特許第6078436号(P6078436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078436
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】柱接合構造及び柱接合方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20170130BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20170130BHJP
   E04G 21/14 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   E04B1/58 503H
   E04B1/24 P
   E04G21/14
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-174614(P2013-174614)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-42823(P2015-42823A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000159272
【氏名又は名称】吉永機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】垂井 睦
(72)【発明者】
【氏名】小川 喜平
(72)【発明者】
【氏名】領木 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】中越 淳郎
(72)【発明者】
【氏名】富樫 良智
(72)【発明者】
【氏名】長 かほる
(72)【発明者】
【氏名】野田 浩志
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−125133(JP,A)
【文献】 実開昭49−002974(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/24
E04G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の柱を吊り上げた状態で前記第1の柱を第2の柱の上端に向かって降ろして前記第2の柱の上端に前記第1の柱の下端を接合させる柱接合構造において、
前記第1の柱の下端及び前記第2の柱の上端のいずれか一方に設けられて上下に延在する突起部と、前記第1の柱の下端及び前記第2の柱の上端のいずれか他方に設けられて前記突起部を嵌合するための穴部と、を有し、前記突起部を前記穴部に嵌合させることで前記第2の柱に対する前記第1の柱の移動を水平方向に規制する水平方向規制機構と、
前記第1の柱の側面から出没するラッチ部と、前記第1の柱の内部で前記ラッチ部を前記側面から突出させる方向に付勢する圧縮バネと、前記ラッチ部と前記圧縮バネとを収容し前記ラッチ部を水平方向に案内するガイド筒部と、前記第2の柱の側面に形成されて前記ラッチ部を受け入れるラッチ挿入孔と、を有し、前記ラッチ挿入孔への前記ラッチ部の挿入によって前記第2の柱に対する前記第1の柱の移動を鉛直方向に規制する鉛直方向規制機構と、
前記ガイド筒部において前記圧縮バネの伸縮方向に延在する第1の溝部と、前記第1の溝部における前記ラッチ部から遠い端部で前記第1の溝部に対して垂直な方向に延在する第2の溝部とを有するガイド溝と、前記ラッチ部から前記ガイド溝を介して突出した操作部と、を有するラッチ解除機構と、
を備えた柱接合構造。
【請求項2】
前記第2の柱の側面には、外側に固定されて前記第2の柱の上面から上方に向かって突出する補強プレートを更に備え、
前記補強プレートには、前記鉛直方向規制機構の前記ラッチ挿入孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の柱接合構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された柱接合構造によって前記第1の柱の下端を前記第2の柱の上端に接合させる柱接合方法において、
