特許第6078500号(P6078500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6078500真空に関連した力に反応する容器の底部構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078500
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】真空に関連した力に反応する容器の底部構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   B65D1/02 230
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-139386(P2014-139386)
(22)【出願日】2014年7月7日
(62)【分割の表示】特願2010-268769(P2010-268769)の分割
【原出願日】2004年4月30日
(65)【公開番号】特開2014-184987(P2014-184987A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2014年7月7日
(31)【優先権主張番号】10/445,104
(32)【優先日】2003年5月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505432887
【氏名又は名称】アムコー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】リッシュ,ジー.,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】シルバーズ,ケリー,ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ベイレンコート,ドウェイン,ジー.
【審査官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−167078(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0074336(US,A1)
【文献】 特開平08−156904(JP,A)
【文献】 特開平02−085143(JP,A)
【文献】 実開平03−100788(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空吸収に適応した底部(20)を備えているプラスチック容器(10)であって、
口状部(22)を有する上部と、
上記上部から底部(20)へ伸びる胴体部(18)とを備え、
上記底部(20)は上記容器(10)の底をふさぎ、
上記上部と、上記胴体部(18)と、上記底部(20)とによって、中に製品が充填される空間が形成され、
上記底部(20)は、その表面で上記容器(10)を支える接触リング(34)と、起立壁(44)と、中心部(36)とを備え、
上記起立壁(44)は、上記接触リング(34)に近接するとともに当該接触リング(34)にほぼ取り囲まれ、
上記中心部(36)は、
上記容器(10)の縦軸(50)に位置する上げ底部(40)と、
上記起立壁(44)から伸びるとともに上記上げ底部(40)を取り囲む反転リング(42)とによって少なくともその一部が形成されているとともに、
上記上げ底部(40)および上記反転リング(42)は、上記容器内で生じる真空力を調節するために可動である、容器であって、
上記容器(10)の初期形成時において、上記反転リング(42)は、その断面においてほぼS字型であり、
上記反転リング(42)は上記容器(10)が充填され、密閉されているときに、内側に向かって持ち上がり、上記中心部(36)に形成される円錐形の一部となり、当該中心部(36)は、支持面(38)に対して15°の角度(62)において上記容器(10)の上記縦軸(50)に向かって傾斜している面(60)を有し、
上記中心部(36)の上記縦軸(50)方向への投影面積は、上記底部(20)の上記縦軸(50)方向への投影面積の55%を超え、
上記起立壁(44)は、上記容器(10)の上記縦軸(50)にほぼ平行であることを特徴とする容器。
【請求項2】
上記起立壁(44)は、上記接触リング(34)に直接近接していることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
上記起立壁(44)は、実質的に鋭角をなして上記接触リング(34)から延出していることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項4】
