(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る害虫忌避用組成物の一実施形態について以下に説明する。
【0017】
本実施形態の害虫忌避用組成物は、害虫忌避成分と、分子中に極性基を有する液体油と、(メタ)アクリル酸系重合体と、非イオン性界面活性剤とを含むものである。
本実施形態の害虫忌避用組成物は、通常、さらに、水を含む。
【0018】
前記害虫忌避成分は、組成物に配合されることにより、配合されていないものよりも、組成物が害虫を忌避する性能を高めるものである。
【0019】
前記害虫忌避成分は、N,N−ジエチル−3−メチルベンズアミド(ディート)、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、シトロネラール、シトロネロール、シトラール、リナロール、テルピネオール、メントール、p−メンタン−3,8−ジオール、α―ピネン、カンファー、ゲラニオール、及び、カラン−3,4−ジオールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
また、前記害虫忌避成分としては、桂皮、シトロネラ、レモングラス、クローバ、ベルガモット、月桂樹、ユーカリなどから採れる精油又は抽出液などの抽出物が好ましい。
前記害虫忌避成分としては、上記の1種単独物又は2種以上を組み合わせたものが採用され得る。
【0021】
前記害虫忌避用組成物によれば、液体油と害虫忌避成分とを含むため、前記組成物が使用されたときに、害虫忌避成分の揮発をより抑制することができる。即ち、極性基を有する液体油に、極性化合物である害虫忌避成分が溶解しているため、例えば組成物が皮膚等に塗布されて使用されたときに、害虫忌避成分が液体油に溶解した状態を保つことから、害虫忌避成分の揮発を抑制することができる。
また、前記害虫忌避用組成物によれば、組成物が例えば皮膚等の塗布対象物に塗布されて使用されたときに、塗布対象物において(メタ)アクリル酸系重合体によって形成される保護膜によって、害虫忌避成分の揮発を抑制することができる。
従って、害虫忌避用組成物によれば、害虫忌避成分による害虫忌避性能を持続的に発揮することができる。
【0022】
前記害虫忌避成分としては、優れた害虫忌避効果を有する点、安全性データが既に豊富に取得されている点において、N−ジエチル−3−メチルベンズアミド(以下、単にディートともいう)が好ましい。
【0023】
前記害虫忌避用組成物は、皮膚に塗布されたときに、害虫忌避成分(特に、ディート)のベタツキを(メタ)アクリル酸系重合体によって抑えることができる。また、皮膚親和性に優れる水性保護膜を(メタ)アクリル酸系重合体によって皮膚表面に形成させることができるため、皮膚に塗布された時の使用感に優れている。
前記害虫忌避用組成物によれば、例えばエタノールが組成物に配合されていなくとも、害虫忌避成分との相溶性を有する液体油によって、害虫忌避成分(特に、ディート)を組成物中に安定的に配合することができる。従って、エタノールによる皮膚刺激を抑えることができる。また、前記害虫忌避用組成物によれば、害虫忌避成分(特に、ディート)由来の臭いを(メタ)アクリル酸系重合体によって抑えることができ、皮膚に塗布されたときの使用感を格段に優れたものとすることができる。
【0024】
前記害虫忌避用組成物においては、水と液体油と非イオン性界面活性剤とが含まれていることにより、少なくとも液体油が、非イオン性界面活性剤によって水中に分散され、乳化されている。
そして、乳化された害虫忌避用組成物は、液体油が水中に分散されて乳化された分、含まれる水の量が増えることから、例えば皮膚に塗布されたときに、使用感に優れている。
【0025】
また、乳化された害虫忌避用組成物においては、(メタ)アクリル酸系重合体によって乳化された液滴の合一等が抑制されることから、乳化された組成物の乳化安定性が優れたものとなり得る。
また、乳化された害虫忌避用組成物は、例えば皮膚に塗布されたときに、(メタ)アクリル酸系重合体によって皮膚親和性に優れた保護保水膜を皮膚上に形成させることができる。これにより、組成物中の水の揮発が抑制されることから、害虫忌避用組成物は、水分保持力に優れている。
【0026】
前記液体油は、20℃において液体状であり、且つ、分子中に極性基を含む有機化合物である。
前記液体油は、20℃において半固形状であるものをも包含している。
【0027】
前記液体油が分子中に有する極性基は、酸素原子(O)を含有する極性基であることが好ましい。
酸素原子を含有する極性基としては、カルボン酸エステル基、ヒドロキシ基、又はエーテル基が好ましい。
前記液体油は、通常、15〜60の炭素数を有する有機化合物である。
【0028】
前記液体油としては、IOB値が0.1以上のものが好ましい。また、分子中に少なくともカルボン酸エステル基を有する脂肪酸エステル油が好ましい。また、IOB値が0.1以上の脂肪酸エステル油がより好ましい。
