特許第6078301号(P6078301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミマキエンジニアリングの特許一覧

特許6078301ダンパー装置およびインクジェットプリンター
<>
  • 特許6078301-ダンパー装置およびインクジェットプリンター 図000002
  • 特許6078301-ダンパー装置およびインクジェットプリンター 図000003
  • 特許6078301-ダンパー装置およびインクジェットプリンター 図000004
  • 特許6078301-ダンパー装置およびインクジェットプリンター 図000005
  • 特許6078301-ダンパー装置およびインクジェットプリンター 図000006
  • 特許6078301-ダンパー装置およびインクジェットプリンター 図000007
  • 特許6078301-ダンパー装置およびインクジェットプリンター 図000008
  • 特許6078301-ダンパー装置およびインクジェットプリンター 図000009
  • 特許6078301-ダンパー装置およびインクジェットプリンター 図000010
  • 特許6078301-ダンパー装置およびインクジェットプリンター 図000011
  • 特許6078301-ダンパー装置およびインクジェットプリンター 図000012
  • 特許6078301-ダンパー装置およびインクジェットプリンター 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078301
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ダンパー装置およびインクジェットプリンター
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   B41J2/175 201
   B41J2/175 121
   B41J2/175 501
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-245856(P2012-245856)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-94460(P2014-94460A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】井川 知己
【審査官】 牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−040696(JP,A)
【文献】 特開2002−321380(JP,A)
【文献】 特開2008−173789(JP,A)
【文献】 特開2012−101460(JP,A)
【文献】 特開2000−071477(JP,A)
【文献】 特開2010−058319(JP,A)
【文献】 特開2008−087465(JP,A)
【文献】 特開2008−238750(JP,A)
【文献】 特開2009−018587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドに供給されるための前記インクを貯留するタンクとを備えるインクジェットプリンターに備えられて、前記タンクから供給される前記インクを圧力の変動を抑えて前記記録ヘッドに供給するダンパー装置であって、
前記インクを貯留するインク貯留室が形成されており、
前記インクの微粒子を含めて前記インクを通過させる一方で前微粒子が沈殿する場合には前記微粒子の通過を抑制するフィルターと、外部から供給された前記インクを前記インク貯留室に導入するためのインク導入部と、前記インク貯留室内の前記インクを外部に排出するためのインク排出部とを備えており、
前記フィルターは、前記インク導入部に連通する導入側貯留室と、前記インク排出部に連通する排出側貯留室とに前記インク貯留室を区分し、
前記排出側貯留室は、前記導入側貯留室より鉛直方向における上側に配置されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
前記排出側貯留室は、鉛直方向において全体が前記フィルターに重なっていることを特徴とする請求項1に記載のダンパー装置。
【請求項3】
