特許第6078525号(P6078525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6078525無電解スズメッキ被膜表面の洗浄液およびその補給液、ならびにスズメッキ層の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078525
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】無電解スズメッキ被膜表面の洗浄液およびその補給液、ならびにスズメッキ層の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/16 20060101AFI20170130BHJP
   H05K 3/24 20060101ALI20170130BHJP
   H05K 3/26 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   C23C18/16 Z
   H05K3/24 F
   H05K3/26 E
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-263252(P2014-263252)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-121386(P2016-121386A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114488
【氏名又は名称】メック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】柴沼 祐子
(72)【発明者】
【氏名】伍田 竜矢
(72)【発明者】
【氏名】仁頃 丈二郎
(72)【発明者】
【氏名】市橋 知子
(72)【発明者】
【氏名】上甲 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】天谷 剛
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−169746(JP,A)
【文献】 特開2013−023693(JP,A)
【文献】 特開平06−272048(JP,A)
【文献】 特開2009−099541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00−20/08
H05K 3/24− 3/26
C25D 5/00− 7/12
C23G 1/00− 5/06
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズイオンを含む酸性のメッキ液が表面に付着している無電解スズメッキ被膜を洗浄するための洗浄液であって、
塩酸および硫酸から選択される少なくとも1種の無機酸、チオ尿素類およびチオ尿素誘導体から選択される少なくとも1種の錯化剤、グリコール類およびグリコールエステル類から選択される少なくとも1種の安定化剤、ならびに塩化物イオンを含む水溶液からなり、
pHが0より大きく7より小さく、
塩化物イオン濃度が2重量%以上であり、スズ濃度が0.5重量%以下である、洗浄液。
【請求項2】
さらに有機酸を含有する、請求項1に記載の洗浄液。
【請求項3】
液中の酸濃度が12重量%以下である、請求項1または2に記載の洗浄液。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の洗浄液を連続または繰り返し使用する際に、前記洗浄液に添加する補給液であって、塩酸および硫酸から選択される少なくとも1種の無機酸、チオ尿素類およびチオ尿素誘導体から選択される少なくとも1種の錯化剤、グリコール類およびグリコールエステル類から選択される少なくとも1種の安定化剤、ならびに塩化物イオンを含む水溶液からなる補給液。
【請求項5】
導電層の表面にスズメッキ層を形成する方法であって、
スズイオンを含む酸性のメッキ液と導電層とを接触させて、導電層の表面に無電解スズメッキ被膜を形成するメッキ工程;
前記メッキ液が付着している前記メッキ被膜の表面に、請求項1〜のいずれか1項に記載の洗浄液を接触させる洗浄工程;および
前記メッキ被膜を水洗する水洗工程
をこの順に有する、スズメッキ層の形成方法。
【請求項6】
前記洗浄工程において、スズメッキ被膜表面を前記洗浄液中に浸漬することにより、前記スズメッキ被膜の表面に前記洗浄液を接触させる、請求項に記載のスズメッキ層の形成方法。
【請求項7】
