(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0013】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0014】
また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0015】
また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0016】
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
半導体装置に備えられる記憶装置を構成するメモリセルとして、例えば浮遊状態にある導体膜を浮遊ゲート電極として有するMIS構造の電界効果トランジスタによって構成された不揮発性メモリセルがある。
【0018】
この不揮発性メモリセルでは、浮遊ゲート電極に電子などの電荷を蓄積することで、データが記憶される。また、浮遊ゲート電極に蓄積された電荷を引き抜くことで、データが消去される。浮遊ゲート電極の荷電状態は閾値電圧の変化として現れ、ドレイン電流などから記憶状態を読み出すことができる。そして、浮遊ゲート電極に蓄積された電荷は外部に漏れ難いので、電源の供給が無くてもデータを保持することができる。
【0019】
浮遊ゲート電極への電荷の蓄積は、例えばホットエレクトロン(Hot Electron)注入などにより行われる。また、浮遊ゲート電極に蓄積された電荷の引き抜きは、例えば基板に形成されたウェルとのカップリング容量によるFN(Fowler Nordheim)トンネリング現象、または浮遊ゲート電極へのUV(Ultraviolet:紫外線)照射などによって行われる。例えば前述の特開2011−9454号公報(特許文献1)では、浮遊ゲート電極の電荷が注入される電荷蓄積部とは異なる部分において、浮遊ゲート電極の一部と重なる第2nウェルへ電子を放出することにより記憶データを消去している。これにより、不揮発性メモリセルにおいて電気的な消去を可能としている。
【0020】
本発明者が検討した不揮発性メモリセルでは、電荷を蓄積する浮遊ゲート電極を有する電荷蓄積部と、アクセス制御を行う選択トランジスタとを一つずつ有し、これらは同一の活性領域に形成され、一つのメモリセルを構成している。また、浮遊ゲート電極の上層には制御ゲート電極などは配置されておらず、浮遊ゲート電極は単層の導体膜(例えば多結晶シリコン)によって構成されている。
【0021】
しかし、このような不揮発性メモリセルを有する半導体装置に関して、本発明者が検討したところ、選択不揮発性メモリセルにデータを書き込む際、以下に説明する不具合が生じることが明らかとなった。
【0022】
データの書き込み時には、選択不揮発性メモリセルのドレインに、例えば−7Vのドレイン電圧を印加し、選択不揮発性メモリセルの選択トランジスタのゲート電極に、例えば−8Vのゲート電圧を印加する。これにより、選択不揮発性メモリセルの浮遊ゲート電極に電子を注入してデータを書き込む。一方、非選択不揮発性メモリセルの選択トランジスタのゲート電極には、例えば0Vのゲート電圧を印加することにより、非選択不揮発性メモリセルの浮遊ゲート電極に電子が注入されないようにしている。
【0023】
ところで、不揮発性メモリの書き込み速度の高速化を実現するためには、選択不揮発性メモリセルのドレインに印加されるドレイン電圧、すなわち選択不揮発性メモリセルのドレインに電気的に接続されるビット線の電圧を高くすることが必要である。しかし、選択不揮発性メモリセルのドレインが電気的に接続されたビット線の電圧を高くすると、このビット線に電気的に接続される選択不揮発性メモリセルのドレインだけではなく、このビット線に電気的に接続される非選択不揮発性メモリセルのドレインに印加されるドレイン電圧も高くなる。
【0024】
そのため、選択不揮発性メモリセルのドレインに印加されたドレイン電圧に引きずられて非選択不揮発性メモリセルの浮遊ゲート電極にも僅かに電子が注入されるというディスターブ現象が生じ、選択不揮発性メモリセルと非選択不揮発性メモリセルとを分けることが難しくなるという問題が生じる。特に、メモリセルアレイを縮小した場合には、選択不揮発性メモリセルと非選択不揮発性メモリセルとを分けることがますます難しくなる。
【0025】
なお、前述の特許文献1(特開2011−9454号公報)、特許文献2(米国特許第6711064号明細書)、および特許文献3(米国特許出願公開第2008/0017917号明細書)それぞれについては、不揮発性メモリセルの書き込み動作において、非選択不揮発性メモリセルのディスターブ現象についての記載や示唆はなく、前述の特許文献1〜3の構造においても同様の課題が発生するものと考えられる。
【0026】
(実施の形態1)
<不揮発性メモリセルの構造>
実施の形態1による不揮発性メモリセル(単位データを記憶する一つのメモリセル)の構造を
図1〜
図3を用いて説明する。
図1は不揮発性メモリセルの要部平面図である。
図2は
図1のA−A線に沿った要部断面図である。
図3は
図1のB−B線に沿った要部断面図である。
【0027】
実施の形態1による不揮発性メモリセルNVM1は、選択トランジスタQSと、電荷蓄積部CAと、注入MOS容量PTとから構成される。
【0028】
不揮発性メモリセルNVM1は、単結晶のシリコン(Si)からなるシリコン基板(半導体基板とも言う)SSに形成されている。シリコン基板SSはp型導電型とする。ここで、p型導電型とは、シリコンを主体とする半導体領域などにおいて、III族のホウ素(B)やII族の元素を含み、多数キャリアが正孔(ホールとも言う)となるような半導体領域の導電型を表す。
【0029】
シリコン基板SSの主面には、浅い溝型の絶縁膜(Shallow Trench Isolation:STI)構造からなる分離部TIが形成され、第1活性領域(アクティブ領域とも言う)AR1第2活性領域AR2、および第3活性領域AR3を規定している。このように分離部TIによって規定された第1活性領域AR1、第2活性領域AR2、および第3活性領域AR3に、素子を形成したり給電部を形成したりする。