前記突起部を前記穴部に嵌合させることによって、前記第2の柱に対する前記第1の柱の移動を水平方向に規制する水平方向規制工程と、
前記ラッチ部を前記第1の柱の側面から突出させた状態として前記第1の柱を前記第2の柱の上端に降ろしているときに、前記ラッチ部が前記第2の柱の側面の上端に当接することによって内部に押し込まれ、前記ラッチ部が内部に押し込まれた状態で前記第2の柱の前記ラッチ挿入孔に達することにより、前記ラッチ部が前記第1の柱の側面及び前記ラッチ挿入孔から外方に突出して、前記第2の柱に対する前記第1の柱の移動を鉛直方向に規制する鉛直方向規制工程と、
前記操作部を前記第1の溝部に沿って移動させて前記圧縮バネを圧縮させることによって前記ラッチ挿入孔への前記ラッチ部の挿入を解除し、前記操作部を前記第2の溝部に沿って移動させることによって前記挿入を解除した状態を保持するラッチ解除工程と、
を備えた柱接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場でのボルト締めや溶接を行わない無人化施工に関するもので、遠隔操作で建設機械を稼動して柱と柱との接合を行う柱接合構造及び柱接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設作業現場で柱を接合する技術は、特開平6−2365号公報に開示されている。この公報には、鉄骨架構を構築する際の柱と梁の接合方法が記載されており、先に建てた鉄骨柱の間に鉄骨梁を接合する工法や、鉄骨柱と鉄骨梁の一端とを接合させた「キ」の字状のユニットを構成し、このユニットを現場に搬入してユニット間の鉄骨梁を接合させるいわゆるキの字工法が開示されている。これらの工法では、溶接によって柱と柱を接合したり、又は柱の端部に溶接されたガセットプレート間をボルト締めすることによって柱と柱が接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−2365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人が立ち入ることができない場所で柱と柱の接合を行う場合には、遠隔操作で建設機械を稼動させて作業を行う無人化施工が実施される。ここで、上記のような溶接やボルト締めであれば柱と柱を確実に接合することができるが、溶接やボルト締めは人手を介して行わなければならないため簡単なものではない。また、上述したような無人化施工では、柱と柱を確実に接合可能な溶接やボルト締めを行うことができないので、無人化施工でも採用可能であって且つ柱と柱を確実に接合可能な手法が求められている。
【0005】
本発明は、無人化施工において柱と柱を簡単且つ確実に接合することができる柱接合構造及び柱接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の柱接合構造は、第1の柱を吊り上げた状態で第1の柱を第2の柱の上端に向かって降ろして第2の柱の上端に第1の柱の下端を接合させる柱接合構造において、第1の柱の下端及び第2の柱の上端のいずれか一方に設けられて上下に延在する突起部と、第1の柱の下端及び第2の柱の上端のいずれか他方に設けられて突起部を嵌合するための穴部と、を有し、突起部を穴部に嵌合させることで第2の柱に対する第1の柱の移動を水平方向に規制する水平方向規制機構と、第1の柱の側面から出没するラッチ部と、第1の柱の内部でラッチ部を側面から突出させる方向に付勢する圧縮バネと、ラッチ部と圧縮バネとを収容しラッチ部を水平方向に案内するガイド筒部と、第2の柱の側面に形成されてラッチ部を受け入れるラッチ挿入孔と、を有し、ラッチ挿入孔へのラッチ部の挿入によって第2の柱に対する第1の柱の移動を鉛直方向に規制する鉛直方向規制機構と、ガイド筒部において圧縮バネの伸縮方向に延在する第1の溝部と、第1の溝部におけるラッチ部から遠い端部で第1の溝部に対して垂直な方向に延在する第2の溝部とを有するガイド溝と、ラッチ部からガイド溝を介して突出した操作部と、を有するラッチ解除機構と、を備えている。
【0007】