前記洗浄工程は、前記洗浄液に、請求項に記載の補給液を添加しながら、前記メッキ被膜の表面を洗浄する工程である、請求項またはに記載のスズメッキ層の形成方法。
【請求項8】
導電層を備える基板を水平搬送することにより、前記メッキ工程、前記洗浄工程、および前記水洗工程が連続に実施される、請求項のいずれか1項に記載のスズメッキ層の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解スズメッキ後のメッキ液が表面に付着している状態のスズメッキ被膜を洗浄するための洗浄液、およびその補給液に関する。さらに、本発明は当該洗浄液による洗浄の工程を含むスズメッキ層の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な多層配線板は、銅や銅合金等からなる導電層を有する内層基板が、プリプレグを挟んで他の内層基板や銅箔等と積層プレスされて製造されている。導電層間は、孔壁が銅メッキされたスルーホールとよばれる貫通孔により、電気的に接続されている。導電層とプリプレグ等の樹脂やはんだとの接着性を高めるために、粗化剤(マイクロエッチング剤)により導電層の表面に微細な凹凸形状を形成する方法や、導電層の表面に樹脂との接着性の高い金属層(対樹脂接着層)を形成する方法が知られている。
【0003】
特に、高周波用配線板では、電気信号の伝送損失低減するために、導電層の表面粗度が小さいことが求められる。そのため、導電層の表面に対樹脂接着層を形成して、樹脂やはんだとの接着性を高める方法が広く採用されている。導電層表面への対樹脂接着層の形成方法として、無電解メッキによりスズ層(スズ合金層)を形成する方法が知られている(例えば特許文献1および特許文献2参照)。一般に、無電解メッキによりスズ被膜を形成後の基板は、水洗により、表面に付着したメッキ液を洗浄除去した後、乾燥が行われる。
【0004】
無電解スズメッキ液はスズイオンを含む酸性溶液である。無電解スズメッキ液が表面に付着しているスズ被膜を水洗すると、被膜表面のpH環境が酸性から中性へと急激に変化する(pHショック)。無電解スズメッキ被膜の水洗では、このような表面環境の急激な変化に伴って、被膜表面に水酸化スズ等のスズ塩の結晶が析出する場合がある。特に、メッキ液を連続使用した場合や、水洗浴での処理量(洗浄面積)が大きくなると、結晶の析出が顕著となる傾向がある。スズメッキ被膜の表面に結晶が析出すると、樹脂やハンダ等との密着性低下や、配線板の信頼性低下等に繋がる。また、ロール搬送法等により基板を搬送して、メッキから水洗までの工程を連続して行う場合(水平搬送法)、被膜表面に付着した結晶が、基板搬送経路(搬送ロールや浴の壁面等)に移着して、工程汚染を生じることも問題となり得る。このような問題を防止するためには、メッキ浴中のメッキ液や水洗浴中の水を頻繁に交換する必要があるため、水平搬送による連続生産性のメリットが低減する。
【0005】
水洗時のスズメッキ被膜表面への結晶の析出を防止するために、無電解スズメッキ後、水洗の前に、酸性の洗浄液による洗浄を行う方法が提案されている。例えば、特許文献3では、無電解スズメッキ後、水洗の前に、劣化のない無電解スズメッキ液(未使用の新液)で洗浄を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−23301号公報
【特許文献2】特開2010−111748号公報
【特許文献3】特開2007−169746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
無電解スズメッキ後の洗浄では、メッキ被膜の表面への結晶の析出を防止するとともに、洗浄後の基板が水洗時と同等の特性(表面形状、メッキ被膜の組成、樹脂やはんだ等との密着性等)を有することが求められる。特許文献3では、無電解スズメッキ後の洗浄(メッキ液等の酸性溶液による洗浄)を、無電解メッキによるスズ被膜形成時よりも低温かつ短時間の条件で実施することにより、洗浄性(結晶の析出抑制)に加えて、メッキ被膜の特性維持を図っていると考えられる。しかし、スズメッキ被膜に、洗浄液としてメッキ液を接触させた場合、洗浄液中のスズイオンによる再メッキ(スズ被膜の形成)が生じ、メッキ被膜の特性の維持や管理が困難となる場合がある。
【0008】
さらに、本発明者らが検討の結果、酸性の洗浄液を繰り返し使用あるいは連続使用すると、スズメッキ被膜表面には結晶が析出していない場合でも、洗浄液中に結晶の析出や沈殿が生じ、これらの析出物がメッキ被膜に付着して特性低下を招くことが判明した。特に、水平搬送法では、メッキ、酸性の洗浄液による洗浄、水洗等の各工程において、溶液を撹拌しながら処理が行われるため、洗浄液中に結晶の析出や沈殿が生じると、これらがスズメッキ被膜に付着する等の二次汚染の問題が生じる。