前記脂肪酸エステル油は、炭素数6〜20の脂肪酸と、アルキルアルコールとがエステル結合してなる化合物である。
斯かるアルキルアルコールとしては、炭素数2〜20のものが好ましい。また、分子中に1〜3のヒドロキシ基を含むものが好ましい。
【0029】
前記液体油のIOB値が0.1以上であることにより、組成物が皮膚に塗布されたときの使用感がより優れたものとなり、害虫忌避成分に起因する臭いをより確実に抑えることができるという利点がある。
前記液体油がIOB値0.1以上の脂肪酸エステル油であることにより、液体油の皮膚における感触がさっぱりしてべたつかないものになるという利点がある。
なお、前記液体油は、IOB値が0.6以下であることが好ましい。
【0030】
さらに、前記害虫忌避成分がディートであることにより、ディートと脂肪酸エステル油との相溶性が特に優れたものになり、組成物が皮膚に塗布された後のディートの揮発をより確実に抑え、ディートの臭いをより確実に抑えることができるという利点がある。
【0031】
前記IOB(Inorganic value Organic value Balance)値は、有機概念図論に基づいた手法によって、無機性値(IV)/有機性値(IO)の比率(I/O比)で求められる数値である。
前記有機概念図論については、「有機概念図−基礎と応用−」(甲田善生著、三共出版、1984年)等に詳細に説明されている。
前記有機概念図論に基づいた手法は、官能基ごとにパラメーターを設定する官能基寄与法の一つである。各官能基には、無機性値、有機性値が定められている。なお、IOB値が大きいほど、無機性が高いことを表す。
【0032】
前記IOB値0.1以上の液体油としては、例えば、パルミチン酸セチル(IOB=0.10)、カプリル酸セチル(IOB=0.12)、2−エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13)、パルミチン酸オクチル(IOB=0.13)、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル(IOB=0.14)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.14)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB=0.14)、ジイソステアリン酸プロピレングリコール(IOB=0.15)、ミリスチン酸イソステアリル(IOB=0.15)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB=0.15)、ジステアリン酸プロピレングリコール(IOB=0.15)、ジオレイン酸プロピレングリコール(IOB=0.16)、ジイソステアリン酸プロピレングリコール(IOB=0.16)、ジステアリン酸エチレングリコール(IOB=0.16)、ジステアリン酸グリコール(IOB=0.16)、オリーブ油(IOB=0.16)、マカダミアナッツ油(IOB=0.17)、ミリスチン酸イソプロピル(IOB=0.18)、トリイソステアリン酸グリセリル(IOB=0.18)、イソノナン酸2−エチルヘキシル(IOB=0.18)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.20)、イソノナン酸イソノニル(IOB=0.20)、デシルテトラデカノール(IOB=0.21)、イソデシルベンゾエート(IOB=0.23)、ジラウリル酸エチレングリコール(IOB=0.23)、トリ(カプリル酸・カプリン酸・ステアリン酸)グリセリル(IOB=0.23)、パルミチン酸オクチル(IOB=0.24)、ジステアリン酸ジエチレングリコール(IOB=0.24)、ジカプリル酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.25)、ジオレイン酸ジエチレングリコール(IOB=0.25)、ジイソステアリン酸ジエチレングリコール(IOB=0.25)、オクチルドデカノール(IOB=0.26)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB=0.27)、メトキシケイヒ酸オクチル(IOB=0.28)、オレイルアルコール(IOB=0.28)、ジイソステアリン酸グリセリル(IOB=0.29)、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.31)、トリオクタン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.31)、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル(IOB=0.32)、ジカプリル酸プロピレングリコール(IOB=0.32)、コハク酸ジ2−エチルヘキシル(IOB=0.32)、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン(IOB=0.33)、エチルヘキサン酸ペンタエリスリット(IOB=0.35)、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット(IOB=0.35)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(IOB=0.35)、トリオクタノイン(IOB=0.35)、テトラオクタン酸ペンタエリスリット(IOB=0.35)、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル(IOB=0.35)、セバシン酸ジイソプロピル(IOB=0.40)、ヒマシ油(IOB=0.42)、オレイン酸(IOB=0.42)、イソステアリン酸(IOB=0.43)、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.47)、サリチル酸オクチル(IOB=0.6)等が挙げられる。これらの液体油は、1種が単独で、又は2種以上が組み合わされて用いられ得る。
【0033】
前記液体油としては、害虫忌避成分との親和性により優れるという点、組成物の使用感がより優れたものになるという点、害虫忌避成分の揮発をより抑えることができるという点で、脂肪酸エステル油としての2−エチルヘキサン酸セチルがさらに好ましい。
【0034】
前記害虫忌避用組成物においては、害虫忌避成分に対する液体油の質量比が、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。また、害虫忌避成分に対する液体油の質量比が、10.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましい。
前記害虫忌避成分に対する液体油の質量比が、0.1以上であることにより、害虫忌避効果がより優れたものになり得るという利点がある。一方、質量比が5.0以下であることにより、組成物が皮膚に塗布されたときのベタツキ感がより抑えられ、より十分な使用感を得ることができるという利点がある。
【0035】
前記(メタ)アクリル酸系重合体は、少なくとも(メタ)アクリル酸構造を有する(メタ)アクリル酸系モノマーが重合してなる高分子化合物である。
なお、本明細書における“(メタ)アクリル酸”との用語は、アクリル酸及びメタクリル酸を示している。また、“(メタ)アクリロイル” との用語は、アクリロイル及びメタクリロイルを示している。
【0036】
前記(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、(メタ)アクリロイルジメチルタウリン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、又は、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0037】
前記(メタ)アクリル酸系重合体としては、少なくとも(メタ)アクリロイルジメチルタウリンが重合してなる重合体(高分子化合物)が好ましく、(メタ)アクリロイルジメチルタウリンと、少なくとも該(メタ)アクリロイルジメチルタウリン以外の(メタ)アクリル酸系モノマーとが共重合した共重合体(コポリマー)がより好ましい。
【0038】
前記(メタ)アクリル酸系重合体(コポリマー)としては、(メタ)アクリロイルジメチルタウリンと少なくとも(メタ)アクリル酸との共重合体、(メタ)アクリロイルジメチルタウリンと少なくとも(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体、及び、(メタ)アクリロイルジメチルタウリンと少なくともジメチル(メタ)アクリルアミドとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0039】
具体的には、前記(メタ)アクリル酸系重合体としては、例えば、(メタ)アクリロイルジメチルタウリンと(メタ)アクリル酸との共重合体、(メタ)アクリロイルジメチルタウリンと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体、(メタ)アクリロイルジメチルタウリンとジメチル(メタ)アクリルアミドとの共重合体、(メタ)アクリロイルジメチルタウリンと(メタ)アクリル酸とジメチル(メタ)アクリルアミドとの共重合体などが挙げられる。
また、前記(メタ)アクリル酸系重合体としては、例えば、(メタ)アクリロイルジメチルタウリンと(メタ)アクリル酸とジメチル(メタ)アクリルアミドとの共重合体であって架橋された共重合クロスポリマー等が挙げられる。
【0040】
前記(メタ)アクリル酸系重合体としては、例えば、市販されているものが採用される。
例えば、前記(メタ)アクリル酸系重合体としては、製品名「シマルゲル」シリーズ(セピック社製)に含有されている重合体などが採用される。
