(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078504
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ローソニア・イントラセルラーリス、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルスに対する保護のためのワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/295 20060101AFI20170130BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20170130BHJP
A61K 39/07 20060101ALI20170130BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20170130BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20170130BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20170130BHJP
A61P 33/02 20060101ALI20170130BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20170130BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
A61K39/295
A61K39/02
A61K39/07
A61K39/12
A61P37/04
A61P31/20
A61P33/02
A61P31/04 171
A61P31/00
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-180911(P2014-180911)
(22)【出願日】2014年9月5日
(62)【分割の表示】特願2011-504463(P2011-504463)の分割
【原出願日】2009年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-28038(P2015-28038A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2014年10月3日
(31)【優先権主張番号】08154765.5
(32)【優先日】2008年4月18日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/046,188
(32)【優先日】2008年4月18日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アントニウス・アルノルドウス・クリステイアン・ヤコブス
(72)【発明者】
【氏名】パウル・フエルメイ
(72)【発明者】
【氏名】ルート・フイリツプ・アントーン・マリア・セーヘルス
(72)【発明者】
【氏名】カルラ・クリステイナ・スリエル
【審査官】
中尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−502054(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/099561(WO,A1)
【文献】
特表2006−528882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/295
A61K 39/02
A61K 39/07
A61K 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローソニア・イントラセルラーリス、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルスの非生抗原の組み合わせ並びに担体を含むワクチンを非ヒト動物に筋肉内投与することを含む、ローソニア・イントラセルラーリス、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルス感染症に対して非ヒト動物を保護するための方法。
【請求項2】
前記ローソニア・イントラセルラーリスの抗原が不活化された全細胞ローソニア・イントラセルラーリスであり、前記マイコプラズマ・ヒオニューモニアエの抗原が不活化されたマイコプラズマ・ヒオニューモニアエであり、前記ブタサーコウイルスの抗原が不活化されたPCV−2抗原である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローソニア・イントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ(hyopneumoniae)及びブタサーコウイルス(Porcine circo virus)に対して保護するためのワクチンに関する。この意味での保護は、ワクチンがローソニア・イントラセルラーリス、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルスによって引き起こされる負の影響の減少を少なくとも与えることを意味し、このような負の影響は、例えば、減少した体重増加、下痢、咳、くしゃみなどの組織損傷及び/又は臨床的症候である。本発明は、ローソニア・イントラセルラーリスの非生抗原をその中に含有する第一の容器と、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルス抗原をその中に含有する1つ又はそれ以上の他の容器と並びに全身的ワクチン接種に適した1つの組み合わせワクチンを調合するために、ローソニア・イントラセルラーリス、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルスの抗原を混合するための指示書とを含むキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