【0009】
上記に鑑み、本発明は、スズメッキ被膜表面の洗浄性が良好で、かつスズメッキ被膜の特性維持が容易であり、さらに長期間の連続使用が可能なスズメッキ被膜の洗浄液の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが検討の結果、実質的にスズを含まない洗浄液を用いて、無電解スズメッキ被膜の表面を洗浄することにより、その後の水洗時の結晶の析出が抑制されるとともに、スズメッキ被膜の特性を維持できることが見いだされた。さらに、洗浄液が所定量の塩化物イオンを含有する場合に、洗浄液を連続使用した場合でも、液中への結晶の析出や沈殿の発生を抑制できることが判明した。
【0011】
本発明は、スズイオンを含む酸性のメッキ液が表面に付着している無電解スズメッキ被膜を洗浄するための洗浄液に関する。本発明の洗浄液は、酸、錯化剤、安定化剤および塩化物イオンを含む酸性水溶液である。液中の塩化物イオン濃度は2重量%以上であり、スズ濃度は0.5重量%以下である。洗浄液のpHは0より大きいことが好ましく、液中の酸濃度は12重量%以下が好ましい。洗浄液は、有機酸および無機酸を含むことが好ましい。
【0012】
錯化剤としては、チオ尿素類やチオ尿素誘導体が好ましい。安定化剤としては、グリコール類やグリコールエステル類が好ましい。
【0013】
さらに、本発明は、上記洗浄液を連続または繰り返し使用する際に、洗浄液に添加する補給液に関する。補給液は、酸、錯化剤、安定化剤および塩化物イオンを含む水溶液である。
【0014】
また、本発明は、導電層の表面にスズメッキ層を形成する方法に関する。本発明のスズメッキ層形成方法は、スズイオンを含む酸性のメッキ液と導電層とを接触させて、導電層の表面に無電解スズメッキ被膜を形成する工程;メッキ液が付着しているメッキ被膜の表面に、上記洗浄液を接触させて洗浄を行う工程;およびメッキ被膜を水洗する工程をこの順に有する。
【0015】
上記の各工程は、導電層を備える基板を水平搬送することにより、連続して実施してもよい。上記の洗浄工程では、導電層上にスズメッキ被膜が形成された基板を洗浄液中に浸漬することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
導電層上に、無電解メッキによりスズ被膜を形成後、スズメッキ被膜の表面を本発明の洗浄液と接触させて洗浄すれば、その後の水洗におけるメッキ被膜表面への結晶の析出を抑制できる。また、洗浄液との接触によるメッキ被膜の溶解や、スズの再メッキが生じ難いため、メッキ被膜の特性が維持され、樹脂等との密着性の高いスズメッキ層(接着層)を形成できる。さらに、本発明の洗浄液は、経時安定性に優れ、連続使用した場合でも結晶の析出や沈殿が生じ難い。そのため、メッキ浴、洗浄浴、水洗浴等の液交換の頻度を低減可能であり、特に、水平搬送法等による連続生産の効率を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[洗浄液]
本発明の洗浄液は、銅層等の表面に無電解スズメッキを行った後、水洗を行う前に、メッキ被膜表面を洗浄するための溶液である。本発明の洗浄液は、酸、錯化剤、安定化剤および塩化物イオンを含有する酸性水溶液である。以下、洗浄液に含まれる成分について説明する。
【0018】
(酸)
本発明の洗浄液に含まれる酸は、pH調整剤、およびスズイオンの安定化剤として機能する。上記酸は、有機酸でも無機酸でもよい。無機酸としては、塩酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、ホウフッ化水素酸、リン酸等が挙げられる。中でも、第二スズ塩の溶解性等の観点から、塩酸または硫酸が好ましい。
【0019】
有機酸としては、pKaが5以下のものが好ましい。pKaが5以下の有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の飽和脂肪酸;アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和脂肪酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸;安息香酸、フタル酸、桂皮酸等の芳香族カルボン酸;マレイン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸;グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸;β−クロロプロピオン酸、ニコチン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシピバリン酸、レブリン酸等の置換基を有するカルボン酸;スルファミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸等の有機スルホン酸等の水溶性有機酸が挙げられる。中でも、洗浄液の経時安定性を高める観点から、オキシカルボン酸または有機スルホン酸が好ましい。