上記起立壁(44)の高さは、少なくとも0.030インチ(0.762mm)であることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項5】
上記起立壁(44)の高さは、0.180インチ(4.572mm)であることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項6】
上記胴体部(18)は、実質的に滑らかな側壁(30)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項7】
上記反転リング(42)の厚みは、0.008インチ(0.203mm)から0.025インチ(0.635mm)の間であることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項8】
上記胴体部(18)は、厚みを有し、上記底部(20)は、厚みを有し、
上記胴体部(18)の厚みは、上記底部(20)の厚みより少なくとも15%厚いことを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項9】
上記反転リング(42)は、第一部分(54)と第二部分(58)とを備え、
上記第一部分(54)と支持面(38)との間の第一距離(52)は、上記第二部分(58)と上記支持面(38)との間の第二距離(56)より長いことを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項10】
上記上げ底部(40)は、その断面においてほぼ円錐台形状をしていることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項11】
上記上げ底部(40)は、上面(46)を有しており、
上記上面(46)は、上記容器(10)の形成時、および上記容器(10)が充填され密閉された後に、上記支持面(38)にほぼ平行であることを特徴とする請求項10に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、商品、特に液体商品を保持するためのプラスチック容器に関連する。より具体的には、本発明はパネルのないプラスチック容器に関連しており、その底部構造によって、該底部が真空圧を大幅に吸収することができ、上記容器の別の部分に不要な変形をもたらすこともないプラスチック容器に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
以前はガラス容器に入って供給されていた多くの商品は、今やプラスチック容器、より具体的にはポリエステル、さらに具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)容器に入って供給されている。製造者、充填業者、そして消費者も、PET容器は軽量で、安価で、リサイクル可能で、大量生産可能であるということを認識している。
【0003】
現在、製造業者は、例えば飲料のような様々な液体商品用のPET容器を供給している。例えばジュースやスポーツドリンクなどのこれら液体製品は、一般的には68℃〜96℃(155°F〜205°F)、通常は約85℃(185°F)の高温で上記容器に充填される。上記方法によって詰める場合、充填時に容器を消毒するために、上記液体商品の上記高温が使用される。上記処理は、ホットパック充填(hot filling)として知られている。この処理に耐久するよう設計された容器は、ホットパックまたはヒートセット(heat set)容器として知られている。
【0004】
ホットパック充填は、その内容物の酸度が高い商品に対しては許容できる処理である。しかし、その内容物の酸度が高くない商品に関しては、別の方法で処理しなければならない。それにも関わらず、内容物の酸度が高くない商品の製造業者および充填業者もが、彼らの商品をPET容器に入れて供給したいと考えている。
【0005】
酸度が高くない商品に対しては、低温殺菌およびレトルトが好適な消毒処理である。ヒートセット容器は、低温殺菌およびレトルトに必要な温度および時間要求に耐久不可能である。この点において、低温殺菌およびレトルトは両者とも、PET容器の製造に大きな課題を与えている。
【0006】
低温殺菌およびレトルトは両者とも、内容物が充填された後、容器のその内容物を加熱または消毒するための処理である。両処理とも、通常は約70℃(約155°F)より高い特定の温度で、特定時間(20〜60分)容器の内容物を加熱する処理を含んでいる。高温が使用される点に加え、外側からの容器へ加圧される点において、レトルトは低温殺菌と異なる。外側から容器へ圧力を加えることは必要なことである。なぜなら、湯槽(hot water bath)が使用されることが多く、過度の圧力によって、水だけでなく容器の内容物中の液体が、それぞれの沸点より高い温度で液状を維持するからである。