前記フィルターは、水平方向に延在していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダンパー装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れかに記載のダンパー装置と、前記インク導入部を介して前記導入側貯留室に導入される前記インクを貯留する前記タンクと、前記排出側貯留室から前記インク排出部を介して排出された前記インクが供給される前記記録ヘッドと、前記インク導入部に前記インクを供給するインク供給手段と、前記タンクから前記インク導入部までの流路である通常流路と、前記インク排出部から前記通常流路までの流路である循環用流路とを備えていることを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項5】
前記インク供給手段は、前記インク排出部から前記循環用流路および前記通常流路を介して前記インク導入部に前記インクを供給する場合、前記タンクから前記通常流路を介して前記インク導入部に前記インクを供給する場合と比較して、前記インクの流速を速めることによって、前記導入側貯留室内の前記インクの圧力が前記フィルターの抵抗によって前記排出側貯留室内の前記インクの圧力より高くなる前記流速にすることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットプリンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドに供給されるためのインクを貯留するタンクとを備えるインクジェットプリンターに備えられて、タンクから供給されるインクを圧力の変動を抑えて記録ヘッドに供給するダンパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェットプリンターとして、インクを吐出する記録ヘッドであるインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに供給されるためのインクを貯留するタンクであるメインタンクと、メインタンクから供給されるインクを圧力の変動を抑えてインクジェットヘッドに供給するダンパー装置であるサブタンクとを備えているインクジェットプリンターが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
このインクジェットプリンターのサブタンクは、インクを貯留するインク貯留室が形成されている。また、サブタンクは、外部から供給されたインクをインク貯留室に導入するためのインク導入部であるコネクタ部と、インク貯留室内のインクを外部に排出するためのインク排出部であるコネクタ部とを備えている。
【0004】
このインクジェットプリンターのメインタンクは、サブタンクのインク導入部を介してサブタンクのインク貯留室に導入されるインクを貯留するものである。
【0005】
このインクジェットプリンターのインクジェットヘッドは、サブタンクのインク貯留室からサブタンクのインク排出部を介して排出されたインクが供給されるものである。
【0006】
このインクジェットプリンターは、メインタンクからサブタンクのインク導入部までの流路である通常流路としての第一インク流路と、サブタンクのインク排出部から第一インク流路までの流路である循環用流路としての第三インク流路と、メインタンクから第一インク流路を介してサブタンクのインク導入部にインクを供給するインク供給手段としての通常動作用の送液ポンプと、サブタンクのインク排出部から第三インク流路および第一インク流路を介してサブタンクのインク導入部にインクを供給するインク供給手段としての循環動作用の送液ポンプとを備えている。
【0007】
このインクジェットプリンターは、循環動作用の送液ポンプを動作させてサブタンクのインク貯留室、第三インク流路および第一インク流路の間でインクを循環させることによって、サブタンクのインク貯留室、第三インク流路および第一インク流路において白色インクなどのインクの微粒子が沈殿することを抑制することができる。したがって、このインクジェットプリンターは、微粒子が沈殿して微粒子の濃度が薄くなったインクで印刷を実行したり、沈殿していた微粒子が一気に流れ出して微粒子の濃度が濃くなったインクで印刷を実行したりする失敗を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−156859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のインクジェットプリンターにおいては、サブタンクのインク貯留室においてインクが流れる面積が、第一インク流路および第三インク流路においてインクが流れる面積より大きいので、サブタンクのインク貯留室におけるインクの微粒子の沈殿を抑制するために必要なインクの流速が、第一インク流路および第三インク流路におけるインクの微粒子の沈殿を抑制するために必要なインクの流速より速いという問題がある。このため、従来のインクジェットプリンターにおいては、サブタンクのインク貯留室におけるインクの微粒子の沈殿を抑制する場合、第一インク流路および第三インク流路におけるインクの微粒子の沈殿のみを抑制する場合と比較して、インクの流速を速くする必要があるので、例えば、インクの流れによって発生する騒音が増加したり、インクの流れを作り出す循環動作用の送液ポンプの負荷の増加によって循環動作用の送液ポンプの耐性が低下したり、循環動作用の送液ポンプの負荷の増加によって循環動作用の送液ポンプの消費エネルギーが増加したりする。
