(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態に係る回転式圧縮機と冷凍サイクル装置とを、
図1〜3を用いて説明する。
図1は、冷凍サイクル装置60を示す概略図である。
図1に示すように、冷凍サイクル装置60は、回転式圧縮機Kと、凝縮器20と、膨張装置21と、蒸発器22と、アキュームレータ23と、冷媒管Pとを備えている。冷媒管Pは、これらの装置を、記載の順番に連通している。
【0009】
回転式圧縮機Kは、本実施形態では、2つのシリンダを備える2シリンダタイプである。
図1には、回転式圧縮機Kを示す断面図が示されている。回転式圧縮機Kは、密閉ケース1と、電動機部2と、圧縮機構部3と、回転軸4と、主軸受7と、副軸受8とを備えている。
【0010】
電動機部2は、密閉ケース1に収容されており、密閉ケース1の上部に配置されている。圧縮機構部3は、密閉ケース1に収容されており、密閉ケース1の下部に配置されている。密閉ケース1の下部は潤滑油で満たされており、
圧縮機構部3の大部分は、潤滑油中に位置している。
【0011】
電動機部2と圧縮機構部3とは、互いに回転軸4を介して連結されている。回転軸4は、電動機部2が発生する動力を圧縮機構部3に伝達する。電動機部2が回転軸4を回転駆動することにより、圧縮機構部3が後述するようにガス冷媒を吸込んで圧縮しかつ吐出する。
【0012】
前記圧縮機構部3は、上部に第1のシリンダ5aを備え、下部に第2のシリンダ5bを
備えている。これら第1のシリンダ5aと第2のシリンダ5bとの間には、中間仕切り板
6が介在される。
【0013】
第1のシリンダ5aの上面には、主軸受7が重ねられて配置されている。主軸受7は、
密閉ケース1の内周壁に取付けられている。第2のシリンダ5bの下面には、副軸受8が重ねられて配置されている。副軸受8は、第2のシリンダ5bと中間仕切り板6とともに、ボルト70によって、第1のシリンダ5aに固定されている。
【0014】
回転軸4の中間部4aは、主軸受7に回転自在に枢支される。回転軸4の下端部4bは、副軸受8に回転自在に枢支される。回転軸4は、第1のシリンダ5aと中間仕切り板6と第2のシリンダ5bを貫通している。
【0015】
回転軸4は、第1の偏心部41と、第2の偏心部42とを備えている。第1の偏心部41は、第1のシリンダ5aの第1のシリンダ室10a内に収容されている。第2の偏心部42は、第2のシリンダ5bの第2のシリンダ室10b内に収容されている。第1の偏心部41と第2の偏心部42とは、同一直径を有するとともに、略180°の位相差を有しており、互いにずれて配置されている。
【0016】
第1の偏心部41の周面に第1のローラ9aが嵌合されて第1のシリンダ5aの第1のシリンダ室10a内に収容されている。第2の偏心部42の周面に第2のローラ9bが嵌合されて第2のシリンダ5b内の第2のシリンダ室10b内に収容されている。第1,第2のローラ9a,9bは、回転軸4の回転にともなって、それぞれ周壁の一部が、第1のシリンダ室10aおよび第2のシリンダ室10bの周壁に沿って接触しながら偏心運動する。
【0017】
第1のシリンダ室10aは、第1のシリンダ5aの内側の空間であり、主軸受7と中間仕切り板6とによって閉塞されることによって、形成されている。第2のシリンダ室10bは、第2のシリンダ5bの内側の空間であり、中間仕切り板6と副軸受8とによって閉塞されることによって、形成されている。
【0018】
第1のシリンダ室10aと第2のシリンダ室10bの直径および、回転軸4の軸方向に沿う長さである高さ寸法は、互いに同一に設定されている。第1のローラ9aは第1のシリンダ室10aに収容され、第2のローラ9bは第2のシリンダ室10bに収容される。
【0019】
主軸受7には、一対の吐出マフラ11が取り付けられている。これら一対の吐出マフラ11は、二重に重ねられる。各吐出マフラ11には、吐出孔が設けられる。吐出マフラ11は、主軸受7に設けられる吐出弁機構12aを覆っている。副軸受8には、吐出マフラ13が取付けられている。吐出マフラ13は、副軸受8に設けられる吐出弁機構12bを覆っている。吐出マフラ13には、吐出孔は設けられていない。
【0020】
主軸受7の吐出弁機構12aは、第1のシリンダ室10aに連通し、圧縮作用にともない第1のシリンダ室10a内の圧力が上昇して所定圧値に達したときに開放して、圧縮されたガス冷媒を吐出マフラ11内に吐出する。副軸受8の吐出弁機構12bは第2のシリンダ室10bに連通し、圧縮作用にともない第2のシリンダ室10b内の圧力が上昇して所定値に達したときに開放して、圧縮されたガス冷媒を吐出マフラ13へ吐出する。