【0007】
PETは結晶化可能なポリマーである、つまり非晶質形状または部分的結晶形状で利用できる。PET容器がその物質の一体性を保持する能力は、PET容器の「結晶化度(crystallinity)」としても知られている、結晶性形状にあるPET容器の割合に関連している。結晶化度の割合は、以下の等式による体積分率として特徴付けられる。
【0008】
【数1】
【0009】
上記等式において、pはPET物質の濃度、pは純非晶PET物質(1.333g/cc)の濃度、そしてpは純結晶質(1.455g/cc)の濃度である。
【0010】
PET容器の結晶化度は、機械的処理および熱処理によって増加させることができる。機械的処理は、ひずみ硬化を達成するよう非晶質を配向させる処理を含む。この処理は、一般的に、PETプリフォームを縦軸に沿って延ばし、該PETプリフォームを横または放射軸に沿って広げてPET容器を形成する処理を含んでいる。この組み合わせは、容器内の分子構造のいわゆる2軸配向を促進する。現在、PET容器の製造業者は、容器の側壁の結晶化度が約20%であるPET容器を製造するために、機械的処理を利用している。
【0011】
熱処理は、結晶成長を促進するために物質(非晶質または部分的結晶質のいずれか)を加熱する処理を含んでいる。非晶質に対しては、PET物質の熱処理は、光の透過を阻害する球状の形態をもたらす。つまり、結果として生じる結晶質は不透明であり、従って一般的に好ましくない。しかし機械的処理後に使用すると、2軸分子配向を有する容器の上記部分に対して、より高い結晶化度および優れた透明度が得られる。ヒートセットとして知られている、配向されたPET容器の熱処理は、一般的に、約120℃〜130℃(
約248°F〜266°F)の温度で加熱された金型でPETプリフォームを吹込み成形する処理と、加熱された金型で、吹込まれた容器を約3秒間保持する処理とを含んでいる。約85℃(185°F)でホットパック充填しなければならないPETジュースボトルの製造業者は、現在、全体の結晶化度が25〜30%の範囲内であるPETボトルを製造するために、ヒートセットを利用している。
【0012】
ホットパック充填された後、上記ヒートセット容器はキャップされ、一般的にほぼ充填温度で約5分間置かれる。次に、容器は製品と共に積極的に冷却され、充填された容器は、ラベル貼り、梱包、および出荷作業へと移される。冷却されると、容器内の液体の容積は減少する。製品が減少するこの現象によって、容器内に真空が生じる。一般的に、容器内の真空圧は1〜300mm/Hgの範囲内である。これらの真空圧は、制御または調節されない場合、容器の変形を引き起こし、これによって美的に許容できない容器または不安定な容器のいずれかを生じてしまう。一般的に、真空圧は、容器の側壁に構造を組み込むことによって調節されている。これらの構造は、真空パネル(vacuum panel)として一般的に知られている。真空パネルは、真空圧下で、制御された様式で内側に変形するように設計されており、容器の側壁の不要な変形を取り除く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
真空パネルによって、容器がホットパック充填処理の厳しさに耐えることができるが、一方で真空パネルはいくらかの制限および欠点も持ち合わせている。第一に、滑らかなガラス様の外見が得られないことである。第二に、ラベル貼りにおいて、容器の真空パネル上に、巻きつけラベルまたはスリーブラベルが貼付される。側壁または真空パネル上の上記ラベルは、しわになって滑らかでないことが多い。さらに、容器をつかんだ時、真空パネルがラベルの下にあるような感じがし、結局ラベルが真空パネルの様々な割れ目や凹みの中に押し込まれてしまう。
【0014】
さらに改良を加え、真空圧によって生じる容器の変形を制御するための一助とするために、容器の側壁のピンチグリップ構造が利用されている。しかし、真空パネルと同様、ピンチグリップにも同様の制限および欠点が存在する。
【0015】
ホットパック充填用プラスチック容器が、真空を調節する構造的特長を持たずして上述の目的を達成するための別の方法は、窒素充填技術を利用することである。しかし窒素充填技術の1つの欠点は、現在の技術で達成可能な最小ラインスピードが1分当たり約200容器に限定されていることである。このような遅いラインスピードはとても許容できるものではない。さらに充填密度は、効率的な作業を達成するための技術的水準に未だ至っていない。
【0016】
