特許第6078413号(P6078413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078413
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】工具交換方法及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/155 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   B23Q3/155 F
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-95439(P2013-95439)
(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公開番号】特開2014-213439(P2014-213439A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】宮本 敏
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−264234(JP,A)
【文献】 特開2000−198039(JP,A)
【文献】 特開2007−237305(JP,A)
【文献】 特開平06−063833(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/060386(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155 − 3/157
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具が取り付けられる主軸と、前記主軸を移動させる送り機構と、前記主軸を回転させる主軸回転駆動機構と、複数の工具を保持して格納する工具マガジンと、両端部に把持部が設けられ、前記主軸に取り付けられる工具と待機位置の保持部に保持される工具との間に配設された工具交換アームと、前記工具交換アームを、前記主軸の軸線と平行な軸周りに回転させるアーム回転駆動機構と、前記工具と工具交換アームの把持部とが非接触となる状態を検出する検出機構と、前記送り機構、主軸回転駆動機構及びアーム回転駆動機構の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記主軸を工具交換位置に移動させる処理と、
前記主軸に取り付けられた工具と、待機位置の保持部に保持された工具とを前記把持部で把持する処理と、
前記主軸及び保持部から工具を取り外した後、両工具の位置を入れ替えるように前記工具交換アームを180°回転させて、位置を入れ替えた2つの工具を主軸及び保持部に取り付ける処理と、
前記主軸に取り付けられた交換後の工具の把持を解除する処理と、
前記主軸の回転を開始させる処理と、
前記主軸を加工位置に移動させる処理とを行い、
前記主軸の回転を開始させる処理は、前記検出機構による検出結果を基に、前記主軸に取り付けられた交換後の工具と工具交換アームの把持部とが非接触となった時点で行い、
前記主軸を加工位置に移動させる処理は、前記主軸の回転を開始させる処理と同時に、又は前記主軸の回転を開始させる処理を行った後に行うように構成されていることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記検出機構は、前記工具交換アームの角度位置を検出する角度位置検出器を有し、前記角度位置を基に、前記工具と工具交換アームの把持部とが非接触となる状態を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の工作機械。
【請求項3】
前記検出機構は、前記主軸に対する工具交換アームの位置を検出する位置検出器を有し、前記位置を基に、前記工具と工具交換アームの把持部とが非接触となる状態を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の工作機械。
【請求項4】
前記把持部は、前記工具交換アームの端部に形成された固定爪と、該固定爪と対向して配設された可動爪とを有し、前記固定爪と可動爪とによって工具を把持するように構成されており、
前記検出機構は、前記可動爪の進退位置を検出する進退位置検出器を有し、前記進退位置を基に、前記工具と工具交換アームの把持部とが非接触となる状態を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の工作機械。
【請求項5】
前記検出機構は、前記主軸に取り付けられた工具、主軸、工作機械の機体及び工具交換アームの把持部の間における電気的閉ループの形成を検出する検出器を有し、前記電気的閉ループが形成されているか否かを基に、前記工具と工具交換アームの把持部とが非接触となる状態を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の工作機械。
【請求項6】
工具が取り付けられる主軸と、複数の工具を保持して格納する工具マガジンと、両端部に把持部が設けられ、前記主軸の軸線と平行な軸周りに回転する工具交換アームとを備えた工作機械における工具交換方法であって、
前記主軸を工具交換位置に移動させた後、
前記主軸に取り付けられた工具と、待機位置の保持部に保持された工具とを前記把持部によって把持し、
ついで、前記主軸及び保持部から工具を取り出した後、前記工具交換アームを180°回転させ、前記2つの工具の位置を入れ替えて、前記位置を入れ替えた工具を主軸及び保持部に取り付け、
この後、前記主軸に取り付けられた交換後の工具の把持を解除し、