【0010】
そこで、本発明は、インクの微粒子の沈殿を従来より遅いインクの流速で抑制することができるダンパー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のダンパー装置は、インクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドに供給されるための前記インクを貯留するタンクとを備えるインクジェットプリンターに備えられて、前記タンクから供給される前記インクを圧力の変動を抑えて前記記録ヘッドに供給するダンパー装置であって、前記インクを貯留するインク貯留室が形成されており、前記インクを通過させる一方で前記インクの微粒子が沈殿する場合には前記微粒子の通過を抑制するフィルターと、外部から供給された前記インクを前記インク貯留室に導入するためのインク導入部と、前記インク貯留室内の前記インクを外部に排出するためのインク排出部とを備えており、前記フィルターは、前記インク導入部に連通する導入側貯留室と、前記インク排出部に連通する排出側貯留室とに前記インク貯留室を区分し、前記排出側貯留室は、前記導入側貯留室より鉛直方向における上側に配置されていることを特徴とする。
【0012】
この構成により、本発明のダンパー装置は、インク貯留室を導入側貯留室および排出側貯留室に区分するフィルターによるインクの流れに対する抵抗によって、導入側貯留室内のインクの圧力が排出側貯留室内のインクの圧力より高くなった場合に、フィルターの全域を介して導入側貯留室から排出側貯留室にインクが勢い良く流れるので、フィルターの全域を介して導入側貯留室から排出側貯留室に流れたインクによって排出側貯留室内のインクの微粒子が巻き上げられる。すなわち、本発明のダンパー装置は、導入側貯留室内のインクの圧力がフィルターの抵抗によって排出側貯留室内のインクの圧力より高くなる程度に速いインクの流速によって、インクの微粒子の沈殿を抑制することができる。したがって、本発明のダンパー装置は、インクの微粒子の沈殿を従来より遅いインクの流速で抑制することができる。
【0013】
また、本発明のダンパー装置において、前記排出側貯留室は、鉛直方向において全体が前記フィルターに重なっていても良い。
【0014】
この構成により、本発明のダンパー装置は、フィルターの全域を介して導入側貯留室から排出側貯留室に流れたインクによって排出側貯留室内の全域のインクの微粒子が巻き上げられるので、排出側貯留室の少なくとも一部が鉛直方向においてフィルターに重なっていない構成と比較して、インクの微粒子の沈殿を適切に抑制することができる。
【0015】
また、本発明のダンパー装置において、前記フィルターは、水平方向に延在していても良い。
【0016】
この構成により、本発明のダンパー装置は、フィルターの全域を介して導入側貯留室から排出側貯留室に流れたインクによって排出側貯留室内のインクの微粒子が鉛直方向に巻き上げられるので、フィルターが水平方向に対して傾いている構成と比較して、インクの微粒子の沈殿を適切に抑制することができる。
【0017】
本発明のインクジェットプリンターは、上述のダンパー装置と、前記インク導入部を介して前記導入側貯留室に導入される前記インクを貯留する前記タンクと、前記排出側貯留室から前記インク排出部を介して排出された前記インクが供給される前記記録ヘッドと、前記インク導入部に前記インクを供給するインク供給手段と、前記タンクから前記インク導入部までの流路である通常流路と、前記インク排出部から前記通常流路までの流路である循環用流路とを備えていることを特徴とする。
【0018】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、インク供給手段がダンパー装置のインク排出部から循環用流路および通常流路を介してダンパー装置のインク導入部にインクを供給することによって、ダンパー装置においてフィルターの全域を介して導入側貯留室から排出側貯留室に流れたインクによって排出側貯留室内のインクの微粒子が巻き上げられるので、ダンパー装置におけるインクの微粒子の沈殿を従来より遅いインクの流速で抑制することができる。
【0019】
また、本発明のインクジェットプリンターにおいて、前記インク供給手段は、前記インク排出部から前記循環用流路および前記通常流路を介して前記インク導入部に前記インクを供給する場合、前記タンクから前記通常流路を介して前記インク導入部に前記インクを供給する場合と比較して、前記インクの流速を速めても良い。