従って、ホットパック充填によって発生する真空圧を調節することができ、かつ実質的な構造を持たない側壁を有するガラス容器の外観を模倣して、滑らかなガラス様の外観を可能にする改良版の容器に対する要求がある。従って本発明の目的は、そのような容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記のように、本発明は、ホットパック充填されて室温まで冷却された後のあらゆる処理において美的および機械的一体性を維持するプラスチック容器を提供するものである。上記プラスチック容器は、底部が真空圧を大幅に吸収することを可能にする底部構造を有しており、そのため底部以外の部分に不要な変形をもたらすことがない。ガラス容器の場合、該容器は動かず、その構造は全ての圧力および力を抑制しなければならない。袋容器の場合、該容器は容易に動いて製品に適応する。本発明は、やや洗練されており、動く領域と動かない領域とを提供している。最終的には、本発明によるプラスチック容器の底部が移動または変形した後、該容器の残りの全体構造は、つぶれることなく、新たなあらゆる圧力または力を抑制する。
【0018】
本発明は、上部、胴体部または側壁部、および底部を有するプラスチック容器を含んでいる。上記上部は、上記容器の口を形成する開口部、端部(finish section)、ねじ山領域、および支持リングを、必ずしも必要ではないが、備えることができる。上記胴体部は、上記上部から上記底部まで伸びている。上記底部は、少なくとも部分的に、中心上げ底部および反転リングから構成される中心部を備えている。上記中心上げ底部および反転リングは、上記容器内で発生する真空力を調節するために可動である。
【0019】
本発明のさらなる利点および長所については、本発明に関連のある業者にとっては、後述する好適な実施形態および請求項を添付図と共に参照することで明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】成型され、中は空である状態の本発明のプラスチック容器の正面図である。
図2】充填され、密封された状態の本発明のプラスチック容器の正面図である。
図3図1に示すプラスチック容器の底部を示す部分的な斜視図である。
図4図2に示すプラスチック容器の底部を示す部分的な斜視図である。
図5図3に示すプラスチック容器の、ほぼ線5−5に沿った断面図である。
図6図4に示すプラスチック容器の、ほぼ線6−6に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好適な実施形態に関する以下の説明は、全くの例証であって、本発明、本発明の適用方
法または用途を制限するものでは決してない。
【0022】
前述したように、ヒートセット容器内の内容物の冷却中に真空力を調節するため、容器
には、その側壁の周囲に一連の真空パネルまたはピンチグリップが備えられている。上記
真空パネルまたはピンチグリップは、真空力の影響下で内側に変形し、上記容器の別の部
分における不要な変形を防止する。しかし、上記真空パネルまたはピンチグリップがある
と、上記容器の側壁は滑らかまたはガラス様ではなくなり、その上に貼付されたラベルが
滑らかでなくなり、また最終消費者が上記容器をつかむまたは持ち上げた時に、上記真空
パネルおよびピンチグリップを触知してしまう。
【0023】
真空パネルのない容器では、(例えば底部または蓋(closure)での)制御された変形と、該容器の残りの部分における真空耐性との組み合わせが必要である。従って、本発明が提供するプラスチック容器は、その底部が容易に変形かつ動くことができ、一方で該容器の残りの部分において、内部真空に耐えることができる堅い構造を維持している。例えば、20オンスのプラスチック容器は、約22ccの容積縮小を行う必要がある。本発明のプラスチック容器では、底部が上記必要量の大部分(即ち約18.5cc)を調節する。上記プラスチック容器の残りの部分は、上記容積縮小の残りに対して容易に適応することができる。
【0024】
図1および2に示すように、本発明のプラスチック容器10は、端部12、伸長首状部14、肩領域16、胴体部18、および底部20を備えている。プラスチック容器10は、高温・低温度殺菌またはレトルトのような熱処理中に商品を保持するよう特殊に設計されている。プラスチック容器10は、上記以外の熱処理中に商品を保持するために使用してもよい。
【0025】
本発明のプラスチック容器10は、吹込み成型された2軸配向容器であり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂のような単一または多層材料からなる単一構造を有している。もしくは、プラスチック容器10は、上記以外の方法によって上記以外の従来の材料から形成することもできる。上記以外の従来の材料とは、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)、およびPETとPENとの混合物または重合体を含むものである。吹込み成型され、PET材料からなる単一構造を有するプラスチック容器は知られており、プラスチック容器の技術分野において使用されており、本発明におけるそれらの製造に関しては、当業者であれば容易に理解できるであろう。