多くの動物、特にブタにおける増殖性腸疾患(PE又はPPE、腸炎又は回腸炎とも称される。)は、主に末端回腸中での未成熟な腺窩上皮細胞の粘膜過形成を有する臨床的症候及び病理的症候群を呈する。冒され得る腸の他の部位には、空腸、盲腸及び大腸が含まれる。急速な体重減少と脱水という典型的な臨床的徴候を伴って、主に、離乳ブタ及び若い成体ブタが罹患する。ブタでの天然の臨床的疾患は世界中で発生している。本疾病には、現在、ローソニア・イントラセルラーリスとして知られる湾曲した細胞内細菌の存在が一貫して付随する。
【0003】
細菌性病原体であるマイコプラズマ・ヒオニューモニアエによって引き起こされるブタのマイコプラズマ肺炎は、ブタで広く見られる慢性の呼吸器疾患である。特に、幼い仔ブタは、この非致死的な疾患に冒されやすい。流行性肺炎は、
飼料効率の不良及び生育不全をもたらす慢性疾患である。この疾患は、伝染性が極めて強く、伝染は、例えば、咳/くしゃみ後の感染した液滴の形態の感染呼吸器分泌物との直接的接触を通じて、通常起こる。この疾患の最も厄介な結果は、この疾患が呼吸系の続発的感染症のあらゆる種類に罹り易くすることである。例えば、アメリカでは、全てのブタ農家の99%が感染していると推定されている。
【0004】
ブタサーコウイルスは、幼若ブタに観察された離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)と関連すると考えられている。この疾患は、1991年に、カナダで初めて発見された。臨床的症候及び病理学は1997年に公表され、進行性の消耗、呼吸困難、呼吸亢進並びに時折見られる黄疸(icterus and jaundice)が含まれる。ブタサーコウイルスは、環状の一本鎖DNAゲノムを含有する小さな(17nm)20面体の外被に包まれていないウイルスである。PDNS(ブタ皮膚炎及び腎障害症候群)は、PMWSとほぼ時を同じくして出現し、同じくブタサーコウイルスと関連しているブタ農家にとっての別の重大な問題である。PDNSの特徴は、通常、耳、わき腹、足及び腿の裏側上に出血を有する赤/茶色の環状皮膚病変である。
【0005】
PEに関しては、ローソニア・イントラセルラーリスに対する経口ワクチン接種は回腸炎を抑制するための経済的に効率的な措置であることが示されており、ブタの遺伝的な成長能をよりよく活用することが可能となる(Porcine Proliferative Enteropathy Technical manual 3.0、2006年7月;Boehringer Ingelheimから入手可能)。さらに、非経口ではない経口ワクチン接種は、複数回使用された針を介したPRRSなどの血液感染性感染症の伝達を低下させ、注射部位の反応の反応及び死体中に保持された針を低下させる。経口ワクチン接種は、個別のワクチン接種に比べて、動物及びヒトのストレス、時間、労働コスト及び労力を低下させる(McOrist:“Ileitis − One Pathogen, Several Diseases”at the IPVS Ileitis Symposium in Hamburg, June 28
th, 2004)。
【0006】
宿主の免疫系が、より「自然な」様式で、生物の全ての抗原性特性に曝露されるので、弱毒化された生ワクチンアプローチの利点は免疫の効力が通常相対的に良好であるということが一般に理解されている。特にローソニア・イントラセルラーリスなどの細胞内細菌性因子に関して、生弱毒化ワクチンアプローチは、T細胞を基礎とする完全で適切な免疫応答のために、ワクチン接種された動物に対して入手可能な最良の保護を与えると考えられている。これは、細胞内細菌に対するサブユニット又は死滅ワクチン種に付随して一定しない免疫ないし乏しい免疫とは対照的である。このことは、粘膜内に病原性感染症を引き起こすローソニア・イントラセルラーリス又はクラミジア種などの偏性細胞内細菌に対しても具体的に当てはまる。問題の細胞内細菌の完全生弱毒化形態は標的粘膜へ最もよく送達されること、標的粘膜中での完全に保護的な免疫応答を生成するために、それらは完全な生細菌形態として必要とされるのみならず、部分的な細菌成分の使用と比べて、それらは免疫学的に優れていることも、研究によって示されている。
【0007】
ローソニア・イントラセルラーリスに対するワクチンは経口的に投与される必要があることが一般的な理解となっている(とりわけ、本明細書に上で引用されているTechnical Manual 3.0参照)。これは、回腸炎に対する身体の耐性の基礎は、細胞媒介性免疫及び抗体、特にIgAを介した局所的防御の産物である腸内の局所的免疫であるという事実に基づいている。現在の知見によれば、腸の内腔に到達しないという単純な理由のため、血清抗体(IgG)は保護を全く与えない。経口ワクチン接種は細胞媒介性免疫及び腸内でのIgAの局所的産生をもたらすことが、研究で示されている(Murtaugh, in Agrar− und Veterinar−Akademie, Nutztierpraxis Aktuell, Ausgabe 9, June 2004;及びHyland et al.in Veterinary Immunology and lmmunopathology 102(2004)329−338)。これに対して、筋肉内投与は保護をもたらさなかった。