【0020】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、タンクから通常流路を介してダンパー装置のインク導入部にインクを供給する場合、ダンパー装置の導入側貯留室内のインクの圧力がフィルターの抵抗によって排出側貯留室内のインクの圧力より高くならない程度に遅いインクの流速によって、インク供給手段がダンパー装置のインク導入部にインクを供給することができるので、インク供給手段が常に同じ流速でダンパー装置のインク導入部にインクを供給する構成と比較して、インク供給手段の負荷を減少させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のダンパー装置は、インクの微粒子の沈殿を従来より遅いインクの流速で抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るインクジェットプリンターの斜視図である。
図2図1に示すインクジェットプリンターのインク供給システムの模式図である。
図3図2に示すサブタンクの正面断面図である。
図4図2に示すサブタンクの上面断面図である。
図5図1に示すインクジェットプリンターの制御システムの構成を示すブロック図である。
図6】通常動作時にポンプによってインクを流通させる場合の図5に示す制御部の動作のフローチャートである。
図7】通常動作時の図2に示すサブタンクの正面断面図である。
図8】循環動作時にポンプによってインクを流通させる場合の図5に示す制御部の動作のフローチャートである。
図9】(a)は、循環動作前の図2に示すサブタンクの正面断面図である。(b)は、循環動作時の図2に示すサブタンクの正面断面図である。
図10図2に示すサブタンクの正面断面図であって、図3に示す例とは異なる例を示す図である。
図11図2に示すサブタンクの正面断面図であって、図3および図10に示す例とは異なる例を示す図である。
図12】本発明の第2の実施の形態に係るインクジェットプリンターのインク供給システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0024】
(第1の実施の形態)
まず、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成について説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター10の斜視図である。
【0026】
図1に示すように、インクジェットプリンター10は、矢印10aで示す主走査方向に延在する本体11と、用紙などの記録媒体90を搬送する搬送装置12と、インクを貯留するタンクとしてのメインタンク13とを備えている。
【0027】
本体11は、矢印10aで示す主走査方向に延在しているガイドレール11aと、矢印10aで示す主走査方向に移動可能にガイドレール11aに支持されているキャリッジ11bとを備えている。
【0028】
搬送装置12は、後述の記録ヘッド14に対して矢印10bで示す副走査方向に記録媒体90を搬送する装置である。
【0029】
図2は、インクジェットプリンター10のインク供給システムの模式図である。
【0030】
図2に示すように、インクジェットプリンター10のインク供給システムは、インク10cを貯留する上述のメインタンク13と、記録媒体90にインク10cを吐出する記録ヘッド14と、メインタンク13から供給されるインク10cを圧力の変動を抑えて記録ヘッド14に供給するダンパー装置としてのサブタンク20とを備えている。
【0031】
記録ヘッド14およびサブタンク20は、キャリッジ11bに搭載されている。
【0032】
また、インクジェットプリンター10は、インクを供給するインク供給手段としてのポンプ15およびポンプ16と、吸気口から吸入した空気を排気口から排出するポンプ17と、メインタンク13およびポンプ15を連通する流路18aと、ポンプ15およびサブタンク20を連通する流路18bと、ポンプ16およびサブタンク20を連通する流路18cと、ポンプ16および流路18bを連通する流路18dと、記録ヘッド14および流路18cを連通する流路18eと、ポンプ17およびサブタンク20を連通する流路18fとを備えている。
【0033】
ポンプ15およびポンプ16は、チューブポンプである。
【0034】
流路18aおよび流路18bは、メインタンク13からサブタンク20までの流路であって、本発明の通常流路を構成している。
【0035】
流路18cおよび流路18dは、サブタンク20から流路18bまでの流路であって、本発明の循環用流路を構成している。
