(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078385
(24)【登録日】2017年1月20日
    
      
        (45)【発行日】2017年2月8日
      
    (54)【発明の名称】洋式トイレ用アダプターパネル及び同アダプターパネルを使用した簡易水洗式の仮設洋式トイレ
(51)【国際特許分類】
   E03D  11/00        20060101AFI20170130BHJP        
【FI】
   E03D11/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】8
      (21)【出願番号】特願2013-46531(P2013-46531)
(22)【出願日】2013年3月8日
    
      (65)【公開番号】特開2014-173320(P2014-173320A)
(43)【公開日】2014年9月22日
    【審査請求日】2015年11月20日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】390040958
【氏名又は名称】みのる化成株式会社
          (74)【代理人】
【識別番号】100100974
【弁理士】
【氏名又は名称】香本  薫
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】赤松  健一
              
            
        
      
    
      【審査官】
        七字  ひろみ
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          実開平06−013687(JP,U)      
        
        【文献】
          特開2008−161512(JP,A)      
        
        【文献】
          登録実用新案第3182812(JP,U)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D      1/00−  7/00        
E03D    11/00−13/00        
A47K    11/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
簡易水洗式の仮設和式トイレを洋式トイレに変更する際に使用される洋式便器設置用のアダプターパネルにおいて、前記仮設和式トイレは、便槽の上に平らなフロアパネルが設置され、前記フロアパネルの上に水タンク兼デッキが設置され、前記水タンク兼デッキに和式便器が収容され、前記フロアパネルに前記便槽に通じる開口が形成され、前記和式便器の汚物流出口が前記開口内に配置され、前記水タンク兼デッキ及び和式便器の周囲が前面ドア付きの四角いボックスで囲繞されたものであり、前記アダプターパネルは前記フロアパネルの上に設置されるもので、前記開口より大きい平面視形状を有し、洋式便器を設置したときその汚物流出口が配置される洋式便器用開口が形成され、前記洋式便器用開口は前記開口より小さい平面視形状を有し、前記フロアパネル上に設置されたとき前記開口全面を覆いかつ前記洋式便器用開口が前記開口の内側に位置することを特徴とする洋式便器設置用のアダプターパネル。
【請求項2】
前記アダプターパネルが前記フロアパネルの上で前記開口の左右に張り出していることを特徴とする請求項1に記載された洋式便器設置用のアダプターパネル。
【請求項3】
下面側に前記開口に嵌まる凸部を有し、前記凸部が形成された箇所に前記洋式便器用開口が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載された洋式便器設置用のアダプターパネル。
【請求項4】
下面後方側に固定爪、下面前方側に可動爪が設置され、前記固定爪は前記開口の後方側縁部から前記フロアパネルの下に差し入れられ、前記可動爪は進出又は後退自在で、進出させたとき前記開口の前方側縁部から前記フロアパネルの下に差し入れられるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載された洋式便器設置用のアダプターパネル。
【請求項5】
下面側に前記開口に嵌まる凸部を有し、前記凸部の下面後方側に固定爪、下面前方側に可動爪が設置され、前記固定爪は前記開口の後方側縁部から前記フロアパネルの下に差し入れられ、前記可動爪は進出又は後退自在で、進出させたとき前記開口の前方側縁部から前記フロアパネルの下に差し入れられるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載された洋式便器設置用のアダプターパネル。
【請求項6】
便槽の上に平らなフロアパネルが設置され、前記フロアパネルに前記便槽に通じる開口が形成され、前記フロアパネルの上に請求項1〜5のいずれかに記載されたアダプターパネルが設置され、前記アダプターパネル上に洋式便器が設置され、前記洋式便器の汚物流出口が前記洋式便器用開口内に配置され、前記フロアパネル上の前記洋式便器の背面側に水タンクが設置され、前記水タンク及び洋式便器の周囲が前面ドア付きの四角いボックスで囲繞されていることを特徴とする簡易水洗式の仮設洋式トイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、簡易水洗式の仮設和式トイレを、必要なとき簡単に洋式トイレに変更できるようにするための洋式トイレ用(洋式便器設置用)アダプターパネル、及び同アダプターパネルを使用した簡易水洗式の仮設洋式トイレに関する。
 