上記の柱接合構造では、第1の柱の下端を第2の柱の上端に向かって降ろしていくと、上下に延在する突起部が穴部に嵌合されるので、簡単且つ確実に水平方向への第1の柱の移動が規制される。また、水平方向に移動する第1の柱のラッチ部が第1の柱の側面から突出して第2の柱のラッチ挿入孔に挿入されているので、第2の柱に対する第1の柱の移動が鉛直方向に規制される。従って、第1の柱を第2の柱に向かって降ろすだけで簡単に第1の柱を第2の柱に接合することができる。また、水平方向及び鉛直方向への第1の柱の移動が規制されるので第1の柱を第2の柱に確実に接合することができ、接合された各柱は、水平方向に働く剪断力及び鉛直方向に働く引っ張り力に耐え得る強固な構造となっている。更に、本発明ではラッチ解除機構を備えているので、必要に応じて、ラッチを解除することにより鉛直方向への規制を解除すると共に突起部を穴部から外して水平方向への規制を解除することによって、第1の柱と第2の柱の接合を簡単に解除することができる。このように、第1の柱と第2の柱の接合を簡単に解除することができるので、人が立ち入ることができない現場で第1の柱と第2の柱とを接合する前に、別の場所で簡単に接合確認を行うことができる。
【0008】
また、第2の柱の側面には、外側に固定されて第2の柱の上面から上方に向かって突出する補強プレートを更に備え、補強プレートには、鉛直方向規制機構のラッチ挿入孔が形成されている。
上記の柱接合構造では、第2の柱の側面の外側に補強プレートが固定されており、第1の柱の側面から突出するラッチ部は補強プレートのラッチ挿入孔に内側から挿入されることとなる。よって、第1の柱の下端と第2の柱の上端を補強プレートで保護することができ、より強固な柱接合構造とすることができる。
【0009】
本発明の柱接合方法は、上記の柱接合構造によって第1の柱の下端を第2の柱の上端に接合させる柱接合方法において、突起部を穴部に嵌合させることによって、第2の柱に対する第1の柱の移動を水平方向に規制する水平方向規制工程と、ラッチ部を第1の柱の側面から突出させた状態として第1の柱を第2の柱の上端に降ろしているときに、ラッチ部が第2の柱の側面の上端に当接することによって内部に押し込まれ、ラッチ部が内部に押し込まれた状態で第2の柱のラッチ挿入孔に達することにより、ラッチ部が第1の柱の側面及びラッチ挿入孔から外方に突出して、第2の柱に対する第1の柱の移動を鉛直方向に規制する鉛直方向規制工程と、操作部を第1の溝部に沿って移動させて圧縮バネを圧縮させることによってラッチ挿入孔へのラッチ部の挿入を解除し、操作部を第2の溝部に沿って移動させることによって挿入を解除した状態を保持するラッチ解除工程と、を備えている。
【0010】
上記の柱接合方法では、上下に延在する突起部を穴部に嵌合させる水平方向規制工程によって水平方向への第1の柱の移動を簡単且つ確実に規制することができる。また、鉛直方向規制工程では、ラッチ部を第2の柱の側面の上端に当接させて第1の柱の内部に押し込んだ後に、更に第1の柱を降ろしてラッチ部をラッチ挿入孔に挿入させることにより鉛直方向への第1の柱の移動を規制することができる。よって、第1の柱を第2の柱に向かって降ろすだけで簡単に第1の柱を第2の柱に接合することができる。また、水平方向及び鉛直方向への第1の柱の移動が規制されるので第1の柱を第2の柱に確実に接合することができ、接合された各柱は、水平方向に働く剪断力及び鉛直方向に働く引っ張り力に耐え得る強固な構造となっている。更に、本発明ではラッチ解除工程を備えているので、必要に応じて、ラッチを解除することにより鉛直方向への規制を解除すると共に突起部を穴部から外して水平方向への規制を解除することによって、第1の柱と第2の柱の接合を簡単に解除することができる。このように、第1の柱と第2の柱の接合を簡単に解除することができるので、人が立ち入ることができない現場で第1の柱と第2の柱とを接合する前に、別の場所で簡単に接合確認を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無人化施工において柱と柱を簡単且つ確実に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る柱接合構造を適用する架構式構造体を示す斜視図である。
図2図1の柱接合構造を示す斜視図である。
図3図1の柱接合構造を示す側面図である。
図4図3のIV−IV線断面図である。