【0021】
副軸受8と、第2のシリンダ5bと、中間仕切り板6と、第1のシリンダ5aおよび主軸受7とに亘って吐出ガス案内路が設けられる。この吐出ガス案内路は、第2のシリンダ室10bで圧縮され、吐出弁機構12bを介して吐出マフラ13へ吐出されたガス冷媒を上部側の二重の吐出マフラ11内へ案内する。
【0022】
第1のシリンダ5aには第1のベーン部51が設けられる。第1のベーン部51は、回転軸4の軸方向である第1のシリンダ5aの高さ方向に沿って配置される、第1のベーン51aと第2のベーン51bとを備えている。第2のベーン51bは、第1のベーン51aに対して、主軸受7側に配置される。
【0023】
第1,第2のベーン51a,51bの後端部には、後述するように1つのコイルスプリング16aの一端部が当接する。ここで言う後端部とは、第1,第2のベーン51a,51bにおいて第1のローラ9aに対して反対側の端部である。コイルスプリング16aは、第1,第2のベーン51a,51bの先端部が第1のローラ9aに当接するように、第1,第2のベーン51a,51bを第1のローラ9aに向って付勢する。第1,第2のベーン51a,51bに対する、コイルスプリング16aの取付構造については、後で具体的に説明する。
【0024】
第1のシリンダ5aには、第1のシリンダ室10a内に開放するベーン溝17aが設けられている。さらに、第1のシリンダ5aには、
ベーン溝17aの後端部にベーン背室18aが設けられている。
【0025】
ベーン溝17aには、第1のシリンダ5aの高さ方向に、第1,第2のベーン51a,51bが往復動自在に収容される。第1,第2のベーン51a,51bの先端部は、第1のシリンダ室10a内に対して突没自在であり、後端部はベーン背室18aに突没自在である。なお、ここで言う先端部とは、第1のローラ9a側の端部である。
【0026】
ベーン背室18aは、密閉ケース1内に開放している。このため、第1,第2のベーン51a,51bの後端には、密閉ケース1内の圧力が作用する。
【0027】
第1,第2のベーン51a,51bの先端部は、平面視で略円弧状に形成されている。これら先端部は、第1のシリンダ室10aに突出した状態で、平面視で円形状の第1のローラ9aの周壁に、第1のローラ9aの回転角度に拘わらず、線接触する。
【0028】
さらに、第1のシリンダ5aの外周壁には、スプリング収容孔19aが設けられている。スプリング収容孔19aは、
ベーン背室18aを介して第1のシリンダ室10aの手前まで設けられる。
【0029】
コイルスプリング16aは、スプリング収容孔19aに収容される。そして、コイルスプリング16aが圧縮機構部3として
組立てられると、コイルスプリング16aの一端部が密閉ケース1の内周壁に当接する。コイルスプリング16aの他端部は、第1,第2のベーン51a,51bに共に当接して、第1,第2のベーン51a,51bを、同時に押圧して第1のローラ9aに向って付勢する。
【0030】
第2のシリンダ5bには、第2のベーン部52が設けられる。第2のベーン部52は、回転軸4の軸方向である第2のシリンダ5bの高さ方向に沿って配置される、第1のベーン52aと第2のベーン52bとを備えている。第2のベーン52bは、第1のベーン52aに対して、副軸受8側に配置される。
【0031】
第1,第2のベーン52a,52bの後端部には、後述するように1つのコイルスプリング16bの一端部が当接する。ここで言う後端部とは、第1,第2のベーン52a,52bにおいて第2のローラ9bに対して反対側の端部である。コイルスプリング16bは、第1,第2のベーン52a,52bの先端部が第2のローラ9bに当接するように、第1,第2のベーン52a,52bを第2のローラ9bに向って付勢する。第1,第2のベーン52a,52bに対する、コイルスプリング16bの取付構造については、後で具体的に説明する。
【0032】
第2のシリンダ5bには、第2のシリンダ室10bに開放するベーン溝17bが設けられている。さらに、第2のシリンダ5bには、ベーン溝17bの後端部にベーン背室18bが設けられている。
【0033】
ベーン溝17bには、第2のシリンダ5bの高さ方向に、第1,第2のベーン52a,52bが往復動自在に収容される。第1,第2のベーン52a,52bの先端部は、第2のシリンダ室10b内に対して突没自在であり、後端部はベーン背室18bに突没自在である。なお、ここで言う先端部とは、第2のローラ9b側の端部である。