さらに、細胞内細菌に対する効果的なワクチンは細胞媒介性免疫及び局所的な抗体の産生を誘導しなければならないという一般的な理解の次に、経口摂取された抗原の極めて低いパーセントが腸細胞によって実際に吸収されるに過ぎないこと、及び細胞中へのローソニア・イントラセルラーリスの取り込みは細菌によって開始される能動的プロセスであることが当業者によって知られている。従って、不活化されたワクチンは不十分な免疫原性抗原を腸に与える(Haesebrouck et al.in Veterinary Microbiology 100(2004)255−268)。これが、弱毒化された生ワクチンのみが腸の細胞内に十分な細胞媒介性保護を誘導すると考えられている理由である(本明細書の上に引用されているTechnical Manual3.0参照)。現在のところ、ローソニア・イントラセルラーリスに対して保護するために市場に出回っているワクチンは1つしか存在しない(すなわち、Boehringer Ingelheimによって販売されているEnterisol
(R)Ileitis)。実際に、このワクチンは、経口投与のための生ワクチンである。
【0008】
これまでに、ローソニア・イントラセルラーリスの組み合わせワクチンは従来技術において示唆されてきた。しかしながら、このような組み合わせの多くは、効力に関して実際には検査されていない。この理由は、抗原をローソニア・イントラセルラーリスの抗原と組み合わせることは、ローソニア抗原が生の(弱毒化された)細胞として与えられた場合に成功した保護をもたらし得るに過ぎないと一般に理解されていたからである。この点に関して、我々は、ローソニア・イントラセルラーリスを基礎とした組み合わせワクチンの全ての種類も示唆するWO2005/011731を参照する。しかしながら、この特許出願の記述及び特許請求の範囲の構造に関して、譲受人(Boehringer Ingelheim)は、ローソニア抗原が生きた細胞の形態で存在する場合に、組み合わせワクチンが成功の合理的可能性を有するに過ぎないと予測されると確信していたように見受けられる。同じことが、同じくBoehringer Ingelheimに譲渡されたWO2006/099561に関しても当てはまる。実際、通常の一般的知識を基礎とすると、これは自明な考え方である。しかしながら、抗原間の妨害の高い確率及びこのような生の組み合わせワクチンの製造の困難さに鑑みれば、生の抗原の組み合わせは簡単ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005/011731号
【特許文献2】国際公開第2006/099561号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Porcine Proliferative Enteropathy Technical manual 3.0、2006年7月;Boehringer Ingelheim
【非特許文献2】Murtaugh, in Agrar− und Veterinar−Akademie, Nutztierpraxis Aktuell, Ausgabe 9, June 2004
【非特許文献3】Hyland et al.in Veterinary Immunology and lmmunopathology 102、2004年、pp.329−338
【非特許文献4】Haesebrouck et al.in Veterinary Microbiology 100、2004年、pp.255−268
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
ローソニア・イントラセルラーリスを駆除し、同時に、1つ又はそれ以上の他のブタ病原体を駆除するためのワクチンを提供することが、本発明の課題である。この目的のために、ローソニア・イントラセルラーリス、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルスの非生抗原の組み合わせ及び医薬として許容される担体を含むワクチンを考案した。驚くべきことに、ローソニア・イントラセルラーリスをどのように駆除するか及び組み合わせワクチンは生のローソニア・イントラセルラーリス抗原を含むべきであるという一貫した一般的理解に反し、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルスからの抗原と組み合わせて、非生のローソニア・イントラセルラーリス抗原を使用することによって、ローソニア・イントラセルラーリス、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルスに対して保護するワクチンを提供できることが明らかとなった。
【0012】
一般に、ワクチンは、抗原を担体と混合することを基本的に含む、本分野で公知の方法を使用することによって製造することができる。典型的には、抗原は抗原を担持する媒体と組み合わされ、単に、担体又は「医薬として許容される担体」としばしば称される。このような担体は、例えば、とりわけ無菌にすることによって、標的動物と生理的に適合し、標的動物にとって許容され得る、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などであり得る。このような担持媒体の幾つかの例は、水、生理的食塩水、リン酸緩衝化された生理的食塩水、細菌培養液、デキストロース、グリセロール、エタノールなど及びこれらの組み合わせである。これらは、意図される投与様式に応じて、液体、半固体及び固体剤形を与え得る。一般に知られているように、担持媒体の存在はワクチンの効力にとって不可欠ではないが、抗原の投薬及び投与を著しく簡略化し得る。従って、産業環境中でワクチンの製造を行うことができるのみならず、例えば、動物へ実際に投与する(直)前に、その場で(すなわち、獣医、農場などで)、抗原を他のワクチン構成成分と混合することができる。ワクチンでは、抗原は、免疫学的に有効な量で、すなわち、野生型微生物によるワクチン接種後の攻撃誘発の負の効果を少なくとも低減させるのに十分に、標的動物の免疫系を刺激することができる量で存在すべきである。ワクチンの意図される使用又は必要とされる特性に応じて、場合によって、アジュバント、安定化剤、粘度改変剤又は他の成分などの他の物質が添加される。