【0030】
シリコン基板SSの主面側には、n型導電型の半導体領域である第1nウェルNW1が形成されている。ここで、n型導電型とは、シリコンを主体とする半導体領域などにおいて、V族のリン(P)やヒ素(As)またはVI族の元素を含み、多数キャリアが電子となるような半導体領域の導電型を表す。第1nウェルNW1には、選択トランジスタQSおよび電荷蓄積部CAが備わる第1活性領域AR1と、第1nウェルNW1の給電部が備わる第2活性領域AR2とが形成されている。
【0031】
また、シリコン基板SSの主面側には、第1nウェルNW1と第1方向Xに離間して、第1nウェルNW1とは異なる箇所に、n型導電型の半導体領域である第3nウェルMNWが形成されている。さらに、第3nウェルMNWに内包されるようにして、n型導電型の半導体領域である第2nウェルNW2が形成されている。第2nウェルNW2には、注入MOS容量PTが備わる第3活性領域AR3が形成されている。
【0032】
また、シリコン基板SSの主面側であって、第1nウェルNW1および第3nウェルMNWが形成されていない領域には、p型導電型の半導体領域である素子用pウェルMPWが形成されている。従って、第1nウェルNW1と第3nウェルMNWとの間には、分離部TIおよび素子用pウェルMPWが配置され、これらにより、第1nウェルNW1と第3nウェルMNWとは互いに電気的に分離された状態となっている。
【0033】
ここで、第3nウェルMNWの不純物濃度は、第1nウェルNW1の不純物濃度と同じかまたはそれよりも低く設定されている。従って、第3nウェルMNWと素子用pウェルMPWとの間の耐圧は、第1nウェルNW1と素子用pウェルMPWとの間の耐圧と同じかまたはそれよりも高い。第1nウェルNW1の不純物濃度と第2nウェルNW2の不純物濃度とは同じであってもよい。
【0034】
第1nウェルNW1の第1活性領域AR1には、選択トランジスタQSが形成されている。選択トランジスタQSは、ゲート電極EG、ゲート絶縁膜IGq、および第1nウェルNW1をMIS構造として有する電界効果トランジスタである。ゲート電極EGは多結晶シリコン(ポリシリコンとも言う)を主体とする導体膜からなり、酸化シリコンを主体とする絶縁膜からなるゲート絶縁膜IGq上に形成されている。また、ゲート電極EGは第1方向Xに延在している。
【0035】
ゲート電極EGとゲート絶縁膜IGqとは、その側壁が、酸化シリコン膜などの絶縁体からなるサイドウォールSWで覆われている。p型導電型の半導体領域が、第1nウェルNW1内においてゲート電極EGを挟み込む位置にゲート電極EGに対して自己整合的に形成されている。ゲート電極EGの側方下部にあたる第1nウェルNW1の表面には、p型導電型の半導体領域であるp−型半導体領域p1が形成されている。また、サイドウォールSWの側方下部にあたる第1nウェルNW1の表面には、p型導電型の半導体領域であるp+型半導体領域p2が形成されている。p+型半導体領域p2は、シリコン基板SSの主面からの深さがp−型半導体領域p1よりも浅く、p型不純物濃度がp−型半導体領域p1よりも濃い。ゲート電極EGおよびp+型半導体領域p2のそれぞれの表面にシリサイド層SIを形成しても良い。
【0036】
さらに、第1nウェルNW1の第1活性領域AR1には、電荷蓄積部CAが形成されている。電荷蓄積部CAは、浮遊ゲート電極FG、ゲート絶縁膜IGc、および第1nウェルNW1をMIS構造として有する電界効果トランジスタである。浮遊ゲート電極FGは多結晶シリコンを主体とする導体膜からなり、酸化シリコンを主体とする絶縁膜からなるゲート絶縁膜IGc上に形成されている。また、浮遊ゲート電極FGは第1方向Xに延在している。
【0037】
浮遊ゲート電極FGとゲート絶縁膜IGcとは、その側壁が、酸化シリコン膜などの絶縁体からなるサイドウォールSWで覆われている。そして、p型導電型の半導体領域が、第1nウェルNW1内において浮遊ゲート電極FGを挟み込む位置に浮遊ゲート電極FGに対して自己整合的に形成されている。浮遊ゲート電極FGの側方下部にあたる第1nウェルNW1の表面には、p型導電型の半導体領域であるp−型半導体領域p1が形成されている。また、サイドウォールSWの側方下部にあたる第1nウェルNW1の表面には、p型導電型の半導体領域であるp+型半導体領域p2が形成されている。浮遊ゲート電極FGおよびp+型半導体領域p2のそれぞれの表面にシリサイド層SIを形成しても良い。
【0038】
選択トランジスタQSのゲート電極EGと電荷蓄積部CAの浮遊ゲート電極FGとは、第2方向Yに離間して設けられており、ゲート電極EGと浮遊ゲート電極FGとの間に位置するp+型半導体領域p2は、選択トランジスタQSおよび電荷蓄積部CAの共有領域となっている。
【0039】
第1nウェルNW1の第2活性領域AR2には、第1nウェルNW1の給電部が形成されており、これによって、第1nウェルNW1に独立に電圧(ウェル電圧Vnw)を印加することができる。
【0040】
第2nウェルNW2の第3活性領域AR3には、注入MOS容量PTが形成されている。注入MOS容量PTは、浮遊ゲート電極FG、ゲート絶縁膜IGp、および第2nウェルNW2をMIS構造として有する容量である。浮遊ゲート電極FGは、電荷蓄積部CAを構成する浮遊ゲート電極FGと同一層の多結晶シリコンを主体とする導体膜からなり、酸化シリコンを主体とする絶縁膜からなるゲート絶縁膜IGp上に形成されている。また、浮遊ゲート電極FGは第1方向Xに延在している。
【0041】
浮遊ゲート電極FGとゲート絶縁膜IGpとは、その側壁が、酸化シリコン膜などの絶縁体からなるサイドウォールSWで覆われている。n型導電型の半導体領域が、第2nウェルNW2内において浮遊ゲート電極FGを挟み込む位置に浮遊ゲート電極FGに対して自己整合的に形成されている。浮遊ゲート電極FGの側方下部にあたる第2nウェルNW2の表面には、n型導電型の半導体領域であるn−型半導体領域n3が形成されている。また、サイドウォールSWの側方下部にあたる第2nウェルNW2の表面には、n型導電型の半導体領域であるn+型半導体領域n4が形成されている。n+型半導体領域n4は、シリコン基板SSの主面からの深さがn−型半導体領域n3よりも浅く、p型不純物濃度がn−型半導体領域n3よりも濃い。n+型半導体領域n4の表面にシリサイド層SIを形成しても良い。