【背景技術】
【0002】
  工事現場や公園、イベント会場等に設営される簡易水洗式の仮設トイレは、レンタル業者が借り主側の注文に応じて和式又は洋式トイレを提供する。洋式トイレの注文は少ないが、レンタル会社としては一定数の洋式トイレを所持、保管しておく必要があり、その在庫負担が大きくなっている。また、和式トイレは完成した形(組み立てた状態)で用意されているものも多いが、洋式トイレの注文は少ないため、洋式トイレを完成した形で用意しておくことはほとんどなく、注文があったとき、洋式トイレを組み立てることが多い。特許文献1,2に簡易水洗式の仮設和式トイレの一例が記載されている。
【0003】
  一方、例えば特許文献3には、便器を設置するステップパネル(デッキパネル)の穴と、便槽に通じるフロアパネルの穴を和洋便器共用のものとし、和式便器を洋式便器に取り替えることにより、和式トイレを洋式トイレに変更することが記載されている。この方法が実施できれば、完成した形で用意されている和式トイレを利用し、和式便器を洋式便器に交換するだけで洋式トイレが得られるので、一から洋式トイレを組み立てる必要がなく、比較的容易に洋式トイレを用意することができると考えられる。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−292750号公報
【特許文献2】特開平8−24160号公報
【特許文献3】特開2005−232674号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  しかし、和式便器と洋式便器はその立体形状が大きく異なるから、一般的な仮設和式トイレにおいて、和式便器が設置されていたデッキパネルの穴に、そのまま洋式便器を設置することは現実には無理である。また、一般的な仮設和式トイレにおいて、フロアパネルの穴は洋式便器に適合しない。すなわち、和式便器は便器内部の前後方向の勾配が大きくとれないため便器の汚物流出口が前後に広く、またボックス内における位置が機種によって異なるから、フロアパネルの穴は一般に大きめに形成されており、この穴は洋式便器には大きすぎる。
【0006】
  本発明は、便槽の上に平らなフロアパネルが設置され、フロアパネルの上に水タンク兼デッキが設置され、水タンク兼デッキに和式便器が収容され、フロアパネルに便槽に通じる開口が形成され、和式便器の汚物流出口が前記開口内に配置され、周囲が前面ドア付きの四角いボックスで囲繞された一般的な簡易水洗式の仮設和式トイレを、必要に応じて洋式トイレに変更でき、かつその変更作業が容易に行えるようにすることを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0007】
  本発明は、前記のような簡易水洗式の仮設和式トイレを、洋式トイレに変更する際に使用する洋式便器設置用のアダプターパネルに関する。このアダプターパネルは、洋式便器を取り付けたうえでフロアパネルの上に設置されるもので、フロアパネルの開口より大きい平面視形状を有し、洋式便器の汚物流出口が配置される洋式便器用開口が形成され、前記洋式便器用開口はフロアパネルの開口より小さい平面視形状を有する。また、このアダプターパネルは、フロアパネル上に設置されたとき該フロアパネルの開口全面を覆い、かつ洋式便器用開口がフロアパネルの開口の内側に位置するようになっている。
【0008】
  前記アダプターパネルは、例えば次のような実施の形態をとることができる。
(1)アダプターパネルが前記フロアパネルの上で前記開口の左右に張り出している。
(2)下面側にフロアパネルの開口に嵌まる凸部を有し、この凸部が形成された箇所に前記洋式便器用開口が形成されている。
(3)下面後方側に固定爪、下面前方側に可動爪が設置され、前記固定爪は前記開口の後方側縁部から前記フロアパネルの下に差し入れられ、前記可動爪は進出又は後退自在で、進出させたとき前記開口の前方側縁部から前記フロアパネルの下に差し入れられるものである。
(4)前記アダプターパネルの凸部に、前記固定爪及び可動爪が設置されている。
【0009】
  アダプターパネルを用いて和式トイレから洋式トイレに変更された仮設トイレは、便槽の上に平らなフロアパネルが設置され、フロアパネルに便槽に通じる開口が形成され、フロアパネルの上に前記アダプターパネルが設置され、アダプターパネル上に洋式便器が設置され、洋式便器の汚物流出口がアダプターパネルの洋式便器用開口内に配置され、フロアパネル上の洋式便器の背面側に水タンクが設置され、水タンク及び
洋式便器の周囲がドア付きの四角いボックスで囲繞されたものとなる。
 
