(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。本明細書において、「左側」および「右側」は、車両に乗車した運転者から見た左右側をいう。
【0024】
図1は本発明の一実施形態に係るエンジンを搭載した鞍乗型車両の一種である自動二輪車の側面図である。この自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を形成するメインフレーム1と、車体フレームFRの後半部を形成するシートレール2および補強レール2aとを有している。シートレール2および補強レール2aは、メインフレーム1の後部に取り付けられている。メインフレーム1の前端にヘッドパイプ4が一体形成され、このヘッドパイプ4に、図示しないステアリングシャフトを介してフロントフォーク8が回動自在に軸支されている。このフロントフォーク8の下端部に前輪10が取り付けられ、フロントフォーク8の上端部に操向用のハンドル6が固定されている。すなわち、ヘッドパイプ4がハンドルポストとして機能し、車体フレームFRの一部であるメインフレーム1が、ヘッドパイプ4から車体後方に延びている。
【0025】
一方、車体フレームFRの中央下部であるメインフレーム1の後端部にスイングアームブラケット12が設けられており、このスイングアームブラケット12にスイングアーム20が上下揺動自在に軸支されている。スイングアーム20の後端部に後輪22がピボット軸23の回りに回転自在に支持されている。
【0026】
車体フレームFRの中央下部でスイングアームブラケット12の前側にエンジンEが取り付けられている。エンジンEの回転がチェーンのような伝達機構24に伝達され、この伝達機構24を介して後輪22が駆動される。エンジンEは、例えば4気筒4サイクルの並列多気筒エンジンである。エンジンEの形式はこれに限定されない。リヤフレーム2とスイングアーム20との間に、後部クッション機構25が連結されている。後部クッション機構25は、後輪22とリヤフレーム2との間にかかる荷重を緩衝する。スイングアームブラケット12の下部にサイドスタンド26が起倒自在に支持されている。エンジンEの前方に、エンジン冷却水を冷却するラジエータ27が配置されている。
【0027】
メインフレーム1の上部に燃料タンク28が配置され、リヤフレーム2に操縦者用シート30および同乗車用シート32が支持されている。また、車体前部に、樹脂製のカウリング34が装着され、前記ヘッドパイプ4の前方から車体前部の側方にかけての部分を覆っている。カウリング34には、ヘッドランプユニット36が装着されている。さらに、カウリング34には、エンジンEへの吸気を取り入れる空気取入口38が形成されている。空気取入口38は、ヘッドランプユニット36の下方に位置している。
【0028】
空気取入口38が、車体前方に開放されることで走行風Aの風圧を利用してエンジンEへの吸気量を増やすことができる。空気取入口38は、カウリング34の前面に配置され、走行風圧が最も高い、カウリング34の前端部に配置されている。この実施形態では、空気取入口38は、ヘッドランプユニット36の下方に位置しているが、ヘッドランプユニット36の上方に位置してもよいし、車幅方向に離れた2つのランプを有する2灯式ヘッドランプの車幅方向の中間に位置してもよい。
【0029】
エンジンEは、車幅方向に延びるエンジン回転軸39と、エンジン回転軸39を支持するクランクケース40と、クランクケース40から上方に突出したシリンダブロック42およびその上方のシリンダヘッド44と、シリンダヘッド44の上部に取り付けられたヘッドカバー46と、クランクケース40の下方に設けられたオイルパン50とを有している。クランクケース40の後部は変速機ケースを兼ねている。シリンダブロック42は若干前傾している。ヘッドカバー46は、吸排気バルブのカム機構(図示せず)を覆っている。シリンダヘッド44の後部に吸気ポート47が設けられている。
【0030】
シリンダヘッド44の前面の排気ポートに、4本の排気管54が接続されている。4本の排気管54は、エンジンEの下方で集合され、後輪22の右側に配置された排気マフラー56に接続されている。エンジン回転軸39の外側方、この実施形態では、左側方に発電機(図示せず)が連結され、この発電機を外側からジェネレータカバー58が覆っている。
【0031】
図2に示すように、エンジンEの右側方に、エンジンEの動力を前記吸排気バルブに伝達するバルブ駆動力伝達機構60が配置されている。本実施形態では、バルブ駆動力伝達機構60としてカムチェーンを用いているが、これに限定されず、例えば、プッシュロッド、ギヤ等を用いてもよい。なお、
図2、
図3および
図4は、車体フレームFR,燃料タンク28と後述の吸気チャンバ74を省略している。
【0032】