図5図3のV−V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る柱接合構造及び柱接合方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1に示されるように、第1の架構式構造体1をクレーンで吊り上げて下側の第2の架構式構造体2に連結させる際に、第1の架構式構造体1を構成する4本の第1の柱1aの下端と、第2の架構式構造体2を構成する4本の第2の柱2aの上端とが接合される。第1の架構式構造体1は4本の柱1aと、柱1a間に架け渡された4本の梁1bとを有しており、同様に、第2の架構式構造体2は4本の柱2aと、柱2a間に架け渡された4本の梁2bとを有している。また、第2の架構式構造体2の上端には、第1の架構式構造体1を第2の架構式構造体2に向けて降ろすときに、第1の架構式構造体1のズレを案内して、第1の架構式構造体1を第2の架構式構造体2の真上に位置させるようにするガイド部材3が固定されている。
【0015】
ガイド部材3は、側面視で台形状となっており、第2の架構式構造体2の梁2bに溶接されて梁2bから上方に延在する6本の延在部3aと、各延在部3aの上端から内側に向かって斜め上方に延びる傾斜部3bと、各傾斜部3bの上端で連結されたH形状の頂部3cとを有している。ここで、水平面上における第1の架構式構造体1の位置が第2の架構式構造体2の位置に対して若干ずれた状態で第1の架構式構造体1を第2の架構式構造体2に降ろしていくと、第1の架構式構造体1の梁1bがガイド部材3の傾斜部3bに接触する。その後、第1の架構式構造体1は、ガイド部材3の傾斜部3b及びガイド部材3の延在部3aに沿って降下する。よって、第1の架構式構造体1は、水平面上における梁1bの位置と梁2bの位置とが一致した正確な位置に導かれ、各第1の柱1aの下端と各第2の柱2aの上端との位置合わせが完了する。
【0016】
図1及び図2に示されるように、第1の架構式構造体1における柱1aの下端には第1の接合ユニット10が固定されており、第2の架構式構造体2における柱2aの上端には第2の接合ユニット20が固定されており、第1の接合ユニット10と第2の接合ユニット20が接合することによって第1の柱1aと第2の柱2aが接合される。
【0017】
第1の接合ユニット10の下端には下面が平坦な第1のフランジ部10aが設けられており、第2の接合ユニット20の上端には上面が平坦な第2のフランジ部20aが設けられている。第1の接合ユニット10と第2の接合ユニット20とが接合される際には第1のフランジ部10aの下面と第2のフランジ部20aの上面とが接触するので、第2の接合ユニット20上の第1の接合ユニット10を確実に水平に保つことができる。また、第1及び第2のフランジ部10a,20aを有することにより、第1及び第2の接合ユニット10,20に加えられた圧縮力をフランジ部10a,20aで分散させることができるので、圧縮力に対する耐性を高めることができる。
【0018】
図2及び図3に示されるように、第1の接合ユニット10には、フランジ部10aの上面に溶接された台形状のリブ部10bが左右対称に設けられている。2枚のリブ部10bは、それぞれ第1の柱10の側面10dから張り出すように設けられており、各リブ部10bはフランジ部10aの外側から第1の接合ユニット10の側面10dに向かって傾斜している。
【0019】
図2及び図5に示されるように、第2の接合ユニット20の上端には、第2の接合ユニット20の側面20dの外側に溶接されて第2の接合ユニット20の上面20eから上方に向かって突出する補強プレート21が2枚設けられている。2枚の補強プレート21は、第2の接合ユニット20に向かって降ろされる第1の接合ユニット10を挟み込んで第1の接合ユニット10を案内する。また、補強プレート21には、第1の接合ユニット10の側面10eから出没するラッチ部11を受け入れるためのラッチ挿入孔21aが形成されている。
【0020】
