特許第6078428号(P6078428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6078428ウェハ支持台、およびそのウェハ支持台が用いられてなる化学的気相成長装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078428
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ウェハ支持台、およびそのウェハ支持台が用いられてなる化学的気相成長装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20170130BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20170130BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   H01L21/205
   C23C16/458
   H01L21/68 N
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-142005(P2013-142005)
(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公開番号】特開2015-15399(P2015-15399A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100146879
【弁理士】
【氏名又は名称】三國 修
(72)【発明者】
【氏名】深田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 賢治
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−221266(JP,A)
【文献】 特開平10−074705(JP,A)
【文献】 特開2011−176213(JP,A)
【文献】 特開2004−146437(JP,A)
【文献】 特開平11−329974(JP,A)
【文献】 特開平08−191096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205−21/31、21/365、21/469、
21/67−21/683、21/86、
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハ上に層を形成する化学的気相成長装置に用いられるウェハ支持台であって、
前記ウェハ支持台は、その上面の中央部にウェハ載置面を有するとともに、周辺部にウェハ支持部を有し、
前記ウェハ支持部は、前記ウェハを載置可能とする開口部を有するリング状のウェハホルダーからなり、前記ウェハホルダーは、前記層と同じ材料からなり、
前記ウェハ支持部は、載置されるウェハの側面を囲むと共に起立してなるウェハ支持側面を有し、さらに、ウェハ支持側面の上端からそのウェハ支持側面を囲むように、径方向外方に向けて下降する下方傾斜面を含む周辺上面を有し、
前記ウェハ支持側面の上端が、載置されるウェハの上面より低い位置にあることを特徴とするウェハ支持台。
【請求項2】
前記ウェハ支持部の下方傾斜面は平面を含み、その平面が、ウェハ載置面に対して、3°以上45°以下の傾きを有することを特徴とする請求項1に記載のウェハ支持台。
【請求項3】
前記下方傾斜面は曲面を含むことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のウェハ支持台。
【請求項4】
前記曲面は、その曲面上の全ての点における接平面が、ウェハ載置面に対して、3°以上45°以下の傾きを有することを特徴とする請求項3に記載のウェハ支持台。
【請求項5】
前記ウェハ支持部の下方傾斜面を、平面視した幅が10mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のウェハ支持台。
【請求項6】
前記周辺上面は、前記ウェハ支持側面と前記下方傾斜面の間にウェハ載置面に対して平行な平坦面を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のウェハ支持台。
【請求項7】
前記平坦面の幅が5mm以下であることを特徴とする請求項6に記載のウェハ支持台。
【請求項8】
前記ウェハホルダーが、SiCからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のウェハ支持台。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のウェハ支持台が用いられてなる化学的気相成長装置であって、
前記ウェハ支持台が前記ウェハ支持の中心軸周りに回転駆動される化学的気相成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハ支持台、およびその支持台が用いられてなる化学的気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に半導体や半導体素子の製造工程などの、基板上に層を形成する工業的手法として化学的気相成長法が用いられている。この化学的気相成長法を用いて、作製された半導体は産業上多くの分野で利用されている。