解除後、前記主軸を加工位置に移動させる工具交換方法において、
前記主軸に取り付けられた工具と工具交換アームの把持部とが非接触となる状態を検出する一方、前記主軸に取り付けられた交換後の工具と工具交換アームの把持部とが非接触な状態となった時点で、前記主軸の回転を開始させ、
前記主軸の回転を開始させると同時に、又は前記主軸の回転を開始させた後に前記主軸を加工位置に移動させるようにしたことを特徴とする工作機械における工具交換方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の主軸に取り付けられた工具を他の工具に交換する工具交換方法、及びこの工具交換方法によって工具を交換しながら、ワークを加工する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マシニングセンタなどでは、加工対象物たるワークの形状や、このワークに対して加工を施す際の加工方法に応じて、工具マガジンに格納された複数の工具の中から最適な工具を選択し、自動工具交換装置(ATC装置)を用いて、主軸への着脱を自動で行うようにしており、主軸への工具の着脱を自動で行う装置としては、特開昭63−123646号公報に開示された工具交換装置などが提案されている。
【0003】
この従来の工具交換装置は、主軸台に回転自在に支持された第1スリーブ、この第1スリーブと一体に回転されるとともに、軸方向に摺動自在に支持された第2スリーブ、この第2スリーブの先端に固定され、工具把持爪を有する旋回アーム、主軸台に回転自在に支持されたモータにより回転駆動される回転軸、この回転軸の回転に基づいて作動される第1カムに従動して第1スリーブを回動させるカムインデックス機構、回転軸の回転に基づいて作動される第2カムに従動して第2スリーブを軸方向に往復動させる軸送り機構、同様に、回転軸の回転に基づいて作動される第4カムに従動して主軸の工具脱着装置を駆動し、工具をクランプ/アンクランプ状態とする工具脱着装置駆動機構などを備えている。
【0004】
そして、この工具交換装置によれば、まず、1つの加工を終えた主軸をATC原点位置(工具交換位置)と称される工具交換が可能な位置に移動させ、主軸の回転を停止させるとともに、工具マガジン内に収納されたツールポットの内、次工具が保持されたツールポットが工具交換可能な位置に割り出される。次に、駆動軸を回転させることにより、カムインデックス機構によって第1スリーブ及び第2スリーブを介し旋回アームを原位置から所定方向に旋回させる。これにより、軸送り機構によって旋回アームが固定された第2スリーブが上昇するとともに、主軸に取り付けられている現工具とツールポットに保持されている次工具とが工具把持爪によって把持される。
【0005】
ついで、工具把持爪によって両工具を把持した状態で、旋回アームを更に所定方向に旋回させることにより、主軸に取り付けられた工具が工具脱着装置駆動機構によってアンクランプ状態になるとともに、軸送り機構によって第2スリーブが下降して、現工具及び次工具が主軸及びツールポットからそれぞれ抜き取られる。しかる後、旋回アームを更に同方向に旋回させることにより、第2スリーブが上昇、即ち旋回アームが上昇して、主軸及びツールポットに次工具及び現工具がそれぞれ取り付けられ、主軸に取り付けられた工具がクランプ状態となる。その後、旋回アームを旋回させて、工具把持爪による次工具及び現工具の把持を解除し、旋回アームを原位置に戻すことで、一連の工具交換処理が終了する。
【0006】
ところで、上記従来の工具交換装置では、旋回アームとの干渉を避けるために、工具交換中は主軸を備える主軸頭を工具交換位置に停止させるようにし、工具交換完了後に主軸頭を、加工を開始する位置(加工位置)に移動させるようにしていた。しかしながら、工具交換完了後に主軸頭を移動させているため、工具交換が終了するまで次加工に移ることができず、次加工までの待機時間が発生していた。
【0007】
そこで、上記待機時間を短縮する技術として、旋回アームと主軸頭との間に干渉の虞がないと判断した場合には、旋回アームが原位置に戻る前に主軸頭を移動させ、主軸頭の移動とともに、主軸の回転を開始する工具交換システムが提案されている(特開2007−237305号公報)。
【0008】
このように、旋回アームが原位置に戻る前に、即ち、工具交換が完了する前に、主軸頭を移動させるとともに、主軸の回転を開始させるようにすることで、次加工までの待機時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−123646号公報
【特許文献2】特開2007−237305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記工具交換システムにおいて、主軸に次工具を取り付けた後、主軸を加工位置に向けて移動させる際には、主軸と旋回アームとの衝突を回避するために、主軸を接線方向に沿って、旋回アームから遠ざけるように移動させなければならない。
【0011】
ところが、工作機械の中には、主軸に次工具を取り付けた後、主軸を加工位置に向けて移動させる際に、主軸を当該主軸の軸線に沿った方向に移動させる構成となっているものなどがあり、このように構成された工作機械においては、主軸と旋回アームとの衝突を回避するために、旋回アームを原位置に戻した後でなければ、主軸頭の移動及び主軸の回転を開始することができない。
【0012】
つまり、上記工具交換システムは、主軸に次工具を取り付けた後、旋回アームから遠ざけるように主軸を接線方向に沿って移動させる場合にのみ次加工までの待機時間を短縮することができるにすぎず、他の場合については、待機時間が発生するという問題が依然として残されている。また、特許文献2には、他の場合における、次加工までの待機時間を短縮する具体的な方法及び手段について何ら開示されていない。