【0013】
一実施形態において、ワクチンは全身投与に適した形態である。出願人にとって驚くべきことに、本発明の組み合わせワクチンが、全身的に、すなわち、抗体が身体の循環系(心血管系及びリンパ系を含む。)に到達するように投与され、従って、胃腸管などの特定の部位ではなく全身に影響を与える場合に、(単回)生ワクチンEnterisol
(R)Ileitis(対応する指示書に従って投与された。)を使用することによって提供される保護に関して同等である又は改善さえされたローソニア・イントラセルラーリスに対する保護を誘導できることが見出された。全身投与は、例えば、筋肉組織内(筋肉内)、皮膚内(皮内)、皮膚の下(皮下)、粘膜の下(粘膜下)、静脈中(静脈内)などに抗原を投与することによって行うことができる。全身性ワクチン接種に対して、多くの形態、特に、(溶解された、乳化された又は懸濁された抗原を有する)液体製剤が適しているが、インプラントなどの固体製剤又は液体中に懸濁された抗原用の固体担体などの中間形態も適している。全身性ワクチン接種、特に、非経口的ワクチン接種(すなわち、消化管を通じない)及び全身性ワクチン接種のためのワクチンの適切な(物理的)形態は200年以上知られている。この実施形態の利点は、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ又はブタサーコウイルス抗原を投与するための現在の標準である投与の同じ様式、すなわち、非経口、特に、筋肉内又は皮内注射(後者の場合、しばしば、無針)を介して使用できることである。
【0014】
非生ローソニア・イントラセルラーリス抗原が炭水化物含有組成物から得られる実施形態において、炭水化物は、これらの細胞の外側細胞膜と会合して、生きたローソニア・イントラセルラーリス細胞中にも見出される。予想外のことに、組み合わせワクチン中でローソニア・イントラセルラーリス細胞の画分を含有する炭水化物を使用することによって(すなわち、生きたローソニア・イントラセルラーリス細胞中に存在するように炭水化物を含有する組成物)、PEに対して優れた保護を提供することができた。ワクチンを調合するために、ローソニア・イントラセルラーリス細胞から直接得られる炭水化物含有組成物を使用できるのみならず、元の組成物又は抽出物の希釈物又は濃縮物、1つ又はそれ以上の精製された成分など、ローソニア・イントラセルラーリス細胞から直接得られる炭水化物含有組成物から誘導される組成物も使用できることが注目される。ローソニア・イントラセルラーリス細胞のサブユニットは、この細菌に対して保護するためのワクチンにおける抗原として報告されてきたことが注目される。しかしながら、これらは、主に組換えタンパク質であり、これまでのところ、能力があり、優れた保護を与えることが証明されたものは存在しない。炭水化物含有組成物(炭水化物は、ローソニア・イントラセルラーリス細胞の外側細胞膜と会合して、生きたローソニア・イントラセルラーリス細胞中にも見出される。)は、Kroll他(Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology, June 2005, 693−699)から公知であることも注目される。しかしながら、この組成物は診断薬のために使用されている。本明細書に上記されている理由のために、この組成物は防御抗原として検査されていない。
【0015】
一実施形態において、炭水化物含有組成物は、ローソニア・イントラセルラーリス細菌の死滅から得られる物質である。本発明に従って使用するための炭水化物を提供する極めて便利な方法は、単にローソニア・イントラセルラーリス細菌を死滅させ、そこから得られた物質を炭水化物源として使用することであることが見出された。生きた細胞から炭水化物を抽出することも、(細胞壁を除去することによって、生きたゴースト細胞を作製することと同様にして)理論では実施することが可能であるが、より精緻な、従って、より高価な技術を必要とする。物質はそのまま(例えば、完全な細胞の懸濁物又はローソニア・イントラセルラーリス細胞の可溶化液)使用することが可能であり、又は物質から炭水化物を精製し、若しくは単離することさえできる。この方法は、相対的に単純な本分野で公知の技術を使用することによって実施することができる。
【0016】
好ましい実施形態において、炭水化物含有組成物は、死滅ローソニア・イントラセルラーリス細菌の完全な細胞を含有する。これは、ワクチン中の抗原として炭水化物を提供するための最も便利な方法であることが明らかとなった。加えて、標的動物の免疫系へ抗原を提供するこの方法は、おそらく炭水化物の天然環境をよりよく模倣するので、ワクチンの効力がさらに増加される。
【0017】