【0036】
流路18b、流路18cおよび流路18dの少なくとも一部は、キャリッジ11bに搭載されている記録ヘッド14およびサブタンク20の移動を可能にするために、可撓性を有するチューブである。
【0037】
サブタンク20は、キャリッジ11bに搭載されている記録ヘッド14およびサブタンク20の移動に伴う流路18bの変形によって流路18b内のインク10cに生じる圧力の変動を抑えて、記録ヘッド14にインク10cを供給する装置である。また、サブタンク20は、記録ヘッド14の図示していないノズルにおけるインク10cのメニスカスを凹型に維持するために、記録ヘッド14に供給するインク10cの圧力を一定範囲の負圧に維持する装置である。
【0038】
インクジェットプリンター10は、図2に示すインク供給システムを少なくともインク10cの種類毎に備えている。インク10cの種類は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなど、例えば色の種類によって異なる。
【0039】
図1に示すインクジェットプリンター10は、矢印10aで示す主走査方向に移動しない記録媒体90に対してキャリッジ11bによって主走査方向に記録ヘッド14を移動させて、記録ヘッド14のノズルからインク10cを記録媒体90に向けて吐出することによって、記録ヘッド14による主走査方向の印刷を実行させる装置である。また、インクジェットプリンター10は、矢印10bで示す副走査方向に移動しない記録ヘッド14に対して搬送装置12によって副走査方向に記録媒体90を搬送することによって、記録媒体90に対する記録ヘッド14の副走査方向における位置を主走査方向の印刷の終了の度に変更する装置である。
【0040】
図3は、サブタンク20の正面断面図である。図4は、サブタンク20の上面断面図である。
【0041】
図3および図4に示すように、サブタンク20は、インク10cを貯留するインク貯留室20aが形成されている。
【0042】
また、サブタンク20は、インク10cを通過させる一方でインク10cの微粒子が沈殿する場合には微粒子の通過を抑制するフィルター21と、外部から供給されたインク10cをインク貯留室20aに導入するためのインク導入部22と、インク貯留室20a内のインク10cを外部に排出するためのインク排出部23と、空気を導入または排出するための空気入出部24とを備えている。
【0043】
フィルター21は、インク導入部22に連通する導入側貯留室20bと、インク排出部23に連通する排出側貯留室20cとにインク貯留室20aを区分している。フィルター21は、水平方向に延在している。排出側貯留室20cは、導入側貯留室20bより鉛直方向における上側に配置されている。また、排出側貯留室20cは、鉛直方向において全体がフィルター21に重なっている。
【0044】
インク導入部22は、流路18bに連通している。
【0045】
インク排出部23は、流路18cに連通している。
【0046】
空気入出部24は、流路18fに連通している。また、空気入出部24は、排出側貯留室20c連通している。
【0047】
図5は、インクジェットプリンター10の制御システムの構成を示すブロック図である。
【0048】
図5に示すように、インクジェットプリンター10は、搬送装置12、記録ヘッド14、ポンプ15、ポンプ16およびポンプ17と、インクジェットプリンター10全体を制御する制御部31と、PC(Personal Computer)などの外部の装置と通信を行うための通信部32と、キャリッジ11bを矢印10aで示す主走査方向に移動させるキャリッジ移動装置33と、流路18f内の空気の圧力を検出する圧力センサー34と、サブタンク20のインク貯留室20a内のインク10cの残量を検出する残量センサー35とを備えている。
【0049】
制御部31は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを予め記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行するようになっている。
【0050】
次に、インクジェットプリンター10の動作について説明する。
【0051】
まず、通常動作時のインクジェットプリンター10の動作について説明する。
【0052】
なお、インクジェットプリンター10の制御部31は、通常動作時に、ポンプ16によって流路18dにおけるインク10cの流れを停止させている。
【0053】