例えば、炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に対して、バンドギャップが約3倍、絶縁破壊電界強度が約10倍、熱伝導度が約3倍という優れた物性を有しており、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。
【0003】
このようなSiC半導体デバイスの製造には、通常、SiCエピタキシャルウェハが用いられる。このSiCエピタキシャルウェハは、昇華再結晶法等を用いて作製されたSiC単結晶基板(SiCウェハ)の面上に、SiC半導体デバイスの活性領域となるSiC単結晶薄膜(SiCエピタキシャル層)をエピタキシャル成長させることで作製される。
【0004】
また、エピタキシャルウェハの製造装置としては、チャンバ内に原料ガスを供給しながら、加熱されたSiCウェハの面上にSiCエピタキシャル層を堆積成長させる化学的気相成長(CVD)装置が用いられる。
SiCのエピタキシャル成長は、1500℃以上の高温で行われる。SiCのエピタキシャル成長に用いられるCVD法としては、横方向にガスを流す方法や縦方向にガスを流す方法等、種々の形態が挙げられる。特許文献1や特許文献2に記載されている横型のホットウオール法や、特許文献3に記載されている自公転型のCVD装置は、その典型的なものである。いずれの方法においても、高温度に保持されたSiC基板上に材料ガスを流通させてエピタキシャル成長が行われる。その際、ガスの上流側と下流側でエピタキシャル成長の膜厚が変化したり、ドーピング濃度が変化したりするということが起こるため、最近の装置では、ウェハを載置したウェハ支持台(サセプター)を回転させることにより、結晶成長中にSiC基板を回転させている(特許文献2参照)。
【0005】
これらの装置において、ウェハはウェハ支持台の上に載置されているが、ウェハが回転により移動しないように、ウェハ支持台に円形凹状の座繰り加工部を設けられ、その座繰り加工部にSiCウェハが載置される。また、座繰り加工部の代わりに、ウェハ支持台のウェハを載置するウェハ載置面の周辺部に、ウェハ支持台と別個の部材からなるリング状のウェハホルダーを設けることで、ウェハが回転により移動しないようにしてもよい。
【0006】
また、複数枚のウェハを同時にエピタキシャル成長させる装置では、複数のウェハ支持台を乗せた搭載プレートが回転(公転)し、さらにウェハ支持台自体が回転(自転)する、自公転型のものが用いられる(特許文献3参照)。
【0007】
この自公転型のCVD装置では、ウェハ支持台(基板ホルダ)を収容するための複数の凹状の収容部を有する搭載プレートに、基板ホルダが自転可能な状態で収容され、基板ホルダ上にSiCウェハが搭載されてエピタキシャル成長が行われる。
【0008】
ところで、CVD装置では、成膜中に、原料ガスはチャンバ内に原料ガスを供給しながら堆積成長させるため、ウェハ面上以外の部分にも結晶の堆積成長が生じてしまう問題があった。成膜を繰り返すことによって、このウェハ面上以外の部分に堆積した堆積物が剥がれて、ウェハ面上に落下することがある。この場合、ウェハ面上に付着した堆積物によって、成膜される層の質を著しく低下させることになる。このような問題は成膜を繰り返す量産型のCVD装置において特に顕著なものとなる。
【0009】
そこで、下記特許文献4に記載の発明では、サセプター(ウェハ支持台)に載置されたウェハと、サセプターに対向したシーリング(天板)との間に、ウェハを覆うためのカバープレートを配置して、シーリングに堆積した堆積物(パーティクル)が脱落してウェハ面上に付着するのをカバープレートによって阻止することが提案されている。
【0010】
しかし、この場合、シーリングに堆積した堆積物がウェハ面上に落下するのを防ぐことができるものの、その他の部材に堆積した堆積物が、ウェハ面上に再飛来することを防ぐことはできない。
【0011】
そのため、その他の部材(特に、成膜されるウェハの近傍に存在するウェハ支持部)に堆積した堆積物がウェハ面上に飛来しないようにすることが望まれていた。
【0012】
【特許文献1】特開2008−270682号公報
【特許文献2】特開2011−18772号公報
【特許文献3】特表2004−507619号公報
【特許文献4】特開2009−164162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、載置されたウェハの周辺部材上に堆積した堆積物をウェハ面上に再飛来させないようにすることによって、高品質な層をウェハの面上に安定して堆積成長させることを可能としたウェハ支持台、および、そのようなウェハ支持台を備えた化学的気相成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の手段を提供する。