【0042】
ここで、浮遊ゲート電極FGは、他のいかなる導体材料にも接触せず、浮遊状態となっている。また、浮遊ゲート電極FGは、平面視において、第1nウェルNW1の一部と、第2nウェルNW2の一部とに重なるようにしてシリコン基板SS上に配置されている。浮遊ゲート電極FGは、第1nウェルNW1および第2nウェルNW2と容量結合(容量性カップリングとも言う)を形成していることになる。従って、第1nウェルNW1または第2nウェルNW2に給電することによって、カップリング容量により、浮遊ゲート電極FGから電子を引き抜くことができる。
【0043】
また、選択トランジスタQSのゲート電極EGの延在方向(第1方向X)と同一の方向に延在するようにして、浮遊ゲート電極FGを配置している。これにより、素子レイアウトを密にしやすくしている。
【0044】
さらに、注入MOS容量PTにおける浮遊ゲート電極FGの第2方向Yの幅(ゲート長)は、電荷蓄積部CAにおける浮遊ゲート電極FGの第2方向Yの幅(ゲート長)よりも細く形成されている。電荷蓄積部CAにおける浮遊ゲート電極FGのゲート長は、例えば0.6μm、注入MOS容量PTにおける浮遊ゲート電極FGのゲート長は、例えば0.1μmである。これにより、素子レイアウトを密にしやすくしており、また、後述するように、第2nウェルNW2側の容量が第1nウェルNW1側の容量よりも小さくなることから、FNトンネリング現象による浮遊ゲート電極FGからの電荷の引き抜きが生じやすくなる。
【0045】
また、浮遊ゲート電極FGは、選択トランジスタQSのゲート電極EGと同一の工程で形成されることから、浮遊ゲート電極FGも、多結晶シリコンを主体とする導体膜によって形成されている。また、電荷蓄積部CAのゲート絶縁膜IGcおよび注入MOS容量PTのゲート絶縁膜IGpは、選択トランジスタQSのゲート絶縁膜IGqと同一の工程で形成されることから、ゲート絶縁膜IGc,IGpも、酸化シリコンを主体とする絶縁膜によって形成されている。
【0046】
不揮発性メモリセルNVM1を覆うようにして、シリコン基板SS上には層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILは、酸化シリコンを主体とする絶縁膜からなる。さらに、層間絶縁膜ILの所定の個所にはコンタクトCNが形成されている。コンタクトCNは、不揮発性メモリセルNVM1のソースを構成するp+型半導体領域p2上のシリサイド層SI、不揮発性メモリセルNVM1のドレインを構成するp+型半導体領域p2上のシリサイド層SI、および選択トランジスタQSのゲート電極EG上のシリサイド層SIにそれぞれ達するように形成されている。さらに、コンタクトCNは、第1nウェルNW1上のシリサイド層SIおよび注入MOS容量PTのn+型半導体領域n4上のシリサイド層SIにそれぞれ達するように形成されている。
【0047】
コンタクトCNの内部にはプラグPLGが埋め込まれている。プラグPLGは、例えばタングステン(W)などを主体とする導体膜からなる。
【0048】
層間絶縁膜IL上には、ソース配線Ms、ドレイン配線Md、選択メモリセルQSのゲート配線Msw、ウェル配線Mnw、および容量配線Mptが形成されている。ソース配線Ms、ドレイン配線Md、選択メモリセルQSのゲート配線Msw、ウェル配線Mnw、および容量配線Mptは、例えば銅(Cu)またはアルミニウム(Al)などを主体とする導体膜からなる。
【0049】
ソース配線Msは、不揮発性メモリセルNVM1のソースを構成するp型半導体領域と電気的に接続してソース電圧Vsを供給する。ドレイン配線Mdは、不揮発性メモリセルNVM1のドレインを構成するp型半導体領域と電気的に接続してドレイン電圧Vdを供給する。選択メモリセルQSのゲート配線Mswは、選択トランジスタQSのゲート電極EGと電気的に接続してゲート電圧Vswを供給する。ウェル配線Mnwは、第1nウェルNW1と電気的に接続してウェル電圧Vnwを供給する。容量配線Mptは、注入MOS容量PTのn型半導体領域と電気的に接続して注入電圧Vptを供給する。
【0050】
<不揮発性メモリの回路構成>
次に、実施の形態1による不揮発性メモリの回路構成を
図4を用いて説明する。
図4は不揮発性メモリの要部回路図である。
【0051】
この不揮発性メモリは、メモリセルアレイと周辺回路領域とを有している。メモリセルアレイには、第2方向Yに沿って延在する複数のワード線WL(WL0,WL1・・・)と、複数のリード線RL(RL0,RL1,RL2,RL3・・・)と、複数の消去線EL(EL0,EL1,EL2,EL3・・・)とが配置されている。また、メモリセルアレイには、第2方向Yと直交する第1方向Xに沿って延在する複数のビット線BL(BL0,BL1,BL2・・・)と、複数のソース線SLとが配置されている。
【0052】
このようなワード線WLと、ビット線BLおよびソース線SLとの格子状交点の近傍に、1ビット分の不揮発性メモリセルMCが電気的に接続されている。ここでは、1ビットが一つの不揮発性メモリセルMCで構成されている場合が例示されている。
【0053】
各不揮発性メモリセルMCは、第1nウェルNW1領域に形成され、データの書き込みおよび読み出し用の蓄積容量部CAと、第1nウェルNW1領域に形成された選択トランジスタQSと、第2nウェルNW2領域に形成された注入MOS容量PTとを有している(前述の
図1〜
図3参照)。
【0054】
不揮発性メモリセルMCのドレインはビット線BLに電気的に接続され、不揮発性メモリセルMCのソースはソース線SLに電気的に接続されている。そして、第1nウェルNW1はワード線WLに電気的に接続され、選択トランジスタQSのゲート電極EGはリード線RLに接続され、注入MOS容量PTの一方の電極は消去線ELに電気的に接続されている。注入MOS容量PTの他方の電極は、第1nウェルNW1の一部と平面的に重なって配置された浮遊ゲート電極FGである。
【0055】