シリンダブロック42は、各気筒が形成されて燃焼室を形成する燃焼室形成部分42aと、燃焼室形成部分42aに隣接してバルブ伝達駆動力機構60の一部が収納される伝達機構収納部分42bとが形成される。本実施形態のように、バルブ駆動力伝達機構60としてカムチェーンが用いられている場合、伝達機構収納部分42bは、カムチェーントンネルとして形成されている。燃焼室形成部分42aの車幅方向中央位置は、前後方向に延びる車体の中心線C付近に配置されている。つまり、シリンダブロック42は、車体の中心線Cから伝達機構収納部分42bが形成される右側端部までの距離L2が、車体の中心線Cから左側端部までの距離L1に比べて大きく、車幅方向右側に膨出している。
【0033】
図1に示すように、シリンダブロック42の後方でクランクケース40の上方に、過給機62が配置されている。過給機62は、外気を取り込んでエンジンEに供給する吸気部を構成する。過給機62は、車幅方向に延びる過給機回転軸64と、左向きに開口した吸込口66と、エンジンEの車幅方向の中央部に配置された吐出口68とを有している。吐出口68は、過給機回転軸64よりも後方に位置している。
【0034】
過給機62の吸込口66は、クランクケース42の上面よりも上方で、且つシリンダブロック42の左側面よりも車幅方向内側に配置されている。吸込口66に吸気ダクト70が接続されている。吸気ダクト70は、シリンダブロック42の前方を流れる走行風Aを過給機62に導入する。これら過給機62と吸気ダクト70とで、シリンダ内に吸気を圧送する過給装置69を構成する。吸気ダクト70の詳細は後述する。
【0035】
図3に示すように、過給機の吐出口68は上方を向いている。前後方向における、吐出口68とエンジンEの吸気ポート47(
図1)との間に、吸気チャンバ74が配置されている。吸気チャンバ74は、複数気筒のそれぞれの吸気ポート47(
図1)に過給機62から供給される吸気を溜める。吸気チャンバ74は、シリンダブロック42の車幅方向のほぼ全長にわたっており、
図4に示すように、過給機62の上方でシリンダブロック42の後方に配置されている。
【0036】
過給機62と吸気チャンバ74との間の配管73は、吸気チャンバ74の車幅方向中心に接続されている。これにより、
図1に示す過給機62からの吸気が吸気チャンバ74を経て複数の吸気ポート47に均等に流入する。吸気チャンバ74とシリンダヘッド44との間には、スロットルボディ76が配置されている。このスロットルボディ76において、吸入空気中に燃料が噴射されて混合気が生成され、この混合気がシリンダ内に供給される。これら吸気チャンバ74およびスロットルボディ76の上方に、前記燃料タンク28が配置されている。
【0037】
過給機62は、吸込口66から吸引した外気を加圧して、その圧力を高めたのち吐出口68から吐出して、エンジンEに供給する。これにより、エンジンEに供給する吸気量を高めることができる。吐出口68の軸線は、上方に向かって前方に傾斜している。これによって吸気チャンバ74の前方へ吸気を円滑に導くことができる。
図2に示す過給機62の吐出口68と、シリンダブロック42の燃焼室形成部分の幅方向中央位置とがほぼ同じ位置に位置することで、各気筒への吸気の偏りを防ぐことができる。
【0038】
図5に示すように、エンジンEの回転軸であるクランク軸39に、クランクギヤ80が設けられている。クランクギヤ80は、クラッチギャ79よりも内側のウェブに形成されている。クランクギヤ80は、駆動ギヤ84と噛み合って、カウンタ軸78を駆動する。カウンタ軸78に対して、クランク軸39と反対側に、過給機駆動軸82が配置されている。カウンタ軸78および過給機駆動軸82は、クランク軸39と平行な軸心を持つ。駆動ギヤ84は、カウンタ軸78に一体回転するようにスプライン嵌合されている。スタータギヤ86がカウンタ軸78に相対回転自在に支持され、駆動ギヤ84とスタータギヤ86との間にワンウェイクラッチ85が介在されている。
【0039】
スタータギヤ86に、トルクリミッタ88を介してスタータモーター90が接続されている。これにより、エンジンEが停止している状態でスタータモーター90が回転するとワンウェイクラッチ85が接続されて、クランク軸39へ始動トルクが伝達される。また、エンジンEの始動後にクランク軸39の回転速度がスタータモーター90より速くなると、ワンウェイクラッチ85が遮断されてクランク軸39からスタータモーター90への動力伝達が阻止される。
【0040】
カウンタ軸78に、小径の第1変速ギヤ92および大径の第2の変速ギヤ94が、例えば一体形成により固定されている。本実施形態では、変速ギヤは2つであるが、3つ以上であってもよい。過給機駆動軸82に、大径の第3変速ギヤ96および小径の第4の変速ギヤ98が設けられている。第3変速ギヤ96および小径の第4の変速ギヤ98は、前記第1および第2の変速ギヤ92,94とそれぞれ噛み合う。第3および第4の変速ギヤ96,98は、過給機駆動軸82に相対回転自在で、かつ軸方向への相対移動不能に装着されている。
【0041】
過給機駆動軸82の右側の端部に、スプロケット100が設けられている。このスプロケット100に、チェーン102が掛け渡されている。チェーン102は、エンジンEの動力を過給機62に伝達する動力伝達部を構成する。このチェーン102を介して、カウンタ軸78および過給機駆動軸82から、過給機回転軸64に連結された入力軸65に、クランク軸39の回転力を伝達している。ただし、過給機62の駆動方法はこれに限定されない。チェーン102は、過給機62の吸込口66の車幅方向反対側である右側に配置されている。本実施形態では、カウンタ軸78と過給機駆動軸82とは直接連結されているが、アイドルギヤなどを介して間接的に連結されていてもよい。過給機62の詳細については後述する。