【0020】
酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上の酸を用いる場合、2種以上の無機酸を用いてもよく、2種以上の有機酸を用いてもよい。また、有機酸と無機酸を併用してもよい。スズ塩の溶解性を高めることにより、スズメッキ被膜表面の洗浄性を高める観点からは、無機酸が好ましく用いられる。一方、洗浄液の経時安定性(連続使用性)を高める観点からは、有機酸が好ましく用いられる。洗浄液の洗浄性と経時安定性を両立し、かつ酸によるスズメッキ被膜の溶解(エッチング)を抑制する観点から、有機酸と無機酸とを併用することが好ましい。
【0021】
スズメッキ被膜の溶解等による変質を抑制しつつ、スズメッキ被膜表面洗浄性を高める観点から、洗浄液のpHは、0より大きく7より小さいことが好ましく、0.1〜5がより好ましく、0.5〜3がさらに好ましい。洗浄液のpHを適切に保ち、スズメッキ被膜の溶解等による変質を抑制しつつ、スズメッキ被膜表面洗浄性を高める観点から、洗浄液中の無機酸の濃度は、0.05〜5重量%が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましく、0.15〜2重量%がさらに好ましい。また、洗浄液のpHの変動を抑制しつつ、洗浄液中へのスズ塩の析出を抑制し、洗浄液の経時安定性を高める観点から、洗浄液中の有機酸の濃度は、0.3〜11重量%が好ましく、0.5〜9重量%がより好ましく、0.8〜8重量%がさらに好ましい。洗浄液中の酸濃度(無機酸濃度と有機酸濃度の合計)は、0.4〜12重量%が好ましく、0.8〜10重量%がより好ましく、1〜9重量%がさらに好ましく、1.2〜8重量%が特に好ましい。
【0022】
(錯化剤)
本発明の洗浄液に含まれる錯化剤は、メッキ被膜表面やその下地の導電層(例えば銅層や銅合金層)に配位してキレートを形成し、メッキ被膜の酸への溶解等による表面性の変化を抑制する作用を有する。錯化剤としては、チオ尿素、1,3−ジメチルチオ尿素、1,3−ジエチル−2−チオ尿素、トリメチルチオ尿素、アセチルチオ尿素等のチオ尿素類や、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジド等のチオ尿素誘導体が好ましく用いられる。その他、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA・2Na)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンリン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、アミノトリメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸五ナトリウム塩、ベンジルアミン、2―ナフチルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、シンナミルアミン、p―メトキシシンナミルアミン等も錯化剤として使用可能である。
【0023】
洗浄液中の錯化剤の濃度は、0.5〜20重量%が好ましく、1〜15重量%がより好ましく、1.5〜10重量%がさらに好ましい。錯化剤の濃度が上記範囲内であれば、スズメッキ被膜の表面特性の変化を抑制しつつ、表面を洗浄できるため、メッキ被膜表面への結晶の析出を抑制できる。
【0024】
(安定化剤)
本発明の洗浄液に含まれる安定化剤は、メッキ被膜表面の近傍において洗浄に必要な各成分の濃度を維持するとともに、洗浄液中でのスズ塩の溶解性を高める作用を有する。安定化剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類、セロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール等のグリコールエステル類等が例示できる。
【0025】