【0013】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、主軸を加工位置に向けて移動させる際の方向に左右されることなく、待機時間を短縮することができる工具交換方法、及びこの工具交換方法によって工具を交換しながら、ワークを加工する工作機械の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、
工具が取り付けられる主軸と、前記主軸を移動させる送り機構と、前記主軸を回転させる主軸回転駆動機構と、複数の工具を保持して格納する工具マガジンと、両端部に把持部が設けられ、前記主軸に取り付けられる工具と待機位置の保持部に保持される工具との間に配設された工具交換アームと、前記工具交換アームを、前記主軸の軸線と平行な軸周りに回転させるアーム回転駆動機構と、前記工具と工具交換アームの把持部とが非接触となる状態を検出する検出機構と、前記送り機構、主軸回転駆動機構及びアーム回転駆動機構の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記主軸を工具交換位置に移動させる処理と、
前記主軸に取り付けられた工具と、待機位置の保持部に保持された工具とを前記把持部で把持する処理と、
前記主軸及び保持部から工具を取り外した後、両工具の位置を入れ替えるように前記工具交換アームを180°回転させて、位置を入れ替えた2つの工具を主軸及び保持部に取り付ける処理と、
前記主軸に取り付けられた交換後の工具の把持を解除する処理と、
前記主軸の回転を開始させる処理と、
前記主軸を加工位置に移動させる処理とを行い、
前記主軸の回転を開始させる処理は、前記検出機構による検出結果を基に、前記主軸に取り付けられた交換後の工具と工具交換アームの把持部とが非接触となった時点で行い、
前記主軸を加工位置に移動させる処理は、前記主軸の回転を開始させる処理と同時に、又は前記主軸の回転を開始させる処理を行った後に行うように構成されている工作機械に係る。
【0015】
また、上記課題を解決するための本発明は、
工具が取り付けられる主軸と、複数の工具を保持して格納する工具マガジンと、両端部に把持部が設けられ、前記主軸の軸線と平行な軸周りに回転する工具交換アームとを備えた工作機械における工具交換方法であって、
前記主軸を工具交換位置に移動させた後、
前記主軸に取り付けられた工具と、待機位置の保持部に保持された工具とを前記把持部によって把持し、
ついで、前記主軸及び保持部から工具を取り出した後、前記工具交換アームを180°回転させ、前記2つの工具の位置を入れ替えて、前記位置を入れ替えた工具を主軸及び保持部に取り付け、
この後、前記主軸に取り付けられた交換後の工具の把持を解除し、
解除後、前記主軸を加工位置に移動させる工具交換方法において、
前記主軸に取り付けられた工具と工具交換アームの把持部とが非接触となる状態を検出する一方、前記主軸に取り付けられた交換後の工具と工具交換アームの把持部とが非接触な状態となった時点で、前記主軸の回転を開始させ、
前記主軸の回転を開始させると同時に、又は前記主軸の回転を開始させた後に前記主軸を加工位置に移動させるようにした工作機械における工具交換方法に係る。
【0016】
上記工作機械によれば、まず、主軸に取り付けられた工具(現工具)によってワークに加工を施した後、工具の交換が行われる位置たる工具交換位置に送り機構によって主軸を移動させる。また、工具マガジンに保持された複数の工具の内、次加工で用いる工具(次工具)が、保持部とともに待機位置に割り出される。
【0017】
ついで、現工具と次工具とを工具交換アームの把持部で把持する。尚、工具交換アームの把持部によって2つの工具を把持する方法は、工具交換アームの形状などに応じて適切な方法を採用すれば良い。具体例としては、S型形状の工具交換アームを回転させることによって把持部を両工具に向けて振り込んで把持する方法や、H型形状の工具交換アームに向けて主軸を移動させた後、両工具を把持する方法などが挙げられる。尚、H型形状の工具交換アームに向けて主軸を移動させる方法においては、工具交換アームの一方端側の把持部の位置が前記工具交換位置となる。
【0018】
次に、主軸及び保持部からそれぞれ工具を取り出し、工具交換アームを180°回転させて、現工具と次工具との位置を入れ替えて、位置を入れ替えた2つの工具を主軸及び保持部にそれぞれ取り付ける。これにより、主軸に次工具が装着され、主軸に取り付けられていた現工具が保持部によって保持された状態となる。尚、工具の取り出し及び工具の取り付けは、工具交換アームの回転と連動して行われるようにしても良いし、それぞれ個別に行われるようにしても良い。
【0019】
しかる後、主軸に取り付けられた交換後の工具(次工具)の把持を解除する。この際、検出機構によって主軸に取り付けられた次工具と工具交換アームの把持部とが非接触となる状態を検出するようにして、非接触な状態となった時点で、主軸の回転を開始する。そして、主軸の回転を開始すると同時に、又は主軸の回転を開始した後に、加工を開始する位置たる加工位置に主軸を移動させ、工具交換が完了する。
【0020】
このように、本発明に係る工作機械においては、主軸に取り付けられた次工具と工具交換アームの把持部とが非接触となる状態を検出するようにして、非接触な状態となった時点で主軸の回転を開始するようにしている。したがって、主軸を加工位置に向けて移動させる際の方向に左右されることなく、主軸の回転を開始して加工開始までの待機時間を短縮することができる。
【0021】