このようなメモリセルアレイにおいては、ソース線SLを共通とした複数の不揮発性メモリセルMCが配置されている。そして、ソース線SLを共通として第2方向Yに隣り合って配置された不揮発性メモリセルMCにおいては、消去線ELを共通としているが、リード線RLおよびビット線BLは共通としていない。また、第2方向Yに一つおきの不揮発性メモリセルMCにおいてリード線RLを共通としている。
【0056】
<不揮発性メモリのメモリセルアレイ>
次に、不揮発性メモリのメモリセルアレイについて
図5を用いて説明する。
図5は6ビット分の不揮発性メモリセルのメモリセルアレイを示す要部平面図である。
【0057】
前述の
図4に示した回路図を用いて説明したように、ソース線SLを共通として第2方向Yに隣り合って配置された不揮発性メモリセルMCにおいては、第2方向Yに延在する消去線ELを共通としているが、第2方向Yに延在するリード線RLおよび第1方向Xに延在するビット線BLは共通としていない。また、第2方向Yに一つおきの不揮発性メモリセルMCにおいてリード線RLを共通としている。
【0058】
図5に示すように、選択トランジスタQSおよび蓄積容量部CAが形成される第1nウェルNW1および第1活性領域AR1は、第2方向Yに沿って延在している。そして、第1方向Xに沿って延在するソース線SLを挟んで、第1メモリセルMC1と第2メモリセルMC2とが配置されている。
【0059】
第1メモリセルMC1と第2メモリセルMC2との間には、それぞれのソースにソース電圧が印加されるコンタクトCNsが第1nウェルNW1に達するように形成されていおり、第1メモリセルMC1と第2メモリセルM2とはコンタクトCNsを共有している。そして、第1メモリセルMC1のソースと第2メモリセルMC2のソースとは、同一のソース線SLに電気的に接続されている。ソース線SLは、例えば第1方向Xに沿って延在する第1層目の配線によって構成されている。
【0060】
上記コンタクトCNsを第2方向Yに挟んで、第1メモリセルMC1の選択メモリセルQSのゲート電極EGと、第2メモリセルMC2の選択メモリセルQSのゲート電極EGとが配置されている。ここで、第1メモリセルMC1の選択メモリセルQSのゲート電極EGにゲート電圧を印加するコンタクトCNswと、第2メモリセルMC2の選択メモリセルQSのゲート電極EGにゲート電圧を印加するコンタクトCNswとは、第1活性領域AR1を第1方向Xに挟んで両側に配置されている。
【0061】
すなわち、第1メモリセルMC1の選択メモリセルQSのゲート電極EGは、第1活性領域AR1の一方の側の分離部上に延びて形成されており、その分離部上のゲート電極EGに達するようにコンタクトCNswは形成されている。一方、第2メモリセルMC2の選択メモリセルQSのゲート電極EGは、第1活性領域AR1の他方の側(上記一方の側と反対側)の分離部上に延びて形成されており、その分離部上のゲート電極EGに達するようにコンタクトCNswは形成されている。そして、第1メモリセルMC1の選択メモリセルQSのゲート電極EGはリード線RL1に電気的に接続され、第2メモリセルMC2の選択メモリセルQSのゲート電極EGはリード線RL0に電気的に接続されて、個別にゲート電圧を制御することができる。リード線RL0,RL1は、例えば第1層目の配線よりも上層で、第2方向Yに沿って延在する第2層目の配線によって構成されている。
【0062】
第1メモリセルMC1の選択メモリセルQSのゲート電極EGおよび第2メモリセルMC2の選択メモリセルQSのゲート電極EGを第1活性領域AR1の一方の側の分離部上に伸ばして形成し、それぞれのゲート電極EGに達するコンタクトCNswを形成することも可能である。しかし、この場合は、第1活性領域AR1と第3活性領域AR3との間の分離部の間に、第1メモリセルMC1用と第2メモリセルMC2用のコンタクトCNswを第1方向Xにずらして形成しなければならない。そのため、第1活性領域AR1と第3活性領域AR3との第1方向Xの間隔を広くする必要があり、メモリセルアレイの面積が増加してしまう。
【0063】
第1メモリセルMC1の蓄積容量部CAの浮遊ゲート電極FGは、選択メモリセルQSを挟んで、ソース線SL(またはコンタクトCNs)と反対側に形成されている。同様に、第2メモリセルMC2の蓄積容量部CAの浮遊ゲート電極FGは、選択メモリセルQSを挟んで、ソース線SL(またはコンタクトCNs)と反対側に形成されている。すなわち、第2方向Yに沿って、活性領域AR1には第1メモリセルMC1の蓄積容量部CAの浮遊ゲート電極FG、第1メモリセルMC1の選択メモリセルQSのゲート電極EG、第2メモリセルMC2の選択メモリセルQSのゲート電極EG、第2メモリセルMC2の蓄積容量部CAの浮遊ゲート電極FGの順に配置されている。
【0064】
さらに、第1メモリセルMC1のドレインは、浮遊ゲート電極FGおよび選択メモリセルQSを挟んで、ソース線(またはコンタクトCNs)と反対側に配置されている。同様に、第2メモリセルMC2のドレインは、浮遊ゲート電極FGおよび選択メモリセルQSを挟んで、ソース線(またはコンタクトCNs)と反対側に配置されている。それぞれのドレインでは、ドレイン電圧が印加されるコンタクトCNdが第1nウェルNW1に達するように形成されている。そして、第1メモリセルMC1のドレインはビット線BL1に電気的に接続され、第2メモリセルMC2のドレインはビット線BL2に電気的に接続されて、個別にドレイン電圧を制御することができる。ビット線BL0,BL1は、例えば第1方向Xに沿って延在する第1層目の配線によって構成されている。
【0065】
第1活性領域AR1と第1方向Xに離間して第3活性領域AR3が形成されており、この第3活性領域AR3には、第1メモリセルMC1の注入MOS容量PTと第2メモリセルMC2の注入MOS容量PTとが形成されている。
【0066】
選択トランジスタQSおよび電荷蓄積部CAが形成される第1活性領域AR1は、第1メモリセルMC1および第1メモリセルMC2のみだけではなく、第2方向Yに沿って配置される複数のメモリセルMCにおいて共有されるように形成されている。これに対して、注入MOS容量PTが形成される第3活性領域AR3は、第1メモリセルMC1および第1メモリセルMC2のみ、すなわち、第2方向Yに沿って配置された隣り合う2つの不揮発性メモリセルにおいて共有されるように形成されている。