【0026】
プラスチック容器10の端部12は、開口部または口状部22、ねじ山領域24、および支持リング26を形成する部分を備えている。開口部22は、プラスチック容器10に商品を注入することを可能にし、一方、ねじ山領域24は、図2に示す、同様のねじ蓋またはキャップ28の取り付け手段を提供している。もしくは、プラスチック容器10の端部12は、上記以外の適切な器具と係合する構成を含んでいてもよい。したがって、蓋またはキャップ28は、端部12と係合する機能を有し、好ましくはプラスチック容器10をハーメチック封止する。蓋またはキャップ28は、蓋産業では一般的なプラスチックまたは金属素材から製造され、高温・低温殺菌およびレトルトなどを含む、後に行われる熱処理に適していることが好ましい。支持リング26は、製造を通して、また製造の種々の工程において、プリフォーム(プラスチック容器10の前駆体)(不図示)を運ぶ、またはプリフォームの方向を変えるために使用してもよい。例えば、上記プリフォームは支持リング26を用いて運ばれてもよく、支持リング26は、上記プリフォームを金型内に位置決めする一助として使用されてもよい。もしくは、支持リング26は、最終消費者がプラスチック容器10を持ち運ぶために使用されてもよい。
【0027】
プラスチック容器10の首状部14は細長くなっているため、プラスチック容器10が容積要求に合わせることができる。伸長首状部14と一体的に形成され、首状部14から下方に伸びている部分は肩領域16である。肩領域16は、伸長首状部14と胴体部18との境を形成および提供している。胴体部18は、肩領域16から底部20まで下方に伸び、側壁30を有している。容器10の底部20における構成が特殊であるため、ヒートセット容器10の側壁30は、その内部に真空パネルまたはピンチグリップを備えることなく形成されており、一般的に滑らかでガラス様である。極めて軽量の容器は、底部20と共に、真空パネルおよび/またはピンチグリップを備えさせることによって形成することができる。
【0028】
一般的に胴体部18から伸びるプラスチック容器10の底部20は、一般的に、出縁32、接触リング34、および中心部36を備えている。図5および6に示すように、接触リング34は、容器10を支える支持面38に接触する底部20の一部それ自体である。このように、接触リング34は、一般的に底部20を連続的または断続的に囲む平面または接触線であってよい。底部20は、プラスチック容器10の底部を閉じ、また伸長首状部14、肩領域16、および胴体部18と共に製品を保持する機能を有する。
【0029】
プラスチック容器10は、前述した処理または別の従来のヒートセット処理に従ったヒートセットであることが好ましい。真空力を調節し、また容器10の胴体部18の真空パネルおよびピンチグリップの省略を可能にするため、本発明の底部20は斬新かつ革新的な構成を採用している。一般的に、底部20の中心部36には、中心上げ底部40および反転リング42が備えられている。さらに底部20は、反転リング42と接触リング34との境を形成している直立する周辺壁または縁44を備えている。
【0030】
図1から6に示すように、中心上げ底部40は、断面で見ると、ほぼ円錐台の形状をしている。中心上げ底部40は、支持面38と一般的にほぼ平行な上面46と、一般的に平面で容器10の中心縦軸50に向かって上方に傾斜している側面48とを有している。中心上げ底部40の正確な形状は、種々の設計基準次第で大きく変わってもよい。しかし、一般的に、中心上げ底部40の直径は、底部20の全径の最大でも30%である。中心上げ底部40は、一般的に、上記プリフォームのゲートが上記金型内に捕捉される部分であり、かつ、実質的に配向されていない容器10の底部20の一部である。
【0031】
図3および5に示すように、初期形成時において、反転リング42は、段階的に変化する半径を有する中心上げ底部40を完全に取り囲み、中心上げ底部40の範囲を限定するリングとして成型される。形成時において、反転リング42は、外側に突き出しており、もし底部20が平坦であったら接触する平面よりも下に突き出している。断面で見ると(図5を参照)、反転リング42は、ほぼ「S」字型をしている。中心上げ底部40と、近接する反転リング42との境界は、可能な限り多くの配向を中心上げ底部40付近で促進するために、急でなければならない。これは主に、底部20の反転リング42の厚みが確実に最小になるようにするためである。一般的に、反転リング42の厚みは、ほぼ、約0.008インチ(0.203mm)から約0.025インチ(0.635mm)の間である。反転リング42が柔軟になり、そして適切に機能できるように、反転リング42の厚みは十分な薄さでなければならない。あるいは、反転リング42は、その取り囲み形状に沿った地点に小さなくぼみを備えていてもよい。これは不図示ではあるが、当該技術においてはよく知られており、ラベル貼付工程において、中心縦軸50を中心とした容器の回転を促進するつめを受けるのに適している。