【0042】
過給機駆動軸82における第3変速ギヤ96と第4の変速ギヤ98との間に、シフタ104が配置されている。シフタ104は、シフトリング105と、これを操作するシフトフォーク106と、シフトフォーク106を過給機駆動軸82と平行に移動させるシフトドラム108とを有している。
【0043】
シフトリング105が、過給機駆動軸82にスプライン嵌合され、過給機駆動軸82に相対回転不能で軸方向に移動自在となっている。シフトドラム108は、シフタ駆動手段110により回転駆動されてシフトフォーク106を軸方向に移動させる。シフトリング105に設けた係合孔105aが、第3および第4の変速ギヤ96,98に設けたドグ96a,98aの一方に選択的に係合されることにより、シフトリング105が第3および第4の変速ギヤ96,98の一方に選択的に相対回転不能に係合される。
【0044】
選択された変速ギヤ96,98を介して、カウンタ軸78から過給機駆動軸82へ動力が伝達される。すなわち、シフトリング105と第3の変速ギヤ96とがドグ連結されたとき、カウンタ軸78の回転、つまりクランク軸39の回転が大きな増速比で過給機駆動軸82に伝達される。一方、シフトフォーク106と第4の変速ギヤ98とがドグ連結されたとき、カウンタ軸78の回転が小さな減速比で過給機駆動軸82に伝達される。シフタ駆動手段110は、例えばサーボモータを有するものであるが、これに限定されない。これにより、クランク軸39の回転動力が、選択された変速ギヤ96,98を介してカウンタ軸78から過給機62の過給機駆動軸82に伝達される。
【0045】
シフタ駆動手段110は、例えば、エンジンEの回転数に応じてシフトフォーク106をシフトドラム108の軸方向に移動させて、回転数に適した第3および第4の変速ギヤ96,98をそれぞれ選択させる。具体的には、エンジンEの低回転域では、シフトリング105は第3変速ギヤ96にドグ連結されて、過給機62の増速比を上げて過給圧、つまり過給風量を増大させ、低速でのエンジントルクを稼ぐように設定する。一方、エンジンEの高回転域では、シフトリング105は第4変速ギヤ98にドグ連結されて、過給機12の増速比を下げて過給風量が過大になるのを防止し、適切なエンジントルクと安定した回転が得られるように設定する。
【0046】
過給機62の水平断面図である
図6に示すように、前記過給機62は、圧送部61と増速部63とを有する。過給機回転軸64の一端部64aに圧送部63のインペラ114が固定されている。増速部61の前記入力軸65の一端部65a(車幅方向左側)に、増速機である遊星歯車装置112を介して過給機回転軸64の他端部64bが連結されている。以下、過給機62における一端側は車幅方向左側をいい、他端側は車幅方向右側をいうものとする。増速機はなくてもよい。
【0047】
過給機回転軸64はハウジング116に回転自在に支持されている。ハウジング116の一端側の第1フランジ116aにボルトのようなケーシング締結部材122を用いて、インペラ114を覆うケーシング124が取り付けられている。ハウジング116の他端側の第2フランジ116bが、クランクケース40(
図1)に支持された固定用ケース120のケースフランジ120aに、ハウジング締結部材118により固定されている。こうして、過給機回転軸64およびインペラ114が、ハウジング116およびケーシング124により覆われている。ケーシング124には、一端側に開口した前記吸込口66と上方に開口した前記吐出口68とが形成されている。
【0048】
入力軸65は中空軸からなり、その他端部近傍と中央部が、軸受123を介して固定用ケース120に回転自在に支持されている。一方、入力軸65の一端部は、軸受125を介してハウジング116に回転自在に支持されている。入力軸65における他端部65bの外周面にスプライン歯が形成されている。この外周面にスプライン嵌合されたワンウェイクラッチ128を介して、スプロケット130が入力軸65に連結されている。
【0049】
スプロケット130の歯車132に前記チェーン102が架け渡されており、このチェーン102を介して過給機駆動軸82(
図5)の回転が入力軸65に伝達されている。入力軸65の他端部65bの内周面に雌ねじ部が形成されている。ワンウェイクラッチ128が、この雌ねじに螺合されたボルト134の頭部により、ワッシャ136を介して、他端部65bに装着されている。
【0050】
上述のように、遊星歯車装置112は、入力軸65と過給機回転軸64との間に配置され、両ハウジング116,120により支持されている。過給機回転軸64の他端部64bに、外歯138が形成されており、この外歯138に複数の遊星歯車140が周方向に並んでギヤ連結されている。すなわち、過給機回転軸64の外歯138は、遊星歯車装置112の太陽歯車として機能する。
【0051】