洗浄液中の安定化剤の濃度は、2〜75重量%が好ましく、3〜60重量%がより好ましく、4〜50重量%がさらに好ましい。錯化剤の濃度が上記範囲内であれば、スズメッキ被膜の表面近傍において、洗浄に必要は各成分の濃度を維持できるとともに、洗浄液中でのスズ塩の溶解性高められる。そのため、被膜表面のスズイオンやスズ塩を洗浄液中に溶解させる作用により洗浄力が高められるとともに、洗浄液中へのスズ塩等の析出を抑制できる。
【0026】
(塩化物イオン)
本発明の洗浄液は、塩化物イオン濃度が2重量%以上である。塩化物イオン濃度は、3重量%以上が好ましく、4重量%以上がさらに好ましい。塩化物イオンは、洗浄液中でのスズ塩の溶解を補助し、洗浄液を連続使用した場合の経時安定性(連続使用性)を高める作用を有する。塩化物イオン濃度の上限は特に制限されないが、溶解性の観点から、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。塩化物イオン源を配合することによって、洗浄液中に塩化物イオンを含有させることができる。
【0027】
塩化物イオン源としては、塩酸、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化銅、塩化亜鉛、塩化鉄等が挙げられる。これらの他、水溶液中でハロゲン化物イオンを解離しうる化合物も塩化物イオン源として使用できる。塩化物イオン源は2種以上を併用してもよい。
【0028】
洗浄液による洗浄効率を高めるとともに、異種金属の表面への析出等による表面特性の変化を抑制する観点から、塩化物イオン源としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等のアルカリ金属塩、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩、塩化アンモニウム、塩酸等が好ましく用いられる。なお、塩酸は、塩化物イオン源としての作用と上述の酸としての作用の両方を有するものとして使用できる。ただし、塩酸の濃度が大きすぎると、洗浄液のpHが低下し、スズメッキ被膜の溶解や再メッキ等による表面特性の変化を生じる場合がある。そのため、塩酸を用いる場合は、塩化ナトリウム等の他の塩化物イオン源を併用して、塩化物イオン濃度を上記範囲とすることが好ましい。
【0029】
(他の添加剤)
本発明の洗浄液には、上記成分の他、還元剤、光沢剤、pH調整剤、界面活性剤、防腐剤等を、必要に応じて適宜添加することができる。これらの添加成分の含有量は、例えば0.1〜20重量%程度である。
【0030】
本発明の洗浄液は、上記の各成分を水に溶解させることにより調製できる。水としては、イオン性物質や不純物を除去した水が好ましく、例えばイオン交換水、純水、超純水等が用いられる。
【0031】
(洗浄液のスズ濃度)
本発明の洗浄液は、スズ濃度が0.5重量%以下である。スズ濃度とは、スズイオン(Sn2+およびSn4+)を含めたスズ元素の濃度である。液中のスズ濃度を小さくすることにより、メッキ被膜表面に付着したスズイオンの除去効率が高められる。そのため、洗浄時の再メッキを抑制できるとともに、被膜表面へのスズ塩の析出を抑制できる。洗浄液中のスズ濃度は、0.4重量%以下が好ましく、0.35重量%以下がより好ましい。液中のスズ濃度は、例えば、ゼーマン原子吸光光度計を用いて測定できる。
【0032】
本発明の洗浄液は、使用前(新液)は実質的にスズを含まず、スズ濃度が0.05重量%以下であることが好ましい。洗浄液の使用に伴って、メッキ被膜表面に付着したメッキ液が洗浄液中に持ち込まれ、液中のスズ濃度が上昇する傾向がある。洗浄液を連続または繰り返し使用する場合は、洗浄性能を均一に保つ観点から、スズ濃度が所定値を超えた場合に、洗浄液を交換することが好ましい。
【0033】
[補給液]
本発明の補給液は、上記の洗浄液を連続または繰り返し使用する際に、洗浄液に添加するための補給液であり、酸、錯化剤、安定化剤および塩化物イオンを含む酸性水溶液である。洗浄液に補給液を添加することにより、洗浄液の各成分比を適正に保ち、洗浄効果を安定して維持できる。
【0034】
補給液中の各成分の濃度は、洗浄液中の各成分の濃度や、メッキ液の組成等に応じて適宜設定される。補給液中の酸、錯化剤、安定化剤および塩化物イオンの濃度の好ましい範囲は、洗浄液中の各成分の濃度の好ましい範囲として前述した範囲と同様である。補給液には、上記の酸、錯化剤、安定化剤および塩化物イオン(源)以外の成分が配合されていてもよい。
【0035】
[無電解スズメッキ層の形成方法]