【0067】
第1メモリセルMC1の注入MOS容量PTにおける浮遊ゲート電極FGと第2メモリセルMC2の注入MOS容量PTにおける浮遊ゲート電極FGとの間には、それぞれの注入MOS容量PTのn型導電型の半導体領域に注入電圧が印加されるコンタクトCNptが第2nウェルNW2に達するように形成されている。そして、第1メモリセルMC1と第2メモリセルMC2とはコンタクトCNptを共有しており、第1メモリセルMC1の注入MOS容量PTの一方のn型導電型の半導体領域と第2メモリセルMC2の注入MOS容量PTの一方のn型導電型の半導体領域とは、同一の消去線EL0に電気的に接続されている。消去線EL0,EL1は、例えば第2方向Yに沿って延在する第2層目の配線によって構成されている。
【0068】
第1メモリセルMC1の注入MOS容量PTにおける浮遊ゲート電極FGの第2方向Yの幅(すなわちゲート長)は、電荷蓄積部CAにおける浮遊ゲート電極FGの第2方向Yの幅(すなわちゲート長)よりも細く形成されている。この浮遊ゲート電極FGの細い部分は選択メモリセルQS側に形成されている。実施の形態1では、電荷蓄積部CAにおける浮遊ゲート電極FGの選択トランジスタQS側の側面と、注入MOS容量PTにおける浮遊ゲート電極FGの選択トランジスタQS側の側面とが平面視において同一線上になるように、浮遊ゲート電極FGは形成されている。
【0069】
同様に、第2メモリセルMC2の注入MOS容量PTにおける浮遊ゲート電極FGの第2方向Yの幅(すなわちゲート長)は、電荷蓄積部CAにおける浮遊ゲート電極FGの第2方向Yの幅(すなわちゲート長)よりも細く形成されている。この浮遊ゲート電極FGの細い部分は選択メモリセルQS側に形成されている。実施の形態1では、電荷蓄積部CAにおける浮遊ゲート電極FGの選択トランジスタQS側の側面と、注入MOS容量PTにおける浮遊ゲート電極FGの選択トランジスタQS側の側面とが平面視において同一線上になるように、浮遊ゲート電極FGは形成されている。
【0070】
浮遊ゲート電極FGを上記のような形状とすることにより、第2方向Yの第3活性領域AR3の長さを短くできるので、メモリセルアレイの面積を小さくすることができる。これは以下の理由による。
【0071】
注入MOS容量PTにおける浮遊ゲート電極FGの両側の第2nウェルNW2にはn型導電型の半導体領域が形成されるので、浮遊ゲート電極FGの選択メモリセルQSと反対側に形成されたn型導電型の半導体領域を形成する第3活性領域AR3が必要となる。そのため、注入MOS容量PTにおける浮遊ゲート電極FGの幅を電荷蓄積部CAにおける浮遊ゲート電極FGの幅と同じとした場合または浮遊ゲート電極FGの細い部分を選択メモリセルQSと反対側に形成した場合は、浮遊ゲート電極FGの細い部分を選択メモリセルQS側に形成した場合と比べて、第2方向Yに延びる第3活性領域AR3が長くなる。そこで、浮遊ゲート電極FGの細い部分を選択メモリセルQS側に形成することにより、第2方向Yのサイズを小さくしてメモリセルアレイの面積を小さくしている。
【0072】
実施の形態1によるメモリセルアレイでは、上述した第1メモリセルMC1と第2メモリセルMC2とが第2方向Yに繰り返されて、配置されている。従って、第1メモリセルMC1と、第1メモリセルMC1を挟んで第2メモリセルMC2と反対側に配置される第3メモリセルMC3との間には、それぞれのドレインにドレイン電圧が印加されるコンタクトCNdが第1nウェルNW1に達するように形成されており、第1メモリセルMC1と第3メモリセルMC3とはコンタクトCNdを共有している。そして、第1メモリセルMC1のドレインと第3メモリセルMC3のドレインとは、同一のビット線BL1に電気的に接続されている。
【0073】
<不揮発性メモリの動作>
次に、実施の形態1による不揮発性メモリの書き込み動作、消去動作、および読み出し動作を
図6〜
図8を用いて説明する。
図6は不揮発性メモリの書き込み動作を説明する回路図、
図7は不揮発性メモリの消去動作を説明する回路図、
図8は不揮発性メモリの読み出し動作を説明する回路図である。
【0074】
まず、データ書き込み動作の一例を
図6を用いて説明する。ここでは、電子を浮遊ゲート電極に注入することをデータ書き込みと定義する。
【0075】
書き込み動作では、ホットエレクトロン注入によって、浮遊ゲート電極FGに電子を注入する。例えばソース/ドレイン間において電位差を大きくすると、加速された電子が格子と電離衝突を繰り返して、雪崩増幅的に多量に電子を発生させる。それらの電子が高いエネルギーを獲得し、電荷蓄積部CAのゲート絶縁膜IGcの禁制帯を通り抜けて、浮遊ゲート電極FGに注入される。
【0076】
データの書き込み時には、選択不揮発性メモリセル(
図6中、選択bitと記載)の選択トランジスタQSのゲート電極EGが接続されているリード線RL0に、例えば−8Vの負の電圧を印加し、それ以外のリード線RL1,RL2,RL3には、例えば0Vの電圧を印加する。また、選択不揮発性メモリセルのドレインDが接続されているビット線BL1に、例えば−7Vの負の電圧を印加し、それ以外のビット線BL0,BL2には、例えば0Vの電圧を印加する。また、第1nウェルNW1が接続されているワード線WL0,WL1およびソースSが接続されているソース線SLには、例えば0Vの電圧を印加する。
【0077】
さらに、選択不揮発性メモリセルの注入MOS容量PTのp型導電型の半導体領域が接続されている消去線EL0に、例えば−3Vの負の電圧を印加し、それ以外の消去線EL1,EL2,EL3には、例えば0Vの電圧を印加する。
【0078】
ここで、注入MOS容量PTのp型導電型の半導体領域に負の電圧を印加した選択不揮発性メモリセルでは、注入MOS容量PTのp型導電型の半導体領域に負の電圧を印加しない非選択不揮発性メモリセル(