第1の接合ユニット10の内部には、ラッチ部11を水平方向に案内する円筒状のガイド筒部12と、ラッチ部11を第1の柱10の側面10eから突出させる方向に付勢する圧縮バネ13とが左右一対に設けられている。ラッチ部11と圧縮バネ13は、ガイド筒部12の内部に収容されている。水平方向に延在する各ガイド筒部12は、第1の接合ユニット10内部で上下に延在する支持プレート14と第1の接合ユニット10の内側面10fとに溶接されている。また、各ガイド筒部12の下部には、ガイド筒部12内の水を外に排出するための水抜き孔12aが設けられている。
【0021】
水平方向に伸縮する各圧縮バネ13は、一端がバネ支持部15に固定されており、他端がラッチ部11に固定されている。バネ支持部15は、ガイド筒部12の内部で支持プレート14に溶接されている。また、ラッチ部11の先端には、下方に向かうに従って内側に傾斜する傾斜面11aが形成されており、補強プレート21の上端には内側に向かうに従って下方に傾斜する傾斜面21bが形成されている。よって、第2の接合ユニット20に第1の接合ユニット10を降ろす際に、ラッチ部11の傾斜面11aを補強プレート21の傾斜面21b上でスムーズに移動させることができる。
【0022】
このように、第1の接合ユニット10を第2の接合ユニット20に降ろしていくと、ラッチ部11の傾斜面11aが補強プレート21の傾斜面21bに当接してラッチ部11が圧縮バネ13の付勢力に抗して第1の接合ユニット10内部に押し込まれる。そして、ラッチ部11が第1の接合ユニット10内部に押し込まれた状態で更に第1の接合ユニット10を降ろしていき、ラッチ部11が補強プレート21のラッチ挿入孔21aに達すると、圧縮バネ13の付勢力によってラッチ部11がラッチ挿入孔21aから外方に突出する。このように、ラッチ部11がラッチ挿入孔21aから外方に突出すると、第2の接合ユニット20に対する第1の接合ユニット10の移動が鉛直方向に規制される。
【0023】
図4及び図5に示されるように、ガイド筒部12の上部には、L字状のガイド溝17が形成されている。このガイド溝17は、圧縮バネ13の伸縮方向に延在する第1の溝部17aと、第1の溝部17aにおけるラッチ部11から遠い端部17cで第1の溝部17aに対して垂直な方向に延在する第2の溝部17bとを有する。また、ラッチ部11にはボルトからなる操作部18が螺合によって固定されており、この操作部18は上記ガイド溝17を介して上方に突出している。
【0024】
図4に示されるように、上記の操作部18を第1の溝部17aに沿って端部17cに移動させることにより、圧縮バネ13を圧縮させてラッチ部11を第1の接合ユニット10の内側に移動させることができ、ラッチ挿入孔21aへのラッチ部11の挿入が解除可能となっている。また、操作部18をガイド溝17の端部17cから第2の溝部17bに沿って移動させることにより、圧縮バネ13が伸びようとしても操作部18が第2の溝部17bの壁面17dに引っ掛けられるので上記圧縮バネ13の圧縮状態が保持される。
【0025】
上記のように圧縮バネ13の圧縮状態が保持されると、ラッチ部11が第1の接合ユニット10の内部に入り込んだ状態が保持されるので、ラッチ挿入孔21aへのラッチ部11の挿入が解除された状態を保持することができる。また、ラッチ部11に固定された操作部18はガイド溝17から上方に延在しているので、ラッチ部11の回転が防止されており、ラッチ部11の傾斜面11aを下向きに維持することができる。更に、操作部18をガイド溝17から上方に突出させることで操作部18を操作し易くなっている。
【0026】
また、図3及び図5に示されるようなラッチ解除具30でラッチ挿入孔21aへのラッチ部11の挿入を解除することができる。ラッチ解除具30は、下端で操作部18を保持する筒状の操作部保持部31と、ガイド溝17に対する操作部18の移動を操作する操作ハンドル32と、操作部保持部31と操作ハンドル32を連結する連結部33と、を有している。
【0027】
このラッチ解除具30では、第1の接合ユニット10の側面10eに形成された開口10cから操作部保持部31を第1の接合ユニット10内部に挿入した後に、操作ハンドル32を操作して操作部保持部31の下端に操作部18を嵌め込む。そして、操作部保持部31の下端に操作部18を嵌め込ませた状態で操作ハンドル32を第1の接合ユニット10の内方Dに押し込んで操作部18をガイド溝17の端部17cに移動させる。その後、操作ハンドル32を傾けることにより操作部18を第2の溝部17bに沿って移動させる。操作部18を第2の溝部17bに沿って移動させた状態で操作部18から操作部保持部31を離すと、圧縮バネ13の付勢力によって操作部18が壁面17dに当接するので、圧縮バネ13の圧縮状態が保持されると共にラッチ挿入孔21aに対するラッチ部11の挿入解除状態が保持される。