制御部31は、外部の装置から通信部32を介して印刷データを受信すると、受信した印刷データに基づいて、搬送装置12およびキャリッジ移動装置33を駆動して記録媒体90に対する記録ヘッド14の位置を変更するとともに、記録ヘッド14によって記録媒体90に向けてインク10cを吐出する。記録ヘッド14によってインク10cを吐出すると、記録ヘッド14内のインク10cの体積が減少するので、記録ヘッド14内のインク10cの体積が減少した分だけ、サブタンク20の排出側貯留室20cからインク排出部23、流路18cおよび流路18eを介して記録ヘッド14に新たなインク10cが供給される。
【0054】
ここで、制御部31は、通常動作時に、圧力センサー34の出力に基づいてポンプ17を駆動することによって、流路18f内の空気の圧力を一定範囲の負圧に維持する。ここで、流路18fは、サブタンク20の空気入出部24を介してサブタンク20の排出側貯留室20cに連通している。そして、サブタンク20の排出側貯留室20c内のインク10cは、サブタンク20のインク排出部23、流路18cおよび流路18eを介して記録ヘッド14に供給される。したがって、サブタンク20は、記録ヘッド14に供給するインク10cの圧力を負圧に維持することができる。
【0055】
また、制御部31は、通常動作時に、残量センサー35の出力に基づいて図6に示す動作を実行する。
【0056】
図6は、通常動作時にポンプ15によってインク10cを流通させる場合の制御部31の動作のフローチャートである。
【0057】
図6に示すように、制御部31は、残量センサー35の出力に基づいて、サブタンク20のインク貯留室20a内のインク10cの残量が所定の残量以下であるか否かを判断する(S101)。
【0058】
制御部31は、インク貯留室20a内のインク10cの残量が所定の残量以下ではないとS101において判断すると、再びS101の処理に戻る。
【0059】
一方、制御部31は、インク貯留室20a内のインク10cの残量が所定の残量以下であるとS101において判断すると、ポンプ15を動作させることによって、メインタンク13に貯留されているインク10cを流路18a、流路18bおよびサブタンク20のインク導入部22を介して流速V1でサブタンク20の導入側貯留室20bに供給して(S102)、再びS101の処理に戻る。
【0060】
図7は、通常動作時のサブタンク20の正面断面図である。
【0061】
インク10cがサブタンク20のインク導入部22を介してサブタンク20の導入側貯留室20bに供給されると、導入側貯留室20b内のインク10cは、インク導入部22を介して導入された体積の分だけ、フィルター21を介して排出側貯留室20cに移動する。したがって、サブタンク20の排出側貯留室20cは、図7に示すように常に一定量以上のインク10cが貯留された状態に維持される。
【0062】
次に、循環動作時のインクジェットプリンター10の動作について説明する。
【0063】
なお、インクジェットプリンター10の制御部31は、循環動作時に、ポンプ15によって流路18aにおけるインク10cの流れを停止させている。
【0064】
図8は、循環動作時にポンプ16によってインク10cを流通させる場合の制御部31の動作のフローチャートである。
【0065】
図8に示すように、制御部31は、ポンプ16を動作させることによって、サブタンク20の排出側貯留室20cに貯留されているインク10cをサブタンク20のインク排出部23、流路18c、流路18d、流路18bおよびサブタンク20のインク導入部22を介して流速V2でサブタンク20の導入側貯留室20bに供給し続ける(S111)。
【0066】
ここで、流速V2は、流速V1より速い。すなわち、ポンプ15およびポンプ16は、ポンプ16がサブタンク20のインク排出部23から循環用流路および通常流路を介してサブタンク20のインク導入部22にインク10cを供給する場合、ポンプ15がメインタンク13から通常流路を介してサブタンク20のインク導入部22にインク10cを供給する場合と比較して、インク10cの流速を速めるようになっている。
【0067】
図9(a)は、循環動作前のサブタンク20の正面断面図である。図9(b)は、循環動作時のサブタンク20の正面断面図である。
【0068】
インク10cがサブタンク20のインク導入部22を介してサブタンク20の導入側貯留室20bに供給されると、導入側貯留室20b内のインク10cは、インク導入部22を介して導入された体積の分だけ、フィルター21を介して排出側貯留室20cに移動する。したがって、図9(a)に示すように循環動作前にサブタンク20のフィルター21上に沈殿したインク10cの微粒子10dは、循環動作によって、図9(b)に示すように、フィルター21の全域を介して導入側貯留室20bから排出側貯留室20cに流れたインク10cによって巻き上げられる。図9(b)において、矢印10eは、フィルター21の全域を介して導入側貯留室20bから排出側貯留室20cに流れるインク10cの流れを示している。