本発明の洗浄液は、銅や銅合金等からなる導電層上に無電解スズメッキを行った後、水洗を行う前の被膜表面の洗浄に用いられる。本発明のスズメッキ層形成方法は、スズイオンを含む酸性のメッキ液と導電層とを接触させて、導電層の表面に無電解スズメッキ被膜を形成する工程(メッキ工程);メッキ液が付着しているメッキ被膜の表面に、洗浄液を接触させる工程(洗浄工程);およびメッキ被膜を水洗する工程(水洗工程)をこの順に有する。
【0036】
無電解メッキとは、外部電源を使用せずに、電気化学的酸化還元反応により金属を還元析出させるものであり、本明細書においては、異種金属のイオン化傾向の差(電位差)を利用する置換メッキ、および金属と還元剤とを含む溶液内で、酸化還元反応により金属を析出させる化学メッキ(自己触媒型無電解メッキあるいは還元型無電解メッキとも称される)の両方を包含する。
【0037】
(スズメッキ被膜の形成)
導電層の表面に無電解メッキによりスズメッキ被膜を形成する前に、必要に応じて導電層の表面を酸等により洗浄することが好ましい。例えば、導電層が銅あるいは銅合金である場合は、希硫酸等による洗浄を行うことが好ましい。
【0038】
導電層を無電解スズメッキ液と接触させることにより、無電解スズメッキ層が形成される。無電解スズメッキ液はスズイオンを含む酸性の水溶液であり、その組成は特に制限されず、公知の無電解スズメッキ液を用いることができる。酸およびスズ塩を配合することにより、無電解スズメッキ液が得られる。スズ塩は、第一スズ(Sn2+)塩でもよく第二スズ(Sn4+)塩でもよい。また、第一スズ塩と第二スズ塩を併用することもできる。スズ塩の具体例としては、硫酸第一スズ、硫酸第二スズ、ホウフッ化第一スズ、フッ化第一スズ、フッ化第二スズ、硝酸第一スズ、硝酸第二スズ、塩化第一スズ、塩化第二スズ、ギ酸第一スズ、ギ酸第二スズ、酢酸第一スズ、酢酸第二スズ等が挙げられる。メッキ液中のスズ濃度は、好ましくは、0.5〜5重量%である。なお、上述の洗浄液のpHを、メッキ液のpHよりも高くすれば、メッキ被膜表面のpH変化(pHショック)を緩和できる。
【0039】
導電層が銅または銅合金である場合、樹脂等との密着性を向上する観点からは、置換メッキにより、銅とスズの合金層を形成することが好ましい。置換スズメッキ用のメッキ液は、酸およびスズ塩に加えて、錯化剤および安定化剤を含有することが好ましい。置換スズメッキ液に含まれる錯化剤は、導電層に配位してキレートを形成し、導電層の表面へのスズめっき被膜の形成を促進する作用を有する。安定化剤は、導電層の表面近傍において、反応に必要な各成分の濃度を維持する作用を有する。錯化剤及び安定化剤としては、洗浄液の成分として上述したものが好ましく用いられる。なお、メッキ液中の錯化剤および安定化剤は、洗浄液中の錯化剤および安定化剤と同一のものでもよく、異なるものでもよい。
【0040】
置換スズメッキ液は、スズ塩に加えて、銅およびスズ以外の第三の金属(例えば、銀、亜鉛、アルミニウム、チタン、ビスマス、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、金、白金等)の塩を含んでいてもよい(例えば、特開2004−349698号公報参照)。また、置換スズメッキ液は、上記錯化剤と銅との錯形成反応を抑制する目的で、リン酸類、亜リン酸類、次亜リン酸類等の錯形成抑制剤を含んでいてもよい(例えば、特開2010−13516号公報参照)。
【0041】
導電層の表面を、メッキ液と接触させることにより、導電層の表面にスズメッキ被膜が形成される。メッキ条件は特に制限されない。例えば、置換スズメッキの場合は、温度20〜70℃程度(好ましくは20〜40℃)のメッキ液に、導電層表面を5秒〜5分間程度浸漬すればよい。
【0042】
(洗浄)
無電解メッキによりスズメッキ被膜が形成された導電層を、メッキ液から取り出した際には、メッキ被膜の表面にメッキ液が付着している状態である。この状態で、水洗を行う前に、本発明の洗浄液を用いた洗浄(酸洗浄)が行われる。洗浄は、スズメッキ被膜の表面に上記の洗浄液を接触させることにより行われる。スズメッキ被膜と洗浄液とを接触させる方法としては、スズメッキ被膜表面を洗浄液に浸漬する方法や、洗浄液をスズメッキ被膜にスプレーする方法等が挙げられる。洗浄効率を高める観点からは、スズメッキ被膜表面を洗浄液に浸漬する方法が好ましい。メッキ被膜を洗浄液に浸漬する場合、洗浄液の温度は、10〜70℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。浸漬時間は、2〜120秒が好ましく、5〜60秒がより好ましい。
【0043】