さらに、遊星歯車140は径方向外側で大径の内歯車(リングギヤ)142にギヤ連結している。各遊星歯車140は、軸受143によりキャリア軸144に回転自在に支持されている。軸受143は、入力軸65の一端部の環状のフランジ部144に装着されている。入力軸65が回転すると、遊星歯車140は過給機回転軸64の周りを公転する。つまり、入力軸65は、遊星歯車装置112のキャリア軸144と一体回転する。
【0052】
内歯車142には固定部材146が連結されており、この固定部材146がハウジング116にボルト145により固定されている。つまり、内歯車142は固定されている。このように、内歯車142が固定され、キャリア軸144が入力軸65に一体回転するように接続され、太陽歯車(外歯車138)が出力軸となる過給機回転軸64に形成されている。遊星歯車装置112は、入力軸65の回転を増速して正回転、すなわち、入力軸65と同じ回転方向で過給機回転軸64に伝達している。
【0053】
過給機62の構造は、この実施形態に限定されない。例えば、過給機回転軸64の軸心の向きは、エンジン回転軸39(
図5)の軸心と異なっていてもよい。また、過給機62は、エンジンからの動力を用いずに、電動モータを用いてもよく、排気から動力を得てもよい。内部構造についても、インペラ以外、例えばギヤポンプでもよい。さらに、増速機構も実施形態に限定されず、遊星歯車装置112はなくてもよい。
【0054】
図1に示す前記吸気ダクト70の詳細について説明する。吸気ダクト70は、エンジンEの一側方である左側方に配置されており、上流側のラムダクトユニット147と下流側の吸入ダクト部148とを有している。ラムダクトユニット147は、前端開口147aを前記カウリング34の空気取入口38に臨ませた配置で前部フレーム1に支持されており、開口147aから導入した空気をラム効果により昇圧させる。ラムダクトユニット147の後端部147bに吸入ダクト部148の前端部148aが接続されている。吸入ダクト部148の後端部148bは、過給機62の吸込口66に接続されている。
【0055】
吸気ダクト70の前端開口147aは、クランクケース40の上面よりも高い位置に配置されている。より詳細には、前端開口147aは、シリンダブロック44および過給機62の吸込口66よりも高い位置に配置されている。前端開口147aは、前輪10の後端よりも前方で、且つ前輪10の上端よりも上方に位置している。さらに、前端開口147aは、ラジエータ27およびフロントフォーク8よりも前方に位置している。
【0056】
図2に示すように、吸入ダクト部148の内側面148dは、過給機62の吸込口66よりも前方において、後方に向かって車幅方向内側に滑らかに湾曲している。このように、吸気ダクト70の内側面148dが後方に向かって徐々に内側に変化することで、吸気ダクト70内の吸気の流れの剥離を防ぐことができる。この実施形態では、吸入ダクト部148の外側面148eも湾曲している。つまり、過給機62の吸込口66よりも前方に、吸入ダクト部148の内側面148dおよび外側面148eの最外部分が位置する。
【0057】
詳細には、吸入ダクト部148は、その軸線148cが円弧を描くように湾曲している。ただし、吸入ダクト部148は、滑らかに湾曲していればよく、軸線148cが1つの円弧に沿っている必要はない。吸入ダクト部148の軸線148cの曲率半径rは、吸入ダクト部148の直径Dよりも大きく(r>D)、好ましくは直径Dの2倍以上(r≧2D)、より好ましくは直径Dの3倍以上(r≧3D)である。なお、曲率中心Oは、エンジンEの外側面よりも内側に位置している。
【0058】
湾曲開始位置SPは、過給機62の吸込口66よりも吸入ダクト部148の直径D以上前方に位置し、具体的には、シリンダヘッド42よりも後方に位置している。このように、車体において最も外側に位置するシリンダヘッド42の後方から湾曲を開始することで、吸気ダクト70とエンジンEとの干渉を防ぎつつ、吸気ダクト70の湾曲部の曲率半径rを大きくできる。
【0059】
自動二輪車のような鞍乗型車両では、車幅方向寸法が小さいので、平面視で曲率半径rを大きくすることは難しいが、上述のように、湾曲開始位置SPを過給機62の吸込口66よりも前方に配置することで、曲率半径rを大きくすることができる。
【0060】
図1のラムダクトユニット147は、大略的にヘッドパイプ4よりも前方に位置し、例えば、カウリング34、ヘッドランプユニット36などに一体固定される。ヘッドパイプ4内をラムダクトユニット147における吸気通路の一部としてもよい。
【0061】
ラムダクトユニット147の前端開口147aが吸気ダクト70の導入口70aとなる。吸気ダクト70の導入口70aは、カウリング34における車幅方向の中心部で最も前方に位置する前端部の付近、つまり淀み点P付近に配置されている。これにより、圧力の高い走行風Aをシリンダ内に導くことができる。ただし、吸気ダクト70の導入口70aは、淀み点P付近以外に形成されてもよい。
【0062】