(1)ウェハ上に層を形成する化学的気相成長装置に用いられるウェハ支持台であって、前記ウェハ支持台は、その上面の中央部にウェハ載置面を有するとともに、周辺部にウェハ支持部を有し、前記ウェハ支持部は、載置されるウェハの側面を囲むと共に起立してなるウェハ支持側面を有し、さらに、ウェハ支持側面の上端からそのウェハ支持側面を囲むように、径方向外方に向けて下降する下方傾斜面を含む周辺上面を有することを特徴とするウェハ支持台。
(2)前記ウェハ支持部の下方傾斜面は平面を含み、その平面が、ウェハ載置面に対して、3°以上45°以下の傾きを有することを特徴とする(1)に記載のウェハ支持台。
(3)前記下方傾斜面は曲面を含むことを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載のウェハ支持台。
(4)前記曲面は、その曲面上の全ての点における接平面が、ウェハ載置面に対して、3°以上45°以下の傾きを有することを特徴とする(3)に記載のウェハ支持台。
(5)前記ウェハ支持部の下方傾斜面を、平面視した幅が10mm以上であることを特徴とする(1)に記載のウェハ支持台。
(6)前記周辺上面は、前記ウェハ支持側面と前記下方傾斜面の間にウェハ載置面に対して平行な平坦面を有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一項に記載のウェハ支持台。
(7)前記平坦面の幅が5mm以下であることを特徴とする(6)に記載のウェハ支持台。
(8)前記ウェハ支持側面の上端が、載置されるウェハの上面より低い位置にあることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか一項に記載のウェハ支持台。
(9)前記ウェハ支持部が、前記ウェハを載置可能とする開口部を有するリング状のウェハホルダーからなることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか一項に記載のウェハ支持台。
(10)前記ウェハホルダーが、前記層と同じ材料からなることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか一項に記載のウェハ支持台。
(11)前記ウェハホルダーが、SiCからなることを特徴とする(10)に記載のウェハ支持台。
(12)(1)〜(11)のいずれか一項に記載のウェハ支持台が用いられてなる化学的気相成長装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るウェハ支持台では、載置されるウェハの側面を囲むと共に起立してなるウェハ支持側面を有し、さらに、ウェハ支持側面の上端からそのウェハ支持側面を囲むように、径方向外方に向けて下降する下方傾斜面を含む周辺上面を有するため、ウェハ支持部の前記下方傾斜面上に堆積成長した結晶が剥離しても、ウェハ支持台の外側へ落下しやすくなる。また、装置のシーリングや内壁から下方傾斜面上に落下したパーティクルが、原料ガスの供給により再飛散した場合でも、パーティクルはウェハ支持側面の上端より低い位置に存在するため、前記下方傾斜面を備えていない場合と比較して、ウェハ面上にパーティクルが再飛来するのを抑制することができる。この剥離した結晶の破片及びパーティクルがウェハ面上に付着すると、化学的気相法によって堆積成長する層の結晶成長を不均一にし、堆積成長する層の質を著しく低下させてしまう。そのため、載置されるウェハの側面を囲むと共に起立してなるウェハ支持側面と、そのウェハ支持側面の上端からウェハ支持側面を囲むように、径方向外方に向けて下降する下方傾斜面を含む周辺上面を有するウェハ支持部により、剥離した結晶の破片及びパーティクルがウェハ面上に付着するのを防ぎ、高品質な層を形成することができる。
【0016】
また、ウェハ支持部をリング状のウェハホルダーで構成することによって、ウェハ支持部とウェハ支持台とを別の材質で形成することができる。これによりウェハホルダーの材質を自由に選択することが可能となり、例えばウェハホルダーを、化学的気相成長装置で形成する層と同じ材質にすることにより、ウェハホルダー上に堆積成長した結晶が熱膨張率差により剥離するのを抑制することができる。また、ウェハホルダーの下の部材に結晶が堆積するのを防止する効果を得ることができる。
【0017】
また、ウェハ支持側面の上端を、載置されるウェハの上面より低い位置にすることで、載置されるウェハが壁となり、下方傾斜面上に存在する剥離した結晶の破片及びパーティクルがウェハ面上に再飛来するのをより抑えることが可能になる。
【0018】
本発明に係るウェハ支持台では、ウェハ支持部が載置されるウェハの側面を囲むと共に起立してなるウェハ支持側面と、そのウェハ支持側面の上端からウェハ支持側面を囲むように、径方向外方に向けて下降する下方傾斜面を有していればよく、どのような形状を有していても、剥離した結晶の破片及びパーティクルがウェハ面上に飛来するのを抑制することが可能である。
【0019】