具体的には、前記(メタ)アクリル酸系重合体を含有する製品としては、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーが含有されている製品「シマルゲルEG」(セピック社製)、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーが分散されてなる製品「シマルゲル FL」(セピック社製)、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーが含有されている製品「セピノブ EMT10」(セピック社製)、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンNa/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマーが含有されている製品「セピノブ P88」(セピック社製)等が挙げられる。
【0041】
前記(メタ)アクリル酸系重合体は、塩の態様であってもよい。塩の態様となった(メタ)アクリル酸系重合体としては、例えば、分子中の(メタ)アクリロイルジメチルタウリン部分が塩となったもの、又は、分子中の(メタ)アクリル酸部分が塩となったもの等が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸系重合体の塩としては、Na塩、K塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
【0042】
前記害虫忌避用組成物においては、害虫忌避成分に対する(メタ)アクリル酸系重合体の質量比が、0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましい。また、害虫忌避成分に対する(メタ)アクリル酸系重合体の質量比が、2.0以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。
前記害虫忌避成分に対する(メタ)アクリル酸系重合体の質量比が、0.01以上であることにより、組成物の製剤安定性がより良好なものになるという利点がある。また、害虫忌避成分に起因する臭いをより抑えることができるという利点がある。一方、前記害虫忌避成分に対する(メタ)アクリル酸系重合体の質量比が2.0以下であることにより、組成物が皮膚に塗布されたときのベタツキ感をより抑えることができ、より十分な使用感を得ることができるという利点がある。
【0043】
前記害虫忌避用組成物においては、液体油に対する(メタ)アクリル酸系重合体の質量比が、0.25以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。また、液体油に対する(メタ)アクリル酸系重合体の質量比が、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
前記液体油に対する(メタ)アクリル酸系重合体の質量比が、0.25以上であることにより、組成物の製剤安定性がより良好なものになるという利点がある。また、害虫忌避成分に起因する臭いをより抑えることができるという利点がある。一方、前記液体油に対する(メタ)アクリル酸系重合体の質量比が10以下であることにより、組成物が皮膚に塗布されたときのベタツキ感をより抑えることができ、より十分な使用感を得ることができるという利点がある。
【0044】
前記非イオン性界面活性剤は、分子中に非イオン性基を親水基として有するものである。
【0045】
前記非イオン性界面活性剤は、HLB値が7以上のものであることが好ましい。また、HLB値が15以下のものが好ましい。
前記非イオン性界面活性剤のHLB値が7以上であることにより、より使用感に優れ、組成物の乳化をより安定なものにできるという利点がある。
【0046】
前記HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は、HLB=(Σ無機性値/Σ有機性値)×10によって計算される。Σ無機性値/Σ有機性値は、IOB値(Inorganic-Organic Balance)とも称され、各種原子及び官能基毎に設定された「無機性値」、「有機性値」に基いて、界面活性剤等の有機化合物を構成する原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することにより算出されるものである(甲田善生著、「有機概念図−基礎と応用−」、11〜17頁、三共出版、1984年発行参照)。
【0047】
前記非イオン性界面活性剤としては、分子中に親水基としてポリオキシエチレン構造を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤、又は、分子中に親水基としてのポリオキシエチレンを有さないアルキルエステル型非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0048】