吸気ダクト70の中間部、本実施形態ではラムダクトユニット147の中間部に、前端の導入口70aよりも上方に位置する高位部70bが形成されている。この実施形態では、高位部70bは、ラムダクトユニット147におけるヘッドパイプ4の前方でヘッドランプユニット36の後方に設けられている。高位部70bに、エアクリーナ150が内蔵されている。エアクリーナ150は、過給機62に導入する空気を浄化する。このように、高位部70bにエアクリーナ150を配置することで、エアクリーナ150に水が浸入するのを防止できる。
【0063】
本実施形態では吸気ダクト70は、フロントフォーク8の回動領域よりも外側を通過している。これにより、吸気ダクト70がフロントフォーク8に干渉しない。また、吸気ダクト70は、ラジエータ27の上方を通過している。これにより、吸気ダクト70が、ラジエータ27を通過した走行風Aの車体側方への流れを阻害しない。その結果、ラジエータ27の冷却性能を維持できる。ただし、吸気ダクト70が、ラジエータ27の外側方を通過するようにしてもよい。その場合でも、吸気ダクト70がラジエータ27を通過した走行風Aの流れを阻害しないように配置するのが好ましい。
【0064】
吸入ダクト部148は、ヘッドパイプ4よりも後方に位置する部分である。吸入ダクト部148は、ラムダクトユニット147と過給機62とを滑らかに接続するもので、例えば、樹脂で形成された筒体で形成される。吸入ダクト部分148は、ラムダクトユニット147から後方に向かって滑らかに下方に傾斜し、シリンダブロック42の側方において、シリンダヘッド44およびヘッドカバー46の側方の領域を通過している。
【0065】
より詳細には、吸気ダクト70のうち、シリンダブロック42の側方空間を通過する部分の下端が、シリンダヘッド44の上端44a、さらにシリンダブロック42の上端42aよりも下方に位置している。つまり、側面視で吸気ダクト70の一部とエンジンEとが重なる。シリンダブロック42の側方空間を通過する部分の上端が、ヘッドカバー46またはシリンダヘッド44よりも下方に位置するようにしてもよい。
【0066】
走行風Aは、空気取入口38からラムダクトユニット147を通り、エアクリーナ150で清浄化されたのち吸入ダクト部148を通って過給機62に導入される。過給機62に導入された走行風Aは、過給機62により加圧されて、吸気チャンバ74およびスロットルボディ76を介してシリンダ内へ導入される。
【0067】
図2の吸入ダクト部148は、第1のダクト部分152と第2のダクト部分154とを有している。第1のダクト部分152は、ラムダクトユニット147から後方に向かって下方に傾斜するとともに左側(外側)に膨出する。第1のダクト部分152は、さらに、シリンダブロック42の左側方で、かつシリンダヘッド44の上端よりも下方の空間を通過して車体前後方向に延びる。第2のダクト部分154は、第1のダクト部分152の後端に連なり車幅方向中心部に向かって湾曲し、シリンダブロック42の後方で過給機62の吸込口66に接続される。
【0068】
図1に示すように、吸入ダクト部148の第1のダクト部分152は、エンジンEの側方領域では、側面視で、クランク軸39の上方を通過する。具体的には、第1のダクト部分152は、クランクケース40の左側部に取り付けられたジェネレータカバー58の上方で、且つ、シリンダヘッド44の上面およびスロットルボディ76よりも下方を通過する。より詳細には、吸入ダクト部148の下面が、ジェネレータカバー58の上面よりも上方で、且つクランクシャフト39よりも上方を通過している。また、第1のダクト部分152におけるエンジンEの側方領域とその下流側に位置する下流部が、側面視で吸気チャンバ74の下方を、第2のダクト部分154とほぼ同じ高さで延びている。
【0069】
このように、吸入ダクト部148の第1のダクト部分152が、エンジン側方領域で、シリンダヘッド44の上面よりも下方を延び、第2のダクト部分154がシリンダヘッド44の上面よりも下方に配置されている。これにより、ダクトがシリンダヘッド44の上面よりも上方を通過する場合に比べて、吸込口66(
図2)に接続するために吸入ダクト部148を急激に下方向に曲げる必要がなくなり、吸入ダクト部148の曲率半径を大きくできる。
【0070】
また、吸入ダクト部148が、エンジンEの側方領域において、スロットルボディ76よりも下方を通過しているので、スロットルボディ76の両側部に形成されるスロットル弁駆動機構、センサ等の部品との干渉を防いで、可及的に車幅方向内側まで吸入ダクト部148を延ばすことができる。
【0071】
さらに、第1のダクト部分152がジェネレータカバー58の上方を延びているので、吸入ダクト部148とジェネレータカバー58との干渉が防止される。また、自動二輪車の転倒時に、ジェネレータカバー58が吸入ダクト部148よりも先に路面に衝突することで、吸入ダクト部148と路面との衝突が緩和され、吸入ダクト部148の損傷を抑制できる。換言すれば、
図7に示すように、車幅方向の車体中心を通過して鉛直方向に延びる中心面C2と路面Gとの交点から、エンジンEの最外側面を結ぶ仮想線V(バンク角)よりも内側に吸入ダクト部148が配置されることが好ましい。
【0072】