尚、前記検出機構は、前記工具交換アームの角度位置を検出する角度位置検出器を有し、前記角度位置を基に、工具と工具交換アームの把持部とが非接触となる状態を検出するように構成を採用することができる。この場合、例えば、工具の寸法や把持部の形状などに基づき、工具と把持部とが非接触な状態となる工具交換アームの角度位置を予め設定し、検出した角度位置と設定した角度位置とを比較して非接触となる状態を検出することができる。
【0022】
また、主軸に対する工具交換アームの位置を検出する位置検出器を有し、この検出した位置を基に、工具と工具交換アームの把持部とが非接触となる状態を検出する構成を採用しても良い。この場合も、工具の寸法や把持部の形状などに基づき、前記非接触な状態となる位置を予め設定し、検出した位置と設定した位置とを比較して非接触となる状態を検出することができる。
【0023】
更に、前記把持部を、工具交換アームの両端に形成された固定爪と、この固定爪と対向して配設された可動爪とを有し、前記固定爪と可動爪とによって工具を把持するように構成するとともに、前記検出機構を、可動爪の進退位置を検出する進退位置検出器を有し、前記進退位置を基に、工具と工具交換アームの把持部とが非接触となる状態を検出するように構成しても良い。この場合も、上記と同様に、非接触な状態となる可動爪の進退位置を予め設定し、検出した進退位置と設定した進退位置とを比較することで、非接触となる状態を検出することができる。
【0024】
また、前記検出機構は、主軸に取り付けられた工具、主軸、工作機械の機体及び工具交換アームの把持部の間における電気的閉ループの形成を検出する検出器を有し、電気的閉ループが形成されているか否かを基に、工具と工具交換アームの把持部とが非接触となる状態を検出する構成を採用しても良い。この場合、工具と工具交換アームの把持部とが接触した状態では電気的閉ループが形成されるが、非接触な状態となることによって電気的閉ループが形成されなくなるため、電気的閉ループの形成を検出することで、非接触となる状態を検出することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係る工具交換方法及び工作機械によれば、主軸を加工位置に向けて移動させる際の方向がどのような方向であっても、主軸の回転を開始して待機時間を短縮することができ、延いては全体の加工時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械を示した正面図である。
図2図1の矢示A方向から見た側面図である。
図3】工具交換アームを一部断面で示した平面図である。
図4図3の矢示B−B間の断面図である。
図5】第1実施形態に係る工作機械における工具交換の手順を示したフローチャートである。
図6】第1実施形態に係る工作機械における工具交換の手順を示したフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態に係る工作機械の一部を拡大して示した正面図である。
図8】第2実施形態に係る工作機械における工具交換の手順を示したフローチャートである。
図9】本発明の第3実施形態に係る工作機械における工具交換アームを一部断面で示した正面図である。
図10】第3実施形態に係る工作機械における工具交換の手順を示したフローチャートである。
図11】本発明の第4実施形態に係る工作機械の一部を示した正面図である。
図12】第4実施形態に係る工作機械における工具交換の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
[第1実施形態]
図1図4に示すように、第1実施形態に係る工作機械1は、立形のマシニングセンタであり、ベッド2と、このベッド2上に立設されたコラム3と、このコラム3に支持され、上下方向に移動可能となった主軸頭4と、この主軸頭4によって、その軸中心に回転自在に支持された主軸5と、この主軸5の下方のベッド2上に配設されたテーブル6と、主軸頭4を移動させる送り機構7と、主軸5を回転させる主軸回転駆動機構8と、主軸頭4の側方に配設された工具マガジン10と、この工具マガジン10の下端部に設けられ、主軸5に取り付けられた工具Tと工具マガジン10のツールポット11に格納された工具T’とを交換する工具交換機構20と、これら各部の作動を制御する制御装置40とから構成されている。
【0029】
前記工具マガジン10は、工具T’が保持された複数のツールポット11と、外周部にツールポット11が一定間隔で保持された円板状の保持プレート12と、ツールポット11と保持プレート12とを取り囲み、下部に開口部13aが形成されたカバー体13とからなる。また、前記保持プレート12は、適宜回転駆動機構(図示せず)によって中心軸周りに回転駆動されるようになっており、保持プレート12を回転させることによって、この保持プレート12に保持されたツールポット11の中から所望の工具T’が保持されたツールポット11を、前記カバー体13の開口部13a(以下、「割出位置」という)に割り出すことができる。更に、割出位置に割り出されたツールポット11は、適宜旋回機構(図示せず)によって、垂直面内で旋回され、主軸5に対して平行となる待機位置に移送されるようになっており、待機位置に移送されたツールポット11は、前記旋回機構によって、同様に垂直面内で旋回され、割出位置に再度移送されるようになっている。
【0030】
前記工具交換機構20は、前記主軸5と前記待機位置に移送されたツールポット11との中間に、その軸線が主軸5の軸線と平行となるように配設され、下端部に収納穴21aが形成された回転軸21と、カム機構22を介して回転軸21を軸中心に回転させるアーム回転駆動機構たる駆動モータ23と、この駆動モータ23に設けられた角度位置検出器24と、工具T,T’を把持する把持部26が両端に形成され、前記回転軸21の下端部に固設された工具交換アーム25と、把持部26に把持された工具T,T’の把持状態を固定する固定機構30とからなる。尚、前記回転軸21は、駆動モータ23からカム機構22に回転動力が伝達されることにより、その軸中心に回転するとともに、その軸方向に上下動するようになっており、工具交換アーム25は回転軸21とともに回転及び上下動する。そして、工具交換アーム25は、図1に示した状態、即ち把持位置に位置している状態において最も上昇・下降した位置となるようになっている。