【0034】
ベーン背室18bは、密閉ケース1内に開放している。このため、第1,第2のベーン52a,52bの後端には、密閉ケース1内の圧力が作用する。
【0035】
第1,第2のベーン52a,52bの先端部は、平面視で略円弧状に形成されている。これら先端部は、第2のシリンダ室10bに突出した状態で、平面視で円形状の第2のローラ9bの周壁に、第2のローラ9bの回転角度に拘わらず、線接触する。
【0036】
さらに、第2のシリンダ5bの外周壁には、スプリング収容孔19bが設けられている。スプリング収容孔19bは、ベーン背室18bを介して第2のシリンダ室10bの手前まで設けられる。
【0037】
コイルスプリング16bは、スプリング収容孔19bに収容される。そして、コイルスプリング16bが圧縮機構部3として
組立てられると、コイルスプリング16bの一端部が密閉ケース1の内周壁に当接する。コイルスプリング16bの他端部は、第1,第2のベーン52a,52bに共に当接して、第1,第2のベーン52a,52bを、同時に押圧して第2のローラ9bに向って付勢する。
【0038】
コイルスプリング16aは、密閉ケース1内の圧力が低い状態であって密閉ケース1内の圧力だけでは第1,第2のベーン51a,51bを第1のローラ9aに対して十分に押し付けられずそれゆえ第1のシリンダ室10a内を吸込み側と圧縮側とに区画することができない場合に付勢力を補助するために設けられている。コイルスプリング16bも同様である。
【0039】
密閉ケース1の上端部には吐出用の冷媒管Pが接続される。この冷媒管Pには、凝縮器20と膨張装置21と蒸発器22およびアキュームレータ23が、順次連通するよう設けられる。
【0040】
アキュームレータ23から2本の吸込み用の冷媒管P,Pが延出され回転式圧縮機Kにおける密閉ケース1を貫通して第1のシリンダ室10aおよび第2のシリンダ室10bに接続されている。このようにして、冷凍サイクル装置の冷凍サイクル回路Rが構成される。
【0041】
図2は、第1のシリンダ室10aとその近傍を示す平面図である。第2のシリンダ室10bの平面形状とその近傍とも同様であるので、
図2では、第2のシリンダ室10bとその近傍に配置される構成の符号を、括弧内にして第1のシリンダ室10aとその近傍の構成の符号に併記することによって、
図2を第2のシリンダ室10bとその近傍の構成の説明にも用いる。
【0042】
図2に示すように、密閉ケース1と第1のシリンダ5aの外周壁から第1のシリンダ室10aに亘って、吸込み用孔25が設けられる。同様に、密閉ケース1と第2のシリンダ5bの外周壁から第2のシリンダ室10bに亘って、吸込み用孔25が設けられる。
【0043】
両吸込み用孔25には、アキュームレータ23から分岐された吸込み用の冷媒管Pが挿入されて固定される。第1,第2のシリンダ5a,5bでは、第1,第2のベーン部51,52と
ベーン溝17a,17bを挟んで第1,第2のシリンダ5a,5bの円周方向一方側に
吸込み用孔25が設けられ、他方側に吐出弁機構12a,12bに連通する吐出孔26が設けられる。
【0044】
このようにして構成される回転式圧縮機Kは、電動機部2に通電され回転軸4が回転駆
動すると、第1のシリンダ室10aにおいて第1,第2のベーン51a,51bの後端に密閉ケース1内の圧力とコイルスプリング16aの付勢力とが作用して第1,第2のベーン51a,51bが第1のローラ9aの周壁に弾性的に当接するとともに第1のローラ9aが偏心運動を行う。
【0045】
同様に、第2のシリンダ室10bにおいて第1,第2のベーン52a,52bの後端に密閉ケース1内の圧力とコイルスプリング16bの付勢力とが作用して第1,第2のベーン52a,52bが第2のローラ9bの周壁に弾性的に当接し、第2のローラ9bが偏心運動を行う。
【0046】
第1,第2のローラ9a,9bの偏心運動にともない、吸込み用の冷媒管Pから、第1,第2のベーン部51,52によって区画された第1,第2のシリンダ室10a,10bの吸込み側にガス冷媒が吸込まれる。さらに、ガス冷媒は、第1,第2のベーン部51,52によって区画された、第1,第2のシリンダ室10a,10bの圧縮側へ移動し圧縮される。圧縮側の容積が小さくなりガス冷媒の圧力が所定圧にまで上昇したとき、ガス冷媒は吐出孔26から吐出弁機構12a、12bへ吐出される。
【0047】