【0028】
また、図3及び図5に示されるように、第2の接合ユニット20の上端部20fには、上端部20fから突出する突起部22が設けられており、この突起部22は上端部20fの中央に形成された開口部20gの内側面に溶接されている。第1の接合ユニット10の下端部10gには上記突起部22を嵌合するための穴部16が設けられている。第1の接合ユニット10を第2の接合ユニット20に降ろしていくと、第2の接合ユニット20の突起部22が第1の接合ユニット10の穴部16に嵌合する。よって、水平面上における第1の接合ユニット10の位置が定まり、第2の接合ユニット20に対する第1の接合ユニット10の移動が水平方向に規制される。
【0029】
次に、図1に示される第1の架構式構造体1の柱1aを第2の架構式構造体2の柱2aに接合させる方法について説明する。まず、クレーンで第1の架構式構造体1を吊ってから、第1の架構式構造体1を第2の架構式構造体2の上方に位置させる。そして、ガイド部材3で位置の微調整をさせながら、第1の架構式構造体1を第2の架構式構造体2の上端に向かって降ろしていき、上述した第1及び第2の接合ユニット10,20によって、それぞれの第2の柱2aに第1の柱1aを接合させる。
【0030】
このとき、図5に示されるラッチ部11の傾斜面11aが補強プレート21の傾斜面21bに当接することにより、各ラッチ部11が圧縮バネ13の付勢力に抗して第1の接合ユニット10の内側に移動する。そして、更に第1の接合ユニット10を降ろしていくとラッチ部11が補強プレート21に対して下降し、ラッチ部11の上端の高さ位置がラッチ挿入孔21aの上端の高さ位置よりも低くなったときに各ラッチ部11がラッチ挿入孔21aから外方に突出する。このように左右一対に設けられたラッチ部11をラッチ挿入孔21aから外方に突出させることにより、第2の柱2aに対する第1の柱1aの移動を鉛直方向に規制した鉛直方向規制工程が行われる。
【0031】
また、第1の接合ユニット10を第2の接合ユニット20に向かって降ろしていくと、第1の接合ユニット10の穴部16が第2の接合ユニット20の突起部22に向かって移動する。そして、穴部16に突起部22が嵌合することにより、第2の柱2aに対する第1の柱1aの移動を水平方向に規制した水平方向規制工程が行われる。
【0032】
次に、第1の柱1aと第2の柱2aの接合を解除する方法について図4及び図5を参照して説明する。まず、ラッチ解除具30の操作部保持部31を開口10cから第1の接合ユニット10内部に挿入して、操作部保持部31の下端で操作部18を保持する。そして、操作ハンドル32を押し込んで操作部18を端部17cに移動させた後、操作ハンドル32を第2の溝部17b側に傾ける。その後、操作部保持部31を操作部18から外すと、操作部18は第2の溝部17bの壁面17dに引っ掛かって、ラッチ挿入孔21aにラッチ部11が挿入されていない状態を維持したラッチ解除工程が行われ、鉛直方向への柱1aの移動規制が解除される。
【0033】
上記のように、鉛直方向への柱1aの移動規制を解除した状態でクレーンによって図1の第1の架構式構造体1を引き上げると、第1の接合ユニット10の下端部10gが上方移動して穴部16に対する突起部22の嵌合が解除される。よって、水平方向への柱1aの移動規制が解除されるので、第1の柱1aと第2の柱2aの接合を解除することができる。
【0034】
以上のように、第1の接合ユニット10と第2の接合ユニット20を備えた柱接合構造及び柱接合方法では、第1の接合ユニット10の穴部16と第2の接合ユニット20の突起部22によって水平方向規制機構が構成されている。すなわち、第1の柱1aの下端を第2の柱2aの上端に向かって降ろしていくと、第2の接合ユニット20の突起部22が第1の接合ユニット10の穴部16に嵌合されるので、水平方向への柱1aの移動が簡単且つ確実に規制される。