前記非イオン性界面活性剤としては、組成物の製剤安定性をより優れたものにできるという点で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0049】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤としては、分子中にソルビタン構造をさらに有するポリオキシエチレンアルキルエーテル型ソルビタン系非イオン性界面活性剤が好ましい。
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤がソルビタン構造をさらに有することにより、組成物の製剤安定性をより優れたものにでき、しかも、害虫忌避成分に起因する組成物の臭いをより抑えることができるという利点がある。
【0050】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル型ソルビタン系非イオン性界面活性剤としては、分子中にポリオキシエチレン構造とソルビタン構造と脂肪酸エステル構造とを有するものが好ましい。
【0051】
前記界面活性剤の脂肪酸エステル構造としては、ラウリン酸エステル構造、ミリスチン酸エステル構造、パルミチン酸エステル構造、直鎖ステアリン酸エステル構造、イソステアリン酸エステル構造、オレイン酸エステル構造、リシノール酸エステル構造などが挙げられる。
【0052】
前記界面活性剤の脂肪酸エステル構造としては、直鎖ステアリン酸エステル構造が好ましい。即ち、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル型ソルビタン系非イオン性界面活性剤としては、ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンが好ましい。
【0053】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル型ソルビタン系非イオン性界面活性剤は、分子中に1つの脂肪酸エステル構造を有するモノエステル化合物であってもよく、分子中に2つの脂肪酸エステル構造を有するジエステル化合物であってもよい。
【0054】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤においては、組成物の製剤安定性をより優れたものにできるという点で、オキシエチレンの付加モル数が10〜30であることが好ましい。
【0055】
前記害虫忌避用組成物においては、非イオン性界面活性剤に対する害虫忌避成分及び液体油の合計の質量比が、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。また、非イオン性界面活性剤に対する害虫忌避成分及び液体油の合計の質量比が、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。
前記非イオン性界面活性剤に対する害虫忌避成分及び液体油の合計の質量比が、2以上であることにより、組成物の製剤安定性をより優れたものにできるという利点がある。また、質量比が100以下であることにより、組成物が皮膚に塗布されたときのべとつき感をより抑えることができ、組成物の製剤安定性をより優れたものにできるという利点がある。
【0056】
前記害虫忌避用組成物は、害虫忌避成分を1.0〜15.0質量%含むことが好ましい。害虫忌避成分を1.0〜15.0質量%含むことにより、組成物が害虫忌避効果をより確実に発揮することができるという利点がある。また、組成物が皮膚に塗布されたときの使用感がより良好となり、害虫忌避成分に起因する臭いをより低く抑えることができるという利点がある。
前記害虫忌避用組成物は、液体油を1.0〜20.0質量%含むことが好ましい。液体油を1.0〜20.0質量%含むことにより、組成物の製剤安定性がより良好となり、組成物が皮膚に塗布されたときの使用感がより良好となり、害虫忌避成分に起因する臭いをより低く抑えることができるという利点がある。
前記害虫忌避用組成物は、(メタ)アクリル酸系重合体を0.1〜5.0質量%含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸系重合体を0.1〜5.0質量%含むことにより、組成物の製剤安定性がより良好となり、組成物が皮膚に塗布されたときの使用感がより良好となり、害虫忌避成分に起因する臭いをより低く抑えることができるという利点がある。
前記害虫忌避用組成物は、非イオン性界面活性剤を0.1〜10.0質量%含むことが好ましい。非イオン性界面活性剤を0.1〜10.0質量%含むことにより、組成物の製剤安定性をより優れたものにできるという利点がある。
【0057】
前記害虫忌避用組成物は、さらに、構成成分として、上記以外の非イオン界面活性剤、イオン性界面活性剤、上記以外の油、上記の(メタ)アクリル酸系重合体以外の高分子化合物、保湿剤、紫外線吸収剤、色素、pH調整剤、防腐剤、無機粉体、香料などを含み得る。これらの構成成分としては、通常、市販されているものが採用される。
【0058】