図6中、書き込みディスターブbitと記載)と比べて、書き込み速度が3〜4桁程度速くなる。このような書き込み時間の差を利用することによって、選択不揮発性メモリセルと非選択不揮発性メモリセルとを分けることができる。
【0079】
例えば1μAのドレイン電流で判定する場合、選択不揮発性メモリセルでは10μ秒のときにドレイン電流は1μA以上となるが、非選択不揮発性メモリセルでは1秒以上でドレイン電流が1μA以上となる。従って、選択不揮発性メモリセルの書き込み速度の高速化を実現するために、選択不揮発性メモリセルのドレインDに印加するドレイン電圧、すなわちこのドレインDに電気的に接続されるビット線BL1の電圧を高くしたことにより、非選択不揮発性メモリセルにおいてディスターブ現象が生じても、選択不揮発性メモリセルと非選択不揮発性メモリセルとの書き込み時間が著しく異なる。この書き込み時間の差を利用することによって、選択不揮発性メモリセルと非選択不揮発性メモリセルとを分けることができる。
【0080】
次に、データ消去動作の一例を
図7を用いて説明する。ここでは、浮遊ゲート電極FGに蓄積された電子を引き抜くことをデータ消去と定義する。
【0081】
消去動作では、FN(Fowler Nordheim)トンネリング現象によって、浮遊ゲート電極FGに蓄積された電子を第2nウェルNW2に放出させる。データの消去時には、全てのリード線RL0,RL1,RL2,RL3に、例えば0Vの電圧を印加する。また、全てのビット線BL0,BL1,BL2に、例えば0Vの電圧を印加するか開放状態とする。また、選択不揮発性メモリセル(
図7中、選択bitと記載)の第1nウェルNW1が接続されているワード線WL0に、例えば−8Vの負の電圧を印加し、それ以外のワード線WL1に、例えば0Vの電圧を印加する。また、全てのソース線SLには、例えば0Vの電圧を印加する。
【0082】
さらに、選択不揮発性メモリセルの注入MOS容量PTのp型導電型の半導体領域が接続されている消去線EL0,EL1に、例えば+8Vの正の電圧を印加し、それ以外の消去線EL2,EL3には、例えば0Vの電圧を印加する。
【0083】
上記のような電圧条件とすることで、浮遊ゲート電極FG下の第1nウェルNW1に−8Vが印加され、浮遊ゲート電極FG下の他の箇所である第2nウェルNW2に+8Vが印加されることになる。従って、浮遊ゲート電極FGには、浮遊ゲート電極FGと第1nウェルNW1と間の容量、および浮遊ゲート電極FGと第2nウェルNW2との間の容量に応じた容量結合による電位が印加される。より具体的には、浮遊ゲート電極FGの電位は、第1nウェルNW1の負電位によって負の方向に誘導され、第2nウェルNW2の正電位によって正の方向に誘導され、誘導される電位は容量の合計に占める、印加する部分の容量の比によって決定される。
【0084】
前述の
図1および
図5に示したように、第2nウェルNW2上の浮遊ゲート電極FGの幅は、第1nウェルNW1上の浮遊ゲート電極FGの幅よりも細く形成されている。従って、第2nウェルNW2側の容量が第1nウェルNW1側の容量よりも小さくなることから、浮遊ゲート電極FGの電位は第1nウェルNW1側の電位の影響を強く受けることになり、浮遊ゲート電極FGと第2nウェルNW2との間にはより強い電位差が発生することになる。
【0085】
従って、浮遊ゲート電極FGに蓄積された電子は、第2nウェルNW2の大きな正の電界を受けて、FNトンネリング現象により第2nウェルNW2に放出される。このようにして、浮遊ゲート電極FGの電荷が除去され、消去状態が実現される。
【0086】
次に、データ読み出し動作の一例を
図8を用いて説明する。
【0087】
データの読み出し時には、選択不揮発性メモリセル(
図6には、選択bitと記載)の選択トランジスタQSのゲート電極EGが接続されているリード線RL0に、例えば−8Vの負の電圧を印加し、それ以外のリード線RL1,RL2,RL3には、例えば0Vの電圧を印加する。また、選択不揮発性メモリセルのドレインDが接続されているビット線BL1に、例えば−1.5Vの負の電圧を印加し、それ以外のビット線BL0,BL2には、例えば0Vの電圧を印加する。また、第1nウェルNW1が接続されているワード線WL0,WL1、ソースSが接続されているソース線SL、選択メモリセルMCの注入MOS容量PTのp型導電型の半導体領域が接続されている消去線EL0,EL1,EL2,EL3には、例えば0Vの電圧を印加する。
【0088】
これにより、選択トランジスタQSはオン状態となる。そして、電荷蓄積部CAの浮遊ゲート電極FGの荷電状態に応じて、p型導電型の半導体領域の間のチャネルにドレイン電流が流れる。より具体的には、選択メモリセルの浮遊ゲート電極FGに電子が蓄積されている場合は、浮遊ゲート電極FG下の第1nウェルNW1には反転層が形成されて、チャネルにドレイン電流が流れることになる。一方、選択メモリセルの浮遊ゲート電極FGには電子が蓄積されていない場合は、書き込み状態と比較して、浮遊ゲート電極FG下の第1nウェルNW1にはほとんど反転層は形成されない。従って、ドレイン電流は微小または流れない状態となる。以上のようにして、選択不揮発性メモリセルの記憶状態を判別することができる。
【0089】
<実施の形態1の変形例>
次に、実施の形態1による不揮発性メモリセルの変形例について
図9Aおよび
図9Bを用いて説明する。
図9A(a)および(b)はそれぞれ第1の変形例による不揮発性メモリセルの前述の
図1の第1方向X(すなわちB−B線)に沿った要部断面図、および前述の
図1の第2方向Yに沿った注入MOS容量の要部断面図である。
図9Bは第2の変形例による不揮発性メモリセルの前述の
図1の第2方向Yに沿った注入MOS容量の要部断面図である。
【0090】
図9A(a)および(b)に示すように、第1の変形例による不揮発性メモリセルNVM1aでは、注入MOS容量PTaを、浮遊ゲート電極FG、ゲート絶縁膜IGp、p型導電型のpウェルPW、および第2nウェルNW2をMIS構造として有する容量から構成する。すなわち、ゲート絶縁膜IGpと第2nウェルNW2との間にpウェルPWを形成する。そして、pウェルPWに消去線ELを接続して注入電圧Vptを印加する。
【0091】