また、本発明に係るウェハ支持台は、特に装置の限定をするものではないが、特にウェハが自転しながら成膜する方式の化学的気相成長装置に適用することができる。これは、ウェハが自転しながら成膜する方式では、よりウェハの位置をウェハ支持部で固定する必要があるためである。またウェハがプラネタリ(自公転)する方式に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用した化学的気相成長装置の一実施形態を示す断面模式図である。
図2】本発明を適用した化学的気相成長装置の一実施形態を構成する搭載プレートの一例を示す平面模式図である。
図3】本発明を適用したウェハ支持台の一例を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
図4】本発明を適用したウェハ支持台のその他の一例を示す断面模式図であり、(a)は下方傾斜面が曲面からなる断面模式図であり、(b)は下方傾斜面が平面と曲面からなる断面模式図である。
図5】本発明を適用したウェハ支持台が平坦面を有する場合の一例を示す断面模式図である。
図6】本発明を適用したウェハ支持台が外周面を有する場合の一例を示す断面模式図である。
図7】本発明を適用したウェハホルダーの一例を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
図8】本発明を適用したウェハホルダーのその他の一例を示す断面模式図であり、(a)はウェハホルダー上面が曲面からなる断面模式図であり、(b)はウェハホルダー上面が平面と曲面からなる断面模式図である。
図9】本発明を適用したウェハホルダーが平坦面を有する場合の一例を示す断面模式図である。
図10】本発明を適用したウェハホルダーが外周面を有する場合の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用したウェハ支持台及びそれを備えた化学的気相成長装置について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、自公転する成膜装置の一例を基に説明を行うが、本発明は当該成膜装置に限定するものではない。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴を分かり易くするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0022】
(ウェハ支持台及びそれを備えた化学的気相成長装置:第一の実施形態)
図1は、本発明を適用した一実施形態であるウェハ支持台を備えた化学的気相成長装置の断面模式図である。図2は、本発明を適用した一実施形態であるウェハ支持台を収容する搭載プレートの一例を示す平面模式図である。図3は、本発明を適用した一実施形態であるウェハ支持台の一例を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
本発明を適用した一実施形態であるウェハ支持台を備える化学的気相成長装置は、例えば、図1に示すようなCVD(化学的気相成長)装置1であり、図示を省略する減圧排気可能なチャンバ(成膜室)内に、原料ガスGを供給しながら、加熱されたウェハWの面上に層(図示せず。)を堆積成長させるものである。例えば、SiCをエピタキシャル成長させる場合、原料ガスGには、Si源にシラン(SiH)、炭素(C)源にプロパン(C)を含むものを用いることができ、さらに、キャリアガスとして水素(H)を含むものを用いことができる。
【0023】
具体的に、このCVD装置1は、チャンバの内部において、複数のウェハWが載置される搭載プレート2と、この搭載プレート2との間で反応空間Kを形成するように、搭載プレート2の上面に対向して配置されたシーリング(天板)3と、搭載プレート2およびシーリング3の外側に位置して、反応空間Kの周囲を囲むように配置された周壁4とを備えている。
【0024】
搭載プレート2は、円盤状の回転台5と、この回転台下面5b中央部に取り付けられた回転軸6とを有し、回転台5は、この回転軸6と一体に回転自在に支持されている。
また、回転台上面5a側には、ウェハWが載置される円盤状のウェハ支持台(基板ホルダ)7を収容する複数の凹状の収容部8が設けられている。
【0025】
収容部8は、平面視(回転台上面5a側から見て)円形状をなし、回転台5の周方向(回転方向)に等間隔に複数並んで設けられている。図2では、収容部8が等間隔に6個並んで設けられている場合を例示する。
【0026】
ウェハ支持台7は、ウェハ載置面7aと、ウェハ支持部7bとを有する。ウェハ載置面7aは、ウェハ支持台7が搭載プレート2に収容されたときにほぼ水平になる。
また、ウェハ支持台7は、回転台5の収容部8の内径よりも僅かに小さい外径を有し、収容部8の底面の中央部にあるピン状の小突起(図示せず)によって下から支えられることにより、回転台5の収容部8に、各々の中心軸周りに回転自在に支持されている。
【0027】