前記害虫忌避用組成物は、例えば、乳液状、液状、クリーム状、又は、ゲル状の態様になり得る。
【0059】
前記害虫忌避用組成物は、従来公知の一般的な方法によって製造することができる。
【0060】
具体的には、前記害虫忌避用組成物は、例えば、害虫忌避成分と、液体油と、(メタ)アクリル酸系重合体と非イオン性界面活性剤とを混合することによって製造することができる。
より具体的には、前記害虫忌避用組成物は、例えば、液体油と害虫忌避成分と非イオン性界面活性剤と(メタ)アクリル酸系重合体とを混合させてなる油相と、水とを混合することにより、水中に油相を乳化させて製造することができる。
【0061】
前記害虫忌避用組成物は、クリーム状、乳液状、ゲル状の製剤となって利用され得る。
また、前記害虫忌避用組成物は、ヒトの皮膚に塗布して使用される。その他、例えば、エアゾール容器に入れられスプレーによって噴射されることにより、塗布対象物に塗布されて使用される。
また、前記害虫忌避用組成物は、例えば、不織布などに含浸させた態様となり得る。即ち、前記害虫忌避用組成物は、いわゆるウェットティッシュにおける含浸液として使用され得る。
【0062】
前記害虫忌避用組成物は、例えば、ヒトの皮膚に塗布されること、ヒト以外の動物に塗布されること、又は、生物以外の有体物に塗布されること等によって使用される。
【0063】
前記害虫忌避用組成物は、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧料等の用途で好適に用いられる。
【0064】
本発明の害虫忌避用組成物は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の実施形態に限定されるものではない。また、本発明では、一般の害虫忌避用組成物において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【実施例】
【0065】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
害虫忌避用組成物の構成成分として、下記に示すものを用いた。そして、下記に示す方法によって、害虫忌避用組成物を製造した。
「害虫忌避成分」
・N,N−ジエチル−3−メチルベンズアミド(ディート)(購入品)
「極性基含有液体油」
・2−エチルヘキサン酸セチル(IOB値=0.13)(購入品)
「(メタ)アクリル酸系重合体を含有する原料」
・共重合体含有原料1
アクリロイルジメチルタウリンNa/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体
(セピック社製 製品名「シマルゲル(Simulgel)FL」)
共重合体を40質量%含有
・共重合体含有原料2
アクリロイルジメチルタウリンNa/アクリル酸Na共重合体
(セピック社製 製品名「シマルゲル(Simulgel)EG」)
共重合体を40質量%含有
・共重合体含有原料3
アクリロイルジメチルタウリンNa/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体
(セピック社製 製品名「SEPINOV EMT10」)
共重合体を 90質量%含有
・共重合体含有原料4
アクリロイルジメチルタウリンNa/アクリル酸Na/ジメチルアクリルアミド クロスポリマー
共重合体を 95質量%含有
(セピック社製 製品名「SEPINOV P88」)
「非イオン性界面活性剤」
・モノステアリン酸ポリオキシエチレン(EO20モル付加)ソルビタン
(HLB値=14)(購入品)
・親油性ステアリン酸グリセリン
(HLB値=4)(購入品)
「水」
・イオン交換水
「(メタ)アクリル酸系重合体以外の高分子化合物」
・ヒドロキシエチルセルロース(購入品)
ユニオンカーバイト社製 「ヒドロキシエチルセルロース WP−3」
「極性基含有液体油以外の油」
・流動パラフィン(IOB=0)(購入品)
・スクワラン (IOB=0)(購入品)
【0067】
(実施例1)
下記の表1に示す組成で各成分を混合することにより、害虫忌避用組成物を製造した。
具体的には、害虫忌避成分、液体油、(メタ)アクリル酸系重合体、及び非イオン性界面活性剤を80℃で均一に溶解させた油相と、80℃の水とを混合し、高速乳化分散機(PRIMIX社製 製品名「ホモミクサーMARKII」)によって撹拌し、乳化し、冷却することにより、クリーム状の害虫忌避用組成物を得た。
表1に示す数値は、害虫忌避用組成物100質量部における質量部を示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
(実施例2〜3、比較例1〜6)
表1又は表2に示す組成とした点以外は、実施例1と同様にして、害虫忌避用組成物を製造した。
【0071】
以下に示すように、実施例の組成物と、比較対照物(市販品)とを用いて、忌避性能等を評価した。なお、比較対象物としては、下記のものを用いた。
・サンプルA:害虫忌避用エアゾール製品