上記pウェルPWを形成せずに、注入MOS容量PTaを、いわゆるアキュムレーション容量とすることもできる。しかし、この場合、書き込み動作時に、選択トランジスタQSのゲート電極EGに−8Vの電圧を印加し、ドレインに−7Vの電圧を印加し、第1nウェルNW1およびソースに0Vの電圧を印加し、第2nウェルNW2に−3Vの電圧を印加し、シリコン基板SSに−8Vの電圧を印加すると、第2nウェルNW2とシリコン基板SSとの間が順方向となり、消費電力の増加を招く恐れがある。
【0092】
これを回避するために、不揮発性メモリセルNVM1aでは、注入MOS容量PTaの第2nウェルNW2の表面にpウェルPWを形成している。
【0093】
しかし、消去動作に、前述した不揮発性メモリセルNVM1と同じ電圧、すなわち選択トランジスタのゲート電極EG、ソース、およびドレインに0Vの電圧を印加し、第2nウェルNW2に−8Vの電圧を印加し、pウェルPWに+8Vの電圧を印加すると、第1nウェルNW1とシリコン基板SSとの間が順方向となる。そこで、不揮発性メモリセルNVM1aの消去動作では、第1nウェルNW1を、例えば0Vの電圧に固定し、第1nウェルNW1とpウェルPWとの電位差はそのままになるように、pウェルPWに印加する電圧を、例えば16Vとする。
【0094】
なお、前述した不揮発性メモリセルNVM1aでは、注入MOS容量PTaにおいてゲート絶縁膜IGpと第2nウェルNW2との間の全領域にpウェルPWを形成するとしたが、これに限定されるものではない。
【0095】
例えば、
図9Bに示す第2の変形例による不揮発性メモリセルNVM1bのように、注入MOS容量PTbにおいて、n−型半導体領域n3とn+型半導体領域n4の代わりに、p−型半導体領域p3とp+型半導体領域p4を用いた構成としてもよい。この場合、前述の第1の変形例のpウェルPWは形成しなくても良い。これにより、不揮発性メモリセルNVM1bでは、注入MOS容量PTbの浮遊ゲート電極FGとオーバーラップした領域において、浮遊ゲート電極FGと、p−型半導体領域p3およびp+型半導体領域p4とが容量結合を備えた構造となる。
【0096】
このように、実施の形態1の不揮発性メモリセルNVM1によれば、注入MOS容量PTを配置し、データの書き込み動作時に注入MOS容量PTに電圧を印加することによって、非選択不揮発性メモリセルにディスターブ現象が生じても、選択不揮発性メモリセルに高速にデータを書き込むことができるので、選択不揮発性メモリセルと非選択不揮発性メモリセルとを分けることができる。これにより、メモリセルアレイを縮小しても不揮発性メモリセルの誤動作を回避することができるので、高性能で、かつ高信頼度の不揮発性メモリセルを実現することができる。
【0097】
(実施の形態2)
実施の形態2による不揮発性メモリセルの構造を
図10および
図11を用いて説明する。
図10は不揮発性メモリセルの要部平面図である。
図11は
図10のC−C線に沿った要部断面図である。
【0098】
実施の形態2による不揮発性メモリセルの注入MOS容量が、前述した実施の形態1による不揮発性メモリセルNVM1の注入MOS容量PTと構造が異なる。その他の構造(選択トランジスタQS、電荷蓄積部CA、および第1nウェルNW1等)は、不揮発性メモリセルNVM1と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0099】
図10および
図11に示すように、実施の形態2による不揮発性メモリセルNVM2は、選択トランジスタQSと、電荷蓄積部CAと、注入MOS容量PT2とから構成される。
【0100】
注入MOS容量PT2は、第2nウェルNW2の第3活性領域AR3に形成されている。注入MOS容量PT2は、浮遊ゲート電極FG2、ゲート絶縁膜IGp、および第2nウェルNW2をMIS構造として有する容量であり、浮遊ゲート電極FG2は第1方向Xに延在している。
【0101】
ここで、浮遊ゲート電極FG2は、他のいかなる導体材料にも接触せず、浮遊状態となっている。また、浮遊ゲート電極FG2は、平面視において、第1nウェルNW1の一部と、第2nウェルNW2の一部とに重なるようにしてシリコン基板SS上に配置されている。
【0102】
しかし、前述の実施の形態1に示した浮遊ゲート電極FGとは異なり、注入MOS容量PT2における浮遊ゲート電極FG2の第2方向Yの幅(すなわちゲート長)は、電荷蓄積部CAにおける浮遊ゲート電極FG2の第2方向Yの幅(すなわちゲート長)と同じである。そして、第2nウェルNW2に形成された分離部TIによって規定される第4活性領域AR4に、浮遊ゲート電極FG2、ゲート絶縁膜IGp、および第2nウェルNW2をMIS構造として有する容量が形成されている。
【0103】
このような構造であっても、浮遊ゲート電極FG2は、第1nウェルNW1および第2nウェルNW2と容量結合を形成していることになる。従って、第1nウェルNW1または第2nウェルNW2に給電することによって、カップリング容量により、浮遊ゲート電極FG2から電子を引き抜くことができる。
【0104】
また、第4活性領域AR4の第2方向Yの幅は、浮遊ゲート電極FG2の第2方向Yの幅よりも小さく形成されている。電荷蓄積部CAにおける浮遊ゲート電極FG2のゲート長は、例えば0.6μm、注入MOS容量PTにおける第4活性領域AR4の幅は、例えば0.1μmである。これにより、第2nウェルNW2側の容量が第1nウェルNW1側の容量よりも小さくなることから、FNトンネリング現象による浮遊ゲート電極FG2からの電荷の引き抜きが生じやすくなる。
【0105】
さらに、第2nウェルNW2には、浮遊ゲート電極FG2と平面的に重ならない領域に、分離部TIによって規定される第5活性領域AR5が形成されている。この第5活性領域AR5の第2nウェルNW2の表面にはn型導電型の半導体領域n5が形成されている。n型導電型の半導体領域n5の表面にシリサイド層SIを形成しても良い。このn型導電型の半導体領域n5には、コンタクトCNに埋め込まれたプラグPLGを介して、消去線EL(前述の
図4参照)が電気的に接続されている。
【0106】