【発明の効果】
【0010】
  本発明によれば、一般的な簡易水洗式の仮設和式トイレを、必要に応じて洋式トイレに変更でき、かつその変更作業を容易に短時間で行うことができる。その逆も同様である。洋式トイレ用に所持保管するパーツも、洋式便器のほかは、該洋式便器を設置するアダプターパネル程度で済み、初期投資、保管場所、和式洋式の機種管理等のリスクが軽減される。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る簡易水洗式の仮設和式トイレの斜視図(ボックス省略)である。
 
【
図2】本発明に係る簡易水洗式の仮設洋式トイレの斜視図(ボックス省略)である。
 
【
図4】アダプターパネルの平面図(a)、側面図(b)及び底面図(c)である。
 
【
図5】フロアパネル上に設置したアダプターパネル及び周辺部の断面図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0012】
  以下、
図1〜5を参照して、本発明に係る洋式便器設置用のアダプターパネル、及び簡易水洗式の仮設洋式トイレについて説明する。
  
図1に示す簡易水洗式の仮設和式トイレは、便槽1と、便槽1の上に設置された平らなフロアパネル2と、フロアパネル2の上に設置された水タンク兼デッキ3と、水タンク兼デッキ3に収容された和式便器4と、フロアパネル2の周縁に沿って水タンク兼デッキ3及び和式便器4の周囲を囲繞する図示しない前面ドア付きの四角いボックス等を備える。水タンク兼デッキ3にはポンプ5が設置され、このポンプ5を踏むことにより水タンク兼デッキ3内の水が和式便器4内に流れ、洗浄する。和式便器4内に流れた水は、汚物と共に和式便器4の汚物流出口6を通り、便槽1内に流下する。汚物流出口6は筒状で下方に延び、フロアパネル2に形成された和式便器用開口7(
図3,5参照)内に配置されている。
 
【0013】
  図4に示すアダプターパネル8は、平面視で前方側(ボックスのドア側)が幅広に形成されて一定幅を有し、後方側(ボックスの奥側)は幅が次第に減少し略台形状をなし、略中央部に上下に貫通する洋式便器用開口9が形成されている。アダプターパネル8の左右幅は、特にその前方側において和式便器用開口7の左右幅よりかなり大きく、この例では倍以上の大きさに設定されている。これは、アダプターパネル8をフロアパネル2に設置した際に、フロアパネル2の上で和式便器用開口7の左右に大きく張り出させ、左右のぐらつきを防止するためである。この観点からいえば、アダプターパネル8の左右幅は広い方がより望ましく、例えばボックス内のスペースの左右幅の大部分(1/2以上)、好ましくは3/4以上を占める大きさ、一般的なサイズの仮設トイレであれば500mm以上に設定することが望ましい。上面前方側に少し凹んだ四角形の凹所11が形成され、ここにレバー12が水平揺動自在に配置されている。アダプターパネル8の下面略中央部に、下向きに突出した平面視略四角形の凸部13が形成され、凸部13の位置に前記洋式便器用開口9が形成されている。和式便器用開口7に比べると、洋式便器用開口9のサイズはかなり小さい。凸部13の略四角形の外縁13aのサイズは、フロアパネル2に形成された和式便器用開口7よりやや小さく、該和式便器用開口7に嵌るようになっている。
 