(ディート:9.75質量%含有、 油:含有せず、
高分子化合物:含有せず、 エタノール含有)
・サンプルB:害虫忌避用ジェル
(ディート:5質量%含有、油:含有せず、
高分子化合物(カルボキシビニルポリマー):5%含有、エタノール含有)
・サンプルC:害虫忌避用ローション(スプレータイプ)
(ディート:5質量%含有、油:含有せず、
高分子化合物:含有せず、エタノール含有)
【0072】
<蚊に対する忌避性能の評価>
蚊に対する忌避性能を下記方法により評価した。
即ち、忌避性能の評価は、ヒト前腕部の皮膚に実施例1の組成物、及び、サンプルA〜Cをそれぞれ0.1mg/cm
2(ディート換算)となるように塗布した。塗布10分間後、4時間後、6時間後、8時間後の各時間において、塗布後の皮膚上でそれぞれヒトスジシマカ20匹を10分間放った。ヒトスジシマカが皮膚上から逃げないように、直径4cm×高さ12.5cmのガラス製中空円柱体で皮膚を覆った。そして、吸血固体数を数え、忌避率を算出することによって評価を行った。なお、何も塗布しない皮膚上においても同様な操作を行った。
忌避率は、下記の数式によって算出した。
忌避率A(%)=
[1−(各評価時の吸血個体数/無塗布時の吸血個体数)]×100
実施例2〜4の組成物についても、上記と同様に評価した。
【0073】
蚊に対する忌避性能の評価結果(忌避率A)を表3、表4に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
表3から把握されるように、実施例1の組成物は、蚊の忌避性能の持続性に優れていた。また、表4から把握されるように、実施例2、3、4の組成物も、蚊の忌避性能の持続性に優れていた。
【0077】
<ヤケヒョウヒダニに対する忌避性能の評価>
ヤケヒョウヒダニに対する忌避性能を下記方法により評価した。
即ち、直径3.5cmの円形の黒画用紙上に実施例1の組成物を5mg/cm
2(ディート換算)となるように塗布し、1時間、6時間、又は、24時間放置した。
各時間放置した後において、黒画用紙をシャーレ内に置き、黒画用紙の中心部にダニ誘引餌を置いた。そして、ヤケヒョウヒダニ10,000匹を黒画用紙の周囲に放した。24時間後に、黒画用紙にいるヤケヒョウヒダニの個体数を数えた。そして、忌避率を算出することによって評価を行った。なお、何も塗布しない黒画用紙を用いても同様な操作を行った。
忌避率は、下記の数式によって算出した。各試験は、4回ずつ行い、各試験結果を合計することによって、下記の忌避率を求めた。
忌避率B(%)=
[1−(塗布した黒画用紙上のダニ個体数/無塗布の黒画用紙上のダニ個体数)]×100
【0078】
実施例1の害虫忌避用組成物のヤケヒョウヒダニに対する忌避性能の評価結果(忌避率B)を表5に示す。
【0079】
【表5】
【0080】
表5から把握されるように、実施例1の組成物は、ヤケヒョウヒダニの忌避性能の持続性に優れていた。
【0081】
<フタトゲチマダニに対する忌避性能の評価>
フタトゲチマダニに対する忌避性能を下記方法により評価した。
即ち、それぞれの評価試験において、直径9.0cm(63.6cm
2)の丸濾紙に10.4mg/cm
2の濃度となるよう実施例1の組成物、及び、サンプルA〜Cをそれぞれ0.5mg/cm
2(ディート換算)の量で塗布した。塗布後の濾紙を、室温にて1時間、6時間または24時間放置(風乾)させた後、半分に折り、折り目を中心線として中心線から0.5cmの幅でカットし、濾紙を2枚に分割した。分割した塗布後の濾紙の片方と、同様にカットした無塗布濾紙とを、直径9.0cmのシャーレ内にそれぞれ置き、カットした部分の縁が互いに1cmあけて対向するように配置した。
離間した領域にフタトゲチマダニ(27〜36匹)を放ち、1、3、5、10、30、60分後において、塗布後の濾紙以外の領域にいる個体数と、シャーレ内にいる個体数とを数えた。
忌避率は、下記の数式によって算出した。
忌避率C(%)=
[1−(塗布後の濾紙以外の領域にいるダニ個体数/シャーレ内にいるダニ個体数)]×100
【0082】
フタトゲチマダニに対する忌避性能の評価結果(忌避率C)を表6に示す。
【0083】
【表6】
【0084】
表6から把握されるように、実施例1の組成物は、フタトゲチマダニの忌避性能の持続性に優れていた。
【0085】
<水分保持力の評価>
各試験サンプルを塗布した後におけるヒト皮膚での水分保持力を下記方法により評価した。
即ち、成人女性5名の前腕内側部の皮膚に、実施例1の組成物、サンプルB、サンプルC、及び、サンプルDの含浸液をそれぞれ小豆大の量で塗布し、30分後、60分後、120分後、360分後の水分量を皮表角層水分量測定装置(SKICON−200EX アイ・ビイ・エス社製)によって測定した。そして、塗布前における皮膚の水分量に対する水分量を水分保持力として表した。
なお、サンプルDの詳細は、下記の通りである。
・サンプルD:害虫忌避用ウェットティッシュ製品
(ディート:7質量%含有、油:含有せず、高分子化合物:含有せず)