【0069】
なお、サブタンク20は、循環動作によるインク10cの流れによって、サブタンク20内のインク10cの微粒子10dだけでなく、流路18bのうち流路18dに連通している位置からサブタンク20までの部分と、流路18cと、流路18dとにおいても、インク10cの微粒子10dの沈殿が抑制される。
【0070】
以上に説明したように、サブタンク20は、インク貯留室20aを導入側貯留室20bおよび排出側貯留室20cに区分するフィルター21によるインク10cの流れに対する抵抗によって、導入側貯留室20b内のインク10cの圧力が排出側貯留室20c内のインク10cの圧力より高くなった場合に、図9(b)に示すように、フィルター21の全域を介して導入側貯留室20bから排出側貯留室20cにインク10cが勢い良く流れるので、フィルター21の全域を介して導入側貯留室20bから排出側貯留室20cに流れたインク10cによって排出側貯留室20c内のインク10cの微粒子10dが巻き上げられる。すなわち、サブタンク20は、導入側貯留室20b内のインク10cの圧力がフィルター21の抵抗によって排出側貯留室20c内のインク10cの圧力より高くなる程度に速いインク10cの流速V2によって、インク10cの微粒子10dの沈殿を抑制することができる。したがって、サブタンク20は、インク10cの微粒子10dの沈殿を従来より遅いインク10cの流速V2で抑制することができる。
【0071】
サブタンク20が以上に説明した構成であるので、インクジェットプリンター10は、ポンプ16がサブタンク20のインク排出部23から循環用流路および通常流路を介してサブタンク20のインク導入部22にインク10cを供給することによって、サブタンク20におけるインク10cの微粒子10dの沈殿を従来より遅いインク10cの流速V2で抑制することができる。
【0072】
図10は、サブタンク20の正面断面図であって、図3に示す例とは異なる例を示す図である。
【0073】
図3および図4に示すサブタンク20は、排出側貯留室20cが鉛直方向において全体がフィルター21に重なっているので、フィルター21の全域を介して導入側貯留室20bから排出側貯留室20cに流れたインク10cによって排出側貯留室20c内の全域のインク10cの微粒子10dが巻き上げられる。したがって、図3および図4に示すサブタンク20は、図10に示すように排出側貯留室20cの少なくとも一部が鉛直方向においてフィルター21に重なっていない構成と比較して、インク10cの微粒子10dの沈殿を適切に抑制することができる。なお、サブタンク20は、図10に示すように排出側貯留室20cの少なくとも一部が鉛直方向においてフィルター21に重なっていない構成であっても良い。
【0074】
図11は、サブタンク20の正面断面図であって、図3および図10に示す例とは異なる例を示す図である。
【0075】
図3に示すサブタンク20は、フィルター21が水平方向に延在しているので、フィルター21の全域を介して導入側貯留室20bから排出側貯留室20cに流れたインク10cによって排出側貯留室20c内のインク10cの微粒子10dが鉛直方向に巻き上げられる。したがって、図3に示すサブタンク20は、図11に示すようにフィルター21が水平方向に対して傾いている構成と比較して、インク10cの微粒子10dの沈殿を適切に抑制することができる。なお、サブタンク20は、図11に示すようにフィルター21が水平方向に対して傾いている構成であっても良い。
【0076】
インクジェットプリンター10は、ポンプ16がサブタンク20のインク排出部23から循環用流路および通常流路を介してサブタンク20のインク導入部22にインク10cを供給する場合、ポンプ15がメインタンク13から通常流路を介してサブタンク20のインク導入部22にインク10cを供給する場合と比較して、インク10cの流速を速めるようになっている。この構成により、インクジェットプリンター10は、ポンプ15がメインタンク13から通常流路を介してサブタンク20のインク導入部22にインク10cを供給する場合、サブタンク20の導入側貯留室20b内のインク10cの圧力がフィルター21の抵抗によって排出側貯留室20c内のインク10cの圧力より高くならない程度に遅いインク10cの流速V1によって、ポンプ15がサブタンク20のインク導入部22にインク10cを供給することができる。したがって、インクジェットプリンター10は、ポンプ15、16が常に同じ流速でサブタンク20のインク導入部22にインク10cを供給する構成と比較して、ポンプ15の負荷を減少させることができる。
【0077】
(第2の実施の形態)
まず、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成について説明する。