【0035】
また、図5に示されるように、ラッチ部11と、ガイド筒部12と、圧縮バネ13と、ラッチ挿入孔21aとによって鉛直方向規制機構が構成されている。すなわち、第1の柱1aを第2の柱2aに向かって降ろしていくと、水平方向に移動するラッチ部11が圧縮バネ13の付勢力によって第2の接合ユニット20のラッチ挿入孔21aから外方に突出するので、第2の柱2aに対する第1の柱1aの移動が鉛直方向に規制される。このように、第1の柱1aを第2の柱2aに降ろすだけで水平方向及び鉛直方向への柱1aの移動が規制されるので、溶接やボルト締めを施さなくても無人化施工で第1の柱1aと第2の柱2aを確実に接合することができる。そして、接合された各柱1a,2aは、水平方向に働く剪断力と、鉛直方向に働く引張り力と、鉛直方向に働く圧縮力とに耐え得る強固な構造となっている。
【0036】
更に、第1の接合ユニット10は、ガイド筒部12に形成されたガイド溝17と、ラッチ部11からガイド溝17を介して突出した操作部18とによってラッチ解除機構を構成している。よって、必要に応じて、ラッチを解除して鉛直方向への規制を解除すると共に、突起部22を穴部16から外して水平方向への規制を解除することで、第1の柱1aと第2の柱2aの接合を簡単に解除することができる。このように、第1の柱1aと第2の柱2aの接合を簡単に解除することができるので、現場に搬入する前に別の場所で簡単に第1の柱1aと第2の柱2aの接合確認を行うことができる。
【0037】
また、第2の接合ユニット20の側面20dの外側に補強プレート21が固定されており、第1の接合ユニット10の側面10eから突出するラッチ部11は補強プレート21のラッチ挿入孔21aに内側から挿入される。よって、第1の接合ユニット10と第2の接合ユニット20を補強プレート21で保護することができ、より強固な柱接合構造とすることができる。
【0038】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。
【0039】
図5に示されるようにラッチ部11と、ガイド筒部12と、圧縮バネ13と、補強プレート21を左右一対に備えていたが、ラッチ部11と、ガイド筒部12と、圧縮バネ13と、補強プレート21の数及び配置態様は上記に限定されず適宜変更可能である。また、ガイド筒部12は第1の接合ユニット10の内側面10fと支持プレート14に溶接で固定されていたが、ボルト締めによって固定されていてもよい。更に、補強プレート21は無くてもよく、第2の接合ユニット20の側面にラッチ挿入孔を形成してもよい。
【0040】
上記実施形態では、操作部18がボルトであったが、ボルト以外のものを操作部としてもよい。すなわち、ラッチ部11に固定され且つガイド溝17を介してガイド筒部12から突出するものであれば操作部として利用可能である。また、操作部18はガイド筒部12から上方に突出していたが、突出する方向は上方に限定されない。
【0041】
上記実施形態では、第2の接合ユニット20が突起部22を有し第1の接合ユニット10が穴部16を有していたが、第2の接合ユニット20が穴部を有し第1の接合ユニット10が下方に突出する突起部を有していてもよい。
【0042】
上記実施形態では、ラッチ解除具30によって操作部18を移動してラッチ部11のラッチを解除したが、人手で操作部18を移動してラッチを解除することも可能である。
【0043】
また、第1の柱1aは第1の架構式構造体1に4本設けられ、第2の柱2aは第2の架構式構造体2に4本設けられていた。しかしながら、本発明は、4本の柱を有する架構式構造体に限られず、柱と柱を接合させる構造であれば種々の構造体に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…第1の架構式構造体、1a…第1の柱、2…第2の架構式構造体、2a…第2の柱、10…第1の接合ユニット、10e…側面、11…ラッチ部、12…ガイド筒部、13…圧縮バネ、16…穴部、17…ガイド溝、17a…第1の溝部、17b…第2の溝部、17c…端部、18…操作部、20…第2の接合ユニット、20d…側面、20e…上面、21…補強プレート、21a…ラッチ挿入孔、22…突起部。
図1
図2
図3
図4
図5