一実施形態において、ワクチンはμmを下回るサイズの油滴を含有する水中油アジュバントを含む。一般に、アジュバントは非特異的な免疫刺激因子である。原則として、免疫現象のカスケード中の特定のプロセスを好み又は増幅することができ、よりよい免疫学的応答(すなわち、抗原に対する一体化された身体応答、特に、リンパ球によって媒介され、典型的には、特異的抗体又は予め感作されたリンパ球による抗原の認識を伴う身体応答)を最終的にもたらす各物質は、アジュバントとして定義することができる。μmを下回るサイズの油滴を含有する水中油アジュバントを用いることによって、ローソニア・イントラセルラーリスに対して極めて優れた保護が得られることが示された。実際、水中油アジュバント自体の適用は、非生抗原と組み合わされることが一般的である。しかしながら、油滴の直径が大きい場合に、最も優れた免疫刺激特性が得られることが一般に知られている。特に、安全性が重要事項であると考えられる場合には、1μm未満の直径を有する油滴が特に使用される。その場合には、より少ない組織損傷、臨床的症候などを惹起することが知られているので、小さな液滴を使用することができる。しかしながら、(本発明の場合のように)全身的ワクチン接種を介して腸関連疾患に対する保護を得る場合には、免疫応答が著しく強化されなければならないと予想されるので、大きな滴を選択する。これに対して、組成物中で小さな油滴を用いることによって、ローソニア・イントラセルラーリスに対する保護に関して極めて優れた結果が得られることを本発明者らは見出した。
【0018】
さらに好ましい実施形態において、アジュバントは、生物分解性油の滴及び鉱物油の滴(生物分解性油の滴は鉱物油の滴の平均サイズと異なる平均サイズを有する。)を含む。生物分解性油と鉱物油の混合物の使用が効力及び安全性に関して極めて優れた結果を与えることが示された。これに加えて、組成物の安定性は極めて高く、これは重要な経済的利点である。特に、生物分解性油滴又は鉱物滴の何れかの平均(容積で重み付けされた)サイズが500nmを下回る(好ましくは、約400nm)場合に、安定性が極めて優れていることが明らかとなった。
【0019】
本発明は、ローソニア・イントラセルラーリスの非生抗原をその中に含有する第一の容器と、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルス抗原をその中に含有する1つ又はそれ以上の他の容器と並びに全身的ワクチン接種に適した1つの組み合わせワクチンを調合するために、ローソニア・イントラセルラーリス、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルスの抗原を混合するための指示書とを含むキットにも関する。この実施形態では、他の抗原(従来技術から公知のように1つの容器中に組み合わされ、又はキットの内容物の一部を形成する別個の容器中に存在する場合さえある。)も含有するキットにおいて、ローソニア・イントラセルラーリス抗原のための別個の容器が提供される。この実施形態の利点は、ワクチンの投与の直前まで、ローソニア抗原が他の抗原と相互作用しないようにできることである。また、抗原が別個の容器中に存在するので、製造上の無駄がより少なくなる。一実施形態において、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルス抗原は、1つの容器中に含有され、水中油アジュバント中に調合される。この実施形態において、ローソニア抗原は、使用直前に、他の抗原と混合され得る。
【0020】
本発明は、以下の実施例に基づいてさらに説明される。
【0021】
実施例1は、実質的にタンパク質を含まない炭水化物含有組成物を取得するための方法及び該組成物を使用することによって作製されるワクチンを記載する。実施例2は、非生ローソニア・イントラセルラーリスワクチンを現在市場に出回っているワクチン及びローソニア・イントラセルラーリスのサブユニットタンパク質を含む実験用ワクチンと比較する実験を記載する。実施例3は、非生ローソニア・イントラセルラーリス抗原を含む2つの異なるワクチンを現在市場に出回っている生ワクチンと比較する実験を記載する。
【実施例1】
【0022】
本実施例では、ローソニア・イントラセルラーリス細胞の外側細胞膜と会合された、実質的にタンパク質を含まない炭水化物組成物を得るための方法及び該組成物を用いて作製することができるワクチンが記載されている。一般に、炭水化物は、通常1:2:1の比率で炭素、水素及び酸素を含有する有機化合物である。炭水化物の例は、糖(糖質)、デンプン、セルロース及びゴムである。通常、炭水化物は動物の食餌中で主要なエネルギー源としての役割を果たす。ローソニア・イントラセルラーリスはグラム陰性細菌であり、従って、リン脂質とタンパク質のみから構築されておらず、炭水化物、特に、多糖(通常、リポ多糖、リポオリゴ糖又は非リポ多糖などの多糖)も含有する外側膜を含有する。
【0023】
ワクチン調製のための炭水化物画分
3.7E8(=3.7×10
8)細胞/mLの濃度でローソニア・イントラセルラーリス細胞を含有する緩衝化された水(0.04MPBS、リン酸緩衝化生理的食塩水)の20mLを採取した。100℃に10分間保つことによって、細胞を溶解した。0.04MPBS中のプロテイナーゼK(10mg/mL)を1.7mg/mLの最終濃度になるように添加した。全てのタンパク質を分解し、炭水化物を完全な状態に保つために、60℃で60分間、この混合物を温置した。その後、プロテイナーゼKを不活化するために、混合物を100℃で10分間温置した。得られた物質(これは、炭水化物含有組成物、特に、外側細胞膜と会合した生きたローソニア・イントラセルラーリス細菌中に存在するように炭水化物を含有する組成物(以下のパラグラフを参照。)である。)を、さらに使用するまで、2から8℃で保存した。組成物は、抗原に対する担体としての役割も果たすDiluvac forteアジュバント中に調合した。このアジュバント(欧州特許0382271号も参照)は、水の中に懸濁され、Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)の0.5重量%で安定化された、約400nmの平均容量重み付けされたサイズを有する7.5重量%のビタミンE・アセタート滴を含む。各mLワクチンは、1.2E8のローソニア・イントラセルラーリス細胞から抽出された物質を含有した。
【0024】
