、ブチルゴム(IIR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)等のゴム材料が使用できるが、一定の水蒸気バリア性を有し、安価に入手可能である点から、アクリルゴム系樹脂、エチレンプロピレンゴム系樹脂、シリコーンゴム系樹脂、及びブチルゴム系樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましく、その中でもフィルムとして入手が容易な、ブチルゴム系樹脂がより好ましい。
【0101】
軟質樹脂層101の平均厚みは、2μm以上、1000μm以下であることが好ましく、10μm以上、200μm以下がより好ましく、20μm以上、100μm以下がさらに好ましい。
【0102】
硬質壁部106は、軟質樹脂層101の材料よりも剛性が高く硬い材料となっている。具体的には、JIS K 6253に準じた硬質壁部106のショア硬さ(及び対応する曲げ弾性率の概算値)は、ショアA80以上、即ち、ショアD30以上(25MPa以上)であることが好ましく、より高信頼性の有機EL装置とする観点からショアD55以上(250MPa以上)、ショアD95以下(6000MPa以下)とすることがより好ましく、ショアD80以上(1500MPa以上)、ショアD90以下(4000MPa以下)とすることがさらに好ましい。硬質壁部106の具体的な材質としては、水蒸気バリア性に優れるエポキシ樹脂が好ましい。
【0103】
第2実施形態の有機EL装置100であれば、第1電極給電領域132及び第2電極給電領域133が各辺に沿ってそれぞれ設けられているため、縦横の4方向から発光領域130の有機EL素子10に給電することが可能である。そのため、十分な給電面積を確保することが可能であり、額縁領域131の幅を小さくすることができる。それ故に額縁領域131の幅が狭い場合でも、確実に給電することができる。
【0104】
第2実施形態の有機EL装置100であれば、ワイヤー111,112は、硬質壁部106に埋没した状態で硬化されているため、疑似的なポッティング封止としての機能を有しているため、発光領域130内の有機EL素子10に水等が進入しにくい。
また、硬質壁部106の硬度によってワイヤー111,112の強度を補足することが可能であり、ワイヤー111,112が断線しにくい。また、共通の硬質壁部106によって複数のワイヤー111,112が覆われており、当該硬質壁部106が辺方向に広がりを持っているため、外力の影響を受けにくく、断線しにくい。
【0105】
上記した第1実施形態では、第1給電部と第2給電部として有機EL素子10内の第2電極層6の一部を使用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1給電部と第2給電部として別の物質を使用してもよい。特に、第1給電部と第2給電部は、アルミニウム、銀、ニッケル、モリブデンの中から選ばれる少なくとも1種以上の金属から形成されているが好ましい。
【0106】
上記した実施形態では、長方形状の基板を採用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、面状に広がっていればよく、多角形の基板や円形の基板でもよい。
【0107】
上記した実施形態では、給電部材8が無機封止層7全体を覆っていたが、本発明は、これに限定されるものではなく、給電部材8を無機封止層7の一部にのみ設置し、残りの部位に整流回路等の実装部を設けてもよい。特に実装部は、基板2の中央に位置していることが好ましい。
【0108】
上記した実施形態では、給電部材として、第1導電部材と絶縁部材と第2導電部材とが積層した3層構造であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、導電性を有していればよい。例えば、防湿性を付加させるために、ガラス板、樹脂フィルム、金属箔等を加工したものであってもよいし、これらの材料を複数の層として形成された多層膜であってもよい。
【0109】
上記した第2実施形態では、給電部材と接続する第1給電部と第2給電部として第1電極層3を使用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1電極層3上に金属層を積層し、当該金属層を給電部材と接続する第1給電部と第2給電部としてもよい。この場合、第1給電部と第2給電部は、第2電極層と同様の材質や、アルミニウム、銀、ニッケル、モリブデンの中から選ばれる少なくとも1種以上の金属から形成されていることが好ましい。