ウェハ支持部7bは、載置されるウェハの側面を囲むと共に起立してなるウェハ支持側面7b1とウェハ支持側面の上端からウェハ支持側面を囲むように、径方向外方に向けて下降する下方傾斜面7b2を含む周辺上面とを有する。係る構成を備えることにより、ウェハ支持部の下方傾斜面7b2上に堆積した結晶が剥離しても、剥離した結晶の破片が下方に傾斜する下方傾斜面に沿って、ウェハWの存在しない外周に向かって落下しやすくなる。また、装置のシーリングや内壁から下方傾斜面7b2上に落下したパーティクルが、原料ガスの供給により再飛散した場合でも、ウェハ支持側面の上端より低い位置にパーティクルが存在するため、ウェハ支持側面の上端からウェハ支持側面を囲むように、径方向外方に向けて下降する下方傾斜面7b2を備えていない場合と比較して、ウェハ面上にパーティクルが再飛来するのを抑制することができる。
ここで、本発明におけるウェハ支持部とは、ウェハ支持台のうち、上部側に位置する部分であって、ウェハ支持側面と下方傾斜面を含む周辺上面とを含む部分を指すものであって、ウェハ支持部がウェハ支持台の他の部分と別個の部材である第2の実施形態のリング状のウェハホルダーに相当する部分である。
【0028】
ウェハ支持部7bの下方傾斜面7b2は、ウェハ支持側面の上端からウェハ支持側面を囲むように、径方向外方に向けて下降していればよく、平面でも、曲面でも、それらの混ざり合った形状でもよく制限はない。
【0029】
下方傾斜面7b2が平面を含む場合(図3b)には、ウェハ載置面7aに対して、3°以上45°以下の傾きを有することが好ましい。さらに好ましくは10°以上30°以下であることが好ましい。傾斜角が3°以下では、堆積した結晶の破片やパーティクルを外周に向けて落下させる効果が小さくなり、ウェハ面上に再飛来することを十分に抑制できなくなる。また傾斜角が45°以上になると、ウェハ支持部のウェハ面側が尖った形状(ウェハ支持側面7b1と下方傾斜面7b2との角度が急峻になる)となり、その部分に結晶が成長しやすくなる。この部分に堆積した結晶は、接地面が小さく、不安定なためより剥離しやすく、ウェハ面上に落下するのを抑制することが難しくなる。
【0030】
ウェハ支持部7bの下方傾斜面7b2は、ウェハ支持側面の上端からウェハ支持側面を囲むように、径方向外方に向けて下降していればよいが、下方傾斜面7b2が曲面を含むものでもよい。下方傾斜面7b2が曲面である場合(図4a)には、その曲面上の全ての点における接平面が、ウェハ載置面7aに対して、3°以上45°以下の傾きを有することが好ましい。さらに好ましくは10°以上30°以下であることが好ましい。傾斜角が3°以下では、堆積した結晶の破片やパーティクルを外周に向けて落下させる効果が小さくなり、ウェハ面上に再飛来することを十分に抑制できなくなる。また傾斜角が45°以上になると、ウェハ支持部のウェハ面側が尖った形状(ウェハ支持側面7b1と下方傾斜面7b2との角度が急峻になる)となり、その部分に結晶が成長しやすくなる。この部分に堆積した結晶は、接地面が小さくより不安定なためより剥離しやすく、ウェハ面上に落下するのを抑制することが難しくなる。
【0031】
なお、図4(a)では上に凸の例を示しているが、下に凸でも、凹凸を含むものでも、その曲面上の全ての点における接平面が、ウェハ載置面7aに対して、上述の傾きを満たすものであればよい。また、下方傾斜面7b2は曲面を含むものであればよく、図4(b)のように平面と曲面が混在した形状でもよい。この場合も、曲面および平面の全ての点における接平面がウェハ載置面7aに対して、3°以上45°以下の傾きを有することが好ましい。さらに好ましくは10°以上30°以下であることが好ましい。
【0032】
ウェハ支持部7bの下方傾斜面7b2を平面視した幅が10mm以上であることが好ましい。10mm以下であると、下方傾斜面の幅が狭く、下方傾斜面7b2上に堆積した結晶の破片やパーティクルが、ウェハ面上に再飛来することを十分に抑制することが難しくなる。
【0033】
周辺上面は、ウェハ支持側面7b1と下方傾斜面7b2の間に、ウェハ載置面に対して平行な平坦面7b3を有していてもよい(図5)。この平坦面7b3の幅は5mm以下であることが好ましい。5mm以上であると、平坦面7b3上に堆積した結晶の破片やパーティクルが、ウェハ面上に再飛来してしまうためである。
【0034】
また周辺上面は、上述の形状を有するものであればよく、例えば下方傾斜面7b2の外縁から外周に向かって広がる外周面7b4を有していてもよい(図6)。外周面7b4の形状はどのような形状をしてもよく、任意の形状を選択することができる。
【0035】
また、ウェハ支持側面7b1の上端は、ウェハ載置後のウェハWの上面より低い位置にあることが好ましい。ウェハ支持側面7b1の上端が、ウェハ載置後のウェハWの上面より低い位置にあることで、ウェハ側面が壁となって、ウェハ支持部の傾斜する下方傾斜面7b2上に堆積した結晶の破片及びパーティクルが、ウェハW上に再飛来するのをより抑制することができるためである。
【0036】
また、ウェハ載置後のウェハW上面は、回転台上面5aと同一面か、それよりも下側にあることが好ましい。ウェハWが回転台上面5aより高い場合、ウェハ端部で原料ガスの流れの乱れ(層流の乱れ)が生じやすく、ウェハ端部の成膜された膜の特性が内側と差が生じてしまう場合がある。
【0037】