上部側において重ねられて配置される2つの吐出マフラ11内において、第1のシリンダ室10aから吐出されたガス冷媒と、第2のシリンダ室10bから吐出されたガス冷媒が合流する。そして、この合流したガス冷媒は、密閉ケース1内に放出される。密閉ケース1内に放出されたガス冷媒は、電動機部2を構成する部品相互間に設けられるガス案内路を介して
密閉ケース1の上端部に充満し、冷媒管Pから回転式圧縮機Kの外部へ吐出される。また、圧縮されたガス冷媒の圧力は、第1,第2のベーン部51,52において、第1,第2のベーン51a,51bと第1,第2のベーン52a,52bとの後端に作用する
。
高圧のガス冷媒は、凝縮器20に導かれて凝縮し、液冷媒に変る。この液冷媒は膨張装置21に導かれて断熱膨張し、蒸発器22に導かれて蒸発しガス冷媒に変る。蒸発器22において周囲の空気から蒸発潜熱を奪い、冷凍作用をなす。
【0048】
回転式圧縮機Kが空気調和機に搭載されていれば、冷房作用をなす。さらに、冷凍サイ
クルにおける回転式圧縮機Kの吐出側に四方切換え弁を備えてヒートポンプ式冷凍サイクル回路を構成してもよい。四方切換え弁を切換え冷媒の流れを逆に切換えて、回転式圧縮機Kから吐出されたガス冷媒を直接、室内熱交換器へ導くように構成すれば、暖房作用をなす。
【0049】
また、回転式圧縮機Kの運転によって密閉ケース1内の圧力が高くなるにつれて、第1,第2のベーン51a,51bの第1のローラ9aに対する押付力が大きくなる。同様に、第1,第2のベーン52a,52bの第2のローラ9bに対する押付力が大きくなる。
【0050】
ここで、第1のベーン部51の第1,第2のベーン51a,51bと、第2のベーン部52の第1,第2のベーン52a,52bと、第1,第2のベーン51a,51bに対するコイルスプリング16aの取付構造と、第1,第2のベーン52a,52bに対するコイルスプリング16bの取付構造について、具体的に説明する。
【0051】
図3は、第1,第2のシリンダ5a,5bの近傍を拡大して示す断面図である。第1のベーン部51における、第1,第2のベーン51a,51bの高さH11,H12について説明する。第1のベーン51aの高さH11は、第1のベーン51aにおいて回転軸4の軸線に沿う長さである。第2のベーン51bの高さH12は、第2のベーン51bにおいて回転軸4の軸線に沿う長さである。高さH12は、高さH11よりも小さく、H12<H11となる。言い換えると、第1,第2のベーン51a,51bのうち、回転軸4を支持する主軸受7側に配置されるベーンの高さは、他方に比べて低い。
【0052】
次に、第2のベーン部52における、第1,第2のベーン52a,52bの高さH21,H22について説明する。第1のベーン52aの高さH21は、第1のベーン52aにおいて回転軸4の軸線に沿う長さである。第2のベーン52bの高さH22は、第2のベーン52bにおいて回転軸4の軸線に沿う長さである。高さH22は、高さH21よりも小さく、H22<H21となる。言い換えると、第1,第2のベーン52a,52bのうち、回転軸4を支持する副軸受8側に配置されるベーンの高さは、他方に比べて低い。
【0053】
図3中の範囲F31内に拡大して示すように、第1のベーン部51の第1,第2のベーン51a,51bを付勢するコイルスプリング16aは、その中心線C1が、第1のシリンダ5aの高さ方向の中心Xより、高さが低い第2のベーン51b側に位置するように、配置されている。なお、範囲F31は、第1,第2のベーン51a,51bにおいてコイルスプリング16aが取り付けられる部分を拡大して示している。
【0054】
第1のベーン51a,51bの後端部には、それぞれ、
コイルスプリング16aの一端が嵌るコイルスプリング取付溝30aが形成されている。
コイルスプリング16aがコイルスプリング取付溝30aに嵌ったときに、コイルスプリング16aの中心線C1は、第1のシリンダ5aの高さ方向の中心Xに対して第2のベーン51b側に寄って配置されている。このため、スプリング収容孔19aは、上述の位置にコイルスプリング16aが配置されるように形成される。これにより、第1,第2のベーン51a,51bの高さ寸法が異なっても、巻径の小さな1本のコイルスプリング16aで安定して付勢することができる。
【0055】
図3中の範囲F32内に拡大して示すように、第2のベーン部52の第1,第2のベーン52a,52bを付勢するコイルスプリング16bは、その中心線C2が、第2のシリンダ5bの高さ方向の中心Yより、高さが低い第2のベーン52b側に位置するように、配置されている。
なお、第1のベーン52a,52bの後端部のそれぞれには、