ローソニア炭水化物抗原の免疫沈降
完全な細胞のローソニア・イントラセルラーリスに対して産生されたモノクローナル抗体(MoAb’s)の2つのバッチを、標準的な手順に従って、室温で、飽和Na
2SO
4を用いて沈降させた。遠心(10,000g、10分間)によって、沈殿を沈降させた。沈降物を20%Na
2SO
4で洗浄し、0.04MPBS中に再懸濁した。製造業者のマニュアルに従って、チロシル活性化されたDynalビーズ(DynaBeads,DK)を0.1MNaPO
4(pH7.4)で予め洗浄した。MoAbの各バッチのうち、140μgを取り、2E8の予め洗浄されたビーズに添加し、37℃で一晩温置した。ビーズを遠心によって沈降させ、上清の吸引によって、結合されていないMoAbを除去した。分光学的測定によって、添加されたMoAbの20と35%の間がビーズに結合したことが示された。
【0025】
0.04MPBS中のローソニア・イントラセルラーリス細胞(3.7E8/mL)1mLの2つのバッチを1分間音波処理した。Tylosyl活性化されたビーズ・モノクローナル複合体に、得られた細胞可溶化液を添加し、4℃で一晩温置した。Tylosyl活性化されたビーズ・モノクローナル複合体を、0.1MNaPO
4(pH7.4)で3回洗浄した。0.04MPBS中の8M尿素(E1)0.5mL、10mMグリシンpH2.5(E2)0.5mL及び50mMHCl(E3)0.5mL中で、連続的様式でビーズを洗浄することによって、結合された化合物を溶出した。溶出後、1MTris/HCl(pH8.0)100μL及び200μLの何れかを用いて、E2及びE3を中和した。
【0026】
各工程から試料を採取し、SDS−PAGEゲル上に搭載した。クマシー・ブリリアント・ブルー(CBB)及び銀染色を用いて、ゲルを染色し、又は吸収転移した。本明細書に上記されているものと同じMoAbを用いて、ブロットを展開した。ゲル及びブロットの検査によって、CBBゲル上に見られないが、銀染色されたゲル上には見られる21及び24kDaの見かけの分子量を有するバンドをMoAbが認識することが示された。また、MoAbに結合された細胞の画分はプロテイナーゼK耐性であることが確定された。従って、これらの結果に基づいて、この画分は炭水化物を含有すること(すなわち、全てのタンパク質が溶解され、音波処理されたDNA画分は銀染色中の明瞭なバンドとして現れない。)、及び炭水化物はローソニア・イントラセルラーリスの外側細胞膜と会合されている(すなわち、外側細胞膜の一部を形成し、又は外側細胞膜に結合されている。)こと(すなわち、この画分に対して生成されたMoAbは、完全なローソニア・イントラセルラーリス細胞も認識した。)を結論付けることができる。ローソニア・イントラセルラーリスがグラム陰性細菌であるという事実に鑑みれば、炭水化物組成物は多糖を含むと考えられる。
【実施例2】
【0027】
この実験は、すなわち、死滅全細胞(バクテリンとしても知られる。)を介して、炭水化物抗原をワクチン中に調合するための便利な方法を調べるために行われた。対照として、市販のワクチンEnterisol
(R)ileitis及びタンパク質サブユニットを含む実験用サブユニットワクチンを使用した。この次に、ワクチン接種されていない動物を対照として使用した。
【0028】
実施例2の実験デザイン
不活化された全細胞ワクチンは、以下のようにして作製した。PPEを有するブタの腸から得られた生きたローソニア・イントラセルラーリス細胞を集めた。0.01%BPL(β−プロピオラクトン)を用いて、細胞を不活化した。約2.8×10
8細胞/mLワクチンの濃度で、Diluvacforteアジュバント(実施例1参照)中に、得られた物質((特に、得られた物質は、ローソニア・イントラセルラーリス細菌の外側細胞膜と会合して、生きたローソニア・イントラセルラーリス細菌中に存在するように炭水化物を含有するので)、これは、本来的に、本発明において非生の炭水化物含有組成物である。)を調合した。
【0029】
サブユニットワクチンは、欧州特許1219711号から公知の組換えP1/2及びP4(それぞれ、19/21及び37kDaタンパク質)並びにWO2005/070958に記載されている遺伝子5074、4320及び5464によって発現される組換えタンパク質を含有した。これらのタンパク質は、Diluvac forteアジュバント中に調合した。ワクチンは、1mL当たり各タンパク質約50μgを含有した。
【0030】
6週齢のSPFブタ40匹を使用した。それぞれ10匹のブタからなる4つのグループへブタを振り分けた。グループ1には、製造業者の指示書に従って、生の「Enterisol
(R)ileitis」(Boehringer Ingelheim)2mLを(T=0に)経口から1回ワクチン接種した。グループ2及び3には、それぞれ、本明細書中に上記されている不活化されたローソニア全細胞ワクチン及び組換えサブユニット組み合わせワクチン2mLを筋肉内に2回(T=0及びT=4週に)ワクチン接種した。グループ4は、ワクチン接種されていない対照として放置した。T=6週に、全てのブタに、ローソニア・イントラセルラーリスに感染した均質化された粘膜で経口的に攻撃誘発を行った。その後、ブタ増殖性腸疾患(PPE)の臨床的症候に関して、全てのブタを毎日観察した。攻撃誘発の前および後の定期的な時点で、血清血液(血清学のため)及び糞便(PCRのため)にブタから採取した。T=9週の時点で、全てのブタを安楽死させ、剖検を行った。回腸の組織学的試料を採取し、顕微鏡的に調べた。
【0031】
攻撃誘発接種原は、感染した粘膜から調製した。(感染した腸から剥離した)感染した粘膜500gを融解し、生理的塩溶液500mLと混合した。氷上にて、最高速度で1分間、この混合物をオムニミキサー中で均質化した。T=6週に、攻撃誘発接種原20mLを用いて、全てのブタを経口的に攻撃誘発した。