この実施形態では、吸入ダクト部148の第1のダクト部分152の断面形状は円形であるが、円形のほか、上下方向に長軸を有する形状、具体的には、長円形状、D字形状(円弧の両端を直線で結んだ形状)としてもよい。具体的には、エンジンEの側方領域でのダクト断面形状として、車幅方向寸法に比べて上下方向寸法を大きくすることで、車幅方向に膨らむのを防ぎつつ、通路面積を大きくすることができる。
【0073】
また、
図2に示すように、吸気ダクト70は、クラッチ48とは反対側で、ドライブチェーン(伝達機構)24およびサイドスタンド26と同じ左側に配置されている。サイドスタンド26と同じ側に配置することで、停車時に吸気ダクト70が目立ちにくい。また、右側にバルブ駆動力伝達機構60が配置されることになるので、自動二輪車の停車時に、右側位置を左側よりも高くでき、シリンダヘッド44内のオイルが右側のバルブ駆動力伝達機構60を収納する通路に漏れるのを防ぐことができる。
【0074】
ただし、吸気ダクト70をバルブ駆動力伝達機構60と同じ側に配置してもよい。例えば、シリンダブロック42の車幅方向中心位置が、車体の車幅方向中心線Cに対して幅方向一方側にオフセットされている場合、シリンダブロック42の他方側に空間ができるので、吸気ダクト70が、シリンダブロック42の他方側に形成された空間を通過するようにしてもよい。また、吸気ダクト70の形状を工夫したり装飾的な塗装を施したりして、サイドスタンド26と反対側に吸気ダクト70を配置させることで、車体停車時において、吸気ダクト70を意匠部品として形成することもできる。
【0075】
さらに、第2のダクト部分154に、シリンダブロック42の後方で第1のダクト部分152よりも流路面積が大きく設定された空気溜め部156が形成されている。このように、拡径部である空気溜まり156が形成されることで、吸気速度を低下させて吸気効率を向上させることができる。また、空気溜まり156を設けることで、拡径部以外の吸気ダクト部148の断面積を、過給機62の吸込口66よりも小さくできる。空気溜まり156は割愛してもよい。
【0076】
図5に示すクランク軸39が回転すると、カウンタ軸78が、駆動ギヤ84とクランクギヤ80との噛み合いによりクランク軸39に連動して回転する。カウンタ軸78が回転すると、変速装置を介して過給機駆動軸82が回転する。過給機駆動軸82が回転すると、チェーン102を介して入力軸65が回転し、さらに、遊星歯車装置112を介して過給機回転軸64が回転して過給機62が始動する。
【0077】
自動二輪車が走行すると、
図1に示す走行風Aは、空気取入口38からラムダクトユニット147を通り、エアクリーナ150で清浄化されたのち吸入ダクト部148を通って過給機62に導入される。過給機62に導入された走行風Aは、過給機62により加圧されて、吸気チャンバ74およびスロットルボディ76を介してエンジンEへ導入される。このようなラム圧と過給機62による加圧との相乗効果により、エンジンEに高圧の吸気を供給することができる。
【0078】
上記構成において、吸気ダクト70がエンジンEの前方から後方に向かってエンジンEの左側方を通過して延びているので、吸気ダクト70によってエンジンEの上方空間を圧迫することが防がれる。その結果、エンジンEの上方に配置される燃料タンク28の大きな容量を確保することができるうえに、設計の自由度も向上する。また、エンジンEの上方に吸気チャンバ74を配置しても、十分な燃料タンク28の容量を確保できる。
【0079】
図2に示すように、吸気ダクト70の内側面148dが、過給機62の吸込口66よりも前方で湾曲しているので、滑らかに湾曲する経路を形成しやすく、吸気通路における管路抵抗を減らすことができる。過給機62を用いると、吸気ダクト70内を流れる吸気の流速が極めて大きくなり、管路抵抗が大きくなるが、このように管路抵抗を減らすことができるので、過給機62を用いた場合でもエンジン出力が低下するのを抑制できる。
【0080】
エンジンEの右側方にバルブ駆動力伝達機構60が配置され、左側の空いたスペースを吸気ダクト70が通過しているので、エンジンEの周囲のスペースを有効に利用することができる。
【0081】
図1に示すように、過給機62が、クランクケース40の上方に配置され、吸気ダクト70が、エンジンEの側方領域でシリンダヘッド44よりも下方を通過しているので、側面視において、シリンダヘッド44の後方で吸気ダクト70の第1のダクト部分152を上下方向に大きく湾曲させることなく過給機62に接続できる。
【0082】
図2に示すように、過給機62の吸込口66がエンジンEの左側面よりも車幅方向内側に配置され、吸気ダクト70の第2のダクト部分154に空気溜め部156が形成されているので、過給機62の吸込口66の前に高圧の空気を溜めることができ、これにより、エンジンEの出力を向上させることができる。また、車幅方向に延びる第2のダクト部分154の流路面積を大きくしても、車幅方向寸法は大きくならないので、空気溜め部156をエンジンEの幅内に収めることができる。
【0083】