ウェハ支持台7のウェハ載置面7aは、円形であることが望ましい。また、ウェハとして、オリエーテンションフラット(OF)がついている場合は、ウェハと相似形でOFに対応する直線部があってもよい。ウェハ支持台7のウェハ載置面7a上に、ウェハに覆われていない部分があると、その部分にも結晶が堆積するため、ウェハがウェハ載置面7aに対し浮く場合がある。そこで、この直線部を設けることにより、OFの外側のウェハ載置面7aに不要な結晶が堆積することを防止できる。
【0038】
そして、搭載プレート2は、いわゆるプラネタリ(自公転)方式を採用している。搭載プレート2は、図示を省略する駆動モータにより回転軸6が回転駆動されると、回転台5がその中心軸周りに回転駆動される。複数のウェハ支持台7は、原料ガスとは別の駆動用ガスが各々のウェハ支持台7の下面と収容部との間に供給されることにより、各々の中心軸周りに回転駆動される仕組みとなっている(図示せず)。これにより、複数のウェハ支持台7に載置された各ウェハWに対して均等に成膜を行うことが可能である。
【0039】
シーリング3は、搭載プレート2の回転台5と略一致した径を有する円盤状の部材であり、回転台5の上面と相対向しながら、搭載プレート2との間で扁平状の反応空間Kを形成している。周壁4は、搭載プレート2およびシーリング3の外周部を取り囲むリング状の部材である。
【0040】
CVD装置1は、ウェハ支持台7に載置されたウェハWを加熱する加熱手段として、高周波誘導加熱により搭載プレート2およびシーリング3を加熱するための誘導コイル10を備えている。この誘導コイル10は、搭載プレート2(回転台5)の下面およびシーリング3の上面に、それぞれ近接した状態で対向配置されている。
【0041】
そして、このCVD装置1では、図示を省略する高周波電源から誘導コイル10に高周波電流が供給されると、搭載プレート2(回転台5およびウェハ支持台7)およびシーリング3が高周波誘導加熱により加熱されて、これら搭載プレート2およびシーリング3からの輻射や、ウェハ支持台7からの熱伝導等により、ウェハ支持台7に載置されたウェハWを加熱することが可能となっている。
【0042】
なお、搭載プレート2(回転台5およびウェハ支持台7)およびシーリング3には、高周波誘導加熱に適した材料として、耐熱性に優れなおかつ熱伝導率の良いグラファイト(カーボン)材料からなるものを用いることができ、さらにグラファイト(カーボン)からのパーティクル等の発生を防ぐため、表面がSiCやTaC等で被覆されたものを好適に用いることができる。また、ウェハWの加熱手段としては、上述した高周波誘導加熱によるものに限らず、抵抗加熱よるもの等を用いてもよい。また、加熱手段は、搭載プレート2(回転台5)の下面側およびシーリング3の上面側に配置された構成に限らず、これらのいずれか一方側のみに配置された構成とすることも可能である。
【0043】
CVD装置1は、チャンバ内に原料ガスGを供給するガス供給手段として、シーリング3の上面中央部から反応空間K内に原料ガスGを導入するガス導入管(ガス導入口)11を備えている。このガス導入管11は、円筒状に形成されて、シーリング3の中央部に設けられた円形状の開口部12を貫通した状態で、その先端部(下端部)が反応空間Kの内側に臨んで配置されている。
【0044】
また、ガス導入管11の先端部(下端部)には、拡径方向に突出されたフランジ部11aが設けられている。このフランジ部11aは、ガス導入管11の下端部から鉛直下向きに放出された原料ガスGを、その対向する回転台5との間で水平方向に放射状に流すためのものである。
【0045】
そして、このCVD装置1では、ガス導入管11から放出された原料ガスGを反応空間Kの内側から外側に向かって放射状に流すことで、ウェハWの面内に対して平行に原料ガスGを供給することが可能となっている。また、チャンバ内で不要になったガスは、周壁4の外側に設けられた排気口(図示せず。)からチャンバの外へと排出することが可能となっている。
【0046】
ここで、シーリング3は、誘導コイル10により高温で加熱されるものの、その内周部(開口部12が形成された中央部)が原料ガスGを導入するために低温とされたガス導入管11とは非接触とされている。また、シーリング3は、ガス導入管11の外周部に取り付けられた支持リング(支持部材)13の上に、その内周部が載置されることによって、鉛直上向きに支持されている。さらに、このシーリング3は、上下方向に移動させることが可能となっている。
【0047】
CVD装置1は、シーリング3の下面に近接して配置された遮蔽板14を備えている。
この遮蔽板14は、表面がSiC膜等で被覆された円盤状のグラファイト(カーボン)基板からなる。
【0048】
そして、この遮蔽板14は、チャンバ内に着脱自在に取り付けられている。具体的には、この遮蔽板14は、周壁4の内周面から突出して設けられた支持部15の上に、その外周部が載置されることによって、鉛直上向きに支持されている。この場合、遮蔽板14の外周部のみを支持することによって、誘導コイル10により加熱されて高温となる遮蔽板14に対して、原料ガスGを導入するために低温とされたガス導入管11と、この遮蔽板14の内周部との接触を回避しながら、遮蔽板14をチャンバ内に着脱自在に取り付けることが可能となっている。