【0014】
  凸部13の下面前方側に少し凹んだ四角形の凹所14が形成され、ここに可動爪15が水平揺動自在に配置されている。可動爪15はピン16を介してレバー12と連結し、レバー12を揺動させると凹所14内で共に揺動し、これにより可動爪15を凸部13の外縁13aから前方側に突出させ(
図4(c)の状態)、又は前記外縁13aの内側に収容することができる。また、凸部13の下面後方側に先端を後方側に向けた固定爪17が固定され、その先端部は凸部13の外縁13aから後方側に突出している。
  なお、便槽1、フロアパネル2、水タンク兼デッキ3及びアダプターパネル8のそれぞれの本体部分は、例えばプラスチックのブロー成形体からなる。
 
【0015】
  図2に示す簡易水洗式の仮設洋式トイレは、
図1に示す仮設和式トイレの水タンク兼デッキ3を水タンク18に置き代え、和式便器4をアダプターパネル8上に設置した洋式便器19に置き換えたものである。洋式便器19の下端の図示しない汚物流出開口は、アダプターパネル8の洋式便器用開口9内に配置されている。水タンク18にはポンプ21が設置され、このポンプ21を押さえることにより水タンク18内の水が洋式便器19内に流れ、洗浄する。なお、水タンク18は、アダプターパネル8及び洋式便器19の後方側に沿うように湾曲した形状を有し、フロアパネル2上に配置される。  
 
【0016】
  図1に示す簡易水洗式の仮設和式トイレを
図2に示す洋式トイレに変更する場合、まず、水タンク兼デッキ3を和式便器4ごと、フロアパネル2上から取り外す。取り外した水タンク兼デッキ3及び和式便器4は、例えばボックスのドアから運び出す。
  次に、洋式トイレ用水タンク18をボックス内に運び入れ、フロアパネル2上の所定位置(
図2参照)に設置し、洋式便器19を上面に取り付けたアダプターパネル8を運び入れ、所定位置に設置する。具体的には、
図5を参照して説明すると(
図5において洋式便器19は図示省略)、可動爪15を内側に収容した状態で、アダプターパネル8の凸部13を、固定爪17,17を先にしてフロアパネル2の和式便器用開口7に斜めに嵌め入れ、固定爪17,17を和式便器用開口7の後方側の縁部からフロアパネル2の下に差し入れ、前記凸部13を和式便器用開口7に嵌め込む。これにより、アダプターパネル8はフロアパネル2上に水平に置かれる。続いて、レバー12を水平揺動させ、可動爪15を凸部12の外縁から前方側に突出させる。この取り付け作業に工具等は不要である。
 
【0017】
  なお、水タンク兼デッキ3及び和式便器4の運び出し、洋式トイレ用水タンク18と洋式便器19の運び入れは、ボックス後部から行ってもよい(特許文献3参照)。あるいは、水タンク兼デッキ3及び和式便器4の取り外し、洋式トイレ用水タンク18と洋式便器19の取り付け等を、ボックスを外した状態で行うこともできる。
  
図5に示すように、フロアパネル2の和式便器用開口7にアダプターパネル8の凸部13が嵌り、固定爪17,17が前記和式便器用開口7の後方側縁部においてフロアパネル2の下に差し入れられ、可動爪15が前記和式便器用開口7の前方側縁部においてフロアパネル2の下に差し入れられる。また、アダプターパネル8の左右幅を前記のとおり大きく設定したことで、
図2に示すように、アダプターパネル8が和式便器用開口7の左右においてフロアパネル2の上に広く張り出している(張り出し部8a)。以上の構成により、アダプターパネル8の前後方向及び左右方向のぐらつきが効果的に防止され、アダプターパネル8上に設置された洋式便器19が安定する。
 
 
【符号の説明】
【0018】
1  便槽
2  フロアパネル
3  水タンク兼デッキ
7  和式便器用開口
8  アダプターパネル
9  洋式便器用開口
13  凸部
15  可動爪
17  固定爪