【0078】
なお、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成のうち第1の実施の形態に係るインクジェットプリンター10(図1参照。)の構成と同様の構成については、インクジェットプリンター10の構成と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0079】
図12は、本実施の形態に係るインクジェットプリンターのインク供給システムの模式図である。
【0080】
図12に示すように、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成は、記録媒体90にインク10cを吐出する記録ヘッド214と、記録ヘッド214およびサブタンク20を連通する流路218aと、記録ヘッド214およびポンプ16を連通する流路218bとを、インクジェットプリンター10(図1参照。)が記録ヘッド14(図2参照。)、流路18c(図2参照。)および流路18e(図2参照。)に代えて備えた構成と同様である。
【0081】
記録ヘッド214およびサブタンク20は、キャリッジ11bに搭載されている。
【0082】
流路218aは、サブタンク20のインク排出部23に連通している。
【0083】
流路218a、流路218bおよび流路18dは、サブタンク20から流路18bまでの流路であって、本発明の循環用流路を構成している。
【0084】
流路18b、流路218bおよび流路18dの少なくとも一部は、キャリッジ11bに搭載されている記録ヘッド214およびサブタンク20の移動を可能にするために、可撓性を有するチューブである。
【0085】
次に、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの動作について説明する。
【0086】
まず、通常動作時の本実施の形態に係るインクジェットプリンターの動作について説明する。
【0087】
本実施の形態に係るインクジェットプリンターの通常動作時の動作は、サブタンク20の排出側貯留室20cからインク排出部23、流路18cおよび流路18eを介して記録ヘッド14に新たなインク10cが供給されるのではなく、サブタンク20の排出側貯留室20cからインク排出部23および流路218aを介して記録ヘッド214に新たなインク10cが供給されるという点を除いて、第1の実施の形態に係るインクジェットプリンター10の通常動作時の動作と同様である。
【0088】
次に、循環動作時のインクジェットプリンター10の動作について説明する。
【0089】
本実施の形態に係るインクジェットプリンターの循環動作時の動作は、サブタンク20の排出側貯留室20cに貯留されているインク10cをサブタンク20のインク排出部23、流路18c、流路18d、流路18bおよびサブタンク20のインク導入部22を介してサブタンク20の導入側貯留室20bに供給するのではなく、サブタンク20の排出側貯留室20cに貯留されているインク10cをサブタンク20のインク排出部23、流路218a、記録ヘッド214、流路218b、流路18d、流路18bおよびサブタンク20のインク導入部22を介してサブタンク20の導入側貯留室20bに供給するという点を除いて、第1の実施の形態に係るインクジェットプリンター10の循環動作時の動作と同様である。
【0090】
本実施の形態に係るインクジェットプリンターは、第1の実施の形態に係るインクジェットプリンター10の作用効果に加えて、循環動作時に記録ヘッド214内のインク10cの沈殿を抑制することができるという新たな作用効果を有している。
【0091】
なお、上述した各実施の形態において、メインタンク13から通常流路を介してサブタンク20のインク導入部22にインク10cを供給する場合と、サブタンク20のインク排出部23から循環用流路および通常流路を介してサブタンク20のインク導入部22にインク10cを供給する場合とでポンプが使い分けられているが、同一のポンプによって実現されていても良い。
【符号の説明】
【0092】
10 インクジェットプリンター
10c インク
10d 微粒子
13 メインタンク(タンク)
14 記録ヘッド
15、16 ポンプ(インク供給手段)
18a 流路(通常流路)
18b 流路(通常流路)
18c 流路(循環用流路)
18d 流路(循環用流路)
20 サブタンク(ダンパー装置)
20a インク貯留室
20b 導入側貯留室
20c 排出側貯留室
21 フィルター
22 インク導入部
23 インク排出部
214 記録ヘッド
218a 流路(循環用流路)
218b 流路(循環用流路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12