この遮蔽板14は、シーリング3の下面に反応空間からの堆積物が堆積するのを阻止して、その下面に堆積物を堆積させることができる。そして、従来のようなシーリングの下面に堆積した堆積物を除去するといった面倒なクリーニング作業を行わずに、遮蔽板を交換するといった簡便なメンテナンス作業を行うだけで、シーリング下面から落下して膜内に入り込むダウンフォールの低減を図ることが可能である。
【0049】
また、支持部15は、周壁4の内周面に全周に亘って設けられた遮蔽板支持部であり、この遮蔽板支持部上に遮蔽板14の外周部が載置されている。この場合、遮蔽板14の外周部が支持部15と全周に亘って接触した状態となることから、この遮蔽板14の外周部側からシーリング3との間に向かってガスが流れ込むのを防ぐことが可能である。
【0050】
一方、シーリング3の下面中央部には、遮蔽板14の内側に位置するように、円筒状のスリーブ部16が突出して設けられている。このスリーブ部16は、遮蔽板14の内周部側からシーリング3との間に向かってガスを流れ込み難くするためのものである。
【0051】
なお、CVD装置1では、遮蔽板14が設けられていなくてもよく、遮蔽板14を介さずに、搭載プレート2の上面に対向してシーリング3が配置されていてもよい。
【0052】
以上のような構造を有するCVD装置1では、ウェハ支持台7を回転台5の収容部8に支持するとともに、ウェハWをウェハ支持台7のウェハ載置面7a上に支持するために用いられるウェハ支持部7bにおいて、ウェハ支持側面7b1の上端からウェハ支持側面を囲むように、径方向外方に向けて下降する下方傾斜面7b2を含む周辺上面を有することにより、ウェハ支持部7b上に堆積した結晶の破片及びパーティクルがウェハWの面上に再飛来するのが抑制され、高品質な層を形成することが可能である。
【0053】
(ウェハ支持台及びそれを備えた化学的気相装置:第二の実施形態)
図7は、本発明を適用したウェハ支持台の一例を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
第二の実施形態は、第一の実施形態と比べて、ウェハ支持部7bが別個の部材であるリング状のウェハホルダー9で構成されている点で異なっている。その他の構成部については、第1の実施形態と同様である。
【0054】
ウェハホルダー9は、載置されるウェハの側面を囲むと共に起立してなるウェハホルダー側面9b1とウェハホルダー側面9b1の上端からウェハホルダー側面9b1を囲むように、径方向外方に向けて下降する下方傾斜面9b2を含むウェハホルダー上面とを有する。かかる構成を備えることにより、下方傾斜面9b2に堆積した結晶が剥離しても、下方傾斜面9b2の傾斜面に沿って、剥離した結晶の破片がウェハWの存在しない外周に向かって落下しやすくなる。また装置のシーリングや内壁から下方傾斜面9b2上に落下したパーティクルが、原料ガスの供給により再飛散した場合でも、ウェハホルダー側面の上端より低い位置にパーティクルが存在するため、ウェハホルダー側面9b1の上端からウェハホルダー側面9b1を囲むように、径方向外方に向けて下降する下方傾斜面9b2を備えていない場合と比較して、ウェハ面上にパーティクルが再飛来するのを抑えることができる。
【0055】
ウェハホルダー9は、載置されるウェハの側面を囲むと共に起立してなるウェハホルダー側面9b1とウェハホルダー側面9b1の上端からウェハホルダー側面9b1を囲むように、径方向外方に向けて下降する下方傾斜面9b2を含むウェハホルダー上面とを有する。ウェハホルダー9の下方傾斜面9b2を、上から平面視した幅は、10mm以上であることが好ましい。10mm以下であると、下方傾斜面9b2の傾斜幅が狭く、下方傾斜面9b2上に堆積した結晶の破片やパーティクルが、ウェハ面上に再飛来することを十分に抑制することが難しくなる。
【0056】
下方傾斜面9b2が平面を含む場合(図7b)には、ウェハ載置面7aに対して、3°以上45°以下の傾きを有することが望ましい。さらに好ましくは10°以上30°以下であることが好ましい。傾斜角が3°以下では、堆積した結晶の破片やパーティクルを外周に向けて落下させる効果が小さくなり、ウェハ面上に再飛来することを十分に抑制できなくなる。また傾斜角が45°以上になると、ウェハホルダーのウェハ面側が尖った形状(ウェハホルダー側面9b1と下方傾斜面9b2との角度が急峻になる)となり、その部分に結晶が成長しやすくなる。この部分に堆積した結晶は、接地面が小さくより不安定なためより剥離しやすく、ウェハ面上に落下するのを抑制することが難しくなる。
【0057】
下方傾斜面9b2が曲面を含む場合(図8a)には、その曲面上の全ての点における接平面がウェハ載置面7aに対して、3°以上45°以下の傾きを有することが望ましい。さらに好ましくは10°以上30°以下であることが好ましい。傾斜角が3°以下では、堆積した結晶の破片やパーティクルを外周に向けて落下させる効果が小さくなり、ウェハ面上に再飛来することを十分に抑制できなくなる。また傾斜角が45°以上になると、ウェハホルダーのウェハ面側が尖った形状(ウェハホルダー側面9b1と下方傾斜面9b2との角度が急峻になる)となり、その部分に結晶が成長しやすくなる。この部分に堆積した結晶は、接地面が小さくより不安定なためより剥離しやすく、ウェハ面上に落下するのを抑制することが難しくなる。