図5に示すように、過給機62の吸込口66が向く車幅方向左側の反対側である車幅方向右側に、エンジンEの動力を過給機62に伝達するチェーン102が配置されているので、吸込口66に接続される吸気ダクト70とチェーン102とが干渉することがなく、エンジンE周囲のスペースを一層有効に利用することができる。
【0084】
図1に示すように、過給機62の吸込口66がクランクケース40の後部の上方、すなわちシリンダブロック42から大きく離れた後方に位置している。さらに、前後方向における、過給機62とエンジンEの吸気ポート72との間に吸気チャンバ74が配置されている。しかも、吸気ダクト70におけるエンジンEの側方領域とその下流側に位置する第2のダクト部分154が、吸気チャンバ74の下方を延びている。その結果、
図2に示す過給機62の吸込口66がシリンダブロック42から大きく離れた後方に位置する。これにより、エンジンEの側方を通過した後、比較的大きな曲率半径で吸気ダクト70を湾曲できる。
【0085】
また、吸込口66を後方に配置することで、吐出口68を含む過給機62全体も後方に配置されることになる。これにより、
図1の吸気チャンバ74の前後方向寸法を大きくすることができ、吸気チャンバ74の上下方向寸法を大きくすることなくチャンバ容量を稼ぐことができる。吸気チャンバ74の上下方向寸法を抑えることで、吸気チャンバ74とその下方を通過する吸気ダクト70の第2のダクト部分154との干渉を防ぐことができる。その結果、エンジンEの上方空間の圧迫を一層防ぐことができる。
【0086】
図1に示すように、吸気ダクト70の中間部に、吸気ダクト70の前端の導入口70aよりも上方に位置する高位部70bが形成されている。これにより、導入口70aから走行風Aとともに入った水が過給機62へ浸入するのを抑制することができる。
【0087】
また、吸気ダクト70の導入口70aが、過給機62の吸込口66とほぼ同じ高さに位置している。これにより、路面から吸気ダクト70の導入口70aが遠ざかるので、導入口70aから雨水、泥水等が浸入するのを抑制できる。
【0088】
上記実施形態の変形例として、過給機62を省略し、吸気ダクト70の下流端部を、ファンネルのような偏向部材を介して、あるいは直接吸気チャンバ74に接続するように構成してもよい。この場合、吸気チャンバ74が、エンジンEに吸気を供給する吸気部を構成する。このような変形例も、第1実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、エンジンEの上方空間に吸気ダクト70が配置されないので、設計の自由度を向上できる。さらに、第1実施形態で、過給機62が配置されていた箇所に、例えば、吸気チャンバ74、エアクリーナ55等の他の部品を配置することも可能となり、部品配置の自由度が一層向上する。
【0089】
図8は本発明の第2実施形態に係るエンジンを搭載した自動二輪車の側面図である。この自動二輪車の車体フレームFRは、車体中央部に配置されたエンジンEと、エンジンEに支持されてエンジンEから車幅方向中心付近を上方斜め前方に延びる前部フレーム1Aと、エンジンEに支持されてエンジンEから上方斜め後方に延びる後部フレーム2Aとを有している。つまり、エンジンEが車体フレームFRの一部を構成している。
【0090】
前部フレーム1Aの前端にヘッドパイプ4が一体形成され、このヘッドパイプ4に図示しないステアリングシャフトが回動自在に軸支されて、このステアリングシャフトに操向用のハンドル6が固定されている。すなわち、ヘッドパイプ4がハンドルポストとして機能し、車体フレームFRの一部である前部フレーム1Aが、ヘッドパイプ4から車体後方に延びている。なお、
図9では、カウリング34は省略している。
【0091】
エンジンEから前方に延びる二又状のアーム200が、エンジンEのクランクケース40の前部に上下揺動自在に軸支され、このアーム200の左右一対のアーム片200a,200aの先端部に前輪10を操舵可能に支持するハブステア機構(図示せず)が取り付けられている。また、ハンドル6の操作を前記ハブステア機構に伝達してハブステア機構により前輪10を操舵させる操舵機構(図示せず)と、前輪10にかかる荷重を受けて緩衝する前部サスペンション(図示せず)とを備えている。それ以外の構造は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0092】
さらに、第2実施形態の自動二輪車は、エンジンEが車体フレームFRの一部を構成し、シリンダブロック42の外側面に車体フレームFRが存在しない。これにより、車体フレームFRと吸気ダクト70との干渉が回避され、エンジンEの側方に吸気ダクト70を配置しやすい。また、エンジンEを車体フレームFRの一部とすることで、ヘッドパイプ4から後方に延びるフレームの剛性を高くする必要がなく、吸気ダクト70の配置の自由度がさらに向上する。
【0093】
本発明の吸気ダクト70は、上記実施形態の形状以外にも様々な形状とすることができる。例えば、上記実施形態では、吸気ダクト70の吸入ダクト部148の通路面積は一定であるが、前方から後方に向かって通路面積が徐々に小さくなるようにしてもよい。これにより、吸気の流速が上流側から下流側に向かって徐々に増大する。その結果、過給機62の吸込口64付近で吸気の流速が低下することがなく、過給機62の高い効率を確保できる。また、吸気の流速は徐々に増速するので、流れの乱れが少なくなり、吸気効率も高い。