【0031】
また、前記角度位置検出器24は、駆動モータ23に連結されたロータリーエンコーダなどからなり、駆動モータ23の回転位置を基に回転軸21の角度位置、即ち、工具交換アーム25の角度位置を検出し、検出結果を前記制御装置40に送信するように構成されている。
【0032】
前記工具交換アーム25の把持部26は、工具交換アーム25の両端部に形成された平面視円弧状の固定爪26aと、この固定爪26aに対向した状態で、ピン27によって工具交換アーム25の本体に支持された可動爪26bとからなり、可動爪26bは、ピン27を中心として揺動するようになっている。尚、工具交換アーム25の本体には、回転軸21が挿通される貫通孔25aに連通するとともに、可動爪26bと対向する部分に開口した案内孔25bが形成されている。
【0033】
前記固定機構30は、一端側に大径部31a、他端側に小径部31bが形成され、大径部31aの先端が可動爪26bに押し当てられた状態で、工具交換アーム25の案内孔25b内に進退自在に収納された付勢ロッド31と、前記回転軸21の収納穴21a内に進退自在な状態で収納され、付勢ロッド31の後退動作を規制する規制ロッド33とから構成されている。
【0034】
前記付勢ロッド31は、小径部31bに付勢ばね32が巻回され、この付勢ばね32によって、上述したように大径部31aの先端が可動爪26bに押し付けられており、これにより、可動爪26bがピン27の周り固定爪26bに向けて揺動され付勢された状態となっている。
【0035】
前記規制ロッド33は、上端側から順に、被押当部34、小径部35、大径部36が形成されており、大径部36には、下端面に開口した収納穴36aが形成され、この収納穴36a内に配設された付勢ばね37によって上方に向けて付勢されている。そして、この規制ロッド33は、工具交換アーム25が下降し、付勢ばね37によって上方に向けて付勢されている状態において、付勢ロッド31における小径部31bの後端が大径部36に当接するようになっており、これにより、付勢ロッド31はその後退動作が規制され、可動爪26bが固定された状態となる。尚、以下、この状態を「固定状態」という。一方、この規制ロッド33は、工具交換アーム25が上昇して、付勢ばね37による付勢力以上の力でもって適宜押当部材が被押当部34に押し当てられた状態において、付勢ロッド31における小径部31bの後端が大径部36に当接した状態が解除されるようになっており、これにより、付勢ロッド31の後退動作の規制が解除され、可動爪26bの固定状態が解除される。尚、以下、この状態を「非固定状態」という。
【0036】
したがって、この工具交換機構20においては、工具交換アーム25が中間位置にある状態から工具交換アーム25を回転軸21の軸中心に90°回転させる(これを「正方向」とする)ことにより、工具交換アーム25が90°回転して把持位置に位置し、そこから工具交換アーム25が下降して、可動爪26bが固定状態となる一方、把持位置から逆方向に180°回転させ、そこから工具交換アーム25が上昇して、可動爪26bが非固定状態となる。
【0037】
次に、前記制御装置40について、図5及び図6を参照しつつ説明する。
【0038】
前記制御装置40は、上述したように、工作機械1の各部の作動を制御する装置であり、図5及び図6に示した一連の処理を実行し、工具交換を行うように構成されている。
【0039】
まず、前記送り機構7に動作指令を送信して、この送り機構7によって主軸頭4とともに主軸5の移動を開始し(ステップS1)、主軸5が前記工具交換位置に移動したか否かを判断し(ステップS2)、主軸5が工具交換位置に移動したと判断した場合には、主軸5の移動を停止して(ステップS3)、ステップS4に進み、移動していないと判断した場合には、再度ステップS2の処理を実行する。
【0040】
次に、ステップS4では、工具交換動作を開始する。具体的に言えば、駆動モータ23に動作指令を送信して、工具交換アーム25を正方向に90°回転させ、把持部26によって主軸5に取り付けられた工具Tと待機位置に割り出されたツールポット11に保持された工具T’とを把持した後、工具交換アーム25を逆方向に180°回転させて、工具T’を主軸5に取り付けるとともに、工具Tをツールポット11に保持させる。そして、主軸5に取り付けられた工具Tとツールポット11に保持された工具T’とが交換されたか否か判断し(ステップS5)、交換されたと判断した場合には、工具交換動作を停止して(ステップS6)、ステップS7に進み、交換されていないと判断した場合には、再度ステップS5の処理を実行する。
【0041】
ついで、前記駆動モータ23に動作指令を送信して、工具交換アーム25が前記中間位置まで回転するように、工具交換アーム25の逆方向への回転を開始する(ステップS7)。そして、工具交換アーム25の角度位置が把持部26と主軸5に取り付けられた工具T’とが非接触となる角度位置であるか否かを判断し(ステップS8)、非接触となる角度位置であると判断した場合には、主軸回転駆動機構8に動作指令を送信して、主軸5の回転を開始して(ステップS9)、ステップS10へ進む一方、非接触となる角度位置でないと判断した場合には、再度ステップS8の処理を実行する。
【0042】