【0032】
T=0、4、7、7、8及び9週に、各ブタの糞便試料(グラム量)及び血清血液試料を採取し、検査まで凍結保存した。定量的PCR(Q−PCR)検査において、糞便試料を検査し、ピコグラム(pg)で見出された量の対数として表した。血清試料は、一般的に使用されるIFT検査(血清中の完全なローソニア・イントラセルラーリス細胞に対する抗体を検出するための免疫蛍光性抗体検査)で検査した。組織学的なスコア付けのために、回腸の適切な試料を採取し、4%の緩衝化されたホルマリン中に固定し、通常の様式で包埋させ、スライドに切断した。ヘマトキシリン−エオシン(HE染色)を用いて及び抗ローソニア・イントラセルラーリスモノクローナル抗体を使用する免疫組織化学的染色(IHC染色)を用いて、これらのスライドを染色した。スライドは、顕微鏡的に検査した。組織学的スコアは以下のとおりである。
HE染色:
異常は検出されない スコア=0
疑わしい病変 スコア=1/2
軽度の病変 スコア=1
中度の病変 スコア=2
重度の病変 スコア=3
IHC染色:
明瞭なエル・イントラセルラーリス細菌なし スコア=0
細菌の疑わしい存在 スコア=1/2
スライド中に細菌の単一/少数が存在 スコア=1
スライド中に細菌の中度の数が存在 スコア=2
スライド中に細菌の多数が存在 スコア=3
【0033】
全てのデータは、各ブタに対して個別に記録された。グループ当りのスコアは、攻撃誘発後の異なるパラメータに対する陽性動物の平均として計算した。統計的な有意性を評価するために、ノンパラメトリックMann−WhitneyU検定を使用した(両側で検定し、有意水準は0.05に設定した。)。
【0034】
実施例2の結果
血清学
IFT抗体力価に関して検査すると、最初のワクチン接種前に、全てのブタは血清陰性であった。全細胞バクテリンでのワクチン接種後(グループ2)、ブタは高いIFT抗体力価を生じたのに対して、対照及びサブユニットワクチンをワクチン接種されたブタは、攻撃誘発まで陰性のままであった(表1)。Enterisolをワクチン接種されたブタ(グループ1)のうち2匹が中度のIFT力価を生じたのに対して、このグループ中の他の全てのブタは血清陰性のままであった。攻撃誘発後、全てのブタは高いIFT抗体力価を生じた。平均の結果が表1に示されている(使用された希釈では、1.0が下側の検出レベルであった。)。
【0035】
【表1】
【0036】
糞便試料に対するリアルタイムPCR
攻撃誘発前に、全ての糞便試料は陰性であった。攻撃誘発後、全てのグループにおいて陽性反応が見出された。グループ1(p=0.02)、グループ2(p=0.01)及びグループ3(p=0.03)は、対照と比べて有意に低い流出レベルを有していた。攻撃誘発後の概要が、表2に記載されている。
【0037】
【表2】
【0038】
組織学的スコア
グループ2は、最も低い組織学HEスコア(p=0.05)、IHCスコア(p=0.08)及び総組織学スコア(p=0.08)を有していた。他のグループは、より高いスコアを有しており、対照群と有意差はなかった。表3を参照されたい。
【0039】
【表3】
【0040】
実施例2に関する結論
これらの結果から、生きたローソニア・イントラセルラーリス細胞の外側膜と会合しても見出される炭水化物を内在的に含有する非生全細胞ローソニア・イントラセルラーリスワクチンは、少なくとも部分的な保護を誘発したと結論付けることができる。調べた全てのパラメータ及び組織学スコアは、有意に又はほぼ有意に、対照と比べて優れていた。
【実施例3】
【0041】
この実験は、タンパク質を実質的に含まない炭水化物含有組成物を抗原として含むワクチンを検査するために行われた。検査すべき第二のワクチンは、ローソニア・イントラセルラーリスの死滅全細胞の他に、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルスの抗原を含有していた(「コンビ」ワクチン)。対照として、市販のEnterisol
(R)ileitisワクチンを使用した。この次に、ワクチン接種されていない動物を第二の対照として使用した。
【0042】
実施例3の実験デザイン
実質的にタンパク質を含まない炭水化物含有組成物を基礎とするワクチンは、実施例1に記載されているように取得した。
【0043】
実験用コンビワクチンは、1.7×10
8細胞/mLのレベルで、不活化されたローソニア・イントラセルラーリス全細胞抗原を含有した(不活化された細菌を提供する使用された方法に関しては、実施例2参照)。この次に、実験用コンビワクチンは、不活化されたPCV−2抗原(PCV2のOFR2によってコードされたタンパク質20μg/mL;タンパク質は、例えば、WO2007/028823に記載されているように、本分野で一般に知られているバキュロウイルス発現系内で発現される。)及び不活化されたマイコプラズマ・ヒオニューモニアエ抗原(Intervet、Boxmeer、The Netherlandsから入手可能な市販のワクチンPorcilis Mhyo
(R)から公知のものと同じ用量の同じ抗原)を含有した。抗原は、ツインエマルジョンアジュバント「X」中に調合した。このアジュバントは、アジュバント「A」の5容量部とアジュバント「B」の1容量部の混合物である。アジュバント「A」は、水中のTween80で安定化された、約1μmのおよその平均(容量重み付けされた)サイズを有する鉱物油滴からなる。アジュバント「A」は、鉱物油の25重量%及びTweenの1重量%を含む。残りは水である。アジュバント「B」は、同じくTween80で安定化された、400nmのおよその平均(容量重み付けされた)サイズを有する生物分解可能なビタミンEアセタートの滴からなる。アジュバント「B」は、ビタミンEアセタートの15重量%及びTween80の6重量%を含み、残りは水である。