コイルスプリング16bの一端が嵌るコイルスプリング取付溝30bが形成されている。
コイルスプリング16bがコイルスプリング取付溝30bに嵌ったときに、
コイルスプリング16bの中心線C2は、第2のシリンダ5bの高さ方向の中心Yに対して第2のベーン52b側に寄って配置されている。このため、スプリング収容孔19bは、上述の位置に
コイルスプリング16bが配置されるように形成される。これにより、第1,第2のベーン52a,52bの高さ寸法が異なっても、巻径の小さな1本の
コイルスプリング16bで安定して付勢することができる。
【0056】
このように構成される回転式圧縮機Kでは、第1,第2のベーン部51,52において軸受側に配置される第2のベーン51bと第2のベーン52bとの摩耗の程度が、第1のベーン51aと第1のベーン52aに対して進むことを抑制できる。この点について具体的に説明する。
【0057】
第1,第2のシリンダ5a,5bの構成など様々な要因により、シリンダの高さ方向に2つのベーンを設けても、軸受側に配置されるベーンがローラに対して片当たりし、それゆえ、他方のベーンに比べて摩耗の程度が進む傾向になる。
【0058】
本実施形態
によると、第1のシリンダ5aでは、主軸受7側に配置される第2のベーン51bの高さH12は、他方の第1のベーン51aの高さH11よりも低い。このため、第2のベーン51bに対して作用する第1のローラ9aへの押し付け力は、第1のベーン51aに対して作用する第1のローラ9aへの押し付け力よりも小さくなる。これは、高さH12が高さH11よりも低いことにより、第2のベーン51bの後端の面積が第1のベーン51aの後端の面積よりも小さくなるためである。面積が小さくなることによって、密閉ケース1内の
ガス冷媒の圧力が作用する面積が小さくなり、それゆえ、第2のベーン51bに作用する押し付け力が、第1のベーン51aに作用する押し付け力よりも小さくなる。
【0059】
第2のベーン51bに作用する押付力が第1のベーン51aに作用する押付力よりも小さくなることによって、第2のベーン51bが上述のように第1のローラ9aに対して片当たりしても、当該片当たりする部分に作用する荷重が小さくなるので、摩耗の発生を抑制することができる。言い換えると、ベーンの先端部が摩耗することを抑制できる
。
これは、第2のシリンダ5bにおいても同様であり、それゆえ、第2のシリンダ5bにおいて副軸受8側に配置される第2のベーン52bの摩耗の程度が、第1のベーン52aに対して進むことが抑制される。言い換えると、ベーンの先端部が摩耗することを抑制できる
。
また、
ガス冷媒の圧力が上昇していない状態において第1のベーン部51の第1,第2のベーン51a,51bを第1のローラ9aに押し付けるために、1つのコイルスプリング16aが用いられる。
1つのコイルスプリング16aを共通して用いるため、部品点数を削減することができる。同様に第2のベーン部52においても1つのコイルスプリング16bを第1,第2のベーン52a,52bに対して共通して用いることによって、部品点数を削減することができる。
【0060】
また、第1のベーン部51では、
コイルスプリング16aの中心線C1は、第1のシリンダ5aの高さ方向の中心Xに対して第2のベーン51b側に寄っている。
【0061】
これにより、第1,第2のベーン52a,52bの高さ寸法が異なっても、巻径の小さな1本のコイルスプリング16aで安定して付勢することができる。
【0062】
このように、第2のベーン51bの摩耗の程度が第1のベーン51aに対して進むことを抑制できる。
【0063】
これは、第2のベーン部52においても同様である。このため、第2のベーン部52では、
第2のベーン52bの摩耗の程度が、第1のベーン52aに対して進むことを抑制できる。
【0064】
本実施形態では、密閉ケース1内に開放するベーン背室18aは、第1,第2のベーン51a,51bにおいて第1のローラ9aに対して反対側端部に密閉ケース1内の圧力を導く圧力供給手段の一例である。同様に、密閉ケース1内に開放するベーン背室18bは、第1,第2のベーン52a,52bにおいて第2のローラ9bに対して反対側端部に密閉ケース1内の圧力を導く圧力供給手段の一例である。
【0065】
本実施形態では、電動機部は、駆動部の一例である。
【0066】
これらの実施形態によれば、ベーンの先端部が摩耗することを抑制できる回転式圧縮機を提供することができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。