洗浄は、2段階以上で行われてもよい。例えば、水平搬送法において、本発明の洗浄液による洗浄が2段階で行われる場合、メッキ浴と水洗浴との間に第一洗浄浴と第二洗浄浴が設けられる。このように、洗浄が2段階以上で行われる場合、各洗浄浴中の洗浄液の組成は同一でもよく、異なっていてもよい。
【0044】
スズメッキ被膜表面に付着したメッキ液が洗浄液中に持ち込まれるため、洗浄液の使用に伴って、組成が変動する。組成の変動による洗浄性の低下を抑制するために、洗浄液に前述の補給液を添加しながら洗浄が行われることが好ましい。なお、補給液を添加することにより酸、錯化剤、安定化剤、塩化物イオン等の濃度を一定に保つことはできるが、洗浄液中のスズ含有量は、使用に伴って増加する傾向がある。洗浄液による処理量(基板の洗浄面積)が大きくなり洗浄液中のスズ濃度が増加すると、洗浄性能が低下したり、洗浄液中に結晶の析出や沈殿が生じる場合がある。前述のように、洗浄液中のスズイオン濃度が所定値を超えた場合は、洗浄液を交換することが好ましい。
【0045】
(水洗)
本発明の洗浄液による洗浄後のメッキ被膜を、水と接触させることにより水洗が行われる。水洗条件は特に制限されない。水洗は2段階以上で行われてもよい。本発明においては、無電解メッキ後、水洗の前に洗浄が行われるため、水洗時のメッキ被膜表面へのスズ塩等の析出を抑制できる。
【0046】
上記のメッキ、洗浄および水洗の各工程は、バッチ式で行ってもよく、導電層を備える基板を水平搬送して連続で行ってもよい。メッキ処理の効率を高める観点からは、水平搬送法が好ましい。本発明の洗浄液は、繰り返し使用あるいは連続使用した場合でも、液安定性が高く、液中への結晶の析出や沈殿が生じ難いため、水平搬送を行った場合でも、メッキ被膜表面の汚染が生じ難い。
【0047】
(水洗後の処理)
導電層上の被膜(スズメッキ層)は、必要に応じて乾燥を行った後、樹脂やはんだとの接着が行われ、実用に供される。なお、樹脂やはんだ等との接着が行われる前に、スズメッキ層の表面に他の層を積層してもよい。また、スズメッキ層の表面平滑性向上等を目的として、スズメッキ層の表面に、スズ剥離液(硝酸、塩酸、硫酸等のスズをエッチングできる水溶液)を接触させ、スズメッキ層を深さ方向に一定量エッチングしてもよい(例えば、特開2010−13516号公報参照)。
【0048】
(樹脂層の積層)
多層配線板の形成においては、導電層上に樹脂層の積層が行われる。本発明によりスズメッキ層が形成される場合、スズメッキ層上に樹脂層が積層される。樹脂層の積層方法としては、積層プレス、ラミネート、塗布等の方法が採用できる。樹脂層の樹脂成分としては、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリプロピレン、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、シアネートエステル等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は官能基によって変性されていてもよく、ガラス繊維、アラミド繊維、その他の繊維等で強化されていてもよい。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の実施例を、比較例と併せて説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0050】
[参考例]
ガラス布エポキシ樹脂含浸銅張積層板(パナソニック電工製 R−1766、銅箔厚み:18μm)に17μmの電解銅メッキ層を形成した基板を、100mm×100mmに切断した。これを10重量%の硫酸に30秒間浸漬して銅メッキ層の表面を清浄化し、水洗、乾燥したものを試験基板とした。この試験基板を置換スズメッキ液(メック製 T−9900)中で浸漬揺動処理し(30℃、30秒間)、電解銅メッキ層の表面に無電解スズメッキ被膜(銅とスズの合金層)を形成した。その後、水洗および乾燥を行った。乾燥後の無電解スズメッキ層の表面を目視で観察したところ、基板表面に、白色の結晶の析出が確認された。
【0051】
[実施例1〜19および比較例1〜7]
(新液による洗浄)
上記参考例と同様に、無電解スズメッキを行った。メッキ液から取り出した銅張積層板を、表1に示す組成の洗浄液(25℃)に10秒間浸漬した後、参考例と同様に、水洗および乾燥を行った。なお、比較例7では、スズ濃度が1重量%となるようにスズ塩(硫酸第一スズ)を配合して溶液の調整を試みたが、スズ塩の一部が未溶解であったため、以下の評価は行わなかった。
【0052】