また、何も塗布しなかった場合も同様に評価した。
【0086】
水分保持力の評価結果を
図1に示す。
図1から把握されるように、実施例1の組成物は、水分保持力に優れていた。
【0087】
<害虫忌避成分(ディート)の臭気の評価>
各試験サンプルの臭気の評価を下記方法により評価した。
即ち、実施例1の組成物、サンプルBをそれぞれ小豆大の量で手の甲に塗布し、1分間放置した。そして、成人10名によって、塗布された手の甲から3cmの距離を空けて臭気を確認した。臭いの評価は、VAS(Visual Analogue Scale)法によって行った。評価結果を10名の平均値によって表した。
なお、VAS法は、100mmの直線線分を想定し、一方の端(0mm地点)を「全く臭わない」とし、他方の端(100mm地点)を臭うとして評価結果を視覚化する方法である。
【0088】
害虫忌避用組成物の臭気の評価結果を
図2に示す。
図2から把握されるように、実施例1の害虫忌避用組成物においては、臭気の発生が抑制されている。即ち、ディートの揮発が抑制されている。
【0089】
<組成物の製剤安定性の評価>
各実施例及び各比較例で製造した組成物を、50℃で1ケ月間静置した後、外観を観察することにより、組成物の製剤安定性(乳化安定性)を評価した。
評価結果を表1及び表2に示す。表1及び表2から把握されるように、実施例の組成物は、製剤安定性にも優れていた。
【0090】
以上の結果から把握されるように、実施例1の害虫忌避用組成物は、塗布対象物に塗布されて使用されたときに、害虫忌避成分の揮発を抑制することができ、害虫忌避成分の臭いを抑制することができる。従って、害虫忌避成分の揮発を抑制できる分、害虫忌避性能の持続性に優れている。また、実施例1の害虫忌避用組成物は、皮膚に塗布されて使用されたときに、水分保持力に優れている。
【0091】
続いて、害虫忌避用組成物の処方例及びその製造方法を以下に示す。
【0092】
「処方例1」乳化ローション
組成 配合比(質量%)
1)ディート 3.0
2)ミリスチン酸プロピル 1.0
3)エチルヘキサン酸セチル 2.0
4)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 3.0
5)ブチレングリコール 10.0
6)サクシニル化カルボキシルメチルキトサン 0.1
7)アクリル酸系共重合体含有原料a 0.3
8)メチルパラベン 0.1
9)精製水 残量
「アクリル酸系共重合体含有原料a」
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーを含有:製品名「SEPINOV EMT10」(セピック社製)
(製造方法)
5)〜9)を加熱溶解させた水相に、1)〜4)を加熱溶解させた油相を加え、ホモミキサー(8000rpm、10分)を用いて乳化し、O/W型の乳化ローションを調製した。
【0093】
「処方例2」乳液
組成 配合比(質量%)
1)セタノール 1.5
2)ディート 10.0
3)イソノナン酸イソトリデシル 5.0
4)パルミチン酸オクチル 3.0
5)ユーカリ油 0.8
6)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 3.0
7)ブチレングリコール 10.0
8)アクリル酸系共重合体含有原料b 1.0
9)アクリル酸系共重合体含有原料c 0.5
10)メチルパラベン 0.1
11)精製水 残量
「アクリル酸系共重合体含有原料b」
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーを40質量%含有:製品名「シマルゲルFL」(セピック社製)
「アクリル酸系共重合体含有原料c」
(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーを40質量%含有:製品名「シマルゲルEG」(セピック社製)
(製造方法)
7)〜11)を加熱溶解させた水相に、1)〜6)を加熱溶解させた油相を添加し、ホモミキサー(4500rpm、10分)を用いて乳化し、O/W型の乳液を調製した。
【0094】
「処方例3」スキンケアクリーム
組成 配合量(質量%)
1)セタノール 2.5%
2)スクワラン 1.0%
3)サラシミツロウ 1.0%
4)トリオクタン酸グリセリル 5.0%
5)エチルヘキサン酸セチル 1.0%
6)酢酸トコフェロール 0.1%
7)ディート 8.0%
8)モノステアリン酸グリセリン 3.0%
9)アクリル酸系重合体含有原料c 3.0%
10)ソルビタンモノステアレート 2.5%
11)1,3−ブチレングリコール 7.0%
12)濃グリセリン 5.0%
13)パラオキシ安息香酸ブチル 0.1%
14)パラオキシ安息香酸メチル 0.2%
15)精製水 残量
(製造方法)
10)〜14)を加熱溶解させた水相に、1)〜9)を加熱溶解させた油相を添加し、ホモミキサー(4500rpm、10分)を用いて乳化し、O/W型のスキンケアクリームを調製した。