次に、主軸5と工具交換アーム25との間に干渉の虞があるか否かを判断し(ステップS10)、干渉の虞がないと判断した場合には、送り機構7に動作指令を送信して、この送り機構7によって主軸頭4とともに主軸5の移動を開始する(ステップS11)。そして、主軸5が加工を開始する位置(加工位置)に移動し、工具交換アーム25が前記中間位置まで回転したか否かを判断し(ステップS12)、移動し且つ回転したと判断した場合には、主軸5の移動及び工具交換アーム25の回転を停止し(ステップS13)、工具交換に係る一連の処理を終了する。一方、主軸5が加工位置まで移動しておらず、工具交換アーム25が中間位置まで回転していないと判断した場合には、再度ステップS12の処理を実行する。
【0043】
次に、以上の構成を備えた工作機械1における工具交換について詳細に説明する。
【0044】
本例の工作機械1によれば、工具交換アーム25を中間位置に位置させた状態で、主軸5に取り付けられた工具Tによってワークに対して加工を施した後、次加工で工具Tと異なる工具T’を用いて加工を施す場合には、まず、送り機構7によって主軸頭4とともに主軸5を工具交換位置まで移動させる。また、上述したように、次工具T’が保持されたツールポット11を、適宜回転駆動機構によって前記割出位置に割り出した後、適宜旋回機構によって前記待機位置に移送させる。
【0045】
ついで、駆動モータ23を作動させて、回転軸21を正方向に90°回転させる。これにより、工具交換アーム25は、中間位置から回転軸21を中心に回転し、中間位置から90°回転した把持位置に位置した状態となり、主軸5に取り付けられた工具T及びツールポット11に保持された工具T’が把持部26によってそれぞれ把持される。尚、この時点においては、可動爪26bは非固定状態となっており、工具T,T’に作用する把持力は、付勢ロッド31が可動爪26bに押し付けられる力、即ち、付勢ばね32による付勢力に依存する。
【0046】
次に、工具交換アーム25が回転軸21の軸線に沿った方向に下降して、主軸5及びツールポット11から工具T,T’が抜き取られ、その後、駆動モータ23を作動させて、回転軸21を逆方向に180°回転させる。しかる後、工具交換アーム25が同様に回転軸21の軸線に沿った方向に上昇して、次工具T’が主軸5に取り付けられるとともに、現工具Tがツールポット11に保持される。このようにして、主軸5に取り付けられた工具Tが次加工で用いる工具T’に交換される。尚、把持位置にある工具交換アーム25を逆方向に180°回転させる間において、可動爪26bが固定状態となることによって、把持部26によって把持された工具T,T’の脱落が防止されるようになっている。
【0047】
しかる後、駆動モータ23を作動させて、回転軸21を逆方向に回転させ始める。そして、前記角度位置検出器24によって工具交換アーム25の角度位置を検出し、検出された角度位置が、把持部26と主軸5に取り付けられた工具T’とが非接触となる角度位置となった時点で、主軸回転駆動機構8によって主軸5の回転を開始する。尚、把持部26と主軸5に取り付けられた工具T’とが非接触となる角度位置は、工具T’の寸法や把持部26の形状などを基に設定することができる。
【0048】
その後、加工位置に向けての主軸5の移動を開始した場合に工具交換アーム25と主軸5との間に干渉の虞がない位置まで工具交換アーム25を回転させてから、主軸5の移動を開始する。
【0049】
そして、主軸5が加工位置まで移動した時点で主軸の移動を停止する一方、工具交換アーム25が中間位置まで回転した時点で工具交換アーム25の回転を停止する。これにより、一連の工具交換処理が終了し、その後、次加工が開始される。
【0050】
以上のように、本例の工作機械1によれば、制御装置40による制御の下、工具交換を自動で行うことができ、また、主軸5に次加工で用いる工具T’を取り付けた後、工具交換アーム25の角度位置を基にして工具交換アーム25の把持部26と工具T’とが非接触となる状態を検出するようにし、非接触となった時点で主軸5の回転を開始することができるようにしているため、主軸5を加工位置に向けて移動させる際の方向に関係なく、主軸5の移動に先立って主軸5の回転を開始して、待機時間を極力短いものにすることができ、延いては加工時間全体を短縮することができる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0052】
例えば、上例においては、主軸5の回転を開始させた後、主軸5の移動を開始するようにしているが、主軸5の回転を開始すると同時に、主軸5の移動を開始するようにしても良い。
【0053】
また、上例においては、工具交換アーム25を回転させて、工具交換位置にある工具T及び待機位置にある工具T’を把持部26に振り込むようにしたが、これに限られるものではない。例えば、予め工具交換アームの把持部を工具交換位置に位置させておき、把持部に向けて主軸を移動させるようにしても良い。尚、この場合、工具交換アームの形状は、S型形状のものに限られず、H型形状のものであっても良い。
【0054】
更に、上例においては、工具交換アーム25の角度位置によって把持部26と工具T’とが非接触となる状態を検出するようにしたが、これに限られるものではなく、他の検出機構でもって非接触となる状態を検出するようにしても良い。これについて、第2〜第4実施形態として、以下説明する。
【0055】
[第2実施形態]
まず、主軸に対する工具交換アームの位置を基に、主軸に取り付けられた工具と工具交換アームとが非接触となる状態を検出するようにした第2の実施形態について、図7及び図8を参照しつつ説明する。尚、図7は、第2の実施形態に係る工作機械50の一部を拡大して示した正面図であり、工作機械1の構成と同一の構成要素については、同じ符号を付し、その詳しい説明は省略する。また、図8は、工作機械50における工具交換の手順を示したフローチャートである。