【0032】
接触リング34と反転リング42との境を構成している周辺壁または縁44は、起立壁であり、直径2.75インチ(69.85mm)の底部を有する容器の場合は、高さ約0.030インチ(0.762mm)から約0.180インチ(4.572mm)であり、直径5インチ(127mm)の底部を有する容器の場合は、高さ約0.050インチ(1.27mm)から約0.325インチ(8.255mm)であり、または上記と同様の比率を有するものである。周辺壁または縁44は、一般的に、容器10の中心縦軸50に平行であるように見える。周辺壁または縁44は、中心縦軸50に厳密に平行である必要はない。しかし、周辺壁または縁44は、接触リング34と反転リング42との間において、はっきりと識別可能な構成である点については注目すべきである。周辺壁または縁44は、接触リング34と反転リング42との境に強度を与えている。局部強度を最大にし、かつ構造的に強固な構造を形成するために、上記境は急でなければならない。この結果として得られる局所強度は、底部20における折れ曲がりに対する耐性を増加させる。
【0033】
初期形成時において、中心上げ底部40および反転リング42は、前述したような、そして図1、3、および5に示すような状態になっている。従って、成型時において、反転リング42の上部54と支持面38との間の寸法52は、反転リング42の下部58と支持面38との間の寸法56より大きいか、または等しい。充填時、製品の温度条件下および重量下において、底部20の中心部36および反転リング42はわずかに沈下するか、または支持面38に向かって下方にたわむ。その結果、寸法56はほぼゼロになる。つまり、反転リング42の下部58は、支持面38に実質的に接触する。図2、4、および6に示すように、キャッピング、密封、および冷却時において、真空力が生じる結果、中心上げ底部40および反転リング42は、真空力によって持ち上がるか、または上方に引っ張られ、容積を縮小する。この位置において、中心上げ底部40は、一般的に、その断面において円錐台形状を維持し、中心上げ底部40の上面46は、支持面38に対してほぼ平行状態となる。しかし、反転リング42は、底部20の中心部36と一体となり、事実上存在しなくなり、形状はより円錐形となる。さらに、容器10のキャッピング、密封、および冷却時において、底部20の中心部36は、図6に示すように、円錐により近い形状を呈しており、ほぼ平面であるとともに容器10の中心縦軸50に向かって上方に傾斜する面60を有する。この円錐形およびほぼ平坦な面60は、角62において、水平面または支持面38に対して約0°から約15°の角度を形成するものであってよい。寸法52が大きいほど、そして寸法56が小さいほど、より多く容積を縮小できる。
【0034】
底部20の中心部36が縮小する容積の量は、底部20の突出している全表面積と比較した場合の底部20の中心部36の突出している表面の面積にも依存している。容器10の胴体部18に真空パネルまたはピンチグリップを備える必要性をなくすために、底部20の中心部36は、底部20の突出している面の全表面積の約55%、好ましくは70%を超える表面積を有している。図5に示すように、関連する、底部20を横切る直線距離は提示され、A、B、C、およびCとして識別されている。底部20の突出している面の全表面積(PSAA)は、以下の等式によって定義される。
【0035】
【数2】
【0036】
従って、直径2.75インチ(69.85mm)の底部を有する容器の場合、突出している面の全表面積(PSA)は、5.94インチ(150.88mm)である。底部20の中心部36の突出している面の表面積(PSA)は、以下の等式によって定義される。
【0037】
【数3】
【0038】