【0094】
また、上記実施形態では、吸気ダクト70の吸入ダクト部148の横断面形状は円形であったが、
図9に示すように、湾曲部分の横断面形状が、湾曲の中心(曲率中心)Oから湾曲の径方向Rの外側に向かって、径方向Rに直交する直交方向寸法D1が徐々に小さくなるように形成されていてもよい。この構成によれば、吸気ダクト70の内部における湾曲の径方向外側の通路が、湾曲の径方向内側の通路に比べて狭くなる。これにより、遠心力で吸気が湾曲の径方向Rの外側へ偏るのが抑制され、吸気ダクト70の内部で吸気の流れが均一化される。このように、吸気の流れが均一化された状態で過給機62の吸込口66に接続されることで、過給機62の効率が低下するのを防ぐことができる。
【0095】
さらに、
図9に示すように、吸気ダクト70の吸入ダクト部148は、左半体148Lと右半体148Rとからなる左右2つ割れの構造としてもよい。この構成によれば、型成形により吸気ダクト70を成形できる。その結果、上下方向および左右方向に湾曲する場合でも、吸気ダクト70を容易に形成することができる。
【0096】
また、
図10に示すように、吸気ダクト70の下面が、前端の導入口70aと後端部70cとの間の中間部に最下部70dを有し、この最下部70dのダクト壁に、ドレン孔71を貫通して設けてもよい。これにより、吸気ダクト70内に雨水が浸入した場合でも、過給機62の吸込口66に至る前にドレン孔71から雨水が排出され、雨水が過給機62に浸入するのを防ぐことができる。
【0097】
図10の例では、吸気ダクト70の上面は、下面に沿った形状を有している。つまり、吸気ダクト70の上面も、前端の導入口70aと後端部70cとの間の中間部で最下部を有し、吸気ダクト70は全体として、側面視で、V字形状を有している。したがって、吸気ダクト70内の通路面積の急激な変化が抑制される。
【0098】
さらに、
図11に示すように、車体の幅方向中央部にヘッドライトユニット36が配置され、ヘッドライトユニット36の外側(
図11では左側)に導入口70aおよび吸気ダクト70を配置してもよい。同図では、導入口70aの外側端P1が、前後方向の全域にわたって、吸気ダクト70の内側面70iよりも外側に位置している。また、導入口70aの開口縁は、後方に向かって外側に傾斜している。
【0099】
さらに、
図11に二点鎖線で示すように、吸気ダクト70は、左側の導入口70aに加え、右側に、追加の導入口160を配置してもよい。この構造によれば、追加の導入口160があるので、走行風Aの吸入量が増加する。この場合、例えば、通路面積の大きい、ラムダクトユニット147と吸入ダクト部148との接続部に、クリーナエレメント170を内蔵してもよい。これにより、吸気Iは、流速が遅い箇所でクリーナエレメント170を通過するので、クリーナエレメント170を通過する際のロスを少なくできる。
【0100】
上記各実施形態では、過給機62、吸気チャンバ74が吸気部を構成しているが、これに限定されず、例えば、エアクリーナ、スロットルボディ76の導入パイプ部等を吸気部とすることもできる。
【0101】
また、本発明は、上記各実施形態以外にも、エンジンEを車体フレームFRの一部として利用しない一般的な構造、例えば、吸気ダクト70よりも車幅方向内側に、ハンドルポストから車体後方に延びる車体フレームが形成される構造、つまり、エンジンEの上方または下方をフレームが延びる構造に適用可能で、具体的には、クレードルフレーム、ダイヤモンドフレーム、バックボーンフレームにも、本発明を適用できる。さらに、エンジンEの側方に車体フレームが配置されるツインチューブフレームであってもよい。この場合、車体フレームの内部を走行風Aが通過するようにして、吸気ダクトと車体フレームとを兼用する構造とすることが好ましい。
【0102】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、エンジンEの左側を吸気ダクト70が通過しているが、エンジンEの右側、またはエンジンEの左右両側方を吸気ダクト70が通過してもよい。吸気ダクト70がエンジンEの左側を通過する場合と、右側を通過する場合とでは、インペラ114の回転方向が変わるが、遊星歯車装置112の歯車構成を変えることで、過給機62を大きく変更することなく対応できる。また、遊星歯車装置112の歯車構成を変えるのに代えて、アイドルギヤを介在させたり、動力伝達経路を変更したりして、インペラ114の回転方向を変えてもよい。
【0103】
上記実施形態では、エアクリーナ150をヘッドパイプ4付近に配置したが、シリンダブロック42の後方の空気溜め部156をエアクリーナ室として利用してもよい。これにより、設計の自由度がさらに向上する。また、本発明のダクト構造は、自動二輪車以外の鞍乗型車両にも適用可能で、三輪車、四輪車にも適用できる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。