(連続使用液による洗浄)
表1に示す組成の新液100重量部に、上記の置換スズメッキ液30重量部を加えた溶液(連続使用によりメッキ液が持ち込まれた後の洗浄液の組成に相当;スズ濃度:0.27重量%)を洗浄液として用いた。上記参考例と同様にスズメッキ処理を行った銅張積層板を、この洗浄液(25℃)に10秒間浸漬した後、水洗および乾燥を行った。
【0053】
[評価]
(洗浄性)
水洗および乾燥後のスズメッキ層の表面を目視で観察し、表面に白色の結晶の析出が確認されなかったものを○、結晶の析出が確認されたものを×とした。
【0054】
(Snメッキ表面特性への影響)
水洗および乾燥後のスズメッキ層の表面を目視で観察し、表面の仕上がり(色および金属光沢)を、参考例(水洗のみを行った場合)と対比することにより、表面の洗浄ムラおよびエッチングの進行有無を確認した。また、表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い、参考例と対比して、表面形状(平滑性)の変化を確認した。いずれの評価においても参考例と同様であったものを○、いずれかの項目が参考例と異なっており、洗浄による基板表面への影響がみられたものを×とした。
【0055】
(洗浄液安定性)
使用後の洗浄液を室温で3日間静置した後、目視にて観察し、洗浄液の安定性を確認した。液の濁りが無く沈殿の発生も無いものを○、液の濁りがあるが沈殿の発生がないものを△、液の濁りがあり沈殿の発生がみられたものを×とした。
【0056】
各実施例および比較例の洗浄液の組成、および評価結果を表1に示す。なお、洗浄液の調整に際して、無機酸としては、35重量%の塩酸、および62.5重量%の硫酸を用いた。表1に示す洗浄液の各成分の濃度は、純物質としての濃度(重量%)であり、表1に示す各洗浄液の配合成分の残部はイオン交換水である。各実施例の洗浄液(新液)のpHを測定したところ、いずれも0.5〜3の範囲内であった。比較例3の洗浄液のpHはマイナスの値を示した。
【0057】
【表1】
【0058】
表1の「洗浄性」の評価結果から、いずれの実施例および比較例(比較例7を除く)においても、無電解スズメッキ後、水洗の前に、酸性の洗浄液による洗浄を行うことにより、無電解スズメッキ被膜表面への結晶の析出が抑制されることがわかる。実施例1〜5および比較例1,2の対比から、洗浄液中の塩化物イオン濃度の上昇に伴って、洗浄液の連続使用安定性が高められ、連続使用液(スズを0.27重量%含む溶液)で洗浄した場合でも、液中への結晶の析出や沈殿の発生が抑制されていることが分かる。
【0059】
塩化物イオン源として塩酸のみを含む比較例3は、実施例と同様に洗浄液の連続使用安定性が高いものの、酸濃度が高い(pHが低い)ため、スズメッキ被膜の溶解による表面の変化が生じていた。これらの結果から、酸として塩酸を用いる場合は、洗浄液の安定性とメッキ被膜へのダメージ抑制を両立させるために、塩酸以外の塩化物イオン源を併用して、塩化物イオン濃度を調整することが好ましいといえる。
【0060】
無機酸として硫酸を用いた実施例8,9の結果から、塩酸以外の無機酸を用いた場合でも、塩化物イオン濃度を調整することにより、洗浄液の安定性とメッキ被膜へのダメージ抑制を両立できることが分かる。また、実施例13,14の結果から、クエン酸以外の有機酸を用いた場合でも、他の実施例と同様の洗浄性や液安定性が得られることが分かる。有機酸を用いずに無機酸のみを用いた実施例10は、有機酸と無機酸を併用した他の実施例に比べると、塩化物イオン濃度が同等であっても、洗浄液の連続使用安定性やや劣っていた。この結果から、酸として有機酸および無機酸を用いることにより、酸を単独で使用する場合に比べて、洗浄液の安定性が高められることが分かる。
【0061】
錯化剤(チオ尿素)を含まない比較例4の洗浄液を用いた場合は、メッキ被膜の特性変化が生じていた。安定化剤(ジエチレングリコール)を含まない比較例5,6の洗浄液を用いた場合は、メッキ液の連続使用安定性が低下していた。また、比較例6と実施例17〜19の対比から、安定化剤濃度の上昇に伴って、洗浄液の連続使用安定性が高められることが分かる。
【0062】
以上の結果から、無電解スズメッキ後、水洗の前に、本発明の洗浄液を用いてメッキ被膜を洗浄することにより、スズメッキ被膜の特性を維持しつつ、水洗時の結晶の析出を抑制できることが分かる。また、繰り返し使用や連続使用によりメッキ液中のスズイオンが持ち込まれ、洗浄液中のスズ濃度が上昇した場合でも、本発明の洗浄液は、結晶の析出や沈殿の発生が生じ難く、連続使用性(経時安定性)に優れていることが分かる。