【0058】
なお、図8(a)では上に凸の例を示しているが、下に凸でも、凹凸を含むものでも、その曲面上の全ての点における接平面が、ウェハ載置面7aに対して、上述の傾きを満たすものであればよい。また、下方傾斜面9b2は曲面を含むものであればよく、図8(b)のように平面と曲面が混在した形状でもよい。この場合も、曲面および平面の全ての点における接平面がウェハ載置面7aに対して、3°以上45°以下の傾きを有することが好ましい。さらに好ましくは10°以上30°以下であることが好ましい。
【0059】
ウェハホルダー上面は、ウェハホルダー側面9b1と下方傾斜面9b2の間に、ウェハ載置面に対して平行な平坦面9b3を有していてもよい(図9)。この平坦面9b3の幅は5mm以下であることが好ましい。5mm以上であると、平坦面9b3上に堆積した結晶の破片やパーティクルが、ウェハ面上に再飛来してしまうためである。
【0060】
ウェハホルダー上面は、上述の形状を有するものであればよく、例えば下方傾斜面9b2の外縁から外周に向かって広がる外周面9b4を有していてもよい。外縁面9b4の形状はどのような形状をしてもよく、任意の形状を選択することができる。
【0061】
また、ウェハホルダー側面9b1の上端は、ウェハ載置後のウェハWの上面より低い位置にあることが好ましい。ウェハホルダー側面9b1の上端が、ウェハ載置後のウェハWの低い位置にあることで、ウェハ側面が壁となって、下方傾斜面9b2上に堆積した結晶の破片及びパーティクルが、ウェハW面上に再飛来するのを防ぐためである。
【0062】
ウェハホルダー9は材質を問わないが、成長させる層と同じ材質であることが望ましい。材質が同じであれば、材質の違いによる熱膨張率の差は生じないため、ウェハホルダー9上に堆積した結晶が剥離するのを抑えることができる。
【0063】
またウェハホルダー9は、ウェハ支持台7と材質を異なるものを利用できる点で優れている。例えば、SiCをエピタキシャル成長させる場合、ウェハ支持部(第一の実施形態におけるウェハ支持部7bに対応)がSiCで形成されていることが望ましい。ウェハ支持台7をウェハ支持部と同一のSiCで形成した場合、ウェハ加熱時にウェハ支持台7のSiCが昇華し、ウェハの裏面を荒らすという悪影響が生じる。一方でウェハ支持部を、一般にウェハ支持台7の材質として利用されるTaCで形成した場合、TaC被膜上にSiC層が堆積し、TaC被膜との熱膨張の差により、堆積したSiCが剥離しやすくなる。
【0064】
しかし、ウェハホルダー9を用いることにより、ウェハ支持台7をTaC、ウェハホルダー9をSiCと、それぞれ異なる材質を利用することができる。この場合、ウェハ支持台7の上には、SiCウェハとSiCからなるウェハホルダー9が載置されるため、ウェハ支持台7のチャンバ内部側はSiCでカバーされた状態となり、エピタキシャル成長を阻害する物質は存在しなくなる。またSiCウェハの裏面はTaCとなるため、カーボンの昇華は少なくすることができ、裏面を荒らすことを抑制することが可能である。
このように、部材ごとに適切な材料を選ぶことができる点で、ウェハホルダー9は優れている。
【0065】
さらにウェハホルダー9は、ウェハホルダー9の下の部材に結晶が成長するのを防ぐ効果も有している。ウェハ支持台7の表面は、成膜時にウェハWとウェハホルダー9によりカバーされているため、成膜後にウェハWとウェハホルダー9を取り外せば、常にウェハ支持台7を初期のきれいな状態で維持することができる。
【0066】
以上のように、ウェハWをウェハ支持台7のウェハ載置面7a上に支持するために用いられるウェハホルダー9において、ウェハホルダー側面9b1の上端からウェハホルダー側面9b1を囲むように、径方向外方に向けて下降する下方傾斜面9b2を含むウェハホルダー上面を有することにより、ウェハホルダー9上に堆積した結晶が、パーティクルとしてウェハWの面上に再飛来しにくくなり、高品質な層を形成することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 CVD(化学的気相成長)装置
2 搭載プレート
3 シーリング
4 周壁
5 回転台
5a 回転台上面
5b 回転台下面
6 回転軸
7 ウェハ支持台
7a ウェハ載置面
7b ウェハ支持部
7b1 ウェハ支持側面
7b2 下降傾斜面
7b3 平坦面
7b4 外周面
8 収容部
9 ウェハホルダー
9b1 ウェハホルダー側面
9b2 下方傾斜面
9b3 平坦面
9b4 外周面
10 誘導コイル
11 ガス導入管
11a フランジ部
12 開口部
13 支持リング
14 遮蔽板
15 支持部
16 スリーブ部
K 反応空間
W ウェハ
G 原料ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10