そして、前述した実施の形態1と同様に、データの書き込み動作時に、選択不揮発性メモリセルの注入MOS容量PT2のn型導電型の半導体領域n5に負の電圧を印加する。注入MOS容量PT2のn型導電型の半導体領域n5に負の電圧を印加した選択不揮発性メモリセルでは、注入MOS容量PT2のn型導電型の半導体領域n5に負の電圧を印加しない非選択不揮発性メモリセルと比べて、書き込み速度が3〜4桁程度速くなる。このような書き込み時間の差を利用することによって、選択不揮発性メモリセルと非選択不揮発性メモリセルとを分けることができる。
【0107】
このように、実施の形態2の不揮発性メモリセルNVM2によれば、前述の実施の形態1の不揮発性メモリセルNVM1と同様に、注入MOS容量PT2を配置し、データの書き込み動作時に注入MOS容量PT2に電圧を印加することによって、非選択不揮発性メモリセルにディスターブ現象が生じても、選択不揮発性メモリセルに高速にデータを書き込むことができるので、選択不揮発性メモリセルと非選択不揮発性メモリセルとを分けることができる。
【0108】
(実施の形態3)
実施の形態3による不揮発性メモリセルの構造を
図12および
図13を用いて説明する。
図12は不揮発性メモリセルの要部平面図である。
図13は
図12のD−D線に沿った要部断面図である。
【0109】
図12および
図13に示すように、実施の形態3による不揮発性メモリセルNVM3は、選択トランジスタQSと、電荷蓄積部CAと、注入MOS容量PTとから構成され、不揮発性メモリセルNVM3の構造は、前述した実施の形態1による不揮発性メモリセルNVM1の構造とは基本的には同じである。しかし、浮遊ゲート電極FGの表面を絶縁膜IBで覆うことにより、浮遊ゲート電極FGの表面にシリサイド層SIを形成していない。
【0110】
浮遊ゲート電極FGの表面にシリサイド層SIを形成しないことにより、浮遊ゲート電極FGに蓄積された電荷保持の向上を図ることができる。なお、その他の部分、例えば選択メモリセルQSのゲート電極EGの表面、ならびにコンタクトCNが形成される第1nウェルNW1および第2nウェルNW2の表面には、プラグPLGとの接触抵抗を低減して高速動作を得るために、シリサイド層SIは形成している。
【0111】
このように、実施の形態3によれば、浮遊ゲート電極FGの表面にシリサイド層SIを形成しないことにより、浮遊ゲート電極FGの電荷保持特性を向上させて、不揮発性メモリセルNVM3の信頼度の向上を図ることができる。
【0112】
(実施の形態4)
実施の形態4による不揮発性メモリセルの構造を
図14および
図15を用いて説明する。
図14は不揮発性メモリセルの要部平面図である。
図15は
図14のE−E線に沿った要部断面図である。
【0113】
図14および
図15に示すように、実施の形態4による不揮発性メモリセルNVM4は、選択トランジスタQSと、電荷蓄積部CAと、注入MOS容量PTとから構成され、不揮発性メモリセルNVM4の構造は、前述した実施の形態1による不揮発性メモリセルNVM1の構造とは基本的には同じである。しかし、浮遊ゲート電極FGの上方に金属膜からなるメタルカバー層MLを形成する。そして、メタルカバー層MLは、不揮発性メモリセルNVM4のドレイン配線Md、選択メモリセルQSのゲート配線Msw、ソース配線Ms、または容量配線Mptのいずれかと電気的に接続している。
【0114】
浮遊ゲート電極FGの上方に金属膜からなるメタルカバー層MLを形成することにより、浮遊ゲート電極FGに蓄積された電荷の消失を防止することができる。メタルカバー層MLは、例えば不揮発性メモリセルNVM4を覆う層間絶縁膜IL上に形成される第1層目の配線と同一層の金属膜によって形成することができる。
【0115】
このように、実施の形態4によれば、浮遊ゲート電極FGの上方をメタルカバー層MLで覆うことにより、浮遊ゲート電極FGからの電荷の消失を防止して、不揮発性メモリセルNVM4の信頼度の向上を図ることができる。
【0116】
(実施の形態5)
実施の形態5による不揮発性メモリセルの構造を
図16および
図17を用いて説明する。
図16は不揮発性メモリセルの要部平面図である。
図17は
図16のF−F線に沿った要部断面図である。
【0117】
図16および
図17に示すように、実施の形態5による不揮発性メモリセルNVM5は、選択トランジスタQSと、電荷蓄積部CAと、注入MOS容量PTとから構成され、不揮発性メモリセルNVM5の構造は、前述した実施の形態1による不揮発性メモリセルNVM1の構造とは基本的には同じである。しかし、浮遊ゲート電極FGの表面を絶縁膜IBで覆うことにより、浮遊ゲート電極FGの表面にシリサイド層SIを形成しておらず、さらに、浮遊ゲート電極FGの上方に金属膜からなるメタルカバー層MLを形成している。そして、メタルカバー層MLは、不揮発性メモリセルNVM5のドレイン配線Md、選択メモリセルQSのゲート配線Msw、ソース配線Ms、または容量配線Mptのいずれかと電気的に接続している。
【0118】
浮遊ゲート電極FGの表面にシリサイド層SIを形成しないことにより、浮遊ゲート電極FGに蓄積された電荷保持の向上を図ることができる。なお、その他の部分、例えば選択メモリセルQSのゲート電極EGの表面、ならびにコンタクトCNが形成される第1nウェルNW1および第2nウェルNW2の表面には、プラグPLGとの接触抵抗を低減して高速動作を得るために、シリサイド層SIは形成されている。
【0119】
さらに、浮遊ゲート電極FGの上方に金属膜からなるメタルカバー層MLを形成することにより、浮遊ゲート電極FGに蓄積された電荷の消失を防止することができる。メタルカバー層MLは、例えば不揮発性メモリセルNVM5を覆う層間絶縁膜IL上に形成される第1層目の配線と同一層の金属膜によって形成することができる。
【0120】
このように、実施の形態5によれば、浮遊ゲート電極FGの表面にはシリサイド層SIを形成せず、さらに、浮遊ゲート電極FGの上方をメタルカバー層MLで覆うことにより、不揮発性メモリセルNVM5の信頼度の向上を図ることができる。
【0121】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。