【0044】
3日齢のSPF仔ブタ64匹を使用した。ブタは、仔ブタ14匹の4つのグループ及び仔ブタ8匹の1つのグループ(グループ4)に割り振った。グループ1には、コンビワクチン2mLを3日齢の時点で筋肉内にワクチン接種した後、25日齢の時点で第二のワクチン接種を行った。グループ2には、25日齢の時点で、コンビワクチン2mLを筋肉内に1回ワクチン接種した。グループ3には、処方に従って、25日齢で、Enterisol
(R)ileitis(Boehringer Ingelheim)2mLを経口的にワクチン接種した。グループ4には、3日及び25日齢に、非タンパク質炭水化物ワクチン2mLを筋肉内にワクチン接種した。グループ5は、攻撃誘発対照群としてワクチン接種をしなかった。46日齢に、均質化された感染粘膜で全てのブタを経口的に攻撃誘発した。その後、ブタ増殖性腸疾患(PPE)の臨床的症候に関して、全てのブタを毎日観察した。攻撃誘発の前および後の定期的な時点で、それぞれ、血清学及びPCRのために血清血液及び糞便試料をブタから採取した。68日齢の時点で、全てのブタを安楽死させ、死後検査を行った。回腸を組織学的に調べた。
【0045】
実験デザインにおける他の項目は、別段の表記がなければ、実施例2に記載されているのと同じであった。
【0046】
実施例3の結果
血清学
1−ローソニア
最初のワクチン接種前に、全てのブタは、IFT抗体力価に関して血清陰性であった。コンビワクチン(グループ1及び2)及び非タンパク質炭水化物ワクチン(グループ4)でのワクチン接種後に、多くのブタがIFT抗体力価を生じたのに対して、対照及びEnterisolをワクチン接種したブタは、攻撃誘発まで、血清陰性のままであった。攻撃誘発後、(Enterisolグループ中の2匹を除く)全てのブタがIFT抗体力価を生成した。得られた平均値の概要に関しては、表4を参照されたい(実施例2と比較したときに、希釈がより高いために、検出レベルは4.0であった。)。
【0047】
【表4】
【0048】
2−マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ
Mhyoに関して、実験の開始時及び強化免疫の日(25日齢)に、全てのブタはMhyoに関して血清陰性であった。強化免疫ワクチン接種後、グループ1は、市販の初回強化免疫ワクチンPorcilisMhyo
(R)を用いて得られたものと同じレベルで、高いMhyo抗体力価を生成した。結果は、下表5に与えられている。明らかに、これらの状況下では(筋肉内に付与)、強化免疫ワクチン接種が与えられたときのみに、46日での抗体力価が検出レベル(使用された方法に関して6.0)を上回っている。しかしながら、Mhyo抗原を用いた単一ショットのワクチン接種は、特に、皮内に投与された場合に、十分な保護を与え得ることが知られている(例えば、WO2007/103042参照)。
【0049】
【表5】
【0050】
3−ブタサーコウイルス
PCVに関して、3日齢の時点で、仔ブタは、母親由来の高いPCV抗体力価を有していた。強化免疫の日に(25日齢)、ワクチン接種群(グループ1)は、グループ2及び対照群と比べて同様の力価を有していた。25日齢でのPCV力価は、3日齢での力価と比べて、若干低かった。25日齢でのワクチン接種後、グループ1(3日及び25日に2回ワクチン接種)及びグループ2(25日に1回ワクチン接種)の力価は、高いレベルを保ったのに対して、対照仔ブタは母親由来の抗体の正常な減少を示した。得られたPCV力価は、同じ抗原を含有する単一のワクチン(例えば、PCVに対して極めて優れた保護を与えるワクチンであるIntervetのCircumventPCV)を用いて得られる力価と同等である。平均値の概要に関しては、以下に与えられている表を参照されたい。
【0051】
【表6】
【0052】
糞便試料に対するリアルタイムPCR
攻撃誘発から3週間後、グループ1、2及び4のブタは、グループ3及び5に比べて、より少ない糞便中のローソニア(DNA)を有していた。グループ1と3(Enterisol)及びグループ4と3の間の差のみが統計学的に有意であった(p<0.05、Mann−WhitneyU検定)。平均の結果に関しては、表7を参照されたい。
【0053】
【表7】
【0054】
組織学的スコア
グループ1及び4の組織学スコアは、グループ3及び5のものと比べて、有意に低かった(p<0.05、両側Mann−WhitneyU検定(表8参照))。確認されたPPEを有するブタの数は、グループ1では2/13、グループ2では6/12、グループ3では12/14、グループ4では2/7及び対照群5では12/14であった。グループ1及び4は、グループ3及び5と比べて、PPEの有意により低いPPEの発生率を有していた(p<0.05、両側Fischerの直接確率検定)。
【0055】
【表8】
【0056】
実施例3の結論
これらの結果から、炭水化物外側細胞膜抗原は回腸炎に対して相対的に優れた保護を与えると結論付けることができる。全細胞のローソニアバクテリンは、回腸炎を駆除するためのワクチンに炭水化物抗原を与える優れた手段であることも見出された。さらに、これらの微生物を駆除するのに十分である利用可能な単一ワクチンを用いて得られるレベルと同等のレベルまで、組み合わせワクチンがMhyo及びPCV抗体に対する力価を与えたという事実に鑑みれば、Mhyo及びPCV抗原と組み合わせて非生ローソニア・イントラセルラーリス抗原を含む組み合わせワクチンは、ローソニア・イントラセルラーリス並びにマイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルスを駆除するのに適していることが示された。