【0056】
この工作機械50は、主軸5の先端部及び工具交換アーム25の一方端側の把持部に、主軸5に対する工具交換アーム25の位置を検出するための位置検出器たる一対の近接センサ51が設けられており、この近接センサ51は、その検出結果を制御装置52に送信するように構成されている。
【0057】
そして、前記制御装置52は、工作機械1の制御装置40におけるステップS6までの処理を行った後、図8に示すように、駆動モータ23に動作指令を送信して、工具交換アーム25が中間位置まで回転するように、工具交換アーム25の逆方向への回転を開始し(ステップS15)、主軸5に対する工具交換アーム25の位置が把持部26と主軸5に取り付けられた工具T’とが非接触となる位置であるか否かを判断して(ステップS16)、非接触となる位置であると判断した場合には、主軸回転駆動機構8に動作指令を送信し、主軸5の回転を開始して(ステップ17)、ステップS18に進む。一方、非接触となる位置でないと判断した場合には、再度ステップS16の処理を実行する。
【0058】
ついで、主軸5と工具交換アーム25との間に干渉の虞があるか否かを判断する(ステップS18)。そして、干渉の虞がないと判断した場合には、送り機構7に動作指令を送信して主軸5の移動を開始し(ステップS19)、主軸5が加工位置に移動し、工具交換アーム25が中間位置まで回転したか否かを判断して(ステップS20)、移動し且つ回転したと判断した場合には、主軸5の移動及び工具交換アーム25の回転を停止して(ステップS21)、工具交換に係る一連の処理を終了する。一方、主軸5が加工位置まで移動しておらず、工具交換アーム25が中間位置まで回転していないと判断した場合には、再度ステップS20の処理を実行する。
【0059】
以上のように構成した工作機械50によれば、工作機械1と同様の手順で、主軸5に取り付けられた工具Tとツールポット11に保持された工具T’とを交換して、主軸5に工具T’を取り付けるとともに、ツールポット11に工具Tを保持させる。しかる後、回転軸21を逆方向に回転させ始め、近接センサ51によって主軸5に対する工具交換アーム25の位置を検出し、検出された位置が把持部26と主軸5に取り付けられた工具T’とが非接触となる位置となった時点で、主軸5の回転を開始する。しかる後、主軸5を加工位置まで移動させるとともに、工具交換アーム25を中間位置まで回転させてから、主軸5の移動及び工具交換アーム25の回転を停止する。尚、把持部26と主軸5に取り付けられた工具T’とが非接触となる位置は、工具T’の寸法や把持部26の形状などを基に予め設定することができる。
【0060】
このように、第2の実施形態に係る工作機械50においても、近接センサ51によって検出された主軸5に対する工具交換アーム25の位置を基にして、把持部26と主軸5に取り付けられた工具T’とが非接触となった時点で主軸5を回転させることができるようにしているため、主軸5の移動や移動方向に左右されることなく、主軸5を回転させることができるようになった時点で、主軸5の回転を開始して、従来よりも加工開始までの待機時間を短縮することができる。
【0061】
[第3実施形態]
次に、可動爪の進退位置を基に、主軸に取り付けられた工具と工具交換アームとが非接触となる状態を検出するようにした第3の実施形態について、図9及び図10を参照しつつ説明する。尚、図9は、第3の実施形態に係る工作機械に設けられた工具交換アーム56を一部断面で示した正面図であり、工作機械1における工具交換アーム25の構成と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。また、図10は、この第3の実施形態に係る工作機械における工具交換の手順を示したフローチャートである。
【0062】
この第3の実施形態に係る工作機械に設けられた工具交換アーム56には、付勢ロッド31における小径部31bの後端側に進退位置検出器57が設けられており、この進退位置検出器57は、付勢ロッド31の変位を基に可動爪26bの進退位置を検出し、検出結果を制御装置58に送信するように構成されている。
【0063】
また、前記制御装置58は、制御装置40と同様に、ステップS6までの処理を行った後、図10に示すように、駆動モータ23に動作指令を送信して、工具交換アーム56が中間位置まで回転するように、工具交換アーム56の逆方向への回転を開始して(ステップS25)、可動爪26bの進退位置が把持部26と主軸5に取り付けられた工具T’とが非接触となる位置であるか否かを判断し(ステップS26)、非接触となる位置であると判断した場合には、主軸回転駆動機構8に動作指令を送信して、主軸5の回転を開始し(ステップS27)、ステップS28に進む。一方、非接触となる位置でないと判断した場合には、再度ステップS26の処理を実行する。
【0064】
ついで、主軸5と工具交換アーム56との間に干渉の虞があるか否かを判断し(ステップS28)、干渉の虞がないと判断した場合には、送り機構7に動作指令を送信し、主軸5の移動を開始して(ステップS29)、主軸5が加工位置に移動し、工具交換アーム56が中間位置まで回転したか否かを判断し(ステップS30)、加工位置まで移動し且つ中間位置まで回転したと判断した場合には、主軸5の移動及び工具交換アーム56の回転を停止し(ステップS31)、工具交換に係る一連の処理を終了する。その一方、主軸5が加工位置まで移動しておらず、工具交換アーム25が中間位置まで回転していないと判断した場合には、再度ステップS30の処理を実行する。
【0065】