上記等式において、B=A−C−Cである。直径2.75インチ(69.85mm)の底部を有する容器の場合、出縁32の長さ(CおよびC)は、一般的に約0.030インチ(0.762mm)から0.36インチ(9.144mm)の範囲内である。従って、上記B寸法は、一般的に約2.03インチ(51.56mm)から2.69インチ(68.33mm)の範囲内である。従って、底部20の中心部36に対する突出した表面積(PSA)は、一般的に約3.23インチ(82.04mm)から5.68インチ(144.27mm)である。従って、一例として、直径2.75インチ(69.85mm)の底部を有する容器の場合、底部20の中心部36の突出した表面積(PSA)は、底部20の突出している全表面積(PSA)の一般的に約54%から96%の範囲内である。この割合が大きいほど、容器10が、容器10の別の部分に不要な変形をもたらすことなく、より多くの真空を調節することができる。
【0039】
圧力は、真空下にあるプラスチック容器の内部に均一に働く。しかし、力は構造(即ち表面積)に基づいて変化する。従って、円筒形断面を有する容器内の圧力は以下の等式によって定義される。
【0040】
【数4】
【0041】
上記等式において、Fはポンドでの力を表し、Aは平方インチでの面積を表す。図1に示すように、底部20の中心部36の直径は、dとして識別される。一方、胴体部18の直径はdとして識別される。引き続き図1において、肩領域16の底部から出縁32の上部に至る胴体部18の高さ、つまりプラスチック容器10の滑らかなラベル・パネル領域は、lとして識別される。前述したように、胴体部18の追加構造(例えばリブ)は補強効果を有することがよく知られている。以下の解析では、上記のような構造を持たない容器の上記部分についてのみ考慮する。
【0042】
上記の説明によると、底部20の中心部36(P)に関連する圧力は、以下の等式によって定義される。
【0043】
【数5】
【0044】
上記等式において、Fは底部20の中心部36に加えられる力を表しており、Aは、以下の等式で表される、底部20の中心部36に関連する面積である。
【0045】
【数6】
【0046】
同様に、胴体部18に関連する圧力(PBP)は以下の等式によって定義される。
【0047】
【数7】
【0048】
上記等式において、Fは胴体部18に加えられる力を表しており、Aは、以下の等式で表される、胴体部18に関連する面積である。
【0049】
【数8】
【0050】
従って、容器10の胴体部18に加えられる力を、底部20の中心部36に加えられる力と比較した場合の力比は、以下の等式によって定義される。
【0051】
【数9】
【0052】
最適な性能にするため、上記力比は10未満でなければならず、比率値は低い方が非常に望ましい。
【0053】
前述したように、容器10の底部20と胴体部18との間の厚みの差もまた重要である。胴体部18の厚みは、反転リング42が適切にたわむように、十分な厚みを有していなければならない。上記力比が10に近くなると、容器10の底部20の厚みは、胴体部18の厚みを大幅に下回る必要がある。底部20の構造、および反転リング42が適切にたわむ、つまり容易に動くために必要な力の量に基づいて、胴体部18の厚みは、底部20の厚みより少なくとも平均で15%厚くなければならない。上記容器が、反転リング42を最初にたわませるために必要な力、または底部20の動きが完了した後に加えられるさらなる力を調節するために必要な力、のいずれかよりも強い力に耐えなければならない場合は、より大きい差が必要となる。
【0054】
下記の表は、前述した原理および概念を示す数多くの容器の例である。
【0055】
【表1】
【0056】
上記の全ての例において、容器の底部は、該容器の主要な変形機構として機能する。さらに、上記力比が増加すると、必要とされる底部の厚みは減少する。その上、胴体部18の厚みと、底部20の厚みとの比は、上記力比および容器構造に部分的に左右される。非円筒形の断面(即ち、「三角形」または正方形)を有する容器に対して同様の分析を行うと、同様の結果が得られる。
【0057】
従って、容器10の底部20の反転リング42の、薄く、柔軟で、湾曲した、ほぼ「S」字型の構造によって、実質的に平坦な底部を有する容器に比べてより大きい容積縮小が可能になる。
【0058】
別の実施形態においては、美観を改善するために、出縁は裾広がりになっていない。このような容器においては、胴体部、出縁、および底部が共に、より平坦に連続して流れている。上記のような実施形態における容器は、より自然な視覚的印象を与える。
【0059】
さらに別の実施形態においては、機能性を改善するために、容器はより顕著に裾広がりする出縁を備えている。真空圧下において、上記の裾広がりした出縁はごくわずかに内側に変形し、上記容器の容積縮小能力を増大させ、上記容器の底部の外縁をさらに強化する。
【0060】
上記説明は、本発明の好適な実施形態に関するものであるが、請求項の適切な範囲および公平な意義から逸脱することなく、本発明に修飾、変化、および変更を加えることができることは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6