この第3の実施形態に係る工作機械によれば、工作機械1と同様の手順で、主軸5に工具T’を取り付けるとともに、ツールポット11に工具Tを保持させた後、回転軸21を逆方向に回転させ始め、進退位置検出器57によって可動爪26bの進退位置を検出する。そして、検出された進退位置が把持部26と主軸5に取り付けられた工具T’とが非接触となる進退位置となった時点で、主軸5の回転を開始し、しかる後、主軸5を加工位置まで移動させるとともに、工具交換アーム56を中間位置まで回転させ、工具交換を完了する。尚、把持部26と主軸5に取り付けられた工具T’とが非接触となる位置は、上記と同様に、工具T’の寸法や把持部26の形状などを基に設定することができる。
【0066】
このように、第3の実施形態に係る工作機械においても、進退位置検出器57によって検出された可動爪26bの進退位置を基に、把持部26と主軸5に取り付けられた工具T’とが非接触な状態となった時点で、主軸5の回転を開始させるようにしているため、主軸5の移動や移動方向に関係なく、主軸5の回転を開始させて、主軸5が所定の回転数に達するまでの時間を短縮することができる。
【0067】
[第4実施形態]
次に、主軸に取り付けられる工具、主軸、工作機械の機体及び工具交換アームの把持部の間に電気的閉ループが形成されているか否かを基に、主軸に取り付けられた工具と工具交換アームとが非接触となる状態を検出するようにした第4の実施形態について、図11及び図12を参照しつつ説明する。尚、図11は、第4の実施形態に係る工作機械60の一部を示した正面図であり、工作機械1の構成と同一の構成要素については、同じ符号を付して、その詳しい説明は省略する。また、図12は、工作機械60における工具交換の手順を示したフローチャートである。
【0068】
この工作機械60は、主軸に取り付けられた工具T’、主軸5、主軸頭4、工具マガジン10、待機位置に移送されたツールポット11、このツールポット11に保持された工具T及び工具交換アーム25との間に電気的閉ループを形成するための回路61と、この回路61に電流が流れているか否かを検出する電流検出器62とを備えている。この工作機械60では、工具交換アーム25の把持部26に工具T,T’が把持されている状態、即ち、把持部26と工具T,T’とが接触した状態においては、電気的閉ループが形成されるため回路61に電流が流れる一方、工具交換アーム25の把持部26に工具T,T’が把持されていない状態、即ち、把持部26と工具T,T’とが非接触となった状態においては、電気的閉ループが形成されないため回路61に電流が流れなくなるようになっている。そして、前記電流検出器62は、回路61に電流が流れているか否かを検出して、検出結果を制御装置63に送信するようになっている。
【0069】
前記制御装置63は、ステップS6までの処理を制御装置40と同様に行った後、図12に示すように、駆動モータ23に動作指令を送信して、工具交換アーム25が中間位置まで回転するように、工具交換アーム25の逆方向への回転を開始し(ステップS35)、電気的閉ループが形成されているか否かを判断する(ステップS36)。そして、電気的ループが形成されていないと判断した場合には、主軸回転駆動機構8に動作指令を送信して、主軸5の回転を開始し(ステップS37)、ステップS38に進む。一方、電気的閉ループが形成されていると判断した場合には、再度ステップS36の処理を実行する。
【0070】
次に、主軸5と工具交換アーム25との間に干渉の虞があるか否かを判断し(ステップS38)、干渉の虞がないと判断した場合には、送り機構7に動作指令を送信し、主軸5の移動を開始する(ステップS39)。しかる後、主軸5が加工位置に移動し、工具交換アーム25が中間位置まで回転したか否かを判断し(ステップS40)、加工位置まで移動し且つ中間位置まで回転したと判断した場合には、主軸5の移動及び工具交換アーム25の回転を停止して(ステップS41)、工具交換に係る一連の処理を終了する。一方、主軸5が加工位置まで移動しておらず、工具交換アーム25が中間位置まで回転していないと判断した場合には、再度ステップS40の処理を実行する。
【0071】
この工作機械60によれば、工作機械1と同様の手順で、主軸5に工具T’を取り付けるとともに、ツールポット11に工具Tを保持させる。そして、回転軸21の逆方向への回転を開始し、電流検出器62によって回路61に電流が流れているか否かを検出して、電流が流れなくなった、即ち、電気的閉ループが形成されなくなった時点で、主軸5の回転を開始する。しかる後、主軸5を加工位置まで移動させるとともに、工具交換アーム25を中間位置まで回転させ、工具交換を完了する。
【0072】
以上のように、第4の実施形態に係る工作機械60においては、電流検出器62による検出結果を基に、電気的閉ループが形成されなくなった時点、即ち、工具交換アーム25と主軸5に取り付けられた工具T’とが非接触となった時点で、主軸5の回転を開始するようにしている。したがって、上記と同様に、主軸5の移動や移動方向に関係なく、主軸5を移動に先立って回転を開始させて、加工開始までの待機時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 工作機械
2 ベッド
3 コラム
4 主軸頭
5 主軸
6 テーブル
7 送り機構
8 主軸回転駆動機構
10 工具マガジン
11 ツールポット
21 回転軸
22 カム機構
23 駆動モータ
24 角度位置検出器
25 工具交換アーム
26 把持部
26a 固定爪
26b 可動爪
31 付勢ロッド
33 規制ロッド
40 制御装置
50 工作機械
51 近接センサ
56 工具交換アーム
57 進退位置検出器
60 工作機械